第19章:ラファエル大海戦 前編 BACK NEXT


こと戦においては無敵を誇るエルだが、彼にだって弱点がある。
それは……海での戦いの経験が一切無いことだ。

当然だが海上での戦いは陸でのそれとは勝手が大きく異なる。
ただ船をどつき合わせるだけではなく、戦場の地形・海流・天候を
しっかりと把握し、それに見合う船と戦術を用意することが求められる。
また、この時代の海の主力はガレー船といって、動力は人力に頼っている。
漕ぎ手の労力は相当酷く、全力で船を動かすと1時間も持たない。
こうした一連の要素は知識でどうにかなるものではなく、経験がすべてなのだ。

「報告しますエル様、レーメイアを出発した海軍がそろそろ到着するようです。
ジークニヒト提督とインゼルメイア提督率いる約520隻の艦隊が、
すでにチェンバレン近海まできています。」
「ん、分かった。ようやく来たな……これで少しは戦況に変化が出る。」

訓練中にエルは書記官から報告を受け、海軍が来つつあることを知る。
全開の攻城戦からすでに3週間が経過し、未だに膠着状態が続く戦場に
ようやく大きな変化が訪れ始めたようだ。

「聞きましたよエル様、ようやく海軍が来るそうですね!」

早速マティルダが話に割り込んでくる。
彼女の全身真っ赤な装備は赤道直下の真夏の日差しを受け
余計暑苦しく見えるが、まあこの際気にしないことにしておく。

「でもエル様……今まで海の上の戦いなんてやったことありませんが、
大丈夫なのでしょうか?」
「ん〜…自信がないこともないが、正直やってみなきゃわからん。
あとはあの二人の提督に任せた方がいいかもしれないな。」
「半年で落とすって言ったからには下手に時間はかけてられませんね。」
「そうだな…」

数日後には海軍が来る。海軍をいかに活用して要塞を落とすか、
いくら考えてもこの時点では皮算用にしかならなかった。









「かしらっ!てえへんです!一大事でさぁ!!」
「おう、どうしたそんなん慌てて、敵の援軍でも来たか?」

少し遅れてカナウス要塞のアロンの元にも十字軍船団到来の報がもたらされる。

「その通りでさぁ!!奴らの増援の船団が来やがりました!
あっしらの見立てじゃ軍船がざっと500隻ってとこでさぁ!」
「おいおい冗談じゃねぇよ、海賊相手に500とか何考えてやがんだ。
ま、そんだけ俺らが怖えぇってことなんだろうな。おっしゃ、いっちょやってやるか!
ロロノワ、頭目どもをいつもんとこに集めとけ!出撃の準備だ!」
「がってん!!」

カナウス要塞はにわかに慌ただしくなってきた。
暇を持て余していた海賊たちは久々に一暴れせんと各々武器を取り、
要塞内だけではなく周辺の無人島や岩礁に隠していた海賊船を引っ張り出して
本格的な出撃の準備をあっという間に整える。
正規軍なら普通は丸一日準備にかかるのに対し、身軽な海賊たちは
すぐさま行動に移れるようになっている。準備には1時間程度しかかからない。
そしてアロンは頭目を集めて簡単な作戦会議を開く。

「おっしゃ、お前らよーく聞け!今回は久々に大物が相手だ、それも最大級のな!
このままあいつらに合流させるとちぃと面倒だ。速攻で片付ける。」
「ねぇアロンさん…相手は500隻近くいるって本当?大丈夫なの?」
フランがやや心配そうな声で質問する。
「なぁに心配はいらない、確かに俺たちの持っている船の数は奴らの10分の1くらいだが、
俺たちには海賊流の戦い方ってもんがある。真正面から戦う必要はないわけだ。そうだろう?」
「おうよ、スクワイアの言うとおり、あんだけの数に対してタイマンなんざ考えてねぇ。
あいつらが戦ってる相手がどんな奴らか存分に教育してやろうじゃねぇか!」
『アイアイサー!!』

カナウス海軍出撃。集められた軍船の数は総勢64隻…海賊にしては破格の多さと言える。
イル・カナウスが保有する軍船は比較的大型で浅瀬や干潮時でも対応できるように船底が低く、
大波や強風にも対応できるように船首や船尾を普通の軍船より高くすると共に、
毛皮などを使った頑丈で強力な帆を装備している。
この独特の海賊船は昔から周辺国の船を大いに苦しませてきた。
普通のガレー船ではこの船に太刀打ちできずに為すすべもなくやられてしまうという。
その強さの秘密は……これから十字軍海軍が身をもって味わうことになりそうだ。











さて、ついに十字軍本陣まであと三日までの距離にまで来た、噂の海軍。
帝国海軍やユリス諸国同盟の海軍国、さらには大急ぎで新造された軍艦を含めて総勢518隻は、
ユリス諸国同盟最大の海洋国家であるモルヴィアンの領主であり、
かつベテラン提督ジークニヒトが率いている。
また、副将にはこれまた海の名将と名高いインゼルメイア提督が控え、
その他にも6人の提督がそれぞれに割り当てられた船団を指揮している。
一応内訳として

