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第三話 さて、『アルラウネの蜜』を手に入れたし、ついでに『ハニービー』もとっ捕まえたし、上々だな。 …というかこの状況で襲われたくないから急ごう。 今は夕方近く、魔物って言うくらいだから夜型だろうし(俺の勝手な想像だけど)早く帰った方がいいだろう…。 …… 防具を返して報酬を受け取り、冒険者ギルドの向かいにある宿屋で部屋を取って硬いベッドへダイブする、痛い。 料金としては30eだった、駆け出しの冒険者のために安く設定してるんだとか…。 今日は疲れた〜。 後から聞いた話、俺の使った剣は刃が潰されて、斬れないものだったらしい。 もともと初心者ように作られていて、血糊を取ったり、油で磨いたりするのが意外と馬鹿にならないそうで、潰してしまったらしい。 というか昼食ってから何も食ってないから腹減った…。 そういえば報酬なのだが、ハニービーの方は報酬がもらえなかった。クエスト受けてないとダメらしい。 【アルラウネの蜜】の方は500eだった。それに加えて30eも貰った、なんでも初ミッション祝いらしい。更に言えば蜜自体上質なものだったらしく、通常の二倍報酬を貰った。 まぁ、とりあえず下の食堂に行こう。 食堂ではちょっとピークを過ぎているからか混んだ様子はなかった。 人が少ないのはありがたい。 20e払って夕食を食べる。 鶏肉を使った野菜炒めと固いパン(ライ麦パン?)、とうもろこしっぽいスープ、それに水だけだ。 どれも絶賛するほどではないにしても美味しい。久しぶりに人の手がかかったものを食べた気がした。前は基本的には全部電子レンジで温めたものが多かったからな…。 おっと涙が…とにかく噛み締めて食べないとな…。 その日の夜…というより夢の中で女神様が現れた。 《夜分遅くに失礼を…》 「…これ夢ですよね?」 《そうです。まずは謝罪させてください、このような形でお招きして申し訳ありません》 「いえいえ、意外と面白いですし、それに…お心遣い感謝します」 実際面白いし、割と今回は楽に稼げた…まぁ多分長続きしないだろうけど。 あとはそうだなぁ…スキルがな〜。 《そういっていただけると幸いです…今こうして話している訳はですね、貴方に神器を渡しに来たんです》 「神器っていうと…あの郡細胞生物を倒すため為に作られた人造アラ」 《違います!というより貴方のいた世界の情報を持って来ないでください!》 「これは失礼しました…それでその神器とは?」 《まったく…鍛冶の神である私、『ヘファス』が直々に作成したものです…受け取ってください》 そうヘファス様が言うと、俺の左腕が輝きだした。 …貰えるのはありがたいが無理矢理か…。 俺の意思を無視して光が形を変え、篭手になった。 「…防具?」 《ふふふふ…それはただの篭手ではありません。使い方は頭の中に入っているはずです。それから、》 頭の中にってなんだよ!? 《それから少しスキルを弄っておきました。前のようには使えないのでご注意を…》 「はぁ!?」 《篭手を使い際に魔法も覚えていたほうが便利なのでついでに入れておきました。ではまた》 えっ!?ちょまっ!? 「ハッ!?」 チュンチュン… 「朝か…」 …うん、夢だけど、夢じゃないっぽいな。左手に刺青があるし、これが多分篭手になるんだろう。しかもしっかりと頭の中に魔法の使い方とこの篭手の使い方が頭の中に入ってる。 地図の方も問題なさそうだ、ちゃんと意識すれば見れる。 寝ぼけている頭を回転させながら急いで身支度を済ませて下に下りる。 「今起きたばっかりかい?」 「おはようございます。朝食願いできますか?」 「あいよ」 朝食と宿代はセットになっていたからその場で貰う。 メニューは昨日の夜と変わらない。 「それよりアンタ、その格好はどうにかならないのかい?」 「?…ああ…」 そういえばずっと着替えてなかったせいで埃まみれだ、これは汚い。 「近くに服屋さんとかありますか?」 「雑貨屋ならここから二つほど左に行ったとこだよ。そこなら服とか色々置いてあるだろうね」 「ありがとうございます」 さて、それじゃあ行くか。 食器をカウンターに戻して早速雑貨屋に向かった。 まだ朝が早いからだろうか、店には人影が少なかった。 適当にサイズが合いそうな服をチョイスして50e払ってから試着室を借りる。 