後日談 −上弦の月−
俺、ミノタウロスのニア・アルバーンは現在絶賛失恋中だ。
失恋した相手は幼馴染で、この前まで同棲してた彼女が死んで死にそうになってた仕事仲間、クロア・アーバイン。その憔悴してる姿にアウラには悪いが、はっきり言ってチャンスだと思ってた。
落ち込んでるあいつを俺が優しく立ち直らせてやれば、ずっと俺を見てくれなかった(と、思ってた)アイツも俺を見てくれるはずだ。と、思い実行しようにも、アイツの家の前で足が止まってしまう。
俺がこの思いを伝えたら、あいつは俺をいままでの親友として接してくれなくなってしまうのではないか?こんなナリな上にこんな男勝りな性格の俺が、こんな乙女な気持ちを持ってると知ったら、気持ち悪がって俺と口を利いてくれなくなってしまうのではないか?
そう思うと、どんな獣と対峙したときも震えなかった俺の足ががくがくと震え、いつもそのまま自分の家に帰ってしまっていた。
だけど、ここ二週間くらいあいつの様子が変だ。
妙に幸せ−な顔をしてると思えば、わざとらしい悲痛な顔をする。あぁ、これはあいつの嘘がつけない癖がでてんなー、と思い、鎌をかけてみれば、出てきたのは死んだアウラの姿を借りたドッペルゲンガーの存在。
また先を越されたのか!と思うと、もうあいつとの関係が壊れてしまう、なんて怖さも考えることができず、勢いのままにアイツに告白してしまった。もちろん、その答えはノーだったが、あいつもアウラと出会うまでは俺の事が好きだったと暴露してきやがった。
結局、その恥ずかしさともうアイツはそのドッペルゲンガーに心を奪われているのだ、と気付いた空しさが、俺を三日ほど家にひきこもらせている。
本当は、ドッペルゲンガーの方が嫌になっていなくなるだろう、と期待してた部分もあった。だけど、次の日、普通に出てきたアイツの顔は妙にすっきりしていて、事情を聞いてみれば、アタックしてオーケーをもらったとかぬかしやがるし、話してる間にその件のドッペルゲンガーが来るし、そいつも妙にいい奴で、俺はあぁ、こいつならクロアを任せられるかもな、と思った。
だけど、だけど!
「うううううううううああああああああ!!!!」
ボスンボスボスッ
言葉にならない叫び声をあげながら、アラクネに作ってもらった枕をどすどすと叩く。あいつはこうなることを予想してたのか、むだに頑丈に作りやがった。余計なお世話だ!と思うが、その心遣いにいまは感謝しなきゃなんないだろう。
好きだった男が、自分を好きだった。それだけであれば、岩をニ、三個砕いただけで落ち着いて、アイツをベッドニ引き擦り込むことだってできただろう。
だけど、それが自分がしり込みしている間に別の女にとられた。昔、本当のアウラにとられた時も同じ苦悩をしたが、今回は、あいつが自分のことを好きだったと知ったからか、あの時よりもさらに心が痛かった。
痛くて、痛くて、発散しようと斧を振り回してみてもだめで、隣の村まで出向いてって岩を砕きまくってみたりしても、寝ても夢のなかにアイツがでてきて、紛らわせなかった。
俺はそのどんなことをしても癒せないこの痛みに堪えながら、ボスンボスンッと枕を殴り続けた。そのうちさすがに穴が開くかもしれないが、そんなこたぁどうだっていい。
途中、隣の村に住む妹分が家の前でなんか言ってたきがするが、それも無視して、俺は一心に枕を叩いて、つかれたら寝て、を繰り返していた。そんな時だった。
「ニアー?大丈夫?」
あいつの声がした。
† † †
ここ数日、ニアが畑に出てこない。
最後に会ったのは、ニアとアウラがばちばちと火花を散らしていた日だ。
心配になっていたが、いくらニアでも女性の家に男が訪ねるのはなんだか失礼かなーと思っていけていない。それ以前に、ニアが落ち込んでいる理由はおそらくこの事件でだし、その発端である自分が慰めに行っても余計怒るだけではないか、と思いながら、机の上につっぷしていると、影がさした。
「クロア君、どうしたの?」
「あぁ、アウラ」
どこか、地味な雰囲気を持った女の子が僕を不思議そうに覗き込んでいた。
地味とは言っても、人形のようなきめ細かい白い肌に、夜のような黒く長い背中を垂れる髪、黒曜石のような大きな瞳を持った彼女は雰囲気が地味なだけで、その容姿は美少女、といって差し支えないものだった。
いまは黒のワンピースに着替えているが、告白したときの黒い布を重ね合わせたような服を着ていると、まるで夜の精のようだ。
「いやさ、ニアが最近畑に出てこないから心配になってね・・・」
「へぇ、ニアさんが・・・」
「恐らく僕が原因なんだと思うけど、その原因が慰めに行くのはどうかなー、と思って」
「うーん」
僕がいうと、アウラはむーと口に手をあてて考え込んだ。
仕事の方は、僕ががんばればなんとか回ってるから問題はないのだが、親友であり、この前知ったばっかりだが、かつて両思いだった相手が落ち込んでいるのを見過ごすのも、どうかと思う。
どうしたもんかなぁ、とだらーっとしていると、ドンドンドンッと玄関の叩かれる音がした。
「?」
「誰だろ、出てくるね」
と、アウラが戸口に出て行くと、その直後、アウラの驚いた声がして、どたばたと、何かが走ってきた。
「クロアさん!!」
「ミアス・・・」
バンッと扉をけり開けて入ってきたのは、肩までの金髪に、頭の上に黒い三角の耳をはやしたワーキャットのミアスだった。
隣の村にすんでるはずの彼女がどうして?と思っていると、突然つかみかかられガクガクガクと揺さぶられた。
「姉御に何やったんですか!!」
「はぁ?姉御?」
「ニアさんですよ!!!!」
「ぁー・・・」
そういえば妙に懐いてたな、と揺さぶられながら思っていると、ガシッとミアスの肩が白い手につかまれた。
「ひにゃぁっ!?」
「クロア君からっ・・・手を離しなさい・・・猫・・・っ」
肩をつかまれたミアスが驚いた声をあげ、がくがくと震えながら後ろをむくと、そこには黒髪をうねうねとメデューサのように動かしながら邪悪な雰囲気を撒き散らしてるアウラがいた。
よく見ると、つかまれたミアスの肩がギリギリギリギリッと音を立てている上に、掴んだアウラの白い手に血管が浮いていて、とんでも力がかかっているのがわかった。
「あ、アウラっ!いいからっ!そこまで怒んなくても大丈夫だから!」
「・・・わかった」
「ふ、ふなぁ・・・た、助かった・・・。く、クロアさんいつのまにこんな怖い人と付き合い始めたんですか・・・?」
「あ、ははは・・・」
涙目で肩をさすりながら言ってくるミアスに、僕は苦笑するしかなかった。へたすると子供と間違えられてしまいそうな身長のアウラが、小柄とはいえ立派なワーキャットであるミアスを怖がらせているのは、とてもシュールだった。もう変身できないとはいえ、アウラも立派な魔物娘ということだろうか。
アウラの新しい面が見れて嬉しい気もするが、そのあまりの怖さにとても複雑だった。
「で、ニアがどうしたの?最近畑に出てこなくて心配してたんだけど」
「そ、そうですよっ!・・・ひっ」
またもや僕に掴みかかろうとしたミアスが、髪の毛のさきっぽを蠢かせたアウラにおびえた視線を向け、手をとめながら、僕に言った。
「に、ニアさん、この三日、一歩も家から出てきてないんですよ!それで考えられるとしたら、クロアさんにふられたとしか考えられなくてっ。でも、それにしてはひどすぎるから、クロアさんが何かやったんだと思って飛んできたんですよ」
「そ、そうなんだ・・・」
あながち的外れではないので、否定はできないな・・・と思いながら、僕はニアの心配をした。
一歩も家からでてないなんて、あのときの僕と一緒じゃないか、とアウラを見ると、アウラも困った顔をしてこちらを見ていた。
「・・・アウラ。ニアとの関係をどうするとか以前に、僕はあいつの親友として、ニアの様子を見てくるけどいいよね?」
「うん、私にも原因があるから私も行きたいけど、やっぱりクロア君が一人で行ったほうが良いと思うから、ここで待ってるね・・・」
「じゃ、じゃあ今すぐにでも!ひぃっ!」
「あはは・・・そんなおびえなくていい、はずだよ」
「はずなんですかっ!?」
ミアスの動きに過敏に反応するアウラの髪とそれにおびえるミアスに苦笑しながら、僕は家をでて、ニアの家へと向かった。
「ふぅ・・・」
村の外れの洞窟を改造した一軒屋、ニアの家の前で僕は一人で立っていた。
途中までミアスも来ていたが、狩りの仕事があるのでーと帰っていった。彼氏との狩りは、彼女にとって姉御の体調不良よりも重いものらしい。まぁ、魔物娘らしいと言えばらしいが。
はぁ、とミアスと友人でもあるその彼氏のことを考えながら、ため息をついた。
