妹彼女
僕は家の鍵を開けて靴を脱いで階段を上がり、自分の部屋の扉を開けると茶色の革鞄をその辺に投げ捨て、学生服の細いネクタイを緩めた。
僕は今年の春に魔術学校に入学して結構良い学生生活を送っている。
魔法学校は将来、騎士や冒険家になりたい人が入る学校。年齢制限は特にないから同じクラスに年下や年上の人もいる。だけどみんな年齢は関係なく仲がいい。
僕の生まれはジパングだけど、今は親魔物領の一つ、クロウーズ領に住んでいる。
僕は椅子に座って、鞄から取り出していたノートを開いた。レポートを書いて明後日までに提出するんだ。レポートは、今日実践した魔法の感想やコツを書くだけなんだけど、何せ量がね…
キィィ…
僕は後ろのとが開くのを感じた。僕の家は一階がリビングキッチンで二階に四つ部屋があって実際に使っているのはここともう一つ隣の部屋。多分このあと僕は後ろから―
「コーロンッ!」
予想通り抱きつかれた。金色の毛と尖った耳が俺の顔の横にあった。
「…ユウコ、見れば分かるだろ?僕は今忙しいんだ…」
ユウコは魔物『稲荷』で僕が七歳の時にウチにやってきた。彼女の親が病で亡くなり、ウチの両親が引き取った。その時彼女は五歳だった。
それから僕とユウコは丸で兄妹のように育ってきたが血のつながりがないことは二人とも当然分かっていた。ちなみに二人の名前は漢字表記にすると僕が『猴龍』、彼女は『侑狐』になる。
元々僕だけが親元を離れて住むつもりだったけど、彼女が我が儘を言って付いてきたんだ。
ユウコは良く僕に後ろから抱きついてくる。ソファーに座っている時、今みたいに椅子に座っている時、本を読んでいる最中…
僕が小さい時に彼女が僕に抱きついて驚かせたのが事の発端だった。それから彼女は僕を驚かせようとして抱きついてくるんだ。
「ねぇ、遊ぼうよコーロン」
「だめだよ。僕は今からこのレポートを片づけないといけないんだから…」
僕は彼女をたしなめた。
「え〜ぇ…じゃあお腹空いた。油揚げの肉詰めと枝豆食べた〜い」
「その『じゃあ』ってなんだ、『じゃあ』って…つーか、油揚げの肉詰めはいいとしてっ、枝豆ってなんだ枝豆って!お前完全に酒飲む気だろっ!」
ユウコは無類の酒好きで今はジパング地方の酒に凝っている。だからそれに合う枝豆を注文したわけだ。人間は二十からだが、魔物は十歳を過ぎれば飲酒は認められている。だから別に飲むなと言う訳じゃないが、限度という物がある。
「ダメ〜?」
「当たり前だろッ!あんたは気付けば一升瓶三本は軽く開けて『後始末』が大変なんだから!」
「だって、コーロンが遊んでくれないんだもん…じゃあお酒の無しかないじゃない?」
「じゃない?じゃないっ!お前は僕と遊ぶかお酒飲むかしかないのかっ!?」
「遊んでよーー、じゃなきゃお酒飲ーみーたーいーっ!」
「子供かっ!」
ほんとに子供みたいにわめいている。もうこうなったら知らん振りしかない。僕が机に向かってペンを持つとユウコはわめくのをやめた。ようやく諦めたか…と思った時だった。
「えいっ!」
「なっ!?」
僕の視界が突然霞んだ。掛けていた眼鏡を取られて僕の視界はとてつもなく抽象的になった。
「遊んでくれないなら眼鏡返さないもんねーッ」
「な、おい」
ユウコは稲荷にしてはお転婆というか我が儘というか。何にしても眼鏡を取り返してレポートを終わらせたい。
「…わかったよ、ユウコ」
「ホントッ?遊んでくれるの?!」
「ああ、向こうを向いて立ってみて」
「何々?新しい遊び?」
僕は彼女と遊ぶ振りをして彼女を後ろ向かせた。ユウコは不思議そうに後ろを向いて、その尻尾を左右に振っている。
僕はそっと彼女を後ろに立つと、彼女に『膝かっくん』をした。
「きゃっ」
彼女はそのままその場に座り込んで、僕は彼女の二本の尾の上に押さえるように座った。
「ひあぁんッ」
彼女は喘ぎを上げて背筋をピンと伸ばして顔を頬を赤くした。
「眼鏡返す?それとも夜までこのままがいい?」
「か、返すからどいて…」
