幼き王と敵対者なはずの私
「ふふふ……」
私の目前に聳え立つ建造物。
砂漠に存在するそれは、砂漠の支配者たるファラオの眠る遺跡。
いや……近くにはオアシスがあり、砂漠にも関わらず木々が生えている……おそらくここのファラオは既に目覚めているだろう。
好都合だ。
「あそこが、私の王国となるのね……♪」
私はそのファラオを毒牙に掛け、新たなる支配者となる。
太陽が昇る事のない妖艶な暗黒な王国……この場所が私の手によりそう変わるのを、想像するだけで胸が高まる。
期待に胸を躍らせながら、私は素早く蛇体を動かし遺跡に近付いた。
「さて、早速ファラオちゃんに会いに……」
「待つのにゃそこのアポピス!!」
「……スフィンクスか……」
早速遺跡の内部に侵入しようとしたところで、後ろから声を掛けられた。
振り向くと……そこにいたのは、褐色にゃんこ……もとい、ファラオの守護者スフィンクスが私を鋭く睨んでいた。
「何をしに来たにゃ?」
「そんなの決まってるじゃない……この国を私の支配下にしにきたの」
「やっぱりにゃか……ファラオ様を御守りするため、私が貴様をふるもっふにするにゃ!!」
普段は不真面目系として知られるスフィンクスも私のような『王の天敵』相手には本気を出すようだ。
おそらく難解な問い掛けを行い、私の動きを封じてくるだろう。
「問題にゃ!私の名前はにゃんd」
「悪いけどあなたのお遊びに付き合う暇はないの……」
だが、所詮はスフィンクス。
「にゃ、にゃにを!?」
「かぷっ♪」
「にゃひん!!」
神の力を持つファラオの敵対者として生まれた私の敵では無い。
「ふふ……気分はどうかしら?」
「にゃにゃぁ……♪」
私は素早くスフィンクスに身体を巻き付け、首元に噛み付き神経毒を体内に混入させた。
「私の名前はジェール。さあ、貴女の主の名前を言ってごらんなさい」
「にゃあ……ジェールさまぁ♪」
「ふふ……ほほほっ!造作も無いわね!」
毒の効果で快楽に溺れ股下を濡らすこのスフィンクスは、もはや私のしもべ。
煮るなり焼くなり好きに出来るが、生憎私に拷問の趣味はない。
「さあ……男の元へ行き快楽を求めてきなさい!」
「にゃあ、行ってきますにゃ♪」
スフィンクスにそう命ずると、自身の欲を満たす為男の元へ向かった。
外では無くピラミッド内部を走り抜けて行ったので、既に男がいたようだ……うらやmげふんっ。
「さて、これで障害が一つ消えたし、遺跡にお邪魔しますか……」
これでもうスフィンクスは部屋に籠り二度と出てこないだろう。
私は堂々と正面から遺跡に侵入し、ファラオの元へ向かった。
………
……
…
「ファラオがいる部屋は何処?」
「こ、こちらですジェール様」
遺跡内部に入った後、スフィンクスが猛スピードで愛液を垂らしながら部屋に駆け抜けて行ったのを見掛け不審に思ったマミー共が私の行く手に塞がった。
その数は5体だったが……もちろん私を止める事など出来なかった。
「案内さえしてくれたら後はオナニーするのも男を襲いに行くのも自由にしてくれていいわ」
「あ、ありがとうございます♪」
5体とも私のしもべに変えた後、4体はふらふらとどこかに行ってしまったが1体だけその場で自慰を始めていた。
おそらくだがこの子以外は皆既に男がおり、この子だけ居なかったが故その場で自慰をしていたのだろう。
ちょっとだけ不憫に思えたが、そんな事は知った事じゃないので私はこの子にファラオの下までの案内を頼んだのだ。
「あとどれぐらいで着くのかしら……」
「じ、10分も歩けば辿り着くかと……」
ぽたぽたと愛液を垂らしながらも案内してくれるマミー。
メスの匂いが遺跡の通路に充満しているが、これぐらいファラオが目覚めた遺跡ではよくある事だろうから気にしてはいなかった。
だが、それは間違いだったらしい……
「こちらです……あうっ!?」
「ん?どうしたの?」
曲がり角を曲がったマミーが、突然呻いたかと思えば……その場で倒れ込んでしまった。
「マミーがやたら発情してるなと思えば侵入者か」
「何者……いや、ファラオの守護者と言えば……」
そして、曲がり角の向こうから聞こえてくる女の声……
影の形が狼のようになっている事や、ファラオの守護者という点を考えて、おそらく正体は褐色わんこ……もといアヌビスだろう。
スフィンクスよりは面倒な相手だが、所詮アヌビス。
マミーの呪いは多少厄介ではあるが、呪いが飛んでくる前に私の毒を流し込んで僕にしてやればいい。
だから私は、素早く曲がり角から飛び出して私を鋭く睨んでいるであろうアヌビスに目掛けて飛び付こうとして……
「アヌビス!貴女も私の配下にしてあげ……る……?」
「ん?なんか肌色悪いラミアだなー」
力無くボーっとした表情でこちらをジトーっと見ていたアヌビスという予想外な褐色わんこがいたせいで一瞬動きが止まってしまった。
「まあいいや。呪い喰らえー」
「あ、しまっひゃうっ!!」
その隙をつかれて、マミーの呪いをまともに受けてしまった。
「く、くそ……」
「あー思い出した。アホピスっていうファラオ様の天敵でしだっけ?」
「あ、アポピスよ!誰がアホだ!!」
アホなやり取りをしている間にも、呪いの効果で身体が火照ってきた……
「あ、あんた……私を侮辱する気?」
「あれー?動けるんですかー。すごいですねー。もっと強くやれば良かったなー」
「その抑揚のない喋り方が余計にいらっとするわ!」
だが、私自身の魔力が高いおかげか動けない程では無い。
だから、こいつに毒を流し込み発情しっぱなしの牝犬に変えてやろうかとずるずると近付いていたのだが……
「ところでアポピスさん。あなたなんでここに?まさかファラオ様を襲いにきたんですか?」
「その通りよ!」
「うわーじゃあ変態ですかー」
「……は?」
気になる一言をアヌビスが言い放ったので、私はまた動きを止めてしまった。
「は?って……ここのファラオ様がどんなお方か知らずに来たのですか?」
「そうだけど……別に旦那を求めるだけのメスとなり下がる予定の奴なんてどうでもいいからね」
「うわぁ……」
何故か本気で引かれてるのだが……どういう事だろうか?
「仕方ないですね。あなたが大人しくしているというのならファラオ様に会わせてあげますよ」
「……は?」
「会って自分がいかにアホな事を言っているアホピスなのか確認してみてくださいな」
「あ、アホ言うなと言ってるでしょうが!!」
疑問に思っていたら、わざわざ私をファラオの下まで案内してくれるらしい。
こいつと居ると無性に腹が立ってくるが、自ら案内してくれるならそれに越した事はない。
「で、どうします?」
「わかった。私は何もしないと約束するわ」
「じゃあついてきてください」
もちろん、何もしないのは嘘だ。
ファラオが目の前に来た瞬間、首元を噛んで毒を流し込む……そうすればもう怖いものはない。
「ふふふ……」
「どうしましたー?急に変な含み笑いなんかして……」
「な、なんでもないわよ!!さっさと案内しなさい!!」
「はいはいそんな焦らない焦らない」
「……」
思わず笑い声が出てしまったが、なんとか誤魔化しながらアヌビスについて行った。
……………………
「この部屋に居ます。くれぐれも入った瞬間襲おうとなんかしないでくださいよ?」
「しないわよ……なんてね!」
「あっ」
あの場から10分程移動し、ようやく辿り着いたらしい。
早速私の毒をプレゼントしてあげようと、アヌビスから離れるようにサッと部屋の中に入り、ファラオ目掛けて飛びかかろうとした。
だが、部屋の中にいた者は……
「ん?おばちゃんだれ?わたしに何か用?」
「……はえ?」
あまりにも予想外過ぎて、おもわず間抜けな声を出してしまった。
「えっと……貴女何?」
「わたし?わたしはこの遺跡のファラオのビアラ!おばちゃんは?」
「私はアポピスのジェール……」
「へー。おばちゃんアポピスなんだ!アポピスってもっと怖い怪物だと思ってたけど蛇さんなんだね!この子と一緒だね!」
そこには、たしかにファラオがいた。
「ところでジェールおばちゃんは何しに来たの?」
「えっ?あ、えっと……」
「そのおばちゃんはビアラ様とエッチな事をしたいらしいですよー」
「えーそうなの?」
「なっ違う!というかあんたはおばちゃん言うな!!」
だが……私が思ってたのと違った。
「えーだって純粋無垢な少女をエロエロに調教したいって言ったじゃないですかー」
「そんな事言ってないわよ!!というかこんな子供がいるだなんてこれっぽっちも思ってなかったわよ!」
「何言ってるんですかあなたも私も子供時代はあるのですよ?ファラオ様だって子供時代もありますよ」
「そりゃそうだけど……」
そこにいたファラオ、ビアラは……まだ子供だったのだ。
「なんか面白ーい!ジェールさんはジェリアと仲良しなんだね!」
「あ、ジェリアは私です。仲良しらしいですよ私達」
「ふ、ふざけないで!誰があんたなんかと!!」
魔物なので性についての知識はあるだろうけど……おそらくビアラは性交可能な年齢にはなっていないだろう。
「あーもうどうしよう……」
「流石に子供には手を出せませんか?」
「出したところであんたが止めるでしょ?」
「出す気あるんですかー。引きますわー」
そんな相手にどうすればいいかわからず、あたふたしていたのだが……
「ジェールさんどうしたらいいかわからないの?」
「へ?あ、うん……」
「だっだら〜……」
そんな様子を見てたビアラが……
『わたしと一緒にあそぼっ!!』
「はい!あ……」
わたしが困っているからと、王の力を乗せて私にそう命令してきた。
あたふたしていた私は心に隙があり、その言葉には逆らえなかった。
「しまった……」
「どうしたのジェールさん?一緒に遊ぼうよ!もちろんジェリアもね!」
「もちろんですよビアラ様。私とおばちゃんと一緒に遊びましょう」
「だからあんたはおばちゃん言うなって言ってるでしょ!!」
こうなってしまってはもうどうしようもなかった。
「何して遊びます?ジュールおばちゃんにヴァールと一緒に蛇踊りでも踊ってもらいます?」
「あ、面白そー!わたし見たい!!」
「へ、蛇踊りって何よ!!というかヴァールって誰!?」
「やだなぁさっきからずっとビアラ様の傍にいるじゃないですかー」
「な……まさかこのコブラの事なの!?このコブラと踊らないと駄目なの!?」
「うん!『踊って!』」
「ひうっ!わ、わかりました〜!」
私は無邪気なビアラの命令に為すがまま、疲れ果てるまで遊ぶ事になってしまったのだった……
…………
………
……
…
「ぜぇ……はぁ……」
「大丈夫ですかー?動けますー?」
「む、無理……」
数時間もずっとビアラやジェリアと遊び続ける事になってしまった私は、あまりものハードな遊びで疲れ果ててしまった。
「ま、毎日こんな事してるの?」
「いえ。2、3日置きぐらいですよ」
「……」
変な踊りをビアラのペットであるコブラと踊らされ、遺跡内を追いかけっこする破目になり、あげくジェリアと模擬戦闘させられたら体力なんて果ててしまう。
というかジェリアが思ったより強かった……命令されたチャンスにこいつをメス犬にしてやろうかと思ったら噛み付くどころか近付く事すらままならなかった。
まさか高濃度の魔力の塊を飛ばしたら杖で打ち返してくるアヌビスがいるだなんでこれっぽっちも思っていなかった……こいつも只者ではないという事だ。
おそらくまともにやり合っていたらこの国の支配者になるどころかジェリアに勝つ事も出来ず私はボロボロになっていただろう。
なお、遊び疲れたビアラはそのまま眠ってしまった。
子供らしく可愛い寝顔で、すやすやと寝息を立てながらだ……襲う気なぞ起きなかった。
「そろそろ私は警備の時間なので行きたいのですが、動けそうも無さそうなので空き部屋まで運んでってあげましょうか?」
「へ?」
地面にへたっている私を見兼ねたのか、ジェリアがそんな事を言ってきた。
「あ、別に嫌ならいいですよ。通路のど真ん中で寝ててもマミーが踏みつけるだけですからね」
「ちょ、ちょっと待った。私を追い出さなくていいの?」
てっきりこの後は砂漠に投げ捨てられるものだと思っていた私は、部屋に運ぶと言われ驚いていた。
「いやあ、最初はそうしようと思ってたんですけどね、ビアラ様があなたを気にいっちゃったんですよね」
「え……」
「だから、明日からは誰かさんの毒のせいで旦那とセックス三昧な猫の代わりにあなたにこの遺跡を護ってもらいますよ」
「なっ!?」
「ちなみに断ったら全力でマミーの呪いを掛けた後その尾を団子状に結んでオアシスに投げ込みます」
「ちょ」
何故かと思えば……どうやらビアラが私の事を気にいってくれたらしい。
そして、明日からあのスフィンクスの代わりに働けという事だ……
「……わかった。明日からこの遺跡を外敵から護ればいいのね?」
面倒だが、このアヌビスなら言葉通りの事をやりかねないので引き受ける事にした。
それに、近くに置いてもらえるならいくらでもビアラを引きずり降ろし王となるチャンスがあるだろう……
「変なこと考えないでくださいよ?しばらくは私の監視付きですからねー」
「えーっ!」
「なんですか不満でもあるのですか不満があるのはこっちですよ私の貴重な時間をあなたに使わないといけないんですからね文句言うのでしたら首輪でも付けて引き摺り回しますよ?」
「わ、わかったわよ……」
当分は無理そうだが、焦る事はない。
ビアラが子供の今は襲うのにも抵抗があるが、何年もすれば立派に普通のファラオになるのでやりやすくもなる。
随分と長い期間が必要になるが、たかが数年。その後永く続く私の国の準備期間と思えば他愛ない。
「それじゃあ運びますねー。あ、結構重いですね」
「うるさいわね!ラミア属なんだから仕方ないでしょ!!」
今はジェリアから受ける屈辱も受け入れよう。
ジェリアに両手で抱えられながら運ばれながらも、私の脳内ではこれからの事を考え続けていたのであった。
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「ふぁ〜……ふみゅぅ……」
ジェリアに部屋のベッドまで運ばれた後、結局疲れでそのまま寝てしまった私。
遺跡の中なので何時かまではわからないが、目が覚めた私は大きく伸びてから目を開けた。
「おはようございます」
「うわあっいたっ!?」
そしたら目の前には褐色わんこ……もといジェリアの顔面が目の前に広がっていた。
流石にビックリした私はそのまま飛び起きた……で、蛇体を伸ばし過ぎた結果天井に頭をぶつけてしまった。痛い。
「いったぁ……」
「よく眠れましたか?」
「目覚め以外は良かったわよ……」
痛みに堪えながらも、私は状況を確認する。
「なんであんたがここに……」
「いやぁ……逃げ出してないかな〜と。それにこれ以上マミーを使えなくされても困るので監視をしようかと」
「あ、そう……」
どうやらこいつは私の監視に来たらしい……
わからなくはないが、何故同じベッドの、しかも目の前に寝転びながら監視してるのか……精神的な嫌がらせだろうか?