ジークニヒト提督…諸国同盟出身、男性
インゼルメイア提督…諸国同盟出身、女性
フォシル提督…帝国出身、女性
イルスベルグ提督…諸国同盟出身、男性
ミユ提督…帝国出身、男性
マガリ提督…帝国出身、女性
ヒルトラウト提督…諸国同盟出身、女性
シルカ提督…諸国同盟出身、女性

誰もが海上戦ではエルも足元に及ばない、海の兵たちである。


「おいジークニヒト、もうかれこれ3週間の遅れだ。もっと船団を急がすことはできんのか?」
「まあそう無理を言うでない。これ以上急げば漕ぎ手たちが疲弊してしまうではないか。
この辺りの海域は奴ら海賊たちの縄張り……常に警戒は怠るな。」

ピンと背筋を伸ばして甲板に立つ筋骨隆々の中年男性…ジークニヒトは
きつい男性口調が特徴の女性騎士…インゼルメイアの意見を抑える。
この二人は共にユリス諸国同盟で一二を争う素晴らしい提督なのだが、
元々それほど仲が良くなかった国同士であり、且つ得意な戦術も異なるので
二人で意見が食い違うこともよくある。

「ジークニヒト様のおっしゃる通り、これ以上速力を出すのは得策ではありません。
今は無理に急ぐよりも、安全に本隊と合流することを優先すべきかと。」
「ちっ、お前はいつもジークニヒトの肩を持ちやがる。しょ〜がねぇなぁ。」

エルはこの二人の仲が良くない(実はインゼルメイアが一方的に嫌っているだけだが)
のを考慮して帝国海軍出身のフォシルに参謀兼調整役を頼んでいる。
ただ、初期のうちはこれで上手くいっていたのだが、
最近フォシルは何かとジークニヒトに贔屓しがちであり、
気の強いインゼルメイアは実に面白くない。
まあ、だからと言って表だって敵対視すると後でエルに何言われるか分からないので、
とりあえず海賊との戦いが終わるまでの辛抱だとインゼルメイアは自分に言い聞かせている。

「もういい、私は自分の船に戻る。」
「そうか……くれぐれも勝手な行動は慎むようにな。」
「んなこと分かってるってばよ。」

インゼルメイアはそばに控えていた飛竜兵の飛竜に騎乗し、
自分の指揮する船団の旗艦に戻ることにする。

「まったく、あんなでかい船連れてくりゃ速度が落ちて当然だ。
強いのは良いんだが……正直すげえめんどくさい。」

約520隻の船団の中心に位置するのは、他の軍船よりも一際大きい船…
ジークニヒト率いるモルヴィアン海軍主力艦の『ガリース船』だ。
普通の軍艦は、攻撃する際弓矢を放つか接舷して兵士を乗り込ませる方法を取るが、
ガリース船はその巨体に投石機やバリスタを乗せて、強力な攻撃をすることが出来る。
その威力は絶大で、この時代に相手を船ごと沈めることが出来る数少ない攻撃方法だった。
その代り、非常に多くの漕ぎ手が必要で、船足も普通の船に比べて格段に遅い。
なので周囲の船もこの船に速度を合わせて速度を調整する必要がある。
インゼルメイアの指揮する船団は船足が早い軍艦を中心にしているので、
鈍足のガリース船があまり好きではないようだ。


「…ん?」

彼女がなんとなく沖の方向に目を向けると、遠くの海上に一匹の鳥影を見た。
その鳥影はここからだと正体がよく分からないが、その場でホバリングしているようだ。

(あの大きさはハーピー……いや、セイレーンか?
この辺りは魔物の巣窟だというからな、セイレーンくらいいても不思議じゃない。
だがあんな遠くにとどまって何をしているんだろう、そのうち仲間でも呼ぶ気か?)

気にはなるものの、彼我の差は1q以上ある。
そんな先のものまで見えるインゼルメイアも大した視力だが、
だからと言って何をできる距離ではない。

「やってきたらその時はその時だな。」

セイレーンの一羽や二羽くらいどうってことはないと考え、
今は船を進めることだけを気にかけることにした。








「かしらーっ!!偵察が戻ってきやした!」
「おうっ、奴らはどうなってる?」
「奴らは沿岸付近を長い列を作って進んでいやす!」
「よっしゃ!!こいつはもらったな!」

偵察に出していたセイレーンから十字軍の情報を得たアロン。
現在彼らの船団は十字軍海軍航路の南方向で様子をうかがっていた。

「野郎ども、ユリスの弱虫どもに海賊流の戦い方を教えてやんぜ!!」
『いよっしゃあっ!!』
「おーしっ、スクワイアを先頭に突撃だ!帆を上げろ!風起こせ!!」

アロンの攻撃の合図と共に、不思議なことがおこった。
今まで西向きの微風だったのが突然強い南風に変わり、
さらに穏やかだった水面は急に強い波となった。
この風と波は驚くことに全てセイレーンやネレイスなどの魔物娘達が
起こしたもので、カナウス海軍の軍船は波と風に乗って一気に加速する。
その速度は20ノットに達するほどであったという。



一方の十字軍海軍も波と風の変化を察知していた。
特に小型の船舶は強い波によってどんどん沿岸の方に横流れしてしまう。
風によって船体の方向が微妙に乱れ、危うく衝突しそうになった船もあった。

