強がりなトカゲ
俺は生まれた時から村から少し離れた森の近くに住んでいた。だから、魔物も色々と寄って来るわけだが、みんな良い奴ばかりだ。
週に数回俺の家にホルスタウロスと銀髪の男の夫婦がミルクを売りに来る。とても旨くて魔物達も俺の家の前で購入していく。毎回思うが、あの金はどこで調達しているのだろうか？
魔物達が寄ってくる中で、特に昔なじみなのがリザードマンのティオだ。彼女は気の強い奴で昔から、半ば無理矢理剣術の稽古に付き合わされていた。
申し遅れたが俺の名前はギルス・ヘンパート。髪の毛は母譲りの黒髪で、目は父譲りだ。
父も母も今は別の所に住んでいる。俺が一人で生活できるようになると、二人とも「気ままに第二の人生を」とか言って南の方に引っ越していった。
家を譲り受けて、俺は今魔法薬の研究を独学でしている。世の中に出回っている薬の幾つかは俺が発案、調合し、名の通った薬学者が友人にいるので彼を通して流して貰っている。
「おいっ、起きろ！」
俺の安眠はティオの一声によって妨げられる。いつも。
「…はぁ〜〜あぁ、なんだよ？」
「おい、剣の相手をしろ！」
おいおい、またかよ…勘弁して欲しいね、こっちは研究で毎日夜更かしだってのに…
「…はぁ、分かったよ」
そう答えないとしつこいのを知っているから、そう答えて適当に負けるといういつもの流れだ。
俺は渋々練習用の剣を持って表に出ると、剣を構えて立っている彼女を前にして剣を構えた。
ただストレート負けしてしまうと、手を抜いていることが彼女にバレて本当に殺されかねない。俺は攻めの体勢も見せつつ、最後には彼女に負けるようにしていた。
剣の形をした刃のない武器が互いに当たる金属音が幾数回上がり、俺の首元に彼女の持つそれが突きつけられた。
「私の勝ちだな？」
「みりゃわかるだろ？それとも何か？剣の鍛錬しすぎて頭が退化してるのか？」
「ギルス…バカにしているのか？」
「いやいや、滅相もない…」
俺は首元の冷たい金属を人差し指でどけると、自分の武器を鞘に納めると家の中に入った。
俺の家には三つの部屋、あとトイレと風呂とキッチン、リビングがあるだけだ。
部屋の振り当てを言えば、昔から使っていた俺の部屋は寝室、両親の使っていた部屋は物置、そして父の書斎だったところは今や俺の研究兼実験室になっている。
俺は入り口の横に練習用の剣を立てかけると、昨日あの夫婦から買ったミルクを棚から取り出しテーブルの上に置いた。
「…相変わらず汚い部屋だな…」
「汚かろうが散らかってようが、俺の仕事と生活には何の支障もない」
「…そうか。ところでギルス、腹が減った」
「ああ、そうだな。俺も減った」
俺は言い捨てるとミルクを一気に飲み干した。何とも言えない甘みと柔らかな喉ごしが最高だ。
おいしいミルクを飲んで幸せな俺とは対照的に、ティオは不満そうだ。
「…それだけか？」
「ああ、それだけだ」
「…お前、『良かったら食べていかないか』とか気の利いたことは言えんのか！？」
「お前が良かろうと、俺が良くないので言わん」
ゾクッ…急に寒気が…。この威圧は『本物』を握った感じかな、ガチャって言ったし。俺は椅子から立ち上がって、キッチンへ向かった。
「…はぁ、わかったわかった。作ってやるよ、ついでにな…。だから剣を離せ」
「そうか。お前は本当にいい奴だな」
「そういうお前はホントに嫌な奴だな…」
「何か言ったか？」
「いいえ、なにも…」
俺は二人分の卵とベーコンを取り出し、二つのフライパンを使って一気に焼き上げた。皿に移し替えて俺は椅子に座って、自分と彼女の前に置いた。
「おぉ、お前が作ったにしては旨そうじゃないか」
そりゃ卵とベーコンだけだからな、失敗のしようがないぞ。お前みたいに。
このティオは、以前一度だけ今日と同じ食材を使って『朝飯を作ってやる』と言うから作らせてみたが、…ベーコンは炭と化し、卵は殻が入りまくっていた。
「そりゃどうも」
