幸せを運ぶウタウタイ
「……」
気がついたら、僕は森の中をふらふらと歩いていた。
無意識のうちにこんな場所まで来てしまったのか…
僕はこれからしっかりしなければいけないのに……
「……」
少し前のある日、僕の両親が事故で死んでしまった。
その日の朝までは普通に生きていたのに、食料を買いに隣町まで二人仲良く買い物に行く途中に落石が二人を襲い…そのまま死んでしまった。
一週間前に葬式が終わり、墓に埋めたところも見たけど…今でも両親が死んでしまった事が信じられない。
だからなのか、僕は両親が死んでから笑うことはもちろん、泣いてすらいない。
まるで心が凍ってしまったようだ。
両親が死んでから、自分が何をしているのか時折かわからなくなる。
今日のようにふらふらと、無意識のうちに外に出ては、何も考えずにどこかを歩いていることが多い。
「……」
近所の人たちは優しく接してくれるけれど、あまり僕を助けてくれたりはしない。
まあ僕が住んでいる村は全体的に貧しいから仕方が無い…だから僕は自分の力で生きなければならない。
だけど、なにもする気が起きない。
なにも考えられない。
「……」
だから、このまま僕は森の中をふらふらする事にした。
家に帰っても誰もいないから、怒られる事もないし、心配される事もない。
そう、誰も、いないのだ………
♪〜〜♪〜〜〜……
「……ん?」
森の奥の方へ踏み込み、そのまま当てもなくふらふらとしていたら、どこからか歌みたいなものが聞こえてきた。
この森は人間はもちろん、動物ですら住んでいる者はいない…もしかしたら魔物が居るかもしれないけど、今のところ発見されたことは無い…つまり普通の植物と虫しかいない森のはず。
だから歌なんて聞こえてくるはずが無いのだが……
♪〜♪〜〜♪ーー……
やはり気のせいではなく、はっきりとまでは言わないが歌が聞こえてくる。
(いったい誰が歌っているのだろうか…声の高さから女性だとは思うけど…)
そう考えながら、僕の足は自然と歌が聞こえる方に向かっていた。
====================
「♪〜♪〜〜〜♪ーー……」
更に森の奥まで歩くこと数分。音の発生源…歌っている者が視界に入った。
「♪ー♪〜〜♪ーーー……」
その者は、他の木よりも少し大きな木の上で歌っていた。
「♪〜〜〜♪〜〜〜〜……」
おもわず聴きいってしまう歌を、綺麗な声で歌っている者…
「♪ーー♪〜♪♪〜〜……」
だが、その者は…やはり人ではなく、魔物だった。
「♪ーー♪〜♪ーーー……」
顔立ちこそは人間と同じで、茶色の瞳で空色のツインテールな髪型をした可愛らしい女の子だが…
「♪♪♪〜〜〜♪〜〜……」
本来腕があるべきところは青い翼がついていた。
「♪ーーーー♪ーーー……」
足は、鳥類の足とそっくりだった。
「♪〜〜♪♪〜〜〜〜……」
つまり、歌っている少女は…魔物は……
「♪♪〜♪ーー♪〜〜……」
これらの特徴を持っている魔物は……
「青いハーピー…」
「失礼ね!!私はセイレーンよ!!」
小さな声で言ったうえ距離もあったけどどうやら聞こえたらしい。キッとこっちを睨みつけビシッと翼の先端をこちらに向けてすぐさま大きな声で訂正してきた。
「そもそも歌ってたのになんでセイレーンって思わないの!?」
「だって…セイレーンがこんな森に居るなんて思わなかったから…」
セイレーンの主な生息地は海辺だったはずだ。少なくとも植物と虫ぐらいしかいない森に居るとは思わない。
だから青いハーピーだと思ったのだが、その結果目の前のセイレーンさんを怒らせてしまったようだ。
「まあいいわ…ところでキミ、ずっと私の歌を聴いていたよね?」
「う、うん…」
確かに、魔物が歌っているとわかった後でも僕はずっと立ち止まって聴いていた。
そう言ってくるという事は、僕が居る事に気づいていたという事か。まあ隠れて聴いていたわけじゃないから不思議ではないけど。
「私の歌、どうだった?」
「どうって…」
「私の歌で皆が幸せに、笑顔になれそう?」
先程までとは違い、今度は真剣な眼差しで僕に感想を聞いてきた。
嘘をついても何されるかわからないので素直に言う事にする。
「綺麗な歌で…おもわず聴き続けていたよ…凄く良かった。笑顔になれると思うよ」
「ふーん……嘘ね。お世辞はいいわよ。本当の事を言って!」
本当の事を言ったのだが…何故か嘘だと思われてしまったようだ。
でも実際彼女の歌なら皆かどうかはともかく笑顔になる人は居ると思う。
だから素直にこう言ったのに…自分に自信が無いのかな?
「う、嘘じゃないよ…」
「ふーん…」
「じゃあなんでキミは笑顔になっていないどころか私の歌を聴いて泣いてるの?」
「えっ!?」
彼女にそう言われ、僕の頬を触ってみると、何か温かいものが流れているのを感じた。
流れをたどっていくと…僕の目から流れていた……つまり、これは僕の涙……
彼女に言われて初めて自分が泣いている事に気がついた。
「あ、あれ?なんで涙が…お、おかしいな…」
「どうしたのキミ?何かあった?」
両親が死んでから出したくても出なかった涙が今になって勝手に溢れてくる。
涙と一緒に、両親が死んだ事による寂しさや悲しさまで…溢れて……
「な、なんで……なんで……!!」
「ちょ、ちょっと、大丈夫なの!?」
「う……ぐす……うえええん……!!」
まるで凍った心が溶けだしたかのように、僕の涙が、寂しさが、悲しみが勝手に溢れて止まらなくなった。
「うええええええええんぶぶっ!?」
「お、落ち着きなさい!!ね?」
大きな声をあげて泣いていたら、彼女が僕の頭を胸で抱きしめた。
僕を落ち着かせようとしているのか、彼女の翼が僕の背中をポンポンとたたいている。
何か不思議な感じ…暖かくて……安心する……
「落ち着いた?」
「…ぐすっ……うん……」
いつの間にか涙も止まり、僕は落ち着いていた。
「なんで急に泣き出したの?私の歌がそんなに下手だった?」
「ううん、違うよ。実はね……」
僕はそのまま、なぜか出会ったばかりの、しかも魔物…セイレーンである目の前の少女に、両親が死んだ事を話し始めた……
……………………
…………
……
…
「……という事さ。だから、ある意味ではキミの歌を聴いたから僕は泣く事ができたんだ。ありがとう」
「そう……大変だったね……」
どうして泣いていたかを目の前のセイレーンに全て話した。
セイレーンと言えども他人に話した事によるものか、さっきまでと違い気が楽になっている。
それに、両親の死も受け入れる事が出来たのか、寂しさはあるものの、しっかりしなきゃとはっきり思えるようになり、悲しさは後を引き摺っていなかった。
「まあね。でも本当に大変なのはこれからだよ。両親が残してくれたもの…思い出とかは沢山あるけど、生活に必要なものはそんなに残ってないからね」
実際これから僕が一人で生きていくためには働いてお金を稼いだりしなければ駄目であろう。そうなるといつまでもウジウジしてても仕方が無い。
今日彼女の歌を聴けたのは良かった。気持ちの整理が出来たのだから。
「ところで、なんでキミはこんな植物と虫しかいない森に居るの?」
気持ちの整理がついたところで、彼女を初めて見たときから疑問に思っていた事を聞いてみる事にした。
だってこの森は魔物がいるなんて聞いた事が無い。しかも海辺に生息していると言われているセイレーンが森に居ると言うのも変だ。
なので、目の前のセイレーンさんに聞いてみた。
目の前の少女は魔物だという事をとっくに理解しているのに、僕は一切逃げようとは思わずに聞いてみた。
「私?私は人が居ないところで歌の練習をしようと思ってこの森に居たのよ」
「え?海から来たの?ここ海から遠いのに…」
「違うわよ!私はウタウタイである両親といろんな土地を周っているのよ…あなたは反魔物領側から来たようだけど、この森のこっち側は親魔物領の村があるの。お母さんは今そこで歌を歌ってるのよ」
「へぇ〜……」
この森の向こう側が親魔物領の村だったなんて初めて知った。
どうせ調べたのは僕が住んでる村周辺の森だけだろう。魔物は村周辺にはおらず、こっち側に居るんじゃないかな?
それともうひとつ、よくわからない単語が出ていた…
「ウタウタイって?」
言葉の意味からすると詩人か歌手の事だろう。そして彼女がセイレーンという事を考えれば、このウタウタイは歌手の事を指しているとは思うが…ならばどうしてそんな言い方をしているのだろうか?
「親魔物領ではそこそこ有名な世界一の歌姫…私のお母さん、正確には両親の事。世界一の歌手としてじゃなく、世界中に歌で笑顔を届けるウタウタイとして旅をしている…だからウタウタイ」
「そうなんだ…」
彼女のお母さんは世界一の歌手…笑顔を届けるウタウタイ…
だからあんなに歌が上手で、笑顔になれるかを聞いてきたのか。
「でも私にはお母さんの歌の才能は受け継がれなかったみたい。普通のセイレーンと同じ、もしくはそれ以下の歌しか歌えない。だから練習してたんだ…」
「そんなに下手かな?僕にはとても上手に聞こえたけど…」
僕が素直な、心からの言葉を発したら…
「…ふふっ、ありがと!たとえお世辞だとしても嬉しいよ!」
「いや、お世辞じゃないよ…」
優しい笑顔を僕に向けて、お礼を言ってくれた。
その笑顔がとっても可愛くて、ついドキッとしてしまった。
「でもね、私はもっと歌が上手になりたい。お母さんに負けない位、そしてそんなお母さんの師匠だったお父さんにも負けない位に…」
「…なんで?」
「へ?」
「いや、なんでそこまで上手になりたいの?今でも上手で、素敵で、心に響く歌なのに…」
「そう言ってくれると嬉しいけど…そこまで褒めても何も出ないよ?」
「いやいや…だからお世辞じゃないって…」
まだお世辞だと思っているらしい。そこまで自分の歌に自信が無いのだろうか?
