連載小説
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辛い想いは両想いに…

さて、まずは有名なお話から。



昔々…ある小さな国に一人のお姫様がいました。
お姫様はそのあまりの美しさから、遠くの大きな国に目を付けられ
姫を差し出さなければ国を滅ぼすと脅されてしまいました。

小さな国の王様は泣く泣くお姫様を差し出すことにしました。
お姫様も自分一人でたくさんの人の命を救えるのなら、と承諾しました。
わがままも言わない賢くて立派なお姫様だったのでしょう。

ですが、実はお姫様には好きな人がいました。
好きな人は、その国で一番強い騎士でした。
そしてその騎士もまた、お姫様のことが好きでした。
二人はお互いに両思いであることは知りませんでしたが、
その信頼関係はとても厚く、周囲から見てまさにお似合いの二人でした。
お姫様も騎士も、さぞかし辛かったに違いありません。
遠くの国に行ってしまえば、もう二度と会うことはできないでしょうから……


騎士は最後の命令として、お姫様を遠い大きな国まで護衛することになりました。

長い道程を二人で進みます。
しかし、大きな国に近付くにつれてお姫様の心はどんどん苦しくなっていきました。
出される食事も食べられなくなり、身体の具合もだんだん悪くなっていきました。
騎士は気が気ではありません。大切なお姫様が原因も分からずに苦しんでいるのですから。
けれども、病気の原因も分からない。
このままでは大きな国に着く前にお姫様は死んでしまいそうでした。


しかし、お姫様はついに決心しました。
報われないかもしれない、辛い思いを告白することを。

「ずっとずっと…あなたのことが好きでした…」

お姫様の言葉を聞いた騎士は、とても驚きました。
今この時になって初めて、お姫様と両思いだったことを知ったからです。
騎士もまた、初めて会った時からお姫様のことが好きだったと告白しました。
お姫様は、あまりの嬉しさにその場で泣き出してしまいました。


結局、お姫様は大きな国には行かず、ずっと騎士のそばで生きて行くと決め
騎士もまた、一生お姫様を守り抜くと誓いました。
その後の二人がどうなったのかは分かりません。
小さな国に戻って幸せに暮らしたとも、二人きりで遠くの土地へ旅立ったとも言われています。

めでたしめでたし。







と、まあこれが一般的に語り継がれている「お姫様と騎士の物語」の要約だね。
ずっとずっと報われなかった恋心が、最後にはちゃんと花開いた……
まさに夢見る女の子にはたまらない甘く切ないお話だよね。
けど、僕の親友が言うには「騎士の方から愛してると言った方が女の子には受ける」んだって。
それもそうだよね。女の方から「好き」っていうよりは男の方から「好き」って
言ってくれた方が女の子としては嬉しいんじゃないかな?たぶん。



でもね、そうならないのにはちゃんとした理由があるんだよね。


なぜならば、これの元となったお話では騎士とお姫様に身分差がありすぎて、
もし仮に騎士がお姫様に愛していると言おうものなら、たちまち首が飛んじゃうからね。
みんなが思っている以上に、身分による壁は高いんだ。悲しい現実だよね。
しかし、だからと言ってお姫様の方が騎士のことを愛していると言ってしまったら、
結局は王様によって騎士はお姫様を惑わせた罪で国外追放させられてしまうんだ。
お姫様は大切な娘手あると同時に、重要な外交の道具なんだよね。
小国は大国に必要とあれば人質を送っておかなきゃならなかったんだ。


もちろん、お話の様に二人で勝手に逃げてしまってもいずれは捕まっちゃうし、
国に戻っても二人は引き離されて、とても幸せになんか暮らせはしない。
結局、お姫様が騎士と結ばれて幸せに暮らせる可能性はほぼ無いに等しかったんだよね。



じゃあなんで、お話ではあんな終わり方になっているのだろうか。
ハッピーエンドで終わらせたかったから?それとも現実が見えてなかったから?


…実は、お話の方には重大な欠陥があるんだ。


そう……このお話には『魔物』が関わっていることがまったく書かれていないんだ。

そのせいで、最後の方はいい終わり方なのにどこかおかしな感じがするんだよね。
でも、お話にする過程で人間の子供向けに直された結果、魔物は全く出て来なくなった。
健全で夢のあるお話になってはいるけど、元のお話の良さが大きく失われちゃってるね。






さてと、じゃあ君には『本当の話』というものを教えてあげよう。

くれぐれも聞いて後悔しないようにね。
11/06/18 21:45更新 / バーソロミュ
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■作者メッセージ
まずは魔物の影響がほとんど排除されてしまった『現在のお話』の紹介から。
想像力が豊富な人ならば、元の話がどんなのかは大体見えてくるのではないかと。

それと…申し訳ありませんが、明日から遠出しなければならないため
ちょっくら更新が滞ってしまいます……
続きを楽しみにしている方、本当に申し訳ない。
帰ってきたら速攻で続きを仕上げたいと思います。

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