というか、さっきから正体不明のボスボスボスボスと何かを殴り続けてる音が中からしてて怖いが、僕は息を整えると、コンコンッと大きな扉をノックした。
「ニアー?大丈夫?」
「く、クロア!?」
うわずったニアの声が家の中から響いてきた。その声にまだ元気があるのがわかって僕は安心する。
「いや、ここ最近畑に出てこないからさ。心配してきたんだよ。ミアスにもなんかしたかと勘違いされて殴りこまれるしね」
「わ、悪かった。も、もう大丈夫だ。明日はちゃんと出るから・・・。その、今日は帰ってくれ・・・」
苦笑しながら言うと、ニアが絶対に大丈夫なんかじゃない声で言った。
ニアが落ち込んでる理由も明白で、それが自分のせいなのだ。なら、ここで僕が彼女に謝らなくてどうする。
「・・・わかったよ、また明日・・・」
「・・・おう」
僕はそういいながらも、扉の鍵に万が一の時に、と思って持ってきた針金を差し込んだ。
昔、くそ親父の部屋に押し入るために覚えたピッキングがこんなときに役立つとはな、と複雑な気持ちになりながら僕は、針金をかちゃかちゃと動かし、鍵を開けた。
「・・・」
ニアに気付かれたら絶対に虚栄を張られるとわかってるので、鍵の開いた扉を静かに開き、足音を立てないようにしながら、僕はしずかにニアの家の中に忍び込んだ。
† † †
「これでよかったんだ」
俺は、うつぶせになって自分に言い聞かせるように言った。
俺が帰るように言うと、クロアはわかった、といって声がしなくなった。おそらくいったとおりに帰ってしまったのだろう。もうすこし粘ってくれても良いんじゃないか?とも思うが、アイツはもうあのアウラっていうドッペルゲンガーがいるんだ。告白もまともにできなかったノーキンな女なんて大人しく身を引くべきだろう。
「そうだ、俺みたいな、がさつで、脳筋で、男勝りな女があいつの隣になんていられないよな・・・」
もっとお淑やかな、いまのアウラみたいなのがお似合いだ、と呟いた。
だから、こんなに心が痛くても、こんなに切なくても、こんなにアイツがすきでも、泣く必要なんてないんだよ。最初から、あいつの隣に入られなかったんだから・・・そう思ったときだった。
そっと俺の背中に誰かが触れた。
「そんなことないさ」
† † †
僕は、ニアの呟く声を廊下の陰に隠れて聞いていた。だが、その呟きに我慢ができず、ついニアに駆け寄ってその背中をさすっていってしまった。
「ニアは、確かに不器用なとこがあるけど、それを気にしてるのも知ってるし、自分の性格が嫌いなのも知ってる。僕は、アウラのことを愛してるし、大事にしたいと思ってる、けど、ニアだって大事にしたいと思ってるよ」
僕が優しく語り掛けると、ぐすっぐすっと鼻を鳴らしてたニアの動きが止まった。
「・・・親友として?」
「・・・どうだろ、ちょっと前ならそう答えたかもしれないけど、今はどういって良いのかわかんないかな」
「・・・アウラのことを愛してるんなら、あいつだけを愛してやれよ。男ならよ・・・」
「確かに、男気あふれるやつならそうするべきだろうね」
ですが、僕はこんななよなよした男ですから、と苦笑していうと、ニアもうつぶせになったままクククッと体を振るわせた。
「女男」
「男女には言われたくないかな」
もっと幼い頃のケンカした時のお互いの呼び名を口にしながら、僕は笑った。
思い返すと、あの頃はニアが好きでへんに意地張って、いつもニアに迷惑かけてたなぁ・・・と思い出を懐かしんでいると、ニアの体がもぞもぞっと起き上がり、こちらを向いてベッド上であぐらをかいた。
「ハァ、お前と話してるとなんだか悩んでるのが馬鹿らしくなってくるよ」
「それは光栄」
「ちょっとまってろ、せっかくきたんだしお茶でも入れる、さ?」
「おわぁっ!?」
ニアが立ち上がり、ベッドから降りようとした瞬間、彼女の体がぐらっとゆれ僕の方へと倒れこんできた。ドズンッと大の大人一人分以上の重さがあるニアの身体に押しつぶされながら、僕は彼女の下から這い出る。その途中になにやら異常にやわらかいものに触れたが、意識してそれがなにか考えないようにした。
「に、ニア?」
「あ、あれ?おかしいな・・・ち、力がはいんねぇや・・・」
「ちょっ!やっぱり大丈夫じゃないじゃないか!」
「へ、平気だっつぅの、これくらいっ」
とニアは、腕立て伏せの要領で身体を起き上がらせようとするが、その腕も力がはいらず、ぷるぷると震えるだけで、起き上がれない。
僕は悲痛な眼でそれをみると、彼女の下にもういちど潜り込んで下から彼女の身体を持ち上げた。
「ちょ、クロア!?」
ニアが驚いた声をあげるので、僕はそれに歯を食いしばりながら足を踏み出し、一歩一歩ゆっくりと歩いていく。
「お、お姫様抱っこはさすがに無理だけどっ抱えあげるくらいなら、僕だってできるんだぞッ・・・」
「そ、それはわかったから!俺を持ち上げてどうするんだよ!」
「このまま・・・家に連れてく・・・っ悪いけど、ここじゃなくてあっちの方が、アウラにも手伝ってもらえるから・・・っ」
「いや!そ、そんな手伝ってもらうなんてことねぇだろ!ただの立ちくらみだって!」
「空元気はやめろ!」
「!」
「き、君はいつだってそうだ。だ、誰よりも大変なときに、余裕そうに見せるっ・・・誰よりも辛い時に元気なように見せる・・・っ」
「だ、だって・・・俺はこんなナリだから、力仕事とかにも向いてるし・・・っ」
「だから・・・どうしたって、いうんだよ・・・っ。何で、僕が好きになる女の子はみんなこうなのかなぁっ!?」
ニアの家をでて、死にそうになりながらも一応鍵を閉めて、また歩いていく。
幸い、村の皆は狩りやら畑仕事に出ているようなので、ニアが恥ずかしがって暴れることはないだろう。
「だってよ、種族的にだってっ!」
「種族なんてどうだって良いだろ・・・?ニアはニアなんだから。・・・全く、アウラと似たような事いって・・・っ。僕はな・・・っドッペルゲンンガーだから、だましてたから、だなんて気にしない。むしろ、アウラがそうやって立ち直らせてくれたことに感謝してるっ。それと同じでっ、ニアがミノタウロスだからって、男扱いしないしっ、女じゃないなんて思ってもないっ」
「クロア・・・」
「僕が、いうことじゃないだろうけど・・・っ辛い時は辛いって言え!」
「・・・ごめん・・・」
手が震えても、ニアだけは落とさないようにしっかり地面に足を叩きつける。
僕が泣き寝入りするだけの領主の息子から変わっている、と証明するためにも、言いたいことは言うし、見てみぬ振りなどは絶対にしない、今のアウラに立ち直らせてもらってから決めた事のひとつだった。
† † †
「ふぅ・・・ただの栄養失調だよ・・・どこかの誰かさんと一緒で、ずーっと寝てて食べ物も食べなかったと思う」
「・・・耳のいたい話だね・・・」
スゥスゥと寝息をたてるニアの寝顔をみながら、アウラと僕はいった。
あの後、静かに寝てしまったニアを抱えて家に戻ると、アウラはこうなることを予測してたのか客用のベッドを掃除してくれていた。そのベッドに寝かしつけ、アウラと書斎にある本を引っ掻き回して、ようやくただの栄養失調だとわかった。
三日ほどの絶食など、人間にしたら軽いものだけど、彼女は魔物娘な上にミノタウロスだ。食べる量は人間の何倍なのに、絶食すればこうもなるだろう。
「・・・アウラ・・・」
「・・・クロア君が何をいいたいのかはわかるよ」
トスッとベッドの脇においてあったイスに座りながら、アウラは言った。
「私は、クロア君が好き、誰よりも。それは愛してるって言って良いほどだと思う」
「・・・僕もだ」
「だからね?私はクロア君が辛そうな顔を見るのは嫌。たとえそれが、私じゃない、別の女のことを考えてのことでも」
「・・・」
「・・・一つ、私をこれまでと同じ・・・うぅん、これまで以上に愛して。ふたっつ、私を置いていかないで・・・」
悲しそうな瞳で見るアウラに、僕は近づき、その細く脆そうな身体を抱きしめた。
「わかってる、アウラ。僕は君を絶対に放さない・・・」
「・・・うん」
うなづくと、アウラは立ち上がり、今日はニアさんに譲ってあげる、といって部屋から出て行った。
よくできた妻に感謝しながら、僕はアウラの座っていた椅子にすわると、寝込んだままのニアの頭を撫でた。その寝顔はとてもあどけなく、いつも強気で姉御肌なニアとは別人に見えた。
と、その褐色の目蓋が震え、ゆっくりとそのとび色の瞳が姿を表す。
「起きた?」
「クロア・・・?何で俺の家に・・・?あれ?」
「覚えてないの?倒れたニアを家から僕の家にはこんだんだよ?」
むくり、と身体をおこし辺りを見回すニアの子供っぽいしぐさに苦笑しながら、僕はアウラに作ってもらったシチューを彼女に差し出す。