ティオは飯を食べ終わってからも俺の家でくつろいでいた。俺は研究室に入って魔草の絞り汁と薬品を色々な配合で混ぜ合わせて、どんな物が出来るのか試みていた。
するとリビングでくつろいでいたはずのティオがこの部屋に入ってきた。
「毎度のことだが、よくわからんな」
「だろうな」（おまえの頭じゃ）
俺は横目でティオを見ると…あ、その薬品はダメェェッ！
「こうするのか」
「まてぇぇぇぇっ！」
二種類の混ざり合った薬品は、緑がかったガスを放出しだした。
「な、なななな、なんだっ！？」
「えぇいっ、やってくれたなっ！」
俺は薬品を手早くてに取り、その薬品に混ぜた。たちまちガスは浄化され、俺たちは命拾いをした。
俺はティオをリビングに連れだした。
「なんだ、ギルス？」
「ふぅ…スゥ―」
俺は一度深呼吸した。
「バカかお前はっ！！」
「ひっ…」
「もうちょっとで俺たちは死ぬかもしれなかったんだぞっ！薬品なんてな、その大半が毒なんだよっ！」
「な、なんだ、死ななかったんだし良いじゃないか。器の小さい男だな、その様子だとあっちの方も小さいんじゃないか？」
俺はとてつもなく腹が立ってきた…、ティオの身を心配していったというのに、反省の色もなく、器もナニも小さいと言われた…。
俺は日頃の不満も加えて、我慢の限界だった。
「そうか…」
俺は彼女をソファーに突き倒した。
「わっ…ギルス、一体何を！？」
「そっちまで小さいか確かめてみるかぁぁ？」
「な、貴様、…いいだろう、だが私に剣で勝てたらの話だ」
「よし、言ったな？」
俺は練習用の剣を取って表に出た。ティオは剣では勝てる気でいる。だが、そう言うわけにはいかんのだよッ！
ティオも家の中から出てきて剣を構えた。
「さっき負けた癖に…行くぞ！」
ティオが斬り込んでくると俺はさっきの勝負とは違い、その場を動かず受け流した。そして隙が出来た腹に向かって剣を振ると彼女は驚いたように飛び退いた。
そして数回の攻防があり、俺は初めて彼女を負かした。
「な…に…？」
「フッフ…薬に使う材料を俺は自分の脚で取りに行くんだ、それで剣術が弱い分けないだろう？」
「そんな…」
「それでは…」
「ま、まて…」
「なんだ？怖じ気づいたのか？」
「…っ！そんな分けないだろう！来いっ」
ティオはそう言って俺の家の中に入っていった。俺は彼女を追って家の中に入ると、いかにも緊張した様子で立っていた。
「さてと…」
俺は彼女をソファーに押し倒した。
「ひゃあっ！」
そして彼女の上に覆い被さった。
「それでは確かめていただきましょうか…」
彼女の履いているパンツのホックを外すと、彼女の顔は見る見る赤くなっていった。そしてズボンから自分のちっちゃいと言われたモノを取り出した。
「なっ、ちょ…デカッ…じゃなくてっ…待って…」
「ちっちゃいんだろ？平気じゃないか」
「ひっ―」
俺が先っぽを少し当てただけで彼女は怯えたような声を上げた。少し強く押し当てると何か聞こえてきた。
「…さい……めん…い…ごめ…」
耳をよく澄ましてみるとティオが俺の服をギュッと掴んで呟いていた。
「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ…」
彼女は目を瞑って、小さな小さな声で呪文のように呟いている。見れば目尻には涙まで浮かべていた。
俺だって鬼じゃないし、すっかり冷静になっていた。少し脅かしてみたのだが、ここまで効果があるなんて。
「あ〜、やめやめ…」
「…へぇっ？」
俺は立ち上がるとズボンを履いた。ティオはホッとしたような驚いたような顔をして呆けている。
「そんな泣きそうな奴に出来るかよ…」
「な…泣いてなど…」
「じゃあその目尻に光ってるのは何だよ？第一、俺にだってお前が初めてなのくらい分かってらぁ…」
俺は研究室を片づけようと、リビングを出ようとした。
「…ま、待て…」
「んだよ？文句なら後で聞いてやる…」
「そうではないっ、………その…なんだ…約束は約束だっ！」
「…はい？」
「だから…その…ええぃ、構わないと言っているのだっ」
