旅7 旅の途中ですがコラボの時間です
=====[アレス(ゲスト)視点]=====
草原や火山、湖に砂浜…自然のものが揃っていて、美しい光景が広がる島…
この島に大きく聳え立つ古城…それこそ大富豪の豪邸程の古城…しかし内部は最先端をいく豪華な設備が施されている古城…
そんな古城…魔王城の一室で、俺は魔王…いや、友人のヴェンと一時の別れの挨拶をしていた…
「アレス…もう行ってしまうのか…」
「ああ…彼女達の為にもな…」
「そうか…また何かあったら呼ぶからな…」
「ああ、その時は必ず…」
今回は俺に会いたいからと『彼女達』が言ったからここに来た。
だからまた旅に出るのは少し悪いと思ってしまう事もある。
だが俺は彼女達の…魔物娘達の為にも、旅を続けなければならない。
まだ危険に晒されている彼女達の為にもだ。
「では、いつも通り元居た場所に送れば良いのだな?」
「ああ、頼む」
俺はヴェンが呪文を唱え始めると同時に後ろに振り返り…
「皆も元気で…」
『うん♪』
『おう!』
『どうかご無事で…』
『待ってるから…』
『絶対帰ってきてね…』
「ああ、俺はまた無事に…絶対帰ってくる!!」
後ろにいる『彼女達』…俺の妻達にも挨拶をした。
そして俺の身体が光り始めた…転送が始まったのだ。
このまま光が強くなって、俺の果てしない旅がまた始まるのだろう。
「……」
…まだこの転送の感覚が慣れないから覚悟を決めていると……
「お父さ〜ん」
「ん?」
部屋の扉の外、廊下から微かに声が聞こえた。
見てみると…青い女の子がこちらに結構なスピードで向かってきていた。
あの子は…妻の一人、スライムのスラミーにどこか似ている女の子は…
「あら〜ライム!おきたの〜?」
まだ寝ているからと、唯一この場に居なかった俺とスラミーの娘、ライムだった。
どうやらギリギリで起きたらしく、俺に挨拶しに来たのだろう。
「お父さ〜あっ!?うにゅ!?」
「うおっ!?」
ライムはすぐ目の前まで来たのだが、部屋の入口が滑りやすくなっていたのか滑ってしまい、何故かバウンドする形で転んでしまった。
しかも結構なスピードで来ていた為かそのまま俺のほうに飛んできた。
なんとか抱きかかえる形で飛んできたライムをキャッチ出来たので大惨事にはならなk……
「いかん!早く離れるんだ!!」
「…えっ……」
ここで俺の身体の光が一段と強くなり、大きく弾けた。
俺がここで最後に見たものは、もの凄く慌てた顔をして何かを言っているヴェンの姿と、何故か俺と同じように身体が光っている、俺に密着しているライムの姿だった。
………
……
…
「あれ〜、ライムは〜?」
「いかん!非常に不味い事態になった!!」
「不味いって…何がですか魔王様?」
「ライムがアレスに密着しすぎたせいで一緒に転送されてしまったが、あの転送は本来一人用だ。誤作動を起こしてどこかわからない場所に飛ばされている可能性が高い…」
「えっ!?」
「アレス!聞こえるかアレス!!…駄目だ、通信が繋がらない…」
「そんな…じゃあアレスとライムはどこへ!?」
「わからない…もしかしたらこの世界とは別の世界に転送されている可能性もある…それが魔力の無い世界とかだったら最悪だ…」
「そ、そんな……魔王様…なんとかならないのですか!?」
「…いや、なんとかなる、ならないじゃない…なんとかしよう!皆、手伝ってくれ!!」
『はいっ!!』
「ダーリン……ライム……」
「元気出して〜スラミーちゃん。きっと二人とも無事帰ってくるよ〜」
「うん…ありがと〜プリンちゃん」
=======[サマリ視点]=======
「「御世話になりました!」」
「じゃあ気をつけてね〜♪」
「うん!楽しかったよアクチお姉ちゃん!!またね〜!!」
現在8時。
私達は昨日テトラストの領主様でアメリちゃんのお姉さん、アクチさんの家に泊めてもらった。
アクチさんもその旦那さんも本当に優しくていい人だった。
本当に二人とも幸せそうで、互いの良い所をずっと言い合ったりしていたぐらい仲が良い。
……夜、ほんの少しだけ喘ぎ声っぽいものが聞こえたのは互いに愛し合っている証拠としておく。
気になってあまり眠れなかった…なんてことは私はなかった。ユウロは少し眠そうだが。
そして私達は朝ご飯を御馳走してもらい、今から隣の親魔物領『ラノナス』に旅立つところだ。
「あ、そうだ!皆に聞いておいてほしい事があるの」
「なんですか?」
見送りをしてくれているアクチさんはそう言うと、先程までの笑顔が消えて真剣な顔になっていた。
「あなた達が今から向かうラノナスなんだけど…最近ちょっと物騒な事が起きているらしいのよ…」
「物騒な事…ですか?」
その空気に、私達も真剣にアクチさんの話を聞いている。
「ええ…どうやらラノナス中心に活動してる盗賊団『ディナマ』がここ最近活発に動いているらしいのよ」
「盗賊団ですか」
「ええ。厄介なのはその盗賊団には下手な勇者より強い奴もちらほらいるらしいのよ…」
「それは気をつけなければいけませんね…」
盗賊団ディナマ…そんな面倒な人達が居るのか…
こちらにも一応元勇者がいるけど…複数で襲われると大変かも…
「まあユウロ君なら返り討ちに出来ると思うし、アメリも強力な魔法を連発しなければある程度は問題ないと思うけど…」
「…私ですか?」
「ええ…心配なのはサマリちゃんよ…」
やっぱり私か…
ベリリさんにも言われたけど、特に何の訓練もしてない私はきっと二人の足手まといになる…
それこそ不意を突かれて人質なんかになったら大変だろう。
「だからサマリちゃん、一つ提案g…」
「私はまだ魔物にはなりませんよ」
「……わかったわ…でもいつかはなるときが来ると思うわよ?」
「わかってます…その時はその時です」
そんな私に対してのアクチさんの提案は簡単に予想できた。以前にも同じことをベリリさんに言われているからだ。
確かに魔物になったほうがまだ丈夫だし、種族によっては十分戦力にもなるだろう。
私自身もそれはわかってるし、どうしても魔物になりたくないわけでもない。
でも、まだ…今はまだ私は人間でいたい。
簡単に人間をやめたくないのだ。
「まあ、サマリちゃんはなるべく周りを気にしながら旅をしてね」
「はい!」
「じゃ、この話はおしまい!こんな重い空気は旅立ちに似合わないわ!」
手をパンパンと叩きながらこの話を終えたアクチさんは再び笑顔になり…
「また会いましょうね!そして他の姉妹の話や旅の話を聞かせてね!」
「うん!」
「それでは!」
「お元気で!!」
私達も皆笑顔になり、お互いに手を振りながら、私達はテトラストを旅立った。
「アメリ可愛かったなあ〜。私もあんな時代があったのかしら?」
「……ん?この感じ……」
「…なんか面白そうなことが起こりそうね…」
====================
ヒュゥゥゥ……
「ん〜良い天気!」
「風も気持ちいいな!」
「ぽかぽか〜」
現在12時。アクチさんと別れてから4時間程経った。
現在私達はテトラストの隣町『ラノナス』に向けて旅をしている。
特にこれと言った理由がある訳じゃないけど、とりあえずは親魔物領を渡り歩こうと思ったからだ。
そっちのほうが勇者に遇う確率はぐっと減るし、安全に旅が出来ると思ったからだ。
しかし、朝のアクチさんの話からすると親魔物領にも盗賊はいるということ。
まあ勇者と違い所詮ならず者の集団なのでユウロが居る分まだ安心はできるけど…それでも少し怖いな…
「しっかしまあのどかな場所だな〜」
「あっ!きれいなお花さんがいっぱいさいてる!」
ちなみに今は色とりどりの花や逞しい雑草が生えている丘の上を歩いている。
太陽もポカポカ陽気で、心地良い優しい風が吹いている。ハイキングにでも来ている気分だ。
お昼寝するにはちょうど良いだろう。する気は無いが。
「どうする?もうお昼ご飯にする?」
「そうだな。おーいアメリちゃん!!昼飯にしようぜー!!」
「うん!!もうアメリおなかペコペコ!!」
ちょうど良いし、私達はここでお昼ご飯を食べることにした。
今日のお昼ご飯は、アクチさんの所にいたメイドのアルプさんが私達の為に作ってくれたお弁当だ。
そういえばアメリちゃんに聞いたんだけど、アルプって簡単に言えば元男性のサキュバスらしい。元男性なのにあの家事スキル…特に料理スキルは凄いと思う。まさしく女になる運命だったんじゃないかと思うほどだ。
それと、魔物…サキュバスってなんでもありだな〜と思った。だってまさか男が魔物になるなんて思わなかったんだもん。
「それじゃあ早速お弁当箱を開けようか!」
パカッ!
