読切小説
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水竜術士物語

『竜術』
それは3000年以上前に失われた幻の魔法。

ドラゴンには、この世界を構成する元素を操る力を秘めていて、
大昔にはその圧倒的な力だけではなく、個々が持つ魔力を操ることで
すべての生物の頂点に君臨していたといわれている。
だが、ドラゴンの持つ魔力を最も効率よく扱えたのは人間だった。
ドラゴンと人間が出合い、やがて竜術が生み出されると、
ドラゴンたちはこぞって優秀な人間を自分のパートナーとし、
一時期は現代のように人とドラゴンが当たり前のように寄り添って
生活を営んでいた時代があったほどだ。

だが、ドラゴンたちの繁栄に危機感を覚えた者たちがいた。
そう……主神をはじめとする高位の神々たちだ。
神々はドラゴンたちに人間を解放するよう通告したが、
すでにお互いの存在に依存し合っているドラゴンたちはこれを拒否。
ついに神とドラゴン勢力は全面衝突した。
その上、当時の第3代魔王もまた、自分たち魔物の下僕となる
『魔獣術士』を得るべく竜術士たちを攫い、
こちらもまたドラゴンとの全面戦争に突入することになった。

すでに魔王や神すらしのぐ力を持つに至ったドラゴンたちの長『竜王』。
その最後の竜王はドラゴンの中で飛びぬけて強力な種族『暗竜』だった。
戦の中で、主神の放った投槍の一撃を受けて、竜王の竜術士が絶命すると
怒り狂った竜王は力を暴走させて、世界の半分を壊してしまう………


結局、世界が一度崩壊した後に残ったドラゴンは1%にすら満たなかった。
現在のドラゴンはもはや自分たちが人間をパートナーとしていた時代が
あったことを覚えてはいないだろう。
いや、正確に言えば現魔王の時代になってからは人間と結ばれた
ドラゴンもちらほら見かけるようにはなった。

だが……お互いを愛するという最大の幸福を手に入れた彼女たちにとって
竜術はもう不要な物なのかもしれない………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 
 

「ん、んーっ!」

朝――太陽が東から顔をわずかにのぞかせたばかりの早い時間に
水竜アイネ・キュアノエイデスはもぞもぞと体を動かし目を覚ました。

水竜という名の通り、その容姿は全身くまなく水の色をしていて、
かかとまで届くほど長い髪の毛も、ドラゴンにしては珍しくくりっとした瞳も、
手足の随所に見えるきめ細かな鱗も、硬さを感じさせない尻尾も、
彼女の体全てがやさしい青色で統一されていて、
唯一頭に生えた二本の角だけは鋭い銀色をしている。
献身的で一途な性格はドラゴンというよりかはウィンディーネのようで、
今まで他人と喧嘩すらしたことがない。

そんなアイネは目覚めるとすぐに、自分の体が布団ではない
暖かい何かに包まれていることに気が付いた。
いや、気が付いたというよりもそこにあることを確認したといったほうが正しいか。
彼女の体は人間男性の体に丁寧に包まれていて、アイネもまた
自らの四肢を要所要所に絡めてお互いの肌が最大限に密着するような格好。
おそらく一晩じゅうずっとこの態勢のまま過ごしたのだろう。
アイネがすっと息を吸うと、お互いの体臭がまじりあった
何とも言えない甘酸っぱい香りが彼女の鼻腔を冒した。

「旦那様ったらこんな無防備な顔で寝ちゃって♪」

彼女に抱き着かれながら、まだぐっすり眠っている彼はスーラ・フォン・キュアノエイデス。
髪の毛はぼさぼさで、ヘラヘラしたようなしまりのない顔をした彼だが、
こう見えても彼はアイネの夫であると同時に………
失われたはずの竜術を操ることができる『竜術士』なのである。

「そんな顔見せたら……んっ、奥さんが発情しても知りませんよ♪」

ちゅっ♪

ドラゴンに限らず、魔物の妻相手に寝顔をさらすのはある意味危険だ。
その上、朝勃ちなぞしてようものなら(生理現象だから仕方ないが)……
こうして朝に弱いスーラはいつものように寝起きの妻に襲われることになる。
昨日の夜もお互いが満足するまで交わったにもかかわらず、
アイネの性欲は朝から盛んに燃え盛っていた……


……


「んっ……ぁっ、な…何?なんだか、きもち…いいような……?」
「んふふ♪朝ですよ旦那様、起きてくださいね♪」

スーラが眠りの底から意識を呼び覚ますと、
何やら下半身が柔らかいものに包まれて、凄まじい快感に襲われる。
それもそのはず。むき出しになったスーラの一物が
アイネの豊かすぎる胸に挟まれてしごかれているのだ。
おまけに先端部は器用に唇や下で嬲られている。

「どうですか旦那様、愛する妻の目覚ましパイズリフェラの感触♪
今日も旦那様の朝一番搾りたっぷり頂いちゃいますね♪
それっ、しゅっしゅ、しゅっしゅ♪ちゅぷ、ちゅぱっ♪」
「う……う〜ん、…アイネ?あ……なんか、でる………」

自分の身に何が起きているのか。毎朝のことなのですぐにわかりそうな気がするが、
あいにく完全に寝ぼけているスーラは思考能力が大幅に低下していて、
起き上がろうともせず、流れ込む快感に完全に身を任せるほかない。

「んっ、あ…………っ!」
「ひゃんっ♪」

ついに寝ぼけたままアイネの口に精を放つスーラ。
アイネも最後の一滴間で搾り取ろうと胸を下から上へとしごきあげ、
鈴口から並はずれた吸引力で吸い上げる。

「おいひぃ……一番搾り最高♪」

愛する夫の精液を呑み込んだ彼女は角から尻尾の先までブルッと震わせると、
我慢できず自身の蜜壺から愛液を吹きだして、ちょうど真下にあった夫の顔に直撃させた。
すると、その濃い愛液の匂いでようやくスーラも完全に目を覚ました。

「あ、おはようございます旦那様♪」
「ああ……おはようアイネ………………って、ちょっと待った!
また人が寝ている間にエッチなことしたでしょ!あれほど言ったのに!」
「きゃーー♪」

こうして今日も水竜アイネと水竜術士スーラの一日が始まる。
 
 
 
 
 

 
 
 
ここは、魔王城がある世界の中心から遠く遠く離れた北方の地クールラギン。
巨大な人間帝国の辺境中の辺境であるこの地にすむスーラという男は
はるか昔に失われた魔法『竜術』を使う『竜術士』である。

竜術士は基本的に精霊と契約して術を使う『精霊術士』と似ていて、
ドラゴンがつかさどる属性の術をドラゴンの力を借りて操ることができる。
その代り、ほとんどの竜術士はドラゴンを子供のころから共に育て上げ、
場合によっては卵の時から、まだ未熟なドラゴンたちの育て親になるのである。
竜術士の元で育ったドラゴンは、野生のドラゴンに比べてはるかに優秀に育ち、
性格も育てた竜術士の影響を受けて思慮深くなる傾向がある。
よって、竜術士と共に生活するドラゴンにとって竜術士は
何物にも代えがたい大切な大切な宝物であり、たいていの場合には
子竜から成竜になった後でも竜術士と離れたがらないという。

スーラがアイネと出会ったのは、まだアイネが卵の時だった。
当時まだ12歳だったスーラは、現代に竜術を復活させた
竜術士ティモクレイアのもとで学び、その時に預けられた
水竜の卵を孵すことで正式な竜術士となる。
ちなみに彼女をアイネと名付けたのもスーラだ。



さて、水竜アイネの朝一番の仕事は洗濯から始まる。

「〜〜♪〜♪」

鼻歌を歌いながらシーツや洋服を洗濯桶の中に無造作に放り込み、
水竜術で水を張ると、まるで洗濯機のようにグルングルンと回転させる。
水に関することなら何でもお任せの水竜にとってこれくらいは朝飯前だが、
アイネがまだ幼かったころはそれすらもできず、
いちいちスーラに手伝ってもらったものだ。
今ではもう一人でできるようにはなったが、やっぱりたまには
二人でいちゃいちゃしながら家事をしたいというのが本音だろう。

「さーて、今日はちょっと寒いけどお天気だから洗濯ものもよく乾くわね♪」

季節はそろそろ秋も中盤になろうかという頃。
先ほど述べたようにこの辺りは北国なので、秋でもなかなか寒い。
彼女は平気だが、すでに吐く息は白く身動きするのもつらい気温だ。
しかしながら空気は乾いているので洗濯物はすぐに乾くだろう。

「あ、そうだ、今日は………」

ふとアイネがあることに思い当たったとき


モォ〜


「来た来たっ♪牛乳屋さ〜ん!おはようございま〜す!」
「おや、いつも早いねぇアイネちゃん。」

ナウダンという大きい牛を連れて、一人のおばあさんが水竜術士家にやってきた。
この女性はこの家から少し離れた村で夫婦で酪農を営んでいる人で、
時折こうして村から少し離れた家々を回って牛乳の配達をしてくれる。