「朝食を食べた後は昼食まで私と一緒に遺跡内の警備をしてもらいますよ」
「ええ、わかったわ」
「着替えはそこに置いといたので着替えたら部屋から出てきて下さい。まあほぼ丸出しのあなたは痴女なので気にしないかもしれませんが私の目に毒なので外で待ってます。5分で出て来て下さいね?」
「誰が痴女よ!まったく……」
こいつを物理的な意味で無性に襲いたくなってきたがグッと堪え、私は与えられた服に着替えた。
「ほら着替えたわよ!」
「丁度5分ですね。それでは食堂に行きましょうか。ついて来て下さい」
着替えた後、私はジェリアの後に着いて食堂に向かった。
そういえば昨日ここに侵入したときから何も食べてなかったのでお腹が空いている……お腹いっぱい食べれたらいいが、侵入者の私ではそうはいかないだろう……
なんて思ってたのだが……
「あ、おはよージェリアとジェール!」
「おはようございますビアラ様」
「お、おはよう……」
食堂に入ると、大勢のマミーと、にこやかな笑顔を浮かべているビアラが、沢山の料理と共にいた。
「ジェールはこれからもわたしの家で一緒に住んでくれるんだよね!」
「え……あ、うん……」
「やった!家族が増えた!!わーい!!これからもよろしくね!」
「え、あ、うん……よろしく……」
笑顔のまま私に話しかけてくるビアラ……家族が増えたと喜ぶビアラの姿に、大げさだなと思いながらも、私は少しだけ申し訳なく感じてしまった。
この先ビアラが成長してから私は毒を流し、この国の事を忘れさせる気なのに……幼い子供にこうも純粋な眼差しで家族だと言われてしまうと流石に罪悪感も芽生える。
「じゃあ皆揃ったしご飯にしよっ!」
「そうですね。あの猫はジェールのせいで部屋で旦那と籠りっぱなしでしょうし、食べましょうか」
「いただきまーす!!」
そして、一番大きな椅子に座って、口をいっぱいに開けながらご飯を食べ始めた。
「遠慮しないで良いですよ。むしろ遠慮なんかしたらビアラ様が悲しむうえに作ったマミーに失礼のでいっぱい食べて下さい」
「え、あ、はぁ……じゃあ遠慮なく……」
ちょっと戸惑ったが、遠慮無く食べていいなら食べる事にしよう。
「はぐはぐ……美味しいわね」
「ここら周辺の名物をふんだんに使ってるうえに元料理人のマミーに作らせてるから美味しいに決まってますよー」
「なるほどね……」
砂漠の遺跡で出る料理ってどんなものかと思えば……味もしっかり付いており中々美味しかった。
ジェリア曰く料理人が名物を使って作っているとか……納得の美味しさだ。
「このお肉なんか特に美味しいわ……」
「それ蛇肉ですよ」
「ぶーっ」
「冗談です」
「あ、あんたねー!!」
「大体蛇とラミアって別物なのだから問題無いんじゃないのですか?」
「そうだけど……なんかあんたに言われると嫌な気分になるわ……」
「心外です」
ちょっとした嫌がらせをしてくるジェリアにイラッとするが、普段一人でそこら辺の動物の肉を食べていた私にとって、大勢で食事するというのは初めての経験だった。
ジェリアのイラつく言動も含めてなんか楽しかった。
「今日もご飯おいしー!!」
「ありがとうございますビアラ様」
しかし……昨日私達と一緒にあれだけはしゃいだのにも関わらずビアラは元気いっぱいだ。
さすが子供、一晩寝ただけで全快といったところか……
「ジェールもおいしい?」
「え、うん。おいしい……」
「よかった!お口に合わなかったら大変だもんね!」
そんなビアラを見ていたら、私に気付いたのか美味しいか聞いてきた。
美味しいのでそう答えたら無垢な笑顔で良かったと返されてしまった……その眩しさにちょっと心が痛い。
「いっぱい食べてね!」
「はい、了解しました!」
「敬礼までしてますねアホピスなのに」
「アポピス!ホじゃなくてポよ!」
「あはははっ!でも本当に遠慮はしないでね!私達はもう家族なんだから!!」
やはり王の力には敵わないなと思いながらも、元からその気だったので私はいっぱい食べたのだった。
…………
………
……
…
「さて、今日の予定は終わりですが、何か質問は?」
「別にないわ。しいて聞くとしたらここのマミーの人数ぐらいだわね」
「いっぱいです」
「……」
今日一日特に何かが起きる事も無く、ずっとジェリアと二人で遺跡内を見回りしたり、ビアラの命令に付き合っていた。
「最初に会った時から思ってたけど、あんたアヌビスにしては適当ね」
「やだなぁ冗談に決まってるじゃないですかきちんとマミーの数ぐらい把握してますよ」
「ムカ……」
ビアラの命令の方はそう苦じゃない……むしろ頼み事レベルのものが大半なので助かる。
具体的に言えば「わたしと一緒にお菓子食べよう!」とか「ヴァールの代わりにわたしに巻き付いてみて!」とかの比較的疲れない事ばかりで、今日はまだ体力はあり余っていた。
まあ……ずっとこんな調子のジェリアと一緒だったので精神的には疲れたが。
「悪いですけど、まだ私はあなたを信用してはいないのでね」
「えっ」
ただ、こんなジェリアが一番油断ならない相手だと言う事がわかったのは大きいかもしれない。
「あなたは侵入者だった。まだあなたの心を折ったわけではないのでビアラ様を無力化しようとしてるかもしれない。そう思ってるだけですよ」
「あら嫌だ。信用されてないのね」
「ええ。なんとなくわかるのですよ。あなたはまだ諦めていないとね」
「……あんな子供に手を出せるわけないでしょ?今日だって密着したけど何もしなかったし」
「そうですねー。何かしようとしたらすぐさま呪いを掛けるつもりでしたが、そんな様子はなかったですからね。でも今は子供だから抵抗あってしないだけで、ビアラ様がご成長なさった時にガブっとするかもしれないですからねー」
「……」
このように、普段何も考えていないようでとても考えているのだ。
ずーっとボーっとした表情を浮かべながらも、全く付け入る隙が無い。
「沈黙という事は図星でしたか。では呪いを……」
「ちょっと待った!別にそういう意味で黙ってたわけじゃないわよ!」
「ではなんだというのです?」
「いや……あんた何も考えてないように見えて色々と考えてるのねと……」
「心外です」
種族的には私の方が強いと思うのだが……何故かジェリアには魔術も体術も敵いそうになかった。
「ま、大人しくしてるなら私からあなたに危害を加える事は無いのでご安心下さいな」
「人をおちょくるのは危害にカウントしないのね」
「何の話です?それより湯浴みに行きましょうか。ついて来て下さいよ」
「誤魔化したわね……まあいいわ」
様子を見れば見る程、大きな障害だとわかるジェリア。どうにかならないものか……
「というか湯浴みも出来るのねこの遺跡……」
「まあ旧魔王時代そのままでは無く現代にあわせて改築したりしてますからねー。ビアラ様には常に清潔でいてもらいたいですしね」
「なるほどね……」
まあ、こいつの弱点などもじっくりと探っていけばいい。
そう思いながら、私は湯浴みをする為にジェリアについていった……
====================
「ねえジェリア」
「なんです?あなたが私の名前を呼ぶなんて珍しい事もあるものですね」
「まあいいじゃない。それより聞きたい事があるのだけど……」
あれから数ヶ月が経過した。
最初の頃はビアラの命令に従うのも大変だったが、慣れたのか暴れ回る日でもベッドに入って即寝てしまうなんて事は無くなっていた。
「ビアラの事なんだけどさ……」
「わたしがどうかしたの?」
「あ、いや……やっぱり後で良いわ……」
「んー?ジェール変なのー」
「ジェールはいつも変ですよ。むしろ変でなければ病気になってますね」
「あんたはいつもいつも人をイラつかせるわね……」
その為かいろんな事を冷静に見られるようになり、今まで疑問にも思ってなかった事が唐突に不思議に思えてきた。
「ねえジェール、今日も一緒にあそぼっ!」
「もちろんいいわよ。今日は何して遊ぶ?」
「んーと、ジェールを言葉攻めして遊ぶー」
「……ジェリアを二人でくすぐらない?」
「さんせー。ジェリアがしたわたしの真似下手くそだからおしおき!」
「えーそれはないですよビアラ様ー」
それは……このビアラの事だ。
「さてと、それじゃあ拘束っと」
「はははは、捕まってたまるもんですかー」
「ジェリア、じっとして!」
「う……はい……」
「じゃあ今度こそジェリアの身体に巻き付いてっと……何時でもいいわよ?」
「よーし、こちょこちょこちょこちょ……」
「わふっ!?そ、そこだ、あ、わははははは!!」
「へーあんた脇が弱点なんだ……チロチロ……」
「ちょっ舐めないであははははははっ!!」
なんでこんな幼い子が一人で王を務めているのか……それが謎だった。
「ジェール、ジェリアの耳もチロチロしてみてよ!」
「ん?どれどれ……」
「や、やめうひゃうっ!!」
「……何これ面白いわね!」
「でしょ?普段ぶっきらぼうなジェリアがひゃうっとかキャインとか言うんだよ!」
「へぇ〜、いい事聞いちゃった♪」
「ビアラ様やめて下さーい」
こんな小さな子供が王だったなんて考え辛い……
だが、かといってファラオが生んだ子供かと言えば、この子の親の姿が全く見当たらないので疑問に感じる。
流石に他にファラオがいたら私が気付かないわけが無い。なのでこの遺跡にはビアラしかファラオはいない。
「そーれチロチロ〜」
「はうあっ!わふ、きゃいん!!」
「あっはははは!!本当にキャインって言ったわね!」
「ゔ〜」
「あ、ジェリアが怒った」
ならば……この子はなんだろうか?
可能性はとてつもなく低いけど……遥か古代の王だったというのだろうか?
「肉球攻めをくらえー」
「ひゃんっ!私の胸なんか触って何するのよ!!」
「お返しだー。尻尾の先も甘噛みしてやるー」
「やめひゃいんっ!!」
「あはは〜!ジェールは尻尾の先が弱いんだね!」
ジェリアはそれを知っているかもしれないので聞こうとしたのだが……ビアラの前では聞き辛かった。
「く……この!」
「きゃわう!やったなー」
「ひゃあっ!このお!」
「なんか二人ともおっぱい触ったりしてエッチな事やってるみたい……」
だから今はビアラと遊んで、ビアラが疲れて寝てからジェリアから聞き出す事にしたのだった。
何故か私はこの頃自然とビアラの命令を聞き入れるようになっていたが、その事に自分ではほとんど意識出来ずにいた……
…………
………
……
…
「……それで、どこに向かうつもりなの?」
「まあ黙ってついて来てくださいよ」
ビアラが遊び疲れて眠ったので、私は早速ジェリアに疑問に思った事を聞こうとしたのだが、その前にジェリアから出掛けないかと誘われた。
まあ丁度良いかと思い私は誘いに乗り、久しぶりに遺跡の外へと出歩いたのだった。
「あれ?何か灯りが……」
「ビアラ様の魔力のおかげで規模は小さいですがここは明緑魔界になってますからねー。あのように集落が形成されてるんですよ」
「へぇ……知らなかったわ」
ジェリアと歩いていたら、暗い砂漠に灯りと建物らしき影が見えた。
どうやらビアラが作りだしたオアシスに住みついた人達の集落らしかった。
外周以外の遠出で、しかも集落に行くのは初めてなので、少し心が弾む。
「事後確認になっちゃいましたが、あなたお酒飲めます?」
「え、ええ……あまり強すぎるのは無理でしょうけど飲めるわよ。もしかして酒屋にでも行くわけ?」
「はい。正確には行きつけのバーですけどね。そこでなら落ち着いて話も出来るでしょう」
「へぇ〜……」
どうやらジェリア行きつけのバーに向かっているらしい。
そんなに大きくない集落にバーがある事自体にも驚いたが……アヌビスが遺跡から少し離れた集落に行きつけの店がある事のほうが驚いた。
遺跡の守護者であるアヌビスが、どうして町に行くような事があるのだろうかと……
「ほらこちらですよ」
「あ、ちょっと待ちなさいよ!」
集落に辿り着いた後、迷う事無く目的地まで早足で歩くジェリア。
初めて来た場所なのでもう少しゆっくり見て回りたいのだが、はぐれると困るので急いでついて行く。
「結構人も魔物も多いのね……規模も町のレベルはあるわ」
「そうですね。学者や冒険家などがギルタブリルや他の魔物に襲われて夫婦になった後、ここに住み着いたってのが多いですね。後は流れ者や砂漠系魔物娘好きなんかが住んでます。施設も結構幅広く揃ってますから人も自然と増えて行くのですよ」
「なるほどね〜……」
周りを見渡すだけでも、食品を売っている店や薬屋、飲食店に病院どころか娯楽まで揃っているのがわかる。
歩いている人も人間やギルタブリルやマミー、あからさまにここら辺出身ではなさそうなミノタウロスやゴブリンといった魔物も数多くいた。
「さて、着きましたよー。早速入りましょうか」
しばらく町中を進み、少し裏道を進んだところにあった店が目的のバーだったらしい。
手慣れた手つきで扉を押し開け、何の遠慮も無しにジェリアは入って行ったので、私もジェリアと同じように店に入った。
「いらっしゃいませ……ああ、ジェリアか」
「やあセネル。今日は私以外にもいるぞ」
「ん?ああ、以前言っていたアポピスか。はじめまして、店長のセネルです」
「はじめまして。ジェールです」
小さな店の中を見渡すと……男が一人だけカウンターに立っているだけだった。
内装の面で見れば、落ち着いた雰囲気を醸しだし綺麗だという印象を受けた。
「さて、ご注文は?」
「ジェールさんにはオススメを。私は前の続きからで」
「はいよ」
席に座り注文したジェリア。
私にオススメを、ジェリア自身は前の続きと注文した……
「何?あんたこのお店のお酒全部制覇目指してるとか?」
「そうですよー。そうすればセネルは遺跡に住んでくれるって言うんでねー」
「……は?」
行きつけというぐらいだからもしかしたらメニュー全制覇でも目指しているのかと思ったら……予想を遥か斜め上を行く回答が飛んできた。
「え、何?もしかしてあんた店主さんに惚れてるの?」
「そうですよー既に告白済みなのでジェールさんにはあげないですよ」
「別に私は狙ってないわよ。いい男だとは思うけど……それにしても意外ね。あまり男に興味が無いと思ってたわ。精の匂いもしないしね」
「心外ですよ。これでも魔物ですからね。全制覇したらビアラ様からお休み貰って1週間ぐらいはめっぱなしにしてもらう予定ですから」
「あっそう」
どうやら店主のセネルに惚れているらしい……
普段から男の話とか全くと言っていい程しないので、もしかしたら男にさほど興味が無いのかと思っていたが、魔物らしく立派に恋をしていたようだ。
「ここでお店を始めたら思った以上に上手くいったせいで離れたくないとか言いだしましたからね。ならばと条件をつけてもらったのですよ」
「ふーん……ねえ店主さん、本当なの?」
「ええ、本当ですよ。全部のお酒を飲んでくれたら遺跡から通う事にしますよとジェリアに申しました。このお店から離れる気は全く無いので、本気ならばそれぐらいやってみなとね」