ティオのやつ、いつもと違ってオロオロしやがって…可愛い奴め。
「ホントに良いのか？」
「良いと言っているではないか！…乙女心は変わりやすいのだ、早くしろ…」
「乙女心？」
聞き返すとティオはハッとしたような仕草を見せ、充分赤かった顔を耳まで真っ赤にした。普段そんなことは口にしないので、口をついて出てしまった言葉に我ながら恥ずかしくなったのだろう。
「う、五月蠅いっ…」
俺は照れまくるティオに近づくと優しく抱き寄せ口付けをした。そっと露わになったままの秘部に指を軽く走らせるとネットリしたモノが絡んできた。
「んっ…」
腰がビクリッと動き、喘ぎ声が漏れた。俺は唇を離し彼女の後ろへ立つと手を前へ回し、もう片腕で彼女の体を捕まえた。そしてゆっくりと指を動かした。
「あんっ…ハッ…んっ…ハァ…ハァ…んんっ…」
荒れた呼吸音と喘ぎ声が交互に混ざり合っている。そして彼女はいつの間にかその両腕を俺の首に回し、まるで支えにでもするようにしていた。
「あぁっ…あっ…脚に…力がぁ…」
ティオの脚は内側に折れ曲がり、プルプルと震えていた。そして俺の首に回していた腕の力も抜けてしまったのか上体が倒れそうになった。すると、丸で崖から落ちる途中に必死で枝にでも掴まるかのように、体を捕まえていた俺の腕の上腕にしがみ付いた。
「んっ……………はぁ…ハァ…ハァ…」
やがてしがみ付く力がほんの数秒強くなって、腰を後ろに突き出し、水中から上がったように呼吸した。
「イッたのか…？」
「た…多分…。…何だか…飛びそうになった…」
「…それじゃ…」
「ふぁっ、な、何をっ…？」
俺はその場に座り込んでいるティオを抱き上げた。そしてソファーに寝かせると、脚を開かせてその間に俺は座った。
「な、ナナナナナッ…！」
「へぇ〜、こうなってるのか…」
「み、見るなっ、バカ！アホ！戯け！変態！」
「わっ、ま、いって…痛っ、痛ーっ」
ティオは蹴るやら尻尾で叩くやら大変だった。俺は蹴りの猛襲をかいくぐり、彼女に覆い被った。
「…痛ぇじゃねぇかこの野郎…」
「…それはお前がんっ…」
俺はティオの大きな胸を服の上から掴んで、優しく揉みほぐした。
「あんっギルッ…待って…」
俺は胸から手を離して、ズボンを下ろすとモノを取り出した。先端を彼女の秘部に擦りつけると彼女は少し腰を引いた。
「やっぱり怖いか？」
「こ、怖くなど…なぃ」
「語尾が弱いぞぉ」
「五月蠅いっ！…い、入れるなら早く入れろ…」
強がっちゃって、言ったのはお前だぞ…っと。
「うあっ…！」
先端が少し入るとティオは驚いて覆い被さっていた俺に抱きついた。
「続けていい？」
「い、良いぞ…」
俺は少しずつ進入させた。
「あ…ああっ…痛っ…」
「おい、無理すんなよ？」
「はぁはぁ…へ、平気…だ…」
「…分かった」
俺は更に入れて全部入れ終えた。さすがに締め付けがキツいが、だがその感覚が何とも言えなかった。
「全部入ったぞ…」
「〜〜〜〜〜っ、はぁ、はぁ…」
俺は何も言わずに腰をゆっくり動かした。
「うぁっ！…いっ…まっ…て」
最初は痛がっていたが、暫くすると『喘ぎ』が混ざって聞こえるようになった。
「あんっ…あっ…あっ…んんっ…ダメッ…！」
抱きしめる力が一段と強くなって、また、下の締め付けも強くなった。さすがは魔物と言うべきか、快感が痛みに取って代わるまでが早いらしい。
「あんっ…あんっ…あんっ…あっ…またぁ…イっちゃうぅ…」
「…どうぞ…ご遠慮なく…俺ももうチョイなんでね…」
いかん、もう止まらねぇ、気持ちよすぎだって。つーか何かティオからいい匂いがして余計に興奮すんのよねぇ。
「あぁっ…もう…あっ………！」
彼女の体と中が痙攣してすぐに俺にも快感の大波が到達した。
「俺も…っ…」
ドクドクと音を立てるように彼女の中に、俺は精を注ぎ込んだ。
「はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ…」
俺とティオはその汗ばんだ体を重ね、息を荒くしたまま暫く呆けていた。やがて俺は彼女の中からまだ固いままのソレを抜いた。
