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第五話 受付の人に案内されてギルドの一室に案内されると、そこには神官服に身を包んだ胸の大きい女性が座っていた。 受付の人自体は俺が部屋に入ると同時に戻っていったけど。 女性は薄い茶色の髪の毛をポニーテールに纏め、目を閉じていた。って寝てるんじゃないだろうな? 「…遅かったですね」 開口一番がそれか…まぁこっちはモロ好みの女性が目の前にいるからそれどころじゃないんだけど。 「すいません」 「別に良いですけど、ただこちらも仕事なのであまり手間取らせないでください」 「はぁ…自己紹介とか…」 「…そうですね、一応依頼する側なので私からさせてもらいます」 案外いい人そうだ。 「私はニルナリナ・アスガルド、コアトルス帝国の巫女です」 「お…私は…」 「言わなくて結構です、スドウコウスケ。あなたのことはヘファス様より聞かされました」 ああ、あの女神様か…元気かな…。 「それでは依頼の話に移りましょう」 正直言って指名されるような依頼がどんなのかっていうのには興味がある。ただ、今の俺の実力でできるようなものならいいんだけど…。 「ここから南へ200キロほどいった荒野に『雷の塔』というところがあります。そこに巣食う『ドラゴン』を退治してください」 「…は?」 ちょっと待て、『ドラゴン』って言わなかったかこいつ? 「?どうされました?」 「今『ドラゴン』て…」 「そうです。正確には突然変異で帯電体質になった『ドラゴン』ですが」 そういう問題じゃねぇ! 「あの…私はこっちに来て日が浅いんですけど…」 「神器があれば大丈夫です」 ちっ、もうそっちの情報まで仕入れているのか。 「いやあれは…そもそも何で私に?」 俺って言うのはまずいだろ流石に…。 「『ドラゴン』が住んでいるところですが…そこは大量の魔物が蔓延っており、一般兵では入った途端魔物に食い殺されてしまいます」 実際のとこそんなことはないはずなんだが…。 「さらに『ドラゴン』自体が住んでいるのは巨大な塔ではありますが、幅がないため軍隊が入ることはできません。そこで貴方に白羽の矢がたったのです」 「…」 喉まででかかった「ふざけんな」という言葉を飲み込んで、俺は彼女に質問した。 「そこまでどうやっていくんですか?」 「本来ならここから行って荒野の魔物まで蹴散らしてもらいたいところですが…体力を温存してもらわないと困るので、私が転移魔法で塔の一回層まで送りましょう。塔自体に強力な結界が張ってあり、直接内部に転移するのは無理なので、そこからは頑張ってください。勿論、塔の中にも魔物はいるので注意してください」 「はぁ…」 仕方ない、押し切られそうだし腹決めるか。この前の話からすると殺されることはないだろうし。 「分かりました。倒せばいいんですね」 「その通りです」 「それで何時ですか?」 「明日です」 「…すいません、もう一度」 「明日です」 「…報酬とかは…」 「塔のなかに財宝があるのでそれを」 「はぁ…わかりました」 「それでは明日にまたここで」 そう言ってアスガルドさんは出て行った。名前覚えるのが大変だ。 まぁ説得して退いてもらえばいいか。 …なんて、思っていた俺が甘かったのかな…。 ……翌日…… 「準備はできましたか?」 「ええ」 俺はギルドの中にある昨日と同じ部屋にいた。勿論アスガルドさんと二人きりだ。 昨日のうちに雑貨屋で回復薬や念のための毒消し、携帯食料を買って準備を整えていた。 「それでは送るのでこの魔法陣の中に立ってください」 アスガルドはそういうと背中の筒の中に入っていた紙を広げた。 そこには見たこともないような文字と円や四角形が組み合わさったザ・魔方陣というべきものが描かれていた。 俺がそこに立つと、アスガルドは部屋に立て掛けていた彼女の杖を向け、呪文を言い始めた。 「『時と時空の神よ、彼方まで送り届けよ。我、ニルナリナアスガルドが願う!』」 素人の俺でもわかるくらい強い魔力が杖を通して魔法陣に流れ、杖の先に付けられた宝珠と魔方陣が強い光を発し始めた。 更に光が強くなると、激しい音と共に俺の足元の地面が消えうせた。 突然の浮遊感にビビッたが、すぐに地面の感触が戻り、目の前には天を突くほど大きい塔の入り口があった。 塔自体は貫禄があるというか、古びてはいるが威圧感を与え、神々しささえ感じられるほどだ。 「…いくか…」 さぁ…依頼を成功させよう。 塔の中に入ると光が皹から漏れており、明るいわけではなかったが、決して暗いとはいえるほどじゃなかった。ただ、何かしらのスキルが発動したのか、暗さが和らぎ、視界が明るくなっていった 一階層は何もなく、遠くに階段が見えた。 たしかにこれじゃあ軍隊は入れないな…。 階段自体は螺旋階段で、けっこうな距離があった。 二階に上がると、通路が三方向に見え、どうも迷路になっているようだった。 右手の法則で、右から行こう。 壁に右手をつきながらゆっくりと俺は進んだ。 こういう時、フカンで見れたらなって思うな〜。まぁないものねだりしても仕方ないからおとなしく進もう…脳内地図があるだけましだ。 と思っていたら運がよかったのか、すぐに階段が見つかった。 というか…ここまでエンカウントしなかったな…。 なんて思っていたら三階に上った途端、蝙蝠の羽を生やした魔物が5体襲ってきた! 「っ!『ショット』!」 弓を出すのは時間がかかるから牽制用の魔法を放つ。 ところが、俺の予想を無視して魔物達は魔法弾の光を嫌ってか、ビクッとしたかと思うと、地面に固まってブルブルと震え始めた。 「…『ライト』」 もしかしてと思ってポッと右手に光を灯すと、彼女等は明らかに光を怖がっているようだった。 光を照らしておけばこいつらは襲ってこないだろう。 一種族だけでも襲ってこないのはありがたい。 「…襲ってくるなよ?これぶつけるぞ?」 「![コクコクコクコク]」 固まった状態で首を振ると可愛いなこいつら…まぁ俺は先を急がないといけないから行くけど。 後でこいつらの種族名でも見るか…。
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