まあでも無理ないか…両親が凄い歌手らしいから、どうしても比べてしまうのだろう。
それでも、自分の歌に少しは自信を持ってもいいとは思う。
僕の心に響いた、素敵な歌を歌えるのだから。
「それで、歌が上手になりたい理由だっけ?それはね…」
そんな歌を歌えるのに、彼女が更に歌が上手になりたい理由は…
「私の歌で…私達家族の歌で、世界中の人達に笑顔になってもらいたいから…世界中の人達が幸せになってほしいから!」
とても大きくて、素晴らしいものだった。
「だから練習してるんだけど…なかなか上手にならなくて…」
「お母さんやお父さんには教わらないの?」
「うん…私は私自身のやり方でお母さんに追いつきたいから…って言っても、一人でやるには限界があるかなって思い始めたんだ…」
そんな彼女の気弱な発言を聞いた僕は…
「だったら二人でやろうよ!」
「えっ!?」
つい、こう言ってしまったのだ。
「あ、いや、一人では限界なら僕と二人ならいいかなって思って…って言っても僕は歌が下手な部類に入るけどね…」
言った後で少し後悔した。
そもそも僕はセイレーンみたいな上手な歌は歌えない。というか歌の知識も全く無いのだ。
なのに協力するなんて言っても迷惑だろう。ただの邪魔者でしかない。
そう思ったのだが…
「え…あ、でも一人で居るよりは心強いかも…キミさえよければ私の練習につきあってよ!」
どうやら彼女にも一理あると思われたらしい。笑顔で僕にそう言ってくれた。
「よろこんで!僕が今こんなに落ち着いたのはキミの歌のおかげなんだ。この歌の練習ならいくらでもつきあうよ!」
だから僕は笑顔でこう言って、彼女の歌の練習につきあう事になった。
本心を言えば、歌だけじゃなくて彼女自身にも会いたいからってのもあるけど…自分でもその理由がわからないからそれは秘密にしておく。
「ホント!?ありがとう!!えっと…」
彼女が悩み始めてから気がついた…
…僕等はまだお互いの名前を知らないという事を。
「僕の名前はミージ。キミは?」
協力するのであればお互いの名前は知っておくべきであろう。
だから僕は、自分から名前を言って、彼女の名前を聞いた。
「私はオカル。よろしくねミージ!」
そうしたら彼女…オカルは僕に微笑みながらよろしくと言ってくれた。
その可愛らしく美しい笑顔に…僕はドキッとした。
「よ、よろしくねオカル!」
「ん?どうしたのミージ?顔が真っ赤だけど?」
「え!?そ、それは…」
そのためか、顔が真っ赤になってしまったようだ。
そして、オカルにその様子を告げられてしまった為か、僕は…
「オ、オカルの笑顔が可愛かったからつい……あ」
「え……えっ!?」
つい、本当の事を言ってしまった。
そう僕に言われたオカルの顔も、だんだん真っ赤になっていった。
「……えっと……また明日ここでいい……かな?」
「うん……また明日………」
互いに顔を赤くしたまま、次の日も同じ場所で会う約束をしてから、それぞれ帰った。
これが、僕とオカルの出会いであり、歌の訓練の始まりだった。
====================
それから僕達はほとんど毎日初めて会った場所で歌の練習をしていた。
「♪〜〜♪〜♪〜〜〜〜…」
「…うん、どこもおかしくない。完璧だよ!」
「ホント?ちょっと変だった気がするけど…」
「あー…変だったのは歌じゃなくて表情かな。オカルの顔…緊張でもしてたのか強張ってた」
「なるほど…上手く歌わなきゃって思ってたから変な力が入っちゃったのかも…」
「じゃあリラックスしてからもう一回やろう!僕家でクッキー焼いてきたから一緒に食べようよ!!」
「うん…ってミージはクッキー作れるの!?」
「うん。昔からお菓子作りは好きだったからね」
「う…うらやましい…私お菓子作りとか出来ないからな…」
ある時は気楽にお喋りをしながら…
「♪ーーー♪ー♪ー…」
「ん〜…ねえオカル…ちょっとさっきと歌い方違ってない?」
「うん…やっぱ変だった?」
「まあね…なんか声がこもったっていうか…」
「ん〜そうかなぁ…たしかにこもってたかも…でもなぁ…この歌はそんなにはっきりとした声で歌うものじゃないしなぁ…」
「あ、いや、ならいいや…やっぱ素人の僕が口出ししていいものなのかな?」
「うん…ミージの指摘って結構正確だよ。私ミージに言われて気付いた事かなりあるし、その分上達してるもの」
「…そう言ってくれるなら嬉しいよ…」
ある時は意見を出し合ったりしながら…
「お母さんの歌声こっそりこの魔水晶で録音してきたよー!!」
「本当に!?じゃあ早速聴いてみて、オカルとの違いを調べてみよう!!」
「うん!じゃあ再生するね…」
『♪〜〜♪〜♪〜ー〜♪〜〜…』
「……やっぱ私ヘタクソだなぁ…」
「ん〜…そうかなあ?たしかにオカルのお母さんは上手だし、実際に見ていないのに心が温かくなる気がして自然と笑顔になり
はするけど…やっぱオカルにはオカルの良さがあるよ!」
「ホント?…例えば?」
「例えば…そうだね…オカルの声はオカルにしか出せないところかな…」
「…意味がよくわからないんだけど……」
「たしかにどっちも笑顔に、幸せになれる歌なんだけど……お母さんは力強くて明るく朗らかな、太陽みたいな歌声で…オカルは静かで優しくて包んでくれている、月のような歌声って違いが…ってこれでもよくわからないか…」
「うん…でもありがとう…なんか自信がついてきた!私はお母さんとは違う風に、自分らしく歌を歌えばいいんだ!!」
「なら良かったよ…じゃあ練習しよっか!」
「うん!!」
ある時は世界一の歌を聴いて、どんな風に歌を歌うか決めたり…
「……ねぇ…明日…というかしばらくは休みにしようか……」
「へっ?なんで?歌の練習したくないの?」
「えっと…その……そろそろあの時期だから…しばらくは会わない方が良いかなって…」
「あの時期?どういう事?」
「うんと…その……」
「何?ハッキリ言ってくれないなら僕納得しないよ」
「だから…発情期よ……」
「へっ!?」
「そろそろ発情期に入っちゃうの!!だから…ミージの事襲っちゃうかもしれないから…休みにしようって…」
「ああ…なるほど…動物型の魔物は発情期あるんだね……別に僕は襲われてもいいけど…」
「ん?何か言った?」
「え!?いや、な、何でもないよ!!」
「ふーん…まあ、そういう事だから、多く見て一月休みってことで…」
「うん…一月か…そんなにオカルに会えないのは寂しいな…」
「ちょっ!?何言ってるのよ……うん…寂しいね……」
ある時は自分でも気付かなかった本音を言ったりして…
「結構練習に付き合わせてるけど…私って会ったばかりの頃と比べて上手くなってる?」
「そうだね…初めて会った時からオカルの歌は僕の心を動かしてくれたけど…今はより笑顔になれる…そんな気がするよ」
「ホント?お世辞じゃない?」
「僕は今まで一度だってオカルにお世辞を言った事は無いよ」
「そっか…ありがと……」
あっという間に半年もの時間が過ぎていった…
その半年の間に、僕はオカルの事を好きになった。
それは友達としてじゃなく、女の子として…つまりオカルに恋をした。
最初は魔物だからって思った事も少しはあったけれど…すぐにそんなの気にならなくなった。
でも、オカルが僕の事をどう思っているのかがわからない…
わざわざ発情期の時は僕の事を襲わないように会わないようにしていたのだ…
だから…オカルにとっては僕の事はただの友達…もしくはそれ以下の存在と思っているかもしれない…
そう考えると…自分の気持ちを伝える事が出来なかった……
そして…僕は反魔物領の人間…だからこのまま一緒には暮らせない…
それらがどうしても心の中でストッパーとなり…僕は前に……
…幸せの未来に足を進ませることができなかった……
====================
「ねえミージ、今日はちょっと話があるの…」
そんなある日の事。
いつものように歌の練習をしていたのだが…オカルはずっとどこか寂しそうな表情をしていた。
「そんな調子でオカルが歌を歌っても誰も幸せな気持ちになれないんじゃないかな?」と伝えたら、真剣な表情で僕に話があると言ってきた。
「話って何?大事な事?」
「うん……あのね………」
そしてオカルは…
「私…明後日には違う土地に行く事になったんだ…だから、ここでミージと一緒に練習できるの…明日が最後なんだ……」
「え………!?」
明日でお別れになると…僕に伝えてきた。
何も不思議な事では無い。
初めて会った時にも言っていたが、オカルの家族は世界中に歌で笑顔を届けるウタウタイとして旅をしているのだ。
つまり、次の土地に移る時が来たらお別れなのだ。
それが…明日なだけ……
でも…
「そんな……別れたくないよ……寂しいよ………」
僕は…寂しかった。
別れるのが…辛かった……
両親が死んでから、オカルと一緒に居る時が唯一心が休まり、幸せに感じたのだ。
それが無くなる……僕には堪えられなかった……
だから迷惑だとわかっていても…別れたくないと呟いてしまった……
「私だって寂しいよ…折角仲良くなれたんだもん…」
でもそれはオカルも一緒のようだった…
「だからさ、ミージ……一つ提案があるの…」
だってオカルは僕に…
「私達家族と…一緒に旅をしない?」
こうやって、別れないでいる為の提案をしてきたのだから……
「大丈夫、私の両親にはもうすでに相談済みだから…だから私のほうは気にしなくていいよ」
それは、とても魅力的な提案だ…
大好きなオカルと別れなくて済むどころか、ずっと一緒に居られるのだから。
でも、僕は…
「明日まで会えるなら…答えを言うのは明日でもいいかな…?」
その提案を、すぐに受け取る事は出来なかった。
「うん…じゃあ明日、答えを聞きにまたここに来るね……」
「うん…ありがとう……必ず答えは出すよ……」
その提案は…僕がこの地から出ていく事になるのだから。
たしかに僕はこの村そのものには残る理由は何も無い。
そもそもオカルと会っている事すら言えない反魔物領の村に居る理由は全く無い。
それだけならば僕は間違いなく一緒に行く事を即決していただろう。
もう両親だっていないんだ…誰も止めなどしないし、止められても止まる気は無い。
だが…村には僕の両親が眠っている。
この村の一角にある墓地に、僕の両親は眠っているのだ。
僕がオカルの家族についていくならば…もう二度と両親の眠るお墓に行く事は出来ないだろう。
それは…あの小さな村が親魔物派に変わらない限り不可能だと思っていいだろう。
だから…僕は迷っていた。
だからこそ…僕はどうしたらいいかわからなかった。
「……意味無いかもしれないけど…両親に会いに行くか……」
僕は、どうするかを決断する為に…両親のお墓まで行く事にした……
…………
………
……
…
「……」
村の一角の墓地の…僕の両親が眠るお墓に着いた。
こうして墓石を見ているだけでも、本当に両親が居るような気がするのはなんでだろうか…
「お父さん…お母さん…僕がもう会いに行けないかもって言ったら…怒る?」
もちろん答えなんか帰ってくるはずもないけど…僕は両親に聞いてみた。
「それとも…好きな人とどこまでも一緒に行けって…背中を押してくれる?」
その好きな人は人間じゃないけどね…と心の中で付け加えながら、また聞いてみた。
「僕、どうすればいいかな…」
僕は…どちらかと言えばオカルについて行きたかった。
でも…両親と別れるのはちょっと…たとえ死んでいても、そんな気がして…ついて行くと決められない。
「明日までに…決めないとな……」
そう思いながら…答えを出せない僕はとりあえず家に帰る事にした。
「じゃあお父さん、お母さん…今日は帰るね…でも、もしかしたらもう二度と来ないかもしれないから……」
最後に…
「これだけは言っておくね…」
僕は両親に向かって…
「僕を産んでくれてありがとう…僕は二人が親で幸せだったよ……それじゃあ……」
感謝と、別れの言葉を伝え、家に帰った…
「……ん?」
微かに…僕の背中に暖かい風が吹いた気がした……
====================
そして次の日。
僕は一晩中考えて…答えを出した。
僕が出した答え、それは…
「おや?ミージ君、そんなに大荷物を持ってどこかに行くのかい?」
「あ、隣のおばさん…と誰?まあいいや…はい、そうですが」
僕は今、大きな鞄を背負っていた。
鞄の中は、僕の着替えや生活用品、それに数少ないお金と両親との思い出の品…
「僕は…旅に出ます。当分は帰ってこないと思っていて下さい。家も好きにしていいですよ」