「うわあ〜〜!!」
「すっげー!」
「おいしそ〜〜!!」
お弁当の中身は……プチトマトやレタスなど新鮮な野菜をふんだんに使用した色とりどりの野菜サラダ、黄金色に輝く卵焼き、良い感じに焼かれているハンバーグ、ケチャップがよく絡んでいるチキンライス、たこさんウインナーなど、本当に様々な物が3人で食べきれるかわからないほどいっぱい入っていた。もちろんそのどれもが凄く美味しそうである。
「それじゃあ食べよっか!」
「わーい!いただきま………ん?」
同じくメイドアルプさんにもらったテトラストのおいしい水を全員に配り終わり、早速食べようとした時、いただきますを言おうとしていたアメリちゃんが何かに気付いたような顔をして言葉を途中で止めてしまった。
「……」
「どうしたのアメリちゃん?」
「…なにかくる…」
「へ?」
なにかって何?とアメリちゃんに聞こうとしたその時…
シュインッ!!
ピカッ!!
ブオオオオオオオ!!
「な、なに!?」
「きゃあ!!」
「うおあ!?」
私達が居る場所からそう離れていない場所に急に渦巻くような風と、魔法陣(っていうのかな?)と光が発生した!
とりあえずお弁当が飛ばされないように安全なところへ移動させつつ様子を見ていると…
パアァァァァン…
「「「!?」」」
光が弾けて、そこには男の人と全体が青い何かが現れた。
青い何かは少女のようにも見える……ってことはスライムって魔物かな?
聞いたことはあったけど実物見たのは初めてだ。
「うぅ…おえっぷ…」
「お父さんだいじょーぶ?」
「あ、ああ…大丈夫だ」
そして二人で何か話し始めた。
スライムの女の子がお父さんって言ったからおそらく親子だろう。
しかし、なんでいきなりこんな場所に出てきたんだろう?
「…ってここはどこだ?おいヴェン、元いた場所と違ううえにライムまで転送されているんだが…ヴェン?おいヴェン!」
さらにお父さんだと思われる人がいきなり一人で叫び始めた。
…もしかして危ない人?
「くそ…ヴェンと連絡が取れない…」
「ねーねーお父さん!」
「ん?どうしたライム……あ」
何気にこっちを見ていたスライムの女の子がお父さんに私達の存在を知らせてしまった。
本当に危ない人ならなるべく関わりたくないんだけどな…
「……いや、サキュバス…か?いや、まさか…まあどちらにせよ魔物と共にいるから大丈夫か…」
スライムの女の子…たぶんライムって名前だろう…のお父さんが、ライムちゃんを庇うように私達から見えないようにしながら何かブツブツと呟いている。
時折アメリちゃんのほうを見ているので、私も咄嗟にアメリちゃんがあのお父さんに見えないようにしている。
失礼かもしれないけど……だって怪しすぎるもん。
「ちょっと尋ねて良いか?」
「へ?は、はい!」
そして何かを思ったのか、いきなりユウロに話しかけてきた。
「ここはどこだ?」
「へ?あ、えっと、親魔物領のテトラストとラノナスの間にある丘です」
「……そうか…」
そして、ユウロに答えを聞いて悩んでいる顔になった。
ここがどこかと聞いてくるという事は、もしかして転移魔法の失敗をした迷子の親子かな?
で、もしかしてさっき叫んでいたヴェンって人とはぐれたのかな?
名前からしてヴェンって人はお母さんでは無いと思うけど…誰だろうか?
「ところでキミ…その後ろにいる魔物の子供は…サキュバスか?」
「え、いや「アメリはリリムだもん!!」……」
悩んだ顔のままお父さんがいきなり私に話を振ってきた。しかもアメリちゃんの事についてだ。
まだ信用しきれなかった私がどう答えようか迷っているとアメリちゃん自身がはっきりと答えてしまった。
…なんかアメリちゃんって自分がサキュバスって言われるとすっごく不機嫌になってすぐ訂正するんだよね…そのまま勘違いさせておいたほうが良い時もあるのに……今回とか。
まあスライムと一緒に、しかも親子だから勇者とかではないだろうからまだいいけど…
「リリム………アメリだっけ?一つ聞いていいか?」
と、今度はアメリちゃんに声をかけ始めた。
「なに?変なお兄ちゃん?」
「変な!?……まあいい…それより聞くが…魔王って言うと誰の事だ?」
「アメリのお母さんだよ!!」
「……やっぱりか…」
目の前の男…ライムちゃんのお父さんは…アメリちゃんから答えを聞いて少し考えた後…
「まさか別の世界に転送しているとは…」
おかしなことを言った。
「はあ!?いきなり何を言っているんですか!?」
「いや、信じられないかもしれないが…魔王が女性の時点で俺が居た世界と違うんだ…」
なんだこの人?
本当にこのまま会話していて大丈夫な人なのか?
とか思ってたら…
「へぇ〜、では……え〜っと……その……名前はなんて言うんですか?」
「俺はアレスだ」
「あ、どうも。俺はユウロです。こっちの女の子はサマリ。で、アレスさんが居た世界では魔王は男なんですか?」
ユウロが普通にライムちゃんのお父さん…アレスさんに自己紹介して会話を始めてしまった。
「そうだが…君は俺が別世界から来たと信じているのか?」
「はい」
ユウロよ…そんな夢物語を信じると言うのか…
「ちょっとユウロ!!いくらなんでもそんなアホな事をいう怪しい人の話を信じるのはおかしくない!?」
「アホ!?」
あ、しまった。
意図せずにアレスさんを少しへこませてしまった。
「お父さんはあほじゃないよ〜!!」
「サマリお姉ちゃん!アレスお兄ちゃんにそんなこと言っちゃだめだよ!」
女の子達…ライムちゃんとアメリちゃんに怒られてしまった…なんか私もへこみそう…
「ああ…まあ普通は信じられないかもな…」
「それはだってねぇ…」
いきなり別世界から来ましたなんて言われて信じる人は滅多に居ないと思う。
それこそなにもかも簡単に信じちゃう人ぐらいではないだろうか?
「まあそうだよな普通は…でも……」
しかし…
「でもさ…俺はアレスさんみたいに別の世界からこの世界に来た人間をよく知っている…って言ったらどう?」
「えっ!?」
ユウロは…結構衝撃的な事を言ってきた。
「まあそいつはアレスさんと違って魔王どころか魔物すらいない世界から来たんだけどな」
「うそぉ…」
「ホントだって。この世界に無い物だってあるんだからさ。例えば電波で遠くの人と会話したり文章を送ったりできる機械とかさ。まあこの世界じゃただの金属とプラスチックでできた塊だけど…」
「へぇ〜……電波って何?」
「う〜ん…電気の波…かな?俺も詳しくは知らない」
ユウロが嘘をつくとは思えないし、なにより嘘をつく必要が無い。なのでこの話は本当の事なんだろう。
そんな夢みたいな世界があるなんて…驚きである。
ということは、アレスさんが言っていることも嘘ではないかもしれないのか。
あ、そうだ。ライムちゃんに聞いてみよう!