「はいよ、新鮮なミルク!」
「ありがとうございます〜♪今朝は旦那様がシチューを作ってくれてますから、
さっそく持って行ってあげますね。あ、ついでに昨日お預かりしたものを
持ってきますからちょっと待っててくださいね。」

牛乳屋から牛乳を受け取ると、彼女を待たせていったん家の中に戻る。
アイネが牛乳をもって台所に行くと、そこではスーラがピンクのエプロンをつけて
朝食の支度をしていた。朝食の分担は彼の役目。それは修業時代から変わらない。
起きた時は芸術は爆発だ的なノリでボサボサだった彼の髪の毛は、
起きてすぐにアイネが整えたおかげできっちりとしたオールバックになり、
その上細い眼鏡をかけてる姿は、どことなく執事のような面影がある。


「旦那様〜♪ミルクがきました〜。」
「ん、ありがとうアイネ。まったく、うちには育ちざかりがいるから消費が早い早い。
でも牛乳屋のおばさんが三日おきに来てくれるのは助かるなぁ。」
「ええ。それと旦那様、ついでに預かった洗濯物も渡しておきますから。」
「頼んだよ。」

スーラに牛乳を渡した後、今度は近くに置いてあった洗濯籠を手にして
また玄関に引き返すと、その洗濯籠を牛乳屋のおばあさんに渡す。

「はい、お洗濯ものお返しします。」
「あら〜いつも助かるわぁ。ありがとねアイネちゃん。」
「いえいえ、また何かありましたら言ってくださいね♪」

このように、ドラゴンと竜術士は術を使って村人の生活に役立てている。
牛乳屋のおばさんのように歳で大きな洗濯物が億劫な時に
クリーニングしてあげたりするほか、おいしい水を作ってあげたり
氷を作ってあげたり、畑の灌漑を手伝ってあげたりと
水に関することなら何でもござれの便利屋さんなのだ。
竜術士にしても引き受けた仕事を通して竜術の修業を行うことが多い。
アイネくらいの熟達したドラゴンなら、龍のように雨を降らせることだってできる。
野生のドラゴンなら、人間のために雑用をするなど考えられないことだが、
アイネは生まれたころから人間の中で過ごし、人間の文化で生活しているので
人間と助け合って生きていくことは当たり前だと思っているのだ。

「んっ…お洗濯も終わったし、そろそろ朝ご飯ができる時間よね。」

それほど多くない洗濯物を干し終え、ぐっと背伸びする。
朝食前の労働を一通り終えたアイネが次にやるのは……
 
 

 
 
「二人ともーっ!朝よーっ!起きなさーいっ!」

「んっ……ふみゅ…」
「うぅん………あともうすこしぃ…」

この家の二階の一角にある部屋。ここにはアイネとスーラ以外の住人の寝床がある。
大人用ベッドで仲良く寝ている子供が二人……一人はまだ10代前半の男の子。
もう一人は…頭に生えた二本の角に、体のところどころを覆う銀色の鱗、
瞳も銀色で、蛇やトカゲのような縦長の独特な虹彩をもつ。
そしてまるで始祖鳥のように翼と一体化した独特の腕……
ほかでもない、彼女は飛竜…ワイバーンだった。
彼女の名前はセリエ。隣で寝ている少年竜術士セト・サザーランドのパートナーだ。
生まれてからまだ6年しかたっていないが、その体つきはすでに
人間でいうと中学生くらいにまで成長し、パートナーのセトとはもうほとんど変わらない。
一方の少年竜術士セトはスーラよりも早い8歳から竜術士の修業を始めていて、
世界初の飛竜術士としてスーラの元で修業に励む日々を送っている。

さて、毎朝アイネに起こされるセリエとセトは二人そろってスーラより寝起きが悪い。
特にワイバーンのセリエはとても低血圧で、ちょっとやそっとでは起きずに
ずっと布団の中でセトに抱き着いている始末。
一度目が覚めたはずの二人はそろってアイネの言うことをなかったことにして
再び微睡の中へふらふらともどっていこうとする。

「はいはい、起きない寝坊助にはおしおきですよ。それっ!」

ピシャァッ

「ひゃあっ!?」「つめたっ!?」

そんな時は、指の先から二人の顔をめがけて水鉄砲を放つ。
水が苦手な二人にとってこの攻撃はたまったものではなかった。

「ふふっ…おはよう二人とも♪」
「か、母さ〜ん……もうちょっと優しく起こしてよ〜…」
「これでも優しい方よセリエ。ほら、このタオルで顔を拭いて、
そのまま顔を洗ってきなさい。お父さんがご飯作って待ってますよ。」
「ふぁ〜い…」
「セトもちゃんと着替えてくるのよ。」
「ん〜…」

水をかけられてもなおまだ若干おねむの二人だが、
下からシチューのいい匂いが立ち込めるころにはすっきり目が覚めるだろう。
重い瞼をこすりながらのろのろと部屋を出ていく二人をみて、
毎朝のことながら手のかかる子たちだと思いながらも
慈しむような微笑みを浮かべる。
アイネにとってセリエもセトもわが子同然の存在であり、
夫のスーラと同じくらい大切な家族だった。
 
 
 
 
…………
 
 
 
 
朝食を食べ終え、片付け終えると、
午前中からセリエとセトの竜術修行が始まる。

さて、一口に竜術士といっても、人にはそれぞれ『素質』というものがある。
竜術を使うにはそれぞれの属性にあった素質を持たねばならない。
ただ、術を使う程度なら素質が弱くてもなんとかなるが、
いざドラゴンを育てるためにはかなり強い素質が求められる。
水竜術士スーラは水の素質のほかにも木の素質が強く、その気になれば
植物を操る『木竜』を育て上げることができる。
また、それほど強くはないが地と風の素質も持っているため、
飛竜術士であるセトの指導くらいなら問題なく行えるのだ。

一方のセトは風の素質が非常に強いものの、ほかの素質は一切なく、
使えるのは必然的に風竜または飛竜術に限定されることになる。


で、その修行のためにやってきたのが………


「竜術士様!お待ちしていましたわ!よろしくお願いしますね!」
「うん、こちらこそよろしく。じゃあ早速中を見せてくれるかな。」
「ししょー…こんな倉庫の中で何するつもりなの?」
「うへぇ、お蔵の中はまっくらだ。」

水竜術士家から川を下った先にある湖のほとりにある町コトック。
水竜術士一行はこの町で一番大きな倉庫にやってきた。
一番大きいといっても、ここは使われなくなったがまだ使えるものや
いつか使うかもしれないものを無造作に放り込んでおくためのもので、
しかも長い間放置したせいでずいぶんと埃がたまってしまっている。

だが、つい先日町に新しい建造物を建てることが決まった際、
倉庫の中にある資材が必要だとわかったはいいが、
町の人たちが見たときにはすでに手の施しようがないくらい
乱雑になってしまっていて、やむを得ずスーラに頼んだのだった。
スーラもまた、ちょうどよくセリエとセトの修行になりそうだったので
快く引き受けた。それが今の状況の概要である。

「じゃあ町長さん、後は僕たちがやっておくから
その間はアイネが淹れたおいしいお茶を飲んでゆっくりなさってください。」
「あら悪いわね!倉庫のお掃除やってもらった上に
アイネさんのお茶までのめるなんて!」

「ししょー、もしかして僕たちだけでこの中掃除するの?」
「その通り。」
「やだー!暗い!狭い!こんなところにあんまりいたくなーい!」
「まあまあ。」

基本的にワイバーンは飽きっぽい性格だ。そして狭いところを嫌う。
修行をするにしても、彼らの性格をうまく利用して
効率よく術を覚えさせたいところだ。
二人がまだ術を始めたころは、遊びを通して術を覚えさせていた。
その甲斐あってセリエとセトはもう基本的な術はばっちりマスターしたし、
今では高速で空を飛んだり突風を起こしたり、
空気を操って音を操ることだってできる。
だが、ワイバーンが得意な風竜術は大規模な術よりもむしろ
小回りが利く小規模な術のほうが習得が難しく、
そのためには日常生活の中ですこしずつ術を応用していくしかない。

「よーしセリエ!埃を全部飛ばして早く終わらせようっ!」
「まかせてセト兄!ガラクタもろとも吹き飛ばすわ!」
「こらこらそれじゃ修行の意味がないでしょ。
それにここは窓がないから埃を飛ばしても舞うだけだし。
ほら、見ててあげるからまずはその辺の埃から集めてみよう。」

スーラに諭されながらも、二人は竜術を使い始めた。
まずはセリエよりも若干小回りが利くセトが術を使う。
術を使うためにセリエはセトの背中にぴったりとくっついて
自分が持つワイバーンの力をセトに貸し、その力の流れを操って
ゆっくりと静かに空気の流れを操る。

「うんうんその調子、じゃ後は任せたよ。
終わったらこの倉庫の中を自由に探検してもいいからね。」
『はーい!』


倉庫の掃除を二人にまかせたスーラは、町長とお茶をしているアイネの元に戻ってきた。
スーラとアイネがこの地に来たばかりの時は、幼いドラゴンのアイネを見ただけで
誰もが畏敬のまなざしで見ていて、若干堅苦しかったが
今ではこうして人間と変わらない付き合いになっているのは嬉しいことだった。