「ぁあ、そうだっけか・・・」
「栄養失調らしいから、これ食べて。アウラが作ってくれた」
かたじけねぇ、と妙に男前にいいながら、ニアは皿をうけとり、スプーンをにぎってシチューをのみ始めた。
「・・・美味いな」
「アウラは料理が上手いからね。作ってくれる大抵のものがおいしいよ」
「俺にはまね出来ない芸当だ」
「そう?アウラに習ってみたらできると思うよ?」
むりだって、と苦笑しながら、ニアはシチューを啜った。
彼女が飲み終わるのを待って、僕は話を切り出した。
「ニア」
「なんだよ、改まって」
「アウラと話した。彼女は良いって言ってくれた。あとは君だけだ」
「な、何の話だよ・・・」
状況がさっぱり理解できない、とでもいいたげな視線をニアは僕に向けてくるが、僕は大真面目な顔をして続けた。
「・・・僕と結婚してくれ、ニア」
「は?はああああああああああああああああっ!?おまっ!?ばっか!アウラはどうすんだっ!?はぁぁ!?」
ぼっと顔を真っ赤にしてニアは僕からあとずさって叫んだ。その拍子にずりっとベッドから少し落ちて、仰向けに倒れる。その様子を僕は微笑ましく思いながらも、その隙を逃さずに彼女へとのしかかる。
短めに切られた茶髪が僕を見つめる鳶色の瞳が不安げに揺れる。
「アウラも僕の妻のまま、君も僕のものにする。知ってる?この村だとあんまり知られてないけど、魔物娘と重婚する男はいっぱいいるそうだよ?」
「そ、そそそそそ、それでもさぁ!その・・・俺なんかと・・・」
「僕は、アウラも愛してるし、君も愛してる。虫のいい話だと思うだろうけど、君を背負ってて気付いた。辛くても強がる君の支えになりたい。そう思ったんだ」
物語とかだと普通は男女逆だけどね、と苦笑する僕の顔をまじまじと見たアウラの大きなとび色の瞳から、涙が零れた。
「く、クロア・・・」
「・・・どうかな、こんな一回は振った虫のいい男を受け入れてくれる?」
「も、もちろんだっ!」
「むぐっ!?」
どごっと体当たりしてくるように、ニアは僕に抱きつくと僕の唇に自分の唇を触れさせた。
「ちゅっ・・・ちゅぷ・・・・」
恋人同士がするような、甘いフレンチキス。
アウラの情熱的なディープキスとは違い、こちらは触れてはすぐはなれ、また触れる軽いもの。だが、アウラとのキスに慣れきっている僕にはそれはどこか物足りなく、つい彼女の唇が触れた瞬間に、自分の舌をニアの唇に滑り込ませてしまう。
「うむっ!?」
ニアが驚いた顔をするが、彼女の舌を舌の先で軽くくすぐる用意なぜると、ニアの瞳がトロン、と淫蕩な光を宿し、ふさごうとしていた彼女の唇から力が抜けた。
僕はそれをいいことに、口を離すと彼女に言った。
「ニア・・・舌、だして・・・」
「こ、こうか・・・?」
「もうちょい口をあけて・・・うん、そんな感じ」
口をあけて、ニアの伸ばした舌に、空中で自分の舌を絡まらせる。
一度、アウラにやってみたら大変好評であごかつかれるまでやらされたことだ。
「ん・・・はぁ・・・あむ・・・ちゅ」
いやらしく、二人の下のこすれ合う、湿った音が部屋に響く。
その音が、余計に二人を興奮させ、舌の絡まりあうのも情熱がまし、どんどんと激しさを増していく。
「あふ・・・く、くりょあ・・・お、俺・・・もう我慢が・・・」
「・・・わかった」
僕は、ニアをベッドに押しつけるようにすると、開いた右手で、彼女の小さな皮鎧をはずし、そこに納められていた巨大な胸を顕わにさせた。
「で、でか・・・」
思わず呟いてしまった一言に、ニアは蕩けた顔でふふんとドヤ顔で言った。
「胸のでかさならアウラにも引けをとらねぇぜ。なんたってミノタウロスだからな」
「ふーん、じゃぁ感度は・・・」
と、僕は彼女の褐色の肌の頂点に立つ突起を指で弾いた。
「ひゃあああっ!?」
「おわっと、敏感みたいだね・・・」
びくびくびくっと背を反らせて痙攣するニアの反応に驚き長も、僕が言うが、ニアはハァハァハァっと荒い息を立てるだけで、返事をしない・・・
ニア?と僕が呼ぶと、ギロっと恨めしそうな目で僕を見た。
「い、いっちまったじゃねぇか・・・・このヤロウ・・・」
「ぇ、イったって・・・いまので?」
コクンとニアは頷いた。
指で弾いただけでイっちゃうなんて、どんだけ感度が良いんだ?と僕が考えていると、僕の下でニアがしきりに身体を動かした。
「?どうかした?」
「い、いや・・・その、俺のヘソの下辺りに・・・硬いもんが・・・」
「ぁー・・・」
言うまでもなく、いつもの姉御肌ではなく、乙女な反応やキスをするニアに興奮しきった僕の愚息だった。
「ぇーっと・・・なんといいますか・・・」
「ハハッ俺のでお前も興奮しちまったって事だろ?」
「・・・その通りです」
なんか風向きが変わったな、と思いながら、僕が答えると、ニアはニヤリと笑い、僕をその両手で抱きしめると、ぐるんッと一回転し、僕と身体の位置を入れ替えた。
「やっぱ、お前に責められんのなんて、俺のガラじゃねーよな」
「さ、さっきまであんなに乙女乙女してやがったくせに・・・っ」
「なんか言ったか?」
「な、なんでもないです・・・」
じろっとにらまれ、僕は慌ててそう答えてしまう。
アウラが特殊な種類だからか、あまり意識してこなかったが、世の魔物娘の夫は魔物娘の尻に敷かれるものらしい。その気持ちが少しわかったが、もうこれ以上はわかりたくないなぁ、と思った。
と、そんなことを考えている間に、アウラはごそごそと僕のベルトをはずしズボンを脱がせていた。そして、硬くなったムスコが姿を現す。
「こんなにチンコおおきくしやがって。そんなに俺を攻めるのが楽しかったか?」
「そ、そりゃぁ。好きな女の子とこんなことしてて楽しくない、なんていうのなんてよっぽど根性ひん曲がってるやつだと思うよ・・・・?」
「す、好きな女の子って・・・はっきり言いやがって・・・そ、そんなやつは、こうだっ」
攻めながらも顔を紅くするニアは苦し紛れに、自分の豊満を通り越した巨大な胸で挟み込んだ。そして、そのまま両手でこねくりまわすように胸でムスコを挟み込み、ムスコに快楽を流し込んできた。
「おわぁ!?」
「へへ、どうだ。おとなしくしやがれ」
残念ながら、アウラとはすることができなくなってしまったパイズリをここでできるとはっと妙な感動が押し寄せたが、それを押しのけるほど、ニアの胸の中は気持ちがよかった。
ぐにゅぐにゅと形を変え、ムスコを刺激してくる胸はやわらかく張りがあり、その谷間に挟み込まれていると、まるで膣に入れているかのような錯覚に陥る。
「クロア気持ちよさそうだな・・・」
満足げにニアは言うが、獣欲に支配されはじめた僕は更なる快楽を求めてしまう。
「に、ニア・・・さきっぽだけ咥えて・・・っ」
「さ、さきっぽっ、これのか・・・?」
「・・・そう・・・そのままいまみたいにして・・・」
「わ、わかった」
ニアはそういうと、挟み込んだ自分の胸から、僕のムスコのさきっぽ、亀頭の辺りだけを出した。そして、それを軽く咥え、そのままさっきのように両手でぐにゅぐにゅと胸の形を変えながら竿を包み込んだ。
「ん・・・んぶっちゅぷ・・・っぷ」
「く・・・あぁあ・・・」
思わずそんな声が僕の口から漏れる。
ニアの口で咥えられるしめった感触と、柔らかく包み、快楽を流し込んでくる胸の感触に、僕は早くも尿道をこみ上げてる熱いものを感じていた。
「うううっ・・・ニア・・・」
「んぶ、どうだ?イきそうなのか?」
「うん・・・ニアの胸とくちがよすぎていきそうだ・・・」
こうして話しているうちにも、ニアはその手を止めずに胸を動かし続けて、僕を絶頂へと近づかせていった。僕が正直にニアの口と胸の良さを言うと、彼女は顔をより紅く染めていった。
「へっへへ・・・さっきの仕返しだ。飲んでやるから俺の口の中に出しちまいなっ」
「わ、わかった・・・・っだすからな・・・っニアのなかにっ」
絶頂に達す直前に僕は自ら腰を突き出し、ニアの口の中にムスコを押し込むと、そのまま僕は達していまう。
どぶどぶっとニアの中に精液が流れ込んでいくのを感じながら、その快楽に僕はがくがくと腰を振るわせた。
ニアの中に精液が流れ込んでいくうちに彼女の唇とムスコの隙間から精液が少し零れ、彼女の顎を伝った。
「うっ・・・くはぁ・・・ま、まだ・・・で、でてる・・・」
ドピュドピュドピュと音が立ちそうなほど、僕のムスコから噴出す精液をニアはゴクゴクゴクゴクと喉を鳴らしながら、飲見続けていた。
「んぐ・・・むぅ・・・んぐ、んぐ」
「ぁあ・・・うっ」
「んぐ、んぐ、んぐ・・・っか、っぷはぁ」
その全てを飲み干すと、ニアはまるで酒を飲んだときのような声をあげた。そして、満足げに息切れしている僕に笑いかけてきていった。