「ねえライムちゃん」
「なーにー?」
「お父さんが言ってることってホント?」
「ホントだよ〜♪」
ライムちゃんが本当だと言っているので本当にライムちゃんとアレスさんは別世界から来たのだろう。
だって子供が嘘つくとは思えないからね。
「まあライムちゃんがそう言っているので信じます」
「…………ああ、ありがとう」
アレスさんが何か言いたそうな顔をしていたが、とりあえず聞きたいことを聞いてみようと思う。
「ところで、どうしてそんなことが?転移魔法の誤作動か何かですか?」
「おそらくはそうだ。本来は俺一人を元の場所に送るはずだったものにライムが飛んできて二人で転送されたのが原因だろう」
「それはお気の毒に………ん?」
やはり転移魔法みたいなものの誤作動が原因でこの世界に来てしまったらしい。
無事に帰ることは出来るのであろうか?帰れなければ少なくとも奥さんとは一生離れて暮らす事になってしまうだろう。
そうなるとアレスさんもライムちゃんも、そしてお母さんも可哀想である。
だけど今のアレスさんの言葉に一つ気になることがある。
「俺一人を元の場所に送る?」
「ああ、俺は今彼女達…いや、魔物娘達の為に旅をしている」
「へ?どういう事ですか?」
「それはな…」
そしてアレスさんは自分の事を語り始めた……
=======[アメリ視点]=======
「はぁ、大変ですね…無事に帰ることが出来たらいいですね!」
「きっと大丈夫ですよ!!アレスさんの世界の魔王…ヴェンさんでしたっけ?きっとヴェンさんがなんとかしてくれますよ!」
「そうだといいが…」
アレスお兄ちゃんのおはなしはすごくビックリした!
だってお母さんがお母さんじゃなくて男のヴェンさんがお母さんでお母さんはいなくて男のお母さんがヴェンさんで………あれ?よくわかんなくなっちゃった。ま、いっか!
それにアレスお兄ちゃんの世界じゃ魔物がとっても少なくて、みんないなくなっちゃうかもしれないっていうんだもん!
そして、アレスお兄ちゃんがそんな魔物を助けるために旅をして、いろんな魔物をおくさんにして、おくさんと子供をいっぱい作っているんだって!
それでライムちゃんは一人目の子供なんだって!
「しかし…奥さんがいっぱい、しかも皆魔物って大変じゃないですか?」
「いや、彼女達の事を思うとそうでもないぞ」
アレスお兄ちゃんがいっぱいおくさんがいるって言ったときに、サマリお姉ちゃんが「えーそれはないですよ〜!!アレスさんって浮気者なんですか!?」って白い目で見てたけど、アメリが「魔物なら同じ人を本気ですきになったらあるよ!それにデルエラお姉ちゃんの所でも9人位おくさんがいる男の人がいたよ〜!」って言ったらなっとくしてくれたからよかった。
アレスお兄ちゃんはいい人だからそんな目をしたらダメだよサマリお姉ちゃん…だってアレスお兄ちゃんはおくさんたちみんなあいしてるってライムちゃん言ってたもん。
「ねえライムちゃん!こまきれいと思わない?」
「きれ〜♪」
でもそれ以外のことは難しくてアメリわからなかったから、アメリはライムちゃんとお花さんをいっしょに見たり、いっしょにあそぶことにした。
今はアメリのこまを回してあそんでる。
もらってからずっと回すれんしゅうしてたから上手に回るようになってきたんだ!
「すごーい!私もやってみていい?」
「うん!いいよ!はい!!」
「ワーイ♪」
今度はライムちゃんが回してみたいっていったからかしてあげた。
ライムちゃんは生まれてからそんなにたってないらしいからアメリのほうがお姉ちゃん。だからってわけじゃないけど、ライムちゃんがやってみたいって言ったらかしてあげないとね♪
「んしょ、あれ?回らない…」
「えっとね…ここをこうして…こうやるんだよ!」
「ん〜…わ〜できた〜♪」
ライムちゃんがこまを回してみたけど上手く回らなかったからおしえてあげた。
今度は上手に回ってこまがお花みたいになった。
「しかし…こうして娘が遊んでいるのを見ているというのもなんだか微笑ましいな」
「あ〜アレスさんはそういう機会あまりなさそうですもんね…確かに微笑ましいですね…」
ユウロお兄ちゃんとアレスお兄ちゃんがなかよくあそんでるアメリたちを見て何かおはなししている。
お兄ちゃんたちすごくやさしいかおしてる…
あれ?サマリお姉ちゃんはどk…
ぐうぅぅぅぅ……
「んー?アメリちゃん今の何の音〜?」
「あはは……///」
うぅ…そういえばアメリおなかペコペコだったっけ…
大きな音がなっちゃった…はずかしい…
「微笑ましいですね」
「微笑ましいな」
うぅ…お兄ちゃんたちも何か言ってるし…
「さ、アメリちゃんのお腹も訴えてるしお昼ご飯にしましょ!」
「あ、サマリお姉ちゃん!」
サマリお姉ちゃんが後ろからおべんとうばこをもってきた。
そういえばさっきとばないようにってどこかにもっていってたっけ。
「アレスさんとライムちゃんも一緒にどうですか?」
「え?いや、それは…」
「遠慮しなくても良いですよ!お弁当沢山ありますし、それに皆で食べたほうが美味しいじゃないですか!!」
「ああ、なら貰おう。ありがとう」
サマリお姉ちゃんがさそったから、アレスお兄ちゃんやライムちゃんといっしょにごはんを食べることになった。
…………
………
……
…
「「ごちそーさま!!」」
アルプのお姉ちゃんが作ってくれたおべんとうおいしかったー!!アメリおなかいっぱい!
ライムちゃんはスライムだからおべんとうは食べられなかったけど、おいしいお水をいっぱいのんでおなかいっぱいみたいだ。
「じゃああそぼ!」
「うん!!」
おなかもいっぱいになったしまたライムちゃんとあそぼうとした。
「あ、二人ともちょっと待って」
「すまないが、遊ぶのは少し待ってくれないか」
けど、ユウロお兄ちゃんとアレスお兄ちゃんに止められちゃった。
なんでかな?
「どうしたの二人とも?」
「ああ…サマリはアメリちゃんとライムちゃんと一緒にちょっと離れてて」
「え、ええ…」
アメリたちはユウロお兄ちゃんに言われたとおりサマリお姉ちゃんといっしょに少しお兄ちゃんたちからはなれた。
「さて…こそこそとこっちの動きを見ているようだが…何が目的だ?」
「そこに隠れてるのはわかってるから出てこい!」
そして、二人でいっぱい草が生えている場所に向かっておはなしをはじめた。
だれかいるのかな?
ガサガサ…ガサッ!
「…チッ、なんでわかったんだ…」
草の中から…ちょっとこわいかおをした男の人が出てきた。
「そりゃああんだけ視線を感じたら誰だって気付くさ!」
「ああ、まったくだ。もう少しうまく隠れたらどうだ?」
アメリ全然わからなかったんだけどな…ユウロお兄ちゃんもアレスお兄ちゃんもすごいな。
「う、うるせー!とにかく痛い目に遭いたくなかったら金目の物をこっちに渡せ!抵抗するようなら俺の仲間がテメエらを完膚なきまでにボロボロにすっぞ!」
そういって少しこわいかおの男の人がナイフをつきつけてきた。
もしかしてこの人、アクチお姉ちゃんが言ってた…
「仲間…もしかしてアンタ盗賊団ディナマの一員か?」
「ほぉ…俺達の事を知っているのか…なら話は早い…死にたくなかったら言う事を聞くんだな!」
やっぱり…ディナマっていうわるい人たちの一人だった。
「アレスさんも下がっていてください!あまり強くなさそうですけど一応危ないのでここは俺が…!」
「…いや、大丈夫だ」
「でもアレスさんは何も武器を持ってないじゃないですか!」
「なに、この程度の相手なら問題は無い。素手で十分だ」
「くそっ!ナメてんじゃねえよ!」
お兄ちゃんたちがおはなししながらこわい人をつよくないなんて言っちゃうからおこってナイフを持ってアレスお兄ちゃんのほうに向かってとっしんしてきた。
でも…
「そんな単調な攻撃が俺に通用するとでも?」
「くっ!うわっ!?」
アレスお兄ちゃんはヒョイっと少しだけ右にうごうて簡単にかわしちゃった。
それだけじゃなくて、こわい人の足もひっかけてころばせた。
「くそ!ふざけやがって!死ねえ!」
「どうやって俺を殺すんだ?たいして強くないパンチで俺の頭でも叩き割るつもりか?」
「んなもんこのナイフで……あれ?俺のナイフは!?」
おきあがったこわい人の手にあったはずのナイフは…
「ああ、これのことか?すまないが借りてるよ」
「なっ!?いつの間に!?」
いつの間にかアレスお兄ちゃんがこわい人に見せるようにフリフリしている右手にあった。
アメリ今何がおきたかわからなかった!アレスお兄ちゃんすごい!!
