はぐれ狼1
綺麗に晴れたぽかぽか陽気。
近くに来ていた魔物の群れが追い払われたらしく、村の外れの草原の立ち入り禁止が解除された。
こんな日は、草原でお昼寝するのに限る。
「よいしょっと・・・ん〜っ!久々に寝るかぁ・・・」
横になって三秒。
「くー・・・くー・・・」
速攻で寝息を立て始めた。
「んん・・・くぁ〜っ!!んんん・・・よく寝た・・・ん?」
右腕に違和感。
「・・・」
「すぅ・・・すぅ・・・」
なんかいた。
「・・・誰・・・?」
見慣れない女の子が、俺の右腕をしっかりと抱きしめて、寝息を立てている。
「って、この子魔物・・・っ!?」
よく見てみれば、頭の上に三角形の耳と、腰の辺りにはふさふさの紺色の尻尾。
確か・・・ワーウルフってやつじゃないか・・・?
「おいおい・・・ここらの魔物はどっか行ったんじゃなかったのか・・・?」
だからこうやってお昼寝に来たって言うのに。
「くぅぅ・・・行かないでぇ・・・」
ビクッ
「ま、魔物って喋れたのか・・・」
遠目に見たことはあるが、こんな近くで見るのは初めてだ。
というか、魔物でも寝言って言うんだ・・・。
顔を見てみると、案外可愛い。少し失礼だが、村の娘よりも可愛いんじゃないだろうか。
「って、観察してる場合じゃなかった・・・早くこの子何とかしないと・・・」
逃げないと。
「ぅぅぅ・・・」
「ぐぎぎ・・・」
先生!僕の全力を持ってしても離れてくれません!どうすればいいですか!?
「嫌ぁ・・・一人にしないでぇ・・・」
「・・・」
全力で離そうと頑張っているのに、まったく目を覚まさない。
その上、悲しそうな声でそんな寝言を言ってきた。
どうしよう、この子。
「くぅん・・・」
周りを見てみると、どうやら群れでいるのではなく、この子だけみたいだ。
もしかしたら、群れからはぐれたのかもしれない。
・・・この子が起きるまで、しばらくこのままでいいか・・・。
「んん・・・ふぁぁ〜・・・」
やっと起きた。もう辺りは夕日で真っ赤になっている。
「えっと・・・おはよう。君は誰?」
「おはようございます・・・私はワルフです・・・」
良かった、話が通じた。
「どうしてここにいるの?」
「あ・・・そうだ・・・私、群れとはぐれちゃって・・・うぅ・・・皆ぁ・・・どこぉ・・・」
じわりと目に涙が滲んできた。やっぱり群れとはぐれたのか。
「あの、ごめん。痛いんだけど」
「あ、ごめんなさい・・・」
ぎゅうっと腕に力をこめてきたせいで、まだ抱かれたままだった俺の右腕が悲鳴を上げた。
多少鍛えているとはいえ、流石に関節を極められるのは辛い。
そこでようやく右腕から離れて、その場にへたり込んでしまった。
「うぅ・・・ぐすっ・・・」
「群れとはぐれたって、どこにいるとかわからないの?」
「はい・・・最近鼻も利かないし、喉が痛くて遠吠えもできなくて・・・」
・・・花粉症?