「旦那様、ちょうどお茶が入りましたよ。」
「いかがですか竜術士様、うちの娘が焼いたビスケットなのですが。」
「ははっ、これはいい!さっそくいただくとしようかな。」

こうして、まだ午前であるにもかかわらずお茶会を始めた3人だったが、
しばらくすると一人の女性がアイネたちの元を訪れた。
彼女は村の公衆浴場を管理する役人(温室管理官)のようだ。

「失礼します竜術士様、アイネ様………少々お頼みしたいことがございまして。」
「あら?お風呂役さん。お風呂の調子が良くないのかしら?」
「ええアイネ様、最近浴場の水道の調子が悪くなっていまして、見てもらえませんでしょうか。」
「わかった。これから寒くなる季節だから、お風呂が使えなくなると困るだろうね。」

お茶会はいったん中止し、二人はこの町にある公営の公共浴場へ足を運ぶ。
北海道並みに寒くなるこの地方において風呂は住民たちの生命線であり、
使えなくなってしまうと冬を過ごすのは大変だ。
アイネがいるおかげで水が使いたい放題の水竜術士家とは違って、
まだレスカティエが魔界と化していないようなこの時代には
各家庭で浴室を持つことはできなかったので、公共浴場の重要性はなおさらだ。



温室管理官の女性に案内され公衆浴場にやってきた二人。
案内された大浴場はこの国で最も普及しているタイプのありふれた構造で、
しかし北国独特の形としてより密閉性を高めるべく窓の開閉口が狭い。
そのせいでお湯を張っていない午前の開業準備時間は陽が当たらないため薄暗く
若干外よりも寒いような気がする。風呂場の開業は七の刻(午後二時)から。
一刻前にはお湯を焚かなければならないので作業は早めに行いたいところ。
浴室には一度に十人前後が浸かれるほどの大きな浴槽が二つあり、
そのうちの一つの浴槽を点検すべく、給水口の前にしゃがみ込んだ。


「これかい?」
「はい、出てくるお湯の量が一定ではなく、途中で止まったり。」
「もしかしたら中が詰まってるかもしれませんね。
ちょっと見せてもらいますよ………う〜ん」

アイネは手を小回りの利く人間の手から、より鋭いドラゴンの腕の形に変化させ
鎧をもやすやすと切り裂く鋭い爪が生えた指で、水道管の縁を丁寧になぞる。
すると、彼女の爪にはごっそりと白い何かが付着した。

「あら、こんなに石灰がたまって………」
「そうか…やっぱりなぁ。もともとこの辺の水は恐ろしく石灰分が多いから、
こまめにメンテナンスしないと詰まっちゃうんだろうな。」
「も、申し訳ありません!」

このあたりの水はいわゆる『硬水』と呼ばれる種類の水質で、
川の水に鉄分や石灰、マグネシウムなどが多量に含まれている。
(その量なんと世界一水がおいしいジパングの水の100〜200倍以上)
直接飲むと苦いし洗濯物も色落ちするし水道管は詰まるしと、
なかなか厄介な水質で、十分に熱しないととても使うことはできない。
ただし栄養はとても豊富なのが唯一の利点ではある。

「旦那様、私はボイラーのほうから術でお湯を流しますので、
給水口のほうを見ていてください。」
「わかった、僕もこっち側から何とかしてみるよ。」
「それと長時間濡れると困りますので服は脱いでおいてくださいね。」
「ん………、おお…寒いなぁ。でもすぐにお湯が流れるから我慢しなきゃ。」

スーラは言われたとおりその場で服を脱いで浴槽の外に放り投げる。
アイネが浴室から出る間際に意味深な微笑みを浮かべていたが、
特に気にすることなく下着以外のすべてを脱ぎ去った。
張り付くような寒さに身を震わせながらも顔色一つ変えず作業を再開したスーラは、
いつも携帯している帝国の紋章入りの短剣を上着から取出し、
石灰が厚くたまっている場所を中心にゴリゴリと擦り落とし始める。

「ん?」

先ほどからずっとこちらをうかがう視線を感じたスーラが振り返ると、
なぜか真剣な眼差しで彼を凝視する温室管理官の姿があった。

「あっ……」
「どうかしたの?僕の体に何か付いてる?」
「いえ、その…竜術士様の体は見た目によらずがっしりしているんですね。」
「そうかな?そうはいっても僕はあんまり力ないし…でもさ、
あまり僕の体をまじまじと見ないでよ…恥ずかしいからね……。」
「す、すみません!何分男性の裸を見るのは初めてなものでしてっ!!」
「君…あまりお役人に向いてないんじゃないかい?口は災いの元ってね……」

「旦那様〜!お湯が行きますよ〜!」
「はーい。こっちはいつでもいいよー。」

水道管の向こうから響いたアイネの声に応じると、
水出口からコポコポと湯気を立てながら適温のお湯が流れてきた。
少し観察すると確かにお湯の勢いが強くなったり弱くなったりと一定ではなく、
初めは無色だったお湯の色も若干濁ってきてるようにも思える。

(これは相当整備をさぼってたみたいだ。後できちんと注意して、
場合によっては管理マニュアルも作らないとだめかな。)

「旦那様〜、すみませんが温室管理官の方に浴室から出るように言ってもらえますか?
これからちょっとお湯を大量に流しますので濡れると困りますから。」
「………?わかったよアイネ。………申し訳ない、
ここからちょっと大規模な作業するんで浴室から出てもらえるかな?」
「あ、はい、分かりました。失礼します。」

スーラ自身特にその必要性が感じられないと思いながらも、
アイネの言うとおりに温室管理官を浴室から退去させる。
……と、ここで出水口から出てくるお湯の量が急に減ったことに気が付いた。
さっきまでは、少なくとも手を洗えるくらいの量が出てきていたのに、
今はまるでストローから出たかのようにちょろちょととしか流れてこない。

「…?おーいアイネ?何か問題でもあった?」

水道管に向かって呼びかけるが返事はなく、
代わりに奥の方からボコボコボコという不気味な音が聞こえてくる。
一体何事かとスーラが水道管の奥を覗き込んだ、次の瞬間!


ドバァッ!!


「わーーーーっ!!??」
「やっはーーーーっ!」


バシャーーン!!



突如、物凄い大量のお湯と共に水道管からアイネが飛び出してきた!
噴出したお湯が直撃し、一瞬バランスを崩したスーラに
いたずらが成功した子供のような笑顔でとびかかるアイネ。
何が何だかわからないうちにアイネに飛びつかれたまま、
あっという間にその場に押し倒される。
幸い、今の一斉放水で適度な量のお湯が張られたおかげで
浴槽の床に頭をぶつけることはなかったが………

実はアイネは、術を使ってある程度のお湯をボイラーに溜めた後、
術を使ってお湯と同化し、溜めたお湯を操ることで
直接水道管の中を丸洗いしていたのだ。
しかし彼女はそれだけではなく、あえて一斉放水を
スーラに知らせず、お湯と共に勢いよく襲い掛かって
彼を驚かそうと画策していたらしい。
作戦は大成功。温室管理官がいなくなった浴室で、
暖かいお湯が張られた浴槽に裸同然の男女が二人が抱き合う。
最終目的がなんなのかは一目瞭然だろう。

「うふふ、これでもう大丈夫ですわ♪だ・ん・な・さ・ま♪」
「……ははは、してやられた。」

苦笑いしながらも、美しすぎる妻の裸を目の前にして
我慢できるほどの無駄な理性を持ち合わせていないスーラは、
作業用に持った短剣を浴槽の外に放り投げると、
腕を優しくアイネの腰に回す。それを受け入れる合図と解釈したアイネは
ドラゴンの腕を人化術で元に戻すことも忘れて彼を抱き寄せ、
早々に深く唇を重ねた。

「はむっ…ちゅっ、ぴちゃっ♪だんなさまぁ…ひゅきぃ……んちゅるっ♪」

浴室には二人しかいないとはいえ、外には温室管理官がいるし、
扉に鍵をかけてないので、いつだれが入ってくるかわからない。
そんな状況下で何のためらいもなく行為にふけるのは、
やはりドラゴンも魔物の一種であることを証明するものなのだろう。

アイネの舌が欲深くスーラの口の中に捻じ込まれ、頬の裏側や歯茎を徹底的に舐めまわす。
ディープキスという言葉すら生ぬるい淫猥な口付を重ねつつ、
お互いの唾液を心行くまで味わった。

「ほら、アイネ。おいで。」
「はい♪」

スーラは背中を浴槽の縁に委ねて、
まるで娘を迎える親のように両手を広げてアイネを誘うと、
アイネは心から嬉しそうな笑顔で彼の懐に飛び込んだ。
そして彼の鎖骨に啄むようなキスを何度もしながら彼の下着を脱がし、
男性器を露出させると、自らの膣前庭に押し当てると、
そこから一気に腰を下ろして屹立を根元まで呑み込んだ。

「くはあぁぁぁっ……旦那様の、突き刺さってきました……んんっ、ふかぁい……」
「うっ…や、やっぱり何度、交わっても……この感触は、たまらないよ……」
「そう……ですよ♪私は卵から…孵ったときから……ううん、
卵の中にいた、時から…ずっと旦那様好みに、んんっ…育って、きましたから♪」

そして、浴槽の湯の中でつながった下半身を二人同時に動かし始めた。
腰がぶつかり合う音の代わりにバシャバシャと水を激しくかき分ける音と、
お湯の温度で暖まった浴室内に響く二人の荒い息遣いと嬌声。
まさか尊敬する竜術士とドラゴンが公共浴場で激しく交わっていると
町の住人のだれが想像するだろうか?

