旅番外編! ゆく年くる年ひつじ年
「ふんふふっふっふ〜ん♪」
「お母さん何作ってるの?」
「あ、ドリー。起きたのね」
「うん」
現在16時。
愛する夫に教えてもらった鼻歌を奏でながら料理をしていたら、お昼ご飯を食べ終わってお昼寝をしていたはずの愛娘、ドリーが後ろから声を掛けてきた。
私自身もそうだが、ドリーはもこもこの羊毛に身体を包まれた羊型の獣人系魔物、ワーシープだ。体毛の効果もあって普段なら日光が完全に無くなる夕方から夜頃まで日向で寝ているのだが、作っている物の良い匂いを嗅ぎつけたのか、今日はちょっと早く起きたようだ。
「それでお母さん何作ってるの? 何か練ってるけど……」
「ああこれ? これはお蕎麦って言う、ジパングの麺料理だよ。今日みたいな一年の終わりの日には年越し蕎麦って言うのを食べるのが習慣だったってお父さんが言ってたから、作ってみようかなと思ってね」
「へぇ〜」
蕎麦の香りがやはり気になるのか、何を作っているのか聞いてきたドリーに蕎麦を作っていると教える。
なんでも、ジパングに近い文化を持つ夫の出身地では年末には蕎麦を食べて年を越す習慣があるとの事で、折角だから我が家でもそれをやってみようという事になったのだ。
という事で年内最後の日である今日、こうして蕎麦作りを昼過ぎから行っていたのだ。
「おそば……私食べた事あったかなぁ?」
「んー……ドリーが産まれてからは一回だけカリンが持ってきてくれたものを食べた事があったと思うけど、まだ2歳にもなっていない頃だったから覚えてないんじゃない?」
「うん。覚えてない。美味しいの?」
「んー……私が作った料理で不味かった物ってある?」
「ない!」
この前、昔一緒に世界中を旅していた刑部狸のカリンが蕎麦の材料を持ってきてくれたので、一から作ってみている。作り方もその時カリンから聞いたので、よっぽどの事がなければ不味くはならないはずだ。
ただ一つ問題があり、蕎麦自体食べたのが相当昔で、味がうろ覚えというところだ。数週間前試しに作ってみようかとも思ったが、お父さんやお母さんも一緒に食べるとなると材料の残量が怪しくなるので試せていない。
まあそれでも、記憶を信じて味の調整はするつもりだ。作り方の手順はメモもあるし、そのメモに書かれている物はカリン自身が実際に作っておいしい物という話なので大丈夫だろう。
「という事で夜ご飯は楽しみにしててね」
「うん! あれ、そういえばお父さんは? ジパング料理を作ってる時はわりとお母さんと一緒に作ってるのに……」
「お父さんは今出掛けているよ。なんでもタクマ君が奥さんにプレゼントするもので悩んでいるらしくて、それの相談に乗りにね」
「そうなんだ〜」
ちなみに夫は現在外出中。義理の弟とも呼べる昔からの知り合いの相談に乗りに行っている。
たしかにドリーの言う通り、夫は普段料理ができない事もあってあまり手伝ってくれないが、ジパング料理の時は進んで手伝ってくれている。それなのに姿が見えなかったので疑問に思っていたのだろう。
「ただいまー」
「あ、お父さんの声だー♪」
「おっ噂をすれば帰ってきたみたいね」
なんて、夫の話をしていたら丁度帰ってきたみたいだ。
玄関の方から愛しの旦那の声がキッチンまで響いてきた。
段々大きくなってきた足音、そして……リビングの扉が、ガチャリと開かれた。
「ただいま。おっ良い匂いがする」
「おかえりユウロ。今は夕飯のお蕎麦を作っているところだよ」
「おかえりお父さん!」
扉の向こうから現れたのはもちろん、私の愛しの旦那、ユウロだ。
もう年齢は30を越えているが、かつての旅の途中で何度も魔界に行き、しかも王魔界まで訪れ、そして何より私との度重なる交わりを経てすっかりインキュバスになっているので、出会った10代の頃と何一つ変わらない姿をしている。
「思ったより早い帰りだったね。てっきり夕方頃になるかと思ってたよ」
「まあポータルが思った以上に空いていたってのもあるけど、それ以上にすんなりとプレゼントが決まったってのもあるな。たまたま立ち寄った1件目にピッタリな物があったんだよ」
「へぇ……まあでもそれなら良かったんじゃない? もうちょっとお話でもしてくるかと思ったよ。タクマ君は大事な弟なんでしょ?」
「まあ、ポータルのおかげでわりといつでも会いに行けるし、そもそもあっちはサプライズでプレゼントしたいらしくて、今日は隙を見て来ただけだからそこまで時間取れないんだとよ」
積もる話もあっただろうし、もう少しゆっくりと帰ってくるかと思っていたが、思った以上に早く帰ってきた。
言ってしまえば相手だってユウロの家族みたいなものだし、もうちょっとゆっくりしてきても良かったのにとは思う。とはいえ、ユウロと一緒にいる時間が長いほうが私としては嬉しいので別段困った事もない。むしろ内心嬉しかったりする。
「そうだったんだね。とりあえずお蕎麦はまだまだ完成まで掛かるから、今日は疲れただろうしゆっくりドリーと一緒に待っててよ」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな。アメリちゃんがこの村に作ってくれたポータル、便利とはいえ未だに転移魔術ってのは慣れないからわりと疲れるんだよな。じゃあドリー、ソファーの上でお父さんと一緒にお蕎麦を待ってようか」
「うん!」
何はともあれ、まずは今日の夕飯用に年越し蕎麦を作らねばならない。
ポータルを使ったから移動時間は無いに等しくても、魔術を一切扱えないユウロにとっては感覚が掴めない為使うだけでそこそこ疲れる代物だ。
いつものように手伝ってほしいと思うところもあるが、目を覚ましたドリーの相手もしてもらいたいので、休んでいてもらう事にしたのだ。
「さーて、じゃあ蕎麦作りの続きを……」
「あ、ちょっと待ってサマリ」
「ん? どうかしたの?」
ユウロも帰ってきた事だし、ちゃっちゃとお蕎麦を作ってしまおうと意気込んだところで、ユウロからストップを掛けられた。
一体どうしたのかと思って振り向いたら、出掛ける時に持って行った鞄を何やらがさごそと漁り始めて……
「んーと……あった。はいこれ。サマリにお土産っつうかプレゼント」
「え……何これ?」
取り出して渡された物は、カラフルな紙に包装された何かだった。
「まあ開けてみなよ」
「うん……わあっ! これってキッチンミトン? 可愛いじゃん!」
「この前ボロボロになってきたって言ってたし、丁度良いかなと思ったんだけど……」
「うん! ありがとうユウロ❤」
「お、おう……もう初キスから12年だけどやっぱ照れるな……」
包装を開けて、飛び出してきた物は……白い生地に小さな色とりどりの花の模様が描かれているキッチンミトンだった。
パンやグラタン、クッキーなんかを作る時に必須なキッチンミトンだが、今持っているのは結構ボロボロで中の綿が飛び出していた。
だから少し前から新しいの買わないとなと思っていたし、たしかに呟いたのだが……それをユウロが覚えていたらしく、こうして買って来てくれた。
今欲しかった物であることもそうだが、何よりも愛しい人からのプレゼントは嬉しい。私は喜びのあまり、ユウロに抱きついて頬にキスをした。
「ねーねーお父さん私には〜?」
「もちろんドリーにもお土産はあるよ。ほれ」
「わーいおおかみさんのぬいぐるみだー! ありがとうお父さん♪」
きちんとドリーにもお土産は買ってきていたようだ。
ユウロは再び鞄の中を漁ってデフォルメされた小さい狼のぬいぐるみを取り出し、ドリーに渡した。
ドリーも大喜びで、人形を掲げながら走り回っている。
「さてと、それじゃあ今度こそお蕎麦作りを再開しますか」
早速新しいミトンを使ってみたいところだが、今は年越し蕎麦作りの最中だ。なのでまずは蕎麦の完成を急ぐ事にした。
今は捏ねる工程を終え、四角く延ばす段階まで大体終えた。麺棒で薄く延ばし終えたので、次は生地を折り畳んで切るところだ。
打ち粉というものをたっぷりと塗し、左から右へ半分に折る。そしてまた塗し、下から上へと半分に折る作業を繰り返す。
「やあ、お邪魔しますよ」
「あ、お爺ちゃんとお婆ちゃん!」
「あ、お義父さんとお義母さん。すみませんもう少ししたらお呼びしようかと……」
「気にしなくて良いよユウロ君。なんだか早くドリーの顔を見たかったから来ちゃっただけだからね」
蕎麦の完成の目処が立ったら呼びに行こうとしていた両親が、どうやら孫の顔見たさに早めに来てしまったようだ。
まあそもそも同じ敷地内に家はある……というか、ここは離れみたいなものなのだから簡単に来れるし、別に早く来たからって困る事もないので構わない。でも折角だから蕎麦をなるべく早く作る事にしよう。
折り畳んで生地を八枚重ねにした状態で、右端から包丁を振り下ろす。太過ぎず、細過ぎない程の幅で均等に、垂直に押し出すように切っていく。
「みてみてお婆ちゃん! おおかみちゃん!」
「おやおや、可愛らしい狼ちゃんだね」
「お父さんに買ってもらったのかい?」
「そうだよお爺ちゃん! いいでしょー♪」
楽しそうに会話をする孫と祖父母。
賑やかな声を聞きながら、私は切った蕎麦を掬って、予めお湯を沸かしておいた鍋の中に入れ茹で始める。
一か所に固まらないように注意しながら入れた後、沸騰が始まったので軽く箸でかき混ぜる。
「あ、そうそう。一応お義父さん達にもお土産が……これです」
「おおっ! ありがとうユウロ君!」
「私達にもわざわざお土産を用意するだなんて……ほんと、ユウロ君みたいな優しい子がサマリの夫になってくれてよかったわ」
「いえいえどうもどうも……」
そこにユウロも混ざる。どうやら両親にも用意してあったお土産を渡したようだ。
蕎麦の方も茹であがったので、網で蕎麦を掬って水を張ったボウルに入れて冷やす。
「そろそろおそばもできたかなー?」
「どうだろうね、ちょっと様子を見てみようか」
「うん!」
そういってキッチンの方まで来たお母さんとドリー。
冷やして締めた蕎麦を洗ってぬめりを取ったところなので、蕎麦自体は丁度完成だ。
「お母さんおそばできたー?」
「とりあえず一玉分はできたよ。あと残ってる分も全部茹でて、汁を作って終わりかな」
「じゃあもうちょっと掛かりそうだね。それまで待っていようねドリー」
「うん!」
とはいえ、鍋やボウルのサイズの関係上、まだ全部やったわけではない。
それに、蕎麦を入れる汁もまだ作り終えていない。
という事で、まだもうちょっと掛かる事を二人に伝え、調理の続きに取り掛かり始めた。
「ふにふに……」
「ん〜くすぐったいよお婆ちゃ〜ん……」
「……こうして、娘が魔物になり、魔物の孫までいるだなんて、十数年前までは考えなかったよなぁ……」
「そうね……生き別れたもう一人の娘まで魔物になって再会できたりしたし、人生長生きしてみるものだねぇ……」
ドリーの耳や尻尾をふにふにと触りながら、物思いにふける両親。
私の母は普通の人間なので、魔物の娘と孫を持つ事に色々思うところもあるのだろう。
ちょっと耳を傾けつつ、鍋の中に残りの蕎麦を投入して茹でる。
そして、同時に別の鍋で汁を作り始める。
「魔物は恐ろしい存在だと思ってたけど、いざ自分の娘がそうなっても、全く怖くなかったからな……」
「んー? お爺ちゃんは私が恐いの?」
「全然。ドリーは目に入れても痛くない程可愛いよ」
「ドリーはもちろん、アメリちゃんを始め、サマリやツムリ、それに近所の魔物達と交流して、私達人間と同じなんだなって思うようになったわね……」
「やっぱり最初はそんな風に思うものなんですね……俺は魔物なんて空想上の生物でしかなかった世界に居たので、むしろそういうものだとしか思えなかったです」