「へぇ〜……」
たいして厳しい条件でもないと思うが、それだけお酒が好きな人なのだろうか。
「人間だった時からお酒が弱かったくせにその日から本気でメニューの上から全種類飲み始めましたからね。1年以上かけてようやく半分ってところですから後どれぐらい掛かるのでしょうね」
「1回に3種類前後しか飲めないのに新メニューあまり増やさないでくださいよー余計時間掛かるじゃないですかー」
「そんな事言われてもこっちはお店だからね。新メニューも考えないとやっていけないよ」
どうやらジェリアは人間だった時からあまりお酒は強くなかったらしい。
それなのにこんな挑戦をしているとは……本気でセネルの事が好きなんだろうってちょっと待て。
「人間……だった時?あんた元々人間だったの!?」
「あーそういえば言った事無かったですねー。そうです私は2年程前にビアラ様にアヌビスに変えられた人間ですよ」
さらっと言われたから最初流しそうになったけど……ジェリアは元人間だったらしい。
たしかにファラオには人間をアヌビスに変える事も出来ると言うが……どおりでアヌビスっぽくないと思った。
「というかもっと言っちゃえば私はあなた達魔物の敵である勇者でしたよ」
「は!?あーでもそれで納得出来たわ……だからあんたあんなに強いのね」
更には元勇者だったとの事。
たしかに普通のアヌビスにしては魔力も高く感じたし、私が放った魔力の塊を跳ね返すだなんて上位魔物でもそう簡単に出来る事じゃない事を易々とやってのけるし、アポピスである私よりも格段に強いとは思っていたが……それならば納得できる。
「そうそう、急にここら周辺に緑が生い茂ったので調査してたんですけどねー。明るいけど魔界だってわかったのでとりあえず発生源となる魔物をセネルと二人で討ち倒そうとしたんですよー」
「本当に!?というか店主さんもジェリアと……」
「僕はジェリアの幼馴染み兼部下の兵士でしたけどね。それに、一緒に来たはいいのですが怖くなってしまいまして……」
「この人この集落より遺跡側に行こうとしなかったんですよー。仕方ないので私一人で行ったんですけどーあなたと同じく子供には手を出せませんでしたねー」
「そうなんだ……」
勇者としてビアラを討伐しにきたのはいいが、パートナーはへたれてしまい、それでもどうにか魔界の発生源に辿り着いたは良いけど、子供のビアラには手を出せず……そのままアヌビスに変えられたという事か。
「意外な過去だったわ……」
「そうですかね?それより何か聞きたい事があったんじゃないんですか?私の事よりそっちの話すればいいじゃないですかー」
「いやまあそうだけど……今の話を聞いたらあんたに聞いてわかるか微妙になってきたからな〜」
ジェリアの過去に驚いていたら、そのジェリアに聞きたい事があったのではないかとつっこまれた。
たしかにビアラの事を聞きたかったのだが……ファラオとしてビアラが眠る時から居たのではなく新参者のこいつに果たしてわかるのか……
「どうせビアラ様がどうしてあんな子供なのに一人でいるのかとか聞きたいのではないんですか?それなら知ってますよー」
「え、そうなの?だったら教えてくれないかしら?」
と思ったら、一番知りたい部分は知っているようなので聞く事にした。
「実はビアラ様は正真正銘旧時代でのあの国最後の王なんですよ」
「あんな子供なのに?」
「はい。先代の王が病で死に、他に後継ぎが居なかったのでたった5歳で王の座に就いたらしいですよ」
「なるほど……病か……」
どうやら本当にあの歳で王だったらしい。
先代が病で早死した事で、何も知らないはずのビアラが王になったという事か……
「ですがまあビアラ様は子供。後継ぎとして学んでいたからといって実際に政策なんか出来るわけがありません。なので大臣達が頑張ってたのですが、アホだったためそう上手くいきませんでした」
「アホって……それで国は滅んでしまったわけ?」
「そういう事です。政策が上手くいかなかったため他国に侵略されたうえ、当時はただ凶悪だった魔物達の手によって他国もろとも全滅したようです。そして、生き残った数名でビアラ様をファラオとして眠りにつかせたらしいですよ」
「なるほどね……」
だが、結局子供のビアラでは政策など出来ず、代わりの者達が頑張ったが駄目で、他国に侵略されたうえに追い打ちのように魔物に攻められ滅んだらしい。
「簡単にいえばそういう事です。もっと複雑な事情も絡んできますが、どうせ言ってもあなたに理解できる気がしないのでやめときますね」
「またあんたは人をバカにして……でもまあいいわ。知りたかったことの最低限はわかったしね」
ビアラみたいな子供がなんで一人でいるのかと思ったら……そんな理由だったとは……
ファラオを狩る側の私が言うのもなんだが、少し可哀想だった。
「あなたは気付かなかったかもしれないですが、ビアラ様は家族が増える事を大いに喜びます」
「あー……たしかにかなり喜んでいたわね」
「それは、早いうちから彼女が家族というものを失っているからです。実の家族も、民という名の家族も、幼い頃に失っているからです。そんな彼女は家族が増えたら嬉しくなるのですよ」
「……」
私が遺跡に住むと言った時、たしかにあの子は大喜びしていた。
マミーも大勢いるのだから大げさだなとは思ったけど……そういう背景があったのか……
「さて、聞きたかった事はそれだけですか?」
「まあね……それにしてもあんた詳しいわね。勇者として色々と調べてたの?」
「まあそれもありますが、将来的にビアラ様を亡き者にしようと色々調べたのもありますね」
「…………はえ?」
一応知りたい事は知れたので、もういいやと思いなんとなく口にした言葉に、予想外の返答が返ってきた。
「そりゃあ私は魔物を滅ぼし平和を築きあげようとしていた勇者ですからね。最初はビアラ様の命令を聞きながらも内心ではアヌビスになってでも信用を得てから殺そうと考えてましたよ」
「ここでお店を始めて少ししてからアヌビスになったジェリアを見た時は驚きましたが、その時に成長してからファラオを倒すと聞いた時はもっと驚きましたね。自分を犠牲にしてまで倒そうだなんて凄い事をする人だと」
「そう、だからマミーや猫の行動やビアラ様の事をいっぱい調べてたんですよ。いつかビアラ様をこの手に掛けてやろうと……あなたみたいにね」
「な、何を言って……」
「あなた未だに少しはビアラ様が成長したら一人のメスにする気ありますよね。誤魔化しても無駄ですよ。私だって同じように思ってたのでわかりますから。まあ命を奪う分私のほうが酷いですけどねー」
「……」
妙に私の計画に感付いたりしてると思ったが……まさか同じような事を考えてた事があったとは……
「それで……あんたはもうビアラを殺そうとか考えてないの?」
「ええ全く。考えてたら最初のときにあなたに協力してますよ」
「そ、それもそうね……」
「それに、それはあなた自身も思ってる事じゃないんですかね。段々と今の立場を受け入れてませんか?」
「……」
「ビアラ様の笑顔を見るうちに、そんな事を考えてる自分が嫌になってくるんですよ。あの無垢な笑顔を壊したく無くなってくる、そうじゃありませんか?」
「……」
そんな訳が無い……だなんて言えなかった。
日が経つにつれ、段々とビアラの事が愛おしく感じるようになっている自分がいるのは事実だった。
こんな娘がいたら楽しいだろうなと、思っていないわけではない。
あの子に噛み付きこの国を支配する……その考えに疑問を持ち始めている自分がいた。
でも……別に諦めたわけではない。
いつかこいつを出し抜いて、ビアラの命令が出る前に無力化する……今のところはその気持ちのほうが強い……はずだ。
「まあ仮に思ってなくてもその時は私があなたを叩きのめしたうえ結んだ状態で水の中に投げ込みますがね」
「ひっ……」
「こらこら、ジェールさんが引いてますよ。そういうシャレにならない冗談はやめた方がいいかと」
「この人いちいち反応が面白いんでついからかってしまうんですよー」
「こ、このー!!」
まあ出し抜くのは難しいかなと思いながら、私は酔い潰れる寸前まで飲み明かしたのであった。
====================
「ジェール、ヴァール知らない?」
「さっきビアラのベッドの下に潜ってたのを見たわよ?」
「本当?じゃあちょっと見てくるね」
それからさらに数ヶ月経ったある日の事。
私はいつものように警備をしながらビアラの相手をしていた。
「あなたが確認してあげたら良かったのではないですかね?」
「それぐらい自分でやらないと駄目ファラオになっちゃうでしょ?」
「まあそうですが……あなたは駄目にするのが目的では無いのですか?」
「あ……ま、まあ私の毒があればどんな相手でもイチコロだから気にする必要はないわよ!」
「ほぉ……それは恐いですねー」
もちろん未だ私を監視し続けているジェリアも一緒にだ。
まあ腹の内は知られているし、当分監視が外れるなんて思っては無いけど……なんだかんだ話し相手にもなってくれるのでこいつがいても嫌じゃなくなっている気がしないでもない。
「淫乱痴女の毒で淫乱痴女が移ったらセネルに嫌われるかもしれないので私には毒盛らないで下さいよ」
「……あんた本当に私を馬鹿にするの好きね……」
「いちいち面白い反応するからついからかいたくなるんですよー。これは私がアヌビスになる前どころか生を受けた時からなので今更変えようがないです」
「でしょうね……」
まあ……しょっちゅうイラッとするのは変わらないが。
「ジェールが言ってた通りベッドの下にいた。そしてぐっすり寝てた」
「じゃあそのまま寝かせておきましょう。起こすのもかわいそうだしね」
「そうだねー。じゃあ今日はマミーの誰かも呼んで遊ぼうよ!」
「わかりましたじゃあ誰か適当に呼んできます」
とまあ、いつものようにビアラやジェリア達と遊ぼうとしていた、その時だった。
「た、大変です!!侵入者がやってきました!!」
「なっ!?」
突然マミーが普段絶対に出さない速さでこっちに向かってきたと思ったら……侵入者の知らせに来たようだ。
「相手はどんな人ですか?またアホピスですか?」
「いえ、相手は勇者パーティーです。男2人と女1人の3人パーティーなのを確認してます。それとそれを言うならアポピスですよジェリア様」
「ふ〜む……ですか……」
どうやらかつてのジェリアみたいに魔物を討伐しに勇者が来たらしい。
しかもジェリアと違い複数で……少し厄介かもしれない。
「こ、こわいよ……」
「ん?どうしたのビアラ?」
「勇者怖い……家族を皆殺しちゃうもん……」
「ビアラ……」
とりあえずどうしようかと考えていたら、私の腕をビアラがぎゅっと握ってきた。
どうしたのかと思ってビアラを見たら……恐怖で震えていた。
「そうですね勇者というのは魔物は悪だと信じて何もしてない魔物をばっさばっさと斬りつける化物ですからねー」
「……」
「ん?なんですかその眼は?私はここではそんな事してませんよ嫌だなー」
「ここでは、ね……」
「……ええ。『私は』ですけどね……」
「?」
もしかしたら勇者だったジェリアが何かしたのかと思ったけど……違うようだ。
「ジェリアが来るより前に……元々いたアヌビスやマミー数人が勇者に殺されちゃってたんだ……」
「え……」
「まだわたしの目が覚めるより前の事だったらしいんだけど……護ってくれていたアヌビスが居ない理由をマミーの一人に聞いたらそう言われた……」
「そのアヌビスも同士討ちでマミーの呪いを掛けたおかげでビアラ様自身に危害は無かったそうですよ。アヌビスの鑑ですね」
どうやら、ジェリアよりも前に一度侵入してきた勇者がおり、結果数名の犠牲者が出ていたようだ。
「もう嫌だ……これ以上家族を失うのは嫌だ!」
「……」
「あんまりハッキリと覚えてないけど……おばちゃんやおじちゃん達が悲鳴を上げながら逃げて、剣や槍を持った人達に殺されてるのを覚えてる……もうあんなのは見たくないもん!!」
「ビアラ……」
更には……昔人間の王だった時に見た記憶も多少なり残っていて、それがトラウマになっているらしい……
こんな子供なのに、とても辛い記憶だ……
「……ジェリア……」
「……なんでしょうか?」
「私が勇者達を倒してくるから、何かあった時はビアラをお願いね」
「あなたに言われなくてもわかってますよ。それと、何かないようにお願いしますね。何かあったらあなたに呪いを掛けて水に沈めますから」
「ええ……」
そんな想い、もう二度とさせてたまるものか。
そう思った私は、勇者達を撃退すべく単身向かったのだった。
「ジェール……」
「ん?何ビアラ?」
「……絶対、帰ってきてね!!」
「……もちろん。心配しないで待ってなさい!」
出て行く直前に、ビアラから声を掛けられ、それに返答しながら……
…………
………
……
…
「ここに本当にファラオなんかいるのか?ファラオどころかスフィンクスすら見なかったぜ?」
「マミーが1体いただけですね。そのマミーにも逃げられちゃいましたが……」
「きっといますよ。魔力が張り巡らされてますから、マミー1体だけって事はないと思います」
気配を探りながら勇者達を探す事数分、呑気に喋りながら遺跡内を歩いている勇者一行を発見した。
装備品からして賢そうな勇者を筆頭に女僧侶と剣士といったところか。
マミー達はジェリアの命令で全員奥まで退避してる為、今遺跡内は最奥部以外は無人の状態だ。
トラップ等も中心になるにつれきつくなる様になっているからか、勇者達はもう真ん中辺りまで進んでいた。
「なんかここまでスムーズだと大きな罠がありそうでちょっと怖いな……」
「考え過ぎですよ。ここまでくるまでにもいくつか罠がありましたがどれもたいした事無かったじゃありませんか」
「勇者トーゴ様がいれば何も怖くありませんね!」
「くっつき過ぎですよシエラ。腕を掴まれたらあなたを護るのが大変になるじゃないですか」
「あ、ごめんなさい!」
「けっイチャイチャしやがって……」
やつらに見つからないように監視する……
どうやら女は勇者の事を好いてるようで、勇者自体も満更でもない様子だ。
これなら……二人はすぐに無力化可能だろう。そうとわかれば早速行動に移る事にした。
「さあ、気を引き締めて……」
「はっ!?勇者様危ない!!」
「なっなんだ!?」
まず私は魔力を球状に固め、やつらの足下に目掛けて飛ばした。
「ごほっごほっ、いったいどうなってやがる!?」
「何も見えない!!皆無事ですか!!」
「何者かが私達に攻撃を仕掛け……はっ!?」
脹れあがる砂煙に身を隠しながら、私は勇者一行の真上まで移動して……
「き、きゃやあああああああああああん♪」
「な、ど、どうした!?何があった!?」
「くそっ!何者だ!!堂々と出てこい!!」
女僧侶の真後ろに跳び下りて、何かされるよりも前に首に噛み付いた。
「ふふふ……そんなに慌てふためく事無いじゃない……」
「なっ!?アポピスだと!?」
「なんでそんなものがこんなところに……!?」