「うーん・・・」
「あ、あのっ!」
とりあえずどうしようかと立ち上がると、泣きそうな顔ですがりついてきた。
「わっ、な、何?」
「その・・・一人にしないで・・・ください・・・」
「ああ、安心して。置いて行こうって思ったわけじゃないから」
「本当ですか・・・?」
「うん。後、敬語じゃなくてもいいんだよ?」
「けいご・・・?」
あ、敬語って知らないで使ってたんだね、うん。
「あ、うん、なんでもない・・・。とりあえず、俺の村まで行こうか」
「・・・私、村に行ってもいいんでしょうか・・・?」
「大丈夫、何か言われても、俺が守るよ」
「お願い・・・します・・・」
差し出した手をしっかりと握って、ようやく少し笑顔になった。
「そういえば」
「ん?どうかした?」
「貴方の名前は何ですか?」
「ああ、俺の名前はヴェルクルス・セイラル・フォーケインって言うんだ」
「ヴェルクル・・・?」
まぁ、一回じゃわかんないよね。長いもん、俺の名前。
「ヴェルでいいよ」
「はい、わかりました。・・・改めてお願いします、ヴェルさん」
「うん」
「お帰り、ヴェル・・・って、その子は?」
「は、はじめまして・・・ワルフって言います・・・」ビクビク
とりあえず家につれて帰って・・・速攻で母さんに見つかった。
ワルフはびくびくしていた。やはり追い払われた時のことが少しトラウマになっているのだろうか。でも、それだと俺に添い寝してきたのはおかしいよな・・・。
「いつものところで昼寝してたら、いつの間にか添い寝されてた。家族とはぐれたって言ってたから、とりあえず連れてきたんだ」
「ふぅん・・・。・・・あんた、人間じゃないね?」
「ふぇっ!?ど、どうしてそれを・・・?」
「尻尾、見えてるよ」
「はうっ!?」
あ、ほんとだ。尻尾を隠すために、俺の上着を腰巻にしたのだが・・・尻尾の先がはみ出てる。
「まったく・・・魔物なんかつれてくるんじゃないよ・・・」
手を額に当てて、まったくこの子は・・・と呆れられた。
「ご、ごめん、母さん・・・。でも、魔物だからって、見捨てるなんて出来ないよ」
魔物だろうがなんだろうが、泣いてる女の子を見捨てるなんて男じゃない。
「まぁね。・・・ワルフだっけ?とりあえず家においてあげるけど、変なことしたら承知しないよ」
「はい、わかりました。ありがとうございますっ!」
「でも、部屋ないよ?」
「そんなもん・・・あんたと一緒でいいだろ」
いや、良くないと思う。
「あ、私はそれがいいです」
「ええっ!?」
「・・・ダメ・・・?」
「う・・・ダメ・・・じゃないです・・・」
涙目上目遣いをされてしまった。あれは反則だよ・・・。
「ありがとうございます♪」
ぎゅっと抱きついてきて、尻尾をふりふりしていた。なにこれ可愛い。
「ヴェル」
「な、何、母さん?」
思わずなでなでしていると、母さんがちょっと怖い顔で話しかけてきた。
「あんたも、同じ部屋だからって、変なことするんじゃないよ?」
「わ、わかってるよ!・・・あ、布団お願いね?」
「それは・・・ちょっと無理かな」
「えっ」
「干さなきゃ無理だよ。予備のやつはずっと押し入れだったんだから」
その言葉を聞いて外を見てみる。
もう暗くなりかけてる。
「・・・」
\(^o^)/
続く・・・
近くに来ていた魔物の群れが追い払われたらしく、村の外れの草原の立ち入り禁止が解除された。
こんな日は、草原でお昼寝するのに限る。
「よいしょっと・・・ん〜っ!久々に寝るかぁ・・・」
横になって三秒。
「くー・・・くー・・・」
速攻で寝息を立て始めた。
「んん・・・くぁ〜っ!!んんん・・・よく寝た・・・ん?」
右腕に違和感。
「・・・」
「すぅ・・・すぅ・・・」
なんかいた。
「・・・誰・・・?」
見慣れない女の子が、俺の右腕をしっかりと抱きしめて、寝息を立てている。
「って、この子魔物・・・っ!?」
よく見てみれば、頭の上に三角形の耳と、腰の辺りにはふさふさの紺色の尻尾。
確か・・・ワーウルフってやつじゃないか・・・?
「おいおい・・・ここらの魔物はどっか行ったんじゃなかったのか・・・?」
だからこうやってお昼寝に来たって言うのに。
「くぅぅ・・・行かないでぇ・・・」
ビクッ
「ま、魔物って喋れたのか・・・」
遠目に見たことはあるが、こんな近くで見るのは初めてだ。
というか、魔物でも寝言って言うんだ・・・。
顔を見てみると、案外可愛い。少し失礼だが、村の娘よりも可愛いんじゃないだろうか。
「って、観察してる場合じゃなかった・・・早くこの子何とかしないと・・・」
逃げないと。
「ぅぅぅ・・・」
「ぐぎぎ・・・」
先生!僕の全力を持ってしても離れてくれません!どうすればいいですか!?