「…なんだかな…」 けちったからそんなにいい素材のものじゃなくなったけど(ゴムがあるやつはないやつの五割り増しくらい高い)とりあえず見た目だけはこっちと大差ない風になった。ただ、こっちは黒髪があんまりいないから自然と浮いちゃうんだけど。 まぁないよりはいいか。 雑貨屋の隣は武具屋で、チラッと覗いてみた。400eだとそんなに良いものかえるとは思わないし…。 と思っていたが、念のために革防具一式(兜、胴鎧、腰巻、脛当て)と銅剣を買った。おかげで残金30eだよこのやろう…。この後他にも色々買わなきゃならんし…まぁ稼げばいいか。 ま、これで格好だけでもいっぱしの冒険者になっただろ。 さ〜て、稼ぎに行きますか。 今日の依頼はこんな感じだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー Eランクミッション 1/1 1:【アルラウネの蜜採取:3個】 2:【薬草『レント草』:250g】 3:【サンマダロウ:4尾】 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー …『サンマダロウ』ってなんだよ…。 『サンマダロウ』は森の左側に行くとある川にいて、なんでも珍しいから村の食堂で使うらしい。薬草は薬師がぎっくり腰をおこしていけないだからだそうな。ま、薬草は知ってたほうがいいし、試し撃ちもしたいから薬草とってくるか…。 翳してからカウンターへ向かう、今日は男の人だ。 「確かに受領しました」 「あの…薬草ってどういうものなんですか?」 「それでしたら依頼の詳細に乗っているのでご確認ください」 「うぃっす」 ま、そりゃそうか…。 確認してみるか。 『レント草:直接傷口に張ることで治癒力を高める。切り傷、擦り傷に有効。ポーションの材料にもなる』 ポーションか…所謂回復薬的なものなのかな? ま、とにかく行ってくるか…。 〜少年移動中〜 さてと…詳細のところに生えてる場所の目星があったから来てみたものの…。 「…これは…」 俺の右手にはキノコがあった…いや、これはどうなんだろう…。 どう見てもチ○コです。どうもありがとうございました。 つうか青筋張ってる上に俺のやつの勃起してるときよりもでかいとか…。 わからん…この世界はマジで分からん…。 とにかく必要量のレント草を確保しないとな…。 この薬草はどうやら木の近くの日の当たる場所…半寄生植物って言えばいいのかな?光合成と木の根っこから養分を吸い取っているらしい。 特徴的なのはギザギザしたヨモギみたいな葉に縁(ふち)と真ん中に赤い線が入っていることだ。 「っとこれか…」 根っこごと引っこ抜く。勢いあまってこけてしまったけどな! とりあえずこの調子で…ん?これは… 「羽音?虫か?」 どうもブ〜ンという蜂みたいな羽音が…って蜂!?またハニービーか!? すぐに羽音が聞こえた方に背を向けるようにして木の陰に隠れる。 すると自動でスキルが発動したのか、相手の位置が分かった。ただ、ハニービーかどうかは分からない。大体何人いるかくらいはわかるけど…。つうか固まってるのが3体と飛び回ってるのが4体くらいかな? まだ距離があるようだ…よし。 「『神機発現』」 合言葉を言って魔力…まぁまだよく分かってないんだけどさ…を刺青に通して、『神機』である『神弓:ヘファイアスト』を顕現させる。 形としては白い長弓って言えばいいのかな?とにかく白くて長い。付け加えるなら弦が光でできている。この状態だと篭手と併用できないみたい。 「『リリース、ショック・アロー』」 魔法の矢を弓につがえる。これは相手を傷つけない、打撃のみを与える矢だ。というか矢を出すための魔力自体の感覚は覚えるしかないだろうし、これから要練習だな。 木の陰から羽音がした方を凝視する。するとまたスキルが発動したのか、よく見ることができた。 …ってかこの前のハニービーと多分別種の魔物が喧嘩してる…ってか、なんかハニービーが固まってるんだが…巣か?いや違うな…何かを守ってる? クエストは受けてないし、無視しても良いんだが…。 一瞬視線を外してスキルを解除する。これ目が疲れるな…。 さて、もう一度。 ジッとみると、ハニービーたちが固まっている理由が分かった。 …というか同業者を守ってるみたいだ…。 ここは勇者として助太刀するか…遠距離からな! 矢を引き絞って放つ。