旅11 そして少女は魔物になった
「本当にいいんだね、サマリお姉ちゃん?」
「うん…もう決めた!」
現在10時。
昨日、私は魔物になる決心をした。
一応皆に言ってから魔物になろうと思い、アメリちゃんに言った後にプロメとツバキにも話しに行った。
だけど町に買い出しに行っていたツバキをなかなか見つけられず…その為話すのが遅くなってしまい、アメリちゃんが眠くなってしまったので次の日の朝にする事になった。
そして私は人間としての最後の食事を終え、アメリちゃんと一緒に少し広い部屋に連れて来られ、大きなベッドの上にアメリちゃんと一緒に寝かせられた。
アメリちゃんと一緒に寝ているだけならいつもと変わらないが、今からは後戻りができないもの…私を魔物化するために一緒に寝かせられたのだ。
どうやら魔物化する際余計な力を抜いていたほうが良いらしく、こうして一緒に寝ている形になったんだけど…
…たしか人間を魔物化する際、サキュバスってエッチな事をするのが多いって前に聞いたな…
…まさかアメリちゃんとエッチな事しろって言わないよね?アメリちゃんまだ8歳だよ?
「ねえサマリお姉ちゃん…」
「ひゃい!?」
「……なに今のこえ?」
「え!?あ、ごめん、考え事をしているときに急に話しかけられたからビックリしちゃって…」
「ふーん…」
アメリちゃんが何か用があるらしく私に話しかけてきた。
アメリちゃんとエッチな事しろって言われるかもって考えてたときにいきなり話しかけられたからビックリして変な声がでてしまった。
「まあいいや…で、サマリお姉ちゃん…なんでアメリに魔物にしてもらうってきめたの?」
アメリちゃんがそう真剣に聞いてきたので…
「えっとね…魔物になること自体を決めたのは…やっぱり私、皆と一緒に自分の足で旅をしたいから…それが出来る可能性に掛けたんだよ。アメリちゃんに頼んだのは…やっぱりプロメよりも長く一緒に居るからかな…」
私が魔物化を決心した理由と、アメリちゃんに頼んだ理由を言ったら…
「…へへっ///」
アメリちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
魔物になるかならないかの決心がつかなかった私は、これまでの旅で出会った人物…特に一緒に旅をしている皆の顔を思い浮かべる事にした。
普段は頼りなく、どこか不思議なところがあるけれど、いざというときは頼りになるユウロ…
短気で突っ走る癖があるけど、自分の旦那さんの事を愛しており、一番年上だから相談もしやすいプロメ…
さわやかなジパング人で、たまに寂しい顔をする、大切な人の事を気にするツバキ…
そして、いつも可愛い笑顔で、無邪気で、明るくて、優しくて…そして妹の様なアメリちゃん…
皆の顔を浮かべたら…皆の笑顔を浮かべたら…私はやっぱり…旅を続けたいと思った。
様々な土地を、様々な人や魔物を、自分の足で行って、自分の目で見てみたいと思った。
自分の足で、様々な人と一緒に、世界を見て周りたいと思った。
それは…幼い頃からの自分の夢だから…人間をやめてでも…旅を続けたいと思った。
だから…私は魔物になる事を…決心した。
自分の足で…皆と笑顔で旅が出来る可能性に…掛ける事にしたのだ。
この決断に恐怖や後悔が無いかというと、正直ありまくりだ。
魔物になったら、反魔物領にある家には二度と帰れないだろう。両親も魔物になった私と会ってくれるかわからない。
それでも、私は自分の夢の為に、皆と一緒に旅をするために前に進まなければならない。
「準備が整いました。こちらが精補給剤です。アメリさんがサマリさんの魔物化をする際、少々子供にはきついかもしれませんが、魔力が足りなそうでしたらこちらを使ってください」
「ありがとーユニコーンのお姉ちゃん。アメリ我慢して飲むよ」
「それと、サマリさんが魔物になった際、急激に精が欲しくなる場合もあります。もしお連れの人やそこらへんの人を襲いたくない場合もこちらをお飲み下さい」
「わかりました。二人とも何か過去にあるらしくってそのことは釘を刺されているので…飲む事にします」
アメリちゃんが精補給剤なるものをものすっごくキツそうに飲み…これで全ての準備が整った。
これから私は、アメリちゃんの手で魔物に変えられるのだ。
「うぅ…おいしくない…でも、元気いっぱい!」
「ははは…大丈夫アメリちゃん?」
「うん。サマリお姉ちゃんこそこわくない?人間さんをやめるのがこわいって言ってたし…」
「え…」
正直怖い。
今すぐここから逃げ出したい。
でも…
「大丈夫。人間だろうが魔物だろうが、私は私、サマリはサマリだから!!」
逃げたくないから…自分にも言い聞かせるように、アメリちゃんにこう答えた。
「わかった。じゃあサマリお姉ちゃん、いちばんだいじなこと聞くけど…何になりたい?」
何になりたいか…おそらくどの魔物になりたいかということだろう。
リリムは魔王の眷族だったらどんな魔物にも変える事ができるってアメリちゃんから聞いていたけど、どの魔物が眷族かそうじゃないかなんて知らないし、そもそも私は旅の途中で出会った魔物以外は詳しい姿を知らないし、名前や特徴もあとは『ドラゴン』や『ヴァンパイア』など有名なものしか知らないのだ。
知らない事だらけで自分で決められそうもないから…
「何でもいい…アメリちゃんが想う、私に合う魔物でいいよ…」
こう、アメリちゃんに頼んだ。
「わかった。でもホントになんでもいいの?」
「うん…あ、ちょっと待って…」
けど、重要な事を忘れていた。
「私は自分の2本の足で地面を踏みしめながら旅がしたいから足が無い魔物は避けてほしいのと、料理は続けたいからなるべく人間と違わない手がある魔物がいいかな…」
「うーん…どっちもアメリが人化のじゅつをおしえれば大丈夫だとおもうけど…」
「それも教えてもらいたいけど、一回一回使うのも嫌だから……わかってほしいな…」
「うーん……わかった」
そう、これだけは譲れない。
ラミアなど足が無い魔物みたいに這って旅をするのも悪くは無いが、私は自分の2本足で旅がしたい。
特にこれと言った理由は無いけど…しいて言うなら今までと同じように歩きたいから…2本足で旅がしたいのだ。
料理も、今の感覚で沁み付いているから手が大きく変わると感覚が変わってしまうかもしれない。そうするとしばらくの間困った事になるのでそれも避けたいのだ。
アメリちゃんが言うとおりどちらも人化の術とやらを使えば問題はないだろうけど、それは自分の身体を偽っているようなものだ。
自分の身体を偽りながら旅や料理はできるだけしたくないのだ。
流石に反魔物領に行く場合は必要になるだろうけど、それ以外は使いたくないのだ。
「…きめた!あの魔物にする!さっそくはじめるよ!!」
アメリちゃんが私を何の魔物にするか決め…私の魔物化が始まった。
「じゃあサマリお姉ちゃん…ふくぬいで」
「え!?」
そして、いきなり服を脱ぐように言われた。
まさか本当にアメリちゃんとエッチな事をしろと言うんじゃあ…
「な、なんで服脱ぐの?」
「魔物になったときにふくきたままだとたいへんなことになるかもしれないから…それに裸のほうがアメリの魔力サマリお姉ちゃんにながしこみやすいし…」
「へ!?あ、そ、そうなのね!!」
よかった…違った…
いくらなんでも8歳児とエッチしろって言われたらどうしようかと思った。
「アメリちゃんにエッチな事されると思ったよ…」
「え?そっちがいいならアメリがんばってやるよ?サマリお姉ちゃんとエッチなことしておまんこからちょくせつ魔力ながすほうがやりやすいし、アメリもたぶんきもちいいし…」
「いやいやいや!!それは無しで!!あと子供がお、おまピーとかそんなはしたない言葉を使っちゃいけません!!」
「えー、気にすることじゃないけどなぁ……とにかく、サマリお姉ちゃんのからだ全体にアメリの魔力を一気にいっぱいながしこむ方法でいいよね?」
「うん!!それでお願い!!」
案外アメリちゃんがエッチする事に乗り気でビックリした。
子供でもさすがサキュバス…って言うとアメリちゃん怒るからさすがリリム。
とまあちょっとバカな事を言い合って気が楽になった事だし…
「じゃあ、いくよサマリお姉ちゃん…」
「うん…お願いねアメリちゃん…」
真剣になって、始める事にした。
「サマリお姉ちゃんの…」
アメリちゃんが私のお腹…というか子宮の近くに両手を置いて…
「足がなおりますように!!」
そういいながら、私に何か奇妙な感覚がするもの…魔力を流し込み始めた。
ドクンッ!!