「へっ…!?」
僕は、オカルと一緒に行く事にした。
そのほうが、自分に悔いが残らないから。
それに…きっと両親も、そっちを選べと言ってくれている気がしたから。
「ちょっとミージ君!?それは…」
「今まで御世話になりました!!」
僕は隣のおばさんと、ついでにその横に居た知らないお兄さんに挨拶を済ませた後、オカルが居る場所…いつも歌の練習をしていた場所に急いだ。
「…彼ですか?」
「はい…きっと魔物の仕業だわ!このままじゃミージ君が魔物に騙されて遠くに行ってしまう!!」
「落ち着いて下さい!その為に私が来たのですよ。それにほぼそうだとは思いますがまだ魔物とは決まっていません…彼の後をこっそり尾行して調べてみます」
「お願いします…もし魔物の仕業だったら…」
「大丈夫です!その時は私が皆さんの…もちろんミージ君の安全を護るために…」
「勇者である私が、その魔物を討伐します!!」
だから、僕が居なくなった後にこんな会話があったなんて、知る訳もなかった。
…………
………
……
…
「♪〜〜〜♪〜〜♪〜〜〜…」
僕は、いつも練習していた場所に着いた。
「♪〜♪〜〜♪〜〜〜♪〜…」
そこには、オカルが既に居た。
「♪〜〜♪〜♪〜〜〜〜〜…」
初めて会った時と同じ木の上で…
「♪〜〜〜〜♪〜♪〜〜♪…」
あの時と同じ…いや、あの時よりも心に響く、綺麗な歌声で…
「♪〜〜♪〜♪〜〜♪〜〜…」
凛とした笑顔で…自信を持って歌っていた。
「♪〜〜〜♪♪〜♪〜〜〜…」
だから僕は、初めて会った時と同じように…
「青いハーピー…」
「失礼ね!!私はセイレーンよ!!」
冗談で青いハーピーと言ったら、表情に笑みを浮かべつつも初めて会った時のように、翼の先端をビシッとこちらに向けてすぐさま訂正してきた。
「もう…その冗談はやめてよね……ってミージ、その荷物は…」
そして…僕のすぐ近くまで降りてきたオカルは、僕の背負っている荷物に気付いたらしい…
「うん…僕はオカルと一緒に行く事にしたよ!」
なので僕は、自分が決めた事をオカルに伝えた。
「そう…嬉しい!これで別れずに居られるね♪」
そしたら、笑顔で嬉しいと言ってくれた。
「じゃあ早速行こうよ!!私の両親も待ってるよ!!」
「あ、ちょっと待って!!」
「ん?なに?」
そう言ってくれた事や、そもそも僕と一緒に居たいと言ってくれた事から…
「あのさ…オカルに言っておきたい事があるんだ…」
「……」
オカルも、僕の事を……
「僕は…オカルの事が…」
「……」
ただの友達以上に思っているだろう…そう思って…
「オカルの事が……s…」
僕は、オカルに自分の気持ちを伝え…幸せの未来へ足を進ませようと……
「そこまでだ!」
「「!?」」
…ようとしたけれど、何者かによって邪魔されてしまった…
「やはり魔物だったか…おいそこのセイレーン!ミージ君から離れろ!!」
「え…!?」
それは…隣のおばさんの横に居た、見知らぬお兄さんだった。
しかもそのお兄さんは、大きな剣を持っていて…オカルにその剣を向けていた。
「ちょっと!?あなたはいったい…?」
「私はミージ君を魔物の誘惑から救いに来た勇者だよ。どうやらギリギリセーフだったようだね…」
しかも、意味がわからない事を言ってきた。
「どういう事ですか…魔物から救いに来たって?」
「村の人に頼まれたのさ…君がここ半年の間よく何も居ないはずの森のほうに向かうのを見たと。もしや魔物の仕業じゃないかって…だからもし魔物の仕業で、魅了されているなら助けてやってくれって…勇者である私にね」
「そんな…私は…!!」
「おっと!魔物の戯言なんか聞くと思うか?」
どうやら村の人達が僕の事を心配して勇者に頼んだらしい。
「それはわざわざありがとうございます…」
あの村は反魔物領…だからそうするのはわかる…
「ですが…あなたも、村の人達も間違っている事がある…」
でも…それは要らぬお節介だ。
「たしかに僕はオカルに魅了されたのかもしれない…」
だって、僕は…
「でも、オカルが、両親が死んで凍ってしまった僕の心を溶かしてくれたんだ!」
僕自身が…
「オカルは僕に涙と…笑顔を運んでくれたんだ!!」
オカルと一緒に行くと決めたのだから…
「そんなオカルの事が…魔物だとか関係なく好きなんだ!!」
オカルの事が、大好きになったのだから。
「僕は僕自身の意思で、オカルと一緒に居るって決めたんだ!!」
オカルとずっと一緒に居たいと、自分で決めたのだから。
「なっ……」
「ミージ…!!」
流れで告白したみたいになっちゃったけど…僕の気持ちをオカルに伝える事ができた。
僕の告白を聞いたオカルは…空色の髪とは対照的に顔を真っ赤にしながら…
「私も…ミージの事が大好き!!だから、ずっと一緒に居て下さい!!」
僕が聞いて一番嬉しい事を、その優しい声で言ってくれた。
「…オカル…僕はずっと一緒に居るよ!だからオカルもずっと僕と一緒に居てね!」
「うん!もちろん!!」
本来ならば、そのまま良い雰囲気になってくれるのだろうけれど…
「そうか…なら仕方ない……」
今この場には、邪魔者が存在していた。
「頼まれた事だし、折角助けてやろうかと思ったのに…もう手遅れだし…」
しかもただの邪魔者ではなく…
「テメェら二人とも、俺がまとめて始末してやるよ!!」
勇者という名の、巨大な壁だった。
「死ねクソがあ!!」
「危ない!!」
「うわあっ!?ミージ!!」
突然態度も口調も雰囲気も変えた勇者が、僕達に向けて剣を振り下ろしてきた。
僕は咄嗟に腕を伸ばし、オカルを突き飛ばしたが…
「うくっ!?いたっ……」
「大丈夫ミージ…って血が!?」
「ちっ!腕に掠っただけか…」
その腕に剣の先が掠め、腕から血が流れ始めた。
痛みはかなりのものであるが、一応問題無く動かす事ができるので大事には至って無いようだ。
「だったら…おらあ!!」
「ぐあっ!!」
「ミージ…きゃっ!!」
だが、痛がっている僕を思いっきり蹴り飛ばし…オカルと重なる形で抑え込んできた。
「次は外さない…覚悟!!」
そして…僕とオカルが重なっている場所に目掛けて…剣を突き刺して……!!
ガキーーーン!!
でも勇者の剣は、僕達に刺さる事は無かった。
「……」
「…何だテメェは?いきなり何しやがる!!邪魔すんじゃねえ!!」
鋭い金属音と供にいきなり現れた男の人に、その剣を金属で出来たパイプのようなもので止められてしまったからだ。
「……」
「テメェはいったい何者なんだ!!」
その男の人は…青い羽の模様が描かれている真っ赤なスカーフを首に巻き、茶色い瞳…どこかオカルと似ている目をしていた。
「……」
「おい!何か言いやがれ!!」
そして、ずっと黙ったまま勇者を力強く睨みつけていた。
「えっと…あなたは…?」
「お…お父さん!?なんでここに!?」
「へっ!?」
オカルの言葉が正しければ…今目の前に居る、僕達を助けてくれた男の人は…
「オカルのお父さん…ですか?」
「……」
僕のほうを見て、無言のまま、首を縦に振った。
言われてみれば、目元がオカルと似ている…というか結構若いな…
「テメェ…ふざけたマネしやがって…」
「……」
勇者が、オカルのお父さんに怒りをぶつけていると…
「ふざけたマネをしているのはあなたです!!」
「なっ!?」
突然、上空から声が聞こえてきた。
その声は…直接には一度もないけれど…何度も聴いたことがある声だった。
「私の娘と、娘の好きな人に怪我をさせるなんて許しません!!」
藍色の瞳に空色の髪、青い翼を持ったウタウタイ…
「お母さんまで!!」
「ちいっ!!このセイレーンの親かよ!!」
オカルのお母さんが、険しい顔をしながら上空から舞い降りてきた。
「どうしてここに…!?」
「実はね…オカルが言っていたミージ君がどんな子なのか気になってたからミングさんと一緒に遠くから見ていたんだけどね…変な人が出てきて二人を傷付けようとしていたから飛び出したってわけで…」
「ちょっと!何してるのよ!!…でもおかげで助かった…お父さん、お母さん、ありがとう」
そして僕達の近くまで来て…無事を確認しているのかホッとした表情になった。
「どういたしまして…ミージ君の怪我は…大丈夫そうね」
「はい、血こそ出てはいますが掠っただけです」
「そう…オカルを助けてくれてありがとうね。じゃあこのまま二人はこのまま泊めさせてもらっていた小屋まで逃げてね!」
「えっでも…」
勇者から一緒に逃げなくていいのですか?と聞こうとしたけれど…
「ほら行くよミージ!」
「え、ちょっとオカル…ってうわわっ!?」
いきなりオカルの足に肩を掴まれて…飛んだ!?
「ちょっとオカル!?自分で走るから降ろして!!」
「こっちのほうが速いからジッとしててよ!」
「そんな事言っても…」
足が宙に浮いている状態は、人間なら誰でも恐怖を感じると思う。
だから暴れても仕方ないと思うのだが…
まあそれは置いといて…
「オカルのお父さんとお母さんはどうするの!?相手は勇者なんだよ!?」
なのに僕達だけ逃げていいのかと思ったが…
「大丈夫!お父さんもお母さんもあんなのよりずっと強いんだから!!」
オカルが自信を持ってそういうのなら大丈夫なんだろう…
そう自信もって答えたオカルを見て、僕は大人しく連れられて行く事にした。
====================
「到着っと!」
「はぁ〜〜〜〜〜〜………生き返った〜〜…」
「…そんなに飛ぶのが怖かったの?」
「うん…オカルが落とすとは思わないけど…それでも怖いものは怖いよ…」
森を抜け、村の外側にあった小屋…そこの近くに降ろされて、僕はやっと安心する事ができた。
地面を踏みしめる感触が素晴らしい…空の旅は当分したくない…
「まっいいや…じゃあ小屋に入って二人を待とう!」
オカルに先導される形で、僕達は小屋の中に入った。
小屋の中は結構広く、ベッドが4組置いてあり、その横にはオカル達の荷物だと思われる大きな袋が置いてあった。
僕達は小屋に入ったあと、とりあえずベッドの上に座って、お喋りをする事にした。
「そういえばオカルのお父さんって寡黙な人だね…カッコいいけどさ…」
「ああ…アレは違うよ。私のお父さんは喋る事が出来ないんだよ」
「えっ!?そうなの!?」
そこで僕はまず、これから御世話になるのだからいろいろ知りたいと思ってオカルの両親について聞いてみた。
実際に見たのは初めてだが、とても優しそうな人達だとは思った。
「昔なんか事件に巻き込まれて声を出せなくなったんだって…それでお母さんがお父さんの歌になるって言って歌の指導を受けて見事世界一となったんだって聞いた事がある」
「へぇ〜…なんて言うか…凄い人達だね…」
「本当にね…それで二人は結ばれたって言ってたよ…」
そうやって両親の話をするオカルは…どこか誇らしげであった。
きっとオカルは両親の事を誇りに思っているのだろう…
「……」
「……」
両親の話が終わったあと、僕達の間には沈黙が流れた。
大丈夫だと言っても…やはり心配になる。
「……ねえ、ミージ…」
「……何、オカル?」
しかし、そう時間が経たないうちにオカルが話しかけてきた。
「ミージも私の事好きって言ってくれたよね?」
「うん…オカルも僕の事好きなんだね…」
そして、さっき言っていた事の…お互いがお互いの事を好きだと言う事の確認をしてきた。
「うん…だからさ、お願いがあるんだけど…」
「なんだい?今出来る範囲なら聞くよ…」
そして僕に…
「うん…好きな人だけに…ミージだけに贈る、私の特別な歌を聴いてほしいんだ…」
僕だけに贈る特別な歌を聴いてほしいとお願いしてきた。
「うん…よろこんで!」
もちろん、僕はオカルの歌を聴く。
「では歌いまs……んっ!?」
でも、その前に…
僕は、オカルにキスをした。
「…な、なによ突然……」
「歌い始めたら出来ないから、先にしたかったんだ…いけなかった?」
「ううん…嬉しい……」
彼女も嬉しそうに、少し顔を朱に染めながら微笑んでくれた。
「じゃあ今度こそ歌うね…」
そんな幸せな雰囲気の中、彼女はそう言って、大きく息を吸い込み……
「♪〜〜♪〜〜♪〜〜〜…」
オカルの言う僕だけの特別な歌を、その優しい声で歌い始めた…
「♪〜〜〜♪♪〜♪〜〜…」
オカルの歌を聴いていると…自然と笑顔が溢れてくる…
「♪〜〜♪〜♪〜〜♪〜…」
自然と幸せな気持ちになってくる…
「♪〜♪〜〜♪〜〜〜♪…」
そして…気持ちが高鳴って………?
「♪〜〜♪〜♪〜〜♪〜…」
あれ…なんだ……?
何か変だぞ……?