「あんっ、あっ…んっ♪旦那様、激しいっ♪」
「はあっ…はあっ…!愛してるよ…アイネっ!大好きだ…!」
「旦那様ぁっ!私も…旦那様をずっとずっと愛してますっ♪
ふあぁっ!きて下さい!私の中に旦那様の愛情を…
いっぱい…いっぱい……流し込んでほしいのっ!」

アイネの体がスーラの上で淫らな舞を踊り、
上下に動くたびに彼女の乳房が激しく弾む。
体を所々覆う青い竜鱗の表面で湯の水滴が光り輝く中に、
浴室の熱気でいつもより多めにかいた汗が幾筋も流れ落ち
湯気でくぐもる息も合わさって彼女をよりいっそう妖艶に見せた。
しかし当のスーラはアイネの淫らな演舞で刺激された快感に
心をすべて奪われ、冷静に彼女の姿を眺める余裕はない。

「あ、やばっ……もうイきそっ!?アイネ…っ!」

いよいよ限界が近いと感じたスーラは、右手を伸ばして
彼女の左の胸を思い切り鷲づかみする。

「きゃんっ!?ご主人様ぁっ!むね……いいっ…のぉ♪」

胸をつかまれたことで、彼女の体が急にピンと直立になり
その動きに体内の筋肉が連動して、膣肉までキュッと締まる。
そしてその非常にきつい締め付けが彼の屹立への止めとなった。

「あっ…ああああっ!アイネ!出すよっ!ぐっ……!」
「ひゅあああっ!?ごしゅじんさまあああぁぁぁぁっ!!」

肉棒が弾けたような感覚と共に、ドクン!ドクン!と射出される音がする。
スーラが放った大量の精液は、アイネの最奥に叩きつけるようにほとばしり、
蜜壺の中を一気に満たしてゆく。

「ふふ……ふふふっ♪んっ…いっぱい出ましたね♪
おなかの奥で…ドロドロが感じられるくらい…」
「ふぅ…それはよかった。君に気持ちよくなってもらえて
僕もすごいうれしいよ。ちゅっ♪」
「あんっ♪旦那様ったら♪」

そしてまた交わされる濃厚なキス。
行為の余韻に浸りながら、二人は愛情を確かめ合う。

「旦那様…私、もう一度…したいです♪」
「もう、まったくアイネは甘えん坊なんだから。」
「甘えん坊でもかまいません♪ずっと旦那様に甘えていたい……。」

湧き出る欲望を抑える気がない二人は、
早速二回戦に突入しようとする…………が。
 
 
 
 
ガチャッ!

「ししょー!母さーん!」
「お昼ごはんにしよーっ!………って、何してるの?」

((まずい!?))

スーラが再びアイネの中に挿入したとき、
倉庫の掃除に行っていたセトとセリエが浴室に突入してきたのだった。
浴槽の中でつながりあったまま動けない二人を、
純粋無垢な竜術士とドラゴンが首をかしげて眺める。

気まずい空気の中で真っ先に口を開いたのがセリエ。

「ししょー…アイネ母さん…その………」
「せ、セリエっ!これは、その、浴室の整備を、でねっ!」

あわてて意味不明な弁解を始めたスーラ。だが…

「続き見せてっ!」
「ぼ…ぼくもっ!」
「あら、いいわよ♪もっとこっち来なさ…」
「いやいやいやいや!!もうご飯なんでしょっ!
あー、お腹すいたお腹すいた!今日のお昼はなにかなっ!」

とんでもないこと言い出したセリエに、便乗したセト。
そして開き直ってしまったアイネ。
これ以上の恥ずかしさに耐えられなくなったスーラは
浴槽の外に放り投げてあった服を着ると
逃げ出すように浴室から出て行った。
 
 
 
 
 
………
 
 
 
 
町長の好意で昼食をご馳走になった後。
午後は夕方まで自由に遊ぶ時間としている。

「あらあら、あんなに高く飛んで。さすがはワイバーンですね。」
「まったくね。」

今水竜術士一家はコトック郊外の草原が広がる丘陵地帯に来ている。
どこまでも続く地平線の上に広がる青々とした空を、
セトとセリエが一緒になって飛び回るのを、アイネとスーラは
日当たりのいい丘の上で膝枕をしながら眺めていた。
午前中はいろいろあって少々疲れたスーラは、アイネのやわらかい
太腿の上に頭を横たえて愛する妻のぬくもりを堪能する。

「セトはやっぱり天賦の才能がある。まだ修行を始めて6年なのに
あんなにアクロバティックな飛び方ができるんだもの。
まあ、セリエもセトと相性ばっちりだし。将来が楽しみだ。」
「ふふふ、わが子の成長を見守るお父さんみたいですね旦那様♪
そろそろあの二人にも…『同化術』を教えてみるのも
いいんじゃないでしょうか。」
「んー…そうはいってもセトはまだ15歳だしなぁ。
出来ないことはないだろうけどねぇ。」

そういいながら、昼食後ということもあって眠くなったスーラは
うとうとと彼女のひざまくらの上で瞼を閉じる。

「おやすみなさい、旦那様。」

ここでアイネはスーラの頭を優しくなでながら、
彼との初夜の記憶に思いをはせた。

それはこの地に来る直前くらいの夜だった。
生まれたての幼竜のころから自分の術士に恋焦がれていたアイネは、
その日起きた洪水を止めるために無理して大規模な術を使ってしまった。
大幅に魔力を消耗した二人が気絶寸前の状態でベットに戻ったとき、
思春期を迎えたばかりのアイネの性欲が極限にまで高まり、
我慢できずその場でスーラに襲い掛かったのだ。

その時に自分の処女血をスーラに飲ませたため、
彼の体はドラゴン並みの寿命を得ることとなった。

だが、はっきり覚えているのはそれくらい。あとは
ロマンチックのかけらもなくひたすら二人は性交に没頭し、
ただただ未知の快感に溺れていくだけだった。
でも…とても嬉しかった。繋がっていると
お互いの心の中まで繋がっているように思えた。


数日後、スーラの師、ティモクレイアから免許皆伝のお墨付きをもらい、
同時に師の下を離れて暮らすように命じられた。
家の場所は決まっていた。師のパートナーだった母親代わりの光竜や
一緒に修行していた仲間のドラゴンと離れるのは寂しかったが、
これからはスーラと二人きりで暮らせることに胸を躍らせてもいた。
そして新居に引っ越したとき、スーラから指輪をもらった。

「アイネ、僕の伴侶になってずっと傍にいてほしい。」

アイネは心臓が止まりそうになった。
 
 
 
「うふふ、今思い出してもドキドキがとまりません♪
はぁ……いけない、またエッチな気分になってきたかもしれません。」

思わず左手で自分の胸をいじりそうになったアイネ。

(そういえば…近頃おっぱいが張ってきたような気がしますね…)

先ほど公共浴場で交わった際に彼に胸をもまれたとき、
それに昨日の夜も一昨日の夜も、胸が性感帯になったのではないかと
思うくらい激しく感じてしまった。

「ん…もしかすると……」
「アイネ?どうしたの…胸なんかいじって。まさかまだ物足りないとか…」
「やだ旦那様ったら寝たんじゃなかったんですか?
そんなにしてほしいのでしたら、お昼前の続き…しませんか?」
「いや…僕は別に……。」
「まあそう遠慮なさらずに、旦那様♪」
「…、待って。」

スーラは急に身を起こすと、空の方に目を向ける。

「セリエたちが戻ってくる。それも大慌てで。」
「あら、何かあったのでしょうか?」

アイネもスーラにつられて視線を上に向けると、
さっきまで点でしかなかった大きさに見えたセリエが
もうすぐそこまで猛スピードで戻ってきている。

『ししょーーーーーーっ!!!!たいへーーーん!!』

突風と共に大声を上げて戻ってきたセリエとセト。
手を繋いで飛んでいた二人がアイネとスーラの目の前で急停止し、
強烈なワイバーンの風が周囲の木の葉をひとつ残らず吹き飛ばした。