「うぐっ!!はぁっ!はあっ!はあっ!!」
一気に魔力を流し込まれたからか、心臓の鼓動が早く大きく…自然と呼吸も荒くなる…
熱に犯され、身体が壊れてしまうと脳が危険信号を送り続けていた…
「はあっ!!はあっ!!…はぁっ…はぁっ……ぁっ…!!」
けれど…数刻もしないうちに流し込まれた魔力が私の身体に馴染み始めたのか、急に身体の危険は感じなくなってきた…
そう、危険信号は止まったけど……
「ひゃっ!!な、なにこれぇ…あたまが…なんか蕩けてるぅ…」
「きもちいいかもしれないけどあまりうごかないで!アメリまだ小さいから集中しないとうまくいかないから!!」
「そ、そんなこと言ってもぉ…身体が勝手に痙攣して……ひゃああん!!」
それと同時に身体全体に快感の波が襲ってきた。
いままで感じたこともない快感に飲み込まれたせいか、身体が勝手に弓なりに仰け反ってビクッっと痙攣してしまう。
それと、下腹部がもの凄く熱い…股間が疼いて止まらない。
「ああっ!ひゅん!んんんんー!!」
一際大きな熱と波が私を襲い、股から尿…とは違う何かを吹き出しながら腰がガクガクと震え始めた。
「はぁ……これで…はぁ…たぶん……大丈夫だよ……はぁ……サマリお姉ちゃん……」
アメリちゃんが言っている言葉が、興奮しているせいで耳に入ってこない…
全身に何かが覆っている……いや、何かが染み込んでいる気がする…
そして…腕や足や腰や頭…体中から何かが飛び出してくる感覚が……!!
「ひゃああはああぁあんっ♪」
ぐぐぐ……シュッ!
ふぁふん…!
巨大な快感と共に、私の腕や足、身体から飛び出してきたもの……
それは……
クリーム色の……もこもこした……………?
あれ?……なんか………眠く…………
…………………………
…ぐう………………
ぐぅ………………
=======[アメリ視点]=======
「はぁ……はぁ………ふぅ〜〜〜……」
つかれた……それにおなかすいた……
でも…サマリお姉ちゃんをぶじ魔物に…
…………
…はっ!
いけないいけない……アメリまでねちゃう……
「終わりましたか?……終わったようですね…」
「あ、ユニコーンのお姉ちゃん」
アメリたちのようすを見にきたのか、さっきまでとびらの外にいたユニコーンのお姉ちゃんが部屋に入ってきた。
「サマリさん気持ちよさそうに寝ていますね」
「うん……しかたないよ……」
「なぜこの魔物に?」
「それはね……サマリお姉ちゃんの足がなおってたら言う……」
「そうですか……サマリさん…足は動くようになったのでしょうか…」
「わかんない…サマリお姉ちゃんすぐねちゃったから……」
サマリお姉ちゃんが歩けるようになったかたしかめなくちゃいけないから、きもちよさそうにねているサマリお姉ちゃんをおこさなきゃね……
耳元に近づいて……大きく息を吸って……
=======[サマリ視点]=======
ぐぅ…………………
ぐぅ…………………
g「おきて!!サマリお姉ちゃん!!」はっ!!
「あ、おはようアメリちゃん…」
「もう…しょうがないかもしれないけど、ねるなら歩けるかどうかたしかめてからにしてよね!!」
「ごめん…」
身体から何が飛び出したのかを確認してたら急に眠くなって、そのまま寝てしまった。
そしたらアメリちゃんが私の耳元で大きな声を出して起こしてくれた。
アメリちゃんはちょっと怒ってる様子だったから謝ったけど…そもそもなんで私眠くなったんだろ?
うーん…魔物化した疲れかな?
魔物化したといえば…
「ねえアメリちゃん、私何の魔物にしたの?」
「それは…」
自分がどんな魔物になったのかわからないのでアメリちゃんに聞いてみたのだが…
「こちらの鏡で、ご自分の目でお確かめになってはいかがですか?」
「え?あ、はい…」
看護師さんにそう言われて聞きそびれてしまった。
こちらの鏡って看護師さんの隣に置いてある姿見の事だろう。
一応腕からもこもこしたものが生えているのはわかるけど…全身像は確かに気になる。
だから私は無意識のうちにベッドから起き上がり、姿見の前まで足を運んで……
あ…
足が…
足が……動く……!!
「足が……治ってる!!」
「ホントにサマリお姉ちゃん!?」
「うん!!ほら!!」
今度は意識しながら屈伸したりジャンプしたりしてみた。
どんな動きをしても…自分の意思で…自由に足が動く!!
自由に足が動かせる…足が治った…だから、私は旅を続けることが出来る!!