「はぁっはぁっはぁっ・・・」
「へへっ・・・ずいぶんとすごい量だな、腹ん中、お前のザーメンでちゃぷちゃぷいいそうだ」
幸せそうにニアは笑うと、自分の胸の間から姿を現した、いまだに硬さを失っていない僕のムスコをやさしく掴んだ。
「ま、まだ平気そうだな・・・」
「はぁっはぁ・・・ま、まぁね・・・」
本体はかなり息切れしてるが、確かにムスコは一回出したくせにさっきよりも硬さを増しているようだった。
「・・・じゃぁ、そろそろ挿れて良いよな・・・?俺、もう我慢できなくなってきた・・・」
「わかった・・・」
魔物としての本能が出掛かってるのか、もう理性の色が失われたニアの瞳をみながら、僕はいった。
ニアの腰がゆっくりと持ち上がり、目の前にニアの臀部がさらされる。
「そ、そんなまじまじ見るなよ・・・」
「いや、これは・・・」
見るだろ・・・と呟く僕の目線の先には、さっきイったからだけでは明らかにない量の愛液がトロトロと垂れていた。
その様はまさに淫欲に狂い掛けていた魔物娘のものだった
「ふ、ふんっ。い、いれるからな・・・っ」
と、自分のモノと僕のムスコの先をあてがうやいなや、ニアは腰を落とした。
ズズズッとゆっくりとニアの中にムスコが沈み込んでいく。筋肉がついてるからか、膣自体が小さいアウラとはまた違った締め付けが僕を襲った。
「あぐぅっ」
「くぁっ」
ニアの中にムスコがゆっくりゆっくり埋もれていく。ムスコが突き進んでいくたびに、びくんと振るえる引き締まったニアの腰。
「あっ、あぐっ、うっく・・・く、クロアのがっ・・・くは、お、俺の中をかきわけてきやがる・・・っ」
ニアは喉を反らして辛そうな声で喘ぐ。だが、その口は魔物としての本能か欲情でゆるんでいた。
ゆっくりとムスコがニアの中を貫いていき、ニアの力強い膣壁に押しつぶされそうになりながらも、どんどんと奥へ潜り込んでいく。
そして、僕の腰とニアの腰が、ぶつかり、パンッという音を立てる。
「うぐっ」
「へ、へへ・・・ど、どうだ・・・?クロア?俺ん中は・・・?」
「き、気持ち良い・・・アウラの優しいけど狭いのとも違って、力強くて奥に吸い込まれるみたいだ・・・っ」
「そ、しりゃぁ・・・俺も、お前のが、気持ちよくて・・・入っただけで、体が震えやがるっ。入れただけでいっちまったみたいだ・・っ」
と、ニアは小刻みに震えながら、僕の胸板に手をつき、腰をゆっくり動かし始める。
「はぁはぁはぁ・・・い、いままで我慢した分抑えがきかなくなりそうだ・・・っ」
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅと音をたて、、
「くぅっ締まる」
ムスコを根元まで飲み込んだニアの膣内が、鍛えられた腹筋でムスコを締め上げ、絶妙の快楽を与えてくる。
「く・・・・い、いいよ・・・ニア・・・」
自然と、僕も腰を突き出し始めてしまい、ニアの中に突き立ったムスコがとろとろに蕩けている膣内をかきまぜる音が部屋響き渡る。
「あぐっあああっ・・・くふっいいぜ・・・チンコいいぃ・・・」
ニアは目をつぶり、ゆったりと体を揺らしながら僕の腰に自分の腰をからめて円を描く。気持ちよさそうなその唇から涎の筋とともに大きな喘ぎ声が漏れ始める。
お互いの腰がぶつかる音に、その結合部分から響き渡るしめった音は、だんだんと大きくなり、部屋中に響き渡るほどになっていた。
だが、僕はそのどちらかというと攻める側のアウラとの交わりではなく攻められる側の交わりにはなれていなく、無意識のうちに手が動き、ニアの豊満を通り越した巨乳をわしづかみにしてしまう。
「うっぐはぁあああ!?」
と、突然の刺激にニアがビックンっと背中を大きくそらせ、その衝撃で
「「ぁ」」
つるっとニアの足がシーツの上ですべり、ニアの大柄なからだがふわりと宙を浮く。
当然、その臀部にはまだ僕のモノが突き刺さっていて、そのまま落ちてくるとなれば・・・・
「あっがあああああ!!!!」
「うっぐうううううう!!!」
ドスッという音が立ちそうなほどの衝撃とともに二人の腰と腰がぶつかり根元までペニスが貫き通す。根本まで入った僕のムスコがニアの最奥のこりこりっとしたものに突き刺さった。
「あっぐ・・・・っくあ・・・クロア・・・っ」
「う・・・うぅ・・・に、ニア・・・」
その衝撃に、僕らは互いに限界が近いのを知ると、さらに動きの激しさをまし、まるで獣のようにお互い求め合い愛し合う。
ズンズンズンっズッジュズチュッと音がもれ、僕の突き刺す腰の動きやニアのグラインドする腰の激しさに、ベッドの脇のサイドテーブルがガタガタゆれ、僕らの寝ているベッドがギシギシときしむ。
だが、そんな音は獣のように肉の交わりにふける二人には関係なかった。
「あっぐっくっはっ・・・・ううぅ」
「はぁっはぁっはぁっ!いいっク、クロアのきもちいいぃっ。だめだっ、俺おかしくなるっ。頭ん中、ぐちゃぐちゃになる!胸、いじりながら腰振るなよぉl!」
「あぁ、僕もいいよっ、ニアっ。そ、それなら!ニアだってっ自分から押し付けるみたいに腰振ってるじゃないかぁ!」
「あっぐああっ!お、俺の奥、ゴリゴリしてっ!」
僕らの間で汗が迸り、二人の繋がる腰の間から淫液が弾け飛ぶ。僕はニアの胸を両手でこねくり回しながら腰を突き上げ、ニアはその応酬に、腰を大きく振って輪を描き、互いが互いに快楽を流し込んでいく。
ランプの明かりに照らされる薄暗い部屋は、熱気に満たされやがてそれは臨界点を迎えた。
「ぐうぅう、に、ニア!僕もう限界だっ!でる!」
「い、いいぜぇ!そのまま俺の奥に沢山だしてっ、あぁあぁクロアのザーメン、俺の中にくれぇえええ!」
ズンッと最後の最後に互いの腰が深くぶつかり、ムスコの先がニアの子宮
僕らは、汗をとばし獣のように絶叫する。
ドピュウウゥウ ドピュウ ドピュと、音が出そうなほど僕のムスコの先から飛び出した白いマグマは、密着した子宮口を通りの中に注ぎ込まれていく。
「くぅ・・・うっうううっ・・・・出てる・・・クロアの子種が、俺の中で泳いで・・・あぁまた・・・・うはぁぁ」
僕の腰の上に座ったミノタウロスはその引き締まった体を艶やかに動かしながら、それでも射精しつづける精液を魔物娘としての本能のまま一滴残さず貪欲に絞り取り、腹筋によって引き締まった腹に収めていく。
やがて、ムスコからでた精液が残らず、ニアの鍛えあげられた肉体を満たす。
「へ、へへっいっぱいでたな・・・」
汗まみれになりながら、ニアはばったりと僕の上に倒れこんできて、そのまま力なくのびてしまう。
「ニア・・・?」
「カー・・・スー・・・」
僕が心配になって軽く抱き起こすと、ニアは幸せそうな顔をして、眠り込んでしまっていた。
まったく、と苦笑しながら、僕はニアからムスコを抜く。と、その途端に、ごぽりっとニアの奥から白濁したものが、零れ落ちた。
だ、出しすぎたか・・・?と不安になるが、いまさら心配しても後の祭りというものだろう。
あきらめて部屋を出た時、はっと思い出した。
「あ、アウラっ・・・!」
了解してくれた上に気を利かせてくれたとはいえ、いくらなんでもあんなに激しくしてしまえば、彼女の耳にも届いているだろうと、慌てて探そうとした時だった。
「クロア君・・・」
壁から半分だけ顔を出して恨めしそうな視線を向けてくる黒い少女がいた。
冗談じゃなくて、本気で壁に身体が半分ほど突き刺さっている。髪もびみょうにざらついてるし、服もさっきまで来ていたものとは違う、ドッペルゲンガーとしての黒い布をつなぎ合わせたような特徴的な服装になっていた。
それは、彼女の魔物娘としての本能が暴走しかかっている証拠だった。
「あ、アウラ・・・」
「いいんだよ・・・?私もちゃんといいって言ったし。クロア君の中に、ちゃんと私がいるから・・・」
スポッと身体を壁から引き抜き、トトトッと駆け寄ってくると、アウラはそのまま僕に抱きついてきた。
そして、僕を見上げてくれるその瞳は切なげでそれでいて淫蕩に狂った妖しい光を宿していた。
「だけど・・・あんなに激しくされたら、こっちまでうずいちゃうよぉ・・・」
すっとアウラが僕の手をとり、導いてきた先はすでにさっきのニア以上に熱く、どろどろだった。
僕はそれに苦笑しながらも、彼女を放っておいた済まなさにも心が締め付けられ、彼女をひょいっと抱き上げた。
「く、クロア君・・・?」
「このまま寝室に行こうか」
「・・・うんっ」
僕が笑いかけると、アウラは力強く頷いた。ニアが寝ている方の客用ではない、いつもつかってる方の寝室へと向かった。
・・・僕は今日寝られるんだろうか・・・?