「何かあったの二人とも。」
「たいへんたいへん!!南の放牧地の向こうにあるから煙が!」
「しかもかなりモクモクって立ち昇ってるっ!たぶん山火事だよあれ!」

どうやら二人は高いところを飛んでいるうちに、
森から煙が出ているのを発見したようだ。

「山火事!?それは大変!早く行って消さないと!旦那様!」
「わかってる…!セリエとセトは先に放牧地に向かってて!
そしてできるなら巻き込まれてる人がいないか確かめてきて!」
『はいっ!!』

スーラの指示を受けたセリエは、そのままの姿でセトを背中に背負って
再び凄まじいスピードで大空に舞いあがる。そして数秒後には
二人の姿が見えなくなるほど遠く離れていった。

「旦那様、私たちも急ぎましょう!」
「ああ。」

アイネもまたスーラの手を取ると、竜術を使って大空へと飛び立った。
飛竜や風竜のようには高く速く飛ぶことはできないが、
どの種のドラゴンでも空を自在に飛ぶことくくらいはできる。
上空150メートルあたりを飛行する二人が南のほうへ目を凝らすと、
たしかに森林から煙が上がっているのが見えた。
しかも近づくにつれてその煙の大きさが並ではないことも分かった。

「まずいな、結構大きい森林火災だよこれは。」
「けが人が出てないといいんですが。」
「もしかしたら……ただ水をかけて消すだけじゃダメかもしれない。」
「では…久しぶりに同化術を?」
「たぶん……」


どうやら一筋縄ではいかなそうだ。
 
 
 
 

 
 
 
 
南の放牧地はこの辺一帯の村や町の酪農家たちが共同で管理している草原で、
天気がいい日はこのなだらかで広々とした草原に自分たちの牛や羊を放牧している。
今の季節は冬に向けての準備で干し草づくりが進められていて、
あちらこちらに牧草の塊が積み重なっているのが見える。
いつもは季節の草花があちらこちらに咲くのどかな場所なのだが、
今は大勢の人々があわてて自分の家畜を避難させようと必死だった。
中には、近くの町から派遣された自警団らしき集団もいて、
バケツや桶などといった容器に水を入れて森のほうに走っていく姿もあった。


「早く〜っ!早く家畜を逃がしなさ〜い!」
「干し草に火が付くぞ!もっと遠くに運ぶんだ!」
「自警団!早く!水を!」

ワーワー


「あちゃ〜…これはまたずいぶんと広範囲が燃えてるなぁ。」
「いったい何が原因なのでしょうね…?」

二人が現地に到着した時にはすでに森林の真ん中あたりが赤々と燃えていた。
枯草や枯れ木が増え、空気が乾燥しているこの季節、一度火の手が上がると
たちまち延焼してしまい、あっという間に広範囲が焼けてしまう恐れがある。
今回の森林火災はその典型とも言っていいような状態だ。

アイネがまず行ったのが情報収集。
森の中のことは、先行しているはずのセリエとセトに託して
自分たちはまず正確な情報を得ることが先決だと判断したからだ。
彼女は自警団の指揮を執っている隊長らしき人物に、事の詳細を訪ねる。


「すみませ〜ん、ちょっとよろしいでしょうか?」
「誰だっ!こんな忙しいとき………こ、これは水竜様に竜術士様!」

自警団の隊長をしているポニーテールの女性は、
アイネとスーラを見るなりその場で直立した。
彼女の率いる自警団は水竜術士家から結構離れている町にあるにもかかわらず、
二人のことはよく知っているようだ。

「畏まらなくてもいいわ。火事に巻き込まれた人はいませんか?」
「そ、それが……この火災はどうやら森林の中をねぐらにしていた
盗賊団の火の不始末で起きたようでして、森の中にはまだ
数人の盗賊が火に囲まれているようです。ですがこのような大火では……」
「なるほど、わかった。たとえ盗賊といえども見捨てるわけにはいかないからね。
大丈夫、僕とアイネにまかせて。何とかして見せるから。」
「お願いします…!竜術士様!私たちもできる限り協力します!
おーいみんなー!!水竜術士様が来てくれたぞー!」
「水竜術士様が…!た、助かった〜!」
「私たちからもお願いしますね竜術士様!」
「信じていますわ!」

水竜術士が来たことがわかると、人々は喝采をあげた。
もちろん自分たちが行う作業の手を緩めることはないが、
水を自由自在に操るアイネが来たことで、人々に大きな希望を与えたのだ。


「さ、旦那様。まずはセリエとセトの様子を。」
「うん、行こう。それと少しは水を撒いておきたいから力を貸して。」
「はい。」

二人は再び手と手をしっかり握って森の上空へと舞いあがる。
そしてスーラは、目を閉じて竜術の気配に意識を集中した。

「アイネ、ここからもっと奥地のほうから竜術の気配がする。
きっとセリエもセトもそこにいるはずだ。」
「わかりました。」

竜術の気配を感じ取ったスーラはアイネの手を取ってさらに奥地へ飛ぶ。
奥地に入ると人の手が全く入っていないので、木々が伸び放題。
そのため燃え上がる炎の高さも大きくなってきていて、
身体に水をまとっていないと着地することも難しそうだ。
やがて3分ほど飛んだところで、燃え広がる炎の中で
風が渦を巻いている場所があるのを発見した。
どうやらセトとセリエがそこで風を起こして何かを守っているようだ。


「セトー!セリエー!いるかしらー?」

「アイネ母さん!こっちこっちー!」

アイネの呼びかけに、セトが思いきり両腕を振ってこたえる。
空気の流れを操って火や火の粉がこちらに飛んでこないように
精一杯術を駆使するセリエとセト。幸いアイネたちがくるのが早かったので
そこまで魔力の消耗はなさそうだ。

「よかった、ししょー!母さん!この人たちが逃げ遅れたらしくて!」
「よく見つけてくれましたねセリエ。助かってよかった。」

セリエの背後にある大木の陰にぼろぼろの服を着た男性二人と女性三人が
身を寄せるように縮こまっているのが見えた。
どうやら彼らが自警団の言っていた盗賊なのだろう。

「すまねぇ…俺たちのようなろくでなしのためにこんなことまでして……。」

バンダナを巻いた髭もじゃの中年男、おそらく彼がリーダー格なのだろう。
彼が煤けた頭を何度も下げてスーラに礼を述べた。
他には十代後半ぐらいの青年男性と三十代前後の女性が二人、
そしてもう一人はまだ年端も行かない女の子だった。
その女の子は、手に抱えるくらいの大きな卵を
炎から守るように大切に抱えている。

「セト、セリエ、もうだいじょうぶだよ。
そこの五人を連れて早くここから脱出しよう。」
「ううん……だめなの、ししょー!」
「六人じゃないんだ!」
「なんだって?」
「あの、旦那様。もしかしてあの子では?」

アイネに促されて彼がふと大木の中ほど辺りを見ると、
なんとしたことか、幹にしがみついて震えている女の子がいた。

「あれは…ドリアード……。この木の精霊だ…。」

大木と同じような樹木色の肌に木の葉を思わせる緑色の髪をした美しい娘は、
この大木に宿る樹木の精霊ドリアード。
運よくセリエに守ってもらえたはいいものの、彼女はこの木から
離れることはできないため、今セリエ達にこの場から離れられると
彼女は二度と助からないだろう。なのでセリエもセトも、
ここにいる五人だけを連れて森に外に戻るということが出来ない。

「…よく気づいてくれたね二人とも。大丈夫、
あとは僕とアイネが何とかするからあともう少しの間だけがんばれるかい。」
「うん、まかせてししょー!僕たちもがんばるから!」
「これくらい、よゆーよ!ししょー達こそ無理しないでね!」
「ははは、そうだね。よし、アイネ!」
「はいっ旦那様!」

人間五人とドリアード一人の守りを再びセリエとセトに任せると、
二人はその場から垂直に空へと飛び上がり、炎の包囲網を抜けた。
今度は前よりももっと高く高く…まるで天に昇る竜のように
今も燃え広がり続ける森の上空をどこまでも昇って行く。
やがて二人はハーピーですら到達が難しいくらいの高空まで到達する。
雲少なく、晴れ渡った空は上れば上るほど肌に寒さを刻み、
スーラの体をかじかませた。
高さにしておよそ3000m、もうここは雲の上だ。

「アイネ…力を貸して。」
「旦那様、よろこんで。」


二人は空中でお互いの体をしっかりと抱きしめ、
迷うことなく、強く唇を重ねた。


それは一瞬だった。


今までそこにいた二人は今、ひとつの存在に同化した。
アイネが持つ青い竜鱗と鋭い竜爪に覆われた手足、
普段よりも大きくなったように見える竜翼と竜尾。
そしてつま先まで届きそうな長い髪の毛。
しかしながらその体つきは、豊満な胸以外は
がっしりとした男性の体型となり、その顔の面影も
温厚なアイネと知的なスーラを足して二で割ったよう。
おそらく、アイネとスーラに子供が生まれて成竜まで育てば、
こんな感じになるのではないかと思われる。

竜術の中でも最たる術がこの『同化術』だ。
お互いの体を直接シンクロさせることで、
より無駄がなく術を使えるようにするとともに、
ドラゴンの魔力と竜術士の精を限りなく接触させることで、
普段出来ないような高度な術を可能とするのである。
しかし、これはどんな竜術士でも出来るものではなく、
ドラゴンと竜術士の相性がよほどよくないと同化は出来ない。
その上で、事前にお互いの心身の結びつきを作っておく……
要するに身体を重ねて愛し合うことが不可欠なのだ。
もっともそれは現在の魔力の性質がそうさせているのであって、
大昔は単純に素質に頼っていたといわれている。

ただしこの『同化術』はあまりにも強力であり、
師からは他国の人間や魔物に教えたり、
一般の人たちの前で多用したりすることを禁止している。
なので、この同化術は今のところ世界でも
スーラを含め数人しか使うことが出来ない。


『……………………!』

ドラゴンがゆっくりと両手を広げ、大気を自分の術力で満たしていく。
すると、空気中の水分が急激に増え始め、雲を作っていき、
少しもしないうちに大量の雲は雨雲となって空を覆いつくす。


ポツン…ポツン…

パラパラ…パラパラ…

バラバラバラバラバラバラ

ザーーーーーーーーーーッ!!