「やったー!!これでサマリお姉ちゃんとこれからも旅ができるね!!」
「うん!!これからもよろしくねアメリちゃん!!」
うれしくて、アメリちゃんと二人その場で抱き合ってクルクルと回りながら喜んでいた。
「良かったです…ところで、姿は確認しなくていいのですか?」
「あ!します!!」
が、看護師さんに突っ込まれたのでアメリちゃんと回るのをやめて姿見を見ることにした。
………
……
…
「……へぇ〜………」
姿見に映っていた私の姿は…やはり人間のものではなく…何かの魔物の姿だった。
詳しく言うと…目で見えていたとおり、腕や膝より下、それに胸元や腰周りにはクリーム色のもこもことした毛皮が覆っている。
それと、違和感無かったけど足は蹄みたいな形になっており、腰からはもこっとした尻尾みたいなのが生えていて、自分の意思で動かす事が出来る。
さらに、頭にはグルリと捻じ曲がった茶色い角があり、髪の毛も毛皮と同じくクリーム色になっていた。
顔を含め身体つきは一部を除き肌の艶が良くなった以外には人間だった頃の私との変化は無い。
その一部…胸は確実にワンランクは上がっている。Cカップは絶対ある。やったね♪
まあそれは一旦置いといて…特徴的な角や尻尾、さらに形状が変わっていた耳から推測すると…私は羊?の魔物になっていた。
でも…なんて名前かさっぱりわからない…
「ねえアメリちゃん…私何て言う魔物になったの?」
「『ワーシープ』だよ!!」
「あ、なるほど〜…そのままか〜…」
私はどうやらワーシープという羊の特徴をもつ魔物になったらしい。
もしかして私がさっきからずっと眠いのは羊がゆったりしてるイメージがあるから、それが反映されているからかな?
あ、そうだ…
「なんで私をワーシープにしたの?」
私がどの魔物になるかはアメリちゃんにおまかせした。
だから、どうしてアメリちゃんは私をワーシープに変えたのかが気になった。
「それはね…」
私の質問を聞いたアメリちゃんは、私に可愛い笑顔を向けて…
「サマリお姉ちゃんが言ったじょうけんにあった魔物の中で、サマリお姉ちゃんみたいにやさしくて、あたたかくて、たまにちょっぴりこわくて、それでとってもたよりになって、サマリお姉ちゃんにピッタリだと思ったからだよ!!」
理由を、嬉しそうに話してくれた。
アメリちゃんは私の事をよく見ていてくれているんだ…ちょっとうれしいな…
「ふふ…ありがと!」
私は魔物になった。
魔物になる前はあんなに悩んでいたけど…あんなに恐怖に襲われていたけど…なってしまえば「なんだ、こんなものか」って感じだ。
だって、私は魔物になっても私だ。サマリは魔物になってもサマリなのだ。
性格だってたぶん大きく変化はしていない。もしかしたら魔物の本性ってものがまだ出ていないだけかもしれないけど、今のところ出ていないのだから問題無い。
これからは魔物、ワーシープとしての人(?)生が始まる。けれど、それは人間としての人生の続きでしかないのだ…
そして…これからも『サマリ』が旅を続ける……ただそれだけのことだ………
…………………………
………………ぐぅ…
ぐぅ……………
ぐぅ…………
「…またねちゃった…」
「好色な部分が出ない程度で簡単に眠らないように毛を刈りましょうか?」
「うん、おねがい…アメリも手伝う…」
====================
「皆おまたせー!!」
「おーサマリ!歩けるようになったのか!!」
「うん!」
「そうか!!それは良かった!!」
私に襲いかかる眠気が毛を少し刈り取ったからかかなり減ったので、私達は別の部屋で待機していた皆に歩いて会いに行った。
歩いて部屋に入ってきた私を見た皆はまず私の足が治ったことを喜んでくれた。
皆心配してくれてたみたいで、部屋に入った瞬間は暗かった表情は今は笑顔になっている。
「心配掛けてごめんね!」
「別にいいよ!ところで、その姿は……ワーシープか?図鑑とかで見たものより毛が少ない気がするけど…」
「うん、私ワーシープになったよ。すぐ寝ちゃうといろいろ大変だからある程度毛を短くしたのよ」
どうやらワーシープの毛皮には眠りの魔力が込められているらしく、その毛に全身あらゆる場所を覆われている私はすぐに眠くなってしまうらしい。
なので先程アメリちゃんと看護師さんに毛をある程度刈り取ってもらったのだ。
今私は腕や足、腰に生えていた毛は最初の半分程の量になっている。それに、髪もショートヘアーにしてもらった。
胸元の毛はそのまま。だってそっちのほうが大きく見えるからね……自分で言ってて虚しくなるけど。
で、これ以上刈り取ると大変な事になるらしい。
本来ワーシープという魔物は凶暴かつ好色らしく、この眠りの魔力が込められている毛のおかげで大人しいようなものらしい。
だから、これ以上刈り取ると私は溢れ出る性欲のままに男を犯しにかかるとのこと。
やっぱ魔物化の影響で多少は性格が変わったのか、自らの性欲に身を任せて男性とヤってもいいやと思ってる部分もあるが…この場合犯される対象に問題がある。
いくらなんでも知らない男性を襲ったらショックだ。そこは魔物になっても譲れない。
だからといって知っている男…ユウロとツバキに襲いかかるのは非常にマズい。
ユウロは詳しく話してくれないし、ツバキはプロメが言ってただけでまだ本人から詳しく聞いてないからよく知らないけど、二人とも魔物だろうが人間だろうが性行為をするのはおろか彼女をつくる事もしたくないらしい。
そんな事を言っているだけならともかく、確実に心の奥深くに潜む問題だろう。そう望んでいる仲間の意思を無視して襲いかかったりは絶対にしたくない。
なので、これ以上は短くしたりしない。なるべくこの長さを保ちながら旅を続けようと思う。
「ところで…アメリちゃんどうしたの?」
「ええと…味気無くて不味い栄養ドリンクを一気に大量に飲んだ感じ…」
「うぅ……お口がおかしくなっちゃう……」
「「「……」」」
今のアメリちゃんの表情は…今まで見た事が無いほど不機嫌な顔をしていた。
私の毛を刈り取った後、例の精補給剤とかいうものを私を魔物化する前よりも沢山飲んでいた。
どうやら私を魔物にした際に魔力が今までにないほど空に近い状態に陥ったらしく、顔を真っ赤にして辛そうだった。それと、お腹が壮大なオーケストラを奏でていた。
だから看護師さんに精補給剤をもらい、一気に流し込んだのだ。
私も少し飲んでみたが、正直美味しくない。ほぼ無味だった。
そんなものを大量に飲んだアメリちゃんは……超辛いだろう。
結果、アメリちゃんは苦虫を噛んだほうがまだマシな表情になった。
「うぅ…アメリ早くおいしいものたべないとお口がダメになっちゃうかも…」
「もうお昼だし、アメリちゃんもこう言ってるし、今から作ると時間掛かるからどこか食べに行こうか」
「そうだな。安心したら俺も腹減ってきたし…」
「あ、だったらいいお店っていうか食べ放題のレストラン見つけたよ。そこに行こうよ!あ、プロメはどうする?」
「今ネオムは昼飯食って寝てるし、アタシも一緒に行くぞ!」
ということで、私達はツバキの案内でラノナスにあるレストランに向かった。
…………
………
……
…
「ごっちそーさまー!!おいしかったー♪」
「アメリちゃんもういいの?」
「うん!!いっぱいたべたしもうおなかいっぱい!!」
現在13時。私達はラノナスの食べ放題のレストランでお昼ご飯を食べている。
こういう自分で好きなものを好きな量とって食べるお店に行くと皆の好みがわかって面白い。
アメリちゃんは子供らしくポテトフライやハンバーグなどを中心に、あとはデザート系をいっぱい食べていた。
プロメはワーウルフなだけあって唐揚げ、ステーキ、ソーセージとお肉中心だ。
ツバキはジパング人だからかお肉は少量でサラダ中心、あとめずらしく白米があってそれを嬉しそうに食べていた。
ユウロはプロメほどじゃないけどお肉中心のがっつり系で、ツバキと一緒に白米を食べていた。
私は何でもバランスよく食べていたけど、ワーシープになったからかあまりお肉を食べる気が起きず、前よりもおいしく感じる野菜を中心に食べていた。
「そういえばプロメ…」
「ん?どうした?」
「ちょっと聞きたい事があるんだけど…」
お腹も膨れてきたし、落ち着いたので私は気になっていた事を聞いてみる事にした。
「ネオムさんも入院してるっぽいけどそんなに大変だったの?」
「ああ、まあサマリ程じゃないけど全身に痣とか出来てたからな…でも明日退院する予定だ」
「そうなの!?それはよかった…」
昨日見た時は顔の腫れは無くなっていたけど、確かにネオムさんの顔はあの時酷い事になっていた。
でも治ったのならよかった…一安心だ。
「そういえばディナマってどうなったの?まさかあのまま放置?」
「ああ、あいつらはサマリを病院まで運んだあとラノナスの独房に突っ込むために行ってみたらそこら辺の魔物達とほとんど全員よろしくやってたよ」
「あ、そうなの…」
あんな男達でも好きになる魔物もいるんだ…いや、ただ単に襲ってるだけか?