失恋した相手は幼馴染で、この前まで同棲してた彼女が死んで死にそうになってた仕事仲間、クロア・アーバイン。その憔悴してる姿にアウラには悪いが、はっきり言ってチャンスだと思ってた。
落ち込んでるあいつを俺が優しく立ち直らせてやれば、ずっと俺を見てくれなかった(と、思ってた)アイツも俺を見てくれるはずだ。と、思い実行しようにも、アイツの家の前で足が止まってしまう。
俺がこの思いを伝えたら、あいつは俺をいままでの親友として接してくれなくなってしまうのではないか?こんなナリな上にこんな男勝りな性格の俺が、こんな乙女な気持ちを持ってると知ったら、気持ち悪がって俺と口を利いてくれなくなってしまうのではないか?
そう思うと、どんな獣と対峙したときも震えなかった俺の足ががくがくと震え、いつもそのまま自分の家に帰ってしまっていた。
だけど、ここ二週間くらいあいつの様子が変だ。
妙に幸せ−な顔をしてると思えば、わざとらしい悲痛な顔をする。あぁ、これはあいつの嘘がつけない癖がでてんなー、と思い、鎌をかけてみれば、出てきたのは死んだアウラの姿を借りたドッペルゲンガーの存在。
また先を越されたのか!と思うと、もうあいつとの関係が壊れてしまう、なんて怖さも考えることができず、勢いのままにアイツに告白してしまった。もちろん、その答えはノーだったが、あいつもアウラと出会うまでは俺の事が好きだったと暴露してきやがった。
結局、その恥ずかしさともうアイツはそのドッペルゲンガーに心を奪われているのだ、と気付いた空しさが、俺を三日ほど家にひきこもらせている。
本当は、ドッペルゲンガーの方が嫌になっていなくなるだろう、と期待してた部分もあった。だけど、次の日、普通に出てきたアイツの顔は妙にすっきりしていて、事情を聞いてみれば、アタックしてオーケーをもらったとかぬかしやがるし、話してる間にその件のドッペルゲンガーが来るし、そいつも妙にいい奴で、俺はあぁ、こいつならクロアを任せられるかもな、と思った。
だけど、だけど!
「うううううううううああああああああ!!!!」
ボスンボスボスッ
言葉にならない叫び声をあげながら、アラクネに作ってもらった枕をどすどすと叩く。あいつはこうなることを予想してたのか、むだに頑丈に作りやがった。余計なお世話だ!と思うが、その心遣いにいまは感謝しなきゃなんないだろう。
好きだった男が、自分を好きだった。それだけであれば、岩をニ、三個砕いただけで落ち着いて、アイツをベッドニ引き擦り込むことだってできただろう。
だけど、それが自分がしり込みしている間に別の女にとられた。昔、本当のアウラにとられた時も同じ苦悩をしたが、今回は、あいつが自分のことを好きだったと知ったからか、あの時よりもさらに心が痛かった。
痛くて、痛くて、発散しようと斧を振り回してみてもだめで、隣の村まで出向いてって岩を砕きまくってみたりしても、寝ても夢のなかにアイツがでてきて、紛らわせなかった。
俺はそのどんなことをしても癒せないこの痛みに堪えながら、ボスンボスンッと枕を殴り続けた。そのうちさすがに穴が開くかもしれないが、そんなこたぁどうだっていい。
途中、隣の村に住む妹分が家の前でなんか言ってたきがするが、それも無視して、俺は一心に枕を叩いて、つかれたら寝て、を繰り返していた。そんな時だった。
「ニアー?大丈夫?」
あいつの声がした。
† † †
ここ数日、ニアが畑に出てこない。
最後に会ったのは、ニアとアウラがばちばちと火花を散らしていた日だ。
心配になっていたが、いくらニアでも女性の家に男が訪ねるのはなんだか失礼かなーと思っていけていない。それ以前に、ニアが落ち込んでいる理由はおそらくこの事件でだし、その発端である自分が慰めに行っても余計怒るだけではないか、と思いながら、机の上につっぷしていると、影がさした。
「クロア君、どうしたの?」
「あぁ、アウラ」
どこか、地味な雰囲気を持った女の子が僕を不思議そうに覗き込んでいた。
地味とは言っても、人形のようなきめ細かい白い肌に、夜のような黒く長い背中を垂れる髪、黒曜石のような大きな瞳を持った彼女は雰囲気が地味なだけで、その容姿は美少女、といって差し支えないものだった。
いまは黒のワンピースに着替えているが、告白したときの黒い布を重ね合わせたような服を着ていると、まるで夜の精のようだ。
「いやさ、ニアが最近畑に出てこないから心配になってね・・・」
「へぇ、ニアさんが・・・」
「恐らく僕が原因なんだと思うけど、その原因が慰めに行くのはどうかなー、と思って」
「うーん」
僕がいうと、アウラはむーと口に手をあてて考え込んだ。
仕事の方は、僕ががんばればなんとか回ってるから問題はないのだが、親友であり、この前知ったばっかりだが、かつて両思いだった相手が落ち込んでいるのを見過ごすのも、どうかと思う。
どうしたもんかなぁ、とだらーっとしていると、ドンドンドンッと玄関の叩かれる音がした。
「?」
「誰だろ、出てくるね」
と、アウラが戸口に出て行くと、その直後、アウラの驚いた声がして、どたばたと、何かが走ってきた。
「クロアさん!!」
「ミアス・・・」
バンッと扉をけり開けて入ってきたのは、肩までの金髪に、頭の上に黒い三角の耳をはやしたワーキャットのミアスだった。
隣の村にすんでるはずの彼女がどうして?と思っていると、突然つかみかかられガクガクガクと揺さぶられた。
「姉御に何やったんですか!!」
「はぁ?姉御?」
「ニアさんですよ!!!!」
「ぁー・・・」
そういえば妙に懐いてたな、と揺さぶられながら思っていると、ガシッとミアスの肩が白い手につかまれた。
「ひにゃぁっ!?」
「クロア君からっ・・・手を離しなさい・・・猫・・・っ」
肩をつかまれたミアスが驚いた声をあげ、がくがくと震えながら後ろをむくと、そこには黒髪をうねうねとメデューサのように動かしながら邪悪な雰囲気を撒き散らしてるアウラがいた。
よく見ると、つかまれたミアスの肩がギリギリギリギリッと音を立てている上に、掴んだアウラの白い手に血管が浮いていて、とんでも力がかかっているのがわかった。
「あ、アウラっ!いいからっ!そこまで怒んなくても大丈夫だから!」
「・・・わかった」
「ふ、ふなぁ・・・た、助かった・・・。く、クロアさんいつのまにこんな怖い人と付き合い始めたんですか・・・?」
「あ、ははは・・・」
涙目で肩をさすりながら言ってくるミアスに、僕は苦笑するしかなかった。へたすると子供と間違えられてしまいそうな身長のアウラが、小柄とはいえ立派なワーキャットであるミアスを怖がらせているのは、とてもシュールだった。もう変身できないとはいえ、アウラも立派な魔物娘ということだろうか。
アウラの新しい面が見れて嬉しい気もするが、そのあまりの怖さにとても複雑だった。
「で、ニアがどうしたの?最近畑に出てこなくて心配してたんだけど」
「そ、そうですよっ!・・・ひっ」
またもや僕に掴みかかろうとしたミアスが、髪の毛のさきっぽを蠢かせたアウラにおびえた視線を向け、手をとめながら、僕に言った。
「に、ニアさん、この三日、一歩も家から出てきてないんですよ!それで考えられるとしたら、クロアさんにふられたとしか考えられなくてっ。でも、それにしてはひどすぎるから、クロアさんが何かやったんだと思って飛んできたんですよ」
「そ、そうなんだ・・・」
あながち的外れではないので、否定はできないな・・・と思いながら、僕はニアの心配をした。
一歩も家からでてないなんて、あのときの僕と一緒じゃないか、とアウラを見ると、アウラも困った顔をしてこちらを見ていた。
「・・・アウラ。ニアとの関係をどうするとか以前に、僕はあいつの親友として、ニアの様子を見てくるけどいいよね?」
「うん、私にも原因があるから私も行きたいけど、やっぱりクロア君が一人で行ったほうが良いと思うから、ここで待ってるね・・・」
「じゃ、じゃあ今すぐにでも!ひぃっ!」
「あはは・・・そんなおびえなくていい、はずだよ」
「はずなんですかっ!?」
ミアスの動きに過敏に反応するアウラの髪とそれにおびえるミアスに苦笑しながら、僕は家をでて、ニアの家へと向かった。
「ふぅ・・・」
村の外れの洞窟を改造した一軒屋、ニアの家の前で僕は一人で立っていた。
途中までミアスも来ていたが、狩りの仕事があるのでーと帰っていった。彼氏との狩りは、彼女にとって姉御の体調不良よりも重いものらしい。まぁ、魔物娘らしいと言えばらしいが。
はぁ、とミアスと友人でもあるその彼氏のことを考えながら、ため息をついた。
というか、さっきから正体不明のボスボスボスボスと何かを殴り続けてる音が中からしてて怖いが、僕は息を整えると、コンコンッと大きな扉をノックした。