「さて、痛い目ってのは誰が遭うのかな?」
「く、くそっ!!」
「あ、まて!」
そのままこわい人がにげだしちゃった。まあこんなにすごい事が出来るアレスお兄ちゃんにおそわれたらぜったいこわいもんね。
「まあ待てユウロ。別に追い掛ける必要は無い」
「でも…また来るかもしれませんよ?」
「別にあの程度なら君も問題なく返り討ちに出来るだろ?」
「まあ…確かにそうですけど」
「ま、その時にはこれを返しておいてくれ」
「はぁ…わかりました…」
そういってアレスお兄ちゃんはこわい人のナイフをユウロお兄ちゃんにわたした。
「あれ?自分で返さないんですか?」
「ああ。どうやら帰る時間らしい」
「へ?アレスお兄ちゃん、かえるって…」
かえるってどこに?って聞こうとしたときに…
【アレス!聞こえていないのか!!私の声が聞こえているなら返事をしてくれ!!】
「ああ、聞こえている。今ちょうど取り込み中だったものでな」
アレスお兄ちゃんのつけていたイヤリングから魔力が出てきて、男の人の声が聞こえてきた。
「…アレスさん?急にどうしたのですか?」
「もしかしなくてもアレスさんって独り言多いのですか?」
「あ、いや、今俺の世界の魔王…ヴェンと通信しているんだ」
【アレス?今近くに誰か居るのか?それにライムは一緒に居るのか?】
「ああ、でも問題ない。この世界の彼女達と供に旅をしている人間の男女だ。もちろんライムも一緒に居る」
どうやらユウロお兄ちゃんとサマリお姉ちゃんにヴェンさんの声は聞こえてないみたい。
【なら良かった…皆!アレスを見つけたぞ!!】
【本当ですか!?よかった〜!】
「すまない、心配掛けた」
ヴェンさん以外に女の人の声もいっぱい聞こえてきた。この声がアレスお兄ちゃんのおくさんたちかな?
でもこれでアレスお兄ちゃんが自分の世界にかえっておくさんたちに会えるんだからよかった〜。
【早速だがこちらに転送する。まずはライムから送ってもらおう】
「わかった…ライム〜、お家に帰るぞ」
あれ?でもアレスお兄ちゃんがおうちにかえっちゃうってことは…
「はーい!…バイバイ、アメリちゃん!」
「うん、バイバイ…」
ライムちゃんともお別れか…
なかよくなったのにもうあえないなんてアメリさみしいな…
「それじゃあ送るぞ!」
「うん!」
アレスお兄ちゃんがはこからなにかの紙を…魔法陣がかいてある紙をとりだした。
そして、ライムちゃんのからだから光がいっぱいでてきた。
「ねえライムちゃん…」
「なにアメリちゃん?」
もうライムちゃんとはお別れだけど…
世界がちがうからむりかもしれないけれど…
「はい!これあげる!……またね!!」
「…うん♪」
アメリまたライムちゃんに会いたいから、いっしょに見ていたお花さんをあげて、バイバイでお別れしないで、またねって言った。
そして、ライムちゃんの光がつよくなって…はじけて…ライムちゃんはかえっていった。
また、いつか会えるといいな…
【よし!ライムは無事にこちらに転送されたぞ!次は君の番だ!】
「ああ、よろしく頼む」
そして、今度はアレスお兄ちゃんが光りはじめた。
「アレスさん!お元気で!!」
「頑張って下さい!!」
「ああ、ご飯おいしかったよ。君達もこれからも彼女達と仲良くしてやってくれよ」
「「もちろん!!」」
アレスお兄ちゃんともお別れだけど…
「アレスお兄ちゃんもまたね!!」
「ああ、またな!」
また、ライムちゃんといっしょに会いたいな……
そして、アレスお兄ちゃんの光もつよくなって…はじけて…アレスお兄ちゃんもかえっていった。
………
……
…
「不思議な体験だったね〜アメリちゃん!」
「うん…」
「な〜に、アレスさんとライムちゃんは魔王が居る世界から来たし、実際に帰って行ったんだ。また絶対に会えるよ!だからアメリちゃん元気出して!そんなに落ち込む必要は無いよ!」
「うん…ありがとユウロお兄ちゃん!」
「よし!アメリちゃんも元気になったことだし、早速ラノナスに向けて出発しよう!」
「ええ!」「うん!!」
今日はふしぎなたいけんをした。
これも旅をしていたから出来たたいけん。
これからもいろんなことがおこるのかなぁ……
========[???視点]========
「黒髪の少年!お願いがある!アタシと一緒に来てくれないか?」
「はぁ…」
とりあえず今の状況を整理してみようと思う。
テトラストとかいう街に続く道を歩いていたらディナマとか言う盗賊4人に襲われた。
一人だけ他の3人と比べて強いのがいたがたいしたことなく、全員を相棒の刀で斬り返り討ちにしてやった。まあもちろん殺してまではいないが、当分は動けないだろう。
で、また歩き出そうとしたら今度は紺色の毛を手足から生やし、三角形の耳とフサフサの尻尾を持った…まるで狼の様な特徴を持った女性…つまり、ワーウルフの女性が茂みから飛び出して襲ってきた。
魔物とは言え女性を斬るのは躊躇うので峰打ちで沈めて、彼女を介護したらこう言われたと…
一緒に来いってどういう事だろうか?