まあどちらにせよ全員魔物の魅力に魅入られて結果改心するだろう。
「ふぅ…食った食った…」
「ごちそうさまです。久々の白米はやっぱおいしいや」
「あ、じゃあ白米どこかで売ってないか探さない?私まだこの町あまりみてないし…」
「さんせー!!アメリもサマリお姉ちゃんと町みるー!!」
「アタシも少し町を見てみるか…いいものがあったらネオムに買っていこうかな…」
お腹いっぱい食べた私達は、お会計を済ませて町を見て周る事にした。
自分の足で、地面をしっかり踏みしめながら……
=======[???視点]=======
「ぐあっ!!テメェ…何しやがる…あがっ!!」
「まだ意識があるなんて凄いね…さすがリーダーを名乗っているだけはあるね…」
ボクの持つ聖剣で脇腹を何度も死なない程度に刺してあげてるのに気絶しないなんて…
流石盗賊団…名前は何て言ったかなぁ…ディ…えっと…まあいいや…ある盗賊団のリーダー、そのタフさには感心しちゃうな。
「なんでこんな事を…テメェは何者だ!?」
「ボク?ボクは勇者だよ?キミみたいに魔物に魅入られちゃった人を処分してるだけだよ?」
「なっ!?勇者だと!?テメェみたいな眼鏡掛けたインテリ系のガキが!?…ぐあああっ!!」
「そうだよ…こんなガキでも勇者だよ?で、キミはそんなガキに殺されかけてるだけだよ」
ボクをなめてるようだけど…この男程度じゃボクに勝てるわけ無いよ…
潜入してた部下の話からするとこいつら子供ばっかの奴等に全員やられたらしいじゃん。情けないね。そんな奴等にボクが負けるわけ無いからね。
だって、確かにボクはまだ14歳、ガキではあるけど、ボクより強い勇者とか見た事無いからね。
ていうかそもそも眼鏡でインテリだと判断するなんて愚かだね。人は見た目じゃ判断できないって知らないのかな?
「ぐっ…で、その勇者様はどうして俺達を殲滅してるんだ?わざわざ部下を潜入させたりして…がはっ!!」
「いや、この辺りを浄化するために資金を得ようとしてね…キミ達がちょうど大金を手に入れようとしていたから貰ってあげようと思ってね…まあキミ達は失敗しただけじゃなくて魔物に魅入られちゃったからもう用済みだけどね…ホント、キミ達が失敗したからボク達もここの浄化を諦めなきゃ駄目じゃないか…どうしてくれるの?」
今のままではラノナスを浄化しに行こうにもあの町に住むエキドナのせいで上手くいきそうにもないからこいつらが手に入れたお金でいろいろ準備してからラノナスを浄化しに行こうとしたのに…折角のボクの計画が台無しだよ…ウザいおえらいさんに怒られちゃうじゃないか。
だからこいつ等を必要以上にいたぶっていじめている。
案外これがスッキリするんだよね。やり過ぎると部下がひくから気をつけないといけないけど。
「それはわかった……だが…なぜ勇者が魔物を殺さない…」
まあこの男の疑問はもっともだね。
ボクはこの場にいる魔物を全員魔法で眠らせただけで殺してなんかいないからね…
「だって…」
そんなの決まってるじゃないか…
「この聖剣で魔物なんて斬ったら魔物の血でボクも聖剣も汚れちゃうじゃんか」
ボクは魔物の血なんて絶対浴びたくないからね。魔物の体液が服や眼鏡、聖剣に付着したら嫌じゃん。
「俺達はいいのかよ…」
「べっつにー。世間的には魔物扱いだけどインキュバスって言っても基本は人間じゃん。それに…」
「それに…ぐっ……なんだよ…」
「魔物が夫と認識した奴を殺したほうが、魔物にとってより大きな絶望を与えられるじゃん」
「なっ!?テメェ……」
「何?睨んできてるけど何かするの?てかそろそろ気絶してよ」
「があっ!!うっ……」
いつまでたっても気絶してくれないから余計な事まで話しちゃったじゃん。
ホント、魔物に魅入られた男って総じてムカつく奴ばかりだ。
いい加減気絶してほしいから、死んじゃうかもしれないけどお腹に聖剣を刺した。
そしたらやっと気絶してくれた。あとはじっくり死んでいってね。
あ、死ぬ直前に魔物を起こさなきゃ。まだここに居ないといけないのか…嫌だな…飽きたな…
「エルビ様、ちょっとお話が」
「ん?なに?」
と、ボクの部下の…何て名前だったかな?
まあボクの部下のちょっとカッコいい顔の男がボクに話しかけてきた。
「上からの命です。今すぐジパングに向かえと」
「え〜、今からが楽しいのに…こいつらが誤って生き延びたらどうするの?」
「では今すぐ止めを刺されては…と言ってもしないですよね?」
「あ、わかってるじゃん。ボクは一撃必殺ってのが嫌いだからね…特に魔物に魅入られた男はじわじわと苦しませながら殺したいからね…」
「はぁ…ではどうなさるので?」
「ま、仕方ないからジパングに向かうよ。こんな奴等どうでもいいし、いい加減飽きたしね」
「わかりました。では今すぐ出発の準備をします!」
上の命令を無視するとあとが面倒だし、仕方ないから行く事にするか…
さて、ジパングか…魔物との共存が上手くいっている島国…
魔物との共存…イライラするなぁ…
魔物と一緒に居る男なんて……皆死んじゃえばいいんだ……いや、ボクが殺してあげるよ!!