「♪♪〜♪〜〜〜〜♪〜…」
気持ちは高鳴っているんだけど…鼓動も速くなっていると言うか…
それに…下半身が熱を帯び始めているような…
「♪〜〜♪〜♪〜〜〜♪…」
オカルの歌が僕に浸透していく…
浸透する度に…僕の中で何かが大きくなっていく…
「♪〜♪♪♪〜〜♪〜〜…」
ここで、歌っているオカルに動きがあった。
オカルが、僕の服を翼の先端を器用に使い脱がせ始めた。
ゆっくりと、しかし確実に…肌に触れる羽がもどかしい。
「♪〜〜♪〜〜〜♪〜〜…」
次に、オカルは自分の服を脱ぎ始めた。
服と言っても、オカルは普段から胸部を隠す程度の服しか着てなかったのですぐに脱いでしまった。
オカルの胸の小さな膨らみが、その先端に存在するピンク色の突起が僕の目に入った。
少し恥ずかしいのか、オカルの艶やかな肌は薄く赤色に染まっていた。
「♪〜♪♪〜〜♪〜〜〜…」
オカルの胸を凝視する僕をよそに、今度はオカルの足が僕のズボンに掛けられた。
爪は鋭い筈なのに、僕の肌を一切傷付けることなく…僕のズボンを摺り下ろした。
そして現れた下着は、いつの間にやら興奮していたらしく、僕のペニスによってすでに小高い丘が形成されていた。
そのままオカルは下着にも足を掛け、僕のペニスを外気に触れさせた。
僕は、このオカルの行動を、止めようとは思えなかった。
オカルの歌が、オカルの行動を拒むことを出来無くしていた。
「♪〜〜〜〜♪♪♪〜〜…」
そしてオカルは、自分のスカートを取り外した。
白い下着の股の部分は、筋の形で濡れていた…おそらくオカルも興奮しているのだろう。
さらにオカルは翼を使い、その下着すら器用に下にずらしていった…
…下着がずれ、現れた秘部を見た瞬間…
…僕は理性というものを手放し、オカルの翼を傷付けないようにしながらベッドの上に押し倒していた。
「♪〜♪〜〜♪〜〜〜〜…」
そして、膨張したペニスを、オカルに挿入しようとしていた。
自分の行動を認識したとき、微かに僕は何をしているんだと思った。
「♪〜〜♪〜〜〜♪〜♪…」
だが、オカルの歌を脳が認識する程、その考えは消えていって…
「♪〜〜ぁっ♪〜♪〜〜…」
オカルの秘部に自身をあてがい…
彼女の腰に手をやり、ずぶずぶと挿入れていった。
そして、オカルの処女膜を、その勢いのまま突き破った。
血が流れているのを見て、一瞬だけハッとした。
けれども、彼女の歌を聴いて…喘ぎ声が混じった歌を聴いて、僕はまた彼女を犯す事しか考えられなくなった。
「♪〜っ♪んっ♪ぁん♪…」
初めてで不慣れながらも腰を突き動かす僕…
オカルの膣は、僕のペニスをまるで逃がす事がないように、その柔らかな肉壁で締め付けてくる。
更には、彼女のナカの襞が僕のペニスに絡みつき、僕の感度を上げていく…
彼女も感じているようで、歌こそ歌い続けているが、歌声に喘ぐ声が入り混じっている。
顔を熱で赤らめながら、恍惚とした表情を浮かべながら歌い続けている。
「んっ♪〜♪〜ぁあっ♪…」
オカルの歌が僕の腰の動きを激しくする…
そう錯覚するほど、オカルの歌が僕の耳に響く度に興奮し、快感を求める事に歯止めが効かなくなる。
そして、激しくオカルを求め、彼女も僕を求めた結果、僕は限界を迎えた。
「あっ♪あ♪ぁはあん♪…」
オカルに一番深く腰を打ちつけ、亀頭が何かに触れた瞬間、彼女の膣はまるで搾り摂るように締まり、僕のペニスは精を彼女の膣内に放った。
ドクドクと彼女のナカに精を注ぐ度に、彼女は一際高い声で喘ぐ。
その喘ぎ声もリズムを持ち、歌になり、僕を高めてくる。
「あん♪〜♪〜んんっ♪…」
まだ歌い続けるオカルに合わせ、僕は射精したばかりだと言うのに硬いままのペニスて、再び彼女の膣内を刺激し始めた。
僕達の淫猥で幸せな歌謡祭は、若きウタウタイが歌うウタが終わるまで続いた…
====================
「……僕は…なんて事を……」
「…えっと…だからその…ミージが気にする事じゃないんだけど…」
オカルの歌が終わり、冷静になった僕は自己嫌悪に陥っていた。
「私がそう仕向けたんだけら…だからそんなに気にしないで良いんだってば!」
「それでも…思いやりが無かったと言うか…はぁ……」
いくらオカルの歌の効果で性欲が爆発していたからって…強姦紛いなことをしたのはな…
嫌がってこそなかったけど、何度も腰を突き動かして何度もナカに出して…はぁ……
「だからいいってば…そんなに落ち込まないでよ…」
「うん……わかってるけど……はぁ……」
自分がした事を考えると溜息が止まらない…
「もう…仕方ないなぁ……」
少し呆れ気味のオカルはそう言って…
「♪〜〜♪〜♪〜〜♪〜…」
先程とは違う、いつも練習していた優しい歌を歌った。
彼女の歌を聴いているうちに、僕の心は少しずつ穏やかになっていき…
「……ふふ…」
「♪〜〜…っと、笑顔になってくれたみたいね」
彼女の言うとおり、僕はすっかり元気になり、笑顔を浮かべていた。
「ま、こうやって私の歌で元気に、笑顔に出来るようになったのも、ミージのおかげだけどね…ありがとう…」
「いや、こちらこそ…ありがとう……」
そして、互いにまた良い雰囲気になったところで…
トントンッ
カチャリッ
何者かがノックをして、小屋の中に入ってきた…
「あ…お父さん……やっぱり無事だったのね…」
それは、オカルのお父さん…ミングさんだった。
「あ…えっと…その……」
僕は突然のミングさんの登場に慌てた。
なぜなら、今僕達は服こそきているが、ベッドは染みだらけで、小屋には性臭が漂っていたからだ。
つまり、オカルの両親が戦ってくれている間に、僕が二人の娘の始めてを奪ったのが簡単にバレてしまうからだ。
だから、何を言われるんだろうと内心ビクビクとしていたのだが…
「……」【仲睦まじくしているところで悪いが、シーツぐらいは洗っておくように】
そう書かれた紙を僕達に見せてきただけだった。
「あ…そうだよね…じゃあ私洗ってくる!」
【臭いもきちんととれよ。次使う人が変な思いしないようにな】
「はーい!」
オカルがシーツを持って洗いに行ってしまい、その場には僕とミングさんの二人だけになってしまった。
状況が状況なので少し気まずい…
「あ、えと…その〜…」
【そう硬くなるな。別に娘とした事を責めるつもりはないどころか、娘を女にしてくれたお祝いだってしてやるよ】
「へ?はっ!?」
【ジョークだ。ミージ君が俺達と一緒に来ると言う事で歓迎パーティーをするだけだ】
「えっ!?あ、ありがとうございます!!」
が、ミングさんは笑顔でこう紙に書いて僕と会話していた。
なので、僕は緊張が解れ気が楽になった。
…というか会話速度で文字を書けるとか凄い人だな……
【それで、一つ確認がある】
「え…なんですか?」
と、ここで真剣な顔をしながら、僕に確認をしてきた…
「ミージ君がオカルと一緒に、私達と一緒に何がしたいか、どうしたいかを教えてほしいのです!」
【ちょっ!?シーン、俺の言葉を奪うなよ!】
「ミングさん、私もミージ君に同じ事聞きたいだけです!」
いきなり現れたオカルのお母さん…シーンさんと一緒に、僕はオカルと何がしたいのかを。
だから僕は…
「僕は、オカルと一緒に、世界中の人達を幸せにしたい。オカルの歌で…僕達二人が築いた歌で、世界中に笑顔を…幸せを運びたいです!!」
二人のウタウタイ達に、自分の想いを伝えた。
「わかりました…では今後もよろしくねミージ君!私の事はお母さんと思ってくれていいですからね♪」
【俺も父親だと思ってくれて構わない…というかオカルの夫になるなら俺達は名実共に親子だしな】
その想いが伝わったのか、二人は笑顔でそう言ってくれた。
「……へへっ…よろしくお願いします!!」
僕は、笑顔でその言葉に応えた……
ある日、心が凍っていた僕の前に現れたウタウタイ…
彼女は僕の心を溶かし、幸せを運んでくれた…
そして僕達は、互いに幸せになった…
それらは全部、ウタウタイが歌うウタによって、幸せになれた…
だから今度は、世界中の人達に僕達の歌を届ける…
世界中の人達の為に、僕達は幸せを届けていく…
幸せを運ぶウタウタイとして……
・・・・・END?
