旅34 砂漠の王墓を大探索!!
「おはようございます」
「あら、おはようサマリさん。昨日はよく眠れ…たわよねワーシープですし」
「はいまあ…早起きなのはいつもの癖です」
「まだ何も言ってないけど……前に同じような事でも聞かれたの?」
「ええ、数人に言われました……」
現在7時。
私達は昨日の夕方にこの砂漠の街ラスティに辿り着き、そのまま領主でありアメリちゃんのお姉さんであるアイラさんの家に泊めてもらっていた。
そして昨日の夜は…まあ毎度のように大体他のお姉さん達の話で盛り上がっていた。
やはり他の姉妹の話は気になるらしく、昨日の夜ご飯の時間からアメリちゃんが眠くなるまでの時間ずっとその話をしていたくらいだ。
そこまで気になるなら会いに行ってみれば良いのに…と思ったが、領主をしている人ではそう簡単には会いに行ったりできないか…
「ところでアイラさん、昨日の夜も思ったのですがその格好……」
「あら?私の肌に釘付けですか?」
「いえ…というか、あんなに着込んでたのに……」
「ああ、やはりその事でしたか…チャドルは屋外用です」
「はぁ……」
ちなみに今のアイラさんの格好だが、とても涼しそうな格好をしている。
アイラさんの服装…それは、とりあえず昨日会った時とは対照的に今まで会ったリリムの中でも一番露出部分が多い。
もう少しだけ具体的に言うと、女性として大事な部分以外は全て外気に曝け出している。
言っちゃえば大事な部分以外隠していない姿だった。
いや魔物はそういうの多いけど、その中でも本当に必要最低限だけというか…ほぼ下着というか……まあ涼しそうである。
「ふぁぁ〜……おはようございます……」
「あ、フランちゃんおはよう。スズは?」
「たぶんもう少ししたら……ふぁぁ……アメリといっしょに来ると思います…」
アイラさんとお話していたら、デフォルメされた蝙蝠の模様が付いているパジャマを着ているフランちゃんが大きな欠伸をしながら起きてきた。
ちなみにフランちゃんはスズと一緒に寝ている。
別にアメリちゃんと違って一緒に寝たいとフランちゃんが言ったのではなく、スズが一緒に寝ようと言ったから一緒に寝ている。
本人が口にした事は無いが、まあアメリちゃんと一緒に寝る私が羨ましかったのだろう…もの凄く嬉しそうにフランちゃんを抱いて寝ていたからな……
まあフランちゃんも「スズさんもふもふ〜♪」って嬉しそうだったから良いか。
「ユウロは?」
「今日はいっしょにねていたのではないのでさすがにわかりません……ふぁ〜……」
「……フランちゃんまだ眠い?欠伸が止まらないけど……」
「はい……でも今日はいろいろかんこうするって聞いて楽しみなのでねません!」
フランちゃんの言うとおり、今日はこのラスティを観光する。
しかもアイラさんの案内付き(もちろん近衛隊長であるセリアさんも)というもの凄い状況でだ。
「まずはサンドアート展からご案内してあげますね」
「いやぁ…領主であるアイラさん自らありがとうございます」
「いいですよ。滅多に会えない妹と遊ぶようなものですから」
という事で、今日は一日中アイラさんの案内でラスティを観光する事になっている。
「ふぁぁ……アメリまだねむい……」
「あ、おはようアメリちゃん」
「おはよう……朝ごはん……」
「ふふ…もう少し待ってて。もうじき出来ると思うからね」
「うん…わかった……じゃあすわってまってよっかフラン…」
「ふぁふ……うん……」
まあその前に朝ご飯を食べてからだけどね。
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「わあ〜!!綺麗だなあ〜!!」
「そうだな…」
現在10時。
私達はアイラさんの案内でサンドアート展に来ていた。
サンドアートって何だろうって思ってたけど…どうやら言葉そのまま、すなわち砂で作ったアートと言うところだ。
「なんか反応悪いな…ユウロは感動しないのか?」
「もう少し普通の絵や砂像があったら感動したかもしれねえけど…」
「え〜仲良しでいいじゃんか!」
「……ごめん魔物の価値感がわからない」
魔力を使い様々な色で発光するようにしているボードに砂で描かれた風景や魔物と人が仲睦まじくしている絵などいろいろと置かれている。
私は芸術に詳しくないし、興味も無い方だが……この作品群の素晴らしさは伝わってくる。
それは小さな子供のアメリちゃんやフランちゃん、またジパングという文化がこっちと違うスズも感動しているようだ。
「でもまあ人では抵抗を覚える絵以外で感動は伝わってこないの?」
「いやまあエロ絵画とエロ砂像以外はスゲェって思えるけどさ……」
「ユウロさん、こういった絵もきれいだと思いますよ?」
「てかフランちゃんやアメリちゃんみたいな子供が見て良い物なのかよ…」
「母さまと父さまがこうしてるのを何度か見たことあります」
「アメリも!!」
「まあ魔王城に住む者なら子供のうちからこうした愛の営みを見る事も普通ですよ」
「マジか……」
だがしかしユウロはあまり感動していないようだ。
まあ魔物と人が仲睦まじくしている絵の中には性行為を行っているような…というか行っている絵もあるし、人間であるユウロには若干引いてしまうものだってのもわかる。
それでも砂というありふれた物で描かれる数々の作品を見てあまり心に来るものが無いとは…偏見だとは思うがこれだから男子は……
あ、男子と言えば……
「そういえばセリアさん…」
「ん?どうしたサマリ?」
「マルクさんはどうしたのですか?今朝から全く姿を見ていないんですけど…」
セリアさんも私達と一緒に居り、アイラさんが言うにはセリアさんの旦那さんであるマルクさんも居るって話だったのだが…今日の朝から一度も見ていないのだ。
「ああ…マルクは……」
『呼んだか?』
「へっ?えっ?どこ?」
だからセリアさんにマルクさんの行方を聞いてみたら、セリアさんが答える前にどこかからかマルクさんの声が聞こえてきた。
しかし辺りを見回してもそれらしき人物はいない……どこから声が聞こえてきたのかわからずとりあえずセリアさんを見る……
「マルク…驚かすのは良くないぞ……」
『別に驚かすつもりはないんだが……』
「えっどこですか?セリアさんはマルクさんがどこにいるのかわかってるのですか?」
「ああ……マルクはここだ」
そう言ってセリアさんが指差したのは……
「……ここ?」
「ああ、ここだ」
「えっと…どういうことです?」
……腰に装備している自分の剣だった。
どういうことか良くわからず、じっと剣を見ていると…
「この剣、ファルシオンが……」
『俺だ』
「…………はあ?」
セリアさんとマルクさんの声が、この剣がマルクさんだと言い始めた。
どういう事だろうか?
「まあサマリあまり呪いとかそういった類とは縁が無さそうだからわからないかもしれないが、マルクは日が当たる時間帯ではこのようにファルシオンになってしまうのだ」
「えっと…じゃあこの剣は本当にマルクさんなんですか?」
『ああそうだ。こうして念話っぽく会話は可能だが身動きは一切とれん』
「はあ……ふざけてます?いい加減遊んでないで出てきて下さいよ」
『いや本当だから』
どうやら呪いでマルクさんは剣になっているとか言い始めた二人。
何が目的なのかはわからないが人をからかうのはやめてほしい。
と思っていたら……
「サマリお姉ちゃん、セリアお姉ちゃんとマルクおじさんが言ってることは本当だよ」
「へ?」
アメリちゃんが話に割り込んできて、そう私に言ってきた。
『おっ?アメリはわかるのか』
「うん。そのファルなんとかってけんからマルクおじさんの精が感じ取れるもん」
「え……じゃあ本当に……」
「ああ…このファルシオンがマルクだ」
なんと本当にこの剣…ファルシオンはマルクさんらしい。
呪いとはまあ…よくわからないけど大変そうだ。
「そうですか…不自由は無いのですか?」
『まあ今更な…一応呪いを解く研究はされてるが一向に成果は無いしな…』
「私としては四六時中いつでも一緒に居れるからってのはあるが……それでもな……」
「そうなのですか……」
そうやって言う本人達は少し悲しそうだったが、私じゃあどうする事も出来ない。
『まあサマリはそんなの気にせず楽しんで来い!』
「そうだ。昼からはプールのほうに行くからここは今のうちに見ておけよ?」
「はい、わかりました!」
本人達にそう言われてしまったので、私は奥にある作品などを見に足を動かした……
…………
………
……
…
「おースゲェ……砂漠のプールだから砂プールかと頭の片隅で考えてたけど本当に水のプールだ!!」
「流石に砂のプールではありませんよ。オアシスとは別の水源から作ったプールです」
「ユウロ……その言葉も変だけどさ、なんでプールなのに服着てるの?」
現在14時。
私達はラスティにある地下水脈を利用したプールに来ていた。
流石暑い砂漠の中にあるプール…皆暑さを逃れに来ているのか、人がさっきのサンドアート展よりも多い。
「いや独身の魔物に狙われる危険性もあるからフランちゃんと一緒にあっちで雰囲気だけ満喫してくる」
「そう……」
ちなみに水着は借りた……のだが、何故かユウロは水着姿になっていない。
いや、確かに海水パンツは穿いているのだが……何故か上半身にシャツを着ている。
これからプールだというのに身体をシャツで覆っているとは何事だと思い本人に理由を聞いたところ、独身魔物対策だと言ってきた。
まあそれなら仕方ないかもしれないが…一緒に泳ぎたかった……
「……え?フランちゃんも泳がないの?」
「はい、あたしはおよげないので……」
「え、そうなの?」
「はい、まあ……」
さらっとユウロが言ったので始めは気付かなかったが、どうやらフランちゃんも泳がないらしい。
たしかに水着姿になったアメリちゃんと違ってフランちゃんは黒いマントを着たままだった…どうやら泳げないらしい。
「じゃあ私が泳ぎを教えてあげようか?」
「あ、いえ、そうじゃなくて…」
「ん?どうしたの?」
「えっと……その……」
まだ子供で泳げないのならなんとか泳げるように教えられるかもと思いフランちゃんにそう言ったのだが、何故かフランちゃんは目を泳がせてハッキリと答えない…
いったいどうしたんだろうと思っていたら……
「えっとねサマリお姉ちゃん…ヴァンパイアは……えいっ」
「わ、ひゃあっ!な、何するのアメリ!!」
「いや話すより見せたほうが早いかなって……もういっぱつえいっ!」
「ひゃひぃ……や、やめてぇ……」
突然アメリちゃんがプールの水を手で掬ってフランちゃんの顔に掛けた。
水が掛かった瞬間、フランちゃんは顔を真っ赤にしながら悶え始めてしまった。
さらにアメリちゃんがもう一回悶えているフランちゃんに水を掛けたら更に身体を大きくビクビクと震わせながら悶え続けていた。
これってもしかして……
「フランちゃん……快楽にやられてる?」
「うん。ヴァンパイアって真水にふれるとこーふんしてエッチな気分になっちゃうんだよ」
「へぇ……ってアメリちゃん、わかってたんならやめなさい」
「はーい……えへへ……」
どうやらヴァンパイアは真水にも弱いらしい。
ニンニクと太陽光に弱いのは知っていたからニンニクを使った料理は出さないようにしていたけど…最初会った時に渡した水が零れていたらと思うと怖いな……
とまあそれはさておき、ちょっとおふざけが過ぎたアメリちゃんを叱る。
「ふぁ……あ、アメリィ……いきなりやめてよぉ……」
「ゴメンゴメン……はは……」
しかしまあアメリちゃんはフランちゃんをからかえて楽しそうである。
今まで喧嘩していたのもあってこういったからかいもできなかったからだろう…
あ、そうだ…フランちゃんと言えば……
「そういえばフランちゃん…なんでその黒いマント着っぱなしなの?水に濡れない為?」
「はひ?あ、えっと…これはですね……」
黒色だからただでさえ暑い砂漠では余計に暑いと思うのだが、何故かマントを脱ごうとしないフランちゃん。
とりあえず少しは落ち着いたのか顔は真っ赤のままふらふらしながらも立ち始めたフランちゃんに聞いてみたら……
「どーん!」
「アメリちゃん!?」
「うわあっ!?あ、いや……」
アメリちゃんが横からフランちゃんをプールのほうに突き飛ばした。
ふらふらと立っていたフランちゃんはバランスを崩してプールに落ち……
バサッ!!