僕は眼鏡を取り上げて彼女の尻尾から立ち上がり、眼鏡を掛けた。視界が戻って僕は溜息をついた。
「まぁ、今度いい奴(酒)買ってきてやるから」
「ホントッ!?わーい、じゃあその時はサカナもよろしくね」
「…わかったわかった…」
僕は手を額に当ててそう言った。稲荷ってこんな魔物だったっけ?違うよな…
その週の休み、僕はユウコに引っ張られて町中に出ていた。彼女は細身のジーンズとヘソ出しで長袖の華美な柄の服を着て、今僕の目の前を上機嫌で歩いている。
僕は彼女の後ろを歩きながら思った。彼女の後ろ姿が大人っぽく、そして色気を漂わせるようになった。幼い頃を知っている僕だからそう思うのかもしれない。
「マスタ〜、こんにちわ〜」
彼女の挨拶は語尾に向かって上がっていた。よほど機嫌がいいみたいだ。
「ユウコちゃん、いらっしゃい。そっちの人は彼氏さんかい?」
「やだ、違うよ。血は繋がってないけどお兄ちゃんみたいなもんだから」
「コーロンです。よろしく」
「ここのマスターだ。コーロンくんね、よろしく」
マスターは俺に向かって手招きした。ユウコはお酒を選ぶので忙しいようだ。もう少しで音符が見えてきそうな感じ。
僕はマスターの側まで行った。するとマスターは小さな声でこう言った。
「あんたも大変だな…」
「ええ、まぁ…このあとまた薬局に行くんです…」
「コーロン、これ買ってー!」
ユウコはどうやらいいものを見つけたらしい。俺は値札を見た…
「んなっ…」
あほだ…絶対ユウコはあほだっ!こんな値段の酒買えるかっ!
「一応訊きます。ユウコ…数字読めますか?」
「うん」
「じゃあ言わせてもらうけど……お前はあほか!こんなに金あるかっ!今月の生活費どうすんだっ!!」
「えぇと……」
「えっとじゃねぇよ」
「…まぁまぁ、いつも買っていってくれるし今回は三割まけにしとくよ」
俺はかかとで回った。
「ホントですかっ!?ありがとうございます!」
この人はホントにいい人だ。このじゃじゃ馬…というかじゃじゃ狐がそんな善意のこもったお高い酒を二日も待たずに飲んでしまうかと思うと…涙が出てくる。
僕とユウコはその帰りに薬局により薬を買って、テラスのある店で昼食を食べていた。彼女はミートボールスパゲティをほっぺにケチャップを付けながら食べている。僕はフライドポテトを少しずつ食べている。
「おっ」
ユウコが何かをみつけたらしい。ユウコの視線の先を見ると、店の正面にあるギルドの依頼表を見ていた。彼女は突然立ち上がるとその依頼表をマジマジと見て勝手にカウンターに行った。
「誰が受けるんだい?」
「あそこでポテト食べてる彼よ」
「本当かい?あんな少年が?」
「大丈夫よ、ああ見えても彼魔法学校に通ってるの」
「じゃ、受託成立だね」
「ブーーッ(コーヒー吹いた)。ユウコッ!お前勝手に何してんだっ!」
ユウコはしれっとした顔で「仕事もらってきたのよ」といった。
「お前、何でそんな勝手にっ!」
「だって今月ヤバいんでしょ?じゃああのいい値の依頼を受けないわけにはいかないじゃない?」
「くぅ………どんな依頼だっ!?」
俺は依頼内容だけでも聞くことにした。受けるかどうかはそれからだ。実際そうでもしないと今月危ないし。
「えとね…『盗賊団をぶっつぶせー』って感じ」
「なんだそりゃ!?」
まぁどうせ盗賊団討伐って感じだろうし、そんなのは何回かこなしたから今回も何とかなるだろう。
「まぁまぁ、ひっさしぶりに『アレ』も使えるんだし良いじゃん」
「…しょうがない。で、いつからなんだ?」
「んとねぇ…今」
「今からかよっ!」
僕は今制服姿で町の外いる。それも盗賊団のアジトの真ん前…に今着こうとしてる。なぜ制服かというと『動きやすくて丈夫』だから。
「ん?…なんだ、ボウズ」
「道にでも迷ったのか、…もしそうだとしたら二度目の不幸だぜ。俺たちゃ盗賊団だぜ?『ハルバン盗賊団』、こっちじゃ最強最悪の盗賊団よぅ…」
…はぁ…アホらし。何でこんなヘッポコの軽口に付き合わなきゃならないんだ?