私は、小さい頃から両親に憧れていた。
世界一の歌声を持つお母さんと、そんなお母さんの歌の師匠だったお父さん…
世界中の人達を笑顔にするため旅をする、二人のウタウタイに憧れていた。
でも、私はそんな二人の歌を受け継ぐ事は無かった。
私の歌は上辺だけ、誰も笑顔に、幸せにする事が出来ない下手な歌しか歌えなかった。
だから、私は練習を続けていた。
いつか二人を越すような立派なウタウタイになる為に。
そんなある日の事。
とある村で半年ほど御世話になる事になった私達。
お母さん達が村で歌っている間、私は近くの森の中で歌の練習をしていた。
いつもより上手く歌えてるなと思っていたら、突然近くの茂みから音がした。
見てみると、そこには茶髪の男の子が私の歌を聴き入っていた。
その空色の瞳から涙を流しながら、私の歌を聴いていた。
私の事を青ハーピーと失礼な事を言ったのがきっかけで話をする事ができた。
そして私の歌がどうだったかを聞いたとき、彼は涙を流しながら笑顔になれると言った。
その事を指摘したらいきなり泣き出したので、私は思わず落ち着かせた。
そして彼が何故泣いているのかと、私の歌のおかげで泣けた事を教えてくれた。
逆に私の事を教えたら、彼…ミージは私の歌の練習に付き合ってくれると言ってくれた。
よろしくと言ったら、ミージは顔が赤くなった。
何故かと聞いたら、私の笑顔が可愛かったからと言った…
…嬉しさと恥ずかしさで、私も顔が真っ赤になってしまった。
それから半年の間、私達はずっと一緒に歌の練習をしてきた。
ミージは素人と言っていたが、彼の指摘はかなり当たり、私の歌はみるみる上達していった。
ある時は一緒にお菓子を食べながら…
ある時はお母さんの歌と聴き比べながら…
ある時は自分で気付かなかった本音を言ったりしながら…
私達は、いつも同じ場所で、ずっと歌の練習をしていた。
その甲斐もあり、私は人々を笑顔に、幸せにできる歌を歌えるようになった。
そして、私を支えてくれたミージの事が、好きになっていた。
でも、私の家族は、世界中に笑顔を届ける旅をしている。
つまり、ミージとのお別れの時がやってきてしまうのだ…
別れるのが嫌だった私は、両親に相談した。
そしたら、一緒に旅をすれば良いと言ってくれたので、私はその事をミージに伝えた。
彼は次の日まで待ってくれと言ったので、私はもやもやしながらも待つ事にした。
そして次の日、彼は私達と一緒に行くと言ってくれた。
そして、私の事を好きと……言ってくれる直前に突然邪魔された。
その邪魔者は勇者で、殺されそうになったけど…両親が助けてくれた。
だから私はミージと一緒に小屋まで逃げた。
…互いに好きだと言った後の、幸せな雰囲気に包まれながら…
そして小屋で私達はお話をしていた。
でも私は、話している途中で…ミージへの想いが膨れ上がっていった。
だから私は、彼に特別な歌を歌う事にしたのだが…
…ミージが、歌おうとした私に、キスをしてくれた…
その事もあり、私の特別な歌は、より特別なものになり…
私達はお互いに激しく求めあった…
私達は、これからずっと歌を歌っていく。
私を幸せにしてくれた人と一緒に…世界中に歌を…笑顔を…
幸せを届ける為に…旅をしていく…
幸せを運ぶウタウタイとして……
・・・・・END
気がついたら、僕は森の中をふらふらと歩いていた。
無意識のうちにこんな場所まで来てしまったのか…
僕はこれからしっかりしなければいけないのに……
「……」
少し前のある日、僕の両親が事故で死んでしまった。
その日の朝までは普通に生きていたのに、食料を買いに隣町まで二人仲良く買い物に行く途中に落石が二人を襲い…そのまま死んでしまった。
一週間前に葬式が終わり、墓に埋めたところも見たけど…今でも両親が死んでしまった事が信じられない。
だからなのか、僕は両親が死んでから笑うことはもちろん、泣いてすらいない。
まるで心が凍ってしまったようだ。
両親が死んでから、自分が何をしているのか時折かわからなくなる。
今日のようにふらふらと、無意識のうちに外に出ては、何も考えずにどこかを歩いていることが多い。
「……」
近所の人たちは優しく接してくれるけれど、あまり僕を助けてくれたりはしない。
まあ僕が住んでいる村は全体的に貧しいから仕方が無い…だから僕は自分の力で生きなければならない。
だけど、なにもする気が起きない。
なにも考えられない。
「……」
だから、このまま僕は森の中をふらふらする事にした。
家に帰っても誰もいないから、怒られる事もないし、心配される事もない。
そう、誰も、いないのだ………
♪〜〜♪〜〜〜……
「……ん?」
森の奥の方へ踏み込み、そのまま当てもなくふらふらとしていたら、どこからか歌みたいなものが聞こえてきた。
この森は人間はもちろん、動物ですら住んでいる者はいない…もしかしたら魔物が居るかもしれないけど、今のところ発見されたことは無い…つまり普通の植物と虫しかいない森のはず。
だから歌なんて聞こえてくるはずが無いのだが……
♪〜♪〜〜♪ーー……
やはり気のせいではなく、はっきりとまでは言わないが歌が聞こえてくる。
(いったい誰が歌っているのだろうか…声の高さから女性だとは思うけど…)
そう考えながら、僕の足は自然と歌が聞こえる方に向かっていた。
====================
「♪〜♪〜〜〜♪ーー……」
更に森の奥まで歩くこと数分。音の発生源…歌っている者が視界に入った。
「♪ー♪〜〜♪ーーー……」
その者は、他の木よりも少し大きな木の上で歌っていた。
「♪〜〜〜♪〜〜〜〜……」
おもわず聴きいってしまう歌を、綺麗な声で歌っている者…
「♪ーー♪〜♪♪〜〜……」
だが、その者は…やはり人ではなく、魔物だった。
「♪ーー♪〜♪ーーー……」
顔立ちこそは人間と同じで、茶色の瞳で空色のツインテールな髪型をした可愛らしい女の子だが…
「♪♪♪〜〜〜♪〜〜……」
本来腕があるべきところは青い翼がついていた。
「♪ーーーー♪ーーー……」
足は、鳥類の足とそっくりだった。
「♪〜〜♪♪〜〜〜〜……」
つまり、歌っている少女は…魔物は……
「♪♪〜♪ーー♪〜〜……」
これらの特徴を持っている魔物は……
「青いハーピー…」
「失礼ね!!私はセイレーンよ!!」
小さな声で言ったうえ距離もあったけどどうやら聞こえたらしい。キッとこっちを睨みつけビシッと翼の先端をこちらに向けてすぐさま大きな声で訂正してきた。
「そもそも歌ってたのになんでセイレーンって思わないの!?」
「だって…セイレーンがこんな森に居るなんて思わなかったから…」
セイレーンの主な生息地は海辺だったはずだ。少なくとも植物と虫ぐらいしかいない森に居るとは思わない。
だから青いハーピーだと思ったのだが、その結果目の前のセイレーンさんを怒らせてしまったようだ。
「まあいいわ…ところでキミ、ずっと私の歌を聴いていたよね?」
「う、うん…」
確かに、魔物が歌っているとわかった後でも僕はずっと立ち止まって聴いていた。
そう言ってくるという事は、僕が居る事に気づいていたという事か。まあ隠れて聴いていたわけじゃないから不思議ではないけど。
「私の歌、どうだった?」
「どうって…」
「私の歌で皆が幸せに、笑顔になれそう?」
先程までとは違い、今度は真剣な眼差しで僕に感想を聞いてきた。
嘘をついても何されるかわからないので素直に言う事にする。
「綺麗な歌で…おもわず聴き続けていたよ…凄く良かった。笑顔になれると思うよ」
「ふーん……嘘ね。お世辞はいいわよ。本当の事を言って!」
本当の事を言ったのだが…何故か嘘だと思われてしまったようだ。
でも実際彼女の歌なら皆かどうかはともかく笑顔になる人は居ると思う。
だから素直にこう言ったのに…自分に自信が無いのかな?
「う、嘘じゃないよ…」
「ふーん…」
「じゃあなんでキミは笑顔になっていないどころか私の歌を聴いて泣いてるの?」
「えっ!?」
彼女にそう言われ、僕の頬を触ってみると、何か温かいものが流れているのを感じた。
流れをたどっていくと…僕の目から流れていた……つまり、これは僕の涙……
彼女に言われて初めて自分が泣いている事に気がついた。
「あ、あれ?なんで涙が…お、おかしいな…」
「どうしたのキミ?何かあった?」
両親が死んでから出したくても出なかった涙が今になって勝手に溢れてくる。
涙と一緒に、両親が死んだ事による寂しさや悲しさまで…溢れて……
「な、なんで……なんで……!!」
「ちょ、ちょっと、大丈夫なの!?」
「う……ぐす……うえええん……!!」
まるで凍った心が溶けだしたかのように、僕の涙が、寂しさが、悲しみが勝手に溢れて止まらなくなった。
「うええええええええんぶぶっ!?」
「お、落ち着きなさい!!ね?」
大きな声をあげて泣いていたら、彼女が僕の頭を胸で抱きしめた。
僕を落ち着かせようとしているのか、彼女の翼が僕の背中をポンポンとたたいている。
何か不思議な感じ…暖かくて……安心する……
「落ち着いた?」
「…ぐすっ……うん……」
いつの間にか涙も止まり、僕は落ち着いていた。
「なんで急に泣き出したの?私の歌がそんなに下手だった?」
「ううん、違うよ。実はね……」
僕はそのまま、なぜか出会ったばかりの、しかも魔物…セイレーンである目の前の少女に、両親が死んだ事を話し始めた……
……………………
…………
……
…
「……という事さ。だから、ある意味ではキミの歌を聴いたから僕は泣く事ができたんだ。ありがとう」
「そう……大変だったね……」
どうして泣いていたかを目の前のセイレーンに全て話した。
セイレーンと言えども他人に話した事によるものか、さっきまでと違い気が楽になっている。
それに、両親の死も受け入れる事が出来たのか、寂しさはあるものの、しっかりしなきゃとはっきり思えるようになり、悲しさは後を引き摺っていなかった。
「まあね。でも本当に大変なのはこれからだよ。両親が残してくれたもの…思い出とかは沢山あるけど、生活に必要なものはそんなに残ってないからね」
実際これから僕が一人で生きていくためには働いてお金を稼いだりしなければ駄目であろう。そうなるといつまでもウジウジしてても仕方が無い。
今日彼女の歌を聴けたのは良かった。気持ちの整理が出来たのだから。
「ところで、なんでキミはこんな植物と虫しかいない森に居るの?」
気持ちの整理がついたところで、彼女を初めて見たときから疑問に思っていた事を聞いてみる事にした。
だってこの森は魔物がいるなんて聞いた事が無い。しかも海辺に生息していると言われているセイレーンが森に居ると言うのも変だ。
なので、目の前のセイレーンさんに聞いてみた。
目の前の少女は魔物だという事をとっくに理解しているのに、僕は一切逃げようとは思わずに聞いてみた。
「私?私は人が居ないところで歌の練習をしようと思ってこの森に居たのよ」
「え?海から来たの?ここ海から遠いのに…」
「違うわよ!私はウタウタイである両親といろんな土地を周っているのよ…あなたは反魔物領側から来たようだけど、この森のこっち側は親魔物領の村があるの。お母さんは今そこで歌を歌ってるのよ」
「へぇ〜……」
この森の向こう側が親魔物領の村だったなんて初めて知った。
どうせ調べたのは僕が住んでる村周辺の森だけだろう。魔物は村周辺にはおらず、こっち側に居るんじゃないかな?
それともうひとつ、よくわからない単語が出ていた…
「ウタウタイって?」
言葉の意味からすると詩人か歌手の事だろう。そして彼女がセイレーンという事を考えれば、このウタウタイは歌手の事を指しているとは思うが…ならばどうしてそんな言い方をしているのだろうか?
「親魔物領ではそこそこ有名な世界一の歌姫…私のお母さん、正確には両親の事。世界一の歌手としてじゃなく、世界中に歌で笑顔を届けるウタウタイとして旅をしている…だからウタウタイ」
「そうなんだ…」
彼女のお母さんは世界一の歌手…笑顔を届けるウタウタイ…
だからあんなに歌が上手で、笑顔になれるかを聞いてきたのか。
「でも私にはお母さんの歌の才能は受け継がれなかったみたい。普通のセイレーンと同じ、もしくはそれ以下の歌しか歌えない。だから練習してたんだ…」
「そんなに下手かな?僕にはとても上手に聞こえたけど…」
僕が素直な、心からの言葉を発したら…
「…ふふっ、ありがと!たとえお世辞だとしても嬉しいよ!」
「いや、お世辞じゃないよ…」
優しい笑顔を僕に向けて、お礼を言ってくれた。
その笑顔がとっても可愛くて、ついドキッとしてしまった。
「でもね、私はもっと歌が上手になりたい。お母さんに負けない位、そしてそんなお母さんの師匠だったお父さんにも負けない位に…」
「…なんで?」
「へ?」
「いや、なんでそこまで上手になりたいの?今でも上手で、素敵で、心に響く歌なのに…」
「そう言ってくれると嬉しいけど…そこまで褒めても何も出ないよ?」
「いやいや…だからお世辞じゃないって…」
まだお世辞だと思っているらしい。そこまで自分の歌に自信が無いのだろうか?