「雨だ!雨が降ってきた!」
「おお…炎が消えていく…!」
「竜術士様とドラゴン様が、雨を降らせてくれたのね!」

ワーワー


家畜を避難させている農夫達も、火を消し止めようと奮闘する自警団も、
大空から降り注ぐ水竜の雨に喝采を上げた。
ドラゴンが降らせる雨は広大な森林とその周囲の地に降り注ぎ、
燃え盛る強大な炎を一気に弱めていく。不思議なことに、
降り注ぐ雨はぬれてもまったく冷たくなく、まるで
シャワーを浴びているかのような爽やかで優しい雨だった。
おそらくドラゴンが、寒いこの季節に人々が雨にぬれて
風邪を引かないようにとの配慮なのだろう。
降り注ぐ雨の量は一向に衰えず、
数十分後には目に付く炎はほとんどなくなった。
それでも念には念を入れてしっかりと地面をぬらし、
まだ燻っているかもしれない火種まで徹底的に消火する。
各地で白い煙を出しながら最後の抵抗を試む火種たちも
これにはたまらずジュッという短い悲鳴を上げて次々と消え去った。

やがて、大降りの雨は徐々に弱まってきた。
ポツポツとした雨に戻ったかと思うと、固まっていた雨雲が
薄くなり始め、さらに雲同士が分離して小さいものから霧散する。
晴れ間が見え始めた空には再び太陽が顔をのぞかせると、
まだ空気中に残る大量の水分と光が重なり、そして……


「まぁ…きれいな虹だこと……。」
「美しいですな。」
「ドラゴン様もサービス精神旺盛ですな♪」


水の力をまとい青く輝くドラゴンの背後には、
大きく美しい虹の橋が空いっぱいに架かっていた。
この二重の奇跡に、人々はただただ感動するばかりで、
火災の恐怖はすっかり心から洗い流されたようだった。

一歩間違えれば大惨事になりかねなかった森林火災は、
アイネとスーラの術によって事なきを得た。
怪我をしたものは何人かいたものの、他は全員無事であり
森林も思っていたより広く焼けることはなかった。
盗賊たちを守っていたセリエとセトも特に疲れた顔も見せず、
逃げ遅れた五人は無事に自警団に保護されたそうだ。

めでたしめでたし。


と、いうにはまだ早い。

「竜術士様ー!水竜様ー!」
「ありがとうございましたーっ!」
『皆様、無事ですね。私達もほっといたしました』

同化術を維持したまま、水竜は人々のところに戻ってきた。
セリエ、セトの二人も一足先に戻っていたようだ。

「あ、ししょーとアイネ母さんが同化してるの久しぶりに見た。」
「ねえ母さーん!そろそろ私達にも教えてー!」
『そうね、考えておきますね。自警団の体長さんもご苦労様でした♪』
「い、いえ…私達はむしろ足手まといで…。
水竜様こそ、あのような奇跡をいともたやすく実現するなんて…」
『まあ、様付けしなくてもいいんですよ。それよりも……
少々疲れましたので、どこか休める場所をお願いしたいのですが。』
「そ、それにつきましては私達の町の一番大きな宿屋に
申し出ていただければ、竜術士様ならすぐにご案内できるかと!」
『ありがとうございます。さ、セト、セリエ、行きますよ。』
「アイネ母さんその格好で行くの?…え、まあ、いいけどさ。」

あまり疲れているようには見えない水竜だったが、
現地の人と二三言交わしただけで、その場から飛び立った。
いつもは見せない変わった慌てぶりに、セトもセリエも
首をかしげながら水竜の後を追った。




 
 
 
 
自警団たちが所属する町ノウェムは、この地方でも有数の規模があり、
市場や交易所といった施設が充実しているためスーラも何度か、
必要なものを仕入れるためとか、遠方に住む師や仲間に
手紙を送るときなどにたびたび訪れることがある。
だが、距離的にはそこまで遠く離れているわけではないので
この町の宿屋を使ったことは今まで一度もない。
ましてやセトとセリエが水竜術士家に来てからは
そもそも外泊すらしたことがなかった。

「今夜はお泊りー!」
「どんな部屋か楽しみー!」

初めての外泊、それも今から宿泊するのは要人も泊まるような
格付けの高い宿屋。セトとセリエが大はしゃぎするのを尻目に、
水竜は淡々と宿泊手続きを済ませた。

『よろしいのですか、このような立派な部屋で。
それも宿泊代金すら不要だなんて。』
「いいんですいいんです!水竜様と竜術士様には
日頃からご恩がありますし、むしろ足りないくらいですから!」

恰幅のよい宿屋の女将は屈託のない笑顔で笑うと、
すぐに部屋まで案内してくれた。
案内してくれたのはこの宿で一番高級な部屋だった。
そして気の利いたことに子供達と部屋を分けてくれるというのだ。
ただ、宿屋の女将にしてみても今からの季節になると
要人がこんな北方の町まで来ることは稀であり、
むしろ要人用の部屋を使ってくれたほうが助かる上に、
竜術士とドラゴンが泊まったということをちゃっかり宣伝に
使おうと画策しているらしい。


さて、水竜はセリエとセトをさっさと部屋に入れると、
自分も足早に部屋の鍵を開け中に入る。
先ほどまでは特に具合が悪そうに見えなかった彼女だが、
ここに来て急に顔色が見る見る赤くなり、
手で胸と下半身を押さえつつ、息をくぐもらせながら部屋へ転がり込んだ。
水竜術士家の寝室の数倍はありそうな広い部屋には、
天蓋つきクイーンサイズのベットがあり、敷いてある絨毯も
壁際に並ぶ高級木材製の調度品もとても重厚な雰囲気を醸し出すが、
残念ながら今の彼女にそのようなことを考えている余裕はない。


『………っ!』

最後の一踏ん張りで術を解除すると、ポンという軽い音とともに
スーラとアイネの身体がひとつの存在から分離した。
分かれた二人は、どちらも顔を紅潮させ、息を荒くする。

同化術には副作用がある。
大昔の竜術士たちは同化術で大きな術を使うたびに、
気絶するほどの疲労感に襲われて、酷い時には
数日間寝込むこともあったそうだ。
これは、普段竜術を使った際の魔力消費のときに起こる
体調の変化を先送りにしているからであり、
同化術を解いたとたん今までの副作用が一気に襲い掛かるのだ。

で、現魔王の理が支配する世界ではどうなるか。簡単なことだ。
ジパングに生息するドラゴン種『龍』は、天候をも操るような
大規模な術を使うときには常にパートナーから精補給を
受け続ける必要があるのだという。まかりなりにも二人は、
それと同等のことの副作用を先送りにしてしまったのだ。

もちろん、ただで済むはずがない。
 
 
 
 
「旦那様っ!はやく…はやくぅっ!」
「アイネ!アイネっ!!」

分離した直後、二人の体をとてつもない性衝動が襲う。
一刻も早く交わろうと、アイネは術で体を覆う服装を消し
スーラも引きちぎるように腰布を解き、ローブを脱ぎ捨てた。
そして、両手を広げ蕩けきった顔でベッドの上に仰向けになったアイネに
スーラは前戯もなしに、いきなり自信を一気に奥まで突き入れた。


「はひゅううぅぅっ!だ、旦那様の…素敵……♪」
「アイネ…今日は容赦しないから覚悟してね♪」
「そんなっ!容赦なんてしないでください!
旦那様の精液…一滴残らず私がもらっちゃいますからぁ!
ああっ!私の子宮が物欲しさに…お口を開けてはしたなく疼いてますぅ!」

スーラを向かいいれたアイネは両手でしっかりと愛する夫の手を握りしめ、
いつものように足を腰に絡めながら、スーラの動きに合わせて
自らも積極的に腰をふるう。
一突きするたびに濃厚な蜜をあふれさせる彼女の膣内は、
スーラの屹立を命一杯味わおうと包み込み始めた。

「ごめんアイネ……もしかしたらあんまり長く持たないかもっ!」
「だいじょぶ…ですよ旦那様♪私も早く欲しくてたまりませんから♪
旦那様の、んんっ…お好きな時に……♪」

あまりにも過剰に体を押し付けてくる癖があるアイネだが、
今回もそれが顕著で、向き合っているままの体勢から
いつの間にか隙間がないくらい密着する格好になる。
そして大好きなディープキスを交わしていると、
初めから性欲の臨界寸前だったスーラには快楽を押しとどめる
余裕は全くなくなっていた。

「くっ……出るっ!いくよアイネっ!」

ドクッ!ドクンッ!