「こっちの事情は気にしなくていいわ。それよりぼーっとしてていいの?」
「はっ!そうだ!!おいシエラ、大丈夫か!!」
「……あは♪」
「おいシエラ!!しっかりしろ……?」
「ん?なんかシルエットに違和感が……」
もちろん、噛み付いた時に毒も流し込んでいる。
「あは……あはは……トーゴぉ♪」
「シエ……ラ?」
私に噛み付かれ、毒を流し込まれた人間は……
「トーゴ♪ファラオなんてどうでもいいからエッチしましょ♪」
「なっ!?し、シエラその身体……」
「えへへっアポピス様に貰ったの♪これでもうトーゴは私から離れられないわよ♪」
「う、うわあああああああっ!!」
「逃げちゃダーメ♪巻き付いて動けないようにしちゃうわよ♪」
私の忠実なしもべ、ラミアとなるのだ。
「く……シエラ……」
「あら?私に巻きつかれただけでこんなにおちんちん大きくしちゃって……トーゴも待ちきれないのね!じゃあ挿れちゃうね♪」
「やめっうああっ!!」
「ひゃう♪トーゴが入ってくるぅ♪」
女僧侶は大好きな勇者に早速手に入れた蛇体で巻き付いて、無意識に胸を押しあてながら興奮で硬くなった男性器を露出させ、自分の膣に挿入し、腰を振り始めた。
もうこれであの二人は私に向かってくる事はないだろう。
「さて、あの子達は仲良くエッチな事をしてる事だし、あとは貴方だけね」
「くそ……よくもシエラを!!俺一人だけでも貴様らを倒してやる!!」
「あなたに出来るかしらね?奇跡的に私を倒せてもまだアヌビスだって残ってるのだけど」
「ふん!皆纏めてやってやらあ!!」
「あら威勢のいい事ね。そういう男は好きよ」
これで、残る相手はこの剣士ただ一人だ。
「このっ!」
「あら。当たりっこないわよそんな大振り」
「くそっ!こんな化物がいるなんて聞いてねえぞ!!」
性臭を撒き散らしてる二人をよそに、私は剣士と闘い始めた。
ファラオ討伐パーティーなのでどれぐらい強いかと思ったら……ジェリアの足下にも及ばないよ程度のようだ。
「はぁ……くそ……」
「あらもう終わり?それじゃあ今度はこちらから行くわね♪」
剣士の振う剣を軽々とかわし続けていたら、体力が消耗したようで息を切らし始めた。
それもそうだろう……ここにはビアラやマミー達の魔力が充満している。明緑魔界と言えど魔界、その中心部なのだ。普通の人間が長々と耐えられるものではない。
「ていっ♪」
「くっ!剣が……」
「もう武器は無いの?降参する?」
「だれが降参なんか……!!」
そんな剣士の手に持った剣を尾の先で弾き飛ばし、武器を無くす。
それでもまだ力強くこちらを睨む剣士……その勇ましさに惚れてしまいそうだ。
「あら……じゃあ……」
「く……何をする気だ……」
「何って、そうね……」
だから私は、ゆっくりと近付くふりをして……
「シエラちゃんと同じ事かな♪」
「なっくあっ!!」
一気に飛びかかり、身体を拘束しながら剣士の首に噛み付いて毒を大量に注いだ。
「あ……ああ……」
「ふふ……気分はどう?」
もちろんこの毒は男性相手にも効果は出る。
ラミアになったりする事は無いが……魔物や女性に流し込んだ時と同じように快楽に忠実になる。
しかも剣士には、今まで生きてきた中で一番たっぷりと注いであげた。
「そういえばあなたお名前は?」
「め、メルン……」
「そう、メルンね……」
そうなった以上、もう彼は人間では無い。
「さあメルン……私の相手をしてもらうわよ」
「は、はい……」
強い精の匂いを放つ、一匹のインキュバスとなるのだ。
「ふふ……立派なモノを持ってるのね♪早速挿れちゃうわね」
「あ、ぐ、うぅ……」
「手で触っただけなのに気持ち良いのね……そんなんじゃ我慢なんか出来ないわよ?しなくていいけどね♪」
そんなものが目の前にあって、我慢なんか出来る筈が無い。
私は剣士……メルンのガチガチになったペニスを出し、左手で添えて……
「ほーら、おまんこに入って行くわよ……んっ♪」
「はぁ……ふぅぅ……」
右手で自身の秘所を開きながら、ゆっくりとペニスを挿入した。
「うっ!!ああああっ……!!」
「えっ?きゃっ♪もう射精しちゃったのね♪」
初めて挿入したペニスの感覚を感じるよりも早く、私のナカに熱い迸りを感じた。
それだけ私の膣が気持ち良かったというのだろう……なんだか女として嬉しく感じる。
「でも、まだ私は全然気持ち良くなってないからもっとシてもらうわよ。かぷっ♪」
「はうあっ!!」
だが、それと気持ち良くなってない事は別である。
なので、私は再び毒を注ぎ、元気になってもらう事にした。
「ああ……すごぃ……」
「あはっ♪すぐ大きくなったわね。気持ち良かった?」
「う、うん……」
ペロッと噛み痕を舐めながら口を離してみると、さっき射精したばかりだというのにもうペニスは大きくなってきた。
私の膣を押し広げながら膨らんでくさまに、私は満足した。
「じゃあ動いてあげる。今度は勝手にイかないでよ?」
「あ、ああ……うぅっ!」
今度こそと思い私は腰を押し付け、ペニスを膣の最奥まで挿入した。
「あはっ♪き、気持ちいいっ!メルンはどう?」
「あっ、はっ、はっ、うあっ」
「気持ち良すぎて声も出ないのね♪」
そのまま激しく腰を動かし始めた私。
ゴリゴリと私の膣を削るメルンのペニスの感覚に病みつきになってしまいそうだ。
メルンも気持ち良さ過ぎてもう喘ぎ声しか出ていない。
「こんなのはどうかしら」
「あうっ、んっ!」
「ふふ……じゅる、ちゅ、くちゅ……」
そんな喘ぎしか出なくなった口に、私は唇を被せた。
長い舌をメルンの口に侵入させ、メルンの舌に絡ませる。
舌を器用に動かしてメルンの舌に巻き付き、まるでペニスをフェラするかのように扱く。
その動きが気持ち良いようで、目をトロンとさせ為すがままにされている。
「ちゅぷ……ふふ、またすぐにイッちゃいそうね♪」
「ああっ、も、もう……」
「あとちょっとだけ我慢して。私もイキそうだから♪」
名残惜しいが、少し息苦しくなってきたので唇を離した……舌と舌に銀色の橋が掛かり、重力に従って私のそこそこ豊満な胸に落ちた。
メルンのペニスはもう限界のようで、私の膣内で大きく震えているのを感じる。
私は自身のGスポットに当たるよう調節しながら腰の動きを更に早くした。
「あふ、も、もうだ、で、射精るっ!!」
「い、いいわっ、い、いっぱいだして♪」
その結果、私も気持ちが高鳴り、快感が背筋を波打ち……
「う、うああああああっ!!」
「きゃっ♪いく、イックうううううううっ♪」
ビクッビクッと全身が震えながら、私はイッた。
それと同時に、メルンは私の膣奥で熱い精液を放出した。
「あへっ、あぁ……」
イッた事で少し力が抜けた私。
ほんの少しだけメルンの拘束が緩んでしまったようだ。
「ふぅ〜……ふぅぅ……」
「あはぁ……ん?どうしたの……?」
メルンは私の身体から両手を出して……
「ふぅぅっ!じゅるるっ!!」
「ひゃっ!?ちょ、ちょっあんっ!!」
左腕を私の背中に回し、右手で私の左胸を揉み始めた。
そして、余った右胸をしゃぶり始めた。
力強く揉みしだき、乳首に吸いついてくるメルン……
「むふぅ……」
「あふっ、や、やめああああっ!」
「ふぁ、は、は、はっ!」
それどころか、自ら腰を振り始めた。
おそらく私の毒によってインキュバスになったメルンは、快楽を貪る事に夢中なのだろう。
突然攻められた事で、私は為すがままにされる事しか出来なかった。
「あっ、ああっ、き、ふぁっ、あっ♪」
「ふぅ……はぁ……うっ」
ゴリゴリと感じる部分を的確に突いてくるメルンの亀頭。
「あはっ♪おまん、こが、メルン専用になっちゃうぅぅ♪」
「ふっ、ふっ、はっ……」
私はもう、ずっとイキ続けていた。
「ふっ、はっ、くぅっ!!」
「ああっ♪また、まただしゅのねっ♪」
そんな中、一際大きく膨らんだメルンのペニス……また射精をする合図だ。
「きてっ、きてぇ♪」
「ふっくうううぅぅぅうっ!!」
私もメルンの腰の動きにあわせ、一際大きく腰を引いて、互いにぶつけ合った瞬間……
「き、きたあああああああああっ♪」
子宮口に亀頭が触れたと同時に、今まで以上に量も勢いもある射精が始まった。
「ふあっ、くうぅっ、はっ!!」
「ひあっ!?で、出てるのに、イッてるのに動くのはんそくぅ!!」
どくどくと射精しながらも、激しく腰を動かすメルン。
もう私は……この快楽に溺れる事以外に何も考えられなかった。
もう、ファラオなんてどうでも……
「ジェール、今日はわたしと一緒におどろっ!」
「ジェールってお肉が好きなんだね。わたしはなんでも大好きだよ!」
「あははっ!ジェールとジェリアってほんっとーに仲良しだよね!」
「遠慮はしないでね。私達はもう家族なんだから!!」
「ジェール…………絶対、帰ってきてね!」
「ふぅ……ふぅ……ん?」
「ゴメンね……ちょっと止めてくれるかな?主の命令を思い出しちゃったからさ……主のもとに帰らないと……」
……どうでもいいだなんて、思う事は出来なかった。
快感漬けになっている私の脳裏に、ビアラの笑顔と言葉が響いてきたのだった。
「ん……いっぱい出したわね……」
「あ、ああ……すまない……」
「いいのよ。それだけ私を気にいってくれたのでしょ?女として嬉しいわ♪」
「そ、そうか……」
まだまだシ足りなさそうなメルンのペニスを膣から引き抜いた。
栓が無くなった事により、私の黒紫色の肌を白濁液が流れ落ちる……その様子に性欲が鎌首をあげたが、なんとか舐め取るだけで済ませた。
「ふぅ……それじゃあついて来て。もうファラオに手出ししないとは思うけど、何かしたらタダじゃすまないからね」
「あ、うん……大丈夫、もう俺はそんな気はない」
「シエラちゃん達も一旦止めてついて来て。ビアラに紹介したいから」
「はい、ジェール様♪」
「はぁ……ハァ……」
服を着直した後、私は3人に付いてくるよう指示をした。
メルンはもう私の虜だし、シエラも私に忠誠を誓っているだろうしそもそも魔物だから問題はない。
トーゴは何とも言えないが、おそらくはシエラとのエッチの事しか既に頭にないだろう……たとえそうでなくても、もう疲れてぐったりしているのでマミーでもどうにかできるだろう。
「じゃあ行くわよ。離れないようにね」
私は、メルンに尾の先を巻き付けながらもしっかりとビアラの元に向かったのだった……
…………
………
……
…
「良かった〜!ジェールが無事で本当に良かった!!」
「心配させてごめんね。私なら大丈夫!この通り新たな家族にしてきたわ♪」
ビアラがいる部屋に戻ってきて早々、私に抱きついてきたビアラ。
安心で綻んだ笑顔がなんとも可愛らしい。
「えっ!?家族になってくれるの!?」
「ジェール様の主ならば私にとっても主ですので……♪」
「俺はまあ……ジェールに惚れたし……ここにいるつもりだ」
「ぜぇ……はぁ……」
「うわーい!!また家族が増えた!!ありがとー!!」
家族が増えた事でさらに喜び舞うビアラ……やはりこの子は悲しい顔より笑顔のほうが似合う。
「中々帰って来ないかと思ったら男とイチャラブですかー羨ましいですねー」
「へへっ、羨ましいの?」
「もう羨ましすぎますよーこっちなんかお預けずっとくらってるんですよーやっぱ淫乱痴女のほうがいいんですかねー」
「もうあんたが何を言っても負け惜しみにしか聞こえないから気が楽だわ」
「ぐぬぬ」
ここに向かいながら、私は考えていた事がある。
それは、私はこれからビアラの事をどうしたいかについてだ。
「ところでジェールさん。あなたの事ですからてっきりそのままエロエロ三昧になると思ってましたよ。あの猫みたいに」
「いやぁ……だってビアラに帰ってきてって命令されちゃったからね。帰ってくるしかないでしょ」
「え?」
男も手に入れた今、既にこの国を奪うという事はどうでも良くなってきている。
メルンがいれば、別に暗黒だろうが明緑だろうがそもそも魔界でなかろうが問題はない。
「心の底から受け入れられない命令は無視出来るのですよ?」
「それが無理なの。だって……」
だから私は……
「ビアラ、本当の娘のように思えるほど可愛くて仕方ないんだもの。一緒にいたいのよ!」
自分の娘のように思えるビアラと、これからも一緒に暮らしていく事に決めた。
「ビアラ様の足は普通の二本足なんですけどー」
「わかってるわよそれぐらい。あなたはビアラを娘の様に思ったことはないの?」
「あり過ぎてあなたに取られたくないだけですー」
「ああそういう事……」
それはジェリアも同じらしい……
「二人とも喧嘩はだめー!!」
「喧嘩じゃないですよビアラ様。私もジェールさんもビアラ様が可愛くて自分のものにしたいだけですよ」
「あうっ!か、かわいいだなんてそんな……てれちゃう〜!!」
「ふふ……どうメルン、シエラちゃん。私達の主は可愛いでしょ?」
「そうだな!」
「そうですね♪私もいつかこんな子供を……♪」
「ごほっ、ぐふっ……し、絞まってる!!」
「あ、ごめんね〜」
つまり……ジェリアとも、長い付き合いになるという事だろう。
「今日はいっぱい家族が増えたから歓迎会しようよ!!」
「えー私のときそんなのしてもらった覚えありませんよーずるいですよー」
「私もしてもらった記憶無いわよ?」
「あなたは侵入者だから当たり前ですよ。何言ってるんですか図々しい」
「そんなこと言ったらあんたもこの3人も侵入者でしょ!!」
「あ、ばれた」
「じゃあ遅くなったけどジェリアとジェールの歓迎会も一緒にやろうっ!」
「あーそれならいいですねーでは早速準備しましょうか。ジェールさんあの猫も毒で釣って働かせて下さい」
「わかったわ!というかあなたずっと猫って言ってるけどあのスフィンクスの名前は?」
「忘れました」
「……憐れね……」
「わたしはちゃんと知ってるけど……本人から聞いてね!」
「わかりましたっと。じゃあ行きますか!」
「……賑やかな家族だ……」
「ですね。でもそれも良いかも♪」
「ぜぇ……はぁ……」
これからの楽しい遺跡生活に胸を弾ませながら、私は『家族』達と笑いあっていたのだった。
砂漠の遺跡に住む、幼き王。
私はそんな王の敵対者なはずだった。
だけど……純粋無垢な笑みを浮かべる少女に、私は手が出せなかった。
それでも、成長したら手篭めにしてやろうと、彼女の近くにいた。
でも、結局出来そうもなかった。
彼女と共に暮らしてくうちに、情が芽生えていた。
母性から来る情だろうか、彼女の事を娘の如く思うようになっていた。
いつしか、本当の家族の様に思っていた。
だから私は、これからもずっと、彼女と暮らしていくだろう。
幼き王と、敵対者なはずの私は……
大切な家族として……ずっと一緒に……
「その家族に私も含めて下さいねー仲間外れは寂しいんで」
「……言われなくてもそのつもりよ」
「えっなんですかデレですかそんな普通に言われるとちょっと怖いですよ。男手に入れてどうにかなっちゃったんですか?」
「……やっぱあんたイラッとするわね……」