まあでも無理ないか…両親が凄い歌手らしいから、どうしても比べてしまうのだろう。
それでも、自分の歌に少しは自信を持ってもいいとは思う。
僕の心に響いた、素敵な歌を歌えるのだから。
「それで、歌が上手になりたい理由だっけ?それはね…」
そんな歌を歌えるのに、彼女が更に歌が上手になりたい理由は…
「私の歌で…私達家族の歌で、世界中の人達に笑顔になってもらいたいから…世界中の人達が幸せになってほしいから!」
とても大きくて、素晴らしいものだった。
「だから練習してるんだけど…なかなか上手にならなくて…」
「お母さんやお父さんには教わらないの?」
「うん…私は私自身のやり方でお母さんに追いつきたいから…って言っても、一人でやるには限界があるかなって思い始めたんだ…」
そんな彼女の気弱な発言を聞いた僕は…
「だったら二人でやろうよ!」
「えっ!?」
つい、こう言ってしまったのだ。
「あ、いや、一人では限界なら僕と二人ならいいかなって思って…って言っても僕は歌が下手な部類に入るけどね…」
言った後で少し後悔した。
そもそも僕はセイレーンみたいな上手な歌は歌えない。というか歌の知識も全く無いのだ。
なのに協力するなんて言っても迷惑だろう。ただの邪魔者でしかない。
そう思ったのだが…
「え…あ、でも一人で居るよりは心強いかも…キミさえよければ私の練習につきあってよ!」
どうやら彼女にも一理あると思われたらしい。笑顔で僕にそう言ってくれた。
「よろこんで!僕が今こんなに落ち着いたのはキミの歌のおかげなんだ。この歌の練習ならいくらでもつきあうよ!」
だから僕は笑顔でこう言って、彼女の歌の練習につきあう事になった。
本心を言えば、歌だけじゃなくて彼女自身にも会いたいからってのもあるけど…自分でもその理由がわからないからそれは秘密にしておく。
「ホント!?ありがとう!!えっと…」
彼女が悩み始めてから気がついた…
…僕等はまだお互いの名前を知らないという事を。
「僕の名前はミージ。キミは?」
協力するのであればお互いの名前は知っておくべきであろう。
だから僕は、自分から名前を言って、彼女の名前を聞いた。
「私はオカル。よろしくねミージ!」
そうしたら彼女…オカルは僕に微笑みながらよろしくと言ってくれた。
その可愛らしく美しい笑顔に…僕はドキッとした。
「よ、よろしくねオカル!」
「ん?どうしたのミージ?顔が真っ赤だけど?」
「え!?そ、それは…」
そのためか、顔が真っ赤になってしまったようだ。
そして、オカルにその様子を告げられてしまった為か、僕は…
「オ、オカルの笑顔が可愛かったからつい……あ」
「え……えっ!?」
つい、本当の事を言ってしまった。
そう僕に言われたオカルの顔も、だんだん真っ赤になっていった。
「……えっと……また明日ここでいい……かな?」
「うん……また明日………」
互いに顔を赤くしたまま、次の日も同じ場所で会う約束をしてから、それぞれ帰った。
これが、僕とオカルの出会いであり、歌の訓練の始まりだった。
====================
それから僕達はほとんど毎日初めて会った場所で歌の練習をしていた。
「♪〜〜♪〜♪〜〜〜〜…」
「…うん、どこもおかしくない。完璧だよ!」
「ホント?ちょっと変だった気がするけど…」
「あー…変だったのは歌じゃなくて表情かな。オカルの顔…緊張でもしてたのか強張ってた」
「なるほど…上手く歌わなきゃって思ってたから変な力が入っちゃったのかも…」
「じゃあリラックスしてからもう一回やろう!僕家でクッキー焼いてきたから一緒に食べようよ!!」
「うん…ってミージはクッキー作れるの!?」
「うん。昔からお菓子作りは好きだったからね」
「う…うらやましい…私お菓子作りとか出来ないからな…」
ある時は気楽にお喋りをしながら…
「♪ーーー♪ー♪ー…」
「ん〜…ねえオカル…ちょっとさっきと歌い方違ってない?」
「うん…やっぱ変だった?」
「まあね…なんか声がこもったっていうか…」
「ん〜そうかなぁ…たしかにこもってたかも…でもなぁ…この歌はそんなにはっきりとした声で歌うものじゃないしなぁ…」
「あ、いや、ならいいや…やっぱ素人の僕が口出ししていいものなのかな?」
「うん…ミージの指摘って結構正確だよ。私ミージに言われて気付いた事かなりあるし、その分上達してるもの」
「…そう言ってくれるなら嬉しいよ…」
ある時は意見を出し合ったりしながら…
「お母さんの歌声こっそりこの魔水晶で録音してきたよー!!」
「本当に!?じゃあ早速聴いてみて、オカルとの違いを調べてみよう!!」
「うん!じゃあ再生するね…」
『♪〜〜♪〜♪〜ー〜♪〜〜…』
「……やっぱ私ヘタクソだなぁ…」
「ん〜…そうかなあ?たしかにオカルのお母さんは上手だし、実際に見ていないのに心が温かくなる気がして自然と笑顔になり
はするけど…やっぱオカルにはオカルの良さがあるよ!」
「ホント?…例えば?」
「例えば…そうだね…オカルの声はオカルにしか出せないところかな…」
「…意味がよくわからないんだけど……」
「たしかにどっちも笑顔に、幸せになれる歌なんだけど……お母さんは力強くて明るく朗らかな、太陽みたいな歌声で…オカルは静かで優しくて包んでくれている、月のような歌声って違いが…ってこれでもよくわからないか…」
「うん…でもありがとう…なんか自信がついてきた!私はお母さんとは違う風に、自分らしく歌を歌えばいいんだ!!」
「なら良かったよ…じゃあ練習しよっか!」
「うん!!」
ある時は世界一の歌を聴いて、どんな風に歌を歌うか決めたり…
「……ねぇ…明日…というかしばらくは休みにしようか……」
「へっ?なんで?歌の練習したくないの?」
「えっと…その……そろそろあの時期だから…しばらくは会わない方が良いかなって…」
「あの時期?どういう事?」
「うんと…その……」
「何?ハッキリ言ってくれないなら僕納得しないよ」
「だから…発情期よ……」
「へっ!?」
「そろそろ発情期に入っちゃうの!!だから…ミージの事襲っちゃうかもしれないから…休みにしようって…」
「ああ…なるほど…動物型の魔物は発情期あるんだね……別に僕は襲われてもいいけど…」
「ん?何か言った?」
「え!?いや、な、何でもないよ!!」
「ふーん…まあ、そういう事だから、多く見て一月休みってことで…」
「うん…一月か…そんなにオカルに会えないのは寂しいな…」
「ちょっ!?何言ってるのよ……うん…寂しいね……」
ある時は自分でも気付かなかった本音を言ったりして…
「結構練習に付き合わせてるけど…私って会ったばかりの頃と比べて上手くなってる?」
「そうだね…初めて会った時からオカルの歌は僕の心を動かしてくれたけど…今はより笑顔になれる…そんな気がするよ」
「ホント?お世辞じゃない?」
「僕は今まで一度だってオカルにお世辞を言った事は無いよ」
「そっか…ありがと……」
あっという間に半年もの時間が過ぎていった…
その半年の間に、僕はオカルの事を好きになった。
それは友達としてじゃなく、女の子として…つまりオカルに恋をした。
最初は魔物だからって思った事も少しはあったけれど…すぐにそんなの気にならなくなった。
でも、オカルが僕の事をどう思っているのかがわからない…
わざわざ発情期の時は僕の事を襲わないように会わないようにしていたのだ…
だから…オカルにとっては僕の事はただの友達…もしくはそれ以下の存在と思っているかもしれない…
そう考えると…自分の気持ちを伝える事が出来なかった……
そして…僕は反魔物領の人間…だからこのまま一緒には暮らせない…
それらがどうしても心の中でストッパーとなり…僕は前に……
…幸せの未来に足を進ませることができなかった……
====================
「ねえミージ、今日はちょっと話があるの…」
そんなある日の事。
いつものように歌の練習をしていたのだが…オカルはずっとどこか寂しそうな表情をしていた。
「そんな調子でオカルが歌を歌っても誰も幸せな気持ちになれないんじゃないかな?」と伝えたら、真剣な表情で僕に話があると言ってきた。
「話って何?大事な事?」
「うん……あのね………」
そしてオカルは…
「私…明後日には違う土地に行く事になったんだ…だから、ここでミージと一緒に練習できるの…明日が最後なんだ……」
「え………!?」
明日でお別れになると…僕に伝えてきた。
何も不思議な事では無い。
初めて会った時にも言っていたが、オカルの家族は世界中に歌で笑顔を届けるウタウタイとして旅をしているのだ。
つまり、次の土地に移る時が来たらお別れなのだ。
それが…明日なだけ……
でも…
「そんな……別れたくないよ……寂しいよ………」
僕は…寂しかった。
別れるのが…辛かった……
両親が死んでから、オカルと一緒に居る時が唯一心が休まり、幸せに感じたのだ。
それが無くなる……僕には堪えられなかった……
だから迷惑だとわかっていても…別れたくないと呟いてしまった……
「私だって寂しいよ…折角仲良くなれたんだもん…」
でもそれはオカルも一緒のようだった…
「だからさ、ミージ……一つ提案があるの…」
だってオカルは僕に…
「私達家族と…一緒に旅をしない?」
こうやって、別れないでいる為の提案をしてきたのだから……
「大丈夫、私の両親にはもうすでに相談済みだから…だから私のほうは気にしなくていいよ」
それは、とても魅力的な提案だ…
大好きなオカルと別れなくて済むどころか、ずっと一緒に居られるのだから。
でも、僕は…
「明日まで会えるなら…答えを言うのは明日でもいいかな…?」
その提案を、すぐに受け取る事は出来なかった。
「うん…じゃあ明日、答えを聞きにまたここに来るね……」
「うん…ありがとう……必ず答えは出すよ……」
その提案は…僕がこの地から出ていく事になるのだから。
たしかに僕はこの村そのものには残る理由は何も無い。
そもそもオカルと会っている事すら言えない反魔物領の村に居る理由は全く無い。
それだけならば僕は間違いなく一緒に行く事を即決していただろう。
もう両親だっていないんだ…誰も止めなどしないし、止められても止まる気は無い。
だが…村には僕の両親が眠っている。
この村の一角にある墓地に、僕の両親は眠っているのだ。
僕がオカルの家族についていくならば…もう二度と両親の眠るお墓に行く事は出来ないだろう。
それは…あの小さな村が親魔物派に変わらない限り不可能だと思っていいだろう。
だから…僕は迷っていた。
だからこそ…僕はどうしたらいいかわからなかった。
「……意味無いかもしれないけど…両親に会いに行くか……」
僕は、どうするかを決断する為に…両親のお墓まで行く事にした……
…………
………
……
…
「……」
村の一角の墓地の…僕の両親が眠るお墓に着いた。
こうして墓石を見ているだけでも、本当に両親が居るような気がするのはなんでだろうか…
「お父さん…お母さん…僕がもう会いに行けないかもって言ったら…怒る?」
もちろん答えなんか帰ってくるはずもないけど…僕は両親に聞いてみた。
「それとも…好きな人とどこまでも一緒に行けって…背中を押してくれる?」
その好きな人は人間じゃないけどね…と心の中で付け加えながら、また聞いてみた。
「僕、どうすればいいかな…」
僕は…どちらかと言えばオカルについて行きたかった。
でも…両親と別れるのはちょっと…たとえ死んでいても、そんな気がして…ついて行くと決められない。
「明日までに…決めないとな……」
そう思いながら…答えを出せない僕はとりあえず家に帰る事にした。
「じゃあお父さん、お母さん…今日は帰るね…でも、もしかしたらもう二度と来ないかもしれないから……」
最後に…
「これだけは言っておくね…」
僕は両親に向かって…
「僕を産んでくれてありがとう…僕は二人が親で幸せだったよ……それじゃあ……」
感謝と、別れの言葉を伝え、家に帰った…
「……ん?」
微かに…僕の背中に暖かい風が吹いた気がした……
====================
そして次の日。
僕は一晩中考えて…答えを出した。
僕が出した答え、それは…
「おや?ミージ君、そんなに大荷物を持ってどこかに行くのかい?」
「あ、隣のおばさん…と誰?まあいいや…はい、そうですが」
僕は今、大きな鞄を背負っていた。
鞄の中は、僕の着替えや生活用品、それに数少ないお金と両親との思い出の品…
「僕は…旅に出ます。当分は帰ってこないと思っていて下さい。家も好きにしていいですよ」