「うん…もう決めた!」
現在10時。
昨日、私は魔物になる決心をした。
一応皆に言ってから魔物になろうと思い、アメリちゃんに言った後にプロメとツバキにも話しに行った。
だけど町に買い出しに行っていたツバキをなかなか見つけられず…その為話すのが遅くなってしまい、アメリちゃんが眠くなってしまったので次の日の朝にする事になった。
そして私は人間としての最後の食事を終え、アメリちゃんと一緒に少し広い部屋に連れて来られ、大きなベッドの上にアメリちゃんと一緒に寝かせられた。
アメリちゃんと一緒に寝ているだけならいつもと変わらないが、今からは後戻りができないもの…私を魔物化するために一緒に寝かせられたのだ。
どうやら魔物化する際余計な力を抜いていたほうが良いらしく、こうして一緒に寝ている形になったんだけど…
…たしか人間を魔物化する際、サキュバスってエッチな事をするのが多いって前に聞いたな…
…まさかアメリちゃんとエッチな事しろって言わないよね?アメリちゃんまだ8歳だよ?
「ねえサマリお姉ちゃん…」
「ひゃい!?」
「……なに今のこえ?」
「え!?あ、ごめん、考え事をしているときに急に話しかけられたからビックリしちゃって…」
「ふーん…」
アメリちゃんが何か用があるらしく私に話しかけてきた。
アメリちゃんとエッチな事しろって言われるかもって考えてたときにいきなり話しかけられたからビックリして変な声がでてしまった。
「まあいいや…で、サマリお姉ちゃん…なんでアメリに魔物にしてもらうってきめたの?」
アメリちゃんがそう真剣に聞いてきたので…
「えっとね…魔物になること自体を決めたのは…やっぱり私、皆と一緒に自分の足で旅をしたいから…それが出来る可能性に掛けたんだよ。アメリちゃんに頼んだのは…やっぱりプロメよりも長く一緒に居るからかな…」
私が魔物化を決心した理由と、アメリちゃんに頼んだ理由を言ったら…
「…へへっ///」
アメリちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
魔物になるかならないかの決心がつかなかった私は、これまでの旅で出会った人物…特に一緒に旅をしている皆の顔を思い浮かべる事にした。
普段は頼りなく、どこか不思議なところがあるけれど、いざというときは頼りになるユウロ…
短気で突っ走る癖があるけど、自分の旦那さんの事を愛しており、一番年上だから相談もしやすいプロメ…
さわやかなジパング人で、たまに寂しい顔をする、大切な人の事を気にするツバキ…
そして、いつも可愛い笑顔で、無邪気で、明るくて、優しくて…そして妹の様なアメリちゃん…
皆の顔を浮かべたら…皆の笑顔を浮かべたら…私はやっぱり…旅を続けたいと思った。
様々な土地を、様々な人や魔物を、自分の足で行って、自分の目で見てみたいと思った。
自分の足で、様々な人と一緒に、世界を見て周りたいと思った。
それは…幼い頃からの自分の夢だから…人間をやめてでも…旅を続けたいと思った。
だから…私は魔物になる事を…決心した。
自分の足で…皆と笑顔で旅が出来る可能性に…掛ける事にしたのだ。
この決断に恐怖や後悔が無いかというと、正直ありまくりだ。
魔物になったら、反魔物領にある家には二度と帰れないだろう。両親も魔物になった私と会ってくれるかわからない。
それでも、私は自分の夢の為に、皆と一緒に旅をするために前に進まなければならない。
「準備が整いました。こちらが精補給剤です。アメリさんがサマリさんの魔物化をする際、少々子供にはきついかもしれませんが、魔力が足りなそうでしたらこちらを使ってください」
「ありがとーユニコーンのお姉ちゃん。アメリ我慢して飲むよ」
「それと、サマリさんが魔物になった際、急激に精が欲しくなる場合もあります。もしお連れの人やそこらへんの人を襲いたくない場合もこちらをお飲み下さい」
「わかりました。二人とも何か過去にあるらしくってそのことは釘を刺されているので…飲む事にします」
アメリちゃんが精補給剤なるものをものすっごくキツそうに飲み…これで全ての準備が整った。
これから私は、アメリちゃんの手で魔物に変えられるのだ。
「うぅ…おいしくない…でも、元気いっぱい!」
「ははは…大丈夫アメリちゃん?」
「うん。サマリお姉ちゃんこそこわくない?人間さんをやめるのがこわいって言ってたし…」
「え…」
正直怖い。
今すぐここから逃げ出したい。
でも…
「大丈夫。人間だろうが魔物だろうが、私は私、サマリはサマリだから!!」
逃げたくないから…自分にも言い聞かせるように、アメリちゃんにこう答えた。
「わかった。じゃあサマリお姉ちゃん、いちばんだいじなこと聞くけど…何になりたい?」
何になりたいか…おそらくどの魔物になりたいかということだろう。
リリムは魔王の眷族だったらどんな魔物にも変える事ができるってアメリちゃんから聞いていたけど、どの魔物が眷族かそうじゃないかなんて知らないし、そもそも私は旅の途中で出会った魔物以外は詳しい姿を知らないし、名前や特徴もあとは『ドラゴン』や『ヴァンパイア』など有名なものしか知らないのだ。
知らない事だらけで自分で決められそうもないから…
「何でもいい…アメリちゃんが想う、私に合う魔物でいいよ…」
こう、アメリちゃんに頼んだ。
「わかった。でもホントになんでもいいの?」
「うん…あ、ちょっと待って…」
けど、重要な事を忘れていた。
「私は自分の2本の足で地面を踏みしめながら旅がしたいから足が無い魔物は避けてほしいのと、料理は続けたいからなるべく人間と違わない手がある魔物がいいかな…」
「うーん…どっちもアメリが人化のじゅつをおしえれば大丈夫だとおもうけど…」
「それも教えてもらいたいけど、一回一回使うのも嫌だから……わかってほしいな…」
「うーん……わかった」
そう、これだけは譲れない。
ラミアなど足が無い魔物みたいに這って旅をするのも悪くは無いが、私は自分の2本足で旅がしたい。
特にこれと言った理由は無いけど…しいて言うなら今までと同じように歩きたいから…2本足で旅がしたいのだ。
料理も、今の感覚で沁み付いているから手が大きく変わると感覚が変わってしまうかもしれない。そうするとしばらくの間困った事になるのでそれも避けたいのだ。
アメリちゃんが言うとおりどちらも人化の術とやらを使えば問題はないだろうけど、それは自分の身体を偽っているようなものだ。
自分の身体を偽りながら旅や料理はできるだけしたくないのだ。
流石に反魔物領に行く場合は必要になるだろうけど、それ以外は使いたくないのだ。
「…きめた!あの魔物にする!さっそくはじめるよ!!」
アメリちゃんが私を何の魔物にするか決め…私の魔物化が始まった。
「じゃあサマリお姉ちゃん…ふくぬいで」
「え!?」
そして、いきなり服を脱ぐように言われた。
まさか本当にアメリちゃんとエッチな事をしろと言うんじゃあ…
「な、なんで服脱ぐの?」
「魔物になったときにふくきたままだとたいへんなことになるかもしれないから…それに裸のほうがアメリの魔力サマリお姉ちゃんにながしこみやすいし…」
「へ!?あ、そ、そうなのね!!」
よかった…違った…
いくらなんでも8歳児とエッチしろって言われたらどうしようかと思った。
「アメリちゃんにエッチな事されると思ったよ…」
「え?そっちがいいならアメリがんばってやるよ?サマリお姉ちゃんとエッチなことしておまんこからちょくせつ魔力ながすほうがやりやすいし、アメリもたぶんきもちいいし…」
「いやいやいや!!それは無しで!!あと子供がお、おまピーとかそんなはしたない言葉を使っちゃいけません!!」
「えー、気にすることじゃないけどなぁ……とにかく、サマリお姉ちゃんのからだ全体にアメリの魔力を一気にいっぱいながしこむ方法でいいよね?」
「うん!!それでお願い!!」
案外アメリちゃんがエッチする事に乗り気でビックリした。
子供でもさすがサキュバス…って言うとアメリちゃん怒るからさすがリリム。
とまあちょっとバカな事を言い合って気が楽になった事だし…
「じゃあ、いくよサマリお姉ちゃん…」
「うん…お願いねアメリちゃん…」
真剣になって、始める事にした。
「サマリお姉ちゃんの…」
アメリちゃんが私のお腹…というか子宮の近くに両手を置いて…
「足がなおりますように!!」
そういいながら、私に何か奇妙な感覚がするもの…魔力を流し込み始めた。
ドクンッ!!