「ひゃんっ…！」
「………」
ティオの奴、俺が服を着直してからずっと黙りこくっている。
「…なんか喋れよ…」
「…人でなし…」
「はぁ？」
「…ずっと手を抜いていたのだろ…剣術の勝負のとき」
「…あぁ、悪かったよ…」
「…この人でなしっ！ろくでなしっ！」
ティオはその辺にあった本やら何やかんやを俺に向かって投げつけた。
「わっ、ちょっ、待てっ、あぶなっ、たんまっ！」
「はぁ…はぁ…ギルス、なんで隠してた？訳を話せ…」
「…だってお前が要求するのが朝っぱらの俺がまだ『低血圧』から抜けきってない時だし、それに腹も減ってるし…」
「それで技と負けて楽に早く済ませようと思ったんだな…？」
正解、図星、その通り。なんだけど、分かってるならなんで誘ったのさ、それも無理矢理。
「そういうことだ…」
「はぁ〜」
ティオは溜息をつくと再びソファーに座って膝に頬杖を付いた。
「…悪かった…」
「へ？」
「…悪かった、その…無理矢理付き合わせて…でも…だってそうじゃなきゃ、お前の顔見る尤もな理由がなくなっちゃうんだもんっ…！」
ティオの口調がいつもの騎士っぽいものじゃなく、普通の、どちらかと言えば幼そうな口調になったことに俺は驚いた。いや、そもそもこれが彼女の本質といえるのか…
そもそも俺の顔を見る尤もな理由って、なんで俺の顔なんか？
「どゆこと？」
「だってギルス、いっつも部屋に籠もってて顔なんか滅多に見せないし、森の奥に魔草取りに行ってて留守だったりするし…そんなの病気だったって、怪我してたってわかんないじゃない！？」
「なんでそこまで…」
「私がギルスの幼なじみで、よく知ってて、私があなたのこと好きって理由じゃ足らないわけっ？！」
俺は言葉が出なくなった。その、彼女の気に押されたのもそうだが、彼女の発した言葉の意味を理解できたからだ。そして余りに予想もしていなかったからだ。
俺は冷静になって言葉を取り戻した。
「…いや、十分だな…こっちこそ悪かったな、心配掛けてて…」
「べ、別に心配などしていない…ただ、気に掛かっていただけだ…」
俺の顔を見た途端、彼女はいつものような口調でハッとしたようにそう言った。
どっちだよ、と突っ込みたくなった。だがティオの性格を知っている俺は、ただ微笑んでいた。
「…それに、私を勝負で負かした上にあんなに注いで…分かっているだろうな？」
おっと…そういえば彼女リザードマンだったんだっけぇ…？リザードマンってあれだよね、勝負で自分に勝った男を夫にするんだっけ。
「夫になれって？」
「そうだ、分かっているではないか。話が早い」
「ちょっと待て…」
「…なんだ、私じゃ不服だというのか？」
「いいや、そんなことはない、そんなことはないが…俺の嫁になる理由は『俺が勝負で勝った』からか？それとも『お前が俺を好きだった』からか？」
俺はにやっとして訊いてみた。予想通り、自分のさっきの素のセリフを思い出して恥ずかしくなってきたのか、見る見る顔が赤くなってゆく。
「…そ、そ、そ、それは…………が……から…」
「ん？なんだって？」
「それは、お、お前が勝負に勝ったからに決まっているっ…」
嘘だね、さっき自分で言ってたし、それにティオは自分じゃ気付いてないかもしれないけど、そういう嘘付くとティオは尻尾を右向きに巻いちゃうんだよねぇ。
「本当かぁ〜？」
「ほ、ほんとうだ…」
「じゃあなんで目を反らすんだ？ん？」
「うっ…」
「ほれほれ、言うてみぃ」
「っ〜〜〜〜、………ぎ、ギルスのことが…む、昔から…好きだった…から…」
「そうそう、素直が一番っ」
「うぅ〜〜〜〜」
「おいおい、なんだ？まさか恥ずかしくて泣きそうか？」
「ち、違うっ…！」
「…強がんなって、これからは横でも前でも後ろでも、どこでも側に居てやんだからよ…な？」
「五月蠅いっ、私は恥ずかしくて泣きそうになんかなってない……嬉しくて…泣きそうなんだっ…」