「これは…どうしたことだ?これほどまでに不自然に海模様が変わるとは…」

長年海で戦ってきたジークニヒトも、予期せぬ海模様の変化に驚いた。
風向きが変わる時も波の強さが強くなる時も何かしらの兆候がある。
その兆候がベテランの彼でも分からなかったのだ。
そして強風荒波の影響を最も受けたのが、最右翼に展開するミユ提督の船団だった。

「帆を畳め!全力で漕げ!船同士でぶつからないように気をつけろ!」
「提督…!右舷方向から所属不明の船影がこちらに向かって突っ込んできます!」
「お、おい…冗談じゃないぞ、今ここで突っ込まれたら…!
ええいジークニヒト提督に急いで知らせろ!海賊どもが襲ってきたと!」

ワーワー



「まったく、お前らが来なけりゃな…美しい妻たちと毎日平和に愛し合えてたんだがな!
俺たち海賊の船は勇気・友情…そして愛こそが原動力ッ!!
それが無きお前たちの船は残念ながら沈んでもらう!!いくぞ!!」

カナウス海軍はスクワイアの船を先頭に十字軍海軍の脇腹に突っ込んでいく。
操船に四苦八苦しているミユの船団にとってはたまったものではなかった。

ズズーン!!メキメキッ!!

「わあっ!?」
「ふ、船が〜〜!!」
「このっ…怯むな!弓を撃って反撃するんだ!敵は少数だぞ!」

当然十字軍もやられっぱなしで終わらず、反撃を試みる。
ところが荒波で大きく揺れる船上では弓矢の狙いが定まらず、
おまけにカナウス海軍独自の軍船は船高が高く、十字軍のはまるで当たらない。

「はっはっはー!そんなナヨナヨした矢しか撃てないのかい?」

「いかん!このままでは衝角で船体を喰い破られる!回避急げ!」
「む、無理です提督!避けられません!」
「ナンテコッタイ!!」

ズズーン!!バキバキッ!!

ミユの座乗艦も突進攻撃をもろに受け、右舷大破、撃沈した。

「して……やられたわ…」

海面に投げ出されるミユ。その下では複数のネレイスが両手を
広げて新たな夫候補を出迎えてくれていた。

他のガレー船も次々と船体を突き破られ、海の藻屑となっていく。
普通規模のガレー船には一隻当たり兵士が20〜30人と漕ぎ手300人が乗っていて、
それらが丸ごと海に放り出されるのだ。ネレイスを始めとする海の魔物にとっては、
とっても美味しい漁場と化している。

「ひぃ……く、来るな…!」
「そんなぁ、来るななんて酷いこと言わないで……。ね♪」

「お、溺れる…助けて……」
「あらあら、それは大変ね。…だったら私みたいになれば溺れなくなるわよ。」

男女例外なく、海に投げ出された者は海の客となってゆく。
右翼船団は物の数分で戦闘するどころではなくなってしまったのだった。



敵が突っ込んできた右翼側だが、だったら左翼側は比較的安全かと言えばそうでもない。
ヒルトラウト提督率いる左翼船団は、船団全体が左に流されていることもあって
常に味方船団からの衝突の危険にさらされ、どんどん沿岸の方に詰められていく。

「ああもう、あっちの方は何をしてるの?」
「それが、どうも海賊たちの攻撃に押されて船団全体が横から押されているようです。」
「あっち側は帝国の船団ね……今は味方と言え、帝国海軍は役に立たないわね。」
「ですがこのままでは我々の船は沿岸に押さえつけられてしまいます。」
「わかってる…でも中央の船団と衝突しても拙いし、早めに航行しなさい…」

ところが、彼女たちの敵はカナウス海軍だけではなかった。
ヒルトラウト艦隊は、ある地点で次々と急停止しはじめたのだ。

「ちょっと!急にとまらないでよね!」
「す…すまん、どうやら暗礁に乗り上げちまったらしい!」
「おい!こっちも岩に引っかかったみたいだ!救助頼む!」
「気をつけて!この辺りはどうやら暗礁地帯みたいよ!」

困ったことに、沿岸部は突き出た岩が連なる暗礁地帯だったらしく、
喫水の深いガレー船は乗り上げたり、船底を突き破られたりしてしまう。
これでは早く進むどころの話ではない。
止まってしまった船を救助するために急いでロープを張って牽引を試みる。
船底を突き破られて航行不能になった艦の乗員は仕方がないので、
定員に余裕がある艦に拾ってもらうしかなかった。
この混乱がまた次の座礁大破を起こし、左翼船団は大変な騒ぎとなった。

だがこれだけでは終わらない。


「えいくそっ…何とかして動かせないのか。」
「あちゃ〜こりゃ完全にのりあげちゃったわね。
…ん?ね、ねぇ…ちょっと、あれ何…?」
「タコの足…だな。ははは…まさかな……」

ひたひたという音と共に、無数のタコあしが甲板に這いあがってくる。
もちろんこれは野生のタコが自ら夕食になりに来たわけではない。

「こんにちはー♪お誘いに来ましたー。」
「長い船旅で溜まってない?一滴残らず抜いてあげるわ。」
『で、出たーー!!』

立ち往生してしまったガレー船に群がるスキュラ達。
逃げ場のない乗員たちは必死に武器を振って撃退しようとする。
こうなってしまうと仲間からの助けも望めず、
早かれ遅かれ彼女たちの触腕の餌食になることだろう。