「ア〜メ〜リ〜?あたしもそろそろおこるよ?」
「ゴメンね。じっさいに見てもらったほうがわかりやすいと思って……」
「ギリギリだったんだよ!おちていろいろガマン出来なくなったらアメリおそうからね!!」
「あはは……ホントにゴメンね。やりすぎちゃった」
……落ちる前にフランちゃんのマントが広がり、フランちゃんは空中に浮き始めた。
いや……よく見たらいつの間にかマントが翼になっていて、それをはばたかせてフランちゃんは空を飛んでいた。
「えっと…もしかしてマントじゃなくて翼だったの?」
「はい。魔力でマントっぽくしてあるだけです。母さまふくめて大体のヴァンパイアはそんな感じです」
「へぇ〜……」
てっきりマントだって思ってたけどアレはヴァンパイアの翼だったのか……驚きである。
しかしまあそれよりも……
「ところでアメリちゃん、さっきやめなさいって言ったよね?」
「ひっ!ご、ごめんなさいサマリお姉ちゃん……」
私にわかりやすく説明するためとはいえフランちゃんを困らせたアメリちゃんをきちんと叱っておかねば。
「駄目でしょそうやってお友達を困らせる事しちゃ。私じゃなくてフランちゃんに謝りなさい」
「は、はい……ゴメンねフラン……」
「う、うん…いいよ……でもしんぞうにわるいからいきなりやるのはやめてね」
「うんわかった……」
普段はこんな事するような子じゃなかったと思うんだけどな……
やっぱり幼馴染みにしか見せないような一面もあるんだな……
「それじゃあまあアメリちゃんも謝ったし、準備運動して泳ぎますか」
「そうだね…そういえばサマリって泳ぐの苦手じゃなかったっけ?」
「そんな事無いよ。前の時は足が人間だった時と違ってたから勝手がわからなかっただけ。お風呂で練習したからもう大丈夫だよ」
「ふーん……」
とりあえずアメリちゃんも反省した事だし、私達はプールで泳ぐ事にした。
「そんじゃあ俺らはあっちのベンチで喋ってるから」
「たまにのぞきに行きますから」
「それではアイラ様、私も彼らとあっちで待機してますので」
「わかったわ。それじゃあアメリとサマリさん、それとスズさん、一緒に泳ぎましょうか」
ユウロとフランちゃん、それとセリアさんはベンチで仲良くお話しに行った。
=======[ユウロ視点]=======
「あいつら楽しそうに泳いでるな」
「ユウロさんもおよぎに行けばいいじゃないですか。アイラさんの近くにいればおそらく大丈夫だと思いますよ?」
「いやまあそうかもしれないけど…そのアイラさんだって独身……」
「そう言うなユウロ。アイラ様だって結構お悩みになっているんだぞ?」
「そうですね…っていうかそんなに睨まないで下さいよ、冗談ですから」
『まあユウロが言いたい事もわかるが…アイラ様が独身の事はなるべく話題にしない事だな』
泳ぎに行ったサマリ達と別れた後、俺とフランちゃん、それにセリアさんとマルクさんでこんな感じの話をしていた時だ……
「あの、すみません…領主殿の近衛隊長であるセリア殿ですか?」
「ん、そうだが…お主は?」
「私はこの近くの王墓を少し前まで守護していたアヌビスです」
俺達の目の前に褐色の肌をして黒色の毛並を持った犬耳と肉球の付いた手足を持つ魔物、『アヌビス』が現れてセリアさんに話し掛けた。
「ああ、あの王墓か……私に何か用か?」
「はい…実はあの王墓に…私が夫と共にこの街に移り住んでしばらくしてから別のアヌビスが棲み付いたようなのです」
「何……それは本当か?」
「はい……この前行った時に門番をしているスフィンクスがそう言っていたので間違いないかと……」
どうやらこの街の近くには王墓があるらしい。
そこにこのアヌビスさんが棲んでいたが、夫が出来たことによってその王墓を離れた……が、最近になって新たなアヌビスが棲み付くようになってしまったらしい。
「という事は、トラップや配置が今知られているものと変わっている可能性が高いのか……」
「そういう事です。私としても元管理者としてこの事を知らせておいたほうが良いかと思い夫との時間を泣く泣く削ってこうして報告に来ました」
「そうか御苦労だった。プールまで報告ありがとう」
「いえ、たまたま夫とプールに来ていて、セリア殿を見掛けたので今お伝えしただけですので…では……」
その事を報告し終えたアヌビスはそそくさと去っていった…おそらく夫の下に行ったのだろう。
『これは…明日にでも調査しに行くか?』
「そうだな……あのアヌビスのおかげで随分内部の調査が済んだと思ったのにな……」
アヌビスの話を聞いた二人は、どうやら明日は近くにある王墓を調査しに行くらしい。
「あのー……」
「ん、どうしたユウロ?」
「俺も一緒に行っていいですか?」
「あ、あたしも!!」
「……は?」
だから俺は、一緒に着いて行っていいか二人に聞いてみた。
『何故行きたい?』
「いや…王墓ってピラミッドですよね?一度行ってみたかったので行きたいなーと」
「あたしも同じです!!」
だって…ピラミッドって実際に見た事無いし、それに行ってみたいからな。
どうやらそれはフランちゃんも同じらしく、俺と同じように身を乗り出して同行の許可を求めている。
「それは許可出来ん」
「えー」
が、セリアさんに速攻で駄目だと言われてしまった。
「危険な罠や王墓内の魔物に襲われるのかもしれないんだぞ?」
「いや、それでも行ってみたいんです!魔物のほうは自分で何とかしますから!!」
「あたしも!自分の身は自分でまもります!!」
「だがしかし……駄目なものは駄目だ!!」
「「えー」」
諦めずに説得しようとしたのだが……頑なに断られてしまった。
最終手段の「一緒に行かせてくれないのかよケチー」と言いたげな視線をフランちゃんと二人で送っているがさほど効果は無さそうだ。
もう諦めるしかないのかなぁと心が折れ始めた時だった。
「まあまあセリア、皆さんも連れて行っても良いのでは?」
「アイラ様……」
プールで泳いでいたアイラさんが話を聞いていたのか、それとも休憩しにきたのかこっちに向かって来てそう言った。
「セリア達が居れば安全でしょうに…それにユウロ君は元勇者、他の人達は皆魔物なんだから余程の事が無ければ危なくは無いと思うわよ?」
「しかし……いえ、わかりました……アイラ様もそう言うから連れて行っても良いぞ」
「おっしゃ!ありがとうございます!」
「わーい!!ありがとうございます!!」
アイラさんの説得(?)によって、俺達もついて行っても良いと言われた。
「ん?皆さん?」
「ええ、おそらくアメリ達も行きたいと言う気がしますからね」
「たしかに……」
なので明日は皆で王墓の探索をする事になった。
うん、楽しみだ!
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「うおー!ラクダに乗って砂漠を移動するってテンション上がるな!!」
「うん!たのしー!!」
「なんで二人ともそんな安定して乗れるの?私落ちそうで怖ひゃあ!?」
次の日の朝、俺達は昨日のアヌビスさんが言っていた王墓を調査、探索するためにラクダに乗って向かっていた。
「サマリもこっちにするか?」
「日光当たらないしけしきはちゃんと見れるしでいいことだらけですよ!」
「い、いいよ。折角だからこのまま頑張る!!」
「はは…落ちるなよー」
ちなみに体系的にラクダに乗れないスズと、日光の下に出れないフランちゃんは馬車…と言っても引いてるのはラクダなのでラクダ車になるのか?…に乗っている。
「まったく……遠足じゃないんだぞ……」
『まあまあいいじゃねえか。あいつら今までだって一応戦闘経験あるらしいし、それに王墓内部ならヴァンパイアであるフランも立派な戦力になる』
「まあそうだが……」
『なに、いざとなったら俺達が護ってやればいい』
「……そうだな……」
セリアさんがマルクさんと何か話しているが…まあおそらく俺達の事だろう。
とまあラクダに乗っての旅を楽しみながら進むうちに……
「さて…目的地が見えてきたぞ。全員ここから気を引き締めるように」
『はい!!』
目的の王墓が視界に入ってきた。
『おそらくだが入口にはスフィンクスが門番をしているはずだ。女性はまあ大丈夫だし、俺もセリアが居るからいいが……』
「狙ってくるとしたら俺ですね……」
『そうだ…ユウロ、お前知識あるか?』
「偏っているうえにそんなにないです……というか答えられても相手が発情して襲いかかってくる事もありますよね?」
昨日のアヌビスさんの話からしたらおそらく入口にはスフィンクスがいる。
彼女がターゲットにするのはおそらく俺……どんな質問がくるかわからないが答えないと魅了の呪いが掛けられてしまう。
この首飾りは魅了を打ち消す力があるけど……スフィンクスの呪いまで防げるかはわからない。
それに…もし答えられても逆にスフィンクスが発情して襲いかかってくる可能性もある。
そっちは返り討ちに出来ればそれでいいが……発情した魔物がそう簡単に返り討ちにあってくれるかは微妙だ……
「あ、それはたぶん大丈夫。昨日アメリちゃんに砂漠に居る魔物の特徴を聞いてある程度対策してあるから」
「えっそうなの?まあサマリ達を信じるわ」
だがサマリ曰く何か秘策があるらしい。
自信満々な顔でそう言う事だし、他に何も思いつかないので、俺はサマリを信じる事にした。
「さて……到着だ……入口には誰もいなさそうだが……」
「……ううん……スフィンクスのお姉ちゃん、ちかくにいるよ……」
ラクダから下りた後、入口まで慎重に歩いてきた俺達。
入口には誰もいなさそうだが……アメリちゃん曰くどこかに隠れているらしい……
「……上だね……」
「えっ……あ!」
「えっ!?完璧に隠れていたはずなのにどうしてわかったの!?」
アメリちゃんが上に居ると言ったので見てみると……確かに入口の上に態勢を低くしながらこちらを見ているスフィンクスがいた。
気付かれるとは思っていなかったのか、スフィンクスはかなり慌てている。
「わわわ……こほん……よ、よく来たにゃ怪しい者共。うちはこの王墓を守護するスフィンクスにゃ!」
「……おい、さっき『にゃ』なんて言ってなかったじゃねえか……」
「う、うるさいにゃ!!キャラ作りとかじゃないにゃ!!」
「そこまで言ってないが……キャラ作りなんだな……」
とりあえず落ち着きを取り戻した(戻りきって無い気もするが)スフィンクス……
「く、くそ〜…いいにゃ!!そこの茶髪の男!ここを通してほしかったらうちの質問に答えるにゃ!!」
「ちっ……やっぱそうきたか……」
「いくにゃ!!まず1問……」
予想通り問題を俺に出題してきた……
と、思ったら……
「ふんっ!」
「にゃにゃ!?にゃんだこれー!?んぐーー!!」
後ろに居たスズが、スフィンクスが問題を出す前に糸で口を含めてグルグル巻きにしてしまった。