もちろんこんな奴も含めて、賑やかな家族皆で暮らしていくのだった。
私の目前に聳え立つ建造物。
砂漠に存在するそれは、砂漠の支配者たるファラオの眠る遺跡。
いや……近くにはオアシスがあり、砂漠にも関わらず木々が生えている……おそらくここのファラオは既に目覚めているだろう。
好都合だ。
「あそこが、私の王国となるのね……♪」
私はそのファラオを毒牙に掛け、新たなる支配者となる。
太陽が昇る事のない妖艶な暗黒な王国……この場所が私の手によりそう変わるのを、想像するだけで胸が高まる。
期待に胸を躍らせながら、私は素早く蛇体を動かし遺跡に近付いた。
「さて、早速ファラオちゃんに会いに……」
「待つのにゃそこのアポピス!!」
「……スフィンクスか……」
早速遺跡の内部に侵入しようとしたところで、後ろから声を掛けられた。
振り向くと……そこにいたのは、褐色にゃんこ……もとい、ファラオの守護者スフィンクスが私を鋭く睨んでいた。
「何をしに来たにゃ?」
「そんなの決まってるじゃない……この国を私の支配下にしにきたの」
「やっぱりにゃか……ファラオ様を御守りするため、私が貴様をふるもっふにするにゃ!!」
普段は不真面目系として知られるスフィンクスも私のような『王の天敵』相手には本気を出すようだ。
おそらく難解な問い掛けを行い、私の動きを封じてくるだろう。
「問題にゃ!私の名前はにゃんd」
「悪いけどあなたのお遊びに付き合う暇はないの……」
だが、所詮はスフィンクス。
「にゃ、にゃにを!?」
「かぷっ♪」
「にゃひん!!」
神の力を持つファラオの敵対者として生まれた私の敵では無い。
「ふふ……気分はどうかしら?」
「にゃにゃぁ……♪」
私は素早くスフィンクスに身体を巻き付け、首元に噛み付き神経毒を体内に混入させた。
「私の名前はジェール。さあ、貴女の主の名前を言ってごらんなさい」
「にゃあ……ジェールさまぁ♪」
「ふふ……ほほほっ!造作も無いわね!」
毒の効果で快楽に溺れ股下を濡らすこのスフィンクスは、もはや私のしもべ。
煮るなり焼くなり好きに出来るが、生憎私に拷問の趣味はない。
「さあ……男の元へ行き快楽を求めてきなさい!」
「にゃあ、行ってきますにゃ♪」
スフィンクスにそう命ずると、自身の欲を満たす為男の元へ向かった。
外では無くピラミッド内部を走り抜けて行ったので、既に男がいたようだ……うらやmげふんっ。
「さて、これで障害が一つ消えたし、遺跡にお邪魔しますか……」
これでもうスフィンクスは部屋に籠り二度と出てこないだろう。
私は堂々と正面から遺跡に侵入し、ファラオの元へ向かった。
………
……
…
「ファラオがいる部屋は何処?」
「こ、こちらですジェール様」
遺跡内部に入った後、スフィンクスが猛スピードで愛液を垂らしながら部屋に駆け抜けて行ったのを見掛け不審に思ったマミー共が私の行く手に塞がった。
その数は5体だったが……もちろん私を止める事など出来なかった。
「案内さえしてくれたら後はオナニーするのも男を襲いに行くのも自由にしてくれていいわ」
「あ、ありがとうございます♪」
5体とも私のしもべに変えた後、4体はふらふらとどこかに行ってしまったが1体だけその場で自慰を始めていた。
おそらくだがこの子以外は皆既に男がおり、この子だけ居なかったが故その場で自慰をしていたのだろう。
ちょっとだけ不憫に思えたが、そんな事は知った事じゃないので私はこの子にファラオの下までの案内を頼んだのだ。
「あとどれぐらいで着くのかしら……」
「じ、10分も歩けば辿り着くかと……」
ぽたぽたと愛液を垂らしながらも案内してくれるマミー。
メスの匂いが遺跡の通路に充満しているが、これぐらいファラオが目覚めた遺跡ではよくある事だろうから気にしてはいなかった。
だが、それは間違いだったらしい……
「こちらです……あうっ!?」
「ん?どうしたの?」
曲がり角を曲がったマミーが、突然呻いたかと思えば……その場で倒れ込んでしまった。
「マミーがやたら発情してるなと思えば侵入者か」
「何者……いや、ファラオの守護者と言えば……」
そして、曲がり角の向こうから聞こえてくる女の声……
影の形が狼のようになっている事や、ファラオの守護者という点を考えて、おそらく正体は褐色わんこ……もといアヌビスだろう。
スフィンクスよりは面倒な相手だが、所詮アヌビス。
マミーの呪いは多少厄介ではあるが、呪いが飛んでくる前に私の毒を流し込んで僕にしてやればいい。
だから私は、素早く曲がり角から飛び出して私を鋭く睨んでいるであろうアヌビスに目掛けて飛び付こうとして……
「アヌビス!貴女も私の配下にしてあげ……る……?」
「ん?なんか肌色悪いラミアだなー」
力無くボーっとした表情でこちらをジトーっと見ていたアヌビスという予想外な褐色わんこがいたせいで一瞬動きが止まってしまった。
「まあいいや。呪い喰らえー」
「あ、しまっひゃうっ!!」
その隙をつかれて、マミーの呪いをまともに受けてしまった。
「く、くそ……」
「あー思い出した。アホピスっていうファラオ様の天敵でしだっけ?」
「あ、アポピスよ!誰がアホだ!!」
アホなやり取りをしている間にも、呪いの効果で身体が火照ってきた……
「あ、あんた……私を侮辱する気?」
「あれー?動けるんですかー。すごいですねー。もっと強くやれば良かったなー」
「その抑揚のない喋り方が余計にいらっとするわ!」
だが、私自身の魔力が高いおかげか動けない程では無い。
だから、こいつに毒を流し込み発情しっぱなしの牝犬に変えてやろうかとずるずると近付いていたのだが……
「ところでアポピスさん。あなたなんでここに?まさかファラオ様を襲いにきたんですか?」
「その通りよ!」
「うわーじゃあ変態ですかー」
「……は?」
気になる一言をアヌビスが言い放ったので、私はまた動きを止めてしまった。
「は?って……ここのファラオ様がどんなお方か知らずに来たのですか?」
「そうだけど……別に旦那を求めるだけのメスとなり下がる予定の奴なんてどうでもいいからね」
「うわぁ……」
何故か本気で引かれてるのだが……どういう事だろうか?
「仕方ないですね。あなたが大人しくしているというのならファラオ様に会わせてあげますよ」
「……は?」
「会って自分がいかにアホな事を言っているアホピスなのか確認してみてくださいな」
「あ、アホ言うなと言ってるでしょうが!!」
疑問に思っていたら、わざわざ私をファラオの下まで案内してくれるらしい。
こいつと居ると無性に腹が立ってくるが、自ら案内してくれるならそれに越した事はない。
「で、どうします?」
「わかった。私は何もしないと約束するわ」
「じゃあついてきてください」
もちろん、何もしないのは嘘だ。
ファラオが目の前に来た瞬間、首元を噛んで毒を流し込む……そうすればもう怖いものはない。
「ふふふ……」
「どうしましたー?急に変な含み笑いなんかして……」
「な、なんでもないわよ!!さっさと案内しなさい!!」
「はいはいそんな焦らない焦らない」
「……」
思わず笑い声が出てしまったが、なんとか誤魔化しながらアヌビスについて行った。
……………………
「この部屋に居ます。くれぐれも入った瞬間襲おうとなんかしないでくださいよ?」
「しないわよ……なんてね!」
「あっ」
あの場から10分程移動し、ようやく辿り着いたらしい。
早速私の毒をプレゼントしてあげようと、アヌビスから離れるようにサッと部屋の中に入り、ファラオ目掛けて飛びかかろうとした。
だが、部屋の中にいた者は……
「ん?おばちゃんだれ?わたしに何か用?」
「……はえ?」
あまりにも予想外過ぎて、おもわず間抜けな声を出してしまった。
「えっと……貴女何?」
「わたし?わたしはこの遺跡のファラオのビアラ!おばちゃんは?」
「私はアポピスのジェール……」
「へー。おばちゃんアポピスなんだ!アポピスってもっと怖い怪物だと思ってたけど蛇さんなんだね!この子と一緒だね!」
そこには、たしかにファラオがいた。
「ところでジェールおばちゃんは何しに来たの?」
「えっ?あ、えっと……」
「そのおばちゃんはビアラ様とエッチな事をしたいらしいですよー」
「えーそうなの?」
「なっ違う!というかあんたはおばちゃん言うな!!」
だが……私が思ってたのと違った。
「えーだって純粋無垢な少女をエロエロに調教したいって言ったじゃないですかー」
「そんな事言ってないわよ!!というかこんな子供がいるだなんてこれっぽっちも思ってなかったわよ!」
「何言ってるんですかあなたも私も子供時代はあるのですよ?ファラオ様だって子供時代もありますよ」
「そりゃそうだけど……」
そこにいたファラオ、ビアラは……まだ子供だったのだ。
「なんか面白ーい!ジェールさんはジェリアと仲良しなんだね!」
「あ、ジェリアは私です。仲良しらしいですよ私達」
「ふ、ふざけないで!誰があんたなんかと!!」
魔物なので性についての知識はあるだろうけど……おそらくビアラは性交可能な年齢にはなっていないだろう。
「あーもうどうしよう……」
「流石に子供には手を出せませんか?」
「出したところであんたが止めるでしょ?」
「出す気あるんですかー。引きますわー」
そんな相手にどうすればいいかわからず、あたふたしていたのだが……
「ジェールさんどうしたらいいかわからないの?」
「へ?あ、うん……」
「だっだら〜……」
そんな様子を見てたビアラが……
『わたしと一緒にあそぼっ!!』
「はい!あ……」
わたしが困っているからと、王の力を乗せて私にそう命令してきた。
あたふたしていた私は心に隙があり、その言葉には逆らえなかった。
「しまった……」
「どうしたのジェールさん?一緒に遊ぼうよ!もちろんジェリアもね!」
「もちろんですよビアラ様。私とおばちゃんと一緒に遊びましょう」
「だからあんたはおばちゃん言うなって言ってるでしょ!!」
こうなってしまってはもうどうしようもなかった。
「何して遊びます?ジュールおばちゃんにヴァールと一緒に蛇踊りでも踊ってもらいます?」
「あ、面白そー!わたし見たい!!」
「へ、蛇踊りって何よ!!というかヴァールって誰!?」
「やだなぁさっきからずっとビアラ様の傍にいるじゃないですかー」
「な……まさかこのコブラの事なの!?このコブラと踊らないと駄目なの!?」
「うん!『踊って!』」
「ひうっ!わ、わかりました〜!」
私は無邪気なビアラの命令に為すがまま、疲れ果てるまで遊ぶ事になってしまったのだった……
…………
………
……
…
「ぜぇ……はぁ……」
「大丈夫ですかー?動けますー?」
「む、無理……」
数時間もずっとビアラやジェリアと遊び続ける事になってしまった私は、あまりものハードな遊びで疲れ果ててしまった。
「ま、毎日こんな事してるの?」
「いえ。2、3日置きぐらいですよ」
「……」
変な踊りをビアラのペットであるコブラと踊らされ、遺跡内を追いかけっこする破目になり、あげくジェリアと模擬戦闘させられたら体力なんて果ててしまう。
というかジェリアが思ったより強かった……命令されたチャンスにこいつをメス犬にしてやろうかと思ったら噛み付くどころか近付く事すらままならなかった。
まさか高濃度の魔力の塊を飛ばしたら杖で打ち返してくるアヌビスがいるだなんでこれっぽっちも思っていなかった……こいつも只者ではないという事だ。
おそらくまともにやり合っていたらこの国の支配者になるどころかジェリアに勝つ事も出来ず私はボロボロになっていただろう。
なお、遊び疲れたビアラはそのまま眠ってしまった。
子供らしく可愛い寝顔で、すやすやと寝息を立てながらだ……襲う気なぞ起きなかった。
「そろそろ私は警備の時間なので行きたいのですが、動けそうも無さそうなので空き部屋まで運んでってあげましょうか?」
「へ?」
地面にへたっている私を見兼ねたのか、ジェリアがそんな事を言ってきた。
「あ、別に嫌ならいいですよ。通路のど真ん中で寝ててもマミーが踏みつけるだけですからね」
「ちょ、ちょっと待った。私を追い出さなくていいの?」
てっきりこの後は砂漠に投げ捨てられるものだと思っていた私は、部屋に運ぶと言われ驚いていた。
「いやあ、最初はそうしようと思ってたんですけどね、ビアラ様があなたを気にいっちゃったんですよね」
「え……」
「だから、明日からは誰かさんの毒のせいで旦那とセックス三昧な猫の代わりにあなたにこの遺跡を護ってもらいますよ」
「なっ!?」
「ちなみに断ったら全力でマミーの呪いを掛けた後その尾を団子状に結んでオアシスに投げ込みます」
「ちょ」
何故かと思えば……どうやらビアラが私の事を気にいってくれたらしい。
そして、明日からあのスフィンクスの代わりに働けという事だ……
「……わかった。明日からこの遺跡を外敵から護ればいいのね?」
面倒だが、このアヌビスなら言葉通りの事をやりかねないので引き受ける事にした。
それに、近くに置いてもらえるならいくらでもビアラを引きずり降ろし王となるチャンスがあるだろう……
「変なこと考えないでくださいよ?しばらくは私の監視付きですからねー」
「えーっ!」
「なんですか不満でもあるのですか不満があるのはこっちですよ私の貴重な時間をあなたに使わないといけないんですからね文句言うのでしたら首輪でも付けて引き摺り回しますよ?」
「わ、わかったわよ……」
当分は無理そうだが、焦る事はない。
ビアラが子供の今は襲うのにも抵抗があるが、何年もすれば立派に普通のファラオになるのでやりやすくもなる。
随分と長い期間が必要になるが、たかが数年。その後永く続く私の国の準備期間と思えば他愛ない。
「それじゃあ運びますねー。あ、結構重いですね」
「うるさいわね!ラミア属なんだから仕方ないでしょ!!」
今はジェリアから受ける屈辱も受け入れよう。
ジェリアに両手で抱えられながら運ばれながらも、私の脳内ではこれからの事を考え続けていたのであった。
====================
「ふぁ〜……ふみゅぅ……」
ジェリアに部屋のベッドまで運ばれた後、結局疲れでそのまま寝てしまった私。
遺跡の中なので何時かまではわからないが、目が覚めた私は大きく伸びてから目を開けた。
「おはようございます」
「うわあっいたっ!?」
そしたら目の前には褐色わんこ……もといジェリアの顔面が目の前に広がっていた。
流石にビックリした私はそのまま飛び起きた……で、蛇体を伸ばし過ぎた結果天井に頭をぶつけてしまった。痛い。
「いったぁ……」
「よく眠れましたか?」
「目覚め以外は良かったわよ……」
痛みに堪えながらも、私は状況を確認する。
「なんであんたがここに……」
「いやぁ……逃げ出してないかな〜と。それにこれ以上マミーを使えなくされても困るので監視をしようかと」
「あ、そう……」
どうやらこいつは私の監視に来たらしい……
わからなくはないが、何故同じベッドの、しかも目の前に寝転びながら監視してるのか……精神的な嫌がらせだろうか?