まったくの素人がうった矢だ、外れるのが道理…のはずだったんだが見事に攻撃してた蜂の魔物に命中、ただし被害は軽微な模様。この弓自動追尾機能でもあんのかな? っと、魔物が何体かこっちに来た。 そういや昨日ハニービーを解放した時、『ホーネットじゃなくて良かったわね』って言ってたけど…あれが『ホーネット』か? ま、もう一射するか。 お、また当たった。 「さて…ここいらでちょっと強化して…『リリース!スタン・アロー!』」 今度は黄色い矢をつがえる。これも覚えさせられたやつだ。 なんでも麻痺効果があるらしいけど…まぁとりあえず攻撃を食らわしたやつに向かって放つ。 当たった瞬間、そいつがパタリと墜落してピクピクし始めた。多分、麻痺状態になったんだと思う。 「こいつ!よくも!」 「変な矢ばっかりうってきて!」 「許さないんだから!」 …近づいてきたのは良いけど…こいつら槍持ってやがる! 「『チェンジ!シールド!』」 弓から楕円形の盾に変える。この『神機』にはいくつか形態があるみたいで、この盾もその一つだ。 弓と同じで白い盾と銅剣ってちょっとミスマッチ…。 まぁ…そんなこと言ってられないか。 「なによ、やる気?」 「こいつ連れ帰って女王様に会わせましょう」 「いいわね、あんまり脚色つけないで、早く私達のところに来るように」 おお、ゲスイゲスイ。ま、 「俺は捕まる気はないぜ」 「ふん!遠くから弓でチマチマ撃ってきたくせに!」 「エッラそうなこと言ってんじゃないわよ!」 「やっぱりこの場で犯してから連れて行きましょう!」 「「賛成!」」 うわ〜。 「一番槍いただき!」 俺を四方(実際は正面右後ろ、左後ろの正三角形だけど)に囲んでいたやつの一匹が正面から突っ込んできた。 突き出された槍を下段から切り払うように右に逸れさせ、俺自身は左を向いた。 「こっち!?」 「そっち!」 盾で左にいたやつを殴り飛ばしてすぐにしゃがむ。その瞬間、真上を槍が通り過ぎていった。危ねぇ…。 「ちょっと!邪魔しないでよ!」 「五月蝿いわね!そっちも邪魔━━━」 「えい」 ドスッドスッ。 喧嘩を始めた二匹の背中目掛けてスタン・アローを突き刺す。まぁ傷つけることないし、麻痺るだけだから大丈夫っと。 足元でピクピクしている二匹を跨いで、最後に残った一匹の元に向かう。 どうやら俺がフッ飛ばした影響でたんこぶが出来てしまったらしい…だがそんなことはどうでもいい。 「おい」 「っつつつつ…な、なによ」 「そこで寝てるやつ等を連れて巣に帰れば見逃してやる」 「…わかったわ。でも、絶対にまた来るからね!」 「物分りがいいやつは好きだぜ」 「!?え、そんな急に…」 ん?なんでこいつ急にモジモジしてんだ? 「で、帰るの?帰らないの?」 「帰るわよ。また会いましょう」 二度と会いたくないんだがな…。 仲間を担いで去っていったホーネットを見送って、俺はさっきから遠くから見ていたハニービーと同業者のほうに向かって足を進めた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 今日の日記:須藤 康介 初めてこの世界のお金をもらい、使った。相変わらず浪費癖が抜けていないようだ…ただ、この世界にはゲームも電子機器もない。あっても私が持っているものだけだ。 実戦というのは相当つらいもので、どうにもなれそうにない。まぁ、イヤでも慣れてしまうのだろうと思う。 そういえば、スキルの使い方や種類が変わってしまったのか、パーソナルデータが見れなくなっていた。幸いにもメモ帳は残っていたので活用していくつもりだ。 今日初めて使った魔法、感覚が分かった来た。矢単体で使ってみたが、案外有用そうだ。もっと活用していこうと思う。神機はまだ発展の見込みがありそうで楽しみだ。 いろんなことがあったが、今日はここで筆を止める事にする ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
14/02/24 17:08 up
どうもお久しぶりです。 いや〜ね、色々忙しすぎてなかなか進みませんでした…ほんと申し訳ない。 今後ともよろしくお願いします。 ではまた、感想等お待ちしております。 *14/2/24 お金の値段を編集 kieto
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