「問題出されると困るなら問題出す前に封じてしまえばいいと思って」
「んぐー!!んむむー!!(酷い!!うちの役割無くすなー!!)」
「まあ爪とかで糸切られても面倒だから……おやすみ」
「むぐー!!むぅ………ぐぅ……」
そしてとどめとばかりにサマリがぎゅっと抱きしめて……スフィンクスを寝かせてしまった。
「さて行きましょうか」
「あ、ああ…そうだな……」
『えげつないな嬢ちゃん達……』
まあこれでスフィンクスの脅威は去ったので、俺達は内部に進む事にした……
…………
………
……
…
「うーん…そこのつぼにはつぼまじんさんがいるよ」
「そうか…じゃあ壊すか……」
(ええっ!?)ガタガタガタガタ……
「待ったスズ!そこまでする必要は無い!!壺がめっちゃガタガタ震えて怖がってるじゃないか!!」
「もちろん冗談だよ。ちょっと脅かしてみただけだ」
内部に進み、順調に奥まで進んで行ってる俺達。
王墓内は仄かな松明の灯りだけが通路を照らしているだけなので視界は悪く、トラップに気付きにくくなっている。
しかしトラップのほうはそんなに多くなく、セリアさんが順当に解除してくれているおかげでなんとか大事にはなっていない。
一つだけ気付かずに発動させてしまった大きな岩が転がってくるトラップも、日光が当たってない事によってヴァンパイアの怪力を思う存分使えるフランちゃんが苦も無く止めて皆で細かく粉砕したから問題にはならなかった。
魔物のほうもご覧の通りアメリちゃんの驚異的な魔力探知で発見してはスズよサマリがどうにかしているので問題は無い。
「おっ!こんな所に宝箱が!!」
「えっホントに!?何が入ってるんだろ〜」
「……あーこれミミックさんだよ……」
「「え……本当に?」」
「うん」
「……ぬか喜びさせやがって……引き摺り出すか……」
「そうだね……アメリちゃん後ろから蓋開けて……」
「うん!……あ、にげた……」
「「ちっ」」
……いやこっち側に問題があるような気もする……けど、まあ助かってるっちゃあ助かってるからいいか……
「あーうー……おとこの子だー……」
「あ、マミーのお姉ちゃんだ」
「おとこの子ー……」
「くっ……」
「ねえ……マミーの包帯って全部繋がってる?」
「あー……ふぇ?だれ?羊?」
「ちょっと確かめてみるね。そーぉれぇい!」
「ひゃうっ!?あーれー」
「おお〜っ!マミーのお姉ちゃんコマみたい!」
……やっぱ良くない気がしてきたなぁ……
「あう……ピリピリする〜……」
「そういえばマミーって肌敏感なんだよね……私の毛で擦ってみたらどうなるかな♪」
「ふぇ!?や、やめ……」
「ユウロを狙ったんだから止めないよ。そーれこちょこちょこちょ……」
「ひゃぁいあひうはういひひゃおいいはうひょあ〜!?」
……うん、だめだ。
「待てお前達!!いくらなんでもやりすぎだって!!」
「え?そうかなぁ……」
「足元で絶頂してるマミーを見てもまだ疑問に思うのか!?」
「だってユウロお兄ちゃんをまもるためにやってるんだよ?」
「だから俺自身は特に何もしてないのに罪悪感が生じてんだよ……」
「まあまあ気にするなって!」
「気にしたから止めてんだよ……」
やり過ぎだって注意したが俺の為にやっている部分もあるので強く言えないうえに3人はそうは思っていないらしい。
これはもうどうする事も出来ないな……
「やっぱりだいぼうけんって感じでワクワクしますね!」
「それはそうだけど……あの3人は暴れすぎだろ……」
「でも楽しくないですか?」
「まあ楽しいけどさ……俺の為って言うのやめてくれないかなぁ……」
「あははは……」
大人しく楽しんでるのはフランちゃんだけか……
というか…もうちょっと慎重に進むべきだと思うけどな……
だって……
『……なんの心配もいらなさそうだな……』
「ああ……だが油断は出来ない…まだ例の新たなアヌビスは出てきていないからな……」
『だな……さっきから見掛ける魔物はただの巡回か、それともアヌビスの指示か……』
セリアさんの言うとおり、たしかにさっきからマミーはそこそこ見掛けるが、肝心のアヌビスは全く見ない。
おそらく王墓内最深部にいるのだろう……それだけでなく監視している可能性もある。
「よーしどんどん先に進むぞー!!」
「いいけど油断するなよ?トラップだって物理的なものならまたフランちゃんが止めてくれるかもしれないけど呪いとか魔術の類だと大変だからな」
「わかってるって!きちんと細心の注意を払って進むよ」
だからこそ俺達は慎重に、それでいて大盛り上がりでどんどん奥に進んでいった……
…………
………
……
…
「前の守護者であったアヌビスの話だとここが最深部手前の部屋だ……」
「どうアメリちゃん…この部屋の中に居そう?」
「んー…わかんない……おくに進むにつれて魔力がいっぱいになってきてたから……」
「まあ、居たら居たで話し合い…出来無さそうだったら戦うだけだ……」
落とし穴や吊り天井などのトラップ、ワーバットやグール、マミーなどの魔物を難なく掻い潜り、途中で昼飯を食べながらも最深部手前の部屋まで辿り着いた俺達。
ここまではアヌビスのアの字すら見掛けなかった…だから、この部屋に居る可能性が高い。
「じゃあ入るぞ……気を引き締めろ……」
『……行くぞ!!』
マルクさんの合図で扉が開き、一斉に部屋の中に入った俺達の前に現れた光景……それは……
「はぁ……ようこそ侵入者諸君……安っぽい宝や研究に使いたい土なんかは適当に持ってっていいからさっさと帰ってくれ……」
「……え?」
「はぁ……今から暇つぶしの時間なんだ……相手するの面倒だから早く帰れ……」
「……何だこれ?」
明らかにめんどくさそうな顔をして椅子に座りながらそう俺達に言ってきたアヌビスだった。
手には天秤が上部に付いた杖を持って俺達に向けてこそいるが動く気配は無い。
また近くに置いてある水晶にはセリアさんが映し出されているのでやはり監視はしていたようだが……それといって何かをした形跡は無い。
「おい貴様……何故この王墓に居る?」
「何でって……ここ護ってたアヌビスが旦那作って無責任に出て行っちゃったからってアヌビスになって困っていた私にスフィンクスやマミー達が泣きついてきたから……」
「それで代わりをしていると……」
「そ、ここに住ませてもらう代わりにね……まあ皆ここを護るって言うより男探しが目的になってるから仕事も楽だからいいけどね……」
「そうか……」
どうやら成り行きでここに住む事になったらしい。
しかもやる気無いというイメージとはかけ離れたアヌビスの姿に驚いて皆まともに動いていない。
セリアさんだけが冷静にこのぐーたらアヌビスと会話している状況である。
「だから特に何も無いんだったらさっさと帰ってちょ……危害さえ加えなきゃ好きに調査してもいいから……あ、でもトラップ解除するのは面倒だから気をつけてね〜……」
「そうか…邪魔したな……」
ただまあこっちに何かをする気は無さそうなので、そのまま部屋をでて別の場所を調査しに行こうとしたのだが……
「あ、そうだ……ちょっと待って……」
「ん?何か?」
「いや…あなたは別にいいんだけど……」
出ていこうとした俺達を……
「ちょっとそこの凶暴ワーシープと角が生えた緑アラクネとやけに白いアリスは残ってくれない?」
「きょうぼ……私凶暴!?」
「緑アラクネって……アタイの事か!?アタイはウシオニだよ!!」
「アメリはアリスじゃない!!リリム!!」
「まあなんでもいいわ。とにかくあんたら3人はここに残って」
いや…出ていこうとしたサマリとスズとアメリちゃんの3人を引き留めた。
「まってください、えっと……」
「私はプラナだよヴァンパイアのお嬢ちゃん」
「はい…ではプラナさん、なぜサマリさんとスズさんとアメリはのこらないとダメなのですか?」
「この3人は明らかにここに住んでる魔物に大きな危害を加えたからお仕置き」
「ええっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!あっちからユウロを狙ってきたから追い返しただけじゃんか!!」
「いやあからさまにやり過ぎだから。私だって勇者やってた時からここまでした事無いって」
やっぱりあれはやり過ぎだと思われたらしい……ちょっとしかめっ面で3人にお仕置きすると言い始めた。
…………ん?
「勇者やってた時?」
「ああ、私元人間の勇者。この杖『リブラ』で盗賊や山賊達を退治してたらいつの間にかアヌビスになってた」
プラナが最後に何気なく言った「勇者やってた時」という言葉が気になったので聞き返してみたら、自分は元人間で、リブラという名の武器を使っていたらアヌビスになっていたと言った…
という事はつまり……
「その杖コンステレーションシリーズの一つか」
「お、そう言うって事は…じゃあやっぱり私がアヌビスになったのはこいつのせいか……古代の聖なる武器だって聞いて嬉しくて振り回してたのにとんだ呪いの装備だって事か……」
「ま、そういうこった。あまりショックを受けてないようだから良いんじゃね?」
「まあアヌビスになったから貧乏村から追い出されてしまったがこうしてもっといいとこに住めたし、それにどちらかというと不細工だった私も見違えるほど美しくなれたから結果的には問題無い」
「ふーん…お前勇者だったのに貧乏な村に住んでたんだな」
「一応自宅あったしな……今となってはもう親も魔物になっていなくなっちゃったしどうでもいいけど……ただまあ魔物になったせいでやたら時間が気になるし自分の予定通りに進まないと気が気じゃなくなるのは自分でも困る……元が勇者のくせにズボラで不真面目だったからな……」
プラナはなんとあの人間にとっては傍迷惑な呪いの装備品シリーズ『コンステレーションシリーズ』の被害者だった。
まあ本人は割り切っているのでそこは問題無いのだろう。
「で、3人にどんな罰をするつもりなんだ?マミーの呪いはやめてくれよ。俺が困るからな」
「ああ、それなんだが……最初はそうしようと思ったが、なにやら事情がありそうだし別の呪いにするよ。もちろんある程度時間が経てば効果が無くなるものをな」
「別の呪い?」
とりあえず話を戻して、アメリちゃんとサマリとスズが受ける罰の内容を聞き出す事にした。
たしかにやり過ぎ感はあったので少なくともサマリとスズはある程度の罰は受けてもいいだろうと思い内容を聞いてみたところ、何かしらの呪いを受けてもらうという事だった。
マミーの呪いとかだったらどうしようかと思った…魔物はマミー化しないと言っても敏感肌にはなるかもしれないし、もしかしたらそのまま発情ぐらいはするかもしれないからな……
そうしたら襲われるのは確実に俺だ……いくらなんでもそれは困る。こんな適当な流れで身体を重ねるとか死んでもゴメンである。
だが…いったいどんな呪いだろうか?