お、まさかこんなこと言うとはねぇ。ちょっとは素直になったかな、このトカゲっ娘はよ…
週に数回俺の家にホルスタウロスと銀髪の男の夫婦がミルクを売りに来る。とても旨くて魔物達も俺の家の前で購入していく。毎回思うが、あの金はどこで調達しているのだろうか？
魔物達が寄ってくる中で、特に昔なじみなのがリザードマンのティオだ。彼女は気の強い奴で昔から、半ば無理矢理剣術の稽古に付き合わされていた。
申し遅れたが俺の名前はギルス・ヘンパート。髪の毛は母譲りの黒髪で、目は父譲りだ。
父も母も今は別の所に住んでいる。俺が一人で生活できるようになると、二人とも「気ままに第二の人生を」とか言って南の方に引っ越していった。
家を譲り受けて、俺は今魔法薬の研究を独学でしている。世の中に出回っている薬の幾つかは俺が発案、調合し、名の通った薬学者が友人にいるので彼を通して流して貰っている。
「おいっ、起きろ！」
俺の安眠はティオの一声によって妨げられる。いつも。
「…はぁ〜〜あぁ、なんだよ？」
「おい、剣の相手をしろ！」
おいおい、またかよ…勘弁して欲しいね、こっちは研究で毎日夜更かしだってのに…
「…はぁ、分かったよ」
そう答えないとしつこいのを知っているから、そう答えて適当に負けるといういつもの流れだ。
俺は渋々練習用の剣を持って表に出ると、剣を構えて立っている彼女を前にして剣を構えた。
ただストレート負けしてしまうと、手を抜いていることが彼女にバレて本当に殺されかねない。俺は攻めの体勢も見せつつ、最後には彼女に負けるようにしていた。
剣の形をした刃のない武器が互いに当たる金属音が幾数回上がり、俺の首元に彼女の持つそれが突きつけられた。
「私の勝ちだな？」
「みりゃわかるだろ？それとも何か？剣の鍛錬しすぎて頭が退化してるのか？」
「ギルス…バカにしているのか？」
「いやいや、滅相もない…」
俺は首元の冷たい金属を人差し指でどけると、自分の武器を鞘に納めると家の中に入った。
俺の家には三つの部屋、あとトイレと風呂とキッチン、リビングがあるだけだ。
部屋の振り当てを言えば、昔から使っていた俺の部屋は寝室、両親の使っていた部屋は物置、そして父の書斎だったところは今や俺の研究兼実験室になっている。
俺は入り口の横に練習用の剣を立てかけると、昨日あの夫婦から買ったミルクを棚から取り出しテーブルの上に置いた。
「…相変わらず汚い部屋だな…」
「汚かろうが散らかってようが、俺の仕事と生活には何の支障もない」
「…そうか。ところでギルス、腹が減った」
「ああ、そうだな。俺も減った」
俺は言い捨てるとミルクを一気に飲み干した。何とも言えない甘みと柔らかな喉ごしが最高だ。
おいしいミルクを飲んで幸せな俺とは対照的に、ティオは不満そうだ。
「…それだけか？」
「ああ、それだけだ」
「…お前、『良かったら食べていかないか』とか気の利いたことは言えんのか！？」
「お前が良かろうと、俺が良くないので言わん」
ゾクッ…急に寒気が…。この威圧は『本物』を握った感じかな、ガチャって言ったし。俺は椅子から立ち上がって、キッチンへ向かった。
「…はぁ、わかったわかった。作ってやるよ、ついでにな…。だから剣を離せ」
「そうか。お前は本当にいい奴だな」
「そういうお前はホントに嫌な奴だな…」
「何か言ったか？」
「いいえ、なにも…」
俺は二人分の卵とベーコンを取り出し、二つのフライパンを使って一気に焼き上げた。皿に移し替えて俺は椅子に座って、自分と彼女の前に置いた。
「おぉ、お前が作ったにしては旨そうじゃないか」
そりゃ卵とベーコンだけだからな、失敗のしようがないぞ。お前みたいに。
このティオは、以前一度だけ今日と同じ食材を使って『朝飯を作ってやる』と言うから作らせてみたが、…ベーコンは炭と化し、卵は殻が入りまくっていた。
「そりゃどうも」
ティオは飯を食べ終わってからも俺の家でくつろいでいた。俺は研究室に入って魔草の絞り汁と薬品を色々な配合で混ぜ合わせて、どんな物が出来るのか試みていた。