そりゃあそうだ。両親は元々反魔物領の人間だったのだ。私が魔物にならなければ一生魔物と触れ合うことはなかっただろう。私だって旅に出る前にアメリちゃんと会わなければずっと魔物は苦手だったに違いない。
それは、魔物がいない世界で生まれ育ち、この世界に来た後も勇者をしていたユウロも同じだろう。
皆随分変わったものだなと思いながら私は汁を作るために鍋を取り出し、水、みりん、醤油、塩、そしてカリンから貰ったたぬたぬ雑貨印の和風だしを投入した。
ここからぐつぐつ煮て完成だ。初めてだし、そこまで本格的なものではないのでもうすぐできるだろう。
「ユウロ君の住んでいた世界……あまりいい話は聞かないけど、それでも一度は行ってみたいものだね」
「あーやっぱり異世界っていうのは気になるものですか?」
「それは勿論。とても大きな建物が沢山建っているとか絵が動く箱があるとか聞いたら見てみたいものよ」
「お父さんのおうち気になる〜」
そう、ユウロはこの世界で生まれたのではない。全く別の、魔物が一切居ない世界のニホンとか言う国で生まれたらしい。
知ったのはユウロの苦い思い出と共にだからそこまで行ってみたいとは思わないが……全く見知らぬ土地なのでちょっとは気になる。
気になっているところで、良い汁の匂いが漂ってきた。そろそろ汁も完成だ。
「まあ機会があればそのうちな……おっ、いい匂いが……」
「くんくん……ホントだー!」
汁のほうばかり見ていてはいけない。茹でていた蕎麦の様子を見る。
かき混ぜてみた感じ、丁度いい具合に茹で上がったみたいなので、網でボウルに移して全部冷やして洗う。
「お母さんもうできたー?」
「もうちょっとだよー! あと盛り付けー!!」
汁も指定時間煮込んだのでもう大丈夫だろう。
とはいえ、念のために蕎麦を1本つまみ、汁に付けて味見してみた。
「……うん、完璧!」
記憶の片隅にあった過去に食べたそれと、面も汁もほぼ同じ味がした。とにかくおいしい。
つまり、これで蕎麦は完成だ。器に盛り付けて皆のところに持って行こう。
「お待たせー。年越し蕎麦の完成だよー!」
「おおー!」
お盆の大きさの問題もあり流石に5人分は一気に運べないので、完成した蕎麦を半分ずつ皆がいるダイニングへ運ぶ。
一つ一つ運ぶ度に両親もユウロも美味しそうな匂いに目を輝かせている。ドリーに至っては珍しく涎まで垂れている程だ。
「それじゃあ食べようか。いただきまーす!」
『いただきます!』
全員分運び終えたので、冷めないうちに早速年越し蕎麦を食べる事にした。
両親やドリーはフォークを使って蕎麦を掬うように、私とユウロはジパングの食器である箸で食す。
ユウロが住んでいたニホンでは箸が主流だったので普通に使え、私はそんなユウロから箸の使い方を教えてもらった。
なんとなくではあるが、ジパング料理はジパングの食器を使って食べたほうが美味しく感じるというのと、ユウロと同じ物を使って食べたいと思ったから私は使い方を教えてもらい、今は完璧にマスターしたのだ。
「どう? 初めて作ったけどおいしい?」
「ちゅるる……おいしー!!」
「うん。記憶にある限りだけど……作ったのは初めてだし、最高とまでは言わねえけど……そこいらの市販品よりかはよっぽど美味いぜ」
「美味しいわよ。香りも良いし、口の中にそれが広がっていいわぁ」
「うん、やはり我が娘の料理は美味い!」
「もーお父さんったら……でもありがとう。お蕎麦おいしいね」
蕎麦を口に運び、それぞれが思い思いに感想を口にするが、そのどれもがおいしいというものだった。
これぞ作った甲斐があるというものだ。毎度言われていたって、大切な人達からのおいしいの声は、何よりも嬉しい。
「また作ってねお母さん!」
「もちろん!」
温かいお蕎麦を食べ、身も心も温まりながら年末の夕方を過ごすのであった……
……………………
「それじゃあお母さん、お父さん、おやすみー!」
「おやすみドリー」
「お爺ちゃん達に迷惑掛けちゃ駄目だからね!」
「大丈夫よ、ねえドリー?」
「うん! お婆ちゃん達といっぱい遊んで一緒に寝るだけだもん!」
「そうだね。それじゃあ行こうか。サマリもユウロ君もおやすみ」
「はい、おやすみなさいお義父さん」
現在21時。
蕎麦を食べ終わり、結構長い時間暖炉の前で談笑した後、ドリーはお母さん達と一緒に過ごす為に二人と一緒に母屋へと向かった。
そう、今から明日のお昼までは私とユウロの二人きりになるのである。
「さて、それじゃあ早速……❤」
「おい待て! まだここは外だぞ!? それにまだ先にやる事もあるだろ?」
「んっふふ〜❤」
両親とドリーが家の中に入っていくのを見送った後、私はこの後の事を思い浮かべ、ついユウロの股間へと手を伸ばす。
とはいえ、確かにここは外だ。雪こそ降ってはいないが、ユウロはとっても寒いだろう。
私は毛皮のおかげであまり寒くはないとはいえ、あまり他人に見られたくもないし、家の中のほうがいい事に間違いはない。
「全く……初めて会った時は下ネタに顔を赤らめるような女の子だったのになぁ……」
「まあ、確かにそうだけどさ……でもほら、今はもう長い間魔物だからね。歳だってそろそろ30になるし。それに愛する人とはずっと繋がっていたいもん」
「それって物理的にか?」
「やだなあ。全部に決まってるじゃん」
「……そっか。まあとりあえず中に戻ろうぜ」
「うん♪」
股間へと伸ばした手はそのままユウロの手と繋ぎ、二人仲良く部屋に入る。
やはりユウロは寒かったのか、その手はかなり冷たかった。
とはいえ、最愛の人の手なので嫌な気持ちは一切なかった。
「じゃあ明日のご飯の用意をしておくね」
「おう。そんじゃあ俺は風呂入れてくる」
家の中に戻り、ユウロはお風呂の準備を、そして私はまず明日のご飯の用意をし始めた。
きっと明日は起きても昼過ぎだろう。その後でドリーを迎えるのと新年の挨拶をしに母屋の方に行く予定であり、夕飯はお母さん達が作ってくれるのだが、お昼ご飯の用意をしている余裕はおそらくないので、今のうちに軽く食べられるものを作っておく。
「ふんふふ〜ん♪」
パンにレタスやスライストマトや焼いた卵などを挟む。つまりサンドイッチをテキパキと作る私。
一人2つずつ、同じ物を作らすもう一方は刻んだキャベツや焼いた鶏肉を挟む。ワーシープは草食とはいえ、元人間だからかそれとも動物の羊じゃなくて魔物だからか肉も問題無く食べられるのでこういうのもアリだ。
それを冷蔵庫(とユウロの世界では言うらしい保冷のルーンが刻まれた箱)の中に入れておけば、明日のお昼ご飯の問題はないだろう。
「よし、できた!」
「風呂も丁度入れ終わったぞ。もうやる事ないなら入るか?」
「う〜ん……」
こちらの準備が終わったとほぼ同時に、ユウロの方も済んだみたいだ。
という事でやり残した事を考える……洗濯物はとうの昔にしまったし、ドリーももう両親のところにいる、着替えも一応置いておいたし、ベッドメイキングも完璧……
「……うん、ないよ」
「そうか。俺ももうないし、早速入りに行こうか」
「そうだね♪」
色々と考えてみたものの、やはりもうやり残した事はない。
という事で早速二人でお風呂に入りに行く事にした。
「よっと……って、そんなにじろじろと見るなよ。恥ずかしいだろ?」
「えーいいじゃん今更。私達恋仲になってからもう10年以上経ってるんだからさ。今までだってほぼ毎日お互いの裸を見てるんだし」
「そうだけどさ、やっぱ恥ずかしいというか……」
「もう……まあ、そういうところも好きだけどね」
服を脱ぎ、お風呂に入ろうとする私達。毛皮に覆われているので肝心な部分は簡単には見えないとはいえ、下着ぐらい身に付けているので脱ぐものはある。
もちろん、ユウロと一緒に入るのでユウロも脱いでいる。
昔と変わらず、無駄にムキムキでもなくそれでいて細くもない、引き締まった身体をしているユウロ。かつては傷が付いていたり、虐待されていた痕なんかがあったりしたが、インキュバスになってそれも綺麗さっぱりと消えている。
そして、まだ小さいままだが何度も私の中を犯して気持ち良くしてくれているペニスも目に入る。やはり魔物としてこれは外せない。
ついうっとりと全身を舐めまわすように魅入っていると恥ずかしそうに身を捻ってきた。
大体の日はドリーともだが一緒に入っているし、既に何度も見ているので別に隠す程のものではないとは思うが……まあ、そういう意外と可愛らしいところも好きなので良しとしよう。
「流石に裸はちょっと寒いからすぐにでも浴槽に入りたいけど……」
「まずは頭や身体を洗わないとな」
「だね〜」
お風呂に入った私達は、寒いからお湯の張った浴槽……には入らずに、まずは身体の汚れを落とす事にした。
ちなみに、我が家のお風呂はそこそこ広く、シャワーと保温効果がある浴槽が完備されている。これは家を建てる時、自分達の妹のように仲の良いアメリちゃんというリリムの女の子の伝手でそういった建築技術を持つ魔物に頼んでもらったからだ。
おかげで入れたお湯はしばらく冷める事はないし、こうして大の大人二人が入っても不自由なく動けるのだ。
「んー、髪を始め全身の毛の量が増えてきて洗うの大変だなぁ……」
「でもまだ切る程でもないだろ? そこまで眠たそうにしてないし、毛皮を刈るのはまだいいよな?」
「うん。毛皮も大体旅してた頃と同じぐらいの長さだよ。寝ようと思えばすぐ寝れるけど、動いているうちは抗える程度ってとこ」
シャワーを頭から被り、シャンプーを泡立てて頭を洗う。
身体中の毛を刈るついでに髪の毛も切ったのがおよそ2ヶ月前。あまりロングは好きじゃないしワーシープだからか先端がウェーブ状になりもこもこして重くなるので女にしてはわりとすぐ切るが、そこそこ伸びたとはいえまだ切るには早い量だ。
それに、今は旅をしているわけじゃないから長くても短くても問題はない。どうせ刈るならもっともこもこになってからのほうが効率も良いし、売った時のお金も良い。
ちなみに、ワーシープウールはかなりの値段で売れるらしく、我が家の収入源の8割強は私とドリーの毛皮だったりする。そのうえ、ユウロだって働いて賃金を得ているので、我が家はそこそこ贅沢しても生活に困らないのだ。
「さてと、じゃあ次は背中を洗おうか。ほら背中向けて」
「え……うん。じゃあよろしく」
髪の毛及び角を洗い、シャワーで泡を落とす。
ユウロの方も同じように頭を洗い終わったので、じゃあ次は身体の方だと思い、背中を洗ってあげようと言おうとしたら先に言われてしまった。
まあ、洗ってもらうのは好きなので、ちょっと躓いたが気兼ねなく頼む事にした。
「どうだサマリ。強過ぎてないか?」
「うん、いい感じ。背中だけじゃなくて尻尾の方もお願いね」
「おう、任せろ」
既にシャワーで全身を濡らしてあるので、その状態からスポンジにボディソープを垂らして背中を洗ってもらう。
力強く、それでいて痛くない程度に動かされるスポンジは心地良い。
「あふ……」
「ん? 強く握り過ぎたか?」
「ううん大丈夫」
そして、尻尾を始め毛皮がある部分は手で直に洗ってくれている。
初めてという事でもない為、もこもことした毛皮でも問題無く洗えている。
尻尾は敏感なのを知っているからか特に丁寧に優しく洗ってくれている。気持ち良くて少し吐息が出てしまった。
「じゃあ次は前もお願いね」
「え? あ、ああ……」
「もう、これも今に始まった事じゃないのになに照れてるの?」
「そ、そうだけどさ……」
背中側を洗い終えたようなので、今度は正面側だ。ちょっと返事がしどろもどろとしているので、どうやら照れているようだ。
頭上から見下ろす形で後ろから洗ってくれるようで、足下に影ができた。おそらく真正面から胸や股間を見るのが恥ずかしいのだろう。
だが、後ろからは後ろからでなんだか襲われているみたいでちょっと興奮する。言ったら止めそうなので言わないが。