「そ、今から私はあんたら3人に向かってそれぞれこのリブラを介していくつかの呪いを飛ばす。命に係わったり性的に興奮してそこの…ユウロだっけか?ユウロを襲うような呪いではないから安心しな。その呪いをこの部屋の隣の広い場所で私が疲れるまでひたすら避けてもらう。当たった時点で即終了、呪いと一日中付き合う事になる」
「えー…やらないと駄目ですか?」
「お前らどれだけここに住む魔物に迷惑かけたと思ってるんだ……むしろ問答無用で呪い掛けてボコボコにしないだけありがたいと思いな……」
「はい……たしかにマミーの素肌をくすぐるのはやり過ぎましたごめんなさい……」
「わかってるならよろしい……では少しだけ軽くしよう」
「ありがとうございます」
詳しくは言わなかったが、まあとにかく一時的で比較的安全な呪いらしい…
しかも罰というよりゲームだな…今から暇つぶしの時間だって言ってたし、その暇つぶしも兼ねているのだろう。
「そんじゃあ俺とフランちゃんはセリアさんの手伝いしてるから3人とも頑張ってな」
「あ、うん…」
「アメリがんばる!」
「ふん!そのくらい簡単に避けてやるさ!!」
という事で該当者3名を残して俺達は王墓内の別の場所を調査しに行く事にした……
========[スズ視点]=======
「という事で今から始めるが…何か質問はあるか?」
ちょっと王墓内で調子にのったツケを払わされることになったアタイ達は、プラナと名乗るアヌビスと王墓内でもとりわけ広い部屋に来ていた。
「はい!今からやる事とは全く無関係ですが質問です!」
「何だサマリ?一応言ってみな」
「なんでプラナさんは元勇者であるにも関わらず私達魔物に優しいのですか?」
始める前に質問時間を設けてくれたので、色々聞いてみる事にした。
まずはこのプラナという人物に対する疑問だ……元勇者というからてっきり魔物になった今でも魔物には厳しいと思っていたのだがそうでもない……
「まあ…私は悪い奴が許せなかっただけだからな…それに元々自分の目で魔物が悪い事をやっているのはほとんど見た事無かったからな。私は魔物が一概にして悪だとは思ってなかったってのが魔物に優しいのかな……」
「そうなんですか……」
どうやらそれは元からの様だ……
そういう勇者もいるんだなぁ……まあ見た事あったり聞いた事あるのが少ないから居てもおかしくは無いのか……
「じゃあアメリもしつもん!」
「何だアメリちゃん?これからやる事についてか?」
「う〜ん…ちょっとちがうかも……そのつえってどんなことが出来るの?」
次に聞いてみたのは、プラナが持つ杖『リブラ』の事だ。
リブラを介して呪いを飛ばすと言っていたが、他にどんな事が出来るのか知りたいのだ。
アタイは知らないがサマリ達は何度か同じシリーズの物を見ており、それぞれ変わった性能を持っていたと言うから非常に気になるのだ。
「ああこれか?これはまあ今から使うのは私の魔力を弾にして打ち出す機能だな。アヌビスになった今は呪いを弾として打ち出せるようになったからそれを避けてもらう」
「へぇ……他には何かあるの?」
「後はまあ相手と自分の能力を平等にしたり、悪人に犯した罪の分だけ罰という名の攻撃を与えたりとか…まあ普通の棒術も使えるな」
「やっぱりコンステレーションシリーズって不思議な能力があるんですね……」
今さらっと凄い事言った気がする……
特に相手と自分の能力を平等にするって…つまり人間とドラゴンなんかも全く同能力で戦えるって事だよね……恐ろしい武器だ…勇者してる時に会わなくて良かった……
「他に質問は無いか?」
「あ、じゃあアタイが……今から使う呪いって結局どういった呪いなんだ?」
最後にアタイが、今からどんな呪いを使う気なのかを聞いてみた。
「ああ、そういえば言ってなかったか…笑いが止まらなくなる呪い、腹痛に襲われ続ける呪い、深い眠りにつく呪い、喋れなくなる呪いの4種類を適当に飛ばす」
「ちょっとキツイの多くない!?特に腹痛と喋れなくなる呪い!」
「これは罰だからな。それにちょっとキツイと言っても当たらなければ良いだけだ。ちなみに当たったとしても日付が変わる頃には効果は切れるし、アメリちゃんが本当にリリムならアメリちゃんはおそらく夕飯の時間までには切れるだろう」
「だからアメリは本当にリリムだってば〜!!」
当たるとやや大変な呪いばかりだが…プラナが言う通り当たらなければ問題無い。
もう聞きたい事は無くなった……だから……
「もう質問が無いのなら始める……私が疲れるまで…まあ大体20分位だ…呪いを受けたくなかったら避け続けろ!じゃあ始め!!」
アタイ達は、プラナからの罰…というか、一種の暇潰しを開始した!
「さあ避けな。掠っただけでも効果はあるからな!」
「えっ本当に?やばっ!!」
「ひゃあ〜!!」
「んーしょっと!これくらいならかんたんによけれるよ!」
「そう言って居られるのも今のうちだ。段々激しくしていくからな」
アタイ達一人一人を狙って数秒おきに飛んでくる呪いの弾…略して呪弾。
アタイは素早く左右にかわしながら激しくなるらしい攻撃を避ける為に天井や壁に糸を張り巡らせている。
アメリは自身の翼を使って縦横無尽に空間を飛びまわって余裕で避けている。
ただまあ…サマリは必死に跳んだりしゃがんだりしてどうにか避けているという感じだ。
「それ3連発!4連発!2連発後すぐに3連発!」
「よっと!そんな直線的な攻撃当たるわけないだろ!」
「わ、私ギリギリなんだけど……」
「ならば…軌道が変化する弾だ!」
「おっと……そうきたか……」
「これくらい平気だよー♪」
更に激しくなっていくプラナの攻撃。
アタイは先程張っておいた糸を跳び移りかわす…いきなり軌道が変化してきたので危うく当たりそうになったがまだ大丈夫そうだ。
アメリはやはり行動できる範囲が広いのでこれくらいの変化は特に苦も無さそうだ…呪弾が掠りそうにすらなってない。
ただまあやっぱり……
「ひゃっ!ま、曲がるなんて反則〜!!」
「最初の脱落者は……」
「あ、避けられnあうっ!」
「サマリのようだな……」
元々戦いとかとは無縁なサマリには厳しかったらしい。
開始から5分、なんとか避けていたサマリは左右両側から曲線を描きながら迫ってきた呪弾を避けきれずに2つとも命中してしまった。
当たった瞬間サマリは動きを止め……
「っ……………っ……………」
寝息すら立てずにその場で寝てしまった。
「サマリお姉ちゃん……気持ちよさそうにねてるね……」
「当たったのは深い眠りにつく呪いと喋れなくなる呪いの二つだな……まあワーシープだし眠る事は問題なさそうだな……」
「そうだな…とりあえず隅に移動させるから待って……」
アメリの言う通り気持ちよさそうに寝ているサマリを部屋の隅に移動させる…これから更に激しくなるのに巻き込まれるのは大変だろうからね。
「よし…ここなら安全kうわっと!」
「油断してるとスズも当たるぞ?私が言うのもアレだがあと15分だ頑張れ」
「くそっ!絶対にかわしきってやる!」
サマリを安全な場所に移動させた瞬間、今まで以上の速度で螺旋を描きながら飛んできた呪弾をギリギリ身を捻ってかわしたアタイ。
その後も連続で飛んでくる呪弾を駆け抜けてかわし、糸を張ったところまで戻ってまた集中してかわし続ける。
しかし本当に時間が経過する毎に弾数が多くなる…最初は一つずつだった呪弾も、今はパッと数えただけでも両手の指で数え切れないほど視界に入ってくる。
「うわあっ!あ、あぶなかった〜……」
「今のは腹痛の呪いだったな…当たらなくて良かったな」
「ホントによかった……あと10分がんばる!」
四方八方から飛んでくる呪弾をスイスイとかわし続けているアメリも余裕は無くなってきたようだ。
尻尾の先に当たりそうになっていたがギリギリで気付いて尻尾を丸めかわした。
と、アタイも余所見している暇が無くなってきた…
「ほらほらどうした?もっと勢いを上げるがそれじゃあ当たってしまうぞ?」
「くっ……こうなったら……!!」
そろそろかわせなくなる程飛んでくる呪弾……
直接触れたら呪いが掛かってしまうから触る事は出来ないが……もしかしたらと思って魔力を込めて糸を飛ばしてみると……
「これならどうだ!!」
「ほぉ……糸で弾き返すか……」
糸に当たった呪弾は上手い具合に弾き飛んた。
これならある程度は楽になる…かわせない物は弾き飛ばせばいいのだから。
「そっか……ならアメリも!『マッドボム』!!」
「泥の塊を出す魔術か……厄介って事じゃないが連発されると当たるものも当たらなくなるな……それじゃあ……」
アメリちゃんもその様子は見ていたようで、自身の攻撃魔法で呪弾を弾き飛ばしている。
これなら残り8分もいける…そう思った時だった。
「これを防げたら褒めてやろう!!」
「なっ!?」
「ええっ!?」
突然攻撃が止んだかと思ったら…プラナは頭上で杖をクルクルと回し始め……
「吹き飛べ!!」
「うっそお!?」
「あわわわ…!!」
無数の呪弾を自身の周りに発生させ、放射状に広げて発射した。
とてもじゃないが避ける事は出来ない量だ……かといって糸で当たらないように撃ち落とせる量でもない。
しかもどうしようか考える余裕もない程速い速度でこっちに迫ってきている……
もうこれは当たるしかないかな……と、諦め始めたときだった。
「つかれるけど……これしかない!『ライトウォール』!!」
「ほぉ…アメリちゃんはやっぱリリムなんだな…魔術抵抗壁魔法とは……アメリは大丈夫そうだな」
アメリちゃんが光で出来た壁を自身の目の前に出しているのが目に入った。
それを見たアタイは、ある賭けに出る事にした。
「うおおおおおおっ!!」
「ん?なんだ…壁や天井に張ってあった糸を剥がし始めて……」
今から新たに糸を出しても遅い…そう考えたアタイは足場に使っていた糸を全部素早く集め一つにして……
「これなら……!!」
「ほう……アメリちゃんの真似か……」
布状にして、頭から足先までを覆うよう壁のように拡げた。
さっきまでの攻撃の際、呪弾は足場に使っていた糸にも当たっていたが、糸は全く切れていなかった。
なので糸で作った壁なら防ぎきれるかもしれない……そう思ってアタイはすでに出ていた糸を集め壁を作った。
「うっ、くっ……」
拡げた瞬間、呪弾は目の前まで来ていたようで、壁伝いに腕に衝撃が走った。
2発…4発…8発…と、連続して勢い良く壁に当たる呪弾の威力にアタイは吹き飛ばされそうになりながらも必死にこらえた。
ダダダダダダダダダダダダダダダン………
「くっ……はぁ……はぁ……」
アタイが即席で作った糸の壁は呪弾によってボロボロにこそなっていたが……なんとか防ぎきれたようだ。
しかしまだ時間は残っている……次なる攻撃に備え身を構えようとした……
「はあ〜……二人とも防ぎきっちゃったか〜……じゃあ終わりな〜」
「「……へっ?」」
しかし、プラナはもう疲れ切った様子で地面にぺたっと座りこんでいた。
「え…でもまだ5分位あるぞ?」
「何を言ってる?私が疲れるまでだって言ったじゃないか」
「あ、そういえばそうだったね…アメリわすれてた」
どうやらプラナはさっきので魔力、体力共に使い切ってしまったらしい……三角に尖った耳や大きな黒い尻尾を力無く伏せてだるそうにしている。
「という事で二人はそのまま帰って良いよ……けどまあ誰かにあったら謝ってな……」
「お、おうわかった……」
「それじゃあ私はこの後お昼寝の時間だから……邪魔したら問答無用で発情状態にしてやるからな……」
「う、うん……じゃあねプラナお姉ちゃん……」
「じゃあなアメリちゃん……ああそうだ、一緒に居た人達はこの通路を進んで2つ目の別れ道を右に進んだところにある小部屋の奥の部屋にいるから……それじゃあ機会があったらまた遊びに来いよ〜……」
そしてそのままプラナは眠そうにさっきの部屋に帰って行った……
「……なあアメリ……アヌビスって皆あんな感じなのか?」
「う〜ん…ちがうと思う……アヌビスさんってみんなマジメだけどプラナお姉ちゃんはそんなことなさそうだもん……」
「だよなぁ……あ、真面目に不真面目してるんじゃない?」
「あーそうかも……きっと強く人間だったころの性格がのこってるんだね」
「だな……それじゃあアメリ、サマリ連れて帰ろうか」
「そうだね。サマリお姉ちゃんねてるから今日のごはんはどうしようね……」
「まあ…そこはアイラさんとこに世話になるか……この街の名物でも食べに行くかだな……」