「うぐっ!!はぁっ!はあっ!はあっ!!」
一気に魔力を流し込まれたからか、心臓の鼓動が早く大きく…自然と呼吸も荒くなる…
熱に犯され、身体が壊れてしまうと脳が危険信号を送り続けていた…
「はあっ!!はあっ!!…はぁっ…はぁっ……ぁっ…!!」
けれど…数刻もしないうちに流し込まれた魔力が私の身体に馴染み始めたのか、急に身体の危険は感じなくなってきた…
そう、危険信号は止まったけど……
「ひゃっ!!な、なにこれぇ…あたまが…なんか蕩けてるぅ…」
「きもちいいかもしれないけどあまりうごかないで!アメリまだ小さいから集中しないとうまくいかないから!!」
「そ、そんなこと言ってもぉ…身体が勝手に痙攣して……ひゃああん!!」
それと同時に身体全体に快感の波が襲ってきた。
いままで感じたこともない快感に飲み込まれたせいか、身体が勝手に弓なりに仰け反ってビクッっと痙攣してしまう。
それと、下腹部がもの凄く熱い…股間が疼いて止まらない。
「ああっ!ひゅん!んんんんー!!」
一際大きな熱と波が私を襲い、股から尿…とは違う何かを吹き出しながら腰がガクガクと震え始めた。
「はぁ……これで…はぁ…たぶん……大丈夫だよ……はぁ……サマリお姉ちゃん……」
アメリちゃんが言っている言葉が、興奮しているせいで耳に入ってこない…
全身に何かが覆っている……いや、何かが染み込んでいる気がする…
そして…腕や足や腰や頭…体中から何かが飛び出してくる感覚が……!!
「ひゃああはああぁあんっ♪」
ぐぐぐ……シュッ!
ふぁふん…!
巨大な快感と共に、私の腕や足、身体から飛び出してきたもの……
それは……
クリーム色の……もこもこした……………?
あれ?……なんか………眠く…………
…………………………
…ぐう………………
ぐぅ………………
=======[アメリ視点]=======
「はぁ……はぁ………ふぅ〜〜〜……」
つかれた……それにおなかすいた……
でも…サマリお姉ちゃんをぶじ魔物に…
…………
…はっ!
いけないいけない……アメリまでねちゃう……
「終わりましたか?……終わったようですね…」
「あ、ユニコーンのお姉ちゃん」
アメリたちのようすを見にきたのか、さっきまでとびらの外にいたユニコーンのお姉ちゃんが部屋に入ってきた。
「サマリさん気持ちよさそうに寝ていますね」
「うん……しかたないよ……」
「なぜこの魔物に?」
「それはね……サマリお姉ちゃんの足がなおってたら言う……」
「そうですか……サマリさん…足は動くようになったのでしょうか…」
「わかんない…サマリお姉ちゃんすぐねちゃったから……」
サマリお姉ちゃんが歩けるようになったかたしかめなくちゃいけないから、きもちよさそうにねているサマリお姉ちゃんをおこさなきゃね……
耳元に近づいて……大きく息を吸って……
=======[サマリ視点]=======
ぐぅ…………………
ぐぅ…………………
g「おきて!!サマリお姉ちゃん!!」はっ!!
「あ、おはようアメリちゃん…」
「もう…しょうがないかもしれないけど、ねるなら歩けるかどうかたしかめてからにしてよね!!」
「ごめん…」
身体から何が飛び出したのかを確認してたら急に眠くなって、そのまま寝てしまった。
そしたらアメリちゃんが私の耳元で大きな声を出して起こしてくれた。
アメリちゃんはちょっと怒ってる様子だったから謝ったけど…そもそもなんで私眠くなったんだろ?
うーん…魔物化した疲れかな?
魔物化したといえば…
「ねえアメリちゃん、私何の魔物にしたの?」
「それは…」
自分がどんな魔物になったのかわからないのでアメリちゃんに聞いてみたのだが…
「こちらの鏡で、ご自分の目でお確かめになってはいかがですか?」
「え?あ、はい…」
看護師さんにそう言われて聞きそびれてしまった。
こちらの鏡って看護師さんの隣に置いてある姿見の事だろう。
一応腕からもこもこしたものが生えているのはわかるけど…全身像は確かに気になる。
だから私は無意識のうちにベッドから起き上がり、姿見の前まで足を運んで……
あ…
足が…
足が……動く……!!
「足が……治ってる!!」
「ホントにサマリお姉ちゃん!?」
「うん!!ほら!!」
今度は意識しながら屈伸したりジャンプしたりしてみた。
どんな動きをしても…自分の意思で…自由に足が動く!!
自由に足が動かせる…足が治った…だから、私は旅を続けることが出来る!!