そしてヒルトラウト自身の座乗艦も、
ガレー船同士の混乱に巻き込まれ、身動きが取れなくなった。

「提督!このままでは進むことも退くこともままなりません!」
「落ち着いて。多少の衝突は仕方ないわ……隣の船となるべく頭を揃えて…」
「大変です提督!この船にも魔物が…!」
「慌てちゃだめよ、落ち着いて…落ち着いて撃退するのよ。」

甲板に這いあがってくる数体のスキュラは、手近な兵士に襲いかかる。
幸い彼女たちは統率がとれずばらばらに襲ってくる…撃退も難しくはないはず。
そう判断した彼女は自身もソニックソード(風魔法剣)を振う。
しかし余裕を持って戦えたのは少しの間だけ。
そのうちに他のスキュラも続々と甲板に這いあがり、数で圧倒してきた。
ヒルトラウトも魔法剣で魔力を消耗してしまっている。

「もはやこれまで……船から脱出しないと。飛竜兵、早く脱出の用意を。」
「それが…飛竜兵は先ほど我々を置いて逃走しました…。」
「そんな…」

もう脱出は不可能――そう悟った時、彼女の足首に一本の触腕が絡みつく。
呆然自失の彼女はとっさの判断が遅れてしまった。

「つーかまえたっ♪」
「そうはさせ……ぅわああぁっ!!」

足をからめ捕られたヒルトラウトはバランスを失い、甲板に倒れ伏す。

「うっ…ぃっつつっ……」
「ほーらほら、私の友達を何人も倒しちゃったあなたには、お仕置きが必要ね♪」
「い……いやぁ…セドナ様、どうかお助け―――んんっ!?」

信仰する海の女神に助けを求めるも、もちろんどうにもなるはずもなく。
また一人十字軍海軍の提督が魔物の餌食となった。
指揮する提督を失った船団は、戦闘海域からの脱出を目指すしかなかない。
もっとも、脱出できる方角が分かればの話だが………




戦闘開始から30分が経過した。
完全に虚をつかれた形となった十字軍海軍は各地で大混乱を起こしている。
特に約520隻の大艦隊は大軍の利を生かせず、むしろ混乱を助長してしまった。
今まで人間国家同士の戦いが主だった各国の艦隊は海賊と魔物娘独特の戦術に翻弄されている。
ある船は船底に孔をあけられ、ある船はカリュプディスが起こす渦潮の犠牲となった。

だが、圧倒的不利な状況でもなお、ジークニヒトは船団の再編成に成功した。
カナウス海軍が本格的に中央集団に攻撃する頃には、
すでにしっかり応戦できる構えを整えて海賊たちを迎え撃つ。
横から突撃する海賊船に対して主力の大型ガレー船の一斉射撃、
そして虎の子ガリース船の投石機・バリスタがうなりを上げる。

「今こそ好機!この場で海賊どもを殲滅してくれる!」
『ヤヴォール!!』

ワーワー


「ちぃっ、もう立て直してきやがったか。
あの金髪大将といい、今度のオヤジ船長といい張り合いがいがある相手ばかり!
はっはっは、ますます喧嘩が楽しくなって来たぜ!
野郎ども!!奴らと力比べだ!負けんじゃねえぞ!!」
『応!!』


こうして両軍本気の船舶同士の大激戦が始まった。
まず無数の矢と、時には投石機からの大きな石弾が飛び交い、
船同士が接近すると木の厚板を使って相手の船に切り込みをかけた。
白兵戦では両者ともに互角の強さだったが、船同士の接近戦ではカナウス海軍に有利だった。
なぜならカナウス海軍の海賊船の衝角は十字軍のガレー船の船体を容易に損傷させ、
逆に十字軍の衝角攻撃ではカナウス海軍の海賊船にダメージを与えられないからだ。
実は彼らの海賊船はドワーフが作った特製の軍艦であり、丈夫な木材を
ふんだんに使っている上に軽くて丈夫、船底も浅くこの辺りの地形に適応できる。
それに比べ十字軍のガレー船は量産を重視した形ゆえに殆どの性能が劣っている。
反魔物国と親魔物国で技術差が顕著に出た良い例だ。


「やるようだな……。伊達に長年海域を支配していたわけではなさそうだ。」
「提督………お気を付け…下さい、奴らの……矢には…毒が……」
「なに、毒だと?」
「身体が………痺れて……」

最後までセリフを言い終わらないうちに、痺れて動けなくなる兵士。
どうやらカナウス軍の矢には特殊な毒が塗ってあるようだ。

「海賊め…どこまでも汚い手をつかいおる。」
「ジークニヒト様、この甲板も危険です。どうかお下がりください。」
「ならぬ。この大事な局面に指揮官がひいては戦意が落ちるというもの…
たとえこの身が無数の矢に貫かれようとも、この場に立ち続けよう。」
「あぁ…さすがはジークニヒト様、感服いたしました!!」

ジークニヒトは自分の身の安全よりも戦況を優先した。
前線から一歩も引かない提督の姿を見た兵士たちはさらにやる気を出し、
フォシル提督などは感動のあまり(?)身体を震わせている。
ただ、このような姿勢は時として軍全体を危険に追いやることもある。
指揮する人間を失ったら軍は機能しなくなるのだ。