「そうだね……とりあえずセリアお姉ちゃんたちと合流しよう」
「ああ……」
アタイは今日あった出来事をアメリと話しながら、寝続けているサマリを背負いつつセリアさん達と合流すべく歩き始めた。
「あら、おはようサマリさん。昨日はよく眠れ…たわよねワーシープですし」
「はいまあ…早起きなのはいつもの癖です」
「まだ何も言ってないけど……前に同じような事でも聞かれたの?」
「ええ、数人に言われました……」
現在7時。
私達は昨日の夕方にこの砂漠の街ラスティに辿り着き、そのまま領主でありアメリちゃんのお姉さんであるアイラさんの家に泊めてもらっていた。
そして昨日の夜は…まあ毎度のように大体他のお姉さん達の話で盛り上がっていた。
やはり他の姉妹の話は気になるらしく、昨日の夜ご飯の時間からアメリちゃんが眠くなるまでの時間ずっとその話をしていたくらいだ。
そこまで気になるなら会いに行ってみれば良いのに…と思ったが、領主をしている人ではそう簡単には会いに行ったりできないか…
「ところでアイラさん、昨日の夜も思ったのですがその格好……」
「あら?私の肌に釘付けですか?」
「いえ…というか、あんなに着込んでたのに……」
「ああ、やはりその事でしたか…チャドルは屋外用です」
「はぁ……」
ちなみに今のアイラさんの格好だが、とても涼しそうな格好をしている。
アイラさんの服装…それは、とりあえず昨日会った時とは対照的に今まで会ったリリムの中でも一番露出部分が多い。
もう少しだけ具体的に言うと、女性として大事な部分以外は全て外気に曝け出している。
言っちゃえば大事な部分以外隠していない姿だった。
いや魔物はそういうの多いけど、その中でも本当に必要最低限だけというか…ほぼ下着というか……まあ涼しそうである。
「ふぁぁ〜……おはようございます……」
「あ、フランちゃんおはよう。スズは?」
「たぶんもう少ししたら……ふぁぁ……アメリといっしょに来ると思います…」
アイラさんとお話していたら、デフォルメされた蝙蝠の模様が付いているパジャマを着ているフランちゃんが大きな欠伸をしながら起きてきた。
ちなみにフランちゃんはスズと一緒に寝ている。
別にアメリちゃんと違って一緒に寝たいとフランちゃんが言ったのではなく、スズが一緒に寝ようと言ったから一緒に寝ている。
本人が口にした事は無いが、まあアメリちゃんと一緒に寝る私が羨ましかったのだろう…もの凄く嬉しそうにフランちゃんを抱いて寝ていたからな……
まあフランちゃんも「スズさんもふもふ〜♪」って嬉しそうだったから良いか。
「ユウロは?」
「今日はいっしょにねていたのではないのでさすがにわかりません……ふぁ〜……」
「……フランちゃんまだ眠い?欠伸が止まらないけど……」
「はい……でも今日はいろいろかんこうするって聞いて楽しみなのでねません!」
フランちゃんの言うとおり、今日はこのラスティを観光する。
しかもアイラさんの案内付き(もちろん近衛隊長であるセリアさんも)というもの凄い状況でだ。
「まずはサンドアート展からご案内してあげますね」
「いやぁ…領主であるアイラさん自らありがとうございます」
「いいですよ。滅多に会えない妹と遊ぶようなものですから」
という事で、今日は一日中アイラさんの案内でラスティを観光する事になっている。
「ふぁぁ……アメリまだねむい……」
「あ、おはようアメリちゃん」
「おはよう……朝ごはん……」
「ふふ…もう少し待ってて。もうじき出来ると思うからね」
「うん…わかった……じゃあすわってまってよっかフラン…」
「ふぁふ……うん……」
まあその前に朝ご飯を食べてからだけどね。
====================
「わあ〜!!綺麗だなあ〜!!」
「そうだな…」
現在10時。
私達はアイラさんの案内でサンドアート展に来ていた。
サンドアートって何だろうって思ってたけど…どうやら言葉そのまま、すなわち砂で作ったアートと言うところだ。
「なんか反応悪いな…ユウロは感動しないのか?」
「もう少し普通の絵や砂像があったら感動したかもしれねえけど…」
「え〜仲良しでいいじゃんか!」
「……ごめん魔物の価値感がわからない」
魔力を使い様々な色で発光するようにしているボードに砂で描かれた風景や魔物と人が仲睦まじくしている絵などいろいろと置かれている。
私は芸術に詳しくないし、興味も無い方だが……この作品群の素晴らしさは伝わってくる。
それは小さな子供のアメリちゃんやフランちゃん、またジパングという文化がこっちと違うスズも感動しているようだ。
「でもまあ人では抵抗を覚える絵以外で感動は伝わってこないの?」
「いやまあエロ絵画とエロ砂像以外はスゲェって思えるけどさ……」
「ユウロさん、こういった絵もきれいだと思いますよ?」
「てかフランちゃんやアメリちゃんみたいな子供が見て良い物なのかよ…」
「母さまと父さまがこうしてるのを何度か見たことあります」
「アメリも!!」
「まあ魔王城に住む者なら子供のうちからこうした愛の営みを見る事も普通ですよ」
「マジか……」
だがしかしユウロはあまり感動していないようだ。
まあ魔物と人が仲睦まじくしている絵の中には性行為を行っているような…というか行っている絵もあるし、人間であるユウロには若干引いてしまうものだってのもわかる。
それでも砂というありふれた物で描かれる数々の作品を見てあまり心に来るものが無いとは…偏見だとは思うがこれだから男子は……
あ、男子と言えば……
「そういえばセリアさん…」
「ん?どうしたサマリ?」
「マルクさんはどうしたのですか?今朝から全く姿を見ていないんですけど…」
セリアさんも私達と一緒に居り、アイラさんが言うにはセリアさんの旦那さんであるマルクさんも居るって話だったのだが…今日の朝から一度も見ていないのだ。
「ああ…マルクは……」
『呼んだか?』
「へっ?えっ?どこ?」
だからセリアさんにマルクさんの行方を聞いてみたら、セリアさんが答える前にどこかからかマルクさんの声が聞こえてきた。
しかし辺りを見回してもそれらしき人物はいない……どこから声が聞こえてきたのかわからずとりあえずセリアさんを見る……
「マルク…驚かすのは良くないぞ……」
『別に驚かすつもりはないんだが……』
「えっどこですか?セリアさんはマルクさんがどこにいるのかわかってるのですか?」
「ああ……マルクはここだ」
そう言ってセリアさんが指差したのは……
「……ここ?」
「ああ、ここだ」
「えっと…どういうことです?」
……腰に装備している自分の剣だった。
どういうことか良くわからず、じっと剣を見ていると…
「この剣、ファルシオンが……」
『俺だ』
「…………はあ?」
セリアさんとマルクさんの声が、この剣がマルクさんだと言い始めた。
どういう事だろうか?
「まあサマリあまり呪いとかそういった類とは縁が無さそうだからわからないかもしれないが、マルクは日が当たる時間帯ではこのようにファルシオンになってしまうのだ」
「えっと…じゃあこの剣は本当にマルクさんなんですか?」
『ああそうだ。こうして念話っぽく会話は可能だが身動きは一切とれん』
「はあ……ふざけてます?いい加減遊んでないで出てきて下さいよ」
『いや本当だから』
どうやら呪いでマルクさんは剣になっているとか言い始めた二人。
何が目的なのかはわからないが人をからかうのはやめてほしい。
と思っていたら……
「サマリお姉ちゃん、セリアお姉ちゃんとマルクおじさんが言ってることは本当だよ」
「へ?」
アメリちゃんが話に割り込んできて、そう私に言ってきた。
『おっ?アメリはわかるのか』
「うん。そのファルなんとかってけんからマルクおじさんの精が感じ取れるもん」
「え……じゃあ本当に……」
「ああ…このファルシオンがマルクだ」
なんと本当にこの剣…ファルシオンはマルクさんらしい。
呪いとはまあ…よくわからないけど大変そうだ。
「そうですか…不自由は無いのですか?」
『まあ今更な…一応呪いを解く研究はされてるが一向に成果は無いしな…』
「私としては四六時中いつでも一緒に居れるからってのはあるが……それでもな……」
「そうなのですか……」
そうやって言う本人達は少し悲しそうだったが、私じゃあどうする事も出来ない。
『まあサマリはそんなの気にせず楽しんで来い!』
「そうだ。昼からはプールのほうに行くからここは今のうちに見ておけよ?」
「はい、わかりました!」
本人達にそう言われてしまったので、私は奥にある作品などを見に足を動かした……
…………
………
……
…
「おースゲェ……砂漠のプールだから砂プールかと頭の片隅で考えてたけど本当に水のプールだ!!」
「流石に砂のプールではありませんよ。オアシスとは別の水源から作ったプールです」
「ユウロ……その言葉も変だけどさ、なんでプールなのに服着てるの?」
現在14時。
私達はラスティにある地下水脈を利用したプールに来ていた。
流石暑い砂漠の中にあるプール…皆暑さを逃れに来ているのか、人がさっきのサンドアート展よりも多い。
「いや独身の魔物に狙われる危険性もあるからフランちゃんと一緒にあっちで雰囲気だけ満喫してくる」
「そう……」
ちなみに水着は借りた……のだが、何故かユウロは水着姿になっていない。
いや、確かに海水パンツは穿いているのだが……何故か上半身にシャツを着ている。
これからプールだというのに身体をシャツで覆っているとは何事だと思い本人に理由を聞いたところ、独身魔物対策だと言ってきた。
まあそれなら仕方ないかもしれないが…一緒に泳ぎたかった……
「……え?フランちゃんも泳がないの?」
「はい、あたしはおよげないので……」
「え、そうなの?」
「はい、まあ……」
さらっとユウロが言ったので始めは気付かなかったが、どうやらフランちゃんも泳がないらしい。
たしかに水着姿になったアメリちゃんと違ってフランちゃんは黒いマントを着たままだった…どうやら泳げないらしい。
「じゃあ私が泳ぎを教えてあげようか?」
「あ、いえ、そうじゃなくて…」
「ん?どうしたの?」
「えっと……その……」
まだ子供で泳げないのならなんとか泳げるように教えられるかもと思いフランちゃんにそう言ったのだが、何故かフランちゃんは目を泳がせてハッキリと答えない…
いったいどうしたんだろうと思っていたら……
「えっとねサマリお姉ちゃん…ヴァンパイアは……えいっ」
「わ、ひゃあっ!な、何するのアメリ!!」
「いや話すより見せたほうが早いかなって……もういっぱつえいっ!」
「ひゃひぃ……や、やめてぇ……」
突然アメリちゃんがプールの水を手で掬ってフランちゃんの顔に掛けた。
水が掛かった瞬間、フランちゃんは顔を真っ赤にしながら悶え始めてしまった。
さらにアメリちゃんがもう一回悶えているフランちゃんに水を掛けたら更に身体を大きくビクビクと震わせながら悶え続けていた。
これってもしかして……
「フランちゃん……快楽にやられてる?」
「うん。ヴァンパイアって真水にふれるとこーふんしてエッチな気分になっちゃうんだよ」
「へぇ……ってアメリちゃん、わかってたんならやめなさい」
「はーい……えへへ……」
どうやらヴァンパイアは真水にも弱いらしい。
ニンニクと太陽光に弱いのは知っていたからニンニクを使った料理は出さないようにしていたけど…最初会った時に渡した水が零れていたらと思うと怖いな……
とまあそれはさておき、ちょっとおふざけが過ぎたアメリちゃんを叱る。
「ふぁ……あ、アメリィ……いきなりやめてよぉ……」
「ゴメンゴメン……はは……」
しかしまあアメリちゃんはフランちゃんをからかえて楽しそうである。
今まで喧嘩していたのもあってこういったからかいもできなかったからだろう…
あ、そうだ…フランちゃんと言えば……
「そういえばフランちゃん…なんでその黒いマント着っぱなしなの?水に濡れない為?」
「はひ?あ、えっと…これはですね……」
黒色だからただでさえ暑い砂漠では余計に暑いと思うのだが、何故かマントを脱ごうとしないフランちゃん。
とりあえず少しは落ち着いたのか顔は真っ赤のままふらふらしながらも立ち始めたフランちゃんに聞いてみたら……
「どーん!」
「アメリちゃん!?」
「うわあっ!?あ、いや……」
アメリちゃんが横からフランちゃんをプールのほうに突き飛ばした。
ふらふらと立っていたフランちゃんはバランスを崩してプールに落ち……
バサッ!!