「やったー!!これでサマリお姉ちゃんとこれからも旅ができるね!!」
「うん!!これからもよろしくねアメリちゃん!!」
うれしくて、アメリちゃんと二人その場で抱き合ってクルクルと回りながら喜んでいた。
「良かったです…ところで、姿は確認しなくていいのですか?」
「あ!します!!」
が、看護師さんに突っ込まれたのでアメリちゃんと回るのをやめて姿見を見ることにした。
………
……
…
「……へぇ〜………」
姿見に映っていた私の姿は…やはり人間のものではなく…何かの魔物の姿だった。
詳しく言うと…目で見えていたとおり、腕や膝より下、それに胸元や腰周りにはクリーム色のもこもことした毛皮が覆っている。
それと、違和感無かったけど足は蹄みたいな形になっており、腰からはもこっとした尻尾みたいなのが生えていて、自分の意思で動かす事が出来る。
さらに、頭にはグルリと捻じ曲がった茶色い角があり、髪の毛も毛皮と同じくクリーム色になっていた。
顔を含め身体つきは一部を除き肌の艶が良くなった以外には人間だった頃の私との変化は無い。
その一部…胸は確実にワンランクは上がっている。Cカップは絶対ある。やったね♪
まあそれは一旦置いといて…特徴的な角や尻尾、さらに形状が変わっていた耳から推測すると…私は羊?の魔物になっていた。
でも…なんて名前かさっぱりわからない…
「ねえアメリちゃん…私何て言う魔物になったの?」
「『ワーシープ』だよ!!」
「あ、なるほど〜…そのままか〜…」
私はどうやらワーシープという羊の特徴をもつ魔物になったらしい。
もしかして私がさっきからずっと眠いのは羊がゆったりしてるイメージがあるから、それが反映されているからかな?
あ、そうだ…
「なんで私をワーシープにしたの?」
私がどの魔物になるかはアメリちゃんにおまかせした。
だから、どうしてアメリちゃんは私をワーシープに変えたのかが気になった。
「それはね…」
私の質問を聞いたアメリちゃんは、私に可愛い笑顔を向けて…
「サマリお姉ちゃんが言ったじょうけんにあった魔物の中で、サマリお姉ちゃんみたいにやさしくて、あたたかくて、たまにちょっぴりこわくて、それでとってもたよりになって、サマリお姉ちゃんにピッタリだと思ったからだよ!!」
理由を、嬉しそうに話してくれた。
アメリちゃんは私の事をよく見ていてくれているんだ…ちょっとうれしいな…
「ふふ…ありがと!」
私は魔物になった。
魔物になる前はあんなに悩んでいたけど…あんなに恐怖に襲われていたけど…なってしまえば「なんだ、こんなものか」って感じだ。
だって、私は魔物になっても私だ。サマリは魔物になってもサマリなのだ。
性格だってたぶん大きく変化はしていない。もしかしたら魔物の本性ってものがまだ出ていないだけかもしれないけど、今のところ出ていないのだから問題無い。
これからは魔物、ワーシープとしての人(?)生が始まる。けれど、それは人間としての人生の続きでしかないのだ…
そして…これからも『サマリ』が旅を続ける……ただそれだけのことだ………
…………………………
………………ぐぅ…
ぐぅ……………
ぐぅ…………
「…またねちゃった…」
「好色な部分が出ない程度で簡単に眠らないように毛を刈りましょうか?」
「うん、おねがい…アメリも手伝う…」
====================
「皆おまたせー!!」
「おーサマリ!歩けるようになったのか!!」
「うん!」
「そうか!!それは良かった!!」
私に襲いかかる眠気が毛を少し刈り取ったからかかなり減ったので、私達は別の部屋で待機していた皆に歩いて会いに行った。
歩いて部屋に入ってきた私を見た皆はまず私の足が治ったことを喜んでくれた。
皆心配してくれてたみたいで、部屋に入った瞬間は暗かった表情は今は笑顔になっている。
「心配掛けてごめんね!」
「別にいいよ!ところで、その姿は……ワーシープか?図鑑とかで見たものより毛が少ない気がするけど…」
「うん、私ワーシープになったよ。すぐ寝ちゃうといろいろ大変だからある程度毛を短くしたのよ」
どうやらワーシープの毛皮には眠りの魔力が込められているらしく、その毛に全身あらゆる場所を覆われている私はすぐに眠くなってしまうらしい。
なので先程アメリちゃんと看護師さんに毛をある程度刈り取ってもらったのだ。
今私は腕や足、腰に生えていた毛は最初の半分程の量になっている。それに、髪もショートヘアーにしてもらった。
胸元の毛はそのまま。だってそっちのほうが大きく見えるからね……自分で言ってて虚しくなるけど。
で、これ以上刈り取ると大変な事になるらしい。
本来ワーシープという魔物は凶暴かつ好色らしく、この眠りの魔力が込められている毛のおかげで大人しいようなものらしい。
だから、これ以上刈り取ると私は溢れ出る性欲のままに男を犯しにかかるとのこと。
やっぱ魔物化の影響で多少は性格が変わったのか、自らの性欲に身を任せて男性とヤってもいいやと思ってる部分もあるが…この場合犯される対象に問題がある。
いくらなんでも知らない男性を襲ったらショックだ。そこは魔物になっても譲れない。
だからといって知っている男…ユウロとツバキに襲いかかるのは非常にマズい。
ユウロは詳しく話してくれないし、ツバキはプロメが言ってただけでまだ本人から詳しく聞いてないからよく知らないけど、二人とも魔物だろうが人間だろうが性行為をするのはおろか彼女をつくる事もしたくないらしい。
そんな事を言っているだけならともかく、確実に心の奥深くに潜む問題だろう。そう望んでいる仲間の意思を無視して襲いかかったりは絶対にしたくない。
なので、これ以上は短くしたりしない。なるべくこの長さを保ちながら旅を続けようと思う。
「ところで…アメリちゃんどうしたの?」
「ええと…味気無くて不味い栄養ドリンクを一気に大量に飲んだ感じ…」
「うぅ……お口がおかしくなっちゃう……」
「「「……」」」
今のアメリちゃんの表情は…今まで見た事が無いほど不機嫌な顔をしていた。
私の毛を刈り取った後、例の精補給剤とかいうものを私を魔物化する前よりも沢山飲んでいた。
どうやら私を魔物にした際に魔力が今までにないほど空に近い状態に陥ったらしく、顔を真っ赤にして辛そうだった。それと、お腹が壮大なオーケストラを奏でていた。
だから看護師さんに精補給剤をもらい、一気に流し込んだのだ。
私も少し飲んでみたが、正直美味しくない。ほぼ無味だった。
そんなものを大量に飲んだアメリちゃんは……超辛いだろう。
結果、アメリちゃんは苦虫を噛んだほうがまだマシな表情になった。
「うぅ…アメリ早くおいしいものたべないとお口がダメになっちゃうかも…」
「もうお昼だし、アメリちゃんもこう言ってるし、今から作ると時間掛かるからどこか食べに行こうか」
「そうだな。安心したら俺も腹減ってきたし…」
「あ、だったらいいお店っていうか食べ放題のレストラン見つけたよ。そこに行こうよ!あ、プロメはどうする?」
「今ネオムは昼飯食って寝てるし、アタシも一緒に行くぞ!」
ということで、私達はツバキの案内でラノナスにあるレストランに向かった。
…………
………
……
…
「ごっちそーさまー!!おいしかったー♪」
「アメリちゃんもういいの?」
「うん!!いっぱいたべたしもうおなかいっぱい!!」
現在13時。私達はラノナスの食べ放題のレストランでお昼ご飯を食べている。
こういう自分で好きなものを好きな量とって食べるお店に行くと皆の好みがわかって面白い。
アメリちゃんは子供らしくポテトフライやハンバーグなどを中心に、あとはデザート系をいっぱい食べていた。
プロメはワーウルフなだけあって唐揚げ、ステーキ、ソーセージとお肉中心だ。
ツバキはジパング人だからかお肉は少量でサラダ中心、あとめずらしく白米があってそれを嬉しそうに食べていた。
ユウロはプロメほどじゃないけどお肉中心のがっつり系で、ツバキと一緒に白米を食べていた。
私は何でもバランスよく食べていたけど、ワーシープになったからかあまりお肉を食べる気が起きず、前よりもおいしく感じる野菜を中心に食べていた。
「そういえばプロメ…」
「ん?どうした?」
「ちょっと聞きたい事があるんだけど…」
お腹も膨れてきたし、落ち着いたので私は気になっていた事を聞いてみる事にした。
「ネオムさんも入院してるっぽいけどそんなに大変だったの?」
「ああ、まあサマリ程じゃないけど全身に痣とか出来てたからな…でも明日退院する予定だ」
「そうなの!?それはよかった…」
昨日見た時は顔の腫れは無くなっていたけど、確かにネオムさんの顔はあの時酷い事になっていた。
でも治ったのならよかった…一安心だ。
「そういえばディナマってどうなったの?まさかあのまま放置?」
「ああ、あいつらはサマリを病院まで運んだあとラノナスの独房に突っ込むために行ってみたらそこら辺の魔物達とほとんど全員よろしくやってたよ」
「あ、そうなの…」
あんな男達でも好きになる魔物もいるんだ…いや、ただ単に襲ってるだけか?