「へっ…!?」
僕は、オカルと一緒に行く事にした。
そのほうが、自分に悔いが残らないから。
それに…きっと両親も、そっちを選べと言ってくれている気がしたから。
「ちょっとミージ君!?それは…」
「今まで御世話になりました!!」
僕は隣のおばさんと、ついでにその横に居た知らないお兄さんに挨拶を済ませた後、オカルが居る場所…いつも歌の練習をしていた場所に急いだ。
「…彼ですか?」
「はい…きっと魔物の仕業だわ!このままじゃミージ君が魔物に騙されて遠くに行ってしまう!!」
「落ち着いて下さい!その為に私が来たのですよ。それにほぼそうだとは思いますがまだ魔物とは決まっていません…彼の後をこっそり尾行して調べてみます」
「お願いします…もし魔物の仕業だったら…」
「大丈夫です!その時は私が皆さんの…もちろんミージ君の安全を護るために…」
「勇者である私が、その魔物を討伐します!!」
だから、僕が居なくなった後にこんな会話があったなんて、知る訳もなかった。
…………
………
……
…
「♪〜〜〜♪〜〜♪〜〜〜…」
僕は、いつも練習していた場所に着いた。
「♪〜♪〜〜♪〜〜〜♪〜…」
そこには、オカルが既に居た。
「♪〜〜♪〜♪〜〜〜〜〜…」
初めて会った時と同じ木の上で…
「♪〜〜〜〜♪〜♪〜〜♪…」
あの時と同じ…いや、あの時よりも心に響く、綺麗な歌声で…
「♪〜〜♪〜♪〜〜♪〜〜…」
凛とした笑顔で…自信を持って歌っていた。
「♪〜〜〜♪♪〜♪〜〜〜…」
だから僕は、初めて会った時と同じように…
「青いハーピー…」
「失礼ね!!私はセイレーンよ!!」
冗談で青いハーピーと言ったら、表情に笑みを浮かべつつも初めて会った時のように、翼の先端をビシッとこちらに向けてすぐさま訂正してきた。
「もう…その冗談はやめてよね……ってミージ、その荷物は…」
そして…僕のすぐ近くまで降りてきたオカルは、僕の背負っている荷物に気付いたらしい…
「うん…僕はオカルと一緒に行く事にしたよ!」
なので僕は、自分が決めた事をオカルに伝えた。
「そう…嬉しい!これで別れずに居られるね♪」
そしたら、笑顔で嬉しいと言ってくれた。
「じゃあ早速行こうよ!!私の両親も待ってるよ!!」
「あ、ちょっと待って!!」
「ん?なに?」
そう言ってくれた事や、そもそも僕と一緒に居たいと言ってくれた事から…
「あのさ…オカルに言っておきたい事があるんだ…」
「……」
オカルも、僕の事を……
「僕は…オカルの事が…」
「……」
ただの友達以上に思っているだろう…そう思って…
「オカルの事が……s…」
僕は、オカルに自分の気持ちを伝え…幸せの未来へ足を進ませようと……
「そこまでだ!」
「「!?」」
…ようとしたけれど、何者かによって邪魔されてしまった…
「やはり魔物だったか…おいそこのセイレーン!ミージ君から離れろ!!」
「え…!?」
それは…隣のおばさんの横に居た、見知らぬお兄さんだった。
しかもそのお兄さんは、大きな剣を持っていて…オカルにその剣を向けていた。
「ちょっと!?あなたはいったい…?」
「私はミージ君を魔物の誘惑から救いに来た勇者だよ。どうやらギリギリセーフだったようだね…」
しかも、意味がわからない事を言ってきた。
「どういう事ですか…魔物から救いに来たって?」
「村の人に頼まれたのさ…君がここ半年の間よく何も居ないはずの森のほうに向かうのを見たと。もしや魔物の仕業じゃないかって…だからもし魔物の仕業で、魅了されているなら助けてやってくれって…勇者である私にね」
「そんな…私は…!!」
「おっと!魔物の戯言なんか聞くと思うか?」
どうやら村の人達が僕の事を心配して勇者に頼んだらしい。
「それはわざわざありがとうございます…」
あの村は反魔物領…だからそうするのはわかる…
「ですが…あなたも、村の人達も間違っている事がある…」
でも…それは要らぬお節介だ。
「たしかに僕はオカルに魅了されたのかもしれない…」
だって、僕は…
「でも、オカルが、両親が死んで凍ってしまった僕の心を溶かしてくれたんだ!」
僕自身が…
「オカルは僕に涙と…笑顔を運んでくれたんだ!!」
オカルと一緒に行くと決めたのだから…
「そんなオカルの事が…魔物だとか関係なく好きなんだ!!」
オカルの事が、大好きになったのだから。
「僕は僕自身の意思で、オカルと一緒に居るって決めたんだ!!」
オカルとずっと一緒に居たいと、自分で決めたのだから。
「なっ……」
「ミージ…!!」
流れで告白したみたいになっちゃったけど…僕の気持ちをオカルに伝える事ができた。
僕の告白を聞いたオカルは…空色の髪とは対照的に顔を真っ赤にしながら…
「私も…ミージの事が大好き!!だから、ずっと一緒に居て下さい!!」
僕が聞いて一番嬉しい事を、その優しい声で言ってくれた。
「…オカル…僕はずっと一緒に居るよ!だからオカルもずっと僕と一緒に居てね!」
「うん!もちろん!!」
本来ならば、そのまま良い雰囲気になってくれるのだろうけれど…
「そうか…なら仕方ない……」
今この場には、邪魔者が存在していた。
「頼まれた事だし、折角助けてやろうかと思ったのに…もう手遅れだし…」
しかもただの邪魔者ではなく…
「テメェら二人とも、俺がまとめて始末してやるよ!!」
勇者という名の、巨大な壁だった。
「死ねクソがあ!!」
「危ない!!」
「うわあっ!?ミージ!!」
突然態度も口調も雰囲気も変えた勇者が、僕達に向けて剣を振り下ろしてきた。
僕は咄嗟に腕を伸ばし、オカルを突き飛ばしたが…
「うくっ!?いたっ……」
「大丈夫ミージ…って血が!?」
「ちっ!腕に掠っただけか…」
その腕に剣の先が掠め、腕から血が流れ始めた。
痛みはかなりのものであるが、一応問題無く動かす事ができるので大事には至って無いようだ。
「だったら…おらあ!!」
「ぐあっ!!」
「ミージ…きゃっ!!」
だが、痛がっている僕を思いっきり蹴り飛ばし…オカルと重なる形で抑え込んできた。
「次は外さない…覚悟!!」
そして…僕とオカルが重なっている場所に目掛けて…剣を突き刺して……!!
ガキーーーン!!
でも勇者の剣は、僕達に刺さる事は無かった。
「……」
「…何だテメェは?いきなり何しやがる!!邪魔すんじゃねえ!!」
鋭い金属音と供にいきなり現れた男の人に、その剣を金属で出来たパイプのようなもので止められてしまったからだ。
「……」
「テメェはいったい何者なんだ!!」
その男の人は…青い羽の模様が描かれている真っ赤なスカーフを首に巻き、茶色い瞳…どこかオカルと似ている目をしていた。
「……」
「おい!何か言いやがれ!!」
そして、ずっと黙ったまま勇者を力強く睨みつけていた。
「えっと…あなたは…?」
「お…お父さん!?なんでここに!?」
「へっ!?」
オカルの言葉が正しければ…今目の前に居る、僕達を助けてくれた男の人は…
「オカルのお父さん…ですか?」
「……」
僕のほうを見て、無言のまま、首を縦に振った。
言われてみれば、目元がオカルと似ている…というか結構若いな…
「テメェ…ふざけたマネしやがって…」
「……」
勇者が、オカルのお父さんに怒りをぶつけていると…
「ふざけたマネをしているのはあなたです!!」
「なっ!?」
突然、上空から声が聞こえてきた。
その声は…直接には一度もないけれど…何度も聴いたことがある声だった。
「私の娘と、娘の好きな人に怪我をさせるなんて許しません!!」
藍色の瞳に空色の髪、青い翼を持ったウタウタイ…
「お母さんまで!!」
「ちいっ!!このセイレーンの親かよ!!」
オカルのお母さんが、険しい顔をしながら上空から舞い降りてきた。
「どうしてここに…!?」
「実はね…オカルが言っていたミージ君がどんな子なのか気になってたからミングさんと一緒に遠くから見ていたんだけどね…変な人が出てきて二人を傷付けようとしていたから飛び出したってわけで…」
「ちょっと!何してるのよ!!…でもおかげで助かった…お父さん、お母さん、ありがとう」
そして僕達の近くまで来て…無事を確認しているのかホッとした表情になった。
「どういたしまして…ミージ君の怪我は…大丈夫そうね」
「はい、血こそ出てはいますが掠っただけです」
「そう…オカルを助けてくれてありがとうね。じゃあこのまま二人はこのまま泊めさせてもらっていた小屋まで逃げてね!」
「えっでも…」
勇者から一緒に逃げなくていいのですか?と聞こうとしたけれど…
「ほら行くよミージ!」
「え、ちょっとオカル…ってうわわっ!?」
いきなりオカルの足に肩を掴まれて…飛んだ!?
「ちょっとオカル!?自分で走るから降ろして!!」
「こっちのほうが速いからジッとしててよ!」
「そんな事言っても…」
足が宙に浮いている状態は、人間なら誰でも恐怖を感じると思う。
だから暴れても仕方ないと思うのだが…
まあそれは置いといて…
「オカルのお父さんとお母さんはどうするの!?相手は勇者なんだよ!?」
なのに僕達だけ逃げていいのかと思ったが…
「大丈夫!お父さんもお母さんもあんなのよりずっと強いんだから!!」
オカルが自信を持ってそういうのなら大丈夫なんだろう…
そう自信もって答えたオカルを見て、僕は大人しく連れられて行く事にした。
====================
「到着っと!」
「はぁ〜〜〜〜〜〜………生き返った〜〜…」
「…そんなに飛ぶのが怖かったの?」
「うん…オカルが落とすとは思わないけど…それでも怖いものは怖いよ…」
森を抜け、村の外側にあった小屋…そこの近くに降ろされて、僕はやっと安心する事ができた。
地面を踏みしめる感触が素晴らしい…空の旅は当分したくない…
「まっいいや…じゃあ小屋に入って二人を待とう!」
オカルに先導される形で、僕達は小屋の中に入った。
小屋の中は結構広く、ベッドが4組置いてあり、その横にはオカル達の荷物だと思われる大きな袋が置いてあった。
僕達は小屋に入ったあと、とりあえずベッドの上に座って、お喋りをする事にした。
「そういえばオカルのお父さんって寡黙な人だね…カッコいいけどさ…」
「ああ…アレは違うよ。私のお父さんは喋る事が出来ないんだよ」
「えっ!?そうなの!?」
そこで僕はまず、これから御世話になるのだからいろいろ知りたいと思ってオカルの両親について聞いてみた。
実際に見たのは初めてだが、とても優しそうな人達だとは思った。
「昔なんか事件に巻き込まれて声を出せなくなったんだって…それでお母さんがお父さんの歌になるって言って歌の指導を受けて見事世界一となったんだって聞いた事がある」
「へぇ〜…なんて言うか…凄い人達だね…」
「本当にね…それで二人は結ばれたって言ってたよ…」
そうやって両親の話をするオカルは…どこか誇らしげであった。
きっとオカルは両親の事を誇りに思っているのだろう…
「……」
「……」
両親の話が終わったあと、僕達の間には沈黙が流れた。
大丈夫だと言っても…やはり心配になる。
「……ねえ、ミージ…」
「……何、オカル?」
しかし、そう時間が経たないうちにオカルが話しかけてきた。
「ミージも私の事好きって言ってくれたよね?」
「うん…オカルも僕の事好きなんだね…」
そして、さっき言っていた事の…お互いがお互いの事を好きだと言う事の確認をしてきた。
「うん…だからさ、お願いがあるんだけど…」
「なんだい?今出来る範囲なら聞くよ…」
そして僕に…
「うん…好きな人だけに…ミージだけに贈る、私の特別な歌を聴いてほしいんだ…」
僕だけに贈る特別な歌を聴いてほしいとお願いしてきた。
「うん…よろこんで!」
もちろん、僕はオカルの歌を聴く。
「では歌いまs……んっ!?」
でも、その前に…
僕は、オカルにキスをした。
「…な、なによ突然……」
「歌い始めたら出来ないから、先にしたかったんだ…いけなかった?」
「ううん…嬉しい……」
彼女も嬉しそうに、少し顔を朱に染めながら微笑んでくれた。
「じゃあ今度こそ歌うね…」
そんな幸せな雰囲気の中、彼女はそう言って、大きく息を吸い込み……
「♪〜〜♪〜〜♪〜〜〜…」
オカルの言う僕だけの特別な歌を、その優しい声で歌い始めた…
「♪〜〜〜♪♪〜♪〜〜…」
オカルの歌を聴いていると…自然と笑顔が溢れてくる…
「♪〜〜♪〜♪〜〜♪〜…」
自然と幸せな気持ちになってくる…
「♪〜♪〜〜♪〜〜〜♪…」
そして…気持ちが高鳴って………?
「♪〜〜♪〜♪〜〜♪〜…」
あれ…なんだ……?
何か変だぞ……?