「ア〜メ〜リ〜?あたしもそろそろおこるよ?」
「ゴメンね。じっさいに見てもらったほうがわかりやすいと思って……」
「ギリギリだったんだよ!おちていろいろガマン出来なくなったらアメリおそうからね!!」
「あはは……ホントにゴメンね。やりすぎちゃった」
……落ちる前にフランちゃんのマントが広がり、フランちゃんは空中に浮き始めた。
いや……よく見たらいつの間にかマントが翼になっていて、それをはばたかせてフランちゃんは空を飛んでいた。
「えっと…もしかしてマントじゃなくて翼だったの?」
「はい。魔力でマントっぽくしてあるだけです。母さまふくめて大体のヴァンパイアはそんな感じです」
「へぇ〜……」
てっきりマントだって思ってたけどアレはヴァンパイアの翼だったのか……驚きである。
しかしまあそれよりも……
「ところでアメリちゃん、さっきやめなさいって言ったよね?」
「ひっ!ご、ごめんなさいサマリお姉ちゃん……」
私にわかりやすく説明するためとはいえフランちゃんを困らせたアメリちゃんをきちんと叱っておかねば。
「駄目でしょそうやってお友達を困らせる事しちゃ。私じゃなくてフランちゃんに謝りなさい」
「は、はい……ゴメンねフラン……」
「う、うん…いいよ……でもしんぞうにわるいからいきなりやるのはやめてね」
「うんわかった……」
普段はこんな事するような子じゃなかったと思うんだけどな……
やっぱり幼馴染みにしか見せないような一面もあるんだな……
「それじゃあまあアメリちゃんも謝ったし、準備運動して泳ぎますか」
「そうだね…そういえばサマリって泳ぐの苦手じゃなかったっけ?」
「そんな事無いよ。前の時は足が人間だった時と違ってたから勝手がわからなかっただけ。お風呂で練習したからもう大丈夫だよ」
「ふーん……」
とりあえずアメリちゃんも反省した事だし、私達はプールで泳ぐ事にした。
「そんじゃあ俺らはあっちのベンチで喋ってるから」
「たまにのぞきに行きますから」
「それではアイラ様、私も彼らとあっちで待機してますので」
「わかったわ。それじゃあアメリとサマリさん、それとスズさん、一緒に泳ぎましょうか」
ユウロとフランちゃん、それとセリアさんはベンチで仲良くお話しに行った。
=======[ユウロ視点]=======
「あいつら楽しそうに泳いでるな」
「ユウロさんもおよぎに行けばいいじゃないですか。アイラさんの近くにいればおそらく大丈夫だと思いますよ?」
「いやまあそうかもしれないけど…そのアイラさんだって独身……」
「そう言うなユウロ。アイラ様だって結構お悩みになっているんだぞ?」
「そうですね…っていうかそんなに睨まないで下さいよ、冗談ですから」
『まあユウロが言いたい事もわかるが…アイラ様が独身の事はなるべく話題にしない事だな』
泳ぎに行ったサマリ達と別れた後、俺とフランちゃん、それにセリアさんとマルクさんでこんな感じの話をしていた時だ……
「あの、すみません…領主殿の近衛隊長であるセリア殿ですか?」
「ん、そうだが…お主は?」
「私はこの近くの王墓を少し前まで守護していたアヌビスです」
俺達の目の前に褐色の肌をして黒色の毛並を持った犬耳と肉球の付いた手足を持つ魔物、『アヌビス』が現れてセリアさんに話し掛けた。
「ああ、あの王墓か……私に何か用か?」
「はい…実はあの王墓に…私が夫と共にこの街に移り住んでしばらくしてから別のアヌビスが棲み付いたようなのです」
「何……それは本当か?」
「はい……この前行った時に門番をしているスフィンクスがそう言っていたので間違いないかと……」
どうやらこの街の近くには王墓があるらしい。
そこにこのアヌビスさんが棲んでいたが、夫が出来たことによってその王墓を離れた……が、最近になって新たなアヌビスが棲み付くようになってしまったらしい。
「という事は、トラップや配置が今知られているものと変わっている可能性が高いのか……」
「そういう事です。私としても元管理者としてこの事を知らせておいたほうが良いかと思い夫との時間を泣く泣く削ってこうして報告に来ました」
「そうか御苦労だった。プールまで報告ありがとう」
「いえ、たまたま夫とプールに来ていて、セリア殿を見掛けたので今お伝えしただけですので…では……」
その事を報告し終えたアヌビスはそそくさと去っていった…おそらく夫の下に行ったのだろう。
『これは…明日にでも調査しに行くか?』
「そうだな……あのアヌビスのおかげで随分内部の調査が済んだと思ったのにな……」
アヌビスの話を聞いた二人は、どうやら明日は近くにある王墓を調査しに行くらしい。
「あのー……」
「ん、どうしたユウロ?」
「俺も一緒に行っていいですか?」
「あ、あたしも!!」
「……は?」
だから俺は、一緒に着いて行っていいか二人に聞いてみた。
『何故行きたい?』
「いや…王墓ってピラミッドですよね?一度行ってみたかったので行きたいなーと」
「あたしも同じです!!」
だって…ピラミッドって実際に見た事無いし、それに行ってみたいからな。
どうやらそれはフランちゃんも同じらしく、俺と同じように身を乗り出して同行の許可を求めている。
「それは許可出来ん」
「えー」
が、セリアさんに速攻で駄目だと言われてしまった。
「危険な罠や王墓内の魔物に襲われるのかもしれないんだぞ?」
「いや、それでも行ってみたいんです!魔物のほうは自分で何とかしますから!!」
「あたしも!自分の身は自分でまもります!!」
「だがしかし……駄目なものは駄目だ!!」
「「えー」」
諦めずに説得しようとしたのだが……頑なに断られてしまった。
最終手段の「一緒に行かせてくれないのかよケチー」と言いたげな視線をフランちゃんと二人で送っているがさほど効果は無さそうだ。
もう諦めるしかないのかなぁと心が折れ始めた時だった。
「まあまあセリア、皆さんも連れて行っても良いのでは?」
「アイラ様……」
プールで泳いでいたアイラさんが話を聞いていたのか、それとも休憩しにきたのかこっちに向かって来てそう言った。
「セリア達が居れば安全でしょうに…それにユウロ君は元勇者、他の人達は皆魔物なんだから余程の事が無ければ危なくは無いと思うわよ?」
「しかし……いえ、わかりました……アイラ様もそう言うから連れて行っても良いぞ」
「おっしゃ!ありがとうございます!」
「わーい!!ありがとうございます!!」
アイラさんの説得(?)によって、俺達もついて行っても良いと言われた。
「ん?皆さん?」
「ええ、おそらくアメリ達も行きたいと言う気がしますからね」
「たしかに……」
なので明日は皆で王墓の探索をする事になった。
うん、楽しみだ!
====================
「うおー!ラクダに乗って砂漠を移動するってテンション上がるな!!」
「うん!たのしー!!」
「なんで二人ともそんな安定して乗れるの?私落ちそうで怖ひゃあ!?」
次の日の朝、俺達は昨日のアヌビスさんが言っていた王墓を調査、探索するためにラクダに乗って向かっていた。
「サマリもこっちにするか?」
「日光当たらないしけしきはちゃんと見れるしでいいことだらけですよ!」
「い、いいよ。折角だからこのまま頑張る!!」
「はは…落ちるなよー」
ちなみに体系的にラクダに乗れないスズと、日光の下に出れないフランちゃんは馬車…と言っても引いてるのはラクダなのでラクダ車になるのか?…に乗っている。
「まったく……遠足じゃないんだぞ……」
『まあまあいいじゃねえか。あいつら今までだって一応戦闘経験あるらしいし、それに王墓内部ならヴァンパイアであるフランも立派な戦力になる』
「まあそうだが……」
『なに、いざとなったら俺達が護ってやればいい』
「……そうだな……」
セリアさんがマルクさんと何か話しているが…まあおそらく俺達の事だろう。
とまあラクダに乗っての旅を楽しみながら進むうちに……
「さて…目的地が見えてきたぞ。全員ここから気を引き締めるように」
『はい!!』
目的の王墓が視界に入ってきた。
『おそらくだが入口にはスフィンクスが門番をしているはずだ。女性はまあ大丈夫だし、俺もセリアが居るからいいが……』
「狙ってくるとしたら俺ですね……」
『そうだ…ユウロ、お前知識あるか?』
「偏っているうえにそんなにないです……というか答えられても相手が発情して襲いかかってくる事もありますよね?」
昨日のアヌビスさんの話からしたらおそらく入口にはスフィンクスがいる。
彼女がターゲットにするのはおそらく俺……どんな質問がくるかわからないが答えないと魅了の呪いが掛けられてしまう。
この首飾りは魅了を打ち消す力があるけど……スフィンクスの呪いまで防げるかはわからない。
それに…もし答えられても逆にスフィンクスが発情して襲いかかってくる可能性もある。
そっちは返り討ちに出来ればそれでいいが……発情した魔物がそう簡単に返り討ちにあってくれるかは微妙だ……
「あ、それはたぶん大丈夫。昨日アメリちゃんに砂漠に居る魔物の特徴を聞いてある程度対策してあるから」
「えっそうなの?まあサマリ達を信じるわ」
だがサマリ曰く何か秘策があるらしい。
自信満々な顔でそう言う事だし、他に何も思いつかないので、俺はサマリを信じる事にした。
「さて……到着だ……入口には誰もいなさそうだが……」
「……ううん……スフィンクスのお姉ちゃん、ちかくにいるよ……」
ラクダから下りた後、入口まで慎重に歩いてきた俺達。
入口には誰もいなさそうだが……アメリちゃん曰くどこかに隠れているらしい……
「……上だね……」
「えっ……あ!」
「えっ!?完璧に隠れていたはずなのにどうしてわかったの!?」
アメリちゃんが上に居ると言ったので見てみると……確かに入口の上に態勢を低くしながらこちらを見ているスフィンクスがいた。
気付かれるとは思っていなかったのか、スフィンクスはかなり慌てている。
「わわわ……こほん……よ、よく来たにゃ怪しい者共。うちはこの王墓を守護するスフィンクスにゃ!」
「……おい、さっき『にゃ』なんて言ってなかったじゃねえか……」
「う、うるさいにゃ!!キャラ作りとかじゃないにゃ!!」
「そこまで言ってないが……キャラ作りなんだな……」
とりあえず落ち着きを取り戻した(戻りきって無い気もするが)スフィンクス……
「く、くそ〜…いいにゃ!!そこの茶髪の男!ここを通してほしかったらうちの質問に答えるにゃ!!」
「ちっ……やっぱそうきたか……」
「いくにゃ!!まず1問……」
予想通り問題を俺に出題してきた……
と、思ったら……
「ふんっ!」
「にゃにゃ!?にゃんだこれー!?んぐーー!!」
後ろに居たスズが、スフィンクスが問題を出す前に糸で口を含めてグルグル巻きにしてしまった。
「問題出されると困るなら問題出す前に封じてしまえばいいと思って」