「朝食を食べた後は昼食まで私と一緒に遺跡内の警備をしてもらいますよ」
「ええ、わかったわ」
「着替えはそこに置いといたので着替えたら部屋から出てきて下さい。まあほぼ丸出しのあなたは痴女なので気にしないかもしれませんが私の目に毒なので外で待ってます。5分で出て来て下さいね?」
「誰が痴女よ!まったく……」
こいつを物理的な意味で無性に襲いたくなってきたがグッと堪え、私は与えられた服に着替えた。
「ほら着替えたわよ!」
「丁度5分ですね。それでは食堂に行きましょうか。ついて来て下さい」
着替えた後、私はジェリアの後に着いて食堂に向かった。
そういえば昨日ここに侵入したときから何も食べてなかったのでお腹が空いている……お腹いっぱい食べれたらいいが、侵入者の私ではそうはいかないだろう……
なんて思ってたのだが……
「あ、おはよージェリアとジェール!」
「おはようございますビアラ様」
「お、おはよう……」
食堂に入ると、大勢のマミーと、にこやかな笑顔を浮かべているビアラが、沢山の料理と共にいた。
「ジェールはこれからもわたしの家で一緒に住んでくれるんだよね!」
「え……あ、うん……」
「やった!家族が増えた!!わーい!!これからもよろしくね!」
「え、あ、うん……よろしく……」
笑顔のまま私に話しかけてくるビアラ……家族が増えたと喜ぶビアラの姿に、大げさだなと思いながらも、私は少しだけ申し訳なく感じてしまった。
この先ビアラが成長してから私は毒を流し、この国の事を忘れさせる気なのに……幼い子供にこうも純粋な眼差しで家族だと言われてしまうと流石に罪悪感も芽生える。
「じゃあ皆揃ったしご飯にしよっ!」
「そうですね。あの猫はジェールのせいで部屋で旦那と籠りっぱなしでしょうし、食べましょうか」
「いただきまーす!!」
そして、一番大きな椅子に座って、口をいっぱいに開けながらご飯を食べ始めた。
「遠慮しないで良いですよ。むしろ遠慮なんかしたらビアラ様が悲しむうえに作ったマミーに失礼のでいっぱい食べて下さい」
「え、あ、はぁ……じゃあ遠慮なく……」
ちょっと戸惑ったが、遠慮無く食べていいなら食べる事にしよう。
「はぐはぐ……美味しいわね」
「ここら周辺の名物をふんだんに使ってるうえに元料理人のマミーに作らせてるから美味しいに決まってますよー」
「なるほどね……」
砂漠の遺跡で出る料理ってどんなものかと思えば……味もしっかり付いており中々美味しかった。
ジェリア曰く料理人が名物を使って作っているとか……納得の美味しさだ。
「このお肉なんか特に美味しいわ……」
「それ蛇肉ですよ」
「ぶーっ」
「冗談です」
「あ、あんたねー!!」
「大体蛇とラミアって別物なのだから問題無いんじゃないのですか?」
「そうだけど……なんかあんたに言われると嫌な気分になるわ……」
「心外です」
ちょっとした嫌がらせをしてくるジェリアにイラッとするが、普段一人でそこら辺の動物の肉を食べていた私にとって、大勢で食事するというのは初めての経験だった。
ジェリアのイラつく言動も含めてなんか楽しかった。
「今日もご飯おいしー!!」
「ありがとうございますビアラ様」
しかし……昨日私達と一緒にあれだけはしゃいだのにも関わらずビアラは元気いっぱいだ。
さすが子供、一晩寝ただけで全快といったところか……
「ジェールもおいしい?」
「え、うん。おいしい……」
「よかった!お口に合わなかったら大変だもんね!」
そんなビアラを見ていたら、私に気付いたのか美味しいか聞いてきた。
美味しいのでそう答えたら無垢な笑顔で良かったと返されてしまった……その眩しさにちょっと心が痛い。
「いっぱい食べてね!」
「はい、了解しました!」
「敬礼までしてますねアホピスなのに」
「アポピス!ホじゃなくてポよ!」
「あはははっ!でも本当に遠慮はしないでね!私達はもう家族なんだから!!」
やはり王の力には敵わないなと思いながらも、元からその気だったので私はいっぱい食べたのだった。
…………
………
……
…
「さて、今日の予定は終わりですが、何か質問は?」
「別にないわ。しいて聞くとしたらここのマミーの人数ぐらいだわね」
「いっぱいです」
「……」
今日一日特に何かが起きる事も無く、ずっとジェリアと二人で遺跡内を見回りしたり、ビアラの命令に付き合っていた。
「最初に会った時から思ってたけど、あんたアヌビスにしては適当ね」
「やだなぁ冗談に決まってるじゃないですかきちんとマミーの数ぐらい把握してますよ」
「ムカ……」
ビアラの命令の方はそう苦じゃない……むしろ頼み事レベルのものが大半なので助かる。
具体的に言えば「わたしと一緒にお菓子食べよう!」とか「ヴァールの代わりにわたしに巻き付いてみて!」とかの比較的疲れない事ばかりで、今日はまだ体力はあり余っていた。
まあ……ずっとこんな調子のジェリアと一緒だったので精神的には疲れたが。
「悪いですけど、まだ私はあなたを信用してはいないのでね」
「えっ」
ただ、こんなジェリアが一番油断ならない相手だと言う事がわかったのは大きいかもしれない。
「あなたは侵入者だった。まだあなたの心を折ったわけではないのでビアラ様を無力化しようとしてるかもしれない。そう思ってるだけですよ」
「あら嫌だ。信用されてないのね」
「ええ。なんとなくわかるのですよ。あなたはまだ諦めていないとね」
「……あんな子供に手を出せるわけないでしょ?今日だって密着したけど何もしなかったし」
「そうですねー。何かしようとしたらすぐさま呪いを掛けるつもりでしたが、そんな様子はなかったですからね。でも今は子供だから抵抗あってしないだけで、ビアラ様がご成長なさった時にガブっとするかもしれないですからねー」
「……」
このように、普段何も考えていないようでとても考えているのだ。
ずーっとボーっとした表情を浮かべながらも、全く付け入る隙が無い。
「沈黙という事は図星でしたか。では呪いを……」
「ちょっと待った!別にそういう意味で黙ってたわけじゃないわよ!」
「ではなんだというのです?」
「いや……あんた何も考えてないように見えて色々と考えてるのねと……」
「心外です」
種族的には私の方が強いと思うのだが……何故かジェリアには魔術も体術も敵いそうになかった。
「ま、大人しくしてるなら私からあなたに危害を加える事は無いのでご安心下さいな」
「人をおちょくるのは危害にカウントしないのね」
「何の話です?それより湯浴みに行きましょうか。ついて来て下さいよ」
「誤魔化したわね……まあいいわ」
様子を見れば見る程、大きな障害だとわかるジェリア。どうにかならないものか……
「というか湯浴みも出来るのねこの遺跡……」
「まあ旧魔王時代そのままでは無く現代にあわせて改築したりしてますからねー。ビアラ様には常に清潔でいてもらいたいですしね」
「なるほどね……」
まあ、こいつの弱点などもじっくりと探っていけばいい。
そう思いながら、私は湯浴みをする為にジェリアについていった……
====================
「ねえジェリア」
「なんです?あなたが私の名前を呼ぶなんて珍しい事もあるものですね」
「まあいいじゃない。それより聞きたい事があるのだけど……」
あれから数ヶ月が経過した。
最初の頃はビアラの命令に従うのも大変だったが、慣れたのか暴れ回る日でもベッドに入って即寝てしまうなんて事は無くなっていた。
「ビアラの事なんだけどさ……」
「わたしがどうかしたの?」
「あ、いや……やっぱり後で良いわ……」
「んー?ジェール変なのー」
「ジェールはいつも変ですよ。むしろ変でなければ病気になってますね」
「あんたはいつもいつも人をイラつかせるわね……」
その為かいろんな事を冷静に見られるようになり、今まで疑問にも思ってなかった事が唐突に不思議に思えてきた。
「ねえジェール、今日も一緒にあそぼっ!」
「もちろんいいわよ。今日は何して遊ぶ?」
「んーと、ジェールを言葉攻めして遊ぶー」
「……ジェリアを二人でくすぐらない?」
「さんせー。ジェリアがしたわたしの真似下手くそだからおしおき!」
「えーそれはないですよビアラ様ー」
それは……このビアラの事だ。
「さてと、それじゃあ拘束っと」
「はははは、捕まってたまるもんですかー」
「ジェリア、じっとして!」
「う……はい……」
「じゃあ今度こそジェリアの身体に巻き付いてっと……何時でもいいわよ?」
「よーし、こちょこちょこちょこちょ……」
「わふっ!?そ、そこだ、あ、わははははは!!」
「へーあんた脇が弱点なんだ……チロチロ……」
「ちょっ舐めないであははははははっ!!」
なんでこんな幼い子が一人で王を務めているのか……それが謎だった。
「ジェール、ジェリアの耳もチロチロしてみてよ!」
「ん?どれどれ……」
「や、やめうひゃうっ!!」
「……何これ面白いわね!」
「でしょ?普段ぶっきらぼうなジェリアがひゃうっとかキャインとか言うんだよ!」
「へぇ〜、いい事聞いちゃった♪」
「ビアラ様やめて下さーい」
こんな小さな子供が王だったなんて考え辛い……
だが、かといってファラオが生んだ子供かと言えば、この子の親の姿が全く見当たらないので疑問に感じる。
流石に他にファラオがいたら私が気付かないわけが無い。なのでこの遺跡にはビアラしかファラオはいない。
「そーれチロチロ〜」
「はうあっ!わふ、きゃいん!!」
「あっはははは!!本当にキャインって言ったわね!」
「ゔ〜」
「あ、ジェリアが怒った」
ならば……この子はなんだろうか?
可能性はとてつもなく低いけど……遥か古代の王だったというのだろうか?
「肉球攻めをくらえー」
「ひゃんっ!私の胸なんか触って何するのよ!!」
「お返しだー。尻尾の先も甘噛みしてやるー」
「やめひゃいんっ!!」
「あはは〜!ジェールは尻尾の先が弱いんだね!」
ジェリアはそれを知っているかもしれないので聞こうとしたのだが……ビアラの前では聞き辛かった。
「く……この!」
「きゃわう!やったなー」
「ひゃあっ!このお!」
「なんか二人ともおっぱい触ったりしてエッチな事やってるみたい……」
だから今はビアラと遊んで、ビアラが疲れて寝てからジェリアから聞き出す事にしたのだった。
何故か私はこの頃自然とビアラの命令を聞き入れるようになっていたが、その事に自分ではほとんど意識出来ずにいた……
…………
………
……
…
「……それで、どこに向かうつもりなの?」
「まあ黙ってついて来てくださいよ」
ビアラが遊び疲れて眠ったので、私は早速ジェリアに疑問に思った事を聞こうとしたのだが、その前にジェリアから出掛けないかと誘われた。
まあ丁度良いかと思い私は誘いに乗り、久しぶりに遺跡の外へと出歩いたのだった。
「あれ?何か灯りが……」
「ビアラ様の魔力のおかげで規模は小さいですがここは明緑魔界になってますからねー。あのように集落が形成されてるんですよ」
「へぇ……知らなかったわ」
ジェリアと歩いていたら、暗い砂漠に灯りと建物らしき影が見えた。
どうやらビアラが作りだしたオアシスに住みついた人達の集落らしかった。
外周以外の遠出で、しかも集落に行くのは初めてなので、少し心が弾む。
「事後確認になっちゃいましたが、あなたお酒飲めます?」
「え、ええ……あまり強すぎるのは無理でしょうけど飲めるわよ。もしかして酒屋にでも行くわけ?」
「はい。正確には行きつけのバーですけどね。そこでなら落ち着いて話も出来るでしょう」
「へぇ〜……」
どうやらジェリア行きつけのバーに向かっているらしい。
そんなに大きくない集落にバーがある事自体にも驚いたが……アヌビスが遺跡から少し離れた集落に行きつけの店がある事のほうが驚いた。
遺跡の守護者であるアヌビスが、どうして町に行くような事があるのだろうかと……
「ほらこちらですよ」
「あ、ちょっと待ちなさいよ!」
集落に辿り着いた後、迷う事無く目的地まで早足で歩くジェリア。
初めて来た場所なのでもう少しゆっくり見て回りたいのだが、はぐれると困るので急いでついて行く。
「結構人も魔物も多いのね……規模も町のレベルはあるわ」
「そうですね。学者や冒険家などがギルタブリルや他の魔物に襲われて夫婦になった後、ここに住み着いたってのが多いですね。後は流れ者や砂漠系魔物娘好きなんかが住んでます。施設も結構幅広く揃ってますから人も自然と増えて行くのですよ」
「なるほどね〜……」
周りを見渡すだけでも、食品を売っている店や薬屋、飲食店に病院どころか娯楽まで揃っているのがわかる。
歩いている人も人間やギルタブリルやマミー、あからさまにここら辺出身ではなさそうなミノタウロスやゴブリンといった魔物も数多くいた。
「さて、着きましたよー。早速入りましょうか」
しばらく町中を進み、少し裏道を進んだところにあった店が目的のバーだったらしい。
手慣れた手つきで扉を押し開け、何の遠慮も無しにジェリアは入って行ったので、私もジェリアと同じように店に入った。
「いらっしゃいませ……ああ、ジェリアか」
「やあセネル。今日は私以外にもいるぞ」
「ん?ああ、以前言っていたアポピスか。はじめまして、店長のセネルです」
「はじめまして。ジェールです」
小さな店の中を見渡すと……男が一人だけカウンターに立っているだけだった。
内装の面で見れば、落ち着いた雰囲気を醸しだし綺麗だという印象を受けた。
「さて、ご注文は?」
「ジェールさんにはオススメを。私は前の続きからで」
「はいよ」
席に座り注文したジェリア。
私にオススメを、ジェリア自身は前の続きと注文した……
「何?あんたこのお店のお酒全部制覇目指してるとか?」
「そうですよー。そうすればセネルは遺跡に住んでくれるって言うんでねー」
「……は?」
行きつけというぐらいだからもしかしたらメニュー全制覇でも目指しているのかと思ったら……予想を遥か斜め上を行く回答が飛んできた。
「え、何?もしかしてあんた店主さんに惚れてるの?」
「そうですよー既に告白済みなのでジェールさんにはあげないですよ」
「別に私は狙ってないわよ。いい男だとは思うけど……それにしても意外ね。あまり男に興味が無いと思ってたわ。精の匂いもしないしね」
「心外ですよ。これでも魔物ですからね。全制覇したらビアラ様からお休み貰って1週間ぐらいはめっぱなしにしてもらう予定ですから」
「あっそう」
どうやら店主のセネルに惚れているらしい……
普段から男の話とか全くと言っていい程しないので、もしかしたら男にさほど興味が無いのかと思っていたが、魔物らしく立派に恋をしていたようだ。
「ここでお店を始めたら思った以上に上手くいったせいで離れたくないとか言いだしましたからね。ならばと条件をつけてもらったのですよ」
「ふーん……ねえ店主さん、本当なの?」
「ええ、本当ですよ。全部のお酒を飲んでくれたら遺跡から通う事にしますよとジェリアに申しました。このお店から離れる気は全く無いので、本気ならばそれぐらいやってみなとね」
「へぇ〜……」