「僕を伴侶にでもするつもりか?」
「いや、アタシにはもう旦那がいる。そういうことではない」
「そうか…ならいいけど…」
僕は魔物だろうが人間だろうが誰かと結婚するつもりは無い。
まだ彼女のことを忘れられないのだから…
「で、どうすればいいんだ?一緒に来いって?」
「ああ…アンタがそこにいる奴等を一瞬で返り討ちにしたのを見て、さらにアタシの不意打ちも簡単にかわした揚句アタシを倒すほどの実力を持っているアンタに頼みがあるんだ」
真剣な顔で彼女は俺に頼みごとをしてきた…
「こいつ等ディナマに攫われたアタシの大切な旦那…ネオムを取り戻すのを手伝ってくれ!!」
自分の旦那を助けたいと。
「…駄目か?」
「いや、僕の力でよければいくらでも貸すよ」
「っ!!そうか!ありがとう!!」
そう言ってくる彼女の力になれるなら、僕は協力は惜しまない。
僕のようにならないように、絶対彼女の旦那さんは助け出さないとね。
「で、ディナマだっけ?そいつらのアジトに行くとして、どこにあるか知っているのか?」
「ああ!ラノナスのすぐ東の崖近くだ!」
ラノナスか…ならテトラスト経由で行くのが一番早いのか。
「わかった…じゃあ行こうか…えっと…」
「アタシか?アタシはプロメ。見ての通りワーウルフだ!」
「そうか。僕は椿(ツバキ)。見ての通りジパング人だ!」
お互いの名前もわかったことだし、早速僕達はプロメの旦那さん…ネオムさんをディナマから助け出すためにラノナスに向かう事にした…
例え知らない相手でも、大切な人を失うなんて悲しい事が起こらないようにするために…
草原や火山、湖に砂浜…自然のものが揃っていて、美しい光景が広がる島…
この島に大きく聳え立つ古城…それこそ大富豪の豪邸程の古城…しかし内部は最先端をいく豪華な設備が施されている古城…
そんな古城…魔王城の一室で、俺は魔王…いや、友人のヴェンと一時の別れの挨拶をしていた…
「アレス…もう行ってしまうのか…」
「ああ…彼女達の為にもな…」
「そうか…また何かあったら呼ぶからな…」
「ああ、その時は必ず…」
今回は俺に会いたいからと『彼女達』が言ったからここに来た。
だからまた旅に出るのは少し悪いと思ってしまう事もある。
だが俺は彼女達の…魔物娘達の為にも、旅を続けなければならない。
まだ危険に晒されている彼女達の為にもだ。
「では、いつも通り元居た場所に送れば良いのだな?」
「ああ、頼む」
俺はヴェンが呪文を唱え始めると同時に後ろに振り返り…
「皆も元気で…」
『うん♪』
『おう!』
『どうかご無事で…』
『待ってるから…』
『絶対帰ってきてね…』
「ああ、俺はまた無事に…絶対帰ってくる!!」
後ろにいる『彼女達』…俺の妻達にも挨拶をした。
そして俺の身体が光り始めた…転送が始まったのだ。
このまま光が強くなって、俺の果てしない旅がまた始まるのだろう。
「……」
…まだこの転送の感覚が慣れないから覚悟を決めていると……
「お父さ〜ん」
「ん?」
部屋の扉の外、廊下から微かに声が聞こえた。
見てみると…青い女の子がこちらに結構なスピードで向かってきていた。
あの子は…妻の一人、スライムのスラミーにどこか似ている女の子は…
「あら〜ライム!おきたの〜?」
まだ寝ているからと、唯一この場に居なかった俺とスラミーの娘、ライムだった。
どうやらギリギリで起きたらしく、俺に挨拶しに来たのだろう。
「お父さ〜あっ!?うにゅ!?」
「うおっ!?」
ライムはすぐ目の前まで来たのだが、部屋の入口が滑りやすくなっていたのか滑ってしまい、何故かバウンドする形で転んでしまった。
しかも結構なスピードで来ていた為かそのまま俺のほうに飛んできた。
なんとか抱きかかえる形で飛んできたライムをキャッチ出来たので大惨事にはならなk……
「いかん!早く離れるんだ!!」
「…えっ……」
ここで俺の身体の光が一段と強くなり、大きく弾けた。
俺がここで最後に見たものは、もの凄く慌てた顔をして何かを言っているヴェンの姿と、何故か俺と同じように身体が光っている、俺に密着しているライムの姿だった。
………
……
…
「あれ〜、ライムは〜?」
「いかん!非常に不味い事態になった!!」
「不味いって…何がですか魔王様?」
「ライムがアレスに密着しすぎたせいで一緒に転送されてしまったが、あの転送は本来一人用だ。誤作動を起こしてどこかわからない場所に飛ばされている可能性が高い…」
「えっ!?」
「アレス!聞こえるかアレス!!…駄目だ、通信が繋がらない…」
「そんな…じゃあアレスとライムはどこへ!?」
「わからない…もしかしたらこの世界とは別の世界に転送されている可能性もある…それが魔力の無い世界とかだったら最悪だ…」
「そ、そんな……魔王様…なんとかならないのですか!?」
「…いや、なんとかなる、ならないじゃない…なんとかしよう!皆、手伝ってくれ!!」
『はいっ!!』
「ダーリン……ライム……」
「元気出して〜スラミーちゃん。きっと二人とも無事帰ってくるよ〜」
「うん…ありがと〜プリンちゃん」
=======[サマリ視点]=======
「「御世話になりました!」」
「じゃあ気をつけてね〜♪」
「うん!楽しかったよアクチお姉ちゃん!!またね〜!!」
現在8時。
私達は昨日テトラストの領主様でアメリちゃんのお姉さん、アクチさんの家に泊めてもらった。
アクチさんもその旦那さんも本当に優しくていい人だった。
本当に二人とも幸せそうで、互いの良い所をずっと言い合ったりしていたぐらい仲が良い。
……夜、ほんの少しだけ喘ぎ声っぽいものが聞こえたのは互いに愛し合っている証拠としておく。
気になってあまり眠れなかった…なんてことは私はなかった。ユウロは少し眠そうだが。
そして私達は朝ご飯を御馳走してもらい、今から隣の親魔物領『ラノナス』に旅立つところだ。
「あ、そうだ!皆に聞いておいてほしい事があるの」
「なんですか?」
見送りをしてくれているアクチさんはそう言うと、先程までの笑顔が消えて真剣な顔になっていた。
「あなた達が今から向かうラノナスなんだけど…最近ちょっと物騒な事が起きているらしいのよ…」
「物騒な事…ですか?」
その空気に、私達も真剣にアクチさんの話を聞いている。
「ええ…どうやらラノナス中心に活動してる盗賊団『ディナマ』がここ最近活発に動いているらしいのよ」
「盗賊団ですか」
「ええ。厄介なのはその盗賊団には下手な勇者より強い奴もちらほらいるらしいのよ…」
「それは気をつけなければいけませんね…」
盗賊団ディナマ…そんな面倒な人達が居るのか…
こちらにも一応元勇者がいるけど…複数で襲われると大変かも…
「まあユウロ君なら返り討ちに出来ると思うし、アメリも強力な魔法を連発しなければある程度は問題ないと思うけど…」
「…私ですか?」
「ええ…心配なのはサマリちゃんよ…」
やっぱり私か…
ベリリさんにも言われたけど、特に何の訓練もしてない私はきっと二人の足手まといになる…
それこそ不意を突かれて人質なんかになったら大変だろう。
「だからサマリちゃん、一つ提案g…」
「私はまだ魔物にはなりませんよ」
「……わかったわ…でもいつかはなるときが来ると思うわよ?」
「わかってます…その時はその時です」
そんな私に対してのアクチさんの提案は簡単に予想できた。以前にも同じことをベリリさんに言われているからだ。
確かに魔物になったほうがまだ丈夫だし、種族によっては十分戦力にもなるだろう。
私自身もそれはわかってるし、どうしても魔物になりたくないわけでもない。
でも、まだ…今はまだ私は人間でいたい。
簡単に人間をやめたくないのだ。
「まあ、サマリちゃんはなるべく周りを気にしながら旅をしてね」
「はい!」
「じゃ、この話はおしまい!こんな重い空気は旅立ちに似合わないわ!」
手をパンパンと叩きながらこの話を終えたアクチさんは再び笑顔になり…
「また会いましょうね!そして他の姉妹の話や旅の話を聞かせてね!」
「うん!」
「それでは!」
「お元気で!!」
私達も皆笑顔になり、お互いに手を振りながら、私達はテトラストを旅立った。
「アメリ可愛かったなあ〜。私もあんな時代があったのかしら?」
「……ん?この感じ……」
「…なんか面白そうなことが起こりそうね…」
====================
ヒュゥゥゥ……
「ん〜良い天気!」
「風も気持ちいいな!」
「ぽかぽか〜」
現在12時。アクチさんと別れてから4時間程経った。
現在私達はテトラストの隣町『ラノナス』に向けて旅をしている。
特にこれと言った理由がある訳じゃないけど、とりあえずは親魔物領を渡り歩こうと思ったからだ。
そっちのほうが勇者に遇う確率はぐっと減るし、安全に旅が出来ると思ったからだ。
しかし、朝のアクチさんの話からすると親魔物領にも盗賊はいるということ。
まあ勇者と違い所詮ならず者の集団なのでユウロが居る分まだ安心はできるけど…それでも少し怖いな…
「しっかしまあのどかな場所だな〜」
「あっ!きれいなお花さんがいっぱいさいてる!」
ちなみに今は色とりどりの花や逞しい雑草が生えている丘の上を歩いている。
太陽もポカポカ陽気で、心地良い優しい風が吹いている。ハイキングにでも来ている気分だ。
お昼寝するにはちょうど良いだろう。する気は無いが。
「どうする?もうお昼ご飯にする?」
「そうだな。おーいアメリちゃん!!昼飯にしようぜー!!」
「うん!!もうアメリおなかペコペコ!!」
ちょうど良いし、私達はここでお昼ご飯を食べることにした。
今日のお昼ご飯は、アクチさんの所にいたメイドのアルプさんが私達の為に作ってくれたお弁当だ。
そういえばアメリちゃんに聞いたんだけど、アルプって簡単に言えば元男性のサキュバスらしい。元男性なのにあの家事スキル…特に料理スキルは凄いと思う。まさしく女になる運命だったんじゃないかと思うほどだ。
それと、魔物…サキュバスってなんでもありだな〜と思った。だってまさか男が魔物になるなんて思わなかったんだもん。
「それじゃあ早速お弁当箱を開けようか!」
パカッ!