「んぐー!!んむむー!!(酷い!!うちの役割無くすなー!!)」
「まあ爪とかで糸切られても面倒だから……おやすみ」
「むぐー!!むぅ………ぐぅ……」
そしてとどめとばかりにサマリがぎゅっと抱きしめて……スフィンクスを寝かせてしまった。
「さて行きましょうか」
「あ、ああ…そうだな……」
『えげつないな嬢ちゃん達……』
まあこれでスフィンクスの脅威は去ったので、俺達は内部に進む事にした……
…………
………
……
…
「うーん…そこのつぼにはつぼまじんさんがいるよ」
「そうか…じゃあ壊すか……」
(ええっ!?)ガタガタガタガタ……
「待ったスズ!そこまでする必要は無い!!壺がめっちゃガタガタ震えて怖がってるじゃないか!!」
「もちろん冗談だよ。ちょっと脅かしてみただけだ」
内部に進み、順調に奥まで進んで行ってる俺達。
王墓内は仄かな松明の灯りだけが通路を照らしているだけなので視界は悪く、トラップに気付きにくくなっている。
しかしトラップのほうはそんなに多くなく、セリアさんが順当に解除してくれているおかげでなんとか大事にはなっていない。
一つだけ気付かずに発動させてしまった大きな岩が転がってくるトラップも、日光が当たってない事によってヴァンパイアの怪力を思う存分使えるフランちゃんが苦も無く止めて皆で細かく粉砕したから問題にはならなかった。
魔物のほうもご覧の通りアメリちゃんの驚異的な魔力探知で発見してはスズよサマリがどうにかしているので問題は無い。
「おっ!こんな所に宝箱が!!」
「えっホントに!?何が入ってるんだろ〜」
「……あーこれミミックさんだよ……」
「「え……本当に?」」
「うん」
「……ぬか喜びさせやがって……引き摺り出すか……」
「そうだね……アメリちゃん後ろから蓋開けて……」
「うん!……あ、にげた……」
「「ちっ」」
……いやこっち側に問題があるような気もする……けど、まあ助かってるっちゃあ助かってるからいいか……
「あーうー……おとこの子だー……」
「あ、マミーのお姉ちゃんだ」
「おとこの子ー……」
「くっ……」
「ねえ……マミーの包帯って全部繋がってる?」
「あー……ふぇ?だれ?羊?」
「ちょっと確かめてみるね。そーぉれぇい!」
「ひゃうっ!?あーれー」
「おお〜っ!マミーのお姉ちゃんコマみたい!」
……やっぱ良くない気がしてきたなぁ……
「あう……ピリピリする〜……」
「そういえばマミーって肌敏感なんだよね……私の毛で擦ってみたらどうなるかな♪」
「ふぇ!?や、やめ……」
「ユウロを狙ったんだから止めないよ。そーれこちょこちょこちょ……」
「ひゃぁいあひうはういひひゃおいいはうひょあ〜!?」
……うん、だめだ。
「待てお前達!!いくらなんでもやりすぎだって!!」
「え?そうかなぁ……」
「足元で絶頂してるマミーを見てもまだ疑問に思うのか!?」
「だってユウロお兄ちゃんをまもるためにやってるんだよ?」
「だから俺自身は特に何もしてないのに罪悪感が生じてんだよ……」
「まあまあ気にするなって!」
「気にしたから止めてんだよ……」
やり過ぎだって注意したが俺の為にやっている部分もあるので強く言えないうえに3人はそうは思っていないらしい。
これはもうどうする事も出来ないな……
「やっぱりだいぼうけんって感じでワクワクしますね!」
「それはそうだけど……あの3人は暴れすぎだろ……」
「でも楽しくないですか?」
「まあ楽しいけどさ……俺の為って言うのやめてくれないかなぁ……」
「あははは……」
大人しく楽しんでるのはフランちゃんだけか……
というか…もうちょっと慎重に進むべきだと思うけどな……
だって……
『……なんの心配もいらなさそうだな……』
「ああ……だが油断は出来ない…まだ例の新たなアヌビスは出てきていないからな……」
『だな……さっきから見掛ける魔物はただの巡回か、それともアヌビスの指示か……』
セリアさんの言うとおり、たしかにさっきからマミーはそこそこ見掛けるが、肝心のアヌビスは全く見ない。
おそらく王墓内最深部にいるのだろう……それだけでなく監視している可能性もある。
「よーしどんどん先に進むぞー!!」
「いいけど油断するなよ?トラップだって物理的なものならまたフランちゃんが止めてくれるかもしれないけど呪いとか魔術の類だと大変だからな」
「わかってるって!きちんと細心の注意を払って進むよ」
だからこそ俺達は慎重に、それでいて大盛り上がりでどんどん奥に進んでいった……
…………
………
……
…
「前の守護者であったアヌビスの話だとここが最深部手前の部屋だ……」
「どうアメリちゃん…この部屋の中に居そう?」
「んー…わかんない……おくに進むにつれて魔力がいっぱいになってきてたから……」
「まあ、居たら居たで話し合い…出来無さそうだったら戦うだけだ……」
落とし穴や吊り天井などのトラップ、ワーバットやグール、マミーなどの魔物を難なく掻い潜り、途中で昼飯を食べながらも最深部手前の部屋まで辿り着いた俺達。
ここまではアヌビスのアの字すら見掛けなかった…だから、この部屋に居る可能性が高い。
「じゃあ入るぞ……気を引き締めろ……」
『……行くぞ!!』
マルクさんの合図で扉が開き、一斉に部屋の中に入った俺達の前に現れた光景……それは……
「はぁ……ようこそ侵入者諸君……安っぽい宝や研究に使いたい土なんかは適当に持ってっていいからさっさと帰ってくれ……」
「……え?」
「はぁ……今から暇つぶしの時間なんだ……相手するの面倒だから早く帰れ……」
「……何だこれ?」
明らかにめんどくさそうな顔をして椅子に座りながらそう俺達に言ってきたアヌビスだった。
手には天秤が上部に付いた杖を持って俺達に向けてこそいるが動く気配は無い。
また近くに置いてある水晶にはセリアさんが映し出されているのでやはり監視はしていたようだが……それといって何かをした形跡は無い。
「おい貴様……何故この王墓に居る?」
「何でって……ここ護ってたアヌビスが旦那作って無責任に出て行っちゃったからってアヌビスになって困っていた私にスフィンクスやマミー達が泣きついてきたから……」
「それで代わりをしていると……」
「そ、ここに住ませてもらう代わりにね……まあ皆ここを護るって言うより男探しが目的になってるから仕事も楽だからいいけどね……」
「そうか……」
どうやら成り行きでここに住む事になったらしい。
しかもやる気無いというイメージとはかけ離れたアヌビスの姿に驚いて皆まともに動いていない。
セリアさんだけが冷静にこのぐーたらアヌビスと会話している状況である。
「だから特に何も無いんだったらさっさと帰ってちょ……危害さえ加えなきゃ好きに調査してもいいから……あ、でもトラップ解除するのは面倒だから気をつけてね〜……」
「そうか…邪魔したな……」
ただまあこっちに何かをする気は無さそうなので、そのまま部屋をでて別の場所を調査しに行こうとしたのだが……
「あ、そうだ……ちょっと待って……」
「ん?何か?」
「いや…あなたは別にいいんだけど……」
出ていこうとした俺達を……
「ちょっとそこの凶暴ワーシープと角が生えた緑アラクネとやけに白いアリスは残ってくれない?」
「きょうぼ……私凶暴!?」
「緑アラクネって……アタイの事か!?アタイはウシオニだよ!!」
「アメリはアリスじゃない!!リリム!!」
「まあなんでもいいわ。とにかくあんたら3人はここに残って」
いや…出ていこうとしたサマリとスズとアメリちゃんの3人を引き留めた。
「まってください、えっと……」
「私はプラナだよヴァンパイアのお嬢ちゃん」
「はい…ではプラナさん、なぜサマリさんとスズさんとアメリはのこらないとダメなのですか?」
「この3人は明らかにここに住んでる魔物に大きな危害を加えたからお仕置き」
「ええっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!あっちからユウロを狙ってきたから追い返しただけじゃんか!!」
「いやあからさまにやり過ぎだから。私だって勇者やってた時からここまでした事無いって」
やっぱりあれはやり過ぎだと思われたらしい……ちょっとしかめっ面で3人にお仕置きすると言い始めた。
…………ん?
「勇者やってた時?」
「ああ、私元人間の勇者。この杖『リブラ』で盗賊や山賊達を退治してたらいつの間にかアヌビスになってた」
プラナが最後に何気なく言った「勇者やってた時」という言葉が気になったので聞き返してみたら、自分は元人間で、リブラという名の武器を使っていたらアヌビスになっていたと言った…
という事はつまり……
「その杖コンステレーションシリーズの一つか」
「お、そう言うって事は…じゃあやっぱり私がアヌビスになったのはこいつのせいか……古代の聖なる武器だって聞いて嬉しくて振り回してたのにとんだ呪いの装備だって事か……」
「ま、そういうこった。あまりショックを受けてないようだから良いんじゃね?」
「まあアヌビスになったから貧乏村から追い出されてしまったがこうしてもっといいとこに住めたし、それにどちらかというと不細工だった私も見違えるほど美しくなれたから結果的には問題無い」
「ふーん…お前勇者だったのに貧乏な村に住んでたんだな」
「一応自宅あったしな……今となってはもう親も魔物になっていなくなっちゃったしどうでもいいけど……ただまあ魔物になったせいでやたら時間が気になるし自分の予定通りに進まないと気が気じゃなくなるのは自分でも困る……元が勇者のくせにズボラで不真面目だったからな……」
プラナはなんとあの人間にとっては傍迷惑な呪いの装備品シリーズ『コンステレーションシリーズ』の被害者だった。
まあ本人は割り切っているのでそこは問題無いのだろう。
「で、3人にどんな罰をするつもりなんだ?マミーの呪いはやめてくれよ。俺が困るからな」
「ああ、それなんだが……最初はそうしようと思ったが、なにやら事情がありそうだし別の呪いにするよ。もちろんある程度時間が経てば効果が無くなるものをな」
「別の呪い?」
とりあえず話を戻して、アメリちゃんとサマリとスズが受ける罰の内容を聞き出す事にした。
たしかにやり過ぎ感はあったので少なくともサマリとスズはある程度の罰は受けてもいいだろうと思い内容を聞いてみたところ、何かしらの呪いを受けてもらうという事だった。
マミーの呪いとかだったらどうしようかと思った…魔物はマミー化しないと言っても敏感肌にはなるかもしれないし、もしかしたらそのまま発情ぐらいはするかもしれないからな……
そうしたら襲われるのは確実に俺だ……いくらなんでもそれは困る。こんな適当な流れで身体を重ねるとか死んでもゴメンである。
だが…いったいどんな呪いだろうか?