するとリビングでくつろいでいたはずのティオがこの部屋に入ってきた。
「毎度のことだが、よくわからんな」
「だろうな」（おまえの頭じゃ）
俺は横目でティオを見ると…あ、その薬品はダメェェッ！
「こうするのか」
「まてぇぇぇぇっ！」
二種類の混ざり合った薬品は、緑がかったガスを放出しだした。
「な、なななな、なんだっ！？」
「えぇいっ、やってくれたなっ！」
俺は薬品を手早くてに取り、その薬品に混ぜた。たちまちガスは浄化され、俺たちは命拾いをした。
俺はティオをリビングに連れだした。
「なんだ、ギルス？」
「ふぅ…スゥ―」
俺は一度深呼吸した。
「バカかお前はっ！！」
「ひっ…」
「もうちょっとで俺たちは死ぬかもしれなかったんだぞっ！薬品なんてな、その大半が毒なんだよっ！」
「な、なんだ、死ななかったんだし良いじゃないか。器の小さい男だな、その様子だとあっちの方も小さいんじゃないか？」
俺はとてつもなく腹が立ってきた…、ティオの身を心配していったというのに、反省の色もなく、器もナニも小さいと言われた…。
俺は日頃の不満も加えて、我慢の限界だった。
「そうか…」
俺は彼女をソファーに突き倒した。
「わっ…ギルス、一体何を！？」
「そっちまで小さいか確かめてみるかぁぁ？」
「な、貴様、…いいだろう、だが私に剣で勝てたらの話だ」
「よし、言ったな？」
俺は練習用の剣を取って表に出た。ティオは剣では勝てる気でいる。だが、そう言うわけにはいかんのだよッ！
ティオも家の中から出てきて剣を構えた。
「さっき負けた癖に…行くぞ！」
ティオが斬り込んでくると俺はさっきの勝負とは違い、その場を動かず受け流した。そして隙が出来た腹に向かって剣を振ると彼女は驚いたように飛び退いた。
そして数回の攻防があり、俺は初めて彼女を負かした。
「な…に…？」
「フッフ…薬に使う材料を俺は自分の脚で取りに行くんだ、それで剣術が弱い分けないだろう？」
「そんな…」
「それでは…」
「ま、まて…」
「なんだ？怖じ気づいたのか？」
「…っ！そんな分けないだろう！来いっ」
ティオはそう言って俺の家の中に入っていった。俺は彼女を追って家の中に入ると、いかにも緊張した様子で立っていた。
「さてと…」
俺は彼女をソファーに押し倒した。
「ひゃあっ！」
そして彼女の上に覆い被さった。
「それでは確かめていただきましょうか…」
彼女の履いているパンツのホックを外すと、彼女の顔は見る見る赤くなっていった。そしてズボンから自分のちっちゃいと言われたモノを取り出した。
「なっ、ちょ…デカッ…じゃなくてっ…待って…」
「ちっちゃいんだろ？平気じゃないか」
「ひっ―」
俺が先っぽを少し当てただけで彼女は怯えたような声を上げた。少し強く押し当てると何か聞こえてきた。
「…さい……めん…い…ごめ…」
耳をよく澄ましてみるとティオが俺の服をギュッと掴んで呟いていた。
「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ…」
彼女は目を瞑って、小さな小さな声で呪文のように呟いている。見れば目尻には涙まで浮かべていた。
俺だって鬼じゃないし、すっかり冷静になっていた。少し脅かしてみたのだが、ここまで効果があるなんて。
「あ〜、やめやめ…」
「…へぇっ？」
俺は立ち上がるとズボンを履いた。ティオはホッとしたような驚いたような顔をして呆けている。
「そんな泣きそうな奴に出来るかよ…」
「な…泣いてなど…」
「じゃあその目尻に光ってるのは何だよ？第一、俺にだってお前が初めてなのくらい分かってらぁ…」
俺は研究室を片づけようと、リビングを出ようとした。
「…ま、待て…」
「んだよ？文句なら後で聞いてやる…」
「そうではないっ、………その…なんだ…約束は約束だっ！」
「…はい？」
「だから…その…ええぃ、構わないと言っているのだっ」
ティオのやつ、いつもと違ってオロオロしやがって…可愛い奴め。
「ホントに良いのか？」