「うわあ〜〜!!」
「すっげー!」
「おいしそ〜〜!!」
お弁当の中身は……プチトマトやレタスなど新鮮な野菜をふんだんに使用した色とりどりの野菜サラダ、黄金色に輝く卵焼き、良い感じに焼かれているハンバーグ、ケチャップがよく絡んでいるチキンライス、たこさんウインナーなど、本当に様々な物が3人で食べきれるかわからないほどいっぱい入っていた。もちろんそのどれもが凄く美味しそうである。
「それじゃあ食べよっか!」
「わーい!いただきま………ん?」
同じくメイドアルプさんにもらったテトラストのおいしい水を全員に配り終わり、早速食べようとした時、いただきますを言おうとしていたアメリちゃんが何かに気付いたような顔をして言葉を途中で止めてしまった。
「……」
「どうしたのアメリちゃん?」
「…なにかくる…」
「へ?」
なにかって何?とアメリちゃんに聞こうとしたその時…
シュインッ!!
ピカッ!!
ブオオオオオオオ!!
「な、なに!?」
「きゃあ!!」
「うおあ!?」
私達が居る場所からそう離れていない場所に急に渦巻くような風と、魔法陣(っていうのかな?)と光が発生した!
とりあえずお弁当が飛ばされないように安全なところへ移動させつつ様子を見ていると…
パアァァァァン…
「「「!?」」」
光が弾けて、そこには男の人と全体が青い何かが現れた。
青い何かは少女のようにも見える……ってことはスライムって魔物かな?
聞いたことはあったけど実物見たのは初めてだ。
「うぅ…おえっぷ…」
「お父さんだいじょーぶ?」
「あ、ああ…大丈夫だ」
そして二人で何か話し始めた。
スライムの女の子がお父さんって言ったからおそらく親子だろう。
しかし、なんでいきなりこんな場所に出てきたんだろう?
「…ってここはどこだ?おいヴェン、元いた場所と違ううえにライムまで転送されているんだが…ヴェン?おいヴェン!」
さらにお父さんだと思われる人がいきなり一人で叫び始めた。
…もしかして危ない人?
「くそ…ヴェンと連絡が取れない…」
「ねーねーお父さん!」
「ん?どうしたライム……あ」
何気にこっちを見ていたスライムの女の子がお父さんに私達の存在を知らせてしまった。
本当に危ない人ならなるべく関わりたくないんだけどな…
「……いや、サキュバス…か?いや、まさか…まあどちらにせよ魔物と共にいるから大丈夫か…」
スライムの女の子…たぶんライムって名前だろう…のお父さんが、ライムちゃんを庇うように私達から見えないようにしながら何かブツブツと呟いている。
時折アメリちゃんのほうを見ているので、私も咄嗟にアメリちゃんがあのお父さんに見えないようにしている。
失礼かもしれないけど……だって怪しすぎるもん。
「ちょっと尋ねて良いか?」
「へ?は、はい!」
そして何かを思ったのか、いきなりユウロに話しかけてきた。
「ここはどこだ?」
「へ?あ、えっと、親魔物領のテトラストとラノナスの間にある丘です」
「……そうか…」
そして、ユウロに答えを聞いて悩んでいる顔になった。
ここがどこかと聞いてくるという事は、もしかして転移魔法の失敗をした迷子の親子かな?
で、もしかしてさっき叫んでいたヴェンって人とはぐれたのかな?
名前からしてヴェンって人はお母さんでは無いと思うけど…誰だろうか?
「ところでキミ…その後ろにいる魔物の子供は…サキュバスか?」
「え、いや「アメリはリリムだもん!!」……」
悩んだ顔のままお父さんがいきなり私に話を振ってきた。しかもアメリちゃんの事についてだ。
まだ信用しきれなかった私がどう答えようか迷っているとアメリちゃん自身がはっきりと答えてしまった。
…なんかアメリちゃんって自分がサキュバスって言われるとすっごく不機嫌になってすぐ訂正するんだよね…そのまま勘違いさせておいたほうが良い時もあるのに……今回とか。
まあスライムと一緒に、しかも親子だから勇者とかではないだろうからまだいいけど…
「リリム………アメリだっけ?一つ聞いていいか?」
と、今度はアメリちゃんに声をかけ始めた。
「なに?変なお兄ちゃん?」
「変な!?……まあいい…それより聞くが…魔王って言うと誰の事だ?」
「アメリのお母さんだよ!!」
「……やっぱりか…」
目の前の男…ライムちゃんのお父さんは…アメリちゃんから答えを聞いて少し考えた後…
「まさか別の世界に転送しているとは…」
おかしなことを言った。
「はあ!?いきなり何を言っているんですか!?」
「いや、信じられないかもしれないが…魔王が女性の時点で俺が居た世界と違うんだ…」
なんだこの人?
本当にこのまま会話していて大丈夫な人なのか?
とか思ってたら…
「へぇ〜、では……え〜っと……その……名前はなんて言うんですか?」
「俺はアレスだ」
「あ、どうも。俺はユウロです。こっちの女の子はサマリ。で、アレスさんが居た世界では魔王は男なんですか?」
ユウロが普通にライムちゃんのお父さん…アレスさんに自己紹介して会話を始めてしまった。
「そうだが…君は俺が別世界から来たと信じているのか?」
「はい」
ユウロよ…そんな夢物語を信じると言うのか…
「ちょっとユウロ!!いくらなんでもそんなアホな事をいう怪しい人の話を信じるのはおかしくない!?」
「アホ!?」
あ、しまった。
意図せずにアレスさんを少しへこませてしまった。
「お父さんはあほじゃないよ〜!!」
「サマリお姉ちゃん!アレスお兄ちゃんにそんなこと言っちゃだめだよ!」
女の子達…ライムちゃんとアメリちゃんに怒られてしまった…なんか私もへこみそう…
「ああ…まあ普通は信じられないかもな…」
「それはだってねぇ…」
いきなり別世界から来ましたなんて言われて信じる人は滅多に居ないと思う。
それこそなにもかも簡単に信じちゃう人ぐらいではないだろうか?
「まあそうだよな普通は…でも……」
しかし…
「でもさ…俺はアレスさんみたいに別の世界からこの世界に来た人間をよく知っている…って言ったらどう?」
「えっ!?」
ユウロは…結構衝撃的な事を言ってきた。
「まあそいつはアレスさんと違って魔王どころか魔物すらいない世界から来たんだけどな」
「うそぉ…」
「ホントだって。この世界に無い物だってあるんだからさ。例えば電波で遠くの人と会話したり文章を送ったりできる機械とかさ。まあこの世界じゃただの金属とプラスチックでできた塊だけど…」
「へぇ〜……電波って何?」
「う〜ん…電気の波…かな?俺も詳しくは知らない」
ユウロが嘘をつくとは思えないし、なにより嘘をつく必要が無い。なのでこの話は本当の事なんだろう。
そんな夢みたいな世界があるなんて…驚きである。
ということは、アレスさんが言っていることも嘘ではないかもしれないのか。
あ、そうだ。ライムちゃんに聞いてみよう!