「ニアー?大丈夫?」
「く、クロア!?」
うわずったニアの声が家の中から響いてきた。その声にまだ元気があるのがわかって僕は安心する。
「いや、ここ最近畑に出てこないからさ。心配してきたんだよ。ミアスにもなんかしたかと勘違いされて殴りこまれるしね」
「わ、悪かった。も、もう大丈夫だ。明日はちゃんと出るから・・・。その、今日は帰ってくれ・・・」
苦笑しながら言うと、ニアが絶対に大丈夫なんかじゃない声で言った。
ニアが落ち込んでる理由も明白で、それが自分のせいなのだ。なら、ここで僕が彼女に謝らなくてどうする。
「・・・わかったよ、また明日・・・」
「・・・おう」
僕はそういいながらも、扉の鍵に万が一の時に、と思って持ってきた針金を差し込んだ。
昔、くそ親父の部屋に押し入るために覚えたピッキングがこんなときに役立つとはな、と複雑な気持ちになりながら僕は、針金をかちゃかちゃと動かし、鍵を開けた。
「・・・」
ニアに気付かれたら絶対に虚栄を張られるとわかってるので、鍵の開いた扉を静かに開き、足音を立てないようにしながら、僕はしずかにニアの家の中に忍び込んだ。
† † †
「これでよかったんだ」
俺は、うつぶせになって自分に言い聞かせるように言った。
俺が帰るように言うと、クロアはわかった、といって声がしなくなった。おそらくいったとおりに帰ってしまったのだろう。もうすこし粘ってくれても良いんじゃないか?とも思うが、アイツはもうあのアウラっていうドッペルゲンガーがいるんだ。告白もまともにできなかったノーキンな女なんて大人しく身を引くべきだろう。
「そうだ、俺みたいな、がさつで、脳筋で、男勝りな女があいつの隣になんていられないよな・・・」
もっとお淑やかな、いまのアウラみたいなのがお似合いだ、と呟いた。
だから、こんなに心が痛くても、こんなに切なくても、こんなにアイツがすきでも、泣く必要なんてないんだよ。最初から、あいつの隣に入られなかったんだから・・・そう思ったときだった。
そっと俺の背中に誰かが触れた。
「そんなことないさ」
† † †
僕は、ニアの呟く声を廊下の陰に隠れて聞いていた。だが、その呟きに我慢ができず、ついニアに駆け寄ってその背中をさすっていってしまった。
「ニアは、確かに不器用なとこがあるけど、それを気にしてるのも知ってるし、自分の性格が嫌いなのも知ってる。僕は、アウラのことを愛してるし、大事にしたいと思ってる、けど、ニアだって大事にしたいと思ってるよ」
僕が優しく語り掛けると、ぐすっぐすっと鼻を鳴らしてたニアの動きが止まった。
「・・・親友として?」
「・・・どうだろ、ちょっと前ならそう答えたかもしれないけど、今はどういって良いのかわかんないかな」
「・・・アウラのことを愛してるんなら、あいつだけを愛してやれよ。男ならよ・・・」
「確かに、男気あふれるやつならそうするべきだろうね」
ですが、僕はこんななよなよした男ですから、と苦笑していうと、ニアもうつぶせになったままクククッと体を振るわせた。
「女男」
「男女には言われたくないかな」
もっと幼い頃のケンカした時のお互いの呼び名を口にしながら、僕は笑った。
思い返すと、あの頃はニアが好きでへんに意地張って、いつもニアに迷惑かけてたなぁ・・・と思い出を懐かしんでいると、ニアの体がもぞもぞっと起き上がり、こちらを向いてベッド上であぐらをかいた。
「ハァ、お前と話してるとなんだか悩んでるのが馬鹿らしくなってくるよ」
「それは光栄」
「ちょっとまってろ、せっかくきたんだしお茶でも入れる、さ?」
「おわぁっ!?」
ニアが立ち上がり、ベッドから降りようとした瞬間、彼女の体がぐらっとゆれ僕の方へと倒れこんできた。ドズンッと大の大人一人分以上の重さがあるニアの身体に押しつぶされながら、僕は彼女の下から這い出る。その途中になにやら異常にやわらかいものに触れたが、意識してそれがなにか考えないようにした。
「に、ニア?」
「あ、あれ?おかしいな・・・ち、力がはいんねぇや・・・」
「ちょっ!やっぱり大丈夫じゃないじゃないか!」
「へ、平気だっつぅの、これくらいっ」
とニアは、腕立て伏せの要領で身体を起き上がらせようとするが、その腕も力がはいらず、ぷるぷると震えるだけで、起き上がれない。
僕は悲痛な眼でそれをみると、彼女の下にもういちど潜り込んで下から彼女の身体を持ち上げた。
「ちょ、クロア!?」
ニアが驚いた声をあげるので、僕はそれに歯を食いしばりながら足を踏み出し、一歩一歩ゆっくりと歩いていく。
「お、お姫様抱っこはさすがに無理だけどっ抱えあげるくらいなら、僕だってできるんだぞッ・・・」
「そ、それはわかったから!俺を持ち上げてどうするんだよ!」
「このまま・・・家に連れてく・・・っ悪いけど、ここじゃなくてあっちの方が、アウラにも手伝ってもらえるから・・・っ」
「いや!そ、そんな手伝ってもらうなんてことねぇだろ!ただの立ちくらみだって!」
「空元気はやめろ!」
「!」
「き、君はいつだってそうだ。だ、誰よりも大変なときに、余裕そうに見せるっ・・・誰よりも辛い時に元気なように見せる・・・っ」
「だ、だって・・・俺はこんなナリだから、力仕事とかにも向いてるし・・・っ」
「だから・・・どうしたって、いうんだよ・・・っ。何で、僕が好きになる女の子はみんなこうなのかなぁっ!?」
ニアの家をでて、死にそうになりながらも一応鍵を閉めて、また歩いていく。
幸い、村の皆は狩りやら畑仕事に出ているようなので、ニアが恥ずかしがって暴れることはないだろう。
「だってよ、種族的にだってっ!」
「種族なんてどうだって良いだろ・・・?ニアはニアなんだから。・・・全く、アウラと似たような事いって・・・っ。僕はな・・・っドッペルゲンンガーだから、だましてたから、だなんて気にしない。むしろ、アウラがそうやって立ち直らせてくれたことに感謝してるっ。それと同じでっ、ニアがミノタウロスだからって、男扱いしないしっ、女じゃないなんて思ってもないっ」
「クロア・・・」
「僕が、いうことじゃないだろうけど・・・っ辛い時は辛いって言え!」
「・・・ごめん・・・」
手が震えても、ニアだけは落とさないようにしっかり地面に足を叩きつける。
僕が泣き寝入りするだけの領主の息子から変わっている、と証明するためにも、言いたいことは言うし、見てみぬ振りなどは絶対にしない、今のアウラに立ち直らせてもらってから決めた事のひとつだった。
† † †
「ふぅ・・・ただの栄養失調だよ・・・どこかの誰かさんと一緒で、ずーっと寝てて食べ物も食べなかったと思う」
「・・・耳のいたい話だね・・・」
スゥスゥと寝息をたてるニアの寝顔をみながら、アウラと僕はいった。
あの後、静かに寝てしまったニアを抱えて家に戻ると、アウラはこうなることを予測してたのか客用のベッドを掃除してくれていた。そのベッドに寝かしつけ、アウラと書斎にある本を引っ掻き回して、ようやくただの栄養失調だとわかった。
三日ほどの絶食など、人間にしたら軽いものだけど、彼女は魔物娘な上にミノタウロスだ。食べる量は人間の何倍なのに、絶食すればこうもなるだろう。
「・・・アウラ・・・」
「・・・クロア君が何をいいたいのかはわかるよ」
トスッとベッドの脇においてあったイスに座りながら、アウラは言った。
「私は、クロア君が好き、誰よりも。それは愛してるって言って良いほどだと思う」
「・・・僕もだ」
「だからね?私はクロア君が辛そうな顔を見るのは嫌。たとえそれが、私じゃない、別の女のことを考えてのことでも」
「・・・」
「・・・一つ、私をこれまでと同じ・・・うぅん、これまで以上に愛して。ふたっつ、私を置いていかないで・・・」
悲しそうな瞳で見るアウラに、僕は近づき、その細く脆そうな身体を抱きしめた。
「わかってる、アウラ。僕は君を絶対に放さない・・・」
「・・・うん」
うなづくと、アウラは立ち上がり、今日はニアさんに譲ってあげる、といって部屋から出て行った。
よくできた妻に感謝しながら、僕はアウラの座っていた椅子にすわると、寝込んだままのニアの頭を撫でた。その寝顔はとてもあどけなく、いつも強気で姉御肌なニアとは別人に見えた。
と、その褐色の目蓋が震え、ゆっくりとそのとび色の瞳が姿を表す。
「起きた?」
「クロア・・・?何で俺の家に・・・?あれ?」
「覚えてないの?倒れたニアを家から僕の家にはこんだんだよ?」
むくり、と身体をおこし辺りを見回すニアの子供っぽいしぐさに苦笑しながら、僕はアウラに作ってもらったシチューを彼女に差し出す。
「ぁあ、そうだっけか・・・」
「栄養失調らしいから、これ食べて。アウラが作ってくれた」
