連載小説
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突然の昇格
町外れの森の中、一人の青年が訓練に励んでいる。

持っているものは本来は防御に使うもの。それは「盾」。

左手に白く楕円形の美しい盾を持ち体を動かす。

盾を武器とするならば当然接近戦になる。武術の心得が無いと出来るものではない。

青年は構える。

前に敵がいるとイメージして。

相手の攻撃を誘い、盾で弾いて懐に潜り込んで蹴りを入れ、そこから連撃を入れる。

イメージトレーニングは欠かさない。

何時でも戦えるように日々鍛練に励む。

とはいえイメージトレーニング。実際に戦うとは全然違う。

やはり一人じゃ無理か…。

ため息をついて、盾を布にくるんでもちあげる。今日は気分がのらない。もうやめよう。

ー戦士たるもの、日々の鍛練を怠ることなかれ

師匠から嫌というほど聞かされたこの言葉。耳にタコができるぐらい。

荷物を全部持ち上げ自宅へ向かう。青年はまたため息をつく。

「俺だって、一人の男だ…」

異性との交流が全く無い青年。ここ最近異性への意識が強くなってきている。






青年は青春真っ只中。だが彼の勤める騎士団では女っ気はほとんどない。

巷で有名な「女っ気が無いと死んでしまう病」を患っている。

家に荷物をおき、青年は今日もまた男臭い騎士団へと向かった。






「あ、若!丁度良いところに」

青年は騎士団の建物の中につくと背丈の高い、高価な鎧に身をつつんだ紳士的な男「副騎士団長のスミス」と出会った。

「ス、スミスさん!おはようございます!」

さっきの自主練習の疲れがでた青年はすこしボーッとしていたが、副騎士団長となる人が突然出てくるのに驚きは隠せず疲れもどこかへ飛んでいき、姿勢を整えてお辞儀をする。
若、というのは青年のあだ名で、この騎士団はベテランが多い。なので必然的に年は高くなる。そうした中23歳の青年は若いほうで、みんなから「若」と呼ばれている。

「若、あんたの所属部隊が変わるよ」

「え?変わる?っと言いますと」

朝で頭が回りにくい。ふぬけた顔で聞き返す青年。

「シバ団長直々のご決定。あんたは一個一隊の隊長に昇格したんだよ」

「ほ、本当ですか!?」

「ああ、珍しく飛び級。部隊長をすっ飛ばしてなまうなんて凄いな若」

この騎士団の階級は以下の通り。

騎士団長(シバ)…この騎士団の最高権力者
副騎士団長(スミス)…騎士団長の補佐
総隊長…隊長の隊長
隊長(青年)…一個一隊の隊長
部隊長…部隊のまとめ役
兵士…その名前の通り

この騎士団はいくつもの部隊があり、それぞれの部隊に部隊長と隊長がいる。




「やったあああああああ!」

「うるさいけど、おめでとう」

青年は両腕を挙げて喜んだ。騎士団長直々という点でも嬉しかったが、それ以上に自分の部下ができたことが嬉しかった。

「喜んでいる所失礼するけど、早速仕事」

「…え!?もうですか…?」

スミスは分厚い大量の書類を持ってきた。喜んでいる青年に水をさすつもりはなかったがしかたのないことである。青年はつい顔がしかめる。

「あーそうさ隊長なんて雑務の仕事ばっかりさ。それに、紹介するよ」

そうスミスが言うと彼の影から女の子が出てきた。いや魔物の娘と言おう。

「彼女は君の部隊のまとめ役のハザマ部隊長だ」

大きな尻尾と胸。ポニーテールに首もとに赤いスカーフ。動きやすそうな鎧を着て腰には刺突直剣(しとつちょくけん)を下げているリザードマンの姿があった。

「私、リサ=ハザマと申します。これからよろしくお願いします」

彼女は深々と頭を下げた。


青年は女性経験が少ない。異性にモロ弱い。今まで男臭い騎士団に長くいたせいか、リサに強い衝撃を受けた。

美しく巨乳のリザードマンと異性に弱い盾使いの青年。

この先どうなるか楽しみでしょうがないスミスはニヤけ顔は隠せずにはいられなかった。


13/09/28 21:33更新 / 若葉 波菜(ワカバ ハナ)
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■作者メッセージ
初投稿です。是非楽しんでいってください。
青年の名前はいずれ公開されますのでご安心ください。

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