連載小説
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まずはじめに…


ごきげんようみなさん。
ようこそロンドネル大図書館へ。
僕はこの図書館の司書だよ。

今回は挨拶もかねて長い長い前書をお話ししようと思う。
僕の話を聞くのは面倒だと思った人は、
ここを飛ばして本編を読み始めるのも自由だ。


でも、心ある人はちょっと僕の話に耳を傾けてくれないかな。


……え?男が語り部をやると萎えるって?
そんなひとは、今だけ僕のことを女の子だと思いこんで
「ボクっ子」が話をしていると妄想していてほしい。

鍛え上げられた精鋭なら、可能なはずだ。



じゃあそろそろ本題に入ろう。






お姫様。

それは庶民の女の子の夢であり憧れ。


綺麗なお部屋に綺麗なお洋服。美味しい食べ物に豪華なベット。
大きくて立派なお城に住んで、優雅な一日を過ごし
やがて現れる白馬の王子様と結婚して、幸せな一生を送る。


……う〜ん、まさに絵にかいたような理想の生活だね。
冷静に考えると遊び人とどこが違うんだと突っ込みたくなるけど、
小さな女の子が考えるお姫様像は大体こんな感じじゃないかと思う。
男の子は王子様になりたいと言う子よりも勇者になりたいって子の方が多いかな。

ま、それはともかくいつの時代にもお姫様に憧れる女の子は少なくないはず。
そのあこがれの元はやはり何と言ってもお姫様が主人公の童話や物語だと思う。
シンデレラや白雪姫みたいな幼い子供むけのお話から、
強い勇者が攫われたお姫様を助ける英雄譚、
騎士と姫君の身分を越えた恋愛小説など、その種類は多数にわたる。
そしてどれもが、お姫様はかっこいい男の人と結ばれて幸せに暮らすんだ。
もっとも、苦労するのは大抵が勇者や騎士のような男性の方なんだけど、
お姫さまだって幸せになるために一生懸命に頑張っているんだ。
そしてその頑張りが強ければ強いほど、物語は感動的なものとなる。

逆に、マリー=アントワネットやかぐや姫のように自身が努力しなくても、
自分の好きなようにぜいたくな生活が出来る話もあるね。
なにしろ、か弱いお姫様なんだから大切に守られて当然だ。
働かないで好きなことばかり出来るって、ある意味理想的な生活じゃないか。


お姫様になりたいっていう女の子は是非、努力してきれいになって王子様と結婚するか
さもなくばお父さんにがんばってどっかの国の王様になってもらおう。



でもね、お姫様になったら嫌なことも沢山あるんだ。

まず、お父さんとお母さんの言うことはどんなことであっても必ず聞くこと。
両親の命令は絶対だ。お姫様には拒絶する権利はないんだよ。
だから、お父さんやお母さんが「やれ」と言ったら絶対やらなければならない。

次に、結婚相手は自分では決められないこと。
白馬に乗った王子様が来たら、自分が気に入らない相手でも結婚しなきゃならない。
これは「政略結婚」って言って、本人たちの意思よりも国の事情が最優先なんだ。
もしかしたら、どこか知らない国に連れていかれて不遇な生活を送るかもしれない。
場合によっては家畜同然の扱いを受けることもあるんだ。お姫様なのに。

そして、勉強をたくさんしなくちゃいけないこと。
立派なお姫様になるには一日の半分は勉強しなくちゃいけない。
礼儀作法や政治学、綺麗になる方法や家事も覚えなきゃいけない。
もしかしたら剣の使い方を習う必要もあるかもしれない。
勉強が嫌いだからお姫様になりたいなんて思わないようにね。




え、なに?娘の夢を壊さないでくれ?あはは、ごめんごめん。
そうだよね、女の子はずっと夢を追っていたいよね。
いつかは気付いてしまうけど、知らないうちが花だから……





さて、じゃあここから先は子供はお断り。
ここからは僕たち大人の世界だ。


お姫様の恋愛物語は、どれもこれも一波乱二波乱あるものが大半だ。
最初から何の障害もなく、愛し合って暮らしましたなんて言う物語は殆どないに等しい。
だってそんなのつまらないじゃん。恋は障害があるほど燃えるんだよ。
しかし、いくら壮大な恋物語を描いてもある一つの事項が欠けていると、
大人にとっては面白い話じゃなくなってしまうんだ。

ある事項とは何か?それはもちろん濡れ場さ。

もちろん、純愛小説だって大人でも楽しめるね。
でもそう言った純愛小説の一番盛り上がるシーンは何だと思う?
そう…「キスシーン」だね。
告白して手をつないだだけで終わるなんて、つまらないにもほどがあるよ。
やっぱり身体と身体のスキンシップがないと感覚に訴えられないからだろうね。

でも、中にはキスだけじゃ物足りない人もいるよね。
お姫様と王子様が結ばれて、幸せな生活を送ってるって言うけど
その幸せな生活っていったい何だろうね?
ちょっと想像してみよう。



………



さて、二人の間に子供が出来て、その後も平和に暮らしている
みたいな生活を想像した人。君はきっといいお父さんやお母さんになれると思う。

その後も二人でイチャイチャラブラブの甘い生活を想像した君、
リア充かい?それとも今はやりのスイーツかい?別に悪くはないけどさ。

ベットの上で生まれたままの姿で抱き合う二人を想像した君、
安心してほしい。君はまだまともな思考の持ち主だ。何しろ本能だからね。

で、それ以上にヤバイ想像をした君。
具体的には粘つく液体がお姫様の身体の何か所にも飛び散っているみたいなかんじ。
……………う〜ん、なんていうか、妄想って楽しいよね?