「ああ、自分で最強なんて言うって事は『実は弱いフラグ』だったりするんですけど」
「テッメェ!」
見張りの一人が僕に近づいて刀を押し当てた。単純に押し当てただけだから切れてはいない、単純な脅しだね。
「ああ…僕一応ギルドで依頼受けてるんで」(無理矢理ですけど…)
「テメェみていなガキがうっ―」
僕はいい加減面倒になって顔面を殴った。彼は顔を押さえて後ろに何歩か下がって
「このっ!」
って言って刀を振り上げた。あんまり胴体ががら空きなもんだから、僕はつい『武器』で胴体を一突きした。
彼は無言でその場に倒れた。血は出てないよ、だってこれ『打突武器』だからね。
「お前、それどっから出した…?!」
「ああ、これ?これ魔力である程度大きさ調節できるんですよ。うちの家系に伝わってた武器なんですけどね。『如意金箍棒(にょいきんこぼう)』って言うんだ…」
昔、猿の姿の神が使ったとされる武器らしいんだけど、ホントの所は分からない。でも見た目の三倍以上の重さで、小さい頃から遊んでなかったら使いこなせてなかったと思う。
とか言ってたら、盗賊の方々がお出まし…ざっと二十人くらい。
「コラ、ガキィ…生きて帰れると思うなヨォ、ケツの毛までむしってやるゼ」
アレが首領だな。下品な物言いだよ、いかにも盗賊って感じだね。
「…出来れば、ドン以外は引っ込んでいて欲しいんだけど。雑魚をいくら相手したってしょうがないから」
「何だとコラァ」
「ガッハッハッハッハッ、威勢のいいクソ虫だな。いいだろう、テメェ等手ぇだすなよ。どうせ一瞬だ」
首領は大斧を振りかぶった。
「でぇやぁぁっ!」
その一降りは豪快、且つ食らうのは遠慮したい高威力のようだ。だけど、リーチは分かりやすい上に、タイミングも掴みやすい。
僕はサラリとかわして、大男の後ろに回り込んだ。振り返り様に彼が斧を振ってきたが、僕はその素振りを読んで如意棒を体の右側に立てていた。
ギャンという音がして、衝撃はかなり弱まって伝わった。
「一瞬じゃなかったんですか?」
「おめぇ、俺の一撃を受けて平気なのか?!」
「まぁ、ね」
その後彼は大斧を、重さを感じさせない様な速さで振り回した。それを僕は回避し、防御した。
「ちぃっ、猿みたいにすばしっこい奴だなっ!おいっ!」
彼が命令すると僕の体を手下が押さえた。こう来るとは思ってたよ。
「そのまま押さえてろよぉっ!」
彼が斧を振り上げた。
「…火襲(クヮシフ)」
両側の二人は後ろに吹き飛んだ。僕の魔術の作用だ、僕の掌から出た火球は二人の腹部に当たって弾け、その衝撃が二人を吹き飛ばした。死んではいないだろう。
「風蹴(フシュク)」
僕は斧を横に跳んで回避して『空中』を蹴って大男の後ろに立った。
「…魔術か」
「まあね。さっきあなたは『猿みたいな奴』って言いましたね?」
「ああ、だから何だ!?」
「じゃあ、今度は何に見えるんでしょうね」
僕は如意棒を掌二つ分くらいの長さまで縮め、そして眼鏡を外して胸のポケットに刺した。
僕の今の視界を一言で言うなら…よく見えますよ。それも見えすぎるくらいに、ね。
僕は今魔術を使っている。そして、この如意金箍棒の『使い方の一つ』を使おうとしている。
「何だ、そりゃぁ…?」
「どっちのことかな…?目?それとも―『刀』?」
如意棒は今『打突武器』から『裂断武器』に変わった。如意棒の一方から金色の『八卦刀』の様な形の刀身が延びている。しかし大きさはそれよりも短めだろう。
「如意型・壱式 金箍龍刀(ロンタウ)」
如意棒は八つの形に変わる。その変形を如意型、零式が『杖・金箍棒』、壱式は『金箍龍刀』だ。
「これで…終演だ…」
蹴られる土、振り下ろされる斧、空を切る音、そして飛ぶ鮮血。
「うがっ…」
僕の前には首領が倒れている。当然僕が倒した、十秒足らずで。僕は彼に近づいてもう一度訊いた。
「…今は何に見える?」
今僕の体を如意棒の魔力が取り巻いている。その形は…
「…龍…か…っ!?」
その魔力は金色の光を放っていた。
「はっははは!おいしいこのお酒っ!」
「はぁ…」
僕は家のソファーに寝そべっておちょこを持っている侑狐を見て、僕はアテを運びながら溜息をついた。
「あ、どこ行くのよ、コーロン…」
アテを置いて二階に上がろうとする僕に侑狐が訊いた。
「寝るんですよ。今日は疲れたから…」
「おやすみー」
「ハイハイ、おやすみっ…」
今日は朝から彼女の買い物に付き合った上に午後は盗賊退治、その上あの魔術も使った。あの魔術とは『獣斉眼(ジウサイガン)』といって、ウチの家系の者ならまず使える魔術だ。
獣と等(斉)しい目になる魔術。瞳は金色に輝き、視力は数倍、動体視力も瞬間視も周辺視野も数倍から十数倍上がるが、魔力を多量に使うために、多様、長時間の使用は危険だ。