「♪♪〜♪〜〜〜〜♪〜…」
気持ちは高鳴っているんだけど…鼓動も速くなっていると言うか…
それに…下半身が熱を帯び始めているような…
「♪〜〜♪〜♪〜〜〜♪…」
オカルの歌が僕に浸透していく…
浸透する度に…僕の中で何かが大きくなっていく…
「♪〜♪♪♪〜〜♪〜〜…」
ここで、歌っているオカルに動きがあった。
オカルが、僕の服を翼の先端を器用に使い脱がせ始めた。
ゆっくりと、しかし確実に…肌に触れる羽がもどかしい。
「♪〜〜♪〜〜〜♪〜〜…」
次に、オカルは自分の服を脱ぎ始めた。
服と言っても、オカルは普段から胸部を隠す程度の服しか着てなかったのですぐに脱いでしまった。
オカルの胸の小さな膨らみが、その先端に存在するピンク色の突起が僕の目に入った。
少し恥ずかしいのか、オカルの艶やかな肌は薄く赤色に染まっていた。
「♪〜♪♪〜〜♪〜〜〜…」
オカルの胸を凝視する僕をよそに、今度はオカルの足が僕のズボンに掛けられた。
爪は鋭い筈なのに、僕の肌を一切傷付けることなく…僕のズボンを摺り下ろした。
そして現れた下着は、いつの間にやら興奮していたらしく、僕のペニスによってすでに小高い丘が形成されていた。
そのままオカルは下着にも足を掛け、僕のペニスを外気に触れさせた。
僕は、このオカルの行動を、止めようとは思えなかった。
オカルの歌が、オカルの行動を拒むことを出来無くしていた。
「♪〜〜〜〜♪♪♪〜〜…」
そしてオカルは、自分のスカートを取り外した。
白い下着の股の部分は、筋の形で濡れていた…おそらくオカルも興奮しているのだろう。
さらにオカルは翼を使い、その下着すら器用に下にずらしていった…
…下着がずれ、現れた秘部を見た瞬間…
…僕は理性というものを手放し、オカルの翼を傷付けないようにしながらベッドの上に押し倒していた。
「♪〜♪〜〜♪〜〜〜〜…」
そして、膨張したペニスを、オカルに挿入しようとしていた。
自分の行動を認識したとき、微かに僕は何をしているんだと思った。
「♪〜〜♪〜〜〜♪〜♪…」
だが、オカルの歌を脳が認識する程、その考えは消えていって…
「♪〜〜ぁっ♪〜♪〜〜…」
オカルの秘部に自身をあてがい…
彼女の腰に手をやり、ずぶずぶと挿入れていった。
そして、オカルの処女膜を、その勢いのまま突き破った。
血が流れているのを見て、一瞬だけハッとした。
けれども、彼女の歌を聴いて…喘ぎ声が混じった歌を聴いて、僕はまた彼女を犯す事しか考えられなくなった。
「♪〜っ♪んっ♪ぁん♪…」
初めてで不慣れながらも腰を突き動かす僕…
オカルの膣は、僕のペニスをまるで逃がす事がないように、その柔らかな肉壁で締め付けてくる。
更には、彼女のナカの襞が僕のペニスに絡みつき、僕の感度を上げていく…
彼女も感じているようで、歌こそ歌い続けているが、歌声に喘ぐ声が入り混じっている。
顔を熱で赤らめながら、恍惚とした表情を浮かべながら歌い続けている。
「んっ♪〜♪〜ぁあっ♪…」
オカルの歌が僕の腰の動きを激しくする…
そう錯覚するほど、オカルの歌が僕の耳に響く度に興奮し、快感を求める事に歯止めが効かなくなる。
そして、激しくオカルを求め、彼女も僕を求めた結果、僕は限界を迎えた。
「あっ♪あ♪ぁはあん♪…」
オカルに一番深く腰を打ちつけ、亀頭が何かに触れた瞬間、彼女の膣はまるで搾り摂るように締まり、僕のペニスは精を彼女の膣内に放った。
ドクドクと彼女のナカに精を注ぐ度に、彼女は一際高い声で喘ぐ。
その喘ぎ声もリズムを持ち、歌になり、僕を高めてくる。
「あん♪〜♪〜んんっ♪…」
まだ歌い続けるオカルに合わせ、僕は射精したばかりだと言うのに硬いままのペニスて、再び彼女の膣内を刺激し始めた。
僕達の淫猥で幸せな歌謡祭は、若きウタウタイが歌うウタが終わるまで続いた…
====================
「……僕は…なんて事を……」
「…えっと…だからその…ミージが気にする事じゃないんだけど…」
オカルの歌が終わり、冷静になった僕は自己嫌悪に陥っていた。
「私がそう仕向けたんだけら…だからそんなに気にしないで良いんだってば!」
「それでも…思いやりが無かったと言うか…はぁ……」
いくらオカルの歌の効果で性欲が爆発していたからって…強姦紛いなことをしたのはな…
嫌がってこそなかったけど、何度も腰を突き動かして何度もナカに出して…はぁ……
「だからいいってば…そんなに落ち込まないでよ…」
「うん……わかってるけど……はぁ……」
自分がした事を考えると溜息が止まらない…
「もう…仕方ないなぁ……」
少し呆れ気味のオカルはそう言って…
「♪〜〜♪〜♪〜〜♪〜…」
先程とは違う、いつも練習していた優しい歌を歌った。
彼女の歌を聴いているうちに、僕の心は少しずつ穏やかになっていき…
「……ふふ…」
「♪〜〜…っと、笑顔になってくれたみたいね」
彼女の言うとおり、僕はすっかり元気になり、笑顔を浮かべていた。
「ま、こうやって私の歌で元気に、笑顔に出来るようになったのも、ミージのおかげだけどね…ありがとう…」
「いや、こちらこそ…ありがとう……」
そして、互いにまた良い雰囲気になったところで…
トントンッ
カチャリッ
何者かがノックをして、小屋の中に入ってきた…
「あ…お父さん……やっぱり無事だったのね…」
それは、オカルのお父さん…ミングさんだった。
「あ…えっと…その……」
僕は突然のミングさんの登場に慌てた。
なぜなら、今僕達は服こそきているが、ベッドは染みだらけで、小屋には性臭が漂っていたからだ。
つまり、オカルの両親が戦ってくれている間に、僕が二人の娘の始めてを奪ったのが簡単にバレてしまうからだ。
だから、何を言われるんだろうと内心ビクビクとしていたのだが…
「……」【仲睦まじくしているところで悪いが、シーツぐらいは洗っておくように】
そう書かれた紙を僕達に見せてきただけだった。
「あ…そうだよね…じゃあ私洗ってくる!」
【臭いもきちんととれよ。次使う人が変な思いしないようにな】
「はーい!」
オカルがシーツを持って洗いに行ってしまい、その場には僕とミングさんの二人だけになってしまった。
状況が状況なので少し気まずい…
「あ、えと…その〜…」
【そう硬くなるな。別に娘とした事を責めるつもりはないどころか、娘を女にしてくれたお祝いだってしてやるよ】
「へ?はっ!?」
【ジョークだ。ミージ君が俺達と一緒に来ると言う事で歓迎パーティーをするだけだ】
「えっ!?あ、ありがとうございます!!」
が、ミングさんは笑顔でこう紙に書いて僕と会話していた。
なので、僕は緊張が解れ気が楽になった。
…というか会話速度で文字を書けるとか凄い人だな……
【それで、一つ確認がある】
「え…なんですか?」
と、ここで真剣な顔をしながら、僕に確認をしてきた…
「ミージ君がオカルと一緒に、私達と一緒に何がしたいか、どうしたいかを教えてほしいのです!」
【ちょっ!?シーン、俺の言葉を奪うなよ!】
「ミングさん、私もミージ君に同じ事聞きたいだけです!」
いきなり現れたオカルのお母さん…シーンさんと一緒に、僕はオカルと何がしたいのかを。
だから僕は…
「僕は、オカルと一緒に、世界中の人達を幸せにしたい。オカルの歌で…僕達二人が築いた歌で、世界中に笑顔を…幸せを運びたいです!!」
二人のウタウタイ達に、自分の想いを伝えた。
「わかりました…では今後もよろしくねミージ君!私の事はお母さんと思ってくれていいですからね♪」
【俺も父親だと思ってくれて構わない…というかオカルの夫になるなら俺達は名実共に親子だしな】
その想いが伝わったのか、二人は笑顔でそう言ってくれた。
「……へへっ…よろしくお願いします!!」
僕は、笑顔でその言葉に応えた……
ある日、心が凍っていた僕の前に現れたウタウタイ…
彼女は僕の心を溶かし、幸せを運んでくれた…
そして僕達は、互いに幸せになった…
それらは全部、ウタウタイが歌うウタによって、幸せになれた…
だから今度は、世界中の人達に僕達の歌を届ける…
世界中の人達の為に、僕達は幸せを届けていく…
幸せを運ぶウタウタイとして……
・・・・・END?
私は、小さい頃から両親に憧れていた。
世界一の歌声を持つお母さんと、そんなお母さんの歌の師匠だったお父さん…
世界中の人達を笑顔にするため旅をする、二人のウタウタイに憧れていた。
でも、私はそんな二人の歌を受け継ぐ事は無かった。
私の歌は上辺だけ、誰も笑顔に、幸せにする事が出来ない下手な歌しか歌えなかった。
だから、私は練習を続けていた。
いつか二人を越すような立派なウタウタイになる為に。
そんなある日の事。
とある村で半年ほど御世話になる事になった私達。
お母さん達が村で歌っている間、私は近くの森の中で歌の練習をしていた。
いつもより上手く歌えてるなと思っていたら、突然近くの茂みから音がした。
見てみると、そこには茶髪の男の子が私の歌を聴き入っていた。
その空色の瞳から涙を流しながら、私の歌を聴いていた。
私の事を青ハーピーと失礼な事を言ったのがきっかけで話をする事ができた。
そして私の歌がどうだったかを聞いたとき、彼は涙を流しながら笑顔になれると言った。
その事を指摘したらいきなり泣き出したので、私は思わず落ち着かせた。
そして彼が何故泣いているのかと、私の歌のおかげで泣けた事を教えてくれた。
逆に私の事を教えたら、彼…ミージは私の歌の練習に付き合ってくれると言ってくれた。
よろしくと言ったら、ミージは顔が赤くなった。
何故かと聞いたら、私の笑顔が可愛かったからと言った…
…嬉しさと恥ずかしさで、私も顔が真っ赤になってしまった。
それから半年の間、私達はずっと一緒に歌の練習をしてきた。
ミージは素人と言っていたが、彼の指摘はかなり当たり、私の歌はみるみる上達していった。
ある時は一緒にお菓子を食べながら…
ある時はお母さんの歌と聴き比べながら…
ある時は自分で気付かなかった本音を言ったりしながら…
私達は、いつも同じ場所で、ずっと歌の練習をしていた。
その甲斐もあり、私は人々を笑顔に、幸せにできる歌を歌えるようになった。
そして、私を支えてくれたミージの事が、好きになっていた。
でも、私の家族は、世界中に笑顔を届ける旅をしている。
つまり、ミージとのお別れの時がやってきてしまうのだ…
別れるのが嫌だった私は、両親に相談した。
そしたら、一緒に旅をすれば良いと言ってくれたので、私はその事をミージに伝えた。
彼は次の日まで待ってくれと言ったので、私はもやもやしながらも待つ事にした。
そして次の日、彼は私達と一緒に行くと言ってくれた。
そして、私の事を好きと……言ってくれる直前に突然邪魔された。
その邪魔者は勇者で、殺されそうになったけど…両親が助けてくれた。
だから私はミージと一緒に小屋まで逃げた。
…互いに好きだと言った後の、幸せな雰囲気に包まれながら…
そして小屋で私達はお話をしていた。
でも私は、話している途中で…ミージへの想いが膨れ上がっていった。
だから私は、彼に特別な歌を歌う事にしたのだが…
…ミージが、歌おうとした私に、キスをしてくれた…
その事もあり、私の特別な歌は、より特別なものになり…
私達はお互いに激しく求めあった…
私達は、これからずっと歌を歌っていく。
私を幸せにしてくれた人と一緒に…世界中に歌を…笑顔を…
幸せを届ける為に…旅をしていく…
幸せを運ぶウタウタイとして……
・・・・・END
12/05/19 13:00更新 / マイクロミー