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第二話 息も絶え絶えになってようやく町に着いたときにはすでに昼を過ぎていた。 まぁ、近くに森があった時点で色々と期待してなかったけど…。 町並み自体は中世のヨーロッパの田舎って感じだな。広くもないし狭くもないってくらいの広さを持ってそうだ。 さて、まずは宿…といいたいが、お金ないしなぁ…。 しかたない、何があるのか散策してみるか…というかさっきから道行く人の視線が痛いです。コミュ障なんだからそんなに見ないでくれ…。 〜一時間後〜 どうやら本当に異世界らしい。いやさ、疑ってたわけじゃないんだけど…。 だってさ、明らかに日本語じゃないのに『理解』できているし…。というか文字がアラビア語?みたいな感じだった。 それでなんか【冒険者ギルド】ってかいてる看板を見つけて中に入った。 これってあれだよな?依頼こなしてお金貰うっていう…。 中はどっちかというと西部劇に出てきそうなバーの風体をしていて中々面白そうな雰囲気を出していた。 とりあえずカウンターに近寄って登録のこととか聞くことにしよう。 「えっと…すいません。ここってギルド…なん…ですよね…?」 「そうですよ?どうかなさいましたか?」 受付の人は白地に黄色で彩られた服を着ていた。つうかスカート長いな。 スタイルは良いし、誰でも振り返るだろうな…まぁ受付なんて所謂『顔』なんだから当然か。だがしかし、綺麗だったから言葉に詰まったし、声が上擦っちゃったよ。 ってか街中ぐるっと見てきたけど全員綺麗かかっこよかった…なんて理不尽なんだ異世界! 「あのですね…登録とかできるのかなって…」 「ああ、新規加入の方ですね?わかりました。では書類をお持ちするので暫くここでお待ちください」 そう言って受付の人は奥に引っ込んでいった。うむ、走るごとに揺れるほどたわわに実った胸がなんともイヤらしい。だがしかし声をかけるのはこれで最後になるだろう。 だって俺、あんな美人に話しかけられねぇよ…今回は偶々前をよく見ないでカウンターにいったから、ああなったんだ。 自分のうかつさに腹が立つ。 「お待たせしました〜」 っと、あんまり顔を見すぎると緊張するから俯いてしまった。 印象悪くしちゃっただろうな…。 「こちらが必要書類になります。指定の欄ににお名前と出生国、年齢をご記入ください」 「はあ…わかりました」 うむ、字が読めるというのは素晴らしい事だな。改めて実感した。 さて筆(まだ筆なんだな)を手にとって書類に書き込む。 だがそこで俺はとてつもない違和感を感じた。 字が綺麗になっているのである。 自分で言うのもなんだが俺はけっこう文字を書くのが下手でたまに自分でも読めないのがあるくらいだ。 それなのに今書いたのはどこの書道家だとツッコミたくなるくらい達筆だった。 「これでいいですか?」 「はいどうも。ではまた暫くお待ちください」 ふと周囲を見渡す。 背中に二本剣を差した者、弓を背負ったもの、体躯に似合わず大きな剣を背負って今にも転びそうになっているやつなどを見ていると自然と笑みがこぼれた。 …まぁ無手の俺が言えた義理じゃないけど。 「お待たせしました、これで登録完了です。それで、この腕輪をつけてください。ギルド証になります」 おお、菱形の黒い石がはめてある腕輪か…。綺麗だな。 よし装着っと…。 お?赤くなった。しかし渋いな…。 なんでもこの腕輪、ギルド証であると同時に宝石の色で区分けされているらしい。 赤、黄色、緑、青、紫、白の順番となっていて、俺は最下位のE−、最上位はS+らしい。 まぁそれよりも登録は済んだのはいいがなにぶん武器がない。 「すいません、武器の貸し出しってありますか?」 どうせにダメ元だ。なかったら素手でやるしかないし。 「ありますよ?防具もありますが?」 「…貸して下さい」 「それではまずミッションを受注してください。そうしないと貸し出しはできません。受注方法はそこの掲示板に張ってある張り紙にあるマークにギルド証を翳してください、光れば受注完了です。ミッション自体の詳しい内容はギルド証に詳細を示すよう念じれば出ますので、受注してからこちらにお越しください」 「わかりました」 さて…掲示板を見てみるといろんな物があった。 E級ミッションだけ見てみると… 【アルラウネの蜜:小瓶五つ採取】 【ハニービーを二匹捕獲】 【薬草採取:10g】 …などなどがあった。薬草も良いけど、【アルラウネの蜜】ってのが気になるな…回復薬と混ぜたら効果を発揮しそう。 よし、これに決めた。 早速翳してみる。 すると赤く光って、詳細でろと念じてみるとなるほど詳しい内容が出た。 行商人からの依頼らしく、仕入れのために蜜が必要なんだとか。 