かたじけねぇ、と妙に男前にいいながら、ニアは皿をうけとり、スプーンをにぎってシチューをのみ始めた。
「・・・美味いな」
「アウラは料理が上手いからね。作ってくれる大抵のものがおいしいよ」
「俺にはまね出来ない芸当だ」
「そう?アウラに習ってみたらできると思うよ?」
むりだって、と苦笑しながら、ニアはシチューを啜った。
彼女が飲み終わるのを待って、僕は話を切り出した。
「ニア」
「なんだよ、改まって」
「アウラと話した。彼女は良いって言ってくれた。あとは君だけだ」
「な、何の話だよ・・・」
状況がさっぱり理解できない、とでもいいたげな視線をニアは僕に向けてくるが、僕は大真面目な顔をして続けた。
「・・・僕と結婚してくれ、ニア」
「は?はああああああああああああああああっ!?おまっ!?ばっか!アウラはどうすんだっ!?はぁぁ!?」
ぼっと顔を真っ赤にしてニアは僕からあとずさって叫んだ。その拍子にずりっとベッドから少し落ちて、仰向けに倒れる。その様子を僕は微笑ましく思いながらも、その隙を逃さずに彼女へとのしかかる。
短めに切られた茶髪が僕を見つめる鳶色の瞳が不安げに揺れる。
「アウラも僕の妻のまま、君も僕のものにする。知ってる?この村だとあんまり知られてないけど、魔物娘と重婚する男はいっぱいいるそうだよ?」
「そ、そそそそそ、それでもさぁ!その・・・俺なんかと・・・」
「僕は、アウラも愛してるし、君も愛してる。虫のいい話だと思うだろうけど、君を背負ってて気付いた。辛くても強がる君の支えになりたい。そう思ったんだ」
物語とかだと普通は男女逆だけどね、と苦笑する僕の顔をまじまじと見たアウラの大きなとび色の瞳から、涙が零れた。
「く、クロア・・・」
「・・・どうかな、こんな一回は振った虫のいい男を受け入れてくれる?」
「も、もちろんだっ!」
「むぐっ!?」
どごっと体当たりしてくるように、ニアは僕に抱きつくと僕の唇に自分の唇を触れさせた。
「ちゅっ・・・ちゅぷ・・・・」
恋人同士がするような、甘いフレンチキス。
アウラの情熱的なディープキスとは違い、こちらは触れてはすぐはなれ、また触れる軽いもの。だが、アウラとのキスに慣れきっている僕にはそれはどこか物足りなく、つい彼女の唇が触れた瞬間に、自分の舌をニアの唇に滑り込ませてしまう。
「うむっ!?」
ニアが驚いた顔をするが、彼女の舌を舌の先で軽くくすぐる用意なぜると、ニアの瞳がトロン、と淫蕩な光を宿し、ふさごうとしていた彼女の唇から力が抜けた。
僕はそれをいいことに、口を離すと彼女に言った。
「ニア・・・舌、だして・・・」
「こ、こうか・・・?」
「もうちょい口をあけて・・・うん、そんな感じ」
口をあけて、ニアの伸ばした舌に、空中で自分の舌を絡まらせる。
一度、アウラにやってみたら大変好評であごかつかれるまでやらされたことだ。
「ん・・・はぁ・・・あむ・・・ちゅ」
いやらしく、二人の下のこすれ合う、湿った音が部屋に響く。
その音が、余計に二人を興奮させ、舌の絡まりあうのも情熱がまし、どんどんと激しさを増していく。
「あふ・・・く、くりょあ・・・お、俺・・・もう我慢が・・・」
「・・・わかった」
僕は、ニアをベッドに押しつけるようにすると、開いた右手で、彼女の小さな皮鎧をはずし、そこに納められていた巨大な胸を顕わにさせた。
「で、でか・・・」
思わず呟いてしまった一言に、ニアは蕩けた顔でふふんとドヤ顔で言った。
「胸のでかさならアウラにも引けをとらねぇぜ。なんたってミノタウロスだからな」
「ふーん、じゃぁ感度は・・・」
と、僕は彼女の褐色の肌の頂点に立つ突起を指で弾いた。
「ひゃあああっ!?」
「おわっと、敏感みたいだね・・・」
びくびくびくっと背を反らせて痙攣するニアの反応に驚き長も、僕が言うが、ニアはハァハァハァっと荒い息を立てるだけで、返事をしない・・・
ニア?と僕が呼ぶと、ギロっと恨めしそうな目で僕を見た。
「い、いっちまったじゃねぇか・・・・このヤロウ・・・」
「ぇ、イったって・・・いまので?」
コクンとニアは頷いた。
指で弾いただけでイっちゃうなんて、どんだけ感度が良いんだ?と僕が考えていると、僕の下でニアがしきりに身体を動かした。
「?どうかした?」
「い、いや・・・その、俺のヘソの下辺りに・・・硬いもんが・・・」
「ぁー・・・」
言うまでもなく、いつもの姉御肌ではなく、乙女な反応やキスをするニアに興奮しきった僕の愚息だった。
「ぇーっと・・・なんといいますか・・・」
「ハハッ俺のでお前も興奮しちまったって事だろ?」
「・・・その通りです」
なんか風向きが変わったな、と思いながら、僕が答えると、ニアはニヤリと笑い、僕をその両手で抱きしめると、ぐるんッと一回転し、僕と身体の位置を入れ替えた。
「やっぱ、お前に責められんのなんて、俺のガラじゃねーよな」
「さ、さっきまであんなに乙女乙女してやがったくせに・・・っ」
「なんか言ったか?」
「な、なんでもないです・・・」
じろっとにらまれ、僕は慌ててそう答えてしまう。
アウラが特殊な種類だからか、あまり意識してこなかったが、世の魔物娘の夫は魔物娘の尻に敷かれるものらしい。その気持ちが少しわかったが、もうこれ以上はわかりたくないなぁ、と思った。
と、そんなことを考えている間に、アウラはごそごそと僕のベルトをはずしズボンを脱がせていた。そして、硬くなったムスコが姿を現す。
「こんなにチンコおおきくしやがって。そんなに俺を攻めるのが楽しかったか?」
「そ、そりゃぁ。好きな女の子とこんなことしてて楽しくない、なんていうのなんてよっぽど根性ひん曲がってるやつだと思うよ・・・・?」
「す、好きな女の子って・・・はっきり言いやがって・・・そ、そんなやつは、こうだっ」
攻めながらも顔を紅くするニアは苦し紛れに、自分の豊満を通り越した巨大な胸で挟み込んだ。そして、そのまま両手でこねくりまわすように胸でムスコを挟み込み、ムスコに快楽を流し込んできた。
「おわぁ!?」
「へへ、どうだ。おとなしくしやがれ」
残念ながら、アウラとはすることができなくなってしまったパイズリをここでできるとはっと妙な感動が押し寄せたが、それを押しのけるほど、ニアの胸の中は気持ちがよかった。
ぐにゅぐにゅと形を変え、ムスコを刺激してくる胸はやわらかく張りがあり、その谷間に挟み込まれていると、まるで膣に入れているかのような錯覚に陥る。
「クロア気持ちよさそうだな・・・」
満足げにニアは言うが、獣欲に支配されはじめた僕は更なる快楽を求めてしまう。
「に、ニア・・・さきっぽだけ咥えて・・・っ」
「さ、さきっぽっ、これのか・・・?」
「・・・そう・・・そのままいまみたいにして・・・」
「わ、わかった」
ニアはそういうと、挟み込んだ自分の胸から、僕のムスコのさきっぽ、亀頭の辺りだけを出した。そして、それを軽く咥え、そのままさっきのように両手でぐにゅぐにゅと胸の形を変えながら竿を包み込んだ。
「ん・・・んぶっちゅぷ・・・っぷ」
「く・・・あぁあ・・・」
思わずそんな声が僕の口から漏れる。
ニアの口で咥えられるしめった感触と、柔らかく包み、快楽を流し込んでくる胸の感触に、僕は早くも尿道をこみ上げてる熱いものを感じていた。
「うううっ・・・ニア・・・」
「んぶ、どうだ?イきそうなのか?」
「うん・・・ニアの胸とくちがよすぎていきそうだ・・・」
こうして話しているうちにも、ニアはその手を止めずに胸を動かし続けて、僕を絶頂へと近づかせていった。僕が正直にニアの口と胸の良さを言うと、彼女は顔をより紅く染めていった。
「へっへへ・・・さっきの仕返しだ。飲んでやるから俺の口の中に出しちまいなっ」
「わ、わかった・・・・っだすからな・・・っニアのなかにっ」
絶頂に達す直前に僕は自ら腰を突き出し、ニアの口の中にムスコを押し込むと、そのまま僕は達していまう。
どぶどぶっとニアの中に精液が流れ込んでいくのを感じながら、その快楽に僕はがくがくと腰を振るわせた。
ニアの中に精液が流れ込んでいくうちに彼女の唇とムスコの隙間から精液が少し零れ、彼女の顎を伝った。
「うっ・・・くはぁ・・・ま、まだ・・・で、でてる・・・」
ドピュドピュドピュと音が立ちそうなほど、僕のムスコから噴出す精液をニアはゴクゴクゴクゴクと喉を鳴らしながら、飲見続けていた。
「んぐ・・・むぅ・・・んぐ、んぐ」
「ぁあ・・・うっ」
「んぐ、んぐ、んぐ・・・っか、っぷはぁ」
その全てを飲み干すと、ニアはまるで酒を飲んだときのような声をあげた。そして、満足げに息切れしている僕に笑いかけてきていった。
「はぁっはぁっはぁっ・・・」
「へへっ・・・ずいぶんとすごい量だな、腹ん中、お前のザーメンでちゃぷちゃぷいいそうだ」