「ねえライムちゃん」
「なーにー?」
「お父さんが言ってることってホント?」
「ホントだよ〜♪」
ライムちゃんが本当だと言っているので本当にライムちゃんとアレスさんは別世界から来たのだろう。
だって子供が嘘つくとは思えないからね。
「まあライムちゃんがそう言っているので信じます」
「…………ああ、ありがとう」
アレスさんが何か言いたそうな顔をしていたが、とりあえず聞きたいことを聞いてみようと思う。
「ところで、どうしてそんなことが?転移魔法の誤作動か何かですか?」
「おそらくはそうだ。本来は俺一人を元の場所に送るはずだったものにライムが飛んできて二人で転送されたのが原因だろう」
「それはお気の毒に………ん?」
やはり転移魔法みたいなものの誤作動が原因でこの世界に来てしまったらしい。
無事に帰ることは出来るのであろうか?帰れなければ少なくとも奥さんとは一生離れて暮らす事になってしまうだろう。
そうなるとアレスさんもライムちゃんも、そしてお母さんも可哀想である。
だけど今のアレスさんの言葉に一つ気になることがある。
「俺一人を元の場所に送る?」
「ああ、俺は今彼女達…いや、魔物娘達の為に旅をしている」
「へ?どういう事ですか?」
「それはな…」
そしてアレスさんは自分の事を語り始めた……
=======[アメリ視点]=======
「はぁ、大変ですね…無事に帰ることが出来たらいいですね!」
「きっと大丈夫ですよ!!アレスさんの世界の魔王…ヴェンさんでしたっけ?きっとヴェンさんがなんとかしてくれますよ!」
「そうだといいが…」
アレスお兄ちゃんのおはなしはすごくビックリした!
だってお母さんがお母さんじゃなくて男のヴェンさんがお母さんでお母さんはいなくて男のお母さんがヴェンさんで………あれ?よくわかんなくなっちゃった。ま、いっか!
それにアレスお兄ちゃんの世界じゃ魔物がとっても少なくて、みんないなくなっちゃうかもしれないっていうんだもん!
そして、アレスお兄ちゃんがそんな魔物を助けるために旅をして、いろんな魔物をおくさんにして、おくさんと子供をいっぱい作っているんだって!
それでライムちゃんは一人目の子供なんだって!
「しかし…奥さんがいっぱい、しかも皆魔物って大変じゃないですか?」
「いや、彼女達の事を思うとそうでもないぞ」
アレスお兄ちゃんがいっぱいおくさんがいるって言ったときに、サマリお姉ちゃんが「えーそれはないですよ〜!!アレスさんって浮気者なんですか!?」って白い目で見てたけど、アメリが「魔物なら同じ人を本気ですきになったらあるよ!それにデルエラお姉ちゃんの所でも9人位おくさんがいる男の人がいたよ〜!」って言ったらなっとくしてくれたからよかった。
アレスお兄ちゃんはいい人だからそんな目をしたらダメだよサマリお姉ちゃん…だってアレスお兄ちゃんはおくさんたちみんなあいしてるってライムちゃん言ってたもん。
「ねえライムちゃん!こまきれいと思わない?」
「きれ〜♪」
でもそれ以外のことは難しくてアメリわからなかったから、アメリはライムちゃんとお花さんをいっしょに見たり、いっしょにあそぶことにした。
今はアメリのこまを回してあそんでる。
もらってからずっと回すれんしゅうしてたから上手に回るようになってきたんだ!
「すごーい!私もやってみていい?」
「うん!いいよ!はい!!」
「ワーイ♪」
今度はライムちゃんが回してみたいっていったからかしてあげた。
ライムちゃんは生まれてからそんなにたってないらしいからアメリのほうがお姉ちゃん。だからってわけじゃないけど、ライムちゃんがやってみたいって言ったらかしてあげないとね♪
「んしょ、あれ?回らない…」
「えっとね…ここをこうして…こうやるんだよ!」
「ん〜…わ〜できた〜♪」
ライムちゃんがこまを回してみたけど上手く回らなかったからおしえてあげた。
今度は上手に回ってこまがお花みたいになった。
「しかし…こうして娘が遊んでいるのを見ているというのもなんだか微笑ましいな」
「あ〜アレスさんはそういう機会あまりなさそうですもんね…確かに微笑ましいですね…」
ユウロお兄ちゃんとアレスお兄ちゃんがなかよくあそんでるアメリたちを見て何かおはなししている。
お兄ちゃんたちすごくやさしいかおしてる…
あれ?サマリお姉ちゃんはどk…
ぐうぅぅぅぅ……
「んー?アメリちゃん今の何の音〜?」
「あはは……///」
うぅ…そういえばアメリおなかペコペコだったっけ…
大きな音がなっちゃった…はずかしい…
「微笑ましいですね」
「微笑ましいな」
うぅ…お兄ちゃんたちも何か言ってるし…
「さ、アメリちゃんのお腹も訴えてるしお昼ご飯にしましょ!」
「あ、サマリお姉ちゃん!」
サマリお姉ちゃんが後ろからおべんとうばこをもってきた。
そういえばさっきとばないようにってどこかにもっていってたっけ。
「アレスさんとライムちゃんも一緒にどうですか?」
「え?いや、それは…」
「遠慮しなくても良いですよ!お弁当沢山ありますし、それに皆で食べたほうが美味しいじゃないですか!!」
「ああ、なら貰おう。ありがとう」
サマリお姉ちゃんがさそったから、アレスお兄ちゃんやライムちゃんといっしょにごはんを食べることになった。
…………
………
……
…
「「ごちそーさま!!」」
アルプのお姉ちゃんが作ってくれたおべんとうおいしかったー!!アメリおなかいっぱい!
ライムちゃんはスライムだからおべんとうは食べられなかったけど、おいしいお水をいっぱいのんでおなかいっぱいみたいだ。
「じゃああそぼ!」
「うん!!」
おなかもいっぱいになったしまたライムちゃんとあそぼうとした。
「あ、二人ともちょっと待って」
「すまないが、遊ぶのは少し待ってくれないか」
けど、ユウロお兄ちゃんとアレスお兄ちゃんに止められちゃった。
なんでかな?
「どうしたの二人とも?」
「ああ…サマリはアメリちゃんとライムちゃんと一緒にちょっと離れてて」
「え、ええ…」
アメリたちはユウロお兄ちゃんに言われたとおりサマリお姉ちゃんといっしょに少しお兄ちゃんたちからはなれた。
「さて…こそこそとこっちの動きを見ているようだが…何が目的だ?」
「そこに隠れてるのはわかってるから出てこい!」
そして、二人でいっぱい草が生えている場所に向かっておはなしをはじめた。
だれかいるのかな?
ガサガサ…ガサッ!
「…チッ、なんでわかったんだ…」
草の中から…ちょっとこわいかおをした男の人が出てきた。
「そりゃああんだけ視線を感じたら誰だって気付くさ!」
「ああ、まったくだ。もう少しうまく隠れたらどうだ?」
アメリ全然わからなかったんだけどな…ユウロお兄ちゃんもアレスお兄ちゃんもすごいな。
「う、うるせー!とにかく痛い目に遭いたくなかったら金目の物をこっちに渡せ!抵抗するようなら俺の仲間がテメエらを完膚なきまでにボロボロにすっぞ!」
そういって少しこわいかおの男の人がナイフをつきつけてきた。
もしかしてこの人、アクチお姉ちゃんが言ってた…
「仲間…もしかしてアンタ盗賊団ディナマの一員か?」
「ほぉ…俺達の事を知っているのか…なら話は早い…死にたくなかったら言う事を聞くんだな!」
やっぱり…ディナマっていうわるい人たちの一人だった。
「アレスさんも下がっていてください!あまり強くなさそうですけど一応危ないのでここは俺が…!」
「…いや、大丈夫だ」
「でもアレスさんは何も武器を持ってないじゃないですか!」
「なに、この程度の相手なら問題は無い。素手で十分だ」
「くそっ!ナメてんじゃねえよ!」
お兄ちゃんたちがおはなししながらこわい人をつよくないなんて言っちゃうからおこってナイフを持ってアレスお兄ちゃんのほうに向かってとっしんしてきた。
でも…
「そんな単調な攻撃が俺に通用するとでも?」
「くっ!うわっ!?」
アレスお兄ちゃんはヒョイっと少しだけ右にうごうて簡単にかわしちゃった。
それだけじゃなくて、こわい人の足もひっかけてころばせた。
「くそ!ふざけやがって!死ねえ!」
「どうやって俺を殺すんだ?たいして強くないパンチで俺の頭でも叩き割るつもりか?」
「んなもんこのナイフで……あれ?俺のナイフは!?」
おきあがったこわい人の手にあったはずのナイフは…
「ああ、これのことか?すまないが借りてるよ」
「なっ!?いつの間に!?」
いつの間にかアレスお兄ちゃんがこわい人に見せるようにフリフリしている右手にあった。
アメリ今何がおきたかわからなかった!アレスお兄ちゃんすごい!!
