Introductory chapter
【ヒュウガ・リクドウ】
推定年齢23才
性別:男性
種族:人間
出身地:不明
住所:不定
賞金額:金貨50000枚
教皇殺害及び、中央教会書庫破壊容疑で指名手配中
特徴:東洋人、紅いコート
「ヒュ〜♪金貨5万だってよ、一生遊んで暮らせる額だぜ。よぉ相棒、お前なら何に使う?」
「そりゃぁ毎日浴びるほど酒を飲んで、毎晩とびきりの美女を抱くことさぁ。お前は?」
「俺もさ、酒に女にギャンブル。あと金貨風呂なんっつーのをやってみてぇ、、、つーワケなんよぉこの手配書の顔にクリソツな兄ちゃん。」
ここはとある人身売買組織の本拠地。
30人ぐらいの人が入ってもまだスペースのある部屋の中、大勢の子供達が部屋の隅に固まって目の前にいる大男2人に怯え奮えていた。
子供達は皆幼い人間の女の子と様々な種類の魔物の子供達。その身体には暴力を振るわれた痣がつけられていた。
その大男2人の前には1人の青年―ヒュウガがグルグルと縄に縛られている。
「しかし運がねぇな兄ちゃん 俺らの界隈で行き倒れなんて、攫って下さいって言ってるようなもんだぜ。」
「しかも金貨5万の賞金首が自分から転がり込んできてんだ、笑いとまらねぇぜ」
ギャハハハハハハハハッ!!!
下品な笑い声に子供達は身を振るわせる、中には声を殺しすすり泣く子もいた。
そんな子供達を見つめていたヒュウガは男達に聞く。
「あのー、一つ質問。 あの子達はこれからどうなる?」
「あぁ、俺らが散々痛めつけた後は娼館かお得意先の貴族に売りつける。 人間のガキはいいが、魔物のガキはどうだろな? なんせ行く先は人間主義の国だからなぁ、運が良きゃ生きてられるがまぁどっちにしろ悲惨なめに合うから知ったこっちゃねぇ。ひゃはははははっ!」
一つ大きく溜息を吐くと
「成る程 イカス答えだ。・・・・・・あ! こどもたちがにげようとしているぅ!!!」
「「なにっ!」」
ヒュウガが差した方向を2人は振り返る。
だが子供達は部屋の隅で震えていて誰も逃げ出す者はいない。
「ドロップキーック」
「ゲブルァ!」
突然相方の大男が勢いよく壁に突っ込んで行って激突した。
何が起こったのか理解できないもう一人の大男は、呆然と壁に向かった相方を見る。
「・・・・・・」
壁に勢いよく激突した大男は口からブクブクと泡を吹き白目を向いていた。誰がどうみても気絶している。
「ドロップキーック」
「ゴパァッ!」
続くように、もう一人の大男が勢いよく壁に激突する。同じように大男も口から泡を吹き気絶した。
一部始終見ていた子供達はヒュウガの行動に驚いた、彼は大男から注意を逸らすと立ち上がってその場で彼らの無防備な背中に蹴りを食らわしたのだ。
なんとも覇気が伝わらない掛け声で倒された大男2人を哀れに思う。
ヒュウガはいとも簡単に縛られている縄をすり抜けると、その縄を子供達に渡し
「それでこの人達の手足を縛っておいてねー、お兄さんはちょっと外のこわーいオジサンたちを懲らしめてくるよ♪」
青年は散歩しに行くかのような口調でドアから出て行った。
子供達はその行動に呆気にとられながらも青年の言われたとおりに大男の手足を縛っていく。時折、今までの鬱憤を晴らすため大男を囲うように蹴りをくれるあたり、将来逞しく育つであろう。
その最中 ドアの向こうからは男達の情けない悲鳴と
「ドロップキーック!!!」
ヒュウガの雄叫びが響いた。
それはどことなく楽しんでいるように子供達には聞こえた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なんだこれは?」
それが彼らの第一印象だった。
近隣の村や町から相次いで子供が攫われたという被害が相次いでいた。