「んん……もっとゆっくりおっぱい洗っても良いんだよ?」
「あとでな。まずはスポンジで洗える部分だ」
「ちぇー」
「……やっぱ夜の生活というか性格は結構変わったよな。出会った当初じゃ胸揉めとか絶対言わなかったじゃんか」
「それはね……でも、胸でなくても、愛しの旦那様に身体を触れられていると安心するし嬉しいのが魔物の女の子なんですよーだ」
スポンジ越しに私の身体に触れるユウロの手。
特別に綺麗な手でもなく、かといって凄くごつくて大きいなんて事はないけど……それでも、私が一番大好きな手だ。
「わかったよ……それじゃあお望み通りに……!」
「んっ……なによ、乗り気じゃない感じを出しておきながらがっつり来るじゃない♪」
そして、前面の毛皮部分を直で洗い始めたユウロ。
手のひらに石鹸をつけ、胸部の毛皮をおっぱいごと撫でて洗う。
残念ながらそこまで大きなおっぱいではないが、ユウロが一番好きな大きさだと言ってくれるので今となっては不満はない。まあ、かつての旅仲間といい近所の人達といいちょっと胸が大きい人が多いので羨ましかったりする事もあるけど。
「あっ、んぅ……」
「洗ってるだけなのにそんな色っぽい声出すなって」
「んんっ、よく言うね……」
あまり乗り気ではなかったのはなんだったのか、少し勃っている乳首を指の腹で弾いて刺激したり、力強く洗うふりをして乳房を掴んで捏ねてくるユウロ。
流石に慣れたもので、私が感じるところを的確に刺激してくる。声は漏れ出し、身体を綺麗にしているはずなのに下半身が自身の分泌液で汚れ始めている。
「ほら、次はこっちだ」
「ふあぁ……♪」
胸への刺激を止め、今度は足の毛皮を両手で洗う。
ぎゅっぎゅと力を入れているので性的な刺激はそこまでないが、それでも先程までの興奮もあり感じてしまう。
両足の蹄もそのまま手で洗われる。普段は特に気にしないが、こうして直に指で触れられると、なんともこそばゆい。
「そういえば腕もまだだったな」
足が終わった後は腕……たしかに身体を洗うのだから腕もだが、なんだか焦らされている気分だ。
「さて、ここも綺麗にしないとな」
「ひあっ! きゅ、急に……ああっ」
なんて思っていたら、そのままの動きで既にスポンジで洗っていた腋を撫でてきた。
敏感な所への不意な刺激に、思わず身体が跳ねる。
「じゃあ最後はっと……」
「んんっ……あっ」
股下以外は泡だらけになったので、一番デリケートな部分に腕が伸びる。
秘所を隠すように覆う毛皮を丁寧に洗うユウロ。あえてその場所は避けているようだが、周りの敏感な所を不規則に刺激してくる。
「と、あとここも……ん?」
「ひゃうっ♪」
「なんだか石鹸にしては異様にぬるぬるしてるなぁ……」
「もう、わかってるくせにぃ……ふあっ♪」
そして、とうとう秘所に指を伸ばすユウロ。
今までの刺激で既にとろとろになっており、愛液が泡と一緒に滴り落ちている。
「おかしいなぁ……洗えば洗う程汚れてしまう……」
「ひあっ、んひゃ、ふぁぁ……」
割れ目に沿って激しく指を動かすユウロ。シャワーや浴槽とは違う水の音が、くちゅくちゅと風呂場に響き渡る。
もはや洗うというより愛撫をしているが、気持ち良くて止められない。というか止めたくない。
更に股間に伸びていないもう一方の手でまた胸を洗い始めた。2か所からの刺激に、腰が勝手に浮いてしまいそうになる。
「あっ、んはぁっ、ん……ひあっ!?」
「あっと悪い」
性的な刺激に身体中が敏感になっているところに、背中に何か硬いものがふにっと当たった。
それは……いつの間にやら硬く膨らんだユウロのペニス。それが、私の背中をぺちっと叩いた。
「ふあっあああぁぁあっ……♪」
身体におちんちんが触れたからか、興奮が一気に膨れ上がり……股間から少し潮を噴きだしながら、腰が痙攣する。
どうやら軽くイッてしまったみたいだ。少しの痙攣の後、力が抜ける。
「さて、すっきりしたみたいだしシャワーで流すぞ」
「ふぅ……う、うん……」
正直に言うと一回イッただけではそうすっきりはしない。まだまだ興奮状態は続いている。
とはいえ今はお風呂で身体を洗っているだけだ。ここは一旦落ち着いて、泡を流してもらう。
「さてと、これで大体流し終えたか……わっと!?」
「じゃあ次は私が身体を洗ってあげるね!!」
「お、おう……お手柔らかに……」
身体の泡を流し終えたので、今度は私が洗う番だ。
望んでいたとはいえ結構好き勝手にやられ、最終的にイかされたので、仕返ししてやろうと勢い強く椅子に座らせた。
そして背中を向かせた後、私はボディソープを自分の胸の毛に垂らして泡立て、背中にぺったりとくっつけて動く。
「ほーら……ん……力加減はどうですか旦那様ぁ?」
「わ、悪くないけど……その言い方といい、背中に当たる突起といい、これってもしかして……」
「もちろん自前のスポンジだよ……❤」
ガシッと腰を持ち、8の字を描くように胸を這わせて背中を洗う。
摩擦に加え先程揉みしだかれた事によってビンビンに勃っている乳首が背骨で擦れ、また愛液が漏れ出してしまう。
私は残念な事にそこまで胸が大きくはないが、毛皮のおかげでスポンジとしては機能しているはずだ。それに、ユウロに触れている事を敏感に感じてしまい、ますます興奮してしまう。
「んっさて次は前だね」
「流石に普通のスポンジでやるよな?」
「仕方ないからね。これじゃあ届かないし」
背中側は大体洗い終えたので、今度は前に回って身体の全面を洗う。
「わっ……立派なおちんちん……♪」
「……そりゃあ嫁にあんな事した挙句そんな事されたらな……勃起しない奴はインキュバスじゃねえよ」
前面に回った私の目に入る、今にも爆発しそうだと自己主張するいきり勃ったユウロのペニス。
股間から生えたそれは、座っているのにもかかわらず天に向かって硬く聳え立っている。
「じ、じゃあ身体を洗っていくね〜」
とりあえず『お楽しみ』は最後にして、胸元から順番にスポンジで洗って行く。
羊の魔物らしく毛深い私と違い、胸やお腹には目立った毛は生えていないユウロの肌。私好みだ。
「ほ、ほら、腕や足も伸ばして」
「おう……うひゃ!? やったなこの!」
「さっきの仕返しだよーだ」
もちろん足や腕も洗う。その途中、さっきの仕返しとして腋をつつーっと撫でた。
わりとユウロも腋は敏感なので、狙った通り裏返った声を発しながら跳ねた。
ちょっと悔しそうに睨んできたので、私は優越感に浸ったドヤ顔で返す。
「さて、じゃあ最後にここを……♪」
股間回り以外は洗い終えたので、最後に存在を主張している股間へと手を伸ばす。
ここはスポンジなんか使わない。もちろん、私の手で直に触る。
スポンジから泡を掬い、ゆっくりと、優しくペニスに触れた。
「う……ぁ……」
「まずは袋から洗うね♪」
一番汗ばんで垢が溜まりやすい……とかいう言い訳すらせず、明らかに性的な意思を含みながら優しく陰嚢を撫でる。
強過ぎると気持ち良さより痛みが勝ってしまうので力を入れ過ぎないようにしながらも、少しだけ緩急付けて刺激する。既に臨戦態勢に入っているからか、陰嚢は少し小さくなっている。
「竿の方も綺麗にするね〜♪」
「くぁ……ぅ……」
陰嚢に触れていないほうの手で陰茎を軽く握り、石鹸を潤滑油にしてしゅっしゅっと扱き始める。
根元から先端までを余す事無く、こちらも緩急を付けて大きく手コキする。
もちろん、今は実際にお風呂で身体を洗っている最中なので、カリ首や鈴口にも指で触れ、刺激ついでに汚れを落とす。
この十数年で身に付けた性技にユウロはもう骨抜きであり、先端からは止め処なく尿道なんたら液……つまり先走り液が漏れ出ている。
「ユウロだって洗えば洗う程汚しちゃってるね〜♪」
「ぐ……ぅ……や、やめ……も、もう……」
「もちろんやめないよ。ユウロだって止めなかったしね♪」
大きくビクビクと痙攣し始めたペニス。もうすぐ射精する合図だ。
気の抜けた喘ぎ声を漏らしているユウロの声に興奮を覚えながら、扱いている手をますます素早く動かした。
「ぐ……うぁぁ……」
「きゃっ♪」
そして、我慢の限界が訪れたようで……ペニスの先端から、白濁色の粘液を私の手の中に射精した。
本日初射精、そしてインキュバスであるユウロの射精量は普通の人より多いし勢いもある。なので、私の手のひらに収まりきらず、腕やお腹、胸にまで降り注ぐ。
「ははっ、折角綺麗にしたのにユウロ自身が私を汚しちゃったね」
「ふぅ……よく言う……掛かるように自分で角度調整してたじゃねえか」
「まあね。愛しの旦那様の精液を床に掛けるか自分に掛けるかだったら、間違いなく後者を選ぶのが魔物よ。近所の人達だって口を揃えてたから間違いないよ」
汚したと口では言ったが、実際にそうとは微塵も思っていない。
ユウロの精液を汚いものだなんて一切思っていない。むしろ、愛する人の精を最も強く感じられる、最高の御馳走だ。
手のひらに溜まった精液を舐め取った後、腕やお腹に掛かった精液を肌に滲み込ませるように伸ばす。こうする事でその精が薄くなるまでの間、いつでも夫に抱かれているような、幸せな気分になれるのだ。
「さて、このまま本番もしたいところだけど……まずはゆっくりと浴槽に入ろっか」
「そうだな。続きはベッドでな」
まだまだユウロのペニスは硬く元気なままだし、私の秘裂からもいやらしい液が溢れている。だからこのまま押し倒したいところだが、そうすると今までの経験やワーシープの特性上、二人ともお風呂場で寝てしまう事になるだろう。
魔物とインキュバスとはいえ、看病されるのが好きだからか冬にお風呂で寝てしまえば少しは風邪を引いてしまうし、なにより折角それ用に用意したベッドがもったいない。
という事で、火照る心と体を抑えながら、ゆっくりと浴槽に浸かる。過去に浴槽内でシた事もあるが、その時も寝てしまい危うく溺れそうになったのでそれ以降やらないようにしている。
「ふぅ〜……いい湯だねぇ……」
「だなぁ……今頃ドリーもお義父さんやお義母さんとお風呂に入っているのかなあ……」
「流石にもう出てるんじゃない? 身体洗いっこするだけで何十分も掛けてたしね」
「まあそうだな……」
という事で、互いに並び合いながらも、特に何かするわけでもなくゆったりとお湯に浸かる。
「ふぅ……」
「ん? どうした?」
「いやぁ……やっぱり身体が火照ってるなぁと」
「そっか……でももうちょっと入ってような」
お風呂場に響く音は、浴槽が波打つ音と私とユウロの声だけ。
普段はドリーの笑い声もあるが、今日は居ない。その分、少しだけシーンとしている。
「ねえユウロ」
「なんだ?」
「ドリーがこの前、妹が欲しいって言ったのよ」
「そうなのか?」
「うん……私も二人目、欲しいな……」
折角の二人きりなので、ちょっとした悩みを打ち明けた。
少し前に、ドリーが私に言ってきた妹が欲しいという願い。私だってそれを叶えてあげたい。
私には妹がいるが、私が物心つく前に生き別れたので、17歳の時、旅の途中でその妹と再会するまでずっと一人っ子のような状態だった。
そんな私もずっと妹が欲しいなと思っていた。やっぱり、一人よりは二人のほうが楽しいからだ。
結局今もその妹とは、定期的にあったりはしているが普段は離れて暮らしている。アマゾネスの妹にもアマゾネスとしての生活があるからだ。だから、今でもちょっと寂しいし、ずっと一緒の妹がいたらいいなと思っている。流石に人間でありもうすぐ60になってしまう両親には言えないけど。
ドリーもきっと同じ、一人っ子だから寂しいのだろう。私だってもっと子供は欲しいし、その願いを叶えたいのだ。
「……これからできたらいいな……」
「そうだね。今度は裏技を使わずに、二人目ができたらいいね……」