「おい大将!!俺こそがイル・カナウス首領アロン!海に飛び込む準備はできたか?」
「ほほう、お主が海賊どもの首領か。どんな奴かと思えば、案外若いのう。」

アロンは50歳過ぎなのだが、親魔物国の男どもは大体歳と外見が一致していない。

「提督!ここはそれがしにお任せを!」
「うむ、インスベルグよ任せたぞ。」

「おう、まずはお前が相手か!」
「かしらが出るまでもありません、俺がちょっとひねってきまさぁ。」
「よっしゃ、いってこいアルクトス!一発ガツンとやってやれ!」

斧を片手にインスベルグの船に乗り込むアルクトス。
対するインスベルグもシャムシール(三日月形に反った片手剣)を構える。

「ぬぅんっ!!」

ブンッ

豪快に斧を振り下ろすアルクトス、それに対してインスベルグは
軽い身のこなしで回避する。斧で戦うにはやや分が悪い相手といえる。

「無駄だ、隙がありすぎるな。」
「くそっ…こいつは厄介だ。」
「ふん、こいつは躱せまい!」

一瞬、インスベルグが分身して見えたかと思うと、猛烈な速さでアルクトスに襲いかかる。
アルクトスはこの必殺の斬撃をかわせず、身体を何箇所も切られてしまう。

「痛っ……」
「終わりだ。」

ザンッザンッザシュシュッ!

「ふん、ずいぶんとあっけなかったな。」

恐ろしい嫌疑でアルクトスをめった切りにし、息一つ切らさず剣を鞘にしまう。
ジークニヒトや十字軍兵士たちも勝負あったと確信した。
しかしアロンは眉一つ動かさずに戦いを見つめている。


「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「な、なにっ!?あれだけの攻撃を受けてまだ動けるだと!!馬鹿な!」

ブンッ  ドカッ

「くはっ!?」

アルクトスは何ともなかったかのように全力で斧を振った。
勝利を確信し、すっかり油断していたインスベルグは
アルクトスの大ぶりの攻撃を避けることが出来ず、脇腹に大きな一撃を受ける。
大きく吹き飛ばされたインスベルグは船から放り出され、
盛大に水しぶきをあげて海面に墜落した。

「すげぇ!さすがアルクトスの旦那!」
「あれだけ押していた提督が一瞬で…!奴らはバケモノだ!」


ワーワー

なぜアルクトスはあれだけの攻撃を受けてもびくともしなかったのか…
それは彼が人魚の血肉を摂取したインキュバスだからである。
彼の体力はちょっとやそっと攻撃を受けただけではびくともせず、
肉体の再生速度も驚異的に早い。その証拠に、出血はもう止まっていた。


「おお…インスベルグ!!なんということだ!」
「どうだ大将。もう勝負はついたも同然だろ、さっさと降参しろや。」
「降参だと、海賊ごときに降参なぞ出来るものか。
それにまだ我らは十分戦える、そちらこそ逃げるなら今のうちぞ。」
「あーあ、分かってねぇな大将。あんたの周りを良く見てみな。」
「何?」

ジークニヒトがあたりを見回すと、そこには驚愕の光景があった。
なんと、女性兵士たちが男性兵士を襲って、その場で性交していたのだ!
女性兵士たちの肌は青白く変わり果て、鰓や鰭のような部位が現れている。
一方の男性兵士たちは麻痺して動けないでいる……

「ど、どうしたことだ兵士たち!気でも狂ったか!」

実は先ほどの毒矢…塗ってあったのはシースライムの麻痺毒で、
さらにちょっとした細工でネレイスの魔力も帯びている。
この毒が少しでも体に入ると男性は麻痺して動けなくなり、
女性は数分もしないうちにネレイスになってしまうという恐ろしい毒だった。


「こらお前達!剣を取って戦わぬか!立たねば斬るぞ!」
「で…ですが提督……それは…」
「だ…め、ずっとこの人と……繋がって、いたい……」
「ぬうっ!!」

ジークニヒトはその場で剣を抜き放ち、見せしめに兵士を粛清しようとした…
が、その剣を持つ手は何者かに止められた。

「誰だ!離せ!」
「おやめください、ジークニヒト様……」
「フォシルか、邪魔をするならお前も斬るぞ!」
「だめ……なのです、私も…私も……ジークニヒト様のことが欲しくて…あぁ」
「何を言って…、っ!フォシル…まさか!」

ジークニヒトの剣を止めたフォシルの腕を見ると、
青白く染まった美しい肌にきめ細かな鱗が見える。

「ジークニヒト様、愛しておりました…どうか私の気持ちをお受け取りください……」
「ま、待て……今この場でなど!…うおっ!?」

合われジークニヒトは、頼りにしていたはずの味方に押し倒されてしまう。
こうして、主力だった中央船団もまた一瞬にして指揮する提督を失ってしまった。
モルヴィアン海軍自慢のガリース船は殆ど戦果をあげることなく機能停止し、
多くの船は沈められるか、カナウス軍によって船ごと制圧されてた。
この時点で十字軍海軍の敗北は確定したのだった。