だから僕は今こんなに疲れている。僕は部屋にはいると、ベッドに倒れ込んだ。
一時間ぐらいしてからだ、侑狐が上がってきたみたいだった。
「コゥローン、何してーんのー?」
寝てるんだよ。いや、寝てたんだよっ!起きちゃったよ、もう。見りゃわかるだろ?!こいつ、完全に酔っぱらってるな…
とか思ってると侑狐はベッドに腰掛けた。ベッドのへこむ感触が伝わってきて、次に侑狐の細い指が寝た振りをしている僕の顔を撫でた。
「…いつも…ありがとね」
僕は少し驚いた。どうせまた頓珍漢なことを言うんだろう思っていたから。
「…我が儘ばっかり言って…でも全部聞いてくれて。小さい時はさぁ、兄妹みたいで良かったけど…今はそれだけじゃ嫌なんだぁ。でもコーロンは、私を彼女としては意識してくれないよね…」
僕は次の瞬間にベッドの上に彼女を押し倒して、その両腕を押さえ彼女の上に乗っていた。
「そんな訳ないだろ」
「えっ…起きてたの…?」
「お前の馬鹿笑いで起こされたんだ」
「今の…どういう意味?」
「…お前を彼女として意識できない訳ないだろ」
「ん―」
僕は彼女の口を塞いだ。今までに近づいたことが無い程に顔が近い、彼女は目を瞑っていた。
僕は彼女の黒と赤い花柄の着物の襟を持ってゆっくりと広げた。そして彼女の素肌に直接触れ、背中まで手を回し抱き上げた。
「んっ、んん―」
背中に手を回すまで、そして背中をなぞられたせいで侑狐は声を出しながら自由になった手で僕を抱きしめた。
「んはぁ…コゥ…ロン…」
「…ユウコ…僕は、俺はお前が好きだ―」
「…うん…私も…優しくして…」
「ああ、もちろん」
僕は彼女の胸を人差し指で渦を書くようになぞり、固くなった乳首をつまんだ。
「あんっ―」
次に僕は彼女のボディラインをなぞりながら、彼女をゆっくり寝かせて顔を下部へ移動させた。そして着物の中へ顔を入れると彼女の脚をM字に広げて、秘部に下を沿わせた。
もう既にそこは充分以上に濡れていて、ネットリとした粘液の感触が下に伝わる。
「んあっ、あっ、あんっ―はぁんっ―!」
彼女は僕の下が動くたびに喘ぎ声を上げて体を震わせた。そして僕は思わず彼女の敏感な部分を見つけた。
尻尾の付け根の下。そう言われればそうだろうけど、なかなか気付かないような場所でもある。そこに片方の手の指が触った時、侑狐は一躍大きな反応をした。
僕は暫く愛撫し続け、彼女の息が荒くなって来たので彼女の着物の帯を解いて、着物を完全に脱がせた。そして自分も素早く服を脱いで彼女に被さった。
「綺麗な体だ…」
「あなたも…逞しい体…」
俺はその透き通るような素肌に少し見とれた。そしてその未開のワレメに僕の固くなったものを少しずつゆっくりと入れ始めた。着物を脱がせたのは血で汚さないため。必ずしも出血するとは限らないけれど、一応は無難だ。
「うっ…んんっ―」
「…痛い?」
「少しだけ…んっ…あんっ…」
全部入った。どうやら血は出ていないらしい。僕はゆっくりと腰を動かし、侑狐は喘ぎながら僕の背中に手を回した。
どんどん声が大きくなって、抱きしめる力も強くなっていき、そして彼女は息が詰まったかのように声を止め、体を震えさせた。僕は締め付けが少し強うなったのを感じ、また緩んだ。緩んだと言っても実際きつめだけど。
「ハァ…ハァ…ンッ、アッ―」
「次は僕が気持ちよくなるまで付き合ってもらうよ…」
「いいわよ…んあっン…」
何かが沸き上がるような感じだ、尿意にも似ているがそれとはまた違う。僕はまた何分か腰を動かしていた。
「コーロンッ…またッ…私ッ」
「いいよ…僕もそろそろだしね…うっ…」
「んっ―――んはっ…はぁ…はぁ…子供…出来ちゃうかもね…」
「…来年になれば一緒になれるよ」
「うんっ」
それから暫く立って、ユウコはまたあの酒が欲しくなったと言って買い物に付き合わされることになった。
「やぁ、いらっしゃい」
「あのお酒ある?」
「あるよ、今日もお兄さんと一緒か」
「…マスター、もうお兄ちゃんじゃないわ」
「ああ、ユウコももう妹じゃない…正真正銘の彼女、ですよ」
僕はユウコにキスをした―
マスターはお祝いだと言って今度は半額であのお酒をくれた。今夜はまた大変だよ、後始末と『お相手』でさ。
僕は今年の春に魔術学校に入学して結構良い学生生活を送っている。
魔法学校は将来、騎士や冒険家になりたい人が入る学校。年齢制限は特にないから同じクラスに年下や年上の人もいる。だけどみんな年齢は関係なく仲がいい。
僕の生まれはジパングだけど、今は親魔物領の一つ、クロウーズ領に住んでいる。
僕は椅子に座って、鞄から取り出していたノートを開いた。レポートを書いて明後日までに提出するんだ。レポートは、今日実践した魔法の感想やコツを書くだけなんだけど、何せ量がね…
キィィ…