「良いと言っているではないか！…乙女心は変わりやすいのだ、早くしろ…」
「乙女心？」
聞き返すとティオはハッとしたような仕草を見せ、充分赤かった顔を耳まで真っ赤にした。普段そんなことは口にしないので、口をついて出てしまった言葉に我ながら恥ずかしくなったのだろう。
「う、五月蠅いっ…」
俺は照れまくるティオに近づくと優しく抱き寄せ口付けをした。そっと露わになったままの秘部に指を軽く走らせるとネットリしたモノが絡んできた。
「んっ…」
腰がビクリッと動き、喘ぎ声が漏れた。俺は唇を離し彼女の後ろへ立つと手を前へ回し、もう片腕で彼女の体を捕まえた。そしてゆっくりと指を動かした。
「あんっ…ハッ…んっ…ハァ…ハァ…んんっ…」
荒れた呼吸音と喘ぎ声が交互に混ざり合っている。そして彼女はいつの間にかその両腕を俺の首に回し、まるで支えにでもするようにしていた。
「あぁっ…あっ…脚に…力がぁ…」
ティオの脚は内側に折れ曲がり、プルプルと震えていた。そして俺の首に回していた腕の力も抜けてしまったのか上体が倒れそうになった。すると、丸で崖から落ちる途中に必死で枝にでも掴まるかのように、体を捕まえていた俺の腕の上腕にしがみ付いた。
「んっ……………はぁ…ハァ…ハァ…」
やがてしがみ付く力がほんの数秒強くなって、腰を後ろに突き出し、水中から上がったように呼吸した。
「イッたのか…？」
「た…多分…。…何だか…飛びそうになった…」
「…それじゃ…」
「ふぁっ、な、何をっ…？」
俺はその場に座り込んでいるティオを抱き上げた。そしてソファーに寝かせると、脚を開かせてその間に俺は座った。
「な、ナナナナナッ…！」
「へぇ〜、こうなってるのか…」
「み、見るなっ、バカ！アホ！戯け！変態！」
「わっ、ま、いって…痛っ、痛ーっ」
ティオは蹴るやら尻尾で叩くやら大変だった。俺は蹴りの猛襲をかいくぐり、彼女に覆い被った。
「…痛ぇじゃねぇかこの野郎…」
「…それはお前がんっ…」
俺はティオの大きな胸を服の上から掴んで、優しく揉みほぐした。
「あんっギルッ…待って…」
俺は胸から手を離して、ズボンを下ろすとモノを取り出した。先端を彼女の秘部に擦りつけると彼女は少し腰を引いた。
「やっぱり怖いか？」
「こ、怖くなど…なぃ」
「語尾が弱いぞぉ」
「五月蠅いっ！…い、入れるなら早く入れろ…」
強がっちゃって、言ったのはお前だぞ…っと。
「うあっ…！」
先端が少し入るとティオは驚いて覆い被さっていた俺に抱きついた。
「続けていい？」
「い、良いぞ…」
俺は少しずつ進入させた。
「あ…ああっ…痛っ…」
「おい、無理すんなよ？」
「はぁはぁ…へ、平気…だ…」
「…分かった」
俺は更に入れて全部入れ終えた。さすがに締め付けがキツいが、だがその感覚が何とも言えなかった。
「全部入ったぞ…」
「〜〜〜〜〜っ、はぁ、はぁ…」
俺は何も言わずに腰をゆっくり動かした。
「うぁっ！…いっ…まっ…て」
最初は痛がっていたが、暫くすると『喘ぎ』が混ざって聞こえるようになった。
「あんっ…あっ…あっ…んんっ…ダメッ…！」
抱きしめる力が一段と強くなって、また、下の締め付けも強くなった。さすがは魔物と言うべきか、快感が痛みに取って代わるまでが早いらしい。
「あんっ…あんっ…あんっ…あっ…またぁ…イっちゃうぅ…」
「…どうぞ…ご遠慮なく…俺ももうチョイなんでね…」
いかん、もう止まらねぇ、気持ちよすぎだって。つーか何かティオからいい匂いがして余計に興奮すんのよねぇ。
「あぁっ…もう…あっ………！」
彼女の体と中が痙攣してすぐに俺にも快感の大波が到達した。
「俺も…っ…」
ドクドクと音を立てるように彼女の中に、俺は精を注ぎ込んだ。
「はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ…」
俺とティオはその汗ばんだ体を重ね、息を荒くしたまま暫く呆けていた。やがて俺は彼女の中からまだ固いままのソレを抜いた。
「ひゃんっ…！」
「………」