ドリーを産んでから8年。最低でも週5日以上は交わっているのに、発情期の時もそうでない時も欠かさず身体を重ねているのに、一向に子供ができる気配はない。
そもそもドリーの時だって、魔界の触手の森にある子宝宝樹の力を使ったからできたようなものだ。あれがなければドリーは今もこの世に居なかったかもしれない。
かといって、二人目も触手の力に頼る気はない。そもそもイクまでが一苦労どころじゃないし、なんだか裏技みたいな気が少しするからだ。
まあ、ワーシープなのでそこまでではないとはいえ、魔物化した事で人間より寿命は伸びた。その分子供ができるチャンスはあるし、慌てなくても良い。
でも、娘に言われたらやっぱりすぐにでも作ってあげたいし、欲しくなる。
「さてと、じゃあ二人目、作り始めるか!」
「……うん!」
その考えがユウロにも伝わったのか、そう言って、ザバッと勢い良く浴槽から立ち上がった。股間の肉棒は、相変わらず硬さを保ったままだ。
身体も程良く温まったし、お風呂の時間はこれで終わり。そして、お楽しみの時間だ。
「それにしてもやっぱり拭くのに時間掛かるなぁ……ドライヤーとかあればいいけど、この世界じゃなぁ……」
「これが毛深い系魔物共通の悩みなんだよねぇ……プロメもスズもいつも大変そうだったしね」
「ああ……あいつらワーウルフにウシオニだもんな……同じように旦那にも拭いてもらってるんじゃね?」
「かもね〜」
まあ、その前に沢山水分を吸った毛皮から水分を抜き取る作業があるわけだが。
流石にそのままでは重いうえベトベトでとてもじゃないが身体なんて重ねていられないから仕方ないのだ。
……………………
「ん……くちゅ……」
「ちゅ……んん……」
バスタオルで体を拭き、そのまま服を着ずタオルを巻いたまま寝室に入った私達。
身体を拭く間も少し互いの身体を刺激していたので、お風呂での興奮は一切醒めていない。秘所は濡れているし、ユウロの股間もいきり勃っている。それこそ前戯など必要ないぐらいだ。
とはいえ、まだ今日は軽いものですら唇を重ねていなかったので、ベッドの上でディープなキスを交わす。
舌を絡ませ、互いの唾液を交換し合う。ユウロの唾液は蕩けるような甘さを持ち、いくらでも飲めてしまう。
また、密着しているせいでお腹にペニスが当たっている。その事もあって、子宮が早くモノが欲しいと疼く。
「んぷ……よし、それじゃあサマリ、ベッドの上で四つん這いになってくれ」
「いいけど……なんだか今日は積極的だね」
「まあ、年末ぐらいはな。男としていつもリード握られているのも癪ってのもあるしな。それに……まあ、それはいいや。ほら早くさ」
長く深いキスを外し、さて今年最後の交わりはどのようにしようかと考えていたら、ユウロの方から四つん這いになれと言ってきた。
「わかった……じゃあ、挿れてね……❤」
「ああ」
普段は私が抱き付いて眠くなったところを襲っている事が多いので、ユウロの方から攻めてくるのは珍しい。よく考えてみても、毛皮を刈り取った後、自分の毛皮で出来たパジャマを着こんでてあまりそんな気がない時ぐらいだ。
別に嫌ではない……というか、積極的なユウロの態度に、私の本能が従えと言ってくるぐらい、自分でも乗り気だ。
という事で、私は言われた通りベッドの上に手と足をつき、股間の毛皮を魔力で消してお尻をユウロの前に突き出した。
「よし、挿れるぞ……」
「きてぇ……ふぁぁぁっ❤」
同じくベッドの上に乗ったユウロの手が私のお尻を掴み……ゆっくりとおまんこに挿入してきた。
硬くて大きくて熱いモノが私の体内に割って入る感覚に、私は自然と悦びの声をあげる。
「くぅ……何年経っても慣れたり飽きたりしないもんだな……」
「あっ、そ、そんなの当たり前だよ。だってぇ……あんっ❤ 愛に飽きなんてないもん♪」
「だな」
ミチミチと肉の割れ目を押し広げ、カリ首で引っ掻きながら侵入してくるユウロのペニス。
硬いでっぱりが私の膣を引っ掛ける度に、甘い快感が身体に流れ、喘ぎが漏れ出てしまう。
「あぁ……ひぁっ♪」
「はぁ、はぁ……相変わらず強い締め付けだな……」
ゆっくりと膣内を進んでいた肉棒の先端が、膣の奥を突いた。どうやら根元まで咥え込んだみたいだ。
じわぁと広がっていく熱と快感。もっとそれを強く得ようと、無意識のうちに膣を締め付ける。
「ユウロぉ……はぁん……♪」
薄い精の味が染みてくる。どうやらピュッピュッと先走り液が膣内に漏れ出しているようだ。
だが、高まった私の身体はこの程度ではなく、もっと濃いものを欲している。こんなのでは足りない。
早く濃厚な精を出してほしい。そう思った私は、自ら腰を前後に、左右に揺する。
「う……サマリ……サマリっ!!」
「ひゃうん❤ もっと、もっとぉ❤」
しばらくは動かずにいたユウロだが、自分が後背位で犯している事を思い出したのか、突如にして腰を大きく振り始めた。
不意の刺激に、私の身体に強い電流が……いや、快感が走る。
パンッパンッと、肉と肉が激しくぶつかる音が部屋に響き渡る。その音すら、私の興奮を高める材料になっている。
「む、ぐ、う、サマリ、射精すぞっ!!」
「はっ、あっ、あっ、ふぁっ、ぬぁ、ナカに、ナカに射精してぇぇぇっ❤」
ぐりぐりと子宮口に押し付けられる亀頭が、ビクビクと大きく跳ねた。
ユウロの宣言通り、もうすぐ射精する合図だ。
身体に掛けられるのも悪くはないが、やはりここは子宮内に射精して欲しいので、私は高らかに中出ししてと懇願した。
そしたらゆっくりと、カリが抜けそうになるまで腰を引き……
「ぐっ、があっ!」
「ひぎぃ、あああああっ❤ 」
一気に貫かれた。
子宮にドスンと襲った刺激。そして、脈動と共に注がれる濃厚な精液に、私の身体は一瞬硬直し、すぐにビクンビクンと自分の意思とは無関係に痙攣し始めた。
愛しい人の精を子宮に出されイッてしまった。一滴残らず搾り出そうと、自然と膣が締まる。
「ふあああああっ、あっ、あっ、イイのぉ……❤」
ユウロはインキュバスなので、射精時間も人間より長い。その間、私の身体はイキッぱなしだ。
腕で身体を支えられなくなり、顔がベッドに着く。垂れた涎がベッドのシーツに水溜りを作っている。
「うっ……あっ……ふぅ……」
「ふぁぁぁ……はぁ……♪」
長い射精も終わり、一息付く。
私の身体も痙攣を止め、全身の力が抜ける。それと同時に襲ってくる眠気。
一応、腰を支えられているのでお尻は上がっている。そのため結合は解かれていないし、硬いままのペニスも私の膣内に挿入されたままだ。
それでも、イッて力の抜けた身体では毛皮の魔力に強く抵抗できない。このまま寝落ちてしまう……かと思った。が……
「ほら、もう一回行くぞ」
「ひぎっ!? い、いきなり、ひあっ!」
息を整えていたのも束の間、いきなり胸を揉んできたかと思えば、今度は最初から激しく腰を振り始めたユウロ。
油断していたところに襲ってきた性的な快感は、私を目覚めさせるには充分だった。
「二人目、欲しいんだろ? だったら、まだまだ、出さないとな!」
「んひっ、んあっ、う、うん❤ 二人目欲しい❤ だからいっぱい射精してぇ❤」
ずちゅっ、ぐちゅっと、愛液と精液の混じったものが漏れ出す音が聞こえるぐらい激しいストロークに、悦びは再び高く登っていく。
ゴリゴリとGスポットを擦ってくるペニス。上の口も下の口も涎が止まらない。
「あっ、あっ、んあっ、ふひぃぁああぁっ……❤」
ずんずんと押し付けられる肉棒に、またまたイッてしまった私。目の前がチカチカし、身体がビクビクと震え、止まらない。
まともに喋る事ができず、舌は力無く口から垂れる。
「ふぃあぁあっ、しっぽっ! しっぽイイィィィィっ❤」
勢いを殺さないまま、一番敏感な性感帯である尻尾の付け根をきゅっと握られ、更にイキ狂う。
「おほぉぉ、あっ、あっ、あはああぁぁぁあっ……❤」
されるがままになっていたら、膣内に熱いモノが射出された。どうやらユウロもイッたようだ。
どくんどくんと射精されているのを全身で感じる。全身に快楽が廻っている。
結合部の隙間からプシュっと勢い良く潮が噴出し、ユウロの身体に掛かる。潮を噴きやすい体質だというのは自分でもわかっているが、やはりいつまで経っても恥ずかしいものだ。
「あふ……あっ……ひああっ!?」
「もういっちょ行くぞサマリ!」
1回目よりも長く感じた射精が終わるとほぼ同時に、再び腰を打ちつけ始めたユウロ。
食べてはいないはずなのに、タケリダケを食べたかの如く激しい。普段はそれこそタケリダケでも食べない限りここまで積極的に攻める事はないのに……これが俗に言う年末の魔物だろうか。
もはや私は、ただ悦びの声を上げる事と、身体を痙攣させるだけしかできない。愛する人の乱暴とも言える攻めを、ただ受け入れるだけだ。
「しゅ、しゅごひぃぃぃっ❤」
左手でお尻を持ち身体を支えながら、右手で尻尾を扱かれ、股間の剣で私の秘裂をぐちゃぐちゃに攻める。
尻尾を握る手は、たまに乳首や耳、腋など他の性感帯にも触れる。というか、お腹や角、背骨など、もはやどこを触られても頭がショートしてしまう。
自分の膣襞を摩擦するアツい猛りが為すがままに、私は天より高く登り、地面より低く落ちる、その繰り返しだ。
「あひっ、ふああああっ、んはっ、ああぁあ〜❤」
鏡が目に入る範囲にないのでわからないが、おそらく今の私はかなり酷い顔をしているだろう。
少なくとも目は焦点が合わなくなって何も見えていないし、口も開きっぱなしで恍惚の笑みが浮かびっぱなしだ。
性交……いや、もはや交尾と言える、理性も何もない獣のような激しい交わりだが、今の私には幸せ以外感じない。
「あぁんっ❤ ん゛あ゛〜っ❤ ん゛ぐぅぅぅぅっ❤」
股下のシーツには、どちらのものかわからなくなった液体が私の足を流れ落ち、水溜りが形成されている。
もはやまともに喋る事はできない。身体中ドロドロで、酷い性臭が立ち込める。
あまり好きじゃないのか、普段はそこまで触れられる事のないお尻の穴にも、細い棒状のもの……おそらく指が入れられ、直腸内をにゅぷにゅぷとマッサージしてくる。
頭が幸せピンク一色な私には、その全てが興奮を高める材料になっている。
もはや私は、犯されて善がり狂う一匹の雌に成り果てていた。
「あひぃぃ❤ びゅぅびゅぅでてるぅ❤ ユウロに孕まされりゅぅぅぅぅぅっ❤」
またまた激しく腰を震わしながら、大量の濃厚ザーメンがビュクビュクと子宮に注がれる。
嬉しいのと、気持ち良いのと、おいしいのと、いろんなものが混ざり、私を幸せにする。
すこしぽっこりと膨らむ私の子宮内を、元気で新鮮な精子が泳ぎ回る。
身体の振動と共に、今にもたぷたぷと音が聞こえてきそうだ。
これだけ射精されたが……もう幸せの絶頂だが、もっともっと欲しい。
「はぁ……はぁ……くっ、ぁぁ……」
「はうぅぅ……はれ?」
だが、ユウロのペニスが膣から抜け出てしまった。
空高く飛んでいた意識も、それを機にすとんと降りてきた。
「ユウロぉ……もっとぉ……」
「はぁ……わりぃサマリ……ちと休ませて……」
普段慣れない攻め側に回ったせいか、普段以上に早く体力が切れたようで、息を荒げながらベッドの上に寝転ぶユウロ。
互いの体液で濡れたペニスも少し柔らかくなっている。
「いやぁ……もっと欲しいよぉ……」
「頼むって……せめて日付が変わるまで……」
もっともっと欲しいと思ったところでの突然のお預け……流石に不満も出てくる。
しかし、確かにユウロが疲れているのもわかる。そのユウロが日付が変わるまでは休ませてと言ってきたので、いったい何分ぐらい休む気なのかと思い時計を見てみたら……
「……ってあれ? 日付が変わってる……」
「あ、本当だ」
時計の針は頂点を越え、既に12時15分。とうの昔に日付が、いや年が変わっていた。
「あけましておめでとう。という事で早速姫始めしようね❤」