中央船団が大敗した頃、最後まで粘り強く戦っているのが
インゼルメイア率いる先頭船団だった。
彼女の小型船団は攻撃を受けた時間が遅かったため
応戦準備に余裕があったことが幸いして、カナウス海軍と互角の戦いをしている。

インゼルメイアの小型船中心艦隊は攻撃力こそ低いものの機動力が高い。
巨体を生かして突撃してくるカナウス海軍の海賊船の攻撃を回避しつつ、
手槍やピラムなどの投槍で攻撃をしている。
ところが相手があまりにも大きいので、船高が低いこの船団では
投槍攻撃が届かず、全くと言っていいほどダメージを与えられない。
得意の衝角攻撃も海賊船相手では逆に自分の船を痛めてしまう始末。


「ああもう、どうしろってんだよ!あんなの反則だろ!」
「どうします、提督?」
「そうだな……せめて敵大将の一人くらいは倒したいものだが。」

と、そこに…

「ふっ、呼んだかい美しくも気高いお嬢さん?」
「誰だお前は!?」

半分ナンパが入ったスクワイアの登場台詞に、
インゼルメイアが半ば突っ込みの応答をした。

「俺はスクワイア。イル・カナウスのN0.2にして、最もハンサムな伊達男さ。」
「それを自分で言うか普通?そーゆー奴は大抵中身のないダメ男ばかりだよ。」
「はっはっは、そんなことはないよお嬢さん、なんだったらこの場で
証明してもいいんだけどな。まあ、個人的に美しい女性を傷つけるのは嫌なのだが。」
「いちいちムカツクなお前。」

どこまでもナルシスとなスクワイアに、インゼルメイアはげんなりしてしまっている。
だが、実際スクワイアはイル・カナウスの中で一番モテるのは確かだ。

「こいよ!その減らず口をきけないようにしてやろうじゃない!」
「おお、お嬢さんの方からお誘いとは、とても光栄に思うよ。」
「あといい加減その気持ち悪い話し方やめろ。」

インゼルメイアのツッコミも意に介さず、驚きの跳躍力で小型ガレー船に乗り移る。
そして腰からサーベルを抜いて、気障な格好で構えた。
彼愛用のサーベルには彼の座右の銘『全ての愛と女性のために』が刻まれている。
対するインゼルメイアが装備するのは鎖で出来た鞭だ。

一騎打ちが始まると、両者とも素早さを生かして立ちまわる。
お互いの武器では鍔ぜり合うことが出来ないので、攻撃を防御できない。
インゼルメイアの鎖が、生きた蛇のように柔軟に動き回り、
スクワイアは彼女の変幻自在の攻撃を右に左に回避して見せた。

(ああいった武器は接近されると弱い。だが、相手もそれをキチンと分かっているようだ。
このままだとリーチで圧倒的に劣る俺が不利だな。さて、どうしたものか。)

鞭の類は篤合いが非常に難しい半面、
使いこなせればこれほど相手にとって戦いにくい武器もない。
下手に近付けば相手の良いようにあしらわれてしまうだろう。

「ふふん、どうだ、近付けまい!」

ヒュンヒュヒュン!キィン!

「なに、今までのは軽い準備運動だ。ならこれでどうだっと。」

ヒュンヒュヒュン!  ジャラッ!

鎖の鞭がサーベルに巻きついた。
こうなると、武器と動きを大幅に封じられるスクワイアが圧倒的に不利だが、
なぜかスクワイアはむしろこれを狙っていたかのような不敵な笑みを浮かべる。

「馬鹿め、自ら武器に鞭を絡ませるなんて自殺行為だ!」

当然インゼルメイアは、サーベルを手放させるよう鞭に力を入れる。
だが彼女のもくろみは次の瞬間大きく崩れ去った。

「俺とこのサーベルを甘く見てもらっては困るぜ?そらっ!!」

ジャキィン!!

「うおぉぉい!!私の鎖鞭がーー!!」

スクワイアは驚くべきことに絡まったサーベルでそのまま鎖を切断してしまったのだ!
インゼルメイアの鞭は急激にリーチが短くなり、もはや用をなさない。

「畜生…!こうなったらお前達、こいつを食い止めろ!」
『ははっ!!』
「おいおいお嬢さん、折角の一騎打ちに兵士を投入するとは興ざめじゃないか。」
「うるさいうるさいうるさーい!!行け―!
この気持ち悪いナルシスとを討ち取ったら特別報酬金貨1000枚やるぞ!」
『よっしゃぁ!!』
「そっちがやる気ならこっちもだ!野郎ども、乗り込め!」
『うーっす!!』

不利を悟ったインゼルメイアは無理矢理白兵戦に持ち込んだ。
インゼルメイアの海兵は船上ならユリスで最も強いと言われているが、
カナウスの屈強な海賊たちも負けず劣らず強力である。
両者とも実力では互角だったが、決定的な差を生みだしたのが
華麗なサーベル捌きで十字軍を圧倒するスクワイアだった。
性格はアレだが、どうやら実力は本物の様で、敵を盾ごと真っ二つにしてしまう。
しかしインゼルメイアは先ほどの一騎打ちで得物を失っていて戦えない。