「ふあぁっ!ふああぁぁぁぁぁっ!流れてくるぅ!
わ、私も…イクッ!いきゅうううううぅぅん!」

まずは一回目の膣内射精。
スーラの肉棒がアイネの体の奥で暴発し、欲望の塊を流し込む。

「きもち……いいです旦那さま…、いきなりこんなにたくさん…♪」

アイネも負けじと淫肉が射精中もずっと絡みつき、
精を過剰に摂取しようとしていた。


大規模な術をつかった反動はこれだけでは済まされない。
長丁場になると思ったスーラはあわてて近くに放り投げた
革の鞄から、小さな箱を取り出して、簡単に何かの術をかけると
入口付近に投げ飛ばした。この箱には風竜の力が込められていて、
スーラが術を使うとこの部屋から漏れる音が消えるようになる。
応急措置の消音だが、今はこれで十分だ。

憂いを絶った二人は、心行くまでお互いをむさぼり始めた。


「ねえ旦那さま、次はこちらもいかがですか?」
「わあっ!?」

今度はアイネがスーラを押し倒すと、
たわわに張りつめたバストで彼の剛直を包み込んだ。
今アイネの中に大量の精を放ったばかりにもかかわらず、
衰えを見せないソレは彼の白濁した精と、ぬるぬるした
彼女の愛蜜でべとべとになっている。

「んんぁっ…置いただけで僕のを挟めるなんて、
相変わらず反則的な胸だなぁ♪」
「うふふ♪旦那さまこそここをこんなに甘くていやらしい匂いで
いっぱいにしちゃって……胸でお掃除しますね♪」

そんなこんなで朝した行為以上に激しく胸をしごくアイネ。

「あんっ……やっぱり、おっぱいが気持ちいい…♪
前までこんなに感じなかったのに…開発されちゃったのでしょうか♪」
「あはは……もしかしたら僕が何回も触っちゃったからかな?
それに…アイネも感じてくれるなら、嬉しいよ。」
「んっ…♪ふふふ……ふふふっ♪」

スーラがアイネの頭をやさしくなでてあげると、
彼女はより蕩けきった表情で胸をすりよせ、
亀頭を舌でなめあげる。奉仕がうれしくてうれしくてたまらないアイネ。

「ふふ…おいひぃ♪ずっと舐めていたい…ああでも、
私の『卵ちゃん』部屋にもずぽずぽってして欲しい♪」
「や、やっぱりアイネの胸…すごいっ!
ここまでできる奥さんはなかなかいないよ…きっと!」
「やんっ♪また大きくなってきましたぁ♪胸の間でどんどん硬く…
イきそうなんですね♪ああ…早く出してください♪旦那様の精液、
顔にも胸にもたくさん掛けてくださいっ!あっ…ああんっ!」

ビクンッ!ビュクッ!ピュッ!

二度目の限界。
挟まれた屹立がうれしい悲鳴をあげて吐き出した精液が、
胸から顔、髪の毛に至るまで白一色に染め上げた。

「ああっ…またこんなに♪おいしそ……はむっ♪」
「うわっ!?アイネっ!い、今吸い出されるとっ!
またすぐに出ちゃうからっ!も、もう少し味わって!」

噴火を続ける屹立を胸に挟んだまま、彼女は先端を
そのぽってりした唇で包み込む。

「んふっ……こくっ、こくっ♪ぺろぺろっ♪
んっ、んっ…らんなひゃま、おかはり…ほひい……♪」
「の、のどの震えが…」

おいしそうに喉を鳴らすその行為がスーラの肉棒に直に伝わるせいで、
それがまた快感となって彼に次の射精を促した。

ビュッ!ドクドクッ!

三回目…

「んふぅうぅぅぅんっ♪んっ…じゅるっ♪あむあむ…♪
か、噛めちゃうくらい濃厚な精液…くせになりそう♪」
「もう…とっくに癖になってるんじゃないかな…♪
うっ、くっ…まだ残りがっ!」
「んうっ♪」

胸に圧迫されていた分まで吐き出すと、
スーラは一度自分を落ち着かせるように深呼吸する。
しかし…まだまだ物足りない。そしてアイネもまた然り。


「今度はまた…こっちに……♪」
「うん、こうなったらどっちが先に力尽きるか競争だね♪」
「あら旦那さま、私への宣戦布告ですか?
ふふふ、後悔しても知りませんよ♪少なくともあと30回は
私の中で出してもらいますからね♪」

そういうとアイネはスーラのほうに尻尾を向ける。
一番初めの行為ですでにどろどろになっているいやらしい唇は、
ここからが本番だと告げているようであった。
普通のドラゴンだったらまずしないだろうと思われる
発情しきった雌のような態勢。これも竜術士と
そのパートナーだからこそといった光景なのかもしれない。


その後も二人の行為はエスカレートしていく。
衰えを見せず、むしろ交われば交わるほどパワーアップする
アイネにスーラも全力で応えていた。

窓の外が夕日に包まれても……

「ふあっ!ふああぁぁぁぁぁぁぁ…っ!んっ!んんっ!んくっ!」
「ほら、アイネっ…もっと奥まで入れてあげるっ!
だからちゃんと中で一滴残らず受け止めてっ!」
「はいぃ!旦那さまっ!私の中に一杯注いで、種付けしてください!」

脚の代わりに竜尾を腰にからませて、アイネはスーラの剛直を
四つん這いのままより奥深くに招き入れる。
そして、子宮にめり込ませるように押し付けたモノから
吐き出された精を、子宮口が待ち構えるように開いて、
貪欲に飲み込んでいく。

ビュクウウッ!ピュッ!ピッ!

「旦那さまっ!あっ!好き…好きです……!」
「僕も、大大…大好きだよアイネ……」
「好き…愛してる……」


いつもは家族で夕飯を囲んでいる時間になっても……


「ああ、この…格好、ゾクゾクしてしまいますぅ♪」
「まったく…竜術師がドラゴンを組み敷くなんて、
大昔の人が見たらきっと軽蔑されそうだ……ふっ、うっ!」
「それだけ私が旦那様に心を許している証拠です♪
旦那様はもっと私をめちゃくちゃにしていいんですから♪」

側位で繋がるアイネとスーラ。
おそらく優者がドラゴンを倒した時でないと見れない光景だろう。
青く美しい鱗におおわれたアイネの太腿を、
その腕で抱きしめながら、されるがままのアイネの女性器に
自身の肉杖をねじ込み、腰を痛いほど打ち付ける。

「あっ、あっ!んっ、ふはっ!ひゅんっ!
子づくり気持ちい…♪もう私の子宮の中は…
旦那様の精液でいっぱいなのに♪もっともっと欲しがってる♪
いっ!あっ!イクぅっ!興奮していっちゃうっ!」
「うっ…うあああぁぁぁっ!」

ビシャッ!ビュビュッ!ビクッ!

「や……あ、なんで…抜いちゃ、あっああっ…かかってるぅ♪
旦那様の精液が…お肌にかかって♪熱い、あつぅい…♪」
「ごめん…どうしても君の体全体にも掛けてあげたくて♪」
「もう、早く言ってください♪そんないけない旦那様は、
私の足でお仕置きですよ♪ふふっ…ふふふっ♪」
「ちょっ!まっ!足でなんて……くっ!」



夜遅くになっても……



「あんっ♪あんっ♪旦那様の…きもちい♪
抜かないで…5回目だなんて……♪あ…すごい♪」
「まだまだ、こんなものじゃ終わらないよアイネ!」
「はい!もっと出してください!旦那様の精液がたまって
いやらしく膨れ上がった私の子宮に…♪もっと…いっぱい……」

すでに何度も愛し合っていろいろと失ってきた二人だったが、
尽きない愛欲は行為の終了を許さず、むちゃくちゃになるほど
お互いをむさぼりあい続ける。

「あっ…やんっ、また…イっちゃ……♪
あっ♪あはああああぁぁぁぁっ♪出てる…、出てるぅ…♪」
「くっ…な、何回出しても気持ち良すぎて……
いや、むしろ…出せば出すほど、やみつきになって♪」

何度も連続で膣内に精を放ったにもかかわらず、
スーラはまだ抜く気はないようだ。

「んんっ…♪まだ続けるんですか…?嬉しい♪
もっと…もっと………♪ずっとおねだりしちゃいます…♪
おねだりすれば…何回だって出してくれるんですから♪」



明け方近くになっても……


「はふっ……ちゅるるっ、ちゅぱっ♪だんなさまぁ…♪
んんっ、じゅっ♪ちゅぽっ、れろっ、はふっ♪」
「ふあぅ…ちゅっ、ちゅぱっ…アイネ、もう…降参かい?」
「あら♪旦那さまこそ…もう限界ですか?」