そんなわけで、お姫様と王子様のその後は必ずハッピーエンドでなきゃいけない。
バットエンドなんてただの官能小説さ。
ハッピーエンドこそ、お姫様物語の神髄と言っても過言ではないんだよ。

でも、さっきも言った通りお姫様っていうのは殆ど自由がないんだ。
だから普通はよほどのことがない限りは身分を越えた愛なんて存在しないし、
お姫様がさらわれなければ勇者は助けに行くことはできない。
むしろ、滅多に起こらないことだからこそハッピーエンドって言うのかもね。

しか〜し、物語と言うのは結局は人が作るもの。
だったら作った人の都合でバッドエンドをハッピーエンドに変えることもできるんだ。
もちろん、一から架空の物語を作ってハッピーエンドを目指すこともできる。
悲劇は現実とシェークスピアで十分。せめて物語の中ではお姫様は幸せになってほしいよね。
そんな作者たちの願望が現れたのがハッピーエンドであり、
ハッピーエンドは読んだ子供たちに夢と希望を与えてくれるし、
大人たちには濡れ場と言う快楽を運んで来てくれるんだ。

それにバッドエンドをハッピーエンドに変えることは意外と簡単なんだ。
端的に言えば、バッドエンドの原因を取り除いてしまえばいいんだからね。
あとは自分の好みで「こうだったらいいのにな」という終わり方を書き足せばいいんだ。
有名な歌劇ジークフリートだって想像力さえあればそのままブリュンヒルテと結ばれて
強引にハッピーエンドにすることも可能さ。それが物語として面白いかどうかは別としてだけどね。




さて、先ほど君たちに少し妄想…もとい想像してもらったように
人によって、何が一番ハッピーエンドなのかは当然異なってくるんだ。
一人だけをひたすら愛する純愛が一番だと言う人もいれば、
ハーレムこそ男のロマンだって言う人もいるよね。
どれが良くてどれが悪いという問題じゃない。みんな違ってみんないいんだよね。

でもね、それと同時にハッピーエンドを作ることは簡単だってことも言った。
だったらハッピーエンドを別のハッピーエンドに変えることも可能と言うことなんだ。
純愛が好きな人だったら、主人公とヒロイン以外の余計な人物をなくせばいいし
ハーレムが好きだったら登場人物を付け加えるなりすればいいだろうね。



ふう、ようやく根幹になる話にたどりつけたようだね。回りくどくてごめんね。



今の世の中に出回っているお姫様物語の大半は、
実は社会の都合のいいように改変に改変を重ねられたものなんだ。

子供たちにも読めるように……お姫様の絶対性を保つために……


お姫様の物語には大体『元になった話』があるんだ。
それを読んでみると分かるように、大抵は倫理的に拙いところはなかったことになっているし、
救われない話で終わっていたのに、今ではめでたしめでたしになっていることも多い。
昔からあまり話が変わらないのはジパングの物語くらいじゃないかな?


その元となった話にはハッピーエンドなんだけど、ハッピーエンドじゃない物語があるんだ。



それはね……『お姫様が魔物に堕とされてしまう』お話。


古今東西寄せられる魔物の被害報告。
その中には、時としてお姫様が被害にあう報告も存在するんだ。

でも、それは不幸なことばかりじゃない。
むしろ魔物が関わったからこそハッピーエンドを迎えられたお姫さまだってたくさんいる。



けれども、魔物は悪の象徴。人間社会を牛耳っている教会の人たちは、
高貴なお姫様が魔物の手によってハッピーエンドになるのが許せなかった。
いやそれ以上に、魔物の手に堕ちるなんて殆どバッドエンドなんだろう。
お姫様を幸せにする権利があるのは強い勇者や高潔な騎士だけなんだってね。

だから、お姫様が魔物と一緒にハッピーエンドになる物語は
教会によって徐々に改変されていって、今では跡形もないんだ。
お姫様物語に登場する魔物の役目は、お姫様を攫うことと勇者に倒されること。
魔物と仲がいい君たちには、とても信じられない話なんじゃないかな。





ん、だったら魔物によって堕とされたお姫様たちのお話が知りたいって?
ふっふっふ、よくぞ言ってくれました。



このロンドネル大図書館には、現在のお姫様物語では「なかったことになっている」
魔物が関わっていた『元のお話』を沢山収蔵しているんだ。
魔物との共存が出来るようになってきた今ならば、そろそろ表に出すべきなんだろう。

魔物によって自由と快楽を手に入れたお話。
人間をやめて、魔物となって愛を成就させたお話。
有名な話の裏に潜む恋のキューピット。


気になる?気になるよね!


よーし。じゃあ今から一つづつ順番にひも解いてみようか。
魔物娘を子供に持つお父さんやお母さんたちは、是非とも『本当のお話』を
子供に読み聞かせてあげてくださいね。



それでは、はじまりはじまり……


11/06/18 21:39更新 / バーソロミュ
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■作者メッセージ

さて、こんなところまで読んでくれるモノ好きな人がいるかどうか知りませんが
今回の連載について少しだけ補足を。

現在、私の頭の中には八つほど物語のストックがございます。
もちろん、時がたつにつれて余計な事を閃いていくかも知れません。
しかしながら、私一人だけで思いつく物語など高が知れています。

そこで、なのですが
もし皆さんの中で「こういったお話があるんだけどどうかな?」
といったようなネタ的なものがあれば、ぜひご教授願いたいと思います!
いわばリクエスト募集中といったところでしょうか?
ただ、私は見ての通りの文才なのでご期待に添えるかわかりませんが
リクエストには精一杯こたえていきたいと思います。

応えてくれるという方は、感想欄またはメールフォームまでお願いします。

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