これを自警団はこの領地を根城にしている人身売買組織の仕業と結論、この組織は以前から大規模な活動をしていたがその行動は掴めず、幾度となく彼らの逃れ苦汁をなめられていた。
だが先日、組織の構成員捕獲に成功し彼らが根城にしているアジトの場所を突き止めることができた。
子供の中には魔物の子供も含まれているため、魔物共存派の領主に掛け合い応援を要請、救出隊を編成した。そしていざアジトに乗り込もうとした所で彼らは面を食らったのだ。
なんとアジトとおもしき屋敷の入り口前に40人ぐらいの男達が芋虫のように縛られていたのだ。しかもそれだけではない、全員木に吊るされ射的の的のようにされて子供達が石ころを投げつけているのだった。
彼らは慌ててその場に向う、それに気付いた男達は泣き叫びながら彼らに助けを求めすがり付く声を上げる。
「これじゃぁどっちを助けに来たんだかわからないっすね」
仲間のぼやきに救出隊隊長も、まったくそのとおりだなと呆れてしまった。
「お兄ちゃんがたすけてくれたの。」
「わたしたちのキズを治してくれたんだよ。」
街に戻る馬車の中、救出隊隊長は子供達から事情を聞き戸惑っていた。
人身売買に連れて行かれた子供は精神がボロボロにされるのだが彼女達にはそれがなかった。
今も元気にお兄ちゃんと呼ばれている青年のことを口々に話している。
子供達の話しに一段落ついたところで、青年の行方を聞く。
「わかんない」
「きづいたらいなくなってた」
とたんにシュンっと落ちこんでしまい彼は慌てて彼女達を励ます
だが、
「ううん、いいの」
「恩返しがしたいって言ったら、私達が幸福を自分で手に入れることがオレにとって恩返しになる。
だから幸せになりなさいって。」
「だからわたし幸せになってお兄ちゃんに会ったら言ってあげるの。わたし幸せだよって。」
「そっか。じゃあそれまでに頑張って幸せにならないとな。」
「「「うん!」」」
「・・・・・・ところでそのお兄ちゃんはどんな特徴をしているんだい?」
「あ、わたしお兄ちゃんの似顔絵持ってる」
「どれどれ?・・・・・・なっ! ほ、ホントにこの人だったのかい?!」
うん そうだよ、と頷く子供達の言葉に困惑した彼はもう一度似顔絵に目を落とす。
それは大陸中に出回っている手配書。
ヒュウガ・リクドウ
中央教会が血眼になって探している史上最悪の賞金首の名前だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
救出隊の一団が見えたとき、ヒュウガは早々にその場から離れた。森の中を走りぬけ幅広い道に出た所で一息つき、アジトからくすねてきた携帯食料を食べながら歩いていたときだった。
後ろから何かの気配を感じて振り向くと、ハーピーの女の子が1人だけ付いて来ていたのだ。
彼女は自分に気づいたヒュウガの近くへトコトコと近づいてきた。
ハーピーの女の子は言う。
「恩返しがしたい」
「あー、、、別に見返りがほしくて人助けした訳じゃないんだよ」
するとハーピーの女の子は、携帯食を頬張ったままのヒュウガをジッと見つめ、
「でも、」
「慕ってくれるのは嬉しいけど、束縛を強いたりしたらあの強面のおじさんたちと変わらないだろう? オレは別にそんなのは求めてないよ。」
彼女の目線に会うようしゃがみこむと彼女の頭を撫でながら微笑み。 口元に干し肉の食べカスをつけたまま、真面目な表情で言った。
「さっきもみんなに言ったけど、幸福を自分で手に入れることがオレにとって恩返しになる。幸せになってほしいと思うのは当然の事だろ?
それ以外を求めるのは筋違いだよ。」
今から戻ればあそこにいる人達に保護してもらえるだろうけど、一緒に行ったらオレも捕まっちゃうからなぁ、かといってこのまま放っておいたら別の人に攫われる危険が!・・・・・・うん? よく考えれば俺がこの子の住んでいた場所まで送っていけばいいんじゃないのか? そうだ、そうしよう!