たいして厳しい条件でもないと思うが、それだけお酒が好きな人なのだろうか。
「人間だった時からお酒が弱かったくせにその日から本気でメニューの上から全種類飲み始めましたからね。1年以上かけてようやく半分ってところですから後どれぐらい掛かるのでしょうね」
「1回に3種類前後しか飲めないのに新メニューあまり増やさないでくださいよー余計時間掛かるじゃないですかー」
「そんな事言われてもこっちはお店だからね。新メニューも考えないとやっていけないよ」
どうやらジェリアは人間だった時からあまりお酒は強くなかったらしい。
それなのにこんな挑戦をしているとは……本気でセネルの事が好きなんだろうってちょっと待て。
「人間……だった時?あんた元々人間だったの!?」
「あーそういえば言った事無かったですねー。そうです私は2年程前にビアラ様にアヌビスに変えられた人間ですよ」
さらっと言われたから最初流しそうになったけど……ジェリアは元人間だったらしい。
たしかにファラオには人間をアヌビスに変える事も出来ると言うが……どおりでアヌビスっぽくないと思った。
「というかもっと言っちゃえば私はあなた達魔物の敵である勇者でしたよ」
「は!?あーでもそれで納得出来たわ……だからあんたあんなに強いのね」
更には元勇者だったとの事。
たしかに普通のアヌビスにしては魔力も高く感じたし、私が放った魔力の塊を跳ね返すだなんて上位魔物でもそう簡単に出来る事じゃない事を易々とやってのけるし、アポピスである私よりも格段に強いとは思っていたが……それならば納得できる。
「そうそう、急にここら周辺に緑が生い茂ったので調査してたんですけどねー。明るいけど魔界だってわかったのでとりあえず発生源となる魔物をセネルと二人で討ち倒そうとしたんですよー」
「本当に!?というか店主さんもジェリアと……」
「僕はジェリアの幼馴染み兼部下の兵士でしたけどね。それに、一緒に来たはいいのですが怖くなってしまいまして……」
「この人この集落より遺跡側に行こうとしなかったんですよー。仕方ないので私一人で行ったんですけどーあなたと同じく子供には手を出せませんでしたねー」
「そうなんだ……」
勇者としてビアラを討伐しにきたのはいいが、パートナーはへたれてしまい、それでもどうにか魔界の発生源に辿り着いたは良いけど、子供のビアラには手を出せず……そのままアヌビスに変えられたという事か。
「意外な過去だったわ……」
「そうですかね?それより何か聞きたい事があったんじゃないんですか?私の事よりそっちの話すればいいじゃないですかー」
「いやまあそうだけど……今の話を聞いたらあんたに聞いてわかるか微妙になってきたからな〜」
ジェリアの過去に驚いていたら、そのジェリアに聞きたい事があったのではないかとつっこまれた。
たしかにビアラの事を聞きたかったのだが……ファラオとしてビアラが眠る時から居たのではなく新参者のこいつに果たしてわかるのか……
「どうせビアラ様がどうしてあんな子供なのに一人でいるのかとか聞きたいのではないんですか?それなら知ってますよー」
「え、そうなの?だったら教えてくれないかしら?」
と思ったら、一番知りたい部分は知っているようなので聞く事にした。
「実はビアラ様は正真正銘旧時代でのあの国最後の王なんですよ」
「あんな子供なのに?」
「はい。先代の王が病で死に、他に後継ぎが居なかったのでたった5歳で王の座に就いたらしいですよ」
「なるほど……病か……」
どうやら本当にあの歳で王だったらしい。
先代が病で早死した事で、何も知らないはずのビアラが王になったという事か……
「ですがまあビアラ様は子供。後継ぎとして学んでいたからといって実際に政策なんか出来るわけがありません。なので大臣達が頑張ってたのですが、アホだったためそう上手くいきませんでした」
「アホって……それで国は滅んでしまったわけ?」
「そういう事です。政策が上手くいかなかったため他国に侵略されたうえ、当時はただ凶悪だった魔物達の手によって他国もろとも全滅したようです。そして、生き残った数名でビアラ様をファラオとして眠りにつかせたらしいですよ」
「なるほどね……」
だが、結局子供のビアラでは政策など出来ず、代わりの者達が頑張ったが駄目で、他国に侵略されたうえに追い打ちのように魔物に攻められ滅んだらしい。
「簡単にいえばそういう事です。もっと複雑な事情も絡んできますが、どうせ言ってもあなたに理解できる気がしないのでやめときますね」
「またあんたは人をバカにして……でもまあいいわ。知りたかったことの最低限はわかったしね」
ビアラみたいな子供がなんで一人でいるのかと思ったら……そんな理由だったとは……
ファラオを狩る側の私が言うのもなんだが、少し可哀想だった。
「あなたは気付かなかったかもしれないですが、ビアラ様は家族が増える事を大いに喜びます」
「あー……たしかにかなり喜んでいたわね」
「それは、早いうちから彼女が家族というものを失っているからです。実の家族も、民という名の家族も、幼い頃に失っているからです。そんな彼女は家族が増えたら嬉しくなるのですよ」
「……」
私が遺跡に住むと言った時、たしかにあの子は大喜びしていた。
マミーも大勢いるのだから大げさだなとは思ったけど……そういう背景があったのか……
「さて、聞きたかった事はそれだけですか?」
「まあね……それにしてもあんた詳しいわね。勇者として色々と調べてたの?」
「まあそれもありますが、将来的にビアラ様を亡き者にしようと色々調べたのもありますね」
「…………はえ?」
一応知りたい事は知れたので、もういいやと思いなんとなく口にした言葉に、予想外の返答が返ってきた。
「そりゃあ私は魔物を滅ぼし平和を築きあげようとしていた勇者ですからね。最初はビアラ様の命令を聞きながらも内心ではアヌビスになってでも信用を得てから殺そうと考えてましたよ」
「ここでお店を始めて少ししてからアヌビスになったジェリアを見た時は驚きましたが、その時に成長してからファラオを倒すと聞いた時はもっと驚きましたね。自分を犠牲にしてまで倒そうだなんて凄い事をする人だと」
「そう、だからマミーや猫の行動やビアラ様の事をいっぱい調べてたんですよ。いつかビアラ様をこの手に掛けてやろうと……あなたみたいにね」
「な、何を言って……」
「あなた未だに少しはビアラ様が成長したら一人のメスにする気ありますよね。誤魔化しても無駄ですよ。私だって同じように思ってたのでわかりますから。まあ命を奪う分私のほうが酷いですけどねー」
「……」
妙に私の計画に感付いたりしてると思ったが……まさか同じような事を考えてた事があったとは……
「それで……あんたはもうビアラを殺そうとか考えてないの?」
「ええ全く。考えてたら最初のときにあなたに協力してますよ」
「そ、それもそうね……」
「それに、それはあなた自身も思ってる事じゃないんですかね。段々と今の立場を受け入れてませんか?」
「……」
「ビアラ様の笑顔を見るうちに、そんな事を考えてる自分が嫌になってくるんですよ。あの無垢な笑顔を壊したく無くなってくる、そうじゃありませんか?」
「……」
そんな訳が無い……だなんて言えなかった。
日が経つにつれ、段々とビアラの事が愛おしく感じるようになっている自分がいるのは事実だった。
こんな娘がいたら楽しいだろうなと、思っていないわけではない。
あの子に噛み付きこの国を支配する……その考えに疑問を持ち始めている自分がいた。
でも……別に諦めたわけではない。
いつかこいつを出し抜いて、ビアラの命令が出る前に無力化する……今のところはその気持ちのほうが強い……はずだ。
「まあ仮に思ってなくてもその時は私があなたを叩きのめしたうえ結んだ状態で水の中に投げ込みますがね」
「ひっ……」
「こらこら、ジェールさんが引いてますよ。そういうシャレにならない冗談はやめた方がいいかと」
「この人いちいち反応が面白いんでついからかってしまうんですよー」
「こ、このー!!」
まあ出し抜くのは難しいかなと思いながら、私は酔い潰れる寸前まで飲み明かしたのであった。
====================
「ジェール、ヴァール知らない?」
「さっきビアラのベッドの下に潜ってたのを見たわよ?」
「本当?じゃあちょっと見てくるね」
それからさらに数ヶ月経ったある日の事。
私はいつものように警備をしながらビアラの相手をしていた。
「あなたが確認してあげたら良かったのではないですかね?」
「それぐらい自分でやらないと駄目ファラオになっちゃうでしょ?」
「まあそうですが……あなたは駄目にするのが目的では無いのですか?」
「あ……ま、まあ私の毒があればどんな相手でもイチコロだから気にする必要はないわよ!」
「ほぉ……それは恐いですねー」
もちろん未だ私を監視し続けているジェリアも一緒にだ。
まあ腹の内は知られているし、当分監視が外れるなんて思っては無いけど……なんだかんだ話し相手にもなってくれるのでこいつがいても嫌じゃなくなっている気がしないでもない。
「淫乱痴女の毒で淫乱痴女が移ったらセネルに嫌われるかもしれないので私には毒盛らないで下さいよ」
「……あんた本当に私を馬鹿にするの好きね……」
「いちいち面白い反応するからついからかいたくなるんですよー。これは私がアヌビスになる前どころか生を受けた時からなので今更変えようがないです」
「でしょうね……」
まあ……しょっちゅうイラッとするのは変わらないが。
「ジェールが言ってた通りベッドの下にいた。そしてぐっすり寝てた」
「じゃあそのまま寝かせておきましょう。起こすのもかわいそうだしね」
「そうだねー。じゃあ今日はマミーの誰かも呼んで遊ぼうよ!」
「わかりましたじゃあ誰か適当に呼んできます」
とまあ、いつものようにビアラやジェリア達と遊ぼうとしていた、その時だった。
「た、大変です!!侵入者がやってきました!!」
「なっ!?」
突然マミーが普段絶対に出さない速さでこっちに向かってきたと思ったら……侵入者の知らせに来たようだ。
「相手はどんな人ですか?またアホピスですか?」
「いえ、相手は勇者パーティーです。男2人と女1人の3人パーティーなのを確認してます。それとそれを言うならアポピスですよジェリア様」
「ふ〜む……ですか……」
どうやらかつてのジェリアみたいに魔物を討伐しに勇者が来たらしい。
しかもジェリアと違い複数で……少し厄介かもしれない。
「こ、こわいよ……」
「ん?どうしたのビアラ?」
「勇者怖い……家族を皆殺しちゃうもん……」
「ビアラ……」
とりあえずどうしようかと考えていたら、私の腕をビアラがぎゅっと握ってきた。
どうしたのかと思ってビアラを見たら……恐怖で震えていた。
「そうですね勇者というのは魔物は悪だと信じて何もしてない魔物をばっさばっさと斬りつける化物ですからねー」
「……」
「ん?なんですかその眼は?私はここではそんな事してませんよ嫌だなー」
「ここでは、ね……」
「……ええ。『私は』ですけどね……」
「?」
もしかしたら勇者だったジェリアが何かしたのかと思ったけど……違うようだ。
「ジェリアが来るより前に……元々いたアヌビスやマミー数人が勇者に殺されちゃってたんだ……」
「え……」
「まだわたしの目が覚めるより前の事だったらしいんだけど……護ってくれていたアヌビスが居ない理由をマミーの一人に聞いたらそう言われた……」
「そのアヌビスも同士討ちでマミーの呪いを掛けたおかげでビアラ様自身に危害は無かったそうですよ。アヌビスの鑑ですね」
どうやら、ジェリアよりも前に一度侵入してきた勇者がおり、結果数名の犠牲者が出ていたようだ。
「もう嫌だ……これ以上家族を失うのは嫌だ!」
「……」
「あんまりハッキリと覚えてないけど……おばちゃんやおじちゃん達が悲鳴を上げながら逃げて、剣や槍を持った人達に殺されてるのを覚えてる……もうあんなのは見たくないもん!!」
「ビアラ……」
更には……昔人間の王だった時に見た記憶も多少なり残っていて、それがトラウマになっているらしい……
こんな子供なのに、とても辛い記憶だ……
「……ジェリア……」
「……なんでしょうか?」
「私が勇者達を倒してくるから、何かあった時はビアラをお願いね」
「あなたに言われなくてもわかってますよ。それと、何かないようにお願いしますね。何かあったらあなたに呪いを掛けて水に沈めますから」
「ええ……」
そんな想い、もう二度とさせてたまるものか。
そう思った私は、勇者達を撃退すべく単身向かったのだった。
「ジェール……」
「ん?何ビアラ?」
「……絶対、帰ってきてね!!」
「……もちろん。心配しないで待ってなさい!」
出て行く直前に、ビアラから声を掛けられ、それに返答しながら……
…………
………
……
…
「ここに本当にファラオなんかいるのか?ファラオどころかスフィンクスすら見なかったぜ?」
「マミーが1体いただけですね。そのマミーにも逃げられちゃいましたが……」
「きっといますよ。魔力が張り巡らされてますから、マミー1体だけって事はないと思います」
気配を探りながら勇者達を探す事数分、呑気に喋りながら遺跡内を歩いている勇者一行を発見した。
装備品からして賢そうな勇者を筆頭に女僧侶と剣士といったところか。
マミー達はジェリアの命令で全員奥まで退避してる為、今遺跡内は最奥部以外は無人の状態だ。
トラップ等も中心になるにつれきつくなる様になっているからか、勇者達はもう真ん中辺りまで進んでいた。
「なんかここまでスムーズだと大きな罠がありそうでちょっと怖いな……」
「考え過ぎですよ。ここまでくるまでにもいくつか罠がありましたがどれもたいした事無かったじゃありませんか」
「勇者トーゴ様がいれば何も怖くありませんね!」
「くっつき過ぎですよシエラ。腕を掴まれたらあなたを護るのが大変になるじゃないですか」
「あ、ごめんなさい!」
「けっイチャイチャしやがって……」
やつらに見つからないように監視する……
どうやら女は勇者の事を好いてるようで、勇者自体も満更でもない様子だ。
これなら……二人はすぐに無力化可能だろう。そうとわかれば早速行動に移る事にした。
「さあ、気を引き締めて……」
「はっ!?勇者様危ない!!」
「なっなんだ!?」
まず私は魔力を球状に固め、やつらの足下に目掛けて飛ばした。
「ごほっごほっ、いったいどうなってやがる!?」
「何も見えない!!皆無事ですか!!」
「何者かが私達に攻撃を仕掛け……はっ!?」
脹れあがる砂煙に身を隠しながら、私は勇者一行の真上まで移動して……
「き、きゃやあああああああああああん♪」
「な、ど、どうした!?何があった!?」
「くそっ!何者だ!!堂々と出てこい!!」
女僧侶の真後ろに跳び下りて、何かされるよりも前に首に噛み付いた。
「ふふふ……そんなに慌てふためく事無いじゃない……」
「なっ!?アポピスだと!?」
「なんでそんなものがこんなところに……!?」
「こっちの事情は気にしなくていいわ。それよりぼーっとしてていいの?」