『キャーーー!!スクワイア様頑張ってーーーー!!』
「フッ、まかせてくれ!」

カナウス軍の方からスクワイアの妻たちの黄色い声援が飛んでくる。
それに応えるように、スクワイアの剣筋も鋭さを増していった。

「提督!おそらくこれ以上は持ちません!我々を食い止めている間に脱出を!」
「私のせいで……済まない。……マガリ!!」

「インゼルメイアさん!掴まって!!」

どこからともなく飛んできた赤い飛竜に跨るのは帝国海軍提督マガリ。
飛来する矢をくぐり抜けて、甲板すれすれを低空飛行したかと思うと、
一瞬でインゼルメイアの手を掴んで、彼女を船から救出した。

そして彼女が脱出した一瞬後に、乗っていたガレー船が
ネレイス達が起こした波に当たって転覆。乗員は全て海に呑み込まれた。
ついでにスクワイアも転覆に巻き込まれるというオチを付けた。

「はっはっはー、まさに水も滴るいい男って感じだ。そうだろ?」
「……それはよろしいのでやすが頭目、敵の大将をのがしちまいまして。」
「そうか、あのお嬢さんもネレイスになればもっと美しくなるのに、惜しかったな。」

その後インゼルメイアは船団に指示を出して、大急ぎでこの海域から脱出させた。
彼女の船団は被害があまりなかったので、大半の船は逃げ出すことが出来た。
ただ問題は中央主力軍の状況だった……

「マガリ、戦況は?」
「残念ですが我が軍は大敗北です。大半の提督が行方不明になり、
確認が取れているのはインゼルメイア提督と輸送船団のシルカだけ……
主力艦隊もほとんどが海の藻屑と化しました。残っている兵船は
私の船団と輸送船団とインゼルメイア様の船団だけで、
多く見積もっても200隻も残っていないでしょう。」
「冗談じゃない…。まだ作戦行動しないうちに半数以上も失ったのか!!」

インゼルメイアのショックは大きかった。
少数の海賊相手に自慢の大艦隊が一方的に叩きのめされたのだ。
失った船から換算すると、少なくとも60000人もの膨大な人命が失われたことになる。
十字軍の陸軍は日々輝かしい成果を上げてるのに対して、
こちらは何もしないうちに開戦以来最大の大打撃を被ってしまった。
おまけに有能な提督の大半は海の客……もはや戦闘継続も危うい。

「とにかくエル司令官に顛末を報告しよう。それから私は責任を取る…」
「インゼルメイアさん……」

士気低下と疲労に苦しみ、ボロボロになりながら十字軍海軍は合流地点を目指す。
今やあれだけの威容を誇った大艦隊の姿は、もうどこにもなかった。


さて、今回の海戦における戦闘結果は……

十字軍海軍:船舶合計518隻、総員約110000人(うち約90000人は漕ぎ手)
撃沈・拿捕311隻、戦死・行方不明者約74000人(うち7割が魔物化)、
      負傷者120人。(損害率約72%)

カナウス海軍:船舶合計64隻、総員約2500人、撃沈・拿捕1隻、
       戦死・行方不明者37人、負傷者なし。(損害率1%)


圧倒的な大勝利にカナウス軍は大いに盛り上がっていた。

「野郎ども!!今回も俺たちの勝ちだ!!良く頑張ったな!!」
「さっすがおかしらっ!!見事な戦いぶりでございやした!」
「フッ、俺たちの絆と勇気があればどんな奴にも負けやしない。そうだろ?」
「それとネレイス達からも『たくさんの夫を貰えました』と感謝されましたぜ。」
「シー・ビショップ達も結婚式が多すぎて忙しいみたいさっ。」
「へへっ!ユリスの奴らはさぞ慌ててることだろうな!
もう一遍来れるなら来てみろってんだ!また返り討ちにしてやるぜ!」

その夜はもう要塞を挙げてのお祭り騒ぎ。
まだ完全に勝ったとは言えないのだが、彼らにしてみればもう勝ったも同然だ。
海軍はぼろぼろになり、陸軍は要塞の硬さに手も足も出ない。
そう遠くないうちに彼らは自分たちの住処に帰るだろうと、
アロンを含めイル・カナウスの海賊たちは考えていた。
そう、今まで相手にしてきた軍隊なら……






一方十字軍の本陣では…

「エル様、シルカ提督が来ています。」
「シルカが?何かあったのだろうか…ひとまず通してくれ。」

シルカは海軍の輸送船団を指揮しているはずだ。
それが彼女一人で来るとはどういうことだろうとエルは首をかしげた。
まあとりあえず話を聞いてみないことには始まらない。

「あの…失礼します。」
「うむ、久しぶりだなシルカ。何か問題でも起きたか?」
「そ、そのことなのですが…!」

シルカから、海軍がカナウスの奇襲を受けて大打撃を受け、
さらに多数の提督が行方不明になってしまったことを聞いた。
まだ戦えないこともないが、主力をほとんど失ってしまったらしい。
不幸中の幸いだったのはシルカの輸送船団はほぼ無事だったことくらいか。