、という彼の提案にハーピーの女の子は頷いた。
彼女の住む場所は大陸南部の中心地の首都にあるという。ここから歩いて10日はかかる距離だ。
そういえばと、ヒュウガは彼女に手を差し出す。
女の子は不思議そうにその手を見つめる。
「まだ君の名前聞いてなかったな。オレはヒュウガ・リクドウ」
「・・・トト」
恐る恐るトトはヒュウガの手を握る、その手はとても暖かかった。
―END―
推定年齢23才
性別:男性
種族:人間
出身地:不明
住所:不定
賞金額:金貨50000枚
教皇殺害及び、中央教会書庫破壊容疑で指名手配中
特徴:東洋人、紅いコート
「ヒュ〜♪金貨5万だってよ、一生遊んで暮らせる額だぜ。よぉ相棒、お前なら何に使う?」
「そりゃぁ毎日浴びるほど酒を飲んで、毎晩とびきりの美女を抱くことさぁ。お前は?」
「俺もさ、酒に女にギャンブル。あと金貨風呂なんっつーのをやってみてぇ、、、つーワケなんよぉこの手配書の顔にクリソツな兄ちゃん。」
ここはとある人身売買組織の本拠地。
30人ぐらいの人が入ってもまだスペースのある部屋の中、大勢の子供達が部屋の隅に固まって目の前にいる大男2人に怯え奮えていた。
子供達は皆幼い人間の女の子と様々な種類の魔物の子供達。その身体には暴力を振るわれた痣がつけられていた。
その大男2人の前には1人の青年―ヒュウガがグルグルと縄に縛られている。
「しかし運がねぇな兄ちゃん 俺らの界隈で行き倒れなんて、攫って下さいって言ってるようなもんだぜ。」
「しかも金貨5万の賞金首が自分から転がり込んできてんだ、笑いとまらねぇぜ」
ギャハハハハハハハハッ!!!
下品な笑い声に子供達は身を振るわせる、中には声を殺しすすり泣く子もいた。
そんな子供達を見つめていたヒュウガは男達に聞く。
「あのー、一つ質問。 あの子達はこれからどうなる?」
「あぁ、俺らが散々痛めつけた後は娼館かお得意先の貴族に売りつける。 人間のガキはいいが、魔物のガキはどうだろな? なんせ行く先は人間主義の国だからなぁ、運が良きゃ生きてられるがまぁどっちにしろ悲惨なめに合うから知ったこっちゃねぇ。ひゃはははははっ!」
一つ大きく溜息を吐くと
「成る程 イカス答えだ。・・・・・・あ! こどもたちがにげようとしているぅ!!!」
「「なにっ!」」
ヒュウガが差した方向を2人は振り返る。
だが子供達は部屋の隅で震えていて誰も逃げ出す者はいない。
「ドロップキーック」
「ゲブルァ!」
突然相方の大男が勢いよく壁に突っ込んで行って激突した。
何が起こったのか理解できないもう一人の大男は、呆然と壁に向かった相方を見る。
「・・・・・・」
壁に勢いよく激突した大男は口からブクブクと泡を吹き白目を向いていた。誰がどうみても気絶している。
「ドロップキーック」
「ゴパァッ!」
続くように、もう一人の大男が勢いよく壁に激突する。同じように大男も口から泡を吹き気絶した。
一部始終見ていた子供達はヒュウガの行動に驚いた、彼は大男から注意を逸らすと立ち上がってその場で彼らの無防備な背中に蹴りを食らわしたのだ。
なんとも覇気が伝わらない掛け声で倒された大男2人を哀れに思う。
ヒュウガはいとも簡単に縛られている縄をすり抜けると、その縄を子供達に渡し
「それでこの人達の手足を縛っておいてねー、お兄さんはちょっと外のこわーいオジサンたちを懲らしめてくるよ♪」
青年は散歩しに行くかのような口調でドアから出て行った。
子供達はその行動に呆気にとられながらも青年の言われたとおりに大男の手足を縛っていく。時折、今までの鬱憤を晴らすため大男を囲うように蹴りをくれるあたり、将来逞しく育つであろう。
その最中 ドアの向こうからは男達の情けない悲鳴と
「ドロップキーック!!!」
ヒュウガの雄叫びが響いた。
それはどことなく楽しんでいるように子供達には聞こえた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なんだこれは?」
それが彼らの第一印象だった。
近隣の村や町から相次いで子供が攫われたという被害が相次いでいた。
これを自警団はこの領地を根城にしている人身売買組織の仕業と結論、この組織は以前から大規模な活動をしていたがその行動は掴めず、幾度となく彼らの逃れ苦汁をなめられていた。