「いや、ホントちょっと待っ……うあっ!」
もう日付が変わっていたので、休憩タイムも終了だ。
という事で、静止しようとするユウロの声を聞かず、私は少し柔らかくなってしまったペニスにしゃぶりついた。
「じゅっ、じゅぅ、ちゅぱ……大丈夫、今度は私がリードするからさ♪」
「わ、わかったよ……好きにしろ……」
尿道に残っていた精液を吸ったり、舌で竿や鈴口に付着した精液を舐め取っているうちに、硬さを取り戻したペニス。結局はユウロもヤる気満々なので、観念して止めるのを止めた。
舌に乗る精液をかみしめる。そういえば今日はフェラをしていなかったが、子供を作るためにはなるべく子宮に出して欲しいので、今日はこれぐらいにしておく。
という事で、私はいつものように寝転ぶユウロの上に乗り、腰をゆっくりと下ろす。
「んっ……でもなんでこんなに積極的だったの?」
白濁液をぽたぽたと零れ落としているおまんこを、血管が浮き出る程膨らんだペニスに宛がう。互いの粘液が触れる感触に声を漏らしながら、さっきまで積極的だった理由を尋ねる。
「ふぅぅ……言ったろ? 二人目作るぞって……」
「……うん、そうだね。じゃあもっと注いでもらわないとねぇ❤」
簡単な事だった。二人目を作るために、ユウロは頑張ってくれたのだ。
その想いに応える為にも、もっともっと精液を搾り出す為に、私はユウロのペニスを、自身の秘所で飲み込んだ。
「はぅっ……ふぁぁぁっ」
そのままユウロの上に軽く圧し掛かり、今度は自分のペースで、ゆっくりと腰を動かす。
「ぁっ、んっ……はぁんっ♪」
動かす度に、じわじわと広がっていく快感に、自然と声が漏れてしまう。
先程までの激しい交わりも良いが、毛がないならともかく、ワーシープとしては、やっぱりゆっくりねっとりとした動きのほうがあっている。
「っくぅ……サマリぃ……」
「ユウロぉ……んん……」
互いに求めあい、互いの名前を呼び合う。ただそれだけの事でも、幸せな雰囲気になる。
腰を振りながらも、身体を抱き寄せて、唇を塞ぐ。
「んっ……んふぅ……❤」
重なる前に行った接吻のように、互いの唾液を交換するように舌を絡める濃厚で厭らしい口づけを交わす。
身体を抱き寄せていない方の手でユウロの身体を撫でまわす。
毛皮の魔力が通じてきたのか、目がとろんとしてきたユウロも、ゆっくりと私の頭に手を伸ばし、撫でてくる。
初めてセックスした時も、頭を撫でられて嬉しかった。今も初めての時と同じだ。幸福感で胸がいっぱいになる。
「んんっ……んちゅぅ……んむっ❤」
キスをしたり、身体を撫で回している間も腰を振るのを止めてはいない。
ぬちゃっにちゃっと、一定のリズムを刻みながら抜き差しする。
さっきまでイッていた私は、それだけで身体がビクビクと跳ねる。
でも、それも一緒だ。気持ち良さにユウロも、腰を無意識に震わせている。
「ぷあっ……ひっ、あっ、ああっ❤」
「ぅぁ……ぅ……」
性的な反応はともかく、それ以外の反応が鈍くなってきたユウロ。
まぶたもほとんど閉じて、まどろんでいると言える状態だ。
そこまで毛皮が長くはないとはいえ、ワーシープに密着されながら気持ち良い事をしているので、当たり前といえば当たり前だ。
私はその逆で、精を絞り出そうと腰が勝手に動いてしまう。ゆったりしながらも大きく、快楽を膨らませて行く。
「サマ……リ……も……でる……」
「うんっ、いっぱい出してぇ……私を孕ませてぇ……❤」
膣内でぐちゃぐちゃにされているペニスが大きく震えた。もうすぐユウロが射精する合図だ。
それに合わせ、私の腰の動きも少し速くする。既にいっぱい入っているのに、ドロドロアツアツな白濁液を、早く食べさせてと貪欲な子宮が疼く。
それに応えるように、ユウロの腰が反射的にガクッと上に突いてきて……一番奥に射精した。
「ぅぁっ……!」
「ああぁぁ……❤」
子宮口にぺとっと鈴口が触れ、私も何度目かわからない絶頂に至る。
直接子宮内に注がれる精液を感じ、私は腰を痙攣させながら、ふわふわとした幸せを感じる。
「ふぅ…………はぁ…………」
「あふぅ……はぁ……」
ぽかぽかとした心地良さと共に、強い眠気が襲ってきた。ユウロに覆い被さるように、体重を預ける。
布団は掛けられそうにないが……その代わり、私の毛皮で温まってもらおう。これなら冬の夜も温かく寝られる。
瞼がゆっくりと閉じられ、視界が狭くなって行く……既に目を閉じているユウロの顔が、段々ぼやけてきた。
「おやすみ……ユウロ……」
「……ああ……おやすみ、サマリ……妹……できてたらいいな…………」
「う……ん……」
延ばされたユウロの手が、私の背に力無く触れた。
そのぬくもりを感じながら、私は初夢の世界に旅立つ。
愛しい人と繋がったまま、二人目ができる事を願いながら、私は眠りについたのだった……
「お母さん何作ってるの?」
「あ、ドリー。起きたのね」
「うん」
現在16時。
愛する夫に教えてもらった鼻歌を奏でながら料理をしていたら、お昼ご飯を食べ終わってお昼寝をしていたはずの愛娘、ドリーが後ろから声を掛けてきた。
私自身もそうだが、ドリーはもこもこの羊毛に身体を包まれた羊型の獣人系魔物、ワーシープだ。体毛の効果もあって普段なら日光が完全に無くなる夕方から夜頃まで日向で寝ているのだが、作っている物の良い匂いを嗅ぎつけたのか、今日はちょっと早く起きたようだ。
「それでお母さん何作ってるの? 何か練ってるけど……」
「ああこれ? これはお蕎麦って言う、ジパングの麺料理だよ。今日みたいな一年の終わりの日には年越し蕎麦って言うのを食べるのが習慣だったってお父さんが言ってたから、作ってみようかなと思ってね」
「へぇ〜」
蕎麦の香りがやはり気になるのか、何を作っているのか聞いてきたドリーに蕎麦を作っていると教える。
なんでも、ジパングに近い文化を持つ夫の出身地では年末には蕎麦を食べて年を越す習慣があるとの事で、折角だから我が家でもそれをやってみようという事になったのだ。
という事で年内最後の日である今日、こうして蕎麦作りを昼過ぎから行っていたのだ。
「おそば……私食べた事あったかなぁ?」
「んー……ドリーが産まれてからは一回だけカリンが持ってきてくれたものを食べた事があったと思うけど、まだ2歳にもなっていない頃だったから覚えてないんじゃない?」
「うん。覚えてない。美味しいの?」
「んー……私が作った料理で不味かった物ってある?」
「ない!」
この前、昔一緒に世界中を旅していた刑部狸のカリンが蕎麦の材料を持ってきてくれたので、一から作ってみている。作り方もその時カリンから聞いたので、よっぽどの事がなければ不味くはならないはずだ。
ただ一つ問題があり、蕎麦自体食べたのが相当昔で、味がうろ覚えというところだ。数週間前試しに作ってみようかとも思ったが、お父さんやお母さんも一緒に食べるとなると材料の残量が怪しくなるので試せていない。
まあそれでも、記憶を信じて味の調整はするつもりだ。作り方の手順はメモもあるし、そのメモに書かれている物はカリン自身が実際に作っておいしい物という話なので大丈夫だろう。
「という事で夜ご飯は楽しみにしててね」
「うん! あれ、そういえばお父さんは? ジパング料理を作ってる時はわりとお母さんと一緒に作ってるのに……」
「お父さんは今出掛けているよ。なんでもタクマ君が奥さんにプレゼントするもので悩んでいるらしくて、それの相談に乗りにね」
「そうなんだ〜」
ちなみに夫は現在外出中。義理の弟とも呼べる昔からの知り合いの相談に乗りに行っている。
たしかにドリーの言う通り、夫は普段料理ができない事もあってあまり手伝ってくれないが、ジパング料理の時は進んで手伝ってくれている。それなのに姿が見えなかったので疑問に思っていたのだろう。
「ただいまー」
「あ、お父さんの声だー♪」
「おっ噂をすれば帰ってきたみたいね」
なんて、夫の話をしていたら丁度帰ってきたみたいだ。
玄関の方から愛しの旦那の声がキッチンまで響いてきた。
段々大きくなってきた足音、そして……リビングの扉が、ガチャリと開かれた。
「ただいま。おっ良い匂いがする」
「おかえりユウロ。今は夕飯のお蕎麦を作っているところだよ」
「おかえりお父さん!」
扉の向こうから現れたのはもちろん、私の愛しの旦那、ユウロだ。
もう年齢は30を越えているが、かつての旅の途中で何度も魔界に行き、しかも王魔界まで訪れ、そして何より私との度重なる交わりを経てすっかりインキュバスになっているので、出会った10代の頃と何一つ変わらない姿をしている。
「思ったより早い帰りだったね。てっきり夕方頃になるかと思ってたよ」
「まあポータルが思った以上に空いていたってのもあるけど、それ以上にすんなりとプレゼントが決まったってのもあるな。たまたま立ち寄った1件目にピッタリな物があったんだよ」
「へぇ……まあでもそれなら良かったんじゃない? もうちょっとお話でもしてくるかと思ったよ。タクマ君は大事な弟なんでしょ?」
「まあ、ポータルのおかげでわりといつでも会いに行けるし、そもそもあっちはサプライズでプレゼントしたいらしくて、今日は隙を見て来ただけだからそこまで時間取れないんだとよ」
積もる話もあっただろうし、もう少しゆっくりと帰ってくるかと思っていたが、思った以上に早く帰ってきた。
言ってしまえば相手だってユウロの家族みたいなものだし、もうちょっとゆっくりしてきても良かったのにとは思う。とはいえ、ユウロと一緒にいる時間が長いほうが私としては嬉しいので別段困った事もない。むしろ内心嬉しかったりする。
「そうだったんだね。とりあえずお蕎麦はまだまだ完成まで掛かるから、今日は疲れただろうしゆっくりドリーと一緒に待っててよ」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな。アメリちゃんがこの村に作ってくれたポータル、便利とはいえ未だに転移魔術ってのは慣れないからわりと疲れるんだよな。じゃあドリー、ソファーの上でお父さんと一緒にお蕎麦を待ってようか」
「うん!」
何はともあれ、まずは今日の夕飯用に年越し蕎麦を作らねばならない。
ポータルを使ったから移動時間は無いに等しくても、魔術を一切扱えないユウロにとっては感覚が掴めない為使うだけでそこそこ疲れる代物だ。
いつものように手伝ってほしいと思うところもあるが、目を覚ましたドリーの相手もしてもらいたいので、休んでいてもらう事にしたのだ。
「さーて、じゃあ蕎麦作りの続きを……」
「あ、ちょっと待ってサマリ」
「ん? どうかしたの?」
ユウロも帰ってきた事だし、ちゃっちゃとお蕎麦を作ってしまおうと意気込んだところで、ユウロからストップを掛けられた。
一体どうしたのかと思って振り向いたら、出掛ける時に持って行った鞄を何やらがさごそと漁り始めて……
「んーと……あった。はいこれ。サマリにお土産っつうかプレゼント」
「え……何これ?」
取り出して渡された物は、カラフルな紙に包装された何かだった。
「まあ開けてみなよ」
「うん……わあっ! これってキッチンミトン? 可愛いじゃん!」
「この前ボロボロになってきたって言ってたし、丁度良いかなと思ったんだけど……」
「うん! ありがとうユウロ❤」
「お、おう……もう初キスから12年だけどやっぱ照れるな……」
包装を開けて、飛び出してきた物は……白い生地に小さな色とりどりの花の模様が描かれているキッチンミトンだった。
パンやグラタン、クッキーなんかを作る時に必須なキッチンミトンだが、今持っているのは結構ボロボロで中の綿が飛び出していた。
だから少し前から新しいの買わないとなと思っていたし、たしかに呟いたのだが……それをユウロが覚えていたらしく、こうして買って来てくれた。