「そ、今から私はあんたら3人に向かってそれぞれこのリブラを介していくつかの呪いを飛ばす。命に係わったり性的に興奮してそこの…ユウロだっけか?ユウロを襲うような呪いではないから安心しな。その呪いをこの部屋の隣の広い場所で私が疲れるまでひたすら避けてもらう。当たった時点で即終了、呪いと一日中付き合う事になる」
「えー…やらないと駄目ですか?」
「お前らどれだけここに住む魔物に迷惑かけたと思ってるんだ……むしろ問答無用で呪い掛けてボコボコにしないだけありがたいと思いな……」
「はい……たしかにマミーの素肌をくすぐるのはやり過ぎましたごめんなさい……」
「わかってるならよろしい……では少しだけ軽くしよう」
「ありがとうございます」
詳しくは言わなかったが、まあとにかく一時的で比較的安全な呪いらしい…
しかも罰というよりゲームだな…今から暇つぶしの時間だって言ってたし、その暇つぶしも兼ねているのだろう。
「そんじゃあ俺とフランちゃんはセリアさんの手伝いしてるから3人とも頑張ってな」
「あ、うん…」
「アメリがんばる!」
「ふん!そのくらい簡単に避けてやるさ!!」
という事で該当者3名を残して俺達は王墓内の別の場所を調査しに行く事にした……
========[スズ視点]=======
「という事で今から始めるが…何か質問はあるか?」
ちょっと王墓内で調子にのったツケを払わされることになったアタイ達は、プラナと名乗るアヌビスと王墓内でもとりわけ広い部屋に来ていた。
「はい!今からやる事とは全く無関係ですが質問です!」
「何だサマリ?一応言ってみな」
「なんでプラナさんは元勇者であるにも関わらず私達魔物に優しいのですか?」
始める前に質問時間を設けてくれたので、色々聞いてみる事にした。
まずはこのプラナという人物に対する疑問だ……元勇者というからてっきり魔物になった今でも魔物には厳しいと思っていたのだがそうでもない……
「まあ…私は悪い奴が許せなかっただけだからな…それに元々自分の目で魔物が悪い事をやっているのはほとんど見た事無かったからな。私は魔物が一概にして悪だとは思ってなかったってのが魔物に優しいのかな……」
「そうなんですか……」
どうやらそれは元からの様だ……
そういう勇者もいるんだなぁ……まあ見た事あったり聞いた事あるのが少ないから居てもおかしくは無いのか……
「じゃあアメリもしつもん!」
「何だアメリちゃん?これからやる事についてか?」
「う〜ん…ちょっとちがうかも……そのつえってどんなことが出来るの?」
次に聞いてみたのは、プラナが持つ杖『リブラ』の事だ。
リブラを介して呪いを飛ばすと言っていたが、他にどんな事が出来るのか知りたいのだ。
アタイは知らないがサマリ達は何度か同じシリーズの物を見ており、それぞれ変わった性能を持っていたと言うから非常に気になるのだ。
「ああこれか?これはまあ今から使うのは私の魔力を弾にして打ち出す機能だな。アヌビスになった今は呪いを弾として打ち出せるようになったからそれを避けてもらう」
「へぇ……他には何かあるの?」
「後はまあ相手と自分の能力を平等にしたり、悪人に犯した罪の分だけ罰という名の攻撃を与えたりとか…まあ普通の棒術も使えるな」
「やっぱりコンステレーションシリーズって不思議な能力があるんですね……」
今さらっと凄い事言った気がする……
特に相手と自分の能力を平等にするって…つまり人間とドラゴンなんかも全く同能力で戦えるって事だよね……恐ろしい武器だ…勇者してる時に会わなくて良かった……
「他に質問は無いか?」
「あ、じゃあアタイが……今から使う呪いって結局どういった呪いなんだ?」
最後にアタイが、今からどんな呪いを使う気なのかを聞いてみた。
「ああ、そういえば言ってなかったか…笑いが止まらなくなる呪い、腹痛に襲われ続ける呪い、深い眠りにつく呪い、喋れなくなる呪いの4種類を適当に飛ばす」
「ちょっとキツイの多くない!?特に腹痛と喋れなくなる呪い!」
「これは罰だからな。それにちょっとキツイと言っても当たらなければ良いだけだ。ちなみに当たったとしても日付が変わる頃には効果は切れるし、アメリちゃんが本当にリリムならアメリちゃんはおそらく夕飯の時間までには切れるだろう」
「だからアメリは本当にリリムだってば〜!!」
当たるとやや大変な呪いばかりだが…プラナが言う通り当たらなければ問題無い。
もう聞きたい事は無くなった……だから……
「もう質問が無いのなら始める……私が疲れるまで…まあ大体20分位だ…呪いを受けたくなかったら避け続けろ!じゃあ始め!!」
アタイ達は、プラナからの罰…というか、一種の暇潰しを開始した!
「さあ避けな。掠っただけでも効果はあるからな!」
「えっ本当に?やばっ!!」
「ひゃあ〜!!」
「んーしょっと!これくらいならかんたんによけれるよ!」
「そう言って居られるのも今のうちだ。段々激しくしていくからな」
アタイ達一人一人を狙って数秒おきに飛んでくる呪いの弾…略して呪弾。
アタイは素早く左右にかわしながら激しくなるらしい攻撃を避ける為に天井や壁に糸を張り巡らせている。
アメリは自身の翼を使って縦横無尽に空間を飛びまわって余裕で避けている。
ただまあ…サマリは必死に跳んだりしゃがんだりしてどうにか避けているという感じだ。
「それ3連発!4連発!2連発後すぐに3連発!」
「よっと!そんな直線的な攻撃当たるわけないだろ!」
「わ、私ギリギリなんだけど……」
「ならば…軌道が変化する弾だ!」
「おっと……そうきたか……」
「これくらい平気だよー♪」
更に激しくなっていくプラナの攻撃。
アタイは先程張っておいた糸を跳び移りかわす…いきなり軌道が変化してきたので危うく当たりそうになったがまだ大丈夫そうだ。
アメリはやはり行動できる範囲が広いのでこれくらいの変化は特に苦も無さそうだ…呪弾が掠りそうにすらなってない。
ただまあやっぱり……
「ひゃっ!ま、曲がるなんて反則〜!!」
「最初の脱落者は……」
「あ、避けられnあうっ!」
「サマリのようだな……」
元々戦いとかとは無縁なサマリには厳しかったらしい。
開始から5分、なんとか避けていたサマリは左右両側から曲線を描きながら迫ってきた呪弾を避けきれずに2つとも命中してしまった。
当たった瞬間サマリは動きを止め……
「っ……………っ……………」
寝息すら立てずにその場で寝てしまった。
「サマリお姉ちゃん……気持ちよさそうにねてるね……」
「当たったのは深い眠りにつく呪いと喋れなくなる呪いの二つだな……まあワーシープだし眠る事は問題なさそうだな……」
「そうだな…とりあえず隅に移動させるから待って……」
アメリの言う通り気持ちよさそうに寝ているサマリを部屋の隅に移動させる…これから更に激しくなるのに巻き込まれるのは大変だろうからね。
「よし…ここなら安全kうわっと!」
「油断してるとスズも当たるぞ?私が言うのもアレだがあと15分だ頑張れ」
「くそっ!絶対にかわしきってやる!」
サマリを安全な場所に移動させた瞬間、今まで以上の速度で螺旋を描きながら飛んできた呪弾をギリギリ身を捻ってかわしたアタイ。
その後も連続で飛んでくる呪弾を駆け抜けてかわし、糸を張ったところまで戻ってまた集中してかわし続ける。
しかし本当に時間が経過する毎に弾数が多くなる…最初は一つずつだった呪弾も、今はパッと数えただけでも両手の指で数え切れないほど視界に入ってくる。
「うわあっ!あ、あぶなかった〜……」
「今のは腹痛の呪いだったな…当たらなくて良かったな」
「ホントによかった……あと10分がんばる!」
四方八方から飛んでくる呪弾をスイスイとかわし続けているアメリも余裕は無くなってきたようだ。
尻尾の先に当たりそうになっていたがギリギリで気付いて尻尾を丸めかわした。
と、アタイも余所見している暇が無くなってきた…
「ほらほらどうした?もっと勢いを上げるがそれじゃあ当たってしまうぞ?」
「くっ……こうなったら……!!」
そろそろかわせなくなる程飛んでくる呪弾……
直接触れたら呪いが掛かってしまうから触る事は出来ないが……もしかしたらと思って魔力を込めて糸を飛ばしてみると……
「これならどうだ!!」
「ほぉ……糸で弾き返すか……」
糸に当たった呪弾は上手い具合に弾き飛んた。
これならある程度は楽になる…かわせない物は弾き飛ばせばいいのだから。
「そっか……ならアメリも!『マッドボム』!!」
「泥の塊を出す魔術か……厄介って事じゃないが連発されると当たるものも当たらなくなるな……それじゃあ……」
アメリちゃんもその様子は見ていたようで、自身の攻撃魔法で呪弾を弾き飛ばしている。
これなら残り8分もいける…そう思った時だった。
「これを防げたら褒めてやろう!!」
「なっ!?」
「ええっ!?」
突然攻撃が止んだかと思ったら…プラナは頭上で杖をクルクルと回し始め……
「吹き飛べ!!」
「うっそお!?」
「あわわわ…!!」
無数の呪弾を自身の周りに発生させ、放射状に広げて発射した。
とてもじゃないが避ける事は出来ない量だ……かといって糸で当たらないように撃ち落とせる量でもない。
しかもどうしようか考える余裕もない程速い速度でこっちに迫ってきている……
もうこれは当たるしかないかな……と、諦め始めたときだった。
「つかれるけど……これしかない!『ライトウォール』!!」
「ほぉ…アメリちゃんはやっぱリリムなんだな…魔術抵抗壁魔法とは……アメリは大丈夫そうだな」
アメリちゃんが光で出来た壁を自身の目の前に出しているのが目に入った。
それを見たアタイは、ある賭けに出る事にした。
「うおおおおおおっ!!」
「ん?なんだ…壁や天井に張ってあった糸を剥がし始めて……」
今から新たに糸を出しても遅い…そう考えたアタイは足場に使っていた糸を全部素早く集め一つにして……
「これなら……!!」
「ほう……アメリちゃんの真似か……」
布状にして、頭から足先までを覆うよう壁のように拡げた。
さっきまでの攻撃の際、呪弾は足場に使っていた糸にも当たっていたが、糸は全く切れていなかった。
なので糸で作った壁なら防ぎきれるかもしれない……そう思ってアタイはすでに出ていた糸を集め壁を作った。
「うっ、くっ……」
拡げた瞬間、呪弾は目の前まで来ていたようで、壁伝いに腕に衝撃が走った。
2発…4発…8発…と、連続して勢い良く壁に当たる呪弾の威力にアタイは吹き飛ばされそうになりながらも必死にこらえた。
ダダダダダダダダダダダダダダダン………
「くっ……はぁ……はぁ……」
アタイが即席で作った糸の壁は呪弾によってボロボロにこそなっていたが……なんとか防ぎきれたようだ。
しかしまだ時間は残っている……次なる攻撃に備え身を構えようとした……
「はあ〜……二人とも防ぎきっちゃったか〜……じゃあ終わりな〜」
「「……へっ?」」
しかし、プラナはもう疲れ切った様子で地面にぺたっと座りこんでいた。
「え…でもまだ5分位あるぞ?」
「何を言ってる?私が疲れるまでだって言ったじゃないか」
「あ、そういえばそうだったね…アメリわすれてた」
どうやらプラナはさっきので魔力、体力共に使い切ってしまったらしい……三角に尖った耳や大きな黒い尻尾を力無く伏せてだるそうにしている。
「という事で二人はそのまま帰って良いよ……けどまあ誰かにあったら謝ってな……」
「お、おうわかった……」
「それじゃあ私はこの後お昼寝の時間だから……邪魔したら問答無用で発情状態にしてやるからな……」
「う、うん……じゃあねプラナお姉ちゃん……」
「じゃあなアメリちゃん……ああそうだ、一緒に居た人達はこの通路を進んで2つ目の別れ道を右に進んだところにある小部屋の奥の部屋にいるから……それじゃあ機会があったらまた遊びに来いよ〜……」
そしてそのままプラナは眠そうにさっきの部屋に帰って行った……
「……なあアメリ……アヌビスって皆あんな感じなのか?」
「う〜ん…ちがうと思う……アヌビスさんってみんなマジメだけどプラナお姉ちゃんはそんなことなさそうだもん……」
「だよなぁ……あ、真面目に不真面目してるんじゃない?」
「あーそうかも……きっと強く人間だったころの性格がのこってるんだね」
「だな……それじゃあアメリ、サマリ連れて帰ろうか」
「そうだね。サマリお姉ちゃんねてるから今日のごはんはどうしようね……」
「まあ…そこはアイラさんとこに世話になるか……この街の名物でも食べに行くかだな……」
「そうだね……とりあえずセリアお姉ちゃんたちと合流しよう」
「ああ……」
アタイは今日あった出来事をアメリと話しながら、寝続けているサマリを背負いつつセリアさん達と合流すべく歩き始めた。
12/09/21 23:08更新 / マイクロミー
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