だが先日、組織の構成員捕獲に成功し彼らが根城にしているアジトの場所を突き止めることができた。
子供の中には魔物の子供も含まれているため、魔物共存派の領主に掛け合い応援を要請、救出隊を編成した。そしていざアジトに乗り込もうとした所で彼らは面を食らったのだ。
なんとアジトとおもしき屋敷の入り口前に40人ぐらいの男達が芋虫のように縛られていたのだ。しかもそれだけではない、全員木に吊るされ射的の的のようにされて子供達が石ころを投げつけているのだった。
彼らは慌ててその場に向う、それに気付いた男達は泣き叫びながら彼らに助けを求めすがり付く声を上げる。
「これじゃぁどっちを助けに来たんだかわからないっすね」
仲間のぼやきに救出隊隊長も、まったくそのとおりだなと呆れてしまった。
「お兄ちゃんがたすけてくれたの。」
「わたしたちのキズを治してくれたんだよ。」
街に戻る馬車の中、救出隊隊長は子供達から事情を聞き戸惑っていた。
人身売買に連れて行かれた子供は精神がボロボロにされるのだが彼女達にはそれがなかった。
今も元気にお兄ちゃんと呼ばれている青年のことを口々に話している。
子供達の話しに一段落ついたところで、青年の行方を聞く。
「わかんない」
「きづいたらいなくなってた」
とたんにシュンっと落ちこんでしまい彼は慌てて彼女達を励ます
だが、
「ううん、いいの」
「恩返しがしたいって言ったら、私達が幸福を自分で手に入れることがオレにとって恩返しになる。
だから幸せになりなさいって。」
「だからわたし幸せになってお兄ちゃんに会ったら言ってあげるの。わたし幸せだよって。」
「そっか。じゃあそれまでに頑張って幸せにならないとな。」
「「「うん!」」」
「・・・・・・ところでそのお兄ちゃんはどんな特徴をしているんだい?」
「あ、わたしお兄ちゃんの似顔絵持ってる」
「どれどれ?・・・・・・なっ! ほ、ホントにこの人だったのかい?!」
うん そうだよ、と頷く子供達の言葉に困惑した彼はもう一度似顔絵に目を落とす。
それは大陸中に出回っている手配書。
ヒュウガ・リクドウ
中央教会が血眼になって探している史上最悪の賞金首の名前だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
救出隊の一団が見えたとき、ヒュウガは早々にその場から離れた。森の中を走りぬけ幅広い道に出た所で一息つき、アジトからくすねてきた携帯食料を食べながら歩いていたときだった。
後ろから何かの気配を感じて振り向くと、ハーピーの女の子が1人だけ付いて来ていたのだ。
彼女は自分に気づいたヒュウガの近くへトコトコと近づいてきた。
ハーピーの女の子は言う。
「恩返しがしたい」
「あー、、、別に見返りがほしくて人助けした訳じゃないんだよ」
するとハーピーの女の子は、携帯食を頬張ったままのヒュウガをジッと見つめ、
「でも、」
「慕ってくれるのは嬉しいけど、束縛を強いたりしたらあの強面のおじさんたちと変わらないだろう? オレは別にそんなのは求めてないよ。」
彼女の目線に会うようしゃがみこむと彼女の頭を撫でながら微笑み。 口元に干し肉の食べカスをつけたまま、真面目な表情で言った。
「さっきもみんなに言ったけど、幸福を自分で手に入れることがオレにとって恩返しになる。幸せになってほしいと思うのは当然の事だろ?
それ以外を求めるのは筋違いだよ。」
今から戻ればあそこにいる人達に保護してもらえるだろうけど、一緒に行ったらオレも捕まっちゃうからなぁ、かといってこのまま放っておいたら別の人に攫われる危険が!・・・・・・うん? よく考えれば俺がこの子の住んでいた場所まで送っていけばいいんじゃないのか? そうだ、そうしよう!
、という彼の提案にハーピーの女の子は頷いた。
彼女の住む場所は大陸南部の中心地の首都にあるという。ここから歩いて10日はかかる距離だ。
そういえばと、ヒュウガは彼女に手を差し出す。
女の子は不思議そうにその手を見つめる。
「まだ君の名前聞いてなかったな。オレはヒュウガ・リクドウ」
「・・・トト」
恐る恐るトトはヒュウガの手を握る、その手はとても暖かかった。
―END―
09/11/18 13:40更新 / Hiro
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