今欲しかった物であることもそうだが、何よりも愛しい人からのプレゼントは嬉しい。私は喜びのあまり、ユウロに抱きついて頬にキスをした。
「ねーねーお父さん私には〜?」
「もちろんドリーにもお土産はあるよ。ほれ」
「わーいおおかみさんのぬいぐるみだー! ありがとうお父さん♪」
きちんとドリーにもお土産は買ってきていたようだ。
ユウロは再び鞄の中を漁ってデフォルメされた小さい狼のぬいぐるみを取り出し、ドリーに渡した。
ドリーも大喜びで、人形を掲げながら走り回っている。
「さてと、それじゃあ今度こそお蕎麦作りを再開しますか」
早速新しいミトンを使ってみたいところだが、今は年越し蕎麦作りの最中だ。なのでまずは蕎麦の完成を急ぐ事にした。
今は捏ねる工程を終え、四角く延ばす段階まで大体終えた。麺棒で薄く延ばし終えたので、次は生地を折り畳んで切るところだ。
打ち粉というものをたっぷりと塗し、左から右へ半分に折る。そしてまた塗し、下から上へと半分に折る作業を繰り返す。
「やあ、お邪魔しますよ」
「あ、お爺ちゃんとお婆ちゃん!」
「あ、お義父さんとお義母さん。すみませんもう少ししたらお呼びしようかと……」
「気にしなくて良いよユウロ君。なんだか早くドリーの顔を見たかったから来ちゃっただけだからね」
蕎麦の完成の目処が立ったら呼びに行こうとしていた両親が、どうやら孫の顔見たさに早めに来てしまったようだ。
まあそもそも同じ敷地内に家はある……というか、ここは離れみたいなものなのだから簡単に来れるし、別に早く来たからって困る事もないので構わない。でも折角だから蕎麦をなるべく早く作る事にしよう。
折り畳んで生地を八枚重ねにした状態で、右端から包丁を振り下ろす。太過ぎず、細過ぎない程の幅で均等に、垂直に押し出すように切っていく。
「みてみてお婆ちゃん! おおかみちゃん!」
「おやおや、可愛らしい狼ちゃんだね」
「お父さんに買ってもらったのかい?」
「そうだよお爺ちゃん! いいでしょー♪」
楽しそうに会話をする孫と祖父母。
賑やかな声を聞きながら、私は切った蕎麦を掬って、予めお湯を沸かしておいた鍋の中に入れ茹で始める。
一か所に固まらないように注意しながら入れた後、沸騰が始まったので軽く箸でかき混ぜる。
「あ、そうそう。一応お義父さん達にもお土産が……これです」
「おおっ! ありがとうユウロ君!」
「私達にもわざわざお土産を用意するだなんて……ほんと、ユウロ君みたいな優しい子がサマリの夫になってくれてよかったわ」
「いえいえどうもどうも……」
そこにユウロも混ざる。どうやら両親にも用意してあったお土産を渡したようだ。
蕎麦の方も茹であがったので、網で蕎麦を掬って水を張ったボウルに入れて冷やす。
「そろそろおそばもできたかなー?」
「どうだろうね、ちょっと様子を見てみようか」
「うん!」
そういってキッチンの方まで来たお母さんとドリー。
冷やして締めた蕎麦を洗ってぬめりを取ったところなので、蕎麦自体は丁度完成だ。
「お母さんおそばできたー?」
「とりあえず一玉分はできたよ。あと残ってる分も全部茹でて、汁を作って終わりかな」
「じゃあもうちょっと掛かりそうだね。それまで待っていようねドリー」
「うん!」
とはいえ、鍋やボウルのサイズの関係上、まだ全部やったわけではない。
それに、蕎麦を入れる汁もまだ作り終えていない。
という事で、まだもうちょっと掛かる事を二人に伝え、調理の続きに取り掛かり始めた。
「ふにふに……」
「ん〜くすぐったいよお婆ちゃ〜ん……」
「……こうして、娘が魔物になり、魔物の孫までいるだなんて、十数年前までは考えなかったよなぁ……」
「そうね……生き別れたもう一人の娘まで魔物になって再会できたりしたし、人生長生きしてみるものだねぇ……」
ドリーの耳や尻尾をふにふにと触りながら、物思いにふける両親。
私の母は普通の人間なので、魔物の娘と孫を持つ事に色々思うところもあるのだろう。
ちょっと耳を傾けつつ、鍋の中に残りの蕎麦を投入して茹でる。
そして、同時に別の鍋で汁を作り始める。
「魔物は恐ろしい存在だと思ってたけど、いざ自分の娘がそうなっても、全く怖くなかったからな……」
「んー? お爺ちゃんは私が恐いの?」
「全然。ドリーは目に入れても痛くない程可愛いよ」
「ドリーはもちろん、アメリちゃんを始め、サマリやツムリ、それに近所の魔物達と交流して、私達人間と同じなんだなって思うようになったわね……」
「やっぱり最初はそんな風に思うものなんですね……俺は魔物なんて空想上の生物でしかなかった世界に居たので、むしろそういうものだとしか思えなかったです」
そりゃあそうだ。両親は元々反魔物領の人間だったのだ。私が魔物にならなければ一生魔物と触れ合うことはなかっただろう。私だって旅に出る前にアメリちゃんと会わなければずっと魔物は苦手だったに違いない。
それは、魔物がいない世界で生まれ育ち、この世界に来た後も勇者をしていたユウロも同じだろう。
皆随分変わったものだなと思いながら私は汁を作るために鍋を取り出し、水、みりん、醤油、塩、そしてカリンから貰ったたぬたぬ雑貨印の和風だしを投入した。
ここからぐつぐつ煮て完成だ。初めてだし、そこまで本格的なものではないのでもうすぐできるだろう。
「ユウロ君の住んでいた世界……あまりいい話は聞かないけど、それでも一度は行ってみたいものだね」
「あーやっぱり異世界っていうのは気になるものですか?」
「それは勿論。とても大きな建物が沢山建っているとか絵が動く箱があるとか聞いたら見てみたいものよ」
「お父さんのおうち気になる〜」
そう、ユウロはこの世界で生まれたのではない。全く別の、魔物が一切居ない世界のニホンとか言う国で生まれたらしい。
知ったのはユウロの苦い思い出と共にだからそこまで行ってみたいとは思わないが……全く見知らぬ土地なのでちょっとは気になる。
気になっているところで、良い汁の匂いが漂ってきた。そろそろ汁も完成だ。
「まあ機会があればそのうちな……おっ、いい匂いが……」
「くんくん……ホントだー!」
汁のほうばかり見ていてはいけない。茹でていた蕎麦の様子を見る。
かき混ぜてみた感じ、丁度いい具合に茹で上がったみたいなので、網でボウルに移して全部冷やして洗う。
「お母さんもうできたー?」
「もうちょっとだよー! あと盛り付けー!!」
汁も指定時間煮込んだのでもう大丈夫だろう。
とはいえ、念のために蕎麦を1本つまみ、汁に付けて味見してみた。
「……うん、完璧!」
記憶の片隅にあった過去に食べたそれと、面も汁もほぼ同じ味がした。とにかくおいしい。
つまり、これで蕎麦は完成だ。器に盛り付けて皆のところに持って行こう。
「お待たせー。年越し蕎麦の完成だよー!」
「おおー!」
お盆の大きさの問題もあり流石に5人分は一気に運べないので、完成した蕎麦を半分ずつ皆がいるダイニングへ運ぶ。
一つ一つ運ぶ度に両親もユウロも美味しそうな匂いに目を輝かせている。ドリーに至っては珍しく涎まで垂れている程だ。
「それじゃあ食べようか。いただきまーす!」
『いただきます!』
全員分運び終えたので、冷めないうちに早速年越し蕎麦を食べる事にした。
両親やドリーはフォークを使って蕎麦を掬うように、私とユウロはジパングの食器である箸で食す。
ユウロが住んでいたニホンでは箸が主流だったので普通に使え、私はそんなユウロから箸の使い方を教えてもらった。
なんとなくではあるが、ジパング料理はジパングの食器を使って食べたほうが美味しく感じるというのと、ユウロと同じ物を使って食べたいと思ったから私は使い方を教えてもらい、今は完璧にマスターしたのだ。
「どう? 初めて作ったけどおいしい?」
「ちゅるる……おいしー!!」
「うん。記憶にある限りだけど……作ったのは初めてだし、最高とまでは言わねえけど……そこいらの市販品よりかはよっぽど美味いぜ」
「美味しいわよ。香りも良いし、口の中にそれが広がっていいわぁ」
「うん、やはり我が娘の料理は美味い!」
「もーお父さんったら……でもありがとう。お蕎麦おいしいね」
蕎麦を口に運び、それぞれが思い思いに感想を口にするが、そのどれもがおいしいというものだった。
これぞ作った甲斐があるというものだ。毎度言われていたって、大切な人達からのおいしいの声は、何よりも嬉しい。
「また作ってねお母さん!」
「もちろん!」
温かいお蕎麦を食べ、身も心も温まりながら年末の夕方を過ごすのであった……
……………………
「それじゃあお母さん、お父さん、おやすみー!」
「おやすみドリー」
「お爺ちゃん達に迷惑掛けちゃ駄目だからね!」
「大丈夫よ、ねえドリー?」
「うん! お婆ちゃん達といっぱい遊んで一緒に寝るだけだもん!」
「そうだね。それじゃあ行こうか。サマリもユウロ君もおやすみ」
「はい、おやすみなさいお義父さん」
現在21時。
蕎麦を食べ終わり、結構長い時間暖炉の前で談笑した後、ドリーはお母さん達と一緒に過ごす為に二人と一緒に母屋へと向かった。
そう、今から明日のお昼までは私とユウロの二人きりになるのである。
「さて、それじゃあ早速……❤」
「おい待て! まだここは外だぞ!? それにまだ先にやる事もあるだろ?」
「んっふふ〜❤」
両親とドリーが家の中に入っていくのを見送った後、私はこの後の事を思い浮かべ、ついユウロの股間へと手を伸ばす。
とはいえ、確かにここは外だ。雪こそ降ってはいないが、ユウロはとっても寒いだろう。
私は毛皮のおかげであまり寒くはないとはいえ、あまり他人に見られたくもないし、家の中のほうがいい事に間違いはない。
「全く……初めて会った時は下ネタに顔を赤らめるような女の子だったのになぁ……」
「まあ、確かにそうだけどさ……でもほら、今はもう長い間魔物だからね。歳だってそろそろ30になるし。それに愛する人とはずっと繋がっていたいもん」
「それって物理的にか?」
「やだなあ。全部に決まってるじゃん」
「……そっか。まあとりあえず中に戻ろうぜ」
「うん♪」
股間へと伸ばした手はそのままユウロの手と繋ぎ、二人仲良く部屋に入る。
やはりユウロは寒かったのか、その手はかなり冷たかった。
とはいえ、最愛の人の手なので嫌な気持ちは一切なかった。
「じゃあ明日のご飯の用意をしておくね」
「おう。そんじゃあ俺は風呂入れてくる」
家の中に戻り、ユウロはお風呂の準備を、そして私はまず明日のご飯の用意をし始めた。
きっと明日は起きても昼過ぎだろう。その後でドリーを迎えるのと新年の挨拶をしに母屋の方に行く予定であり、夕飯はお母さん達が作ってくれるのだが、お昼ご飯の用意をしている余裕はおそらくないので、今のうちに軽く食べられるものを作っておく。
「ふんふふ〜ん♪」
パンにレタスやスライストマトや焼いた卵などを挟む。つまりサンドイッチをテキパキと作る私。
一人2つずつ、同じ物を作らすもう一方は刻んだキャベツや焼いた鶏肉を挟む。ワーシープは草食とはいえ、元人間だからかそれとも動物の羊じゃなくて魔物だからか肉も問題無く食べられるのでこういうのもアリだ。
それを冷蔵庫(とユウロの世界では言うらしい保冷のルーンが刻まれた箱)の中に入れておけば、明日のお昼ご飯の問題はないだろう。
「よし、できた!」
「風呂も丁度入れ終わったぞ。もうやる事ないなら入るか?」
「う〜ん……」
こちらの準備が終わったとほぼ同時に、ユウロの方も済んだみたいだ。
という事でやり残した事を考える……洗濯物はとうの昔にしまったし、ドリーももう両親のところにいる、着替えも一応置いておいたし、ベッドメイキングも完璧……
「……うん、ないよ」
「そうか。俺ももうないし、早速入りに行こうか」
「そうだね♪」
色々と考えてみたものの、やはりもうやり残した事はない。