まあどちらにせよ全員魔物の魅力に魅入られて結果改心するだろう。
「ふぅ…食った食った…」
「ごちそうさまです。久々の白米はやっぱおいしいや」
「あ、じゃあ白米どこかで売ってないか探さない?私まだこの町あまりみてないし…」
「さんせー!!アメリもサマリお姉ちゃんと町みるー!!」
「アタシも少し町を見てみるか…いいものがあったらネオムに買っていこうかな…」
お腹いっぱい食べた私達は、お会計を済ませて町を見て周る事にした。
自分の足で、地面をしっかり踏みしめながら……
=======[???視点]=======
「ぐあっ!!テメェ…何しやがる…あがっ!!」
「まだ意識があるなんて凄いね…さすがリーダーを名乗っているだけはあるね…」
ボクの持つ聖剣で脇腹を何度も死なない程度に刺してあげてるのに気絶しないなんて…
流石盗賊団…名前は何て言ったかなぁ…ディ…えっと…まあいいや…ある盗賊団のリーダー、そのタフさには感心しちゃうな。
「なんでこんな事を…テメェは何者だ!?」
「ボク?ボクは勇者だよ?キミみたいに魔物に魅入られちゃった人を処分してるだけだよ?」
「なっ!?勇者だと!?テメェみたいな眼鏡掛けたインテリ系のガキが!?…ぐあああっ!!」
「そうだよ…こんなガキでも勇者だよ?で、キミはそんなガキに殺されかけてるだけだよ」
ボクをなめてるようだけど…この男程度じゃボクに勝てるわけ無いよ…
潜入してた部下の話からするとこいつら子供ばっかの奴等に全員やられたらしいじゃん。情けないね。そんな奴等にボクが負けるわけ無いからね。
だって、確かにボクはまだ14歳、ガキではあるけど、ボクより強い勇者とか見た事無いからね。
ていうかそもそも眼鏡でインテリだと判断するなんて愚かだね。人は見た目じゃ判断できないって知らないのかな?
「ぐっ…で、その勇者様はどうして俺達を殲滅してるんだ?わざわざ部下を潜入させたりして…がはっ!!」
「いや、この辺りを浄化するために資金を得ようとしてね…キミ達がちょうど大金を手に入れようとしていたから貰ってあげようと思ってね…まあキミ達は失敗しただけじゃなくて魔物に魅入られちゃったからもう用済みだけどね…ホント、キミ達が失敗したからボク達もここの浄化を諦めなきゃ駄目じゃないか…どうしてくれるの?」
今のままではラノナスを浄化しに行こうにもあの町に住むエキドナのせいで上手くいきそうにもないからこいつらが手に入れたお金でいろいろ準備してからラノナスを浄化しに行こうとしたのに…折角のボクの計画が台無しだよ…ウザいおえらいさんに怒られちゃうじゃないか。
だからこいつ等を必要以上にいたぶっていじめている。
案外これがスッキリするんだよね。やり過ぎると部下がひくから気をつけないといけないけど。
「それはわかった……だが…なぜ勇者が魔物を殺さない…」
まあこの男の疑問はもっともだね。
ボクはこの場にいる魔物を全員魔法で眠らせただけで殺してなんかいないからね…
「だって…」
そんなの決まってるじゃないか…
「この聖剣で魔物なんて斬ったら魔物の血でボクも聖剣も汚れちゃうじゃんか」
ボクは魔物の血なんて絶対浴びたくないからね。魔物の体液が服や眼鏡、聖剣に付着したら嫌じゃん。
「俺達はいいのかよ…」
「べっつにー。世間的には魔物扱いだけどインキュバスって言っても基本は人間じゃん。それに…」
「それに…ぐっ……なんだよ…」
「魔物が夫と認識した奴を殺したほうが、魔物にとってより大きな絶望を与えられるじゃん」
「なっ!?テメェ……」
「何?睨んできてるけど何かするの?てかそろそろ気絶してよ」
「があっ!!うっ……」
いつまでたっても気絶してくれないから余計な事まで話しちゃったじゃん。
ホント、魔物に魅入られた男って総じてムカつく奴ばかりだ。
いい加減気絶してほしいから、死んじゃうかもしれないけどお腹に聖剣を刺した。
そしたらやっと気絶してくれた。あとはじっくり死んでいってね。
あ、死ぬ直前に魔物を起こさなきゃ。まだここに居ないといけないのか…嫌だな…飽きたな…
「エルビ様、ちょっとお話が」
「ん?なに?」
と、ボクの部下の…何て名前だったかな?
まあボクの部下のちょっとカッコいい顔の男がボクに話しかけてきた。
「上からの命です。今すぐジパングに向かえと」
「え〜、今からが楽しいのに…こいつらが誤って生き延びたらどうするの?」
「では今すぐ止めを刺されては…と言ってもしないですよね?」
「あ、わかってるじゃん。ボクは一撃必殺ってのが嫌いだからね…特に魔物に魅入られた男はじわじわと苦しませながら殺したいからね…」
「はぁ…ではどうなさるので?」
「ま、仕方ないからジパングに向かうよ。こんな奴等どうでもいいし、いい加減飽きたしね」
「わかりました。では今すぐ出発の準備をします!」
上の命令を無視するとあとが面倒だし、仕方ないから行く事にするか…
さて、ジパングか…魔物との共存が上手くいっている島国…
魔物との共存…イライラするなぁ…
魔物と一緒に居る男なんて……皆死んじゃえばいいんだ……いや、ボクが殺してあげるよ!!
12/04/07 12:36更新 / マイクロミー
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