連載小説
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はぐれ狼2
「・・・んぁぁ〜っ・・・ん・・・ん?」
右腕に違和感。
「・・・」
「すぅ・・・すぅ・・・」
あっれー、おっかしいなぁ・・・。
俺、床で寝たはずなんだけどな。何でベッドの中にいるんだろう。
ワルフが入れてくれたのだろうか。
「くぅん・・・」
「・・・」なでなで
「わふ・・・♪」
撫でてあげると、もっと撫でてという風に手に頭を押し付けてきた。
「わぅ・・・?」
そのままもっと撫でてあげていると目を覚ました。
「おはよう、ワルフ」
「おはようございます、ヴェルさん」
「俺の事、布団の中に入れてくれたの?」
「あ、はい。流石にまだ夜は冷えますので。・・・ダメ・・・でしたか・・・?」
「ううん、違うよ。ありがとう」
なでなで
「くぅん・・・♪」
撫でてあげると、幸せそうに尻尾をパタパタした。
「ヴェルー!ご飯出来たよー!」
「はーい!行こう、ワルフ」
「はい♪」

「昨夜はお楽しみでしたね」
リビングに入ると、突然母さんにそんなことを言われた。
「何言ってるのさ母さん・・・」
「・・・(ポッ」
「・・・あんた・・・何かしたのかい・・・?」
「何もしてないよ!何でワルフも頬を染めてるのさ!」
顔が怖いよ母さん・・・。
「それよりもほら、ご飯冷めちゃうよ」
「ああ、そうだったね。いただきます」
「あ、いははきまふ」
「いただきます。・・・次からはちゃんと食べる前に言おうね」
「ごくっ・・・ごめんなさい・・・///」
今日の朝食は焼いたパン(マーガリンとかジャムはお好みで)、目玉焼き、大根サラダに卵スープだ。
「すみません、お代わりありますか?」
「ああ、たんとお食べ」
「ありがとうございます」
一人分で十分腹がいっぱいになる俺としては、朝からお代わりなんてすごいなぁと思いながらワルフのことを見ていた。

「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
「けふっ・・・ごちそうさまでした・・・♪」
ご飯を食べ終えたワルフは、幸せそうに尻尾を揺らしていた。
「それで・・・どうしようっか?」
「何がですか?」
「ワルフの群れ探しだよ」
「あ」
・・・この子、絶対忘れてたな。
「・・・いや、もう、ここに住めればいいかなぁって・・・あはは・・・」
「流石にそれはねぇ・・・」
この村は比較的親魔物派だけど、やっぱり中には魔物反対な人たちもいるわけで。
比較的、といってもほかの町や村は魔物が村に入った瞬間惨殺とかあるらしいから、まだ殺されないだけ親魔物派、といった具合だが。
中には家みたいな例外もいるけれども。
「・・・いや、それもいいのか・・・?」
「え?」
ワルフがいい子にしてくれれば、魔物に対するイメージも変わって、もっと平和に暮らせるかもしれない。そうすれば、この村ももう少しは豊かになって、発展させられるんじゃないか・・・?
「ヴェルさん・・・?」
「よし!」
「きゃうっ!?」ビクッ
「あ、ごめん。ワルフ、一緒に暮らそう」
「・・・えっ・・・?///」
「あんた何言ってんだい。突然求婚なんかしてるんじゃないよ」
片づけを終えた母さんが戻ってきた。
「え、あ、プロポーズってわけじゃないんだけど・・・ワルフがいい子にしてくれれば、周りの人達の魔物に対する印象が変わると思うんだ。そうすれば、この村ももっと平和になるし、それに魔物相手に商売も出来るだろうし、この村ももっと豊かになると思うんだ」
「うーん・・・確かにそうかもしれないけど・・・いい子にできるのかい?」
「が、がんばりますっ!ヴェルさんとお母様のために、精一杯頑張ります!」
「あんたにお母様って呼ばれる筋合いはないよ!」
「きゃうんっ!?」ビクゥッ
縮こまって、俺の後ろに隠れてしまった。
「か、母さん?」
「ごめんごめん、冗談だよ。一回言ってみたかったんだ」
「くぅ・・・本当ですか・・・?」
「本当だよ。そうだねぇ・・・村のみんなが魔物たちに優しくできるようになったら、ヴェルの嫁にしてあげるよ」
「わ、わかりました!」
「でも、具体的にはどうしようか・・・」
「それは私が考えといてあげるから、あんたたちは畑仕事に行っておいで」
「うん、わかった。お願いね。ワルフ、行こう・・・の前に、流石にその格好はダメかな・・・」
それどころじゃなかったから忘れていたが、ワルフが着ている服は襤褸切れ同然で、さすがにこの格好で外に行くのはまずい気がした。
「そういえばそうだねぇ・・・。よし、ちょっと待ってなさい」
そう言うと、母さんは家の奥に引っ込んで行き、何かをひっくり返す派手な音がした後、きれいな作業着を持って戻ってきた。
「ほら、これ着ていきな。尻尾を出す穴はないけど、そこは我慢しておくれ」
「あ、ありがとうございます!」
お礼を言って・・・その場で今身に着けている襤褸切れを外し始めた。
「っ!!」
急いで回れ右。
一瞬膨らみかけの胸と、桜色の突起が視界に入ったのは内緒。
「・・・見ました?」
「おおお俺は何もみみみ見てないぞ」
「・・・そうですか・・・残念」
残念って・・・。
というか、母さんからのプレッシャーがすごい。痛いくらいに伝わってくる。
「お待たせしました」
「ああ、行こうか。っと、はい、これ、被っといて」
耳を隠すための麦藁帽子。
「あ、はい。わかりました」
「お昼までには帰っておいで」
「はーい。いってきます!」
「い、いってきます・・・」
ドアを開けると、ワルフは不安そうに腕に抱きついてきた。