という事で早速二人でお風呂に入りに行く事にした。
「よっと……って、そんなにじろじろと見るなよ。恥ずかしいだろ?」
「えーいいじゃん今更。私達恋仲になってからもう10年以上経ってるんだからさ。今までだってほぼ毎日お互いの裸を見てるんだし」
「そうだけどさ、やっぱ恥ずかしいというか……」
「もう……まあ、そういうところも好きだけどね」
服を脱ぎ、お風呂に入ろうとする私達。毛皮に覆われているので肝心な部分は簡単には見えないとはいえ、下着ぐらい身に付けているので脱ぐものはある。
もちろん、ユウロと一緒に入るのでユウロも脱いでいる。
昔と変わらず、無駄にムキムキでもなくそれでいて細くもない、引き締まった身体をしているユウロ。かつては傷が付いていたり、虐待されていた痕なんかがあったりしたが、インキュバスになってそれも綺麗さっぱりと消えている。
そして、まだ小さいままだが何度も私の中を犯して気持ち良くしてくれているペニスも目に入る。やはり魔物としてこれは外せない。
ついうっとりと全身を舐めまわすように魅入っていると恥ずかしそうに身を捻ってきた。
大体の日はドリーともだが一緒に入っているし、既に何度も見ているので別に隠す程のものではないとは思うが……まあ、そういう意外と可愛らしいところも好きなので良しとしよう。
「流石に裸はちょっと寒いからすぐにでも浴槽に入りたいけど……」
「まずは頭や身体を洗わないとな」
「だね〜」
お風呂に入った私達は、寒いからお湯の張った浴槽……には入らずに、まずは身体の汚れを落とす事にした。
ちなみに、我が家のお風呂はそこそこ広く、シャワーと保温効果がある浴槽が完備されている。これは家を建てる時、自分達の妹のように仲の良いアメリちゃんというリリムの女の子の伝手でそういった建築技術を持つ魔物に頼んでもらったからだ。
おかげで入れたお湯はしばらく冷める事はないし、こうして大の大人二人が入っても不自由なく動けるのだ。
「んー、髪を始め全身の毛の量が増えてきて洗うの大変だなぁ……」
「でもまだ切る程でもないだろ? そこまで眠たそうにしてないし、毛皮を刈るのはまだいいよな?」
「うん。毛皮も大体旅してた頃と同じぐらいの長さだよ。寝ようと思えばすぐ寝れるけど、動いているうちは抗える程度ってとこ」
シャワーを頭から被り、シャンプーを泡立てて頭を洗う。
身体中の毛を刈るついでに髪の毛も切ったのがおよそ2ヶ月前。あまりロングは好きじゃないしワーシープだからか先端がウェーブ状になりもこもこして重くなるので女にしてはわりとすぐ切るが、そこそこ伸びたとはいえまだ切るには早い量だ。
それに、今は旅をしているわけじゃないから長くても短くても問題はない。どうせ刈るならもっともこもこになってからのほうが効率も良いし、売った時のお金も良い。
ちなみに、ワーシープウールはかなりの値段で売れるらしく、我が家の収入源の8割強は私とドリーの毛皮だったりする。そのうえ、ユウロだって働いて賃金を得ているので、我が家はそこそこ贅沢しても生活に困らないのだ。
「さてと、じゃあ次は背中を洗おうか。ほら背中向けて」
「え……うん。じゃあよろしく」
髪の毛及び角を洗い、シャワーで泡を落とす。
ユウロの方も同じように頭を洗い終わったので、じゃあ次は身体の方だと思い、背中を洗ってあげようと言おうとしたら先に言われてしまった。
まあ、洗ってもらうのは好きなので、ちょっと躓いたが気兼ねなく頼む事にした。
「どうだサマリ。強過ぎてないか?」
「うん、いい感じ。背中だけじゃなくて尻尾の方もお願いね」
「おう、任せろ」
既にシャワーで全身を濡らしてあるので、その状態からスポンジにボディソープを垂らして背中を洗ってもらう。
力強く、それでいて痛くない程度に動かされるスポンジは心地良い。
「あふ……」
「ん? 強く握り過ぎたか?」
「ううん大丈夫」
そして、尻尾を始め毛皮がある部分は手で直に洗ってくれている。
初めてという事でもない為、もこもことした毛皮でも問題無く洗えている。
尻尾は敏感なのを知っているからか特に丁寧に優しく洗ってくれている。気持ち良くて少し吐息が出てしまった。
「じゃあ次は前もお願いね」
「え? あ、ああ……」
「もう、これも今に始まった事じゃないのになに照れてるの?」
「そ、そうだけどさ……」
背中側を洗い終えたようなので、今度は正面側だ。ちょっと返事がしどろもどろとしているので、どうやら照れているようだ。
頭上から見下ろす形で後ろから洗ってくれるようで、足下に影ができた。おそらく真正面から胸や股間を見るのが恥ずかしいのだろう。
だが、後ろからは後ろからでなんだか襲われているみたいでちょっと興奮する。言ったら止めそうなので言わないが。
「んん……もっとゆっくりおっぱい洗っても良いんだよ?」
「あとでな。まずはスポンジで洗える部分だ」
「ちぇー」
「……やっぱ夜の生活というか性格は結構変わったよな。出会った当初じゃ胸揉めとか絶対言わなかったじゃんか」
「それはね……でも、胸でなくても、愛しの旦那様に身体を触れられていると安心するし嬉しいのが魔物の女の子なんですよーだ」
スポンジ越しに私の身体に触れるユウロの手。
特別に綺麗な手でもなく、かといって凄くごつくて大きいなんて事はないけど……それでも、私が一番大好きな手だ。
「わかったよ……それじゃあお望み通りに……!」
「んっ……なによ、乗り気じゃない感じを出しておきながらがっつり来るじゃない♪」
そして、前面の毛皮部分を直で洗い始めたユウロ。
手のひらに石鹸をつけ、胸部の毛皮をおっぱいごと撫でて洗う。
残念ながらそこまで大きなおっぱいではないが、ユウロが一番好きな大きさだと言ってくれるので今となっては不満はない。まあ、かつての旅仲間といい近所の人達といいちょっと胸が大きい人が多いので羨ましかったりする事もあるけど。
「あっ、んぅ……」
「洗ってるだけなのにそんな色っぽい声出すなって」
「んんっ、よく言うね……」
あまり乗り気ではなかったのはなんだったのか、少し勃っている乳首を指の腹で弾いて刺激したり、力強く洗うふりをして乳房を掴んで捏ねてくるユウロ。
流石に慣れたもので、私が感じるところを的確に刺激してくる。声は漏れ出し、身体を綺麗にしているはずなのに下半身が自身の分泌液で汚れ始めている。
「ほら、次はこっちだ」
「ふあぁ……♪」
胸への刺激を止め、今度は足の毛皮を両手で洗う。
ぎゅっぎゅと力を入れているので性的な刺激はそこまでないが、それでも先程までの興奮もあり感じてしまう。
両足の蹄もそのまま手で洗われる。普段は特に気にしないが、こうして直に指で触れられると、なんともこそばゆい。
「そういえば腕もまだだったな」
足が終わった後は腕……たしかに身体を洗うのだから腕もだが、なんだか焦らされている気分だ。
「さて、ここも綺麗にしないとな」
「ひあっ! きゅ、急に……ああっ」
なんて思っていたら、そのままの動きで既にスポンジで洗っていた腋を撫でてきた。
敏感な所への不意な刺激に、思わず身体が跳ねる。
「じゃあ最後はっと……」
「んんっ……あっ」
股下以外は泡だらけになったので、一番デリケートな部分に腕が伸びる。
秘所を隠すように覆う毛皮を丁寧に洗うユウロ。あえてその場所は避けているようだが、周りの敏感な所を不規則に刺激してくる。
「と、あとここも……ん?」
「ひゃうっ♪」
「なんだか石鹸にしては異様にぬるぬるしてるなぁ……」
「もう、わかってるくせにぃ……ふあっ♪」
そして、とうとう秘所に指を伸ばすユウロ。
今までの刺激で既にとろとろになっており、愛液が泡と一緒に滴り落ちている。
「おかしいなぁ……洗えば洗う程汚れてしまう……」
「ひあっ、んひゃ、ふぁぁ……」
割れ目に沿って激しく指を動かすユウロ。シャワーや浴槽とは違う水の音が、くちゅくちゅと風呂場に響き渡る。
もはや洗うというより愛撫をしているが、気持ち良くて止められない。というか止めたくない。
更に股間に伸びていないもう一方の手でまた胸を洗い始めた。2か所からの刺激に、腰が勝手に浮いてしまいそうになる。
「あっ、んはぁっ、ん……ひあっ!?」
「あっと悪い」
性的な刺激に身体中が敏感になっているところに、背中に何か硬いものがふにっと当たった。
それは……いつの間にやら硬く膨らんだユウロのペニス。それが、私の背中をぺちっと叩いた。
「ふあっあああぁぁあっ……♪」
身体におちんちんが触れたからか、興奮が一気に膨れ上がり……股間から少し潮を噴きだしながら、腰が痙攣する。
どうやら軽くイッてしまったみたいだ。少しの痙攣の後、力が抜ける。
「さて、すっきりしたみたいだしシャワーで流すぞ」
「ふぅ……う、うん……」
正直に言うと一回イッただけではそうすっきりはしない。まだまだ興奮状態は続いている。
とはいえ今はお風呂で身体を洗っているだけだ。ここは一旦落ち着いて、泡を流してもらう。
「さてと、これで大体流し終えたか……わっと!?」
「じゃあ次は私が身体を洗ってあげるね!!」
「お、おう……お手柔らかに……」
身体の泡を流し終えたので、今度は私が洗う番だ。
望んでいたとはいえ結構好き勝手にやられ、最終的にイかされたので、仕返ししてやろうと勢い強く椅子に座らせた。
そして背中を向かせた後、私はボディソープを自分の胸の毛に垂らして泡立て、背中にぺったりとくっつけて動く。
「ほーら……ん……力加減はどうですか旦那様ぁ?」
「わ、悪くないけど……その言い方といい、背中に当たる突起といい、これってもしかして……」
「もちろん自前のスポンジだよ……❤」
ガシッと腰を持ち、8の字を描くように胸を這わせて背中を洗う。
摩擦に加え先程揉みしだかれた事によってビンビンに勃っている乳首が背骨で擦れ、また愛液が漏れ出してしまう。
私は残念な事にそこまで胸が大きくはないが、毛皮のおかげでスポンジとしては機能しているはずだ。それに、ユウロに触れている事を敏感に感じてしまい、ますます興奮してしまう。
「んっさて次は前だね」
「流石に普通のスポンジでやるよな?」
「仕方ないからね。これじゃあ届かないし」
背中側は大体洗い終えたので、今度は前に回って身体の全面を洗う。
「わっ……立派なおちんちん……♪」
「……そりゃあ嫁にあんな事した挙句そんな事されたらな……勃起しない奴はインキュバスじゃねえよ」
前面に回った私の目に入る、今にも爆発しそうだと自己主張するいきり勃ったユウロのペニス。
股間から生えたそれは、座っているのにもかかわらず天に向かって硬く聳え立っている。
「じ、じゃあ身体を洗っていくね〜」
とりあえず『お楽しみ』は最後にして、胸元から順番にスポンジで洗って行く。
羊の魔物らしく毛深い私と違い、胸やお腹には目立った毛は生えていないユウロの肌。私好みだ。
「ほ、ほら、腕や足も伸ばして」
「おう……うひゃ!? やったなこの!」
「さっきの仕返しだよーだ」
もちろん足や腕も洗う。その途中、さっきの仕返しとして腋をつつーっと撫でた。
わりとユウロも腋は敏感なので、狙った通り裏返った声を発しながら跳ねた。
ちょっと悔しそうに睨んできたので、私は優越感に浸ったドヤ顔で返す。
「さて、じゃあ最後にここを……♪」
股間回り以外は洗い終えたので、最後に存在を主張している股間へと手を伸ばす。
ここはスポンジなんか使わない。もちろん、私の手で直に触る。
スポンジから泡を掬い、ゆっくりと、優しくペニスに触れた。
「う……ぁ……」
「まずは袋から洗うね♪」
一番汗ばんで垢が溜まりやすい……とかいう言い訳すらせず、明らかに性的な意思を含みながら優しく陰嚢を撫でる。
強過ぎると気持ち良さより痛みが勝ってしまうので力を入れ過ぎないようにしながらも、少しだけ緩急付けて刺激する。既に臨戦態勢に入っているからか、陰嚢は少し小さくなっている。