「嫌ぁ・・・一人にしないでぇ・・・」
「・・・」
全力で離そうと頑張っているのに、まったく目を覚まさない。
その上、悲しそうな声でそんな寝言を言ってきた。
どうしよう、この子。
「くぅん・・・」
周りを見てみると、どうやら群れでいるのではなく、この子だけみたいだ。
もしかしたら、群れからはぐれたのかもしれない。
・・・この子が起きるまで、しばらくこのままでいいか・・・。
「んん・・・ふぁぁ〜・・・」
やっと起きた。もう辺りは夕日で真っ赤になっている。
「えっと・・・おはよう。君は誰?」
「おはようございます・・・私はワルフです・・・」
良かった、話が通じた。
「どうしてここにいるの?」
「あ・・・そうだ・・・私、群れとはぐれちゃって・・・うぅ・・・皆ぁ・・・どこぉ・・・」
じわりと目に涙が滲んできた。やっぱり群れとはぐれたのか。
「あの、ごめん。痛いんだけど」
「あ、ごめんなさい・・・」
ぎゅうっと腕に力をこめてきたせいで、まだ抱かれたままだった俺の右腕が悲鳴を上げた。
多少鍛えているとはいえ、流石に関節を極められるのは辛い。
そこでようやく右腕から離れて、その場にへたり込んでしまった。
「うぅ・・・ぐすっ・・・」
「群れとはぐれたって、どこにいるとかわからないの?」
「はい・・・最近鼻も利かないし、喉が痛くて遠吠えもできなくて・・・」
・・・花粉症?
「うーん・・・」
「あ、あのっ!」
とりあえずどうしようかと立ち上がると、泣きそうな顔ですがりついてきた。
「わっ、な、何?」
「その・・・一人にしないで・・・ください・・・」
「ああ、安心して。置いて行こうって思ったわけじゃないから」
「本当ですか・・・?」
「うん。後、敬語じゃなくてもいいんだよ?」
「けいご・・・?」
あ、敬語って知らないで使ってたんだね、うん。
「あ、うん、なんでもない・・・。とりあえず、俺の村まで行こうか」
「・・・私、村に行ってもいいんでしょうか・・・?」
「大丈夫、何か言われても、俺が守るよ」
「お願い・・・します・・・」
差し出した手をしっかりと握って、ようやく少し笑顔になった。
「そういえば」
「ん?どうかした?」
「貴方の名前は何ですか?」
「ああ、俺の名前はヴェルクルス・セイラル・フォーケインって言うんだ」
「ヴェルクル・・・?」
まぁ、一回じゃわかんないよね。長いもん、俺の名前。
「ヴェルでいいよ」
「はい、わかりました。・・・改めてお願いします、ヴェルさん」
「うん」
「お帰り、ヴェル・・・って、その子は?」
「は、はじめまして・・・ワルフって言います・・・」ビクビク
とりあえず家につれて帰って・・・速攻で母さんに見つかった。
ワルフはびくびくしていた。やはり追い払われた時のことが少しトラウマになっているのだろうか。でも、それだと俺に添い寝してきたのはおかしいよな・・・。
「いつものところで昼寝してたら、いつの間にか添い寝されてた。家族とはぐれたって言ってたから、とりあえず連れてきたんだ」
「ふぅん・・・。・・・あんた、人間じゃないね?」
「ふぇっ!?ど、どうしてそれを・・・?」
「尻尾、見えてるよ」
「はうっ!?」
あ、ほんとだ。尻尾を隠すために、俺の上着を腰巻にしたのだが・・・尻尾の先がはみ出てる。
「まったく・・・魔物なんかつれてくるんじゃないよ・・・」
手を額に当てて、まったくこの子は・・・と呆れられた。
「ご、ごめん、母さん・・・。でも、魔物だからって、見捨てるなんて出来ないよ」
魔物だろうがなんだろうが、泣いてる女の子を見捨てるなんて男じゃない。
「まぁね。・・・ワルフだっけ?とりあえず家においてあげるけど、変なことしたら承知しないよ」
「はい、わかりました。ありがとうございますっ!」
「でも、部屋ないよ?」
「そんなもん・・・あんたと一緒でいいだろ」
いや、良くないと思う。
「あ、私はそれがいいです」
「ええっ!?」
「・・・ダメ・・・?」
「う・・・ダメ・・・じゃないです・・・」
涙目上目遣いをされてしまった。あれは反則だよ・・・。
「ありがとうございます♪」
ぎゅっと抱きついてきて、尻尾をふりふりしていた。なにこれ可愛い。
「ヴェル」
「な、何、母さん?」
思わずなでなでしていると、母さんがちょっと怖い顔で話しかけてきた。
「あんたも、同じ部屋だからって、変なことするんじゃないよ?」
「わ、わかってるよ!・・・あ、布団お願いね?」
「それは・・・ちょっと無理かな」
「えっ」
「干さなきゃ無理だよ。予備のやつはずっと押し入れだったんだから」
その言葉を聞いて外を見てみる。
もう暗くなりかけてる。
「・・・」
\(^o^)/
続く・・・
12/04/15 01:44更新 / マオ・チャルム
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