僕は後ろのとが開くのを感じた。僕の家は一階がリビングキッチンで二階に四つ部屋があって実際に使っているのはここともう一つ隣の部屋。多分このあと僕は後ろから―
「コーロンッ!」
予想通り抱きつかれた。金色の毛と尖った耳が俺の顔の横にあった。
「…ユウコ、見れば分かるだろ?僕は今忙しいんだ…」
ユウコは魔物『稲荷』で僕が七歳の時にウチにやってきた。彼女の親が病で亡くなり、ウチの両親が引き取った。その時彼女は五歳だった。
それから僕とユウコは丸で兄妹のように育ってきたが血のつながりがないことは二人とも当然分かっていた。ちなみに二人の名前は漢字表記にすると僕が『猴龍』、彼女は『侑狐』になる。
元々僕だけが親元を離れて住むつもりだったけど、彼女が我が儘を言って付いてきたんだ。
ユウコは良く僕に後ろから抱きついてくる。ソファーに座っている時、今みたいに椅子に座っている時、本を読んでいる最中…
僕が小さい時に彼女が僕に抱きついて驚かせたのが事の発端だった。それから彼女は僕を驚かせようとして抱きついてくるんだ。
「ねぇ、遊ぼうよコーロン」
「だめだよ。僕は今からこのレポートを片づけないといけないんだから…」
僕は彼女をたしなめた。
「え〜ぇ…じゃあお腹空いた。油揚げの肉詰めと枝豆食べた〜い」
「その『じゃあ』ってなんだ、『じゃあ』って…つーか、油揚げの肉詰めはいいとしてっ、枝豆ってなんだ枝豆って!お前完全に酒飲む気だろっ!」
ユウコは無類の酒好きで今はジパング地方の酒に凝っている。だからそれに合う枝豆を注文したわけだ。人間は二十からだが、魔物は十歳を過ぎれば飲酒は認められている。だから別に飲むなと言う訳じゃないが、限度という物がある。
「ダメ〜?」
「当たり前だろッ!あんたは気付けば一升瓶三本は軽く開けて『後始末』が大変なんだから!」
「だって、コーロンが遊んでくれないんだもん…じゃあお酒の無しかないじゃない?」
「じゃない?じゃないっ!お前は僕と遊ぶかお酒飲むかしかないのかっ!?」
「遊んでよーー、じゃなきゃお酒飲ーみーたーいーっ!」
「子供かっ!」
ほんとに子供みたいにわめいている。もうこうなったら知らん振りしかない。僕が机に向かってペンを持つとユウコはわめくのをやめた。ようやく諦めたか…と思った時だった。
「えいっ!」
「なっ!?」
僕の視界が突然霞んだ。掛けていた眼鏡を取られて僕の視界はとてつもなく抽象的になった。
「遊んでくれないなら眼鏡返さないもんねーッ」
「な、おい」
ユウコは稲荷にしてはお転婆というか我が儘というか。何にしても眼鏡を取り返してレポートを終わらせたい。
「…わかったよ、ユウコ」
「ホントッ?遊んでくれるの?!」
「ああ、向こうを向いて立ってみて」
「何々?新しい遊び?」
僕は彼女と遊ぶ振りをして彼女を後ろ向かせた。ユウコは不思議そうに後ろを向いて、その尻尾を左右に振っている。
僕はそっと彼女を後ろに立つと、彼女に『膝かっくん』をした。
「きゃっ」
彼女はそのままその場に座り込んで、僕は彼女の二本の尾の上に押さえるように座った。
「ひあぁんッ」
彼女は喘ぎを上げて背筋をピンと伸ばして顔を頬を赤くした。
「眼鏡返す?それとも夜までこのままがいい?」
「か、返すからどいて…」
僕は眼鏡を取り上げて彼女の尻尾から立ち上がり、眼鏡を掛けた。視界が戻って僕は溜息をついた。
「まぁ、今度いい奴(酒)買ってきてやるから」
「ホントッ!?わーい、じゃあその時はサカナもよろしくね」
「…わかったわかった…」
僕は手を額に当ててそう言った。稲荷ってこんな魔物だったっけ?違うよな…
その週の休み、僕はユウコに引っ張られて町中に出ていた。彼女は細身のジーンズとヘソ出しで長袖の華美な柄の服を着て、今僕の目の前を上機嫌で歩いている。
僕は彼女の後ろを歩きながら思った。彼女の後ろ姿が大人っぽく、そして色気を漂わせるようになった。幼い頃を知っている僕だからそう思うのかもしれない。
「マスタ〜、こんにちわ〜」
彼女の挨拶は語尾に向かって上がっていた。よほど機嫌がいいみたいだ。
「ユウコちゃん、いらっしゃい。そっちの人は彼氏さんかい?」
「やだ、違うよ。血は繋がってないけどお兄ちゃんみたいなもんだから」
「コーロンです。よろしく」
「ここのマスターだ。コーロンくんね、よろしく」
マスターは俺に向かって手招きした。ユウコはお酒を選ぶので忙しいようだ。もう少しで音符が見えてきそうな感じ。
僕はマスターの側まで行った。するとマスターは小さな声でこう言った。
「あんたも大変だな…」
「ええ、まぁ…このあとまた薬局に行くんです…」
「コーロン、これ買ってー!」
ユウコはどうやらいいものを見つけたらしい。俺は値札を見た…
「んなっ…」
あほだ…絶対ユウコはあほだっ!こんな値段の酒買えるかっ!