激しい動きをいったん休止し、お互いに横になって
ギュッと抱き合いながら、下半身で繋がりつつ
ディープキスに没頭する二人。さすがに腰が抜け始め、
覇気を失ってきてはいるが、まだ止める気はないらしい。

「休憩もいいですけど……んっ♪私のほうが回復が早いですから、
休みなく私を気持ちよくさせてくれないと、旦那様の
勝ち目はありませんよ…♪ね…旦那さま♪」

キュッ

アイネの蜜壺が再び臨戦態勢となって、
スーラの屹立を締め上げる。

「ぼ、僕だって男だ……!ドラゴンといえども負けないよ!」
「はい♪まだまだ…たっぷり、おねがいしますね♪」



そして夜が明けて……



「はぁっ、はぁっ…だんなさま♪だんなさま♪すき…すきぃ♪」
「くっ、はっ、あっ…ああっ、アイネ…アイネ……」

アイネの頭は旦那さまと交わる以外のことがすっぽりと抜け落ちていた。
スーラももうほとんど動くことはできず、アイネにされるがまま。
たぽんたぽんと水が揺れる音は、何度も精を嚥下してたまりきった
彼女の胃袋か、はたまたはちきれんばかりに精液を
注ぎ込まれた彼女の子宮か………


「だんなさま…だっこ、してぇ♪」
「アイネ……んっ、うああぁっ」
「ちゅっ♪んふぅぅぅぅぅぅっ♪」

トクン…トクン………コポォッ♪

お互いに抱き合い、キスをしながら
意識を失うまで何度も…何度も…
 
 
 
 
 
 
………



結局、朝になるまで愛しあったアイネとスーラは、
その日一日中眠ったまま過ごしてしまい、
起きたのは翌朝風の小箱の効果が切れて、
宿屋の女将が起こしに来た時だったという。
二人はあわてて身なりを整え女将に詫びたが、
女将さんはむしろ笑って一昨日の消火の労をねぎらってくれた。

「さぞかしお疲れのようでしたね竜術士様!」
「いやあ、お恥ずかしい……」
「ええ、おかげさまでいっぱい…んっ、あ、いえ
たっぷりと休息を取ることができました♪」

まだ若干子宮のあたりがジンジンするアイネだったが、
何事もなかったようにスーラとともに朝食を取り始めた。
用意してくれたパンやシチューを食べつつ、
何気ない会話を交わしている間に

「ふあぁ……おはよー母さん…」
「あら、おはよ、セリエ。自分で起きたのね、えらいね♪」

眠気眼をこすりながら階段を降りてきたセリエ。
それに続いてセトも降りてきた。

「ししょー、アイネ母さーん……おはよ…ふぁあぁ……」
「おっ、ちゃんとセトも降りてきたようだね。おはよー。」

ようやく、一家そろっての朝食が始まる。
初めての一家外泊にしてはほとんど思い出がないのが残念だが、
こうして外で、みんなで一緒に食べるのもまた違った
雰囲気があって楽しい。

と、ここでアイネはセリエとセトの様子が若干おかしい事に気が付く。
二人の視線がふと合う度に顔を赤くして顔をそらせ、
ジャムを手に取る時に手が重なった際、二人同時に手を引っ込め…

「せ、セト兄…先に使っていいよ?」
「いや…その、セリエこそ先にどうぞ…?」

そう、なんだか自分たちが初夜を迎えた次の日の朝のように、
二人の間に妙な空気が流れているのであった。
まだ寝ぼけているスーラはともかくとして、
恋愛ごとに鋭いアイネには、もう二人の間に何があったか
大まかに把握してしまったようだ。

(あらあらセリエもセトも、大人の階段を上ったみたいですね♪)

自分たちが睦合っている間に何が起きたかは知らないが、
家に帰った後サラッと聞いてみるのもいいだろう。

と、ここでアイネはふとあることに思い当る。

「旦那さま、少々寄って行くところがありますので
ここの宿で待っていてもらえますか?すぐに戻りますので。」
「何か用?わかった、ゆっくりでいいよ。」

軽く了承を得るとアイネは宿屋を出て、
足早にどこかへと向かっていった。
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
その後、町の人から歓迎会に招かれた竜術士一家は
お昼ご飯までごちそうになった後、夕方になってようやく
水竜術士家に戻ってくることができた。
まさかこれほど家を空けるとは思っていなかったので、
夕飯の支度やたまった洗濯物、掃除など非常にあわただしく片づけ、
最後まで気を抜けないお出かけになった。

夕食を食べ終えて、入浴も済ませ、
ようやくゆっくりと休める時間になったスーラは、
アイネがセリエとセトを寝かしつけている間に日記を書くのが日課だ。
三日分たまってしまった日記に浴槽修理や森林火災の消火、
そして妻と久々にフィーバーしてしまったことまで
長々とペンを走らせていた。

「旦那さま、ただ今戻りました。」
「早いねアイネ…あの子たちもう寝たの?」
「いいえ♪きっと寝たふりですよ♪」
「え?」
「まあまあ、あの子たちにもあの子たちなりの事情があるんですから♪」
「そうだね…二人ももう小さな子供じゃないんだしね。」

スーラが日記帳を閉じると、ベットに腰掛けるアイネの隣に腰をおろした。
だが、今日のアイネはどこかそわそわしているように見える。
いったい何があったのだろう?

「ねえ、旦那さま。大切な話があるの。」
「大切な話……」

いつにもなく真剣な表情に若干気圧されるスーラ。
だが、アイネはその真剣な表情を突然ほころばせて、
ポンとスーラの肩に頭を載せるように寄りかかった。

「私……旦那様の子供、身籠りました♪」
「あ…アイネ。本当に……」
「はい♪」

アイネが懐妊を告白すると、スーラは驚きの余り一瞬我を失ったが、
気を取り直してゆっくりとアイネの下腹部辺りを撫でた。

「旦那様のおかげです…♪初めてを貰ってくれたあの日から……
毎日欠かさず私の中に撒いてくれた旦那様の子種が♪
私の小さな卵の素と結びついて…卵ちゃんになったんですから♪」
「アイネ……ふふっ、本当にアイネが僕のパートナーでよかった…。」
「私も、旦那様のような竜術士を持って、とても幸せです。」

そして二人は、またいつものように口づけを交わすと、
あれだけやったにもかかわらず、夜の営みを始めた。


あと一年後に……水竜術士家に新たな家族が加わる。
12/10/08 15:56更新 / バーソロミュ

■作者メッセージ

皆様ご機嫌よう!秋なのにまだ若干暑いと思う今日この頃、
読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか?


さて、今回の小説は私の執筆活動の大きな節目として
クロビネガに入り浸り始めたころから温めていたネタを、
短編として形にしてみました。
いつか小説の腕前がある程度恥ずかしくないレベルにまで上がったら
書こうと思っていたのですが、今の時点で初投稿から
どの程度レベルが上がっているかは自身でも不明です。
ですが、少なくとも初心者だから、未熟だから、という弱音を
言い訳にすることは絶対にしないという信念のもと、
批判覚悟で様々な作品を投稿してきた私も、
ようやくここに来て自信を持ってお勧めできる一押しを
書くことができてとても満足しています。

この小説の元ネタは、マンガ「コーセルテルの竜術士」シリーズから。
ドラゴンと人間が平和に過ごすほのぼのストーリーが、
個人的にはとても大好きで、このサイトに嵌るきっかけも
この漫画が基礎にあったと断言できます。
もっとも、この漫画はどちらかというと少女マンガに
分類されるため、二次創作では801ネタは豊富なのですが、
このような男女の絡みは全く見かけません。
だったら私が書けばいいじゃない。
そんなわけで、図鑑世界の設定を若干無視した部分もありますが
(たとえば同化術やドラゴンが7種類いるとか……)
基本的には、もし竜術士が図鑑世界にいたらという内容なので
やっぱりあれでソレな内容になってしまいましたとさ♪

水竜術士と水竜の話はいったんここで終わりになります。
要望があったらセリエ&セトの日常も書いてみようかと思いますが、
「こんな作者に任せるよりも、自分でもっといい作品を書いてやる!」
という方がいらっしゃいましたら、ぜひお知らせくださいね。
個人的にほかの方の竜術士ネタも見てみたいので……。



で、ここからは完全に余談ですが、コーセルテルファンサイトの一つに
竜術素質診断というものがあります。この素質診断で、
私は水竜術の素質が非常に高いと診断されました♪
それがこの作品で水竜がヒロインになった理由だったりします。
もし、竜術素質診断に興味を持ってくれたドラゴン大好きの皆様は
ぜひ一度やってみることをお勧めします。

もし水竜術の素質が130を超えたという方には、
もれなく巻末でアイネが出産する予定の卵から生まれる水竜の
竜術士になる資格を贈呈いたします♪


ではまた次の作品もお楽しみにっ!

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