ティオの奴、俺が服を着直してからずっと黙りこくっている。
「…なんか喋れよ…」
「…人でなし…」
「はぁ？」
「…ずっと手を抜いていたのだろ…剣術の勝負のとき」
「…あぁ、悪かったよ…」
「…この人でなしっ！ろくでなしっ！」
ティオはその辺にあった本やら何やかんやを俺に向かって投げつけた。
「わっ、ちょっ、待てっ、あぶなっ、たんまっ！」
「はぁ…はぁ…ギルス、なんで隠してた？訳を話せ…」
「…だってお前が要求するのが朝っぱらの俺がまだ『低血圧』から抜けきってない時だし、それに腹も減ってるし…」
「それで技と負けて楽に早く済ませようと思ったんだな…？」
正解、図星、その通り。なんだけど、分かってるならなんで誘ったのさ、それも無理矢理。
「そういうことだ…」
「はぁ〜」
ティオは溜息をつくと再びソファーに座って膝に頬杖を付いた。
「…悪かった…」
「へ？」
「…悪かった、その…無理矢理付き合わせて…でも…だってそうじゃなきゃ、お前の顔見る尤もな理由がなくなっちゃうんだもんっ…！」
ティオの口調がいつもの騎士っぽいものじゃなく、普通の、どちらかと言えば幼そうな口調になったことに俺は驚いた。いや、そもそもこれが彼女の本質といえるのか…
そもそも俺の顔を見る尤もな理由って、なんで俺の顔なんか？
「どゆこと？」
「だってギルス、いっつも部屋に籠もってて顔なんか滅多に見せないし、森の奥に魔草取りに行ってて留守だったりするし…そんなの病気だったって、怪我してたってわかんないじゃない！？」
「なんでそこまで…」
「私がギルスの幼なじみで、よく知ってて、私があなたのこと好きって理由じゃ足らないわけっ？！」
俺は言葉が出なくなった。その、彼女の気に押されたのもそうだが、彼女の発した言葉の意味を理解できたからだ。そして余りに予想もしていなかったからだ。
俺は冷静になって言葉を取り戻した。
「…いや、十分だな…こっちこそ悪かったな、心配掛けてて…」
「べ、別に心配などしていない…ただ、気に掛かっていただけだ…」
俺の顔を見た途端、彼女はいつものような口調でハッとしたようにそう言った。
どっちだよ、と突っ込みたくなった。だがティオの性格を知っている俺は、ただ微笑んでいた。
「…それに、私を勝負で負かした上にあんなに注いで…分かっているだろうな？」
おっと…そういえば彼女リザードマンだったんだっけぇ…？リザードマンってあれだよね、勝負で自分に勝った男を夫にするんだっけ。
「夫になれって？」
「そうだ、分かっているではないか。話が早い」
「ちょっと待て…」
「…なんだ、私じゃ不服だというのか？」
「いいや、そんなことはない、そんなことはないが…俺の嫁になる理由は『俺が勝負で勝った』からか？それとも『お前が俺を好きだった』からか？」
俺はにやっとして訊いてみた。予想通り、自分のさっきの素のセリフを思い出して恥ずかしくなってきたのか、見る見る顔が赤くなってゆく。
「…そ、そ、そ、それは…………が……から…」
「ん？なんだって？」
「それは、お、お前が勝負に勝ったからに決まっているっ…」
嘘だね、さっき自分で言ってたし、それにティオは自分じゃ気付いてないかもしれないけど、そういう嘘付くとティオは尻尾を右向きに巻いちゃうんだよねぇ。
「本当かぁ〜？」
「ほ、ほんとうだ…」
「じゃあなんで目を反らすんだ？ん？」
「うっ…」
「ほれほれ、言うてみぃ」
「っ〜〜〜〜、………ぎ、ギルスのことが…む、昔から…好きだった…から…」
「そうそう、素直が一番っ」
「うぅ〜〜〜〜」
「おいおい、なんだ？まさか恥ずかしくて泣きそうか？」
「ち、違うっ…！」
「…強がんなって、これからは横でも前でも後ろでも、どこでも側に居てやんだからよ…な？」
「五月蠅いっ、私は恥ずかしくて泣きそうになんかなってない……嬉しくて…泣きそうなんだっ…」
お、まさかこんなこと言うとはねぇ。ちょっとは素直になったかな、このトカゲっ娘はよ…
10/04/07 04:55更新 / アバロン