「一応訊きます。ユウコ…数字読めますか?」
「うん」
「じゃあ言わせてもらうけど……お前はあほか!こんなに金あるかっ!今月の生活費どうすんだっ!!」
「えぇと……」
「えっとじゃねぇよ」
「…まぁまぁ、いつも買っていってくれるし今回は三割まけにしとくよ」
俺はかかとで回った。
「ホントですかっ!?ありがとうございます!」
この人はホントにいい人だ。このじゃじゃ馬…というかじゃじゃ狐がそんな善意のこもったお高い酒を二日も待たずに飲んでしまうかと思うと…涙が出てくる。
僕とユウコはその帰りに薬局により薬を買って、テラスのある店で昼食を食べていた。彼女はミートボールスパゲティをほっぺにケチャップを付けながら食べている。僕はフライドポテトを少しずつ食べている。
「おっ」
ユウコが何かをみつけたらしい。ユウコの視線の先を見ると、店の正面にあるギルドの依頼表を見ていた。彼女は突然立ち上がるとその依頼表をマジマジと見て勝手にカウンターに行った。
「誰が受けるんだい?」
「あそこでポテト食べてる彼よ」
「本当かい?あんな少年が?」
「大丈夫よ、ああ見えても彼魔法学校に通ってるの」
「じゃ、受託成立だね」
「ブーーッ(コーヒー吹いた)。ユウコッ!お前勝手に何してんだっ!」
ユウコはしれっとした顔で「仕事もらってきたのよ」といった。
「お前、何でそんな勝手にっ!」
「だって今月ヤバいんでしょ?じゃああのいい値の依頼を受けないわけにはいかないじゃない?」
「くぅ………どんな依頼だっ!?」
俺は依頼内容だけでも聞くことにした。受けるかどうかはそれからだ。実際そうでもしないと今月危ないし。
「えとね…『盗賊団をぶっつぶせー』って感じ」
「なんだそりゃ!?」
まぁどうせ盗賊団討伐って感じだろうし、そんなのは何回かこなしたから今回も何とかなるだろう。
「まぁまぁ、ひっさしぶりに『アレ』も使えるんだし良いじゃん」
「…しょうがない。で、いつからなんだ?」
「んとねぇ…今」
「今からかよっ!」
僕は今制服姿で町の外いる。それも盗賊団のアジトの真ん前…に今着こうとしてる。なぜ制服かというと『動きやすくて丈夫』だから。
「ん?…なんだ、ボウズ」
「道にでも迷ったのか、…もしそうだとしたら二度目の不幸だぜ。俺たちゃ盗賊団だぜ?『ハルバン盗賊団』、こっちじゃ最強最悪の盗賊団よぅ…」
…はぁ…アホらし。何でこんなヘッポコの軽口に付き合わなきゃならないんだ?