「さて、痛い目ってのは誰が遭うのかな?」
「く、くそっ!!」
「あ、まて!」
そのままこわい人がにげだしちゃった。まあこんなにすごい事が出来るアレスお兄ちゃんにおそわれたらぜったいこわいもんね。
「まあ待てユウロ。別に追い掛ける必要は無い」
「でも…また来るかもしれませんよ?」
「別にあの程度なら君も問題なく返り討ちに出来るだろ?」
「まあ…確かにそうですけど」
「ま、その時にはこれを返しておいてくれ」
「はぁ…わかりました…」
そういってアレスお兄ちゃんはこわい人のナイフをユウロお兄ちゃんにわたした。
「あれ?自分で返さないんですか?」
「ああ。どうやら帰る時間らしい」
「へ?アレスお兄ちゃん、かえるって…」
かえるってどこに?って聞こうとしたときに…
【アレス!聞こえていないのか!!私の声が聞こえているなら返事をしてくれ!!】
「ああ、聞こえている。今ちょうど取り込み中だったものでな」
アレスお兄ちゃんのつけていたイヤリングから魔力が出てきて、男の人の声が聞こえてきた。
「…アレスさん?急にどうしたのですか?」
「もしかしなくてもアレスさんって独り言多いのですか?」
「あ、いや、今俺の世界の魔王…ヴェンと通信しているんだ」
【アレス?今近くに誰か居るのか?それにライムは一緒に居るのか?】
「ああ、でも問題ない。この世界の彼女達と供に旅をしている人間の男女だ。もちろんライムも一緒に居る」
どうやらユウロお兄ちゃんとサマリお姉ちゃんにヴェンさんの声は聞こえてないみたい。
【なら良かった…皆!アレスを見つけたぞ!!】
【本当ですか!?よかった〜!】
「すまない、心配掛けた」
ヴェンさん以外に女の人の声もいっぱい聞こえてきた。この声がアレスお兄ちゃんのおくさんたちかな?
でもこれでアレスお兄ちゃんが自分の世界にかえっておくさんたちに会えるんだからよかった〜。
【早速だがこちらに転送する。まずはライムから送ってもらおう】
「わかった…ライム〜、お家に帰るぞ」
あれ?でもアレスお兄ちゃんがおうちにかえっちゃうってことは…
「はーい!…バイバイ、アメリちゃん!」
「うん、バイバイ…」
ライムちゃんともお別れか…
なかよくなったのにもうあえないなんてアメリさみしいな…
「それじゃあ送るぞ!」
「うん!」
アレスお兄ちゃんがはこからなにかの紙を…魔法陣がかいてある紙をとりだした。
そして、ライムちゃんのからだから光がいっぱいでてきた。
「ねえライムちゃん…」
「なにアメリちゃん?」
もうライムちゃんとはお別れだけど…
世界がちがうからむりかもしれないけれど…
「はい!これあげる!……またね!!」
「…うん♪」
アメリまたライムちゃんに会いたいから、いっしょに見ていたお花さんをあげて、バイバイでお別れしないで、またねって言った。
そして、ライムちゃんの光がつよくなって…はじけて…ライムちゃんはかえっていった。
また、いつか会えるといいな…
【よし!ライムは無事にこちらに転送されたぞ!次は君の番だ!】
「ああ、よろしく頼む」
そして、今度はアレスお兄ちゃんが光りはじめた。
「アレスさん!お元気で!!」
「頑張って下さい!!」
「ああ、ご飯おいしかったよ。君達もこれからも彼女達と仲良くしてやってくれよ」
「「もちろん!!」」
アレスお兄ちゃんともお別れだけど…
「アレスお兄ちゃんもまたね!!」
「ああ、またな!」
また、ライムちゃんといっしょに会いたいな……
そして、アレスお兄ちゃんの光もつよくなって…はじけて…アレスお兄ちゃんもかえっていった。
………
……
…
「不思議な体験だったね〜アメリちゃん!」
「うん…」
「な〜に、アレスさんとライムちゃんは魔王が居る世界から来たし、実際に帰って行ったんだ。また絶対に会えるよ!だからアメリちゃん元気出して!そんなに落ち込む必要は無いよ!」
「うん…ありがとユウロお兄ちゃん!」
「よし!アメリちゃんも元気になったことだし、早速ラノナスに向けて出発しよう!」
「ええ!」「うん!!」
今日はふしぎなたいけんをした。
これも旅をしていたから出来たたいけん。
これからもいろんなことがおこるのかなぁ……
========[???視点]========
「黒髪の少年!お願いがある!アタシと一緒に来てくれないか?」
「はぁ…」
とりあえず今の状況を整理してみようと思う。
テトラストとかいう街に続く道を歩いていたらディナマとか言う盗賊4人に襲われた。
一人だけ他の3人と比べて強いのがいたがたいしたことなく、全員を相棒の刀で斬り返り討ちにしてやった。まあもちろん殺してまではいないが、当分は動けないだろう。
で、また歩き出そうとしたら今度は紺色の毛を手足から生やし、三角形の耳とフサフサの尻尾を持った…まるで狼の様な特徴を持った女性…つまり、ワーウルフの女性が茂みから飛び出して襲ってきた。
魔物とは言え女性を斬るのは躊躇うので峰打ちで沈めて、彼女を介護したらこう言われたと…
一緒に来いってどういう事だろうか?
「僕を伴侶にでもするつもりか?」
「いや、アタシにはもう旦那がいる。そういうことではない」
「そうか…ならいいけど…」
僕は魔物だろうが人間だろうが誰かと結婚するつもりは無い。
まだ彼女のことを忘れられないのだから…
「で、どうすればいいんだ?一緒に来いって?」
「ああ…アンタがそこにいる奴等を一瞬で返り討ちにしたのを見て、さらにアタシの不意打ちも簡単にかわした揚句アタシを倒すほどの実力を持っているアンタに頼みがあるんだ」
真剣な顔で彼女は俺に頼みごとをしてきた…
「こいつ等ディナマに攫われたアタシの大切な旦那…ネオムを取り戻すのを手伝ってくれ!!」
自分の旦那を助けたいと。
「…駄目か?」
「いや、僕の力でよければいくらでも貸すよ」
「っ!!そうか!ありがとう!!」
そう言ってくる彼女の力になれるなら、僕は協力は惜しまない。
僕のようにならないように、絶対彼女の旦那さんは助け出さないとね。
「で、ディナマだっけ?そいつらのアジトに行くとして、どこにあるか知っているのか?」
「ああ!ラノナスのすぐ東の崖近くだ!」
ラノナスか…ならテトラスト経由で行くのが一番早いのか。
「わかった…じゃあ行こうか…えっと…」
「アタシか?アタシはプロメ。見ての通りワーウルフだ!」
「そうか。僕は椿(ツバキ)。見ての通りジパング人だ!」
お互いの名前もわかったことだし、早速僕達はプロメの旦那さん…ネオムさんをディナマから助け出すためにラノナスに向かう事にした…
例え知らない相手でも、大切な人を失うなんて悲しい事が起こらないようにするために…
12/03/23 10:16更新 / マイクロミー
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