「ちょ、ちょっと!それ本当なの!?」
マティルダは報告を聞いてわが耳を疑った。
もはや頼りになるのは海軍だけだと思っていた矢先に起きたからなおさらだ。
「残念ながら…申し訳ありません私達の力不足で……」
「ふーむ、まあ勝敗は兵家の常だ。しかしジークニヒトまでやられるとはな。
だがシルカ、お前はちゃんと輸送船団を無事に離脱させることが出来たんだ、
寧ろあの戦いの中でよくぞ出来たと思う。誇っていいぞ。」
「ありがとう……ございます…」
「おいおい、何で泣くんだお前は。」

叱責を覚悟していたシルカだったが、
怒られるどころか褒められるとは思っていなかった。
様々な重圧から一時的に解放された彼女は、
思わずその場に泣き崩れてしまった。


「ユリアさん、シルカに寝床と食事を用意してあげて下さい。」
「ええ、分かりました。」
「天使さま…ありがとう……ございま…うぅっ」

シルカも敗戦以降ずっと緊張しっぱなしだったのだろう。
彼女はユリアに持たれるように何とか立ち上がる。
ところが………

「………あの、シルカさん?服から凄い臭いがするのですが。」
「あ、ホントだ。ユリア様の言う通り、
なんか…こう、腐った魚のような臭いが………
でもこれって長い間お風呂入ってないような臭いじゃないし…」
「す、すみません……!御迷惑でしたか!?」
「いえ…とにかくこの服は後でお洗濯しますので、気にしないでください。」

謎の悪臭の正体は、船団が到着したときに明らかになる。


「さてと…どうやらそう簡単には勝たせてもらえないようだな。」

全滅しなかっただけまし…と前向きに考えて、
残った艦隊をどう生かすのかを改めて検討しなければならない。
ジークニヒトですらコテンパンにされた相手に果たして自分が勝てるのか…

「エル〜、さっきマティルダから聞いたんだけど海軍が大敗した――
って……何、この腐った魚と腐った卵を足して2倍したような臭いは…」
ユニースが司令部幕舎に入った直後、シルカが持ち込んだ謎の匂いが彼女を襲った。
「何だろうなこれは?俺も表の空気吸ってくる。」

海軍が大敗北し、これからの戦略に支障をきたすというのに
エルたちは謎の匂いのせいでとても落ち込める気分になれなかった。


第一次ラファエル大海戦概要図

12/05/03 12:44 up

登場人物評


十字軍海軍

ジークニヒト アドミラル32Lv
武器:アルフレッドソレイユ(剣)
海洋都市モルヴィアン領主にして、自他とも認めるユリス最強の海軍を率いる提督。
実は家庭を全く顧みない性格。妻はいるが子供がいない。

インゼルメイア トリックスター28Lv
武器:プロミネスチェイン
群島に複数の都市を持つ海洋国の提督。ジークニヒトの国とは昔から仲が悪い。
男勝りで非常に喧嘩っ早い。エルとは逆で、よく男だと勘違いされる。

フォシル 賢者22Lv
武器:水魔法(主に杖から噴射する)
いかにも海の女神といった風情の柔らかい雰囲気を持つ帝国海軍のリーダー。
ジークニヒトには初めて国同士で海戦が起こったときから恋していた。

インスベルグ セイバー25Lv
武器:シャムシール
ジークニヒトの部下。遠国の出身で、褐色肌にターバンが特徴。しかも超美系男子。
剣技もそこらの剣豪以上に鋭く、非の打ちどころのない優等生だったが……

ミユ  サージェント20Lv
武器:銀の戦斧
帝国海軍の提督。大型船の運用に一家言もつ実力派である。
海戦では何もしないうちにやられたが、斧の腕前もかなり高かったという。

ヒルトラウト 勇者21Lv
武器:ソニックソード
インゼルメイアの後輩で、小型船の運用を得意としている。
海洋神セドナを熱烈に信仰していて、自分の船に女神像を搭載している。

マガリ  ドラゴンマスター22Lv
武器:トマホーク
提督でもあり飛竜兵の隊長でもある変わった経歴を持つ女性。赤いポニテが印象的。
固定化しつつある海戦のあり方を変えようと、新しい船舶を作る。

シルカ  司祭11Lv
武器:回復魔法
今回の遠征では輸送船を任された提督。Lvを見れば分かるが本人は戦闘に向いてない。
まだ年が若く、やや気が弱く泣き虫。今回の遠征はそれを克服するために参加した。


カナウス海軍

スクワイア パイレーツ29Lv
武器:ラヴァーズサーベル
自他とも認めるイル・カナウス一番の伊達男。魔物娘達からの羨望の眼差しが生きがい。
彼の妻は1年に1人ペースで増えており、今では30人もの妻を持っているとんでもない奴。




ファーリル「やあみんな元気だったかな?こっちは散々にやられちゃったね。
この海戦は企画当初から負けイベントって決まってたんだけど、前に少しだけ
くろびねが掲示板を見たとき『図鑑世界では人間は海の親魔物国に勝てる可能性があるか?』
っていう話題があったんだよね。当然ながら結論は『勝ち目なし』だったわけさ。
まあこのサイトの設定だとそもそも勝つこと自体がおかしいのかもしれないけど、
やっぱり普通に戦っただけだとどうあがいても勝てないのはしょうがないよね。
何しろ海の魔物というからには海を自由自在に動けるんだから、勝負にすらならないかも。
果たしてエルはここから巻き返しを図れるのかな?」

バーソロミュ
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