「ああ、自分で最強なんて言うって事は『実は弱いフラグ』だったりするんですけど」
「テッメェ!」
見張りの一人が僕に近づいて刀を押し当てた。単純に押し当てただけだから切れてはいない、単純な脅しだね。
「ああ…僕一応ギルドで依頼受けてるんで」(無理矢理ですけど…)
「テメェみていなガキがうっ―」
僕はいい加減面倒になって顔面を殴った。彼は顔を押さえて後ろに何歩か下がって
「このっ!」
って言って刀を振り上げた。あんまり胴体ががら空きなもんだから、僕はつい『武器』で胴体を一突きした。
彼は無言でその場に倒れた。血は出てないよ、だってこれ『打突武器』だからね。
「お前、それどっから出した…?!」
「ああ、これ?これ魔力である程度大きさ調節できるんですよ。うちの家系に伝わってた武器なんですけどね。『如意金箍棒(にょいきんこぼう)』って言うんだ…」
昔、猿の姿の神が使ったとされる武器らしいんだけど、ホントの所は分からない。でも見た目の三倍以上の重さで、小さい頃から遊んでなかったら使いこなせてなかったと思う。
とか言ってたら、盗賊の方々がお出まし…ざっと二十人くらい。
「コラ、ガキィ…生きて帰れると思うなヨォ、ケツの毛までむしってやるゼ」
アレが首領だな。下品な物言いだよ、いかにも盗賊って感じだね。
「…出来れば、ドン以外は引っ込んでいて欲しいんだけど。雑魚をいくら相手したってしょうがないから」
「何だとコラァ」
「ガッハッハッハッハッ、威勢のいいクソ虫だな。いいだろう、テメェ等手ぇだすなよ。どうせ一瞬だ」
首領は大斧を振りかぶった。
「でぇやぁぁっ!」
その一降りは豪快、且つ食らうのは遠慮したい高威力のようだ。だけど、リーチは分かりやすい上に、タイミングも掴みやすい。
僕はサラリとかわして、大男の後ろに回り込んだ。振り返り様に彼が斧を振ってきたが、僕はその素振りを読んで如意棒を体の右側に立てていた。
ギャンという音がして、衝撃はかなり弱まって伝わった。
「一瞬じゃなかったんですか?」
「おめぇ、俺の一撃を受けて平気なのか?!」
「まぁ、ね」
その後彼は大斧を、重さを感じさせない様な速さで振り回した。それを僕は回避し、防御した。
「ちぃっ、猿みたいにすばしっこい奴だなっ!おいっ!」
彼が命令すると僕の体を手下が押さえた。こう来るとは思ってたよ。
「そのまま押さえてろよぉっ!」
彼が斧を振り上げた。
「…火襲(クヮシフ)」
両側の二人は後ろに吹き飛んだ。僕の魔術の作用だ、僕の掌から出た火球は二人の腹部に当たって弾け、その衝撃が二人を吹き飛ばした。死んではいないだろう。
「風蹴(フシュク)」
僕は斧を横に跳んで回避して『空中』を蹴って大男の後ろに立った。
「…魔術か」
「まあね。さっきあなたは『猿みたいな奴』って言いましたね?」
「ああ、だから何だ!?」
「じゃあ、今度は何に見えるんでしょうね」
僕は如意棒を掌二つ分くらいの長さまで縮め、そして眼鏡を外して胸のポケットに刺した。
僕の今の視界を一言で言うなら…よく見えますよ。それも見えすぎるくらいに、ね。
僕は今魔術を使っている。そして、この如意金箍棒の『使い方の一つ』を使おうとしている。
「何だ、そりゃぁ…?」
「どっちのことかな…?目?それとも―『刀』?」
如意棒は今『打突武器』から『裂断武器』に変わった。如意棒の一方から金色の『八卦刀』の様な形の刀身が延びている。しかし大きさはそれよりも短めだろう。
「如意型・壱式 金箍龍刀(ロンタウ)」
如意棒は八つの形に変わる。その変形を如意型、零式が『杖・金箍棒』、壱式は『金箍龍刀』だ。
「これで…終演だ…」
蹴られる土、振り下ろされる斧、空を切る音、そして飛ぶ鮮血。
「うがっ…」
僕の前には首領が倒れている。当然僕が倒した、十秒足らずで。僕は彼に近づいてもう一度訊いた。
「…今は何に見える?」
今僕の体を如意棒の魔力が取り巻いている。その形は…
「…龍…か…っ!?」
その魔力は金色の光を放っていた。
「はっははは!おいしいこのお酒っ!」
「はぁ…」
僕は家のソファーに寝そべっておちょこを持っている侑狐を見て、僕はアテを運びながら溜息をついた。
「あ、どこ行くのよ、コーロン…」
アテを置いて二階に上がろうとする僕に侑狐が訊いた。
「寝るんですよ。今日は疲れたから…」
「おやすみー」
「ハイハイ、おやすみっ…」
今日は朝から彼女の買い物に付き合った上に午後は盗賊退治、その上あの魔術も使った。あの魔術とは『獣斉眼(ジウサイガン)』といって、ウチの家系の者ならまず使える魔術だ。