「よしょっと・・・」
「わぅっ!ふぅ・・・わうぅっ!」
二人でこれから野菜を植えるための畑を耕している。
慣れないせいか、ワルフは少し辛そうだった。
「少し休憩しようか?」
「ま、まだ大丈夫です」
とは言うものの、汗だくで結構ひどいことになっている。
「無理しないの。ほら、半分だしちょうどいいよ」
「はい・・・わかりました・・・」

「ふぅ・・・」
「わふぅ・・・」
汗をかいた後の冷たい水は美味しいなぁ。
「う〜っ・・・やっぱりこれ邪魔ですよぉ・・・」
「あっ、脱いじゃダメだって!」
やっぱり耳がつぶれてしまうのが嫌らしい。
さっと脱いで、ぶるぶると頭を振るった。
「・・・わっ!?」
「きゃんっ!?」
突然石が飛んできた。
運がよかったのか悪かったのか、ワルフの腕に当たった。
「いったぁ・・・」
「誰だ!」
「魔物は出て行けー!」
犯人は近所のチビだった。
「くぅん・・・」
その言葉を聞いて、ワルフは悲しそうに縮こまってしまった。
「・・・」
「早く出ていけー!」
ごっ
「いっ・・・」
「ヴェルさんっ!?」
飛んでくる石からワルフを守るために前に出たら、結構な大きさの石が頭に当たった。
「大丈夫・・・」
近くにあった牧草用のフォーク(正式名称知らない)を手に取って、
「魔物だからって・・・追い出されなきゃいけない理由には、ならないだろうがっ!!」
チビに向かって、思い切りぶん投げた。
「うわぁっ!?」
投げたフォークはチビのやや手前に落ち、それにびびってチビは一目散に逃げ出した。
「うっ・・・」
「ヴェルさん!ヴェルさんっ!!」
世界が揺れた。
と思った次の瞬間には、ワルフの腕の中だった。
「わっ、血が・・・!い、今、家につれて帰りますから!わ、うぅぅぅっ!」
朦朧とする意識の中で、持ち上げられて運ばれる感覚を感じていた・・・。


「お母様っ!!」
「どうしたんだい、ワルフ・・・って、ヴェル!何があったんだい!」
家に着いた瞬間、お母様が血相を変えて飛んできた。
「私が・・・私が、帽子を脱いじゃったせいで・・・」
「あんたのせいじゃないよ。とりあえず部屋に運んでおくれ」
「はい・・・」

「これでよし、と・・・」
お母様はびっくりするくらい手際よく手当てをして、ヴェルさんは静かに寝息を立てている。
「ほら、次はあんただよ」
「わ、私は大丈夫ですよ?」
「嘘つくんじゃないよ。腕、腫れてるじゃないか」
「わぅ・・・」
はじめに投げられた時にあたった場所。
ヴェルさんを助けるのに必死ですっかり忘れていたが、ほっとしたら痛みがぶり返してきた。
正直、すごく痛い。
「ほら、腕出しな」
「すみません・・・ありがとうございます・・・」
「あんたのおかげでヴェルはあんなに軽くで済んだんだ。お礼を言うのは私のほうだよ」
「お母様・・・」
ひんやりする何かよくわからないものを腫れた場所に塗られ、その上から接木をして包帯を巻いてくれた。
「はい、終わり。ちょっと出かけてくるから、ヴェルの傍にいてあげておくれ」
「わかりました。いってらっしゃい」


続く・・・
12/04/15 22:52更新 / マオ・チャルム
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■作者メッセージ
臆病なワーウルフがいてもいいと思うのよ?
はぐれ狼第2弾。第何弾まで続けるかは未定。です。
ちなみにお母様の名前はセイカ・フォーケインです。一応。

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