「はっ!そうだ!!おいシエラ、大丈夫か!!」
「……あは♪」
「おいシエラ!!しっかりしろ……?」
「ん?なんかシルエットに違和感が……」
もちろん、噛み付いた時に毒も流し込んでいる。
「あは……あはは……トーゴぉ♪」
「シエ……ラ?」
私に噛み付かれ、毒を流し込まれた人間は……
「トーゴ♪ファラオなんてどうでもいいからエッチしましょ♪」
「なっ!?し、シエラその身体……」
「えへへっアポピス様に貰ったの♪これでもうトーゴは私から離れられないわよ♪」
「う、うわあああああああっ!!」
「逃げちゃダーメ♪巻き付いて動けないようにしちゃうわよ♪」
私の忠実なしもべ、ラミアとなるのだ。
「く……シエラ……」
「あら?私に巻きつかれただけでこんなにおちんちん大きくしちゃって……トーゴも待ちきれないのね!じゃあ挿れちゃうね♪」
「やめっうああっ!!」
「ひゃう♪トーゴが入ってくるぅ♪」
女僧侶は大好きな勇者に早速手に入れた蛇体で巻き付いて、無意識に胸を押しあてながら興奮で硬くなった男性器を露出させ、自分の膣に挿入し、腰を振り始めた。
もうこれであの二人は私に向かってくる事はないだろう。
「さて、あの子達は仲良くエッチな事をしてる事だし、あとは貴方だけね」
「くそ……よくもシエラを!!俺一人だけでも貴様らを倒してやる!!」
「あなたに出来るかしらね?奇跡的に私を倒せてもまだアヌビスだって残ってるのだけど」
「ふん!皆纏めてやってやらあ!!」
「あら威勢のいい事ね。そういう男は好きよ」
これで、残る相手はこの剣士ただ一人だ。
「このっ!」
「あら。当たりっこないわよそんな大振り」
「くそっ!こんな化物がいるなんて聞いてねえぞ!!」
性臭を撒き散らしてる二人をよそに、私は剣士と闘い始めた。
ファラオ討伐パーティーなのでどれぐらい強いかと思ったら……ジェリアの足下にも及ばないよ程度のようだ。
「はぁ……くそ……」
「あらもう終わり?それじゃあ今度はこちらから行くわね♪」
剣士の振う剣を軽々とかわし続けていたら、体力が消耗したようで息を切らし始めた。
それもそうだろう……ここにはビアラやマミー達の魔力が充満している。明緑魔界と言えど魔界、その中心部なのだ。普通の人間が長々と耐えられるものではない。
「ていっ♪」
「くっ!剣が……」
「もう武器は無いの?降参する?」
「だれが降参なんか……!!」
そんな剣士の手に持った剣を尾の先で弾き飛ばし、武器を無くす。
それでもまだ力強くこちらを睨む剣士……その勇ましさに惚れてしまいそうだ。
「あら……じゃあ……」
「く……何をする気だ……」
「何って、そうね……」
だから私は、ゆっくりと近付くふりをして……
「シエラちゃんと同じ事かな♪」
「なっくあっ!!」
一気に飛びかかり、身体を拘束しながら剣士の首に噛み付いて毒を大量に注いだ。
「あ……ああ……」
「ふふ……気分はどう?」
もちろんこの毒は男性相手にも効果は出る。
ラミアになったりする事は無いが……魔物や女性に流し込んだ時と同じように快楽に忠実になる。
しかも剣士には、今まで生きてきた中で一番たっぷりと注いであげた。
「そういえばあなたお名前は?」
「め、メルン……」
「そう、メルンね……」
そうなった以上、もう彼は人間では無い。
「さあメルン……私の相手をしてもらうわよ」
「は、はい……」
強い精の匂いを放つ、一匹のインキュバスとなるのだ。
「ふふ……立派なモノを持ってるのね♪早速挿れちゃうわね」
「あ、ぐ、うぅ……」
「手で触っただけなのに気持ち良いのね……そんなんじゃ我慢なんか出来ないわよ?しなくていいけどね♪」
そんなものが目の前にあって、我慢なんか出来る筈が無い。
私は剣士……メルンのガチガチになったペニスを出し、左手で添えて……
「ほーら、おまんこに入って行くわよ……んっ♪」
「はぁ……ふぅぅ……」
右手で自身の秘所を開きながら、ゆっくりとペニスを挿入した。
「うっ!!ああああっ……!!」
「えっ?きゃっ♪もう射精しちゃったのね♪」
初めて挿入したペニスの感覚を感じるよりも早く、私のナカに熱い迸りを感じた。
それだけ私の膣が気持ち良かったというのだろう……なんだか女として嬉しく感じる。
「でも、まだ私は全然気持ち良くなってないからもっとシてもらうわよ。かぷっ♪」
「はうあっ!!」
だが、それと気持ち良くなってない事は別である。
なので、私は再び毒を注ぎ、元気になってもらう事にした。
「ああ……すごぃ……」
「あはっ♪すぐ大きくなったわね。気持ち良かった?」
「う、うん……」
ペロッと噛み痕を舐めながら口を離してみると、さっき射精したばかりだというのにもうペニスは大きくなってきた。
私の膣を押し広げながら膨らんでくさまに、私は満足した。
「じゃあ動いてあげる。今度は勝手にイかないでよ?」
「あ、ああ……うぅっ!」
今度こそと思い私は腰を押し付け、ペニスを膣の最奥まで挿入した。
「あはっ♪き、気持ちいいっ!メルンはどう?」
「あっ、はっ、はっ、うあっ」
「気持ち良すぎて声も出ないのね♪」
そのまま激しく腰を動かし始めた私。
ゴリゴリと私の膣を削るメルンのペニスの感覚に病みつきになってしまいそうだ。
メルンも気持ち良さ過ぎてもう喘ぎ声しか出ていない。
「こんなのはどうかしら」
「あうっ、んっ!」
「ふふ……じゅる、ちゅ、くちゅ……」
そんな喘ぎしか出なくなった口に、私は唇を被せた。
長い舌をメルンの口に侵入させ、メルンの舌に絡ませる。
舌を器用に動かしてメルンの舌に巻き付き、まるでペニスをフェラするかのように扱く。
その動きが気持ち良いようで、目をトロンとさせ為すがままにされている。
「ちゅぷ……ふふ、またすぐにイッちゃいそうね♪」
「ああっ、も、もう……」
「あとちょっとだけ我慢して。私もイキそうだから♪」
名残惜しいが、少し息苦しくなってきたので唇を離した……舌と舌に銀色の橋が掛かり、重力に従って私のそこそこ豊満な胸に落ちた。
メルンのペニスはもう限界のようで、私の膣内で大きく震えているのを感じる。
私は自身のGスポットに当たるよう調節しながら腰の動きを更に早くした。
「あふ、も、もうだ、で、射精るっ!!」
「い、いいわっ、い、いっぱいだして♪」
その結果、私も気持ちが高鳴り、快感が背筋を波打ち……
「う、うああああああっ!!」
「きゃっ♪いく、イックうううううううっ♪」
ビクッビクッと全身が震えながら、私はイッた。
それと同時に、メルンは私の膣奥で熱い精液を放出した。
「あへっ、あぁ……」
イッた事で少し力が抜けた私。
ほんの少しだけメルンの拘束が緩んでしまったようだ。
「ふぅ〜……ふぅぅ……」
「あはぁ……ん?どうしたの……?」
メルンは私の身体から両手を出して……
「ふぅぅっ!じゅるるっ!!」
「ひゃっ!?ちょ、ちょっあんっ!!」
左腕を私の背中に回し、右手で私の左胸を揉み始めた。
そして、余った右胸をしゃぶり始めた。
力強く揉みしだき、乳首に吸いついてくるメルン……
「むふぅ……」
「あふっ、や、やめああああっ!」
「ふぁ、は、は、はっ!」
それどころか、自ら腰を振り始めた。
おそらく私の毒によってインキュバスになったメルンは、快楽を貪る事に夢中なのだろう。
突然攻められた事で、私は為すがままにされる事しか出来なかった。
「あっ、ああっ、き、ふぁっ、あっ♪」
「ふぅ……はぁ……うっ」
ゴリゴリと感じる部分を的確に突いてくるメルンの亀頭。
「あはっ♪おまん、こが、メルン専用になっちゃうぅぅ♪」
「ふっ、ふっ、はっ……」
私はもう、ずっとイキ続けていた。
「ふっ、はっ、くぅっ!!」
「ああっ♪また、まただしゅのねっ♪」
そんな中、一際大きく膨らんだメルンのペニス……また射精をする合図だ。
「きてっ、きてぇ♪」
「ふっくうううぅぅぅうっ!!」
私もメルンの腰の動きにあわせ、一際大きく腰を引いて、互いにぶつけ合った瞬間……
「き、きたあああああああああっ♪」
子宮口に亀頭が触れたと同時に、今まで以上に量も勢いもある射精が始まった。
「ふあっ、くうぅっ、はっ!!」
「ひあっ!?で、出てるのに、イッてるのに動くのはんそくぅ!!」
どくどくと射精しながらも、激しく腰を動かすメルン。
もう私は……この快楽に溺れる事以外に何も考えられなかった。
もう、ファラオなんてどうでも……
「ジェール、今日はわたしと一緒におどろっ!」
「ジェールってお肉が好きなんだね。わたしはなんでも大好きだよ!」
「あははっ!ジェールとジェリアってほんっとーに仲良しだよね!」
「遠慮はしないでね。私達はもう家族なんだから!!」
「ジェール…………絶対、帰ってきてね!」
「ふぅ……ふぅ……ん?」
「ゴメンね……ちょっと止めてくれるかな?主の命令を思い出しちゃったからさ……主のもとに帰らないと……」
……どうでもいいだなんて、思う事は出来なかった。
快感漬けになっている私の脳裏に、ビアラの笑顔と言葉が響いてきたのだった。
「ん……いっぱい出したわね……」
「あ、ああ……すまない……」
「いいのよ。それだけ私を気にいってくれたのでしょ?女として嬉しいわ♪」
「そ、そうか……」
まだまだシ足りなさそうなメルンのペニスを膣から引き抜いた。
栓が無くなった事により、私の黒紫色の肌を白濁液が流れ落ちる……その様子に性欲が鎌首をあげたが、なんとか舐め取るだけで済ませた。
「ふぅ……それじゃあついて来て。もうファラオに手出ししないとは思うけど、何かしたらタダじゃすまないからね」
「あ、うん……大丈夫、もう俺はそんな気はない」
「シエラちゃん達も一旦止めてついて来て。ビアラに紹介したいから」
「はい、ジェール様♪」
「はぁ……ハァ……」
服を着直した後、私は3人に付いてくるよう指示をした。
メルンはもう私の虜だし、シエラも私に忠誠を誓っているだろうしそもそも魔物だから問題はない。
トーゴは何とも言えないが、おそらくはシエラとのエッチの事しか既に頭にないだろう……たとえそうでなくても、もう疲れてぐったりしているのでマミーでもどうにかできるだろう。
「じゃあ行くわよ。離れないようにね」
私は、メルンに尾の先を巻き付けながらもしっかりとビアラの元に向かったのだった……
…………
………
……
…
「良かった〜!ジェールが無事で本当に良かった!!」
「心配させてごめんね。私なら大丈夫!この通り新たな家族にしてきたわ♪」
ビアラがいる部屋に戻ってきて早々、私に抱きついてきたビアラ。
安心で綻んだ笑顔がなんとも可愛らしい。
「えっ!?家族になってくれるの!?」
「ジェール様の主ならば私にとっても主ですので……♪」
「俺はまあ……ジェールに惚れたし……ここにいるつもりだ」
「ぜぇ……はぁ……」
「うわーい!!また家族が増えた!!ありがとー!!」
家族が増えた事でさらに喜び舞うビアラ……やはりこの子は悲しい顔より笑顔のほうが似合う。
「中々帰って来ないかと思ったら男とイチャラブですかー羨ましいですねー」
「へへっ、羨ましいの?」
「もう羨ましすぎますよーこっちなんかお預けずっとくらってるんですよーやっぱ淫乱痴女のほうがいいんですかねー」
「もうあんたが何を言っても負け惜しみにしか聞こえないから気が楽だわ」
「ぐぬぬ」
ここに向かいながら、私は考えていた事がある。
それは、私はこれからビアラの事をどうしたいかについてだ。
「ところでジェールさん。あなたの事ですからてっきりそのままエロエロ三昧になると思ってましたよ。あの猫みたいに」
「いやぁ……だってビアラに帰ってきてって命令されちゃったからね。帰ってくるしかないでしょ」
「え?」
男も手に入れた今、既にこの国を奪うという事はどうでも良くなってきている。
メルンがいれば、別に暗黒だろうが明緑だろうがそもそも魔界でなかろうが問題はない。
「心の底から受け入れられない命令は無視出来るのですよ?」
「それが無理なの。だって……」
だから私は……
「ビアラ、本当の娘のように思えるほど可愛くて仕方ないんだもの。一緒にいたいのよ!」
自分の娘のように思えるビアラと、これからも一緒に暮らしていく事に決めた。
「ビアラ様の足は普通の二本足なんですけどー」
「わかってるわよそれぐらい。あなたはビアラを娘の様に思ったことはないの?」
「あり過ぎてあなたに取られたくないだけですー」
「ああそういう事……」
それはジェリアも同じらしい……
「二人とも喧嘩はだめー!!」
「喧嘩じゃないですよビアラ様。私もジェールさんもビアラ様が可愛くて自分のものにしたいだけですよ」
「あうっ!か、かわいいだなんてそんな……てれちゃう〜!!」
「ふふ……どうメルン、シエラちゃん。私達の主は可愛いでしょ?」
「そうだな!」
「そうですね♪私もいつかこんな子供を……♪」
「ごほっ、ぐふっ……し、絞まってる!!」
「あ、ごめんね〜」
つまり……ジェリアとも、長い付き合いになるという事だろう。
「今日はいっぱい家族が増えたから歓迎会しようよ!!」
「えー私のときそんなのしてもらった覚えありませんよーずるいですよー」
「私もしてもらった記憶無いわよ?」
「あなたは侵入者だから当たり前ですよ。何言ってるんですか図々しい」
「そんなこと言ったらあんたもこの3人も侵入者でしょ!!」
「あ、ばれた」
「じゃあ遅くなったけどジェリアとジェールの歓迎会も一緒にやろうっ!」
「あーそれならいいですねーでは早速準備しましょうか。ジェールさんあの猫も毒で釣って働かせて下さい」
「わかったわ!というかあなたずっと猫って言ってるけどあのスフィンクスの名前は?」
「忘れました」
「……憐れね……」
「わたしはちゃんと知ってるけど……本人から聞いてね!」
「わかりましたっと。じゃあ行きますか!」
「……賑やかな家族だ……」
「ですね。でもそれも良いかも♪」
「ぜぇ……はぁ……」
これからの楽しい遺跡生活に胸を弾ませながら、私は『家族』達と笑いあっていたのだった。
砂漠の遺跡に住む、幼き王。
私はそんな王の敵対者なはずだった。
だけど……純粋無垢な笑みを浮かべる少女に、私は手が出せなかった。
それでも、成長したら手篭めにしてやろうと、彼女の近くにいた。
でも、結局出来そうもなかった。
彼女と共に暮らしてくうちに、情が芽生えていた。
母性から来る情だろうか、彼女の事を娘の如く思うようになっていた。
いつしか、本当の家族の様に思っていた。
だから私は、これからもずっと、彼女と暮らしていくだろう。
幼き王と、敵対者なはずの私は……
大切な家族として……ずっと一緒に……
「その家族に私も含めて下さいねー仲間外れは寂しいんで」
「……言われなくてもそのつもりよ」
「えっなんですかデレですかそんな普通に言われるとちょっと怖いですよ。男手に入れてどうにかなっちゃったんですか?」
「……やっぱあんたイラッとするわね……」
もちろんこんな奴も含めて、賑やかな家族皆で暮らしていくのだった。
13/03/22 11:46更新 / マイクロミー