でも、そんなことはどうでもいい、重要なことじゃない。 というか等外ミッションってなんだよ、部屋の片付けとか荷物運びとかさ…まぁお金がなくなったら試してみるのも良いか。 じゃあ受付に戻って… 「【アルラウネの蜜】の採取ミッションを受けます。装備一式貸して下さい」 「分かりました。付いてきてください」 そう言って掲示板のある通路の左奥にあった部屋に連れていかれた。 ってかジーパンとティーシャツなんだが…この上から防具着るのか? 流石にそれはなぁ…と思いながら防具を手にとって女性をチラっと見る。 「?どうしたんですか?」 あ、ダメだこれ。何か用があるんですかって顔してる。代わりの服とか流石に貸してくれんだろうしな…。 そういえば… 「借りたやつって料金かかるんですか?」 「あ、かかりますよ、20e(エルト)銅貨です」 エルト…この世界の通貨で大体1eで10円くらいだろう、銅貨だし。 今聞いたところ、大きさは小判みたいなので銅貨一枚が1e、100eで銀貨一枚、10000eで金貨一枚らしい。 それは置いといて、この胸当て…革でできていて弾力があるが硬い…と、同じ素材でできた腰当て、革の靴(これは運動靴から強制的に履き替えさせられた)、と銅剣と中心に銅で補強した木製の盾を装備した。 まぁ格好としちゃあ様になったんじゃないか?お世辞だろうけどほめてくれたし…。 それよりも連れ添って戻ってきたときの主に男性冒険者から睨み付けられたのは正直怖かった。人気のある受付嬢で、それに嫉妬してたんだろうけどイジメられてた身としては結構きついな…。 再びカウンターに戻って個数分のビンを受け取る。このビンは雑貨屋で取り扱っているらしくて、私用で使う場合は買えば良いとのこと。ギルドで買い取りもやってくれるらしい。 さて行くか。 視線に刺さられながらも、俺は森へ入っていった。 … で、森に来たのは良いけどどうしよう? 俺、『アルラウネ』とか言われてもわからないし…ああ、前のグリズリーさんとかと同じ魔物か?だとしたら気を引き締めないとな…。 さぁ探そうと思った時、耳障りな音が響いた。 空を切るような羽ばたき音、ブ〜〜ンという音の正体は… 「また蜂か?近いな」 音のした方の茂みに隠れてそちら側を見ると、さっき襲ってきた蜂の魔物とは違う魔物がどこか明確な行き先があるような飛び方をしていた。 しかし蜂か…蜂といえば花の蜜を…あ、確かミッションは【アルラウネの蜜】採取だったから、あの蜂についていくか。ちょうど人が歩くくらいの速さで動いてるし…。 陰に隠れながら後を追い、依頼の詳細を表示する。 なんでも定期的にこの依頼は張り出されているらしく、必要量が取れるまで張り出され続けるようだ。さらにいいことにあの蜂の魔物についても書いてあった。 『ハニービー…[アルラウネ]という花の魔物に集る蜂型の魔物、ついていってアルラウネの居場所を知るには丁度いい相手であるので付いていくことをオススメする』 ということらしいので付いていく。 というか蜂だから毒とかもってるんだろうな…イヤだなぁ…。 しばらく付いていくと、日当たりのいい場所に花の中で日光浴をしていたらしい緑色の体色をした女性がハニービーに集られていた。 このまま出て行っても良いんだけど一応情報収集のために隠れて耳を澄ます。 すると何かのスキルが発動したのか、結構離れているはずなのに三人(?)の会話が聞き取れた。 (ねぇ少しくらい良いでしょ?) (ダメよ!これは未来のだんな様のためにあるんだから、貴女達みたいな他人の助けがないと生きていけないような小娘には渡さないわ!) なんとも強情そうな『アルラウネ』さんで…というか遠めにしか分からないが全員美人なんだよな…魔物でなけりゃフル勃起…いや、今でもしてるんだけどさ、下手したら抜いていたかも知れない。 強情だな…ま、困ってるみたいだし、助けてあげよう。もしかしたら交渉して蜜が貰えるかもしれんし。 「そこの蜂二匹!嫌がってる彼女から離れ…ろ…?」 遠目からでも分かるくらいにハニービーの頬が朱色に染まってきた。 何でだろうなと疑問に思っていたら、 「「男だ〜!」」 突然俺に襲い掛かってきやがった! まずは盾を構えて攻撃に備えてっと、 「お持ち帰りー!」 一匹目が突っ込んできたが、俺は冷静に盾を斜めに構えながら一匹目の突撃を避けた。 というかこいつらなんで男っていったんだ? 「はずした〜」 「まだいくよ〜!」 二匹目が突っ込んできた。 一匹目は旋回してくる途中だからまだ間はある。だから… 「ふんぬらば!」 タイミングを見て二匹目の横っ面に剣を思いっきり叩き込む!そして心中で謝るのを忘れずに。 ってか斬った感触がなくて柔らかいもの…マット的なもの…を殴った感触に似てたんだが…。刃が潰してあるのか? 「グエッ!?」 …本当にごめんなさい、女性にそんな声出させて…。 でもうまく気絶したみたいだ…。 残るは… 「残り一つ!」 さて…どこから来るかは分かってるけど…斬…殴りたくはないからな…よし! 「シールド…」 「シャーッ!」 「バァッシュ!」 ゴッ! 「ふにゃぁ…あたまからほしがでてりゅ〜」 うむ、うまくタイミング合わせて盾を突き出せた。 二体目の『ハニービー』は自分の速度と俺の膂力でぶつけられた盾で気絶したみたいだ。 とりあえず何か縄でもないかな…『アルラウネ』との交渉中に襲われたら敵わん。 っと、まずは挨拶しないとな。 「えっと大丈夫ですか?襲われてたように見えたので手を出しちゃったんですけど…」 ってか近くで見ると美人だっていうのがよく分かるな…体の色は緑色でなんか違和感があるけど、程よく実った乳房をさらけ出して髪の毛で先端だけを隠しているのはなんとも言い難い…というかまた俺の息子が…。 「クスッ、助けてくれたのは嬉しいけど、それじゃあ男として減点ね」 「はぁ…すいません。ところで縄とかないですか?」 「縄?緊縛プレイなら…」 「いや、あそこで寝ている二体を縛り上げたいので…」 心の中で緊縛プレイはないだろうと思った。ドSなのか? 「そう、なら…」 突然『アルラウネ』さんがいる巨大な花弁から3mほどもある蔦が何本か出てきたときは驚いたぜ…。 「これでいいかしら?」 「…十分です」 さて、じゃあオイタしたハニービー二体を縛るか。 まずは羽をぐるぐる巻きにして、次に手を交差させて親指と手首を厳重に縛って手首を縛った後、全身を縛った(亀甲とかしてないのであしからず)。 まぁこんなものだろう。じゃあ次に… 「ところで貴方はこんなところに何をしにきたの?」 ああ、よかったあっちから話しかけてくれて。俺から話し掛けたら緊張で死ぬる。 「えっと…『アルラウネの蜜』を小瓶五つほど集めないといけなくて…」 「あら、じゃあ私からサービスよ。小瓶渡してくれる?」 「あ、ありがとうございます」 うまく交渉がいってよかった。魔物でも話しやすい部類に入るのか? それでも感謝は忘れない、これ常識。最近マナー悪いやつが多いからな…。 とりま小瓶渡してしばし待つこと10分、小瓶に詰め替え終わったようだ。 「ありがとうございます」 「ふふっ、君ならいつ来ても良いから。でも次は下の方のお相手をお願いするわ」 とても艶かしく言われて思わず鼻血が垂れてしまった。 「あら、まだボウヤなのね、可愛い♪」 「すひまへん。まはたいせいがないので…」 あ〜持ってて良かったティッシュペーパー、とりあえず拭いとこう。 「よけいに可愛いわね♪でも今日は帰りなさい」 「あ、はい。今日はありがとうございました」 さてハニービーはどうしようか?この人に任せても良いけど流石に迷惑だろうし…そういえば依頼にあったな、ハニービーの捕獲…よし、連れて帰ろう。 そう決めて気合を入れて担いでみたら軽い軽い。やっぱり何かしらの力が働いてるんだろうな。片方の肩に二匹とも乗せられそうだから『ハニービー』を担いで俺はその場から離れた。 「ああ、貴方のその童貞精液を早く飲みたいわ♥」 …もう会うこともないだろう…というか会いたくなくなった。 … 『今日の日記:須藤 康介 ああ、一日で人の顔が恋しくなるとは思ってもみなかった。それにしてもなんと美男美女が多いことだろう。 異世界とはこんなところなのだろうか?そういえばなんとなく体が軽くなったような気がする。やはり何かしらの力が働いているとしか思えない。 なんにせよこれから暮らさなければならないところだ。元の世界の常識が通じないこともあるだろう、気をつけねば。 そういえば今日何体か魔物に出会った。「人」っぽいが違うので「体」で表していたが、あながち間違いではないだろう。 正直なところ、私の貧弱な攻撃で倒れてくれてありがたかった。 気絶した二体はギルドに預けよう。 人を殴ったことはあっても斬ったりしたことはなかった。それよりも何の感傷も無しに斬れたことにショックを受けた…曲がりなりにも【勇者】として何かしらの力が働いたのだろうか?ならば余計に落ち込むな。 肩に人二人分を乗せて移動しながら考えるのは面倒なので、ここで筆を止める』
14/02/27 00:18 up
どうもです。二話目できました というかまさか一話で閲覧数が2000越えたのは驚きました。 感謝感激です。 あ、それから「ワイバーンを見つけて…」と同じ世界ですが、クロスオーバーさせるのに便利だったので。双方とも最初の頃は干渉しません。 ではまた。同時並行で作っている方もよろしくお願いします。 *13/12/23 修正 *14/02/27 大幅変更 kieto
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