幸せそうにニアは笑うと、自分の胸の間から姿を現した、いまだに硬さを失っていない僕のムスコをやさしく掴んだ。
「ま、まだ平気そうだな・・・」
「はぁっはぁ・・・ま、まぁね・・・」
本体はかなり息切れしてるが、確かにムスコは一回出したくせにさっきよりも硬さを増しているようだった。
「・・・じゃぁ、そろそろ挿れて良いよな・・・?俺、もう我慢できなくなってきた・・・」
「わかった・・・」
魔物としての本能が出掛かってるのか、もう理性の色が失われたニアの瞳をみながら、僕はいった。
ニアの腰がゆっくりと持ち上がり、目の前にニアの臀部がさらされる。
「そ、そんなまじまじ見るなよ・・・」
「いや、これは・・・」
見るだろ・・・と呟く僕の目線の先には、さっきイったからだけでは明らかにない量の愛液がトロトロと垂れていた。
その様はまさに淫欲に狂い掛けていた魔物娘のものだった
「ふ、ふんっ。い、いれるからな・・・っ」
と、自分のモノと僕のムスコの先をあてがうやいなや、ニアは腰を落とした。
ズズズッとゆっくりとニアの中にムスコが沈み込んでいく。筋肉がついてるからか、膣自体が小さいアウラとはまた違った締め付けが僕を襲った。
「あぐぅっ」
「くぁっ」
ニアの中にムスコがゆっくりゆっくり埋もれていく。ムスコが突き進んでいくたびに、びくんと振るえる引き締まったニアの腰。
「あっ、あぐっ、うっく・・・く、クロアのがっ・・・くは、お、俺の中をかきわけてきやがる・・・っ」
ニアは喉を反らして辛そうな声で喘ぐ。だが、その口は魔物としての本能か欲情でゆるんでいた。
ゆっくりとムスコがニアの中を貫いていき、ニアの力強い膣壁に押しつぶされそうになりながらも、どんどんと奥へ潜り込んでいく。
そして、僕の腰とニアの腰が、ぶつかり、パンッという音を立てる。
「うぐっ」
「へ、へへ・・・ど、どうだ・・・?クロア?俺ん中は・・・?」
「き、気持ち良い・・・アウラの優しいけど狭いのとも違って、力強くて奥に吸い込まれるみたいだ・・・っ」
「そ、しりゃぁ・・・俺も、お前のが、気持ちよくて・・・入っただけで、体が震えやがるっ。入れただけでいっちまったみたいだ・・っ」
と、ニアは小刻みに震えながら、僕の胸板に手をつき、腰をゆっくり動かし始める。
「はぁはぁはぁ・・・い、いままで我慢した分抑えがきかなくなりそうだ・・・っ」
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅと音をたて、、
「くぅっ締まる」
ムスコを根元まで飲み込んだニアの膣内が、鍛えられた腹筋でムスコを締め上げ、絶妙の快楽を与えてくる。
「く・・・・い、いいよ・・・ニア・・・」
自然と、僕も腰を突き出し始めてしまい、ニアの中に突き立ったムスコがとろとろに蕩けている膣内をかきまぜる音が部屋響き渡る。
「あぐっあああっ・・・くふっいいぜ・・・チンコいいぃ・・・」
ニアは目をつぶり、ゆったりと体を揺らしながら僕の腰に自分の腰をからめて円を描く。気持ちよさそうなその唇から涎の筋とともに大きな喘ぎ声が漏れ始める。
お互いの腰がぶつかる音に、その結合部分から響き渡るしめった音は、だんだんと大きくなり、部屋中に響き渡るほどになっていた。
だが、僕はそのどちらかというと攻める側のアウラとの交わりではなく攻められる側の交わりにはなれていなく、無意識のうちに手が動き、ニアの豊満を通り越した巨乳をわしづかみにしてしまう。
「うっぐはぁあああ!?」
と、突然の刺激にニアがビックンっと背中を大きくそらせ、その衝撃で
「「ぁ」」
つるっとニアの足がシーツの上ですべり、ニアの大柄なからだがふわりと宙を浮く。
当然、その臀部にはまだ僕のモノが突き刺さっていて、そのまま落ちてくるとなれば・・・・
「あっがあああああ!!!!」
「うっぐうううううう!!!」
ドスッという音が立ちそうなほどの衝撃とともに二人の腰と腰がぶつかり根元までペニスが貫き通す。根本まで入った僕のムスコがニアの最奥のこりこりっとしたものに突き刺さった。
「あっぐ・・・・っくあ・・・クロア・・・っ」
「う・・・うぅ・・・に、ニア・・・」
その衝撃に、僕らは互いに限界が近いのを知ると、さらに動きの激しさをまし、まるで獣のようにお互い求め合い愛し合う。
ズンズンズンっズッジュズチュッと音がもれ、僕の突き刺す腰の動きやニアのグラインドする腰の激しさに、ベッドの脇のサイドテーブルがガタガタゆれ、僕らの寝ているベッドがギシギシときしむ。
だが、そんな音は獣のように肉の交わりにふける二人には関係なかった。
「あっぐっくっはっ・・・・ううぅ」
「はぁっはぁっはぁっ!いいっク、クロアのきもちいいぃっ。だめだっ、俺おかしくなるっ。頭ん中、ぐちゃぐちゃになる!胸、いじりながら腰振るなよぉl!」
「あぁ、僕もいいよっ、ニアっ。そ、それなら!ニアだってっ自分から押し付けるみたいに腰振ってるじゃないかぁ!」
「あっぐああっ!お、俺の奥、ゴリゴリしてっ!」
僕らの間で汗が迸り、二人の繋がる腰の間から淫液が弾け飛ぶ。僕はニアの胸を両手でこねくり回しながら腰を突き上げ、ニアはその応酬に、腰を大きく振って輪を描き、互いが互いに快楽を流し込んでいく。
ランプの明かりに照らされる薄暗い部屋は、熱気に満たされやがてそれは臨界点を迎えた。
「ぐうぅう、に、ニア!僕もう限界だっ!でる!」
「い、いいぜぇ!そのまま俺の奥に沢山だしてっ、あぁあぁクロアのザーメン、俺の中にくれぇえええ!」
ズンッと最後の最後に互いの腰が深くぶつかり、ムスコの先がニアの子宮
僕らは、汗をとばし獣のように絶叫する。
ドピュウウゥウ ドピュウ ドピュと、音が出そうなほど僕のムスコの先から飛び出した白いマグマは、密着した子宮口を通りの中に注ぎ込まれていく。
「くぅ・・・うっうううっ・・・・出てる・・・クロアの子種が、俺の中で泳いで・・・あぁまた・・・・うはぁぁ」
僕の腰の上に座ったミノタウロスはその引き締まった体を艶やかに動かしながら、それでも射精しつづける精液を魔物娘としての本能のまま一滴残さず貪欲に絞り取り、腹筋によって引き締まった腹に収めていく。
やがて、ムスコからでた精液が残らず、ニアの鍛えあげられた肉体を満たす。
「へ、へへっいっぱいでたな・・・」
汗まみれになりながら、ニアはばったりと僕の上に倒れこんできて、そのまま力なくのびてしまう。
「ニア・・・?」
「カー・・・スー・・・」
僕が心配になって軽く抱き起こすと、ニアは幸せそうな顔をして、眠り込んでしまっていた。
まったく、と苦笑しながら、僕はニアからムスコを抜く。と、その途端に、ごぽりっとニアの奥から白濁したものが、零れ落ちた。
だ、出しすぎたか・・・?と不安になるが、いまさら心配しても後の祭りというものだろう。
あきらめて部屋を出た時、はっと思い出した。
「あ、アウラっ・・・!」
了解してくれた上に気を利かせてくれたとはいえ、いくらなんでもあんなに激しくしてしまえば、彼女の耳にも届いているだろうと、慌てて探そうとした時だった。
「クロア君・・・」
壁から半分だけ顔を出して恨めしそうな視線を向けてくる黒い少女がいた。
冗談じゃなくて、本気で壁に身体が半分ほど突き刺さっている。髪もびみょうにざらついてるし、服もさっきまで来ていたものとは違う、ドッペルゲンガーとしての黒い布をつなぎ合わせたような特徴的な服装になっていた。
それは、彼女の魔物娘としての本能が暴走しかかっている証拠だった。
「あ、アウラ・・・」
「いいんだよ・・・?私もちゃんといいって言ったし。クロア君の中に、ちゃんと私がいるから・・・」
スポッと身体を壁から引き抜き、トトトッと駆け寄ってくると、アウラはそのまま僕に抱きついてきた。
そして、僕を見上げてくれるその瞳は切なげでそれでいて淫蕩に狂った妖しい光を宿していた。
「だけど・・・あんなに激しくされたら、こっちまでうずいちゃうよぉ・・・」
すっとアウラが僕の手をとり、導いてきた先はすでにさっきのニア以上に熱く、どろどろだった。
僕はそれに苦笑しながらも、彼女を放っておいた済まなさにも心が締め付けられ、彼女をひょいっと抱き上げた。
「く、クロア君・・・?」
「このまま寝室に行こうか」
「・・・うんっ」
僕が笑いかけると、アウラは力強く頷いた。ニアが寝ている方の客用ではない、いつもつかってる方の寝室へと向かった。
・・・僕は今日寝られるんだろうか・・・?
11/08/08 15:24更新 / うぃる こと 7
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