獣と等(斉)しい目になる魔術。瞳は金色に輝き、視力は数倍、動体視力も瞬間視も周辺視野も数倍から十数倍上がるが、魔力を多量に使うために、多様、長時間の使用は危険だ。
だから僕は今こんなに疲れている。僕は部屋にはいると、ベッドに倒れ込んだ。
一時間ぐらいしてからだ、侑狐が上がってきたみたいだった。
「コゥローン、何してーんのー?」
寝てるんだよ。いや、寝てたんだよっ!起きちゃったよ、もう。見りゃわかるだろ?!こいつ、完全に酔っぱらってるな…
とか思ってると侑狐はベッドに腰掛けた。ベッドのへこむ感触が伝わってきて、次に侑狐の細い指が寝た振りをしている僕の顔を撫でた。
「…いつも…ありがとね」
僕は少し驚いた。どうせまた頓珍漢なことを言うんだろう思っていたから。
「…我が儘ばっかり言って…でも全部聞いてくれて。小さい時はさぁ、兄妹みたいで良かったけど…今はそれだけじゃ嫌なんだぁ。でもコーロンは、私を彼女としては意識してくれないよね…」
僕は次の瞬間にベッドの上に彼女を押し倒して、その両腕を押さえ彼女の上に乗っていた。
「そんな訳ないだろ」
「えっ…起きてたの…?」
「お前の馬鹿笑いで起こされたんだ」
「今の…どういう意味?」
「…お前を彼女として意識できない訳ないだろ」
「ん―」
僕は彼女の口を塞いだ。今までに近づいたことが無い程に顔が近い、彼女は目を瞑っていた。
僕は彼女の黒と赤い花柄の着物の襟を持ってゆっくりと広げた。そして彼女の素肌に直接触れ、背中まで手を回し抱き上げた。
「んっ、んん―」
背中に手を回すまで、そして背中をなぞられたせいで侑狐は声を出しながら自由になった手で僕を抱きしめた。
「んはぁ…コゥ…ロン…」
「…ユウコ…僕は、俺はお前が好きだ―」
「…うん…私も…優しくして…」
「ああ、もちろん」
僕は彼女の胸を人差し指で渦を書くようになぞり、固くなった乳首をつまんだ。
「あんっ―」
次に僕は彼女のボディラインをなぞりながら、彼女をゆっくり寝かせて顔を下部へ移動させた。そして着物の中へ顔を入れると彼女の脚をM字に広げて、秘部に下を沿わせた。
もう既にそこは充分以上に濡れていて、ネットリとした粘液の感触が下に伝わる。
「んあっ、あっ、あんっ―はぁんっ―!」
彼女は僕の下が動くたびに喘ぎ声を上げて体を震わせた。そして僕は思わず彼女の敏感な部分を見つけた。
尻尾の付け根の下。そう言われればそうだろうけど、なかなか気付かないような場所でもある。そこに片方の手の指が触った時、侑狐は一躍大きな反応をした。
僕は暫く愛撫し続け、彼女の息が荒くなって来たので彼女の着物の帯を解いて、着物を完全に脱がせた。そして自分も素早く服を脱いで彼女に被さった。
「綺麗な体だ…」
「あなたも…逞しい体…」
俺はその透き通るような素肌に少し見とれた。そしてその未開のワレメに僕の固くなったものを少しずつゆっくりと入れ始めた。着物を脱がせたのは血で汚さないため。必ずしも出血するとは限らないけれど、一応は無難だ。
「うっ…んんっ―」
「…痛い?」
「少しだけ…んっ…あんっ…」
全部入った。どうやら血は出ていないらしい。僕はゆっくりと腰を動かし、侑狐は喘ぎながら僕の背中に手を回した。
どんどん声が大きくなって、抱きしめる力も強くなっていき、そして彼女は息が詰まったかのように声を止め、体を震えさせた。僕は締め付けが少し強うなったのを感じ、また緩んだ。緩んだと言っても実際きつめだけど。
「ハァ…ハァ…ンッ、アッ―」
「次は僕が気持ちよくなるまで付き合ってもらうよ…」
「いいわよ…んあっン…」
何かが沸き上がるような感じだ、尿意にも似ているがそれとはまた違う。僕はまた何分か腰を動かしていた。
「コーロンッ…またッ…私ッ」
「いいよ…僕もそろそろだしね…うっ…」
「んっ―――んはっ…はぁ…はぁ…子供…出来ちゃうかもね…」
「…来年になれば一緒になれるよ」
「うんっ」
それから暫く立って、ユウコはまたあの酒が欲しくなったと言って買い物に付き合わされることになった。
「やぁ、いらっしゃい」
「あのお酒ある?」
「あるよ、今日もお兄さんと一緒か」
「…マスター、もうお兄ちゃんじゃないわ」
「ああ、ユウコももう妹じゃない…正真正銘の彼女、ですよ」
僕はユウコにキスをした―
マスターはお祝いだと言って今度は半額であのお酒をくれた。今夜はまた大変だよ、後始末と『お相手』でさ。
10/02/25 22:39更新 / アバロン