「竿の方も綺麗にするね〜♪」
「くぁ……ぅ……」
陰嚢に触れていないほうの手で陰茎を軽く握り、石鹸を潤滑油にしてしゅっしゅっと扱き始める。
根元から先端までを余す事無く、こちらも緩急を付けて大きく手コキする。
もちろん、今は実際にお風呂で身体を洗っている最中なので、カリ首や鈴口にも指で触れ、刺激ついでに汚れを落とす。
この十数年で身に付けた性技にユウロはもう骨抜きであり、先端からは止め処なく尿道なんたら液……つまり先走り液が漏れ出ている。
「ユウロだって洗えば洗う程汚しちゃってるね〜♪」
「ぐ……ぅ……や、やめ……も、もう……」
「もちろんやめないよ。ユウロだって止めなかったしね♪」
大きくビクビクと痙攣し始めたペニス。もうすぐ射精する合図だ。
気の抜けた喘ぎ声を漏らしているユウロの声に興奮を覚えながら、扱いている手をますます素早く動かした。
「ぐ……うぁぁ……」
「きゃっ♪」
そして、我慢の限界が訪れたようで……ペニスの先端から、白濁色の粘液を私の手の中に射精した。
本日初射精、そしてインキュバスであるユウロの射精量は普通の人より多いし勢いもある。なので、私の手のひらに収まりきらず、腕やお腹、胸にまで降り注ぐ。
「ははっ、折角綺麗にしたのにユウロ自身が私を汚しちゃったね」
「ふぅ……よく言う……掛かるように自分で角度調整してたじゃねえか」
「まあね。愛しの旦那様の精液を床に掛けるか自分に掛けるかだったら、間違いなく後者を選ぶのが魔物よ。近所の人達だって口を揃えてたから間違いないよ」
汚したと口では言ったが、実際にそうとは微塵も思っていない。
ユウロの精液を汚いものだなんて一切思っていない。むしろ、愛する人の精を最も強く感じられる、最高の御馳走だ。
手のひらに溜まった精液を舐め取った後、腕やお腹に掛かった精液を肌に滲み込ませるように伸ばす。こうする事でその精が薄くなるまでの間、いつでも夫に抱かれているような、幸せな気分になれるのだ。
「さて、このまま本番もしたいところだけど……まずはゆっくりと浴槽に入ろっか」
「そうだな。続きはベッドでな」
まだまだユウロのペニスは硬く元気なままだし、私の秘裂からもいやらしい液が溢れている。だからこのまま押し倒したいところだが、そうすると今までの経験やワーシープの特性上、二人ともお風呂場で寝てしまう事になるだろう。
魔物とインキュバスとはいえ、看病されるのが好きだからか冬にお風呂で寝てしまえば少しは風邪を引いてしまうし、なにより折角それ用に用意したベッドがもったいない。
という事で、火照る心と体を抑えながら、ゆっくりと浴槽に浸かる。過去に浴槽内でシた事もあるが、その時も寝てしまい危うく溺れそうになったのでそれ以降やらないようにしている。
「ふぅ〜……いい湯だねぇ……」
「だなぁ……今頃ドリーもお義父さんやお義母さんとお風呂に入っているのかなあ……」
「流石にもう出てるんじゃない? 身体洗いっこするだけで何十分も掛けてたしね」
「まあそうだな……」
という事で、互いに並び合いながらも、特に何かするわけでもなくゆったりとお湯に浸かる。
「ふぅ……」
「ん? どうした?」
「いやぁ……やっぱり身体が火照ってるなぁと」
「そっか……でももうちょっと入ってような」
お風呂場に響く音は、浴槽が波打つ音と私とユウロの声だけ。
普段はドリーの笑い声もあるが、今日は居ない。その分、少しだけシーンとしている。
「ねえユウロ」
「なんだ?」
「ドリーがこの前、妹が欲しいって言ったのよ」
「そうなのか?」
「うん……私も二人目、欲しいな……」
折角の二人きりなので、ちょっとした悩みを打ち明けた。
少し前に、ドリーが私に言ってきた妹が欲しいという願い。私だってそれを叶えてあげたい。
私には妹がいるが、私が物心つく前に生き別れたので、17歳の時、旅の途中でその妹と再会するまでずっと一人っ子のような状態だった。
そんな私もずっと妹が欲しいなと思っていた。やっぱり、一人よりは二人のほうが楽しいからだ。
結局今もその妹とは、定期的にあったりはしているが普段は離れて暮らしている。アマゾネスの妹にもアマゾネスとしての生活があるからだ。だから、今でもちょっと寂しいし、ずっと一緒の妹がいたらいいなと思っている。流石に人間でありもうすぐ60になってしまう両親には言えないけど。
ドリーもきっと同じ、一人っ子だから寂しいのだろう。私だってもっと子供は欲しいし、その願いを叶えたいのだ。
「……これからできたらいいな……」
「そうだね。今度は裏技を使わずに、二人目ができたらいいね……」
ドリーを産んでから8年。最低でも週5日以上は交わっているのに、発情期の時もそうでない時も欠かさず身体を重ねているのに、一向に子供ができる気配はない。
そもそもドリーの時だって、魔界の触手の森にある子宝宝樹の力を使ったからできたようなものだ。あれがなければドリーは今もこの世に居なかったかもしれない。
かといって、二人目も触手の力に頼る気はない。そもそもイクまでが一苦労どころじゃないし、なんだか裏技みたいな気が少しするからだ。
まあ、ワーシープなのでそこまでではないとはいえ、魔物化した事で人間より寿命は伸びた。その分子供ができるチャンスはあるし、慌てなくても良い。
でも、娘に言われたらやっぱりすぐにでも作ってあげたいし、欲しくなる。
「さてと、じゃあ二人目、作り始めるか!」
「……うん!」
その考えがユウロにも伝わったのか、そう言って、ザバッと勢い良く浴槽から立ち上がった。股間の肉棒は、相変わらず硬さを保ったままだ。
身体も程良く温まったし、お風呂の時間はこれで終わり。そして、お楽しみの時間だ。
「それにしてもやっぱり拭くのに時間掛かるなぁ……ドライヤーとかあればいいけど、この世界じゃなぁ……」
「これが毛深い系魔物共通の悩みなんだよねぇ……プロメもスズもいつも大変そうだったしね」
「ああ……あいつらワーウルフにウシオニだもんな……同じように旦那にも拭いてもらってるんじゃね?」
「かもね〜」
まあ、その前に沢山水分を吸った毛皮から水分を抜き取る作業があるわけだが。
流石にそのままでは重いうえベトベトでとてもじゃないが身体なんて重ねていられないから仕方ないのだ。
……………………
「ん……くちゅ……」
「ちゅ……んん……」
バスタオルで体を拭き、そのまま服を着ずタオルを巻いたまま寝室に入った私達。
身体を拭く間も少し互いの身体を刺激していたので、お風呂での興奮は一切醒めていない。秘所は濡れているし、ユウロの股間もいきり勃っている。それこそ前戯など必要ないぐらいだ。
とはいえ、まだ今日は軽いものですら唇を重ねていなかったので、ベッドの上でディープなキスを交わす。
舌を絡ませ、互いの唾液を交換し合う。ユウロの唾液は蕩けるような甘さを持ち、いくらでも飲めてしまう。
また、密着しているせいでお腹にペニスが当たっている。その事もあって、子宮が早くモノが欲しいと疼く。
「んぷ……よし、それじゃあサマリ、ベッドの上で四つん這いになってくれ」
「いいけど……なんだか今日は積極的だね」
「まあ、年末ぐらいはな。男としていつもリード握られているのも癪ってのもあるしな。それに……まあ、それはいいや。ほら早くさ」
長く深いキスを外し、さて今年最後の交わりはどのようにしようかと考えていたら、ユウロの方から四つん這いになれと言ってきた。
「わかった……じゃあ、挿れてね……❤」
「ああ」
普段は私が抱き付いて眠くなったところを襲っている事が多いので、ユウロの方から攻めてくるのは珍しい。よく考えてみても、毛皮を刈り取った後、自分の毛皮で出来たパジャマを着こんでてあまりそんな気がない時ぐらいだ。
別に嫌ではない……というか、積極的なユウロの態度に、私の本能が従えと言ってくるぐらい、自分でも乗り気だ。
という事で、私は言われた通りベッドの上に手と足をつき、股間の毛皮を魔力で消してお尻をユウロの前に突き出した。
「よし、挿れるぞ……」
「きてぇ……ふぁぁぁっ❤」
同じくベッドの上に乗ったユウロの手が私のお尻を掴み……ゆっくりとおまんこに挿入してきた。
硬くて大きくて熱いモノが私の体内に割って入る感覚に、私は自然と悦びの声をあげる。
「くぅ……何年経っても慣れたり飽きたりしないもんだな……」
「あっ、そ、そんなの当たり前だよ。だってぇ……あんっ❤ 愛に飽きなんてないもん♪」
「だな」
ミチミチと肉の割れ目を押し広げ、カリ首で引っ掻きながら侵入してくるユウロのペニス。
硬いでっぱりが私の膣を引っ掛ける度に、甘い快感が身体に流れ、喘ぎが漏れ出てしまう。
「あぁ……ひぁっ♪」
「はぁ、はぁ……相変わらず強い締め付けだな……」
ゆっくりと膣内を進んでいた肉棒の先端が、膣の奥を突いた。どうやら根元まで咥え込んだみたいだ。
じわぁと広がっていく熱と快感。もっとそれを強く得ようと、無意識のうちに膣を締め付ける。
「ユウロぉ……はぁん……♪」
薄い精の味が染みてくる。どうやらピュッピュッと先走り液が膣内に漏れ出しているようだ。
だが、高まった私の身体はこの程度ではなく、もっと濃いものを欲している。こんなのでは足りない。
早く濃厚な精を出してほしい。そう思った私は、自ら腰を前後に、左右に揺する。
「う……サマリ……サマリっ!!」
「ひゃうん❤ もっと、もっとぉ❤」
しばらくは動かずにいたユウロだが、自分が後背位で犯している事を思い出したのか、突如にして腰を大きく振り始めた。
不意の刺激に、私の身体に強い電流が……いや、快感が走る。
パンッパンッと、肉と肉が激しくぶつかる音が部屋に響き渡る。その音すら、私の興奮を高める材料になっている。
「む、ぐ、う、サマリ、射精すぞっ!!」
「はっ、あっ、あっ、ふぁっ、ぬぁ、ナカに、ナカに射精してぇぇぇっ❤」
ぐりぐりと子宮口に押し付けられる亀頭が、ビクビクと大きく跳ねた。
ユウロの宣言通り、もうすぐ射精する合図だ。
身体に掛けられるのも悪くはないが、やはりここは子宮内に射精して欲しいので、私は高らかに中出ししてと懇願した。
そしたらゆっくりと、カリが抜けそうになるまで腰を引き……
「ぐっ、があっ!」
「ひぎぃ、あああああっ❤ 」
一気に貫かれた。
子宮にドスンと襲った刺激。そして、脈動と共に注がれる濃厚な精液に、私の身体は一瞬硬直し、すぐにビクンビクンと自分の意思とは無関係に痙攣し始めた。
愛しい人の精を子宮に出されイッてしまった。一滴残らず搾り出そうと、自然と膣が締まる。
「ふあああああっ、あっ、あっ、イイのぉ……❤」
ユウロはインキュバスなので、射精時間も人間より長い。その間、私の身体はイキッぱなしだ。
腕で身体を支えられなくなり、顔がベッドに着く。垂れた涎がベッドのシーツに水溜りを作っている。
「うっ……あっ……ふぅ……」
「ふぁぁぁ……はぁ……♪」
長い射精も終わり、一息付く。
私の身体も痙攣を止め、全身の力が抜ける。それと同時に襲ってくる眠気。
一応、腰を支えられているのでお尻は上がっている。そのため結合は解かれていないし、硬いままのペニスも私の膣内に挿入されたままだ。
それでも、イッて力の抜けた身体では毛皮の魔力に強く抵抗できない。このまま寝落ちてしまう……かと思った。が……
「ほら、もう一回行くぞ」
「ひぎっ!? い、いきなり、ひあっ!」
息を整えていたのも束の間、いきなり胸を揉んできたかと思えば、今度は最初から激しく腰を振り始めたユウロ。
油断していたところに襲ってきた性的な快感は、私を目覚めさせるには充分だった。
「二人目、欲しいんだろ? だったら、まだまだ、出さないとな!」
「んひっ、んあっ、う、うん❤ 二人目欲しい❤ だからいっぱい射精してぇ❤」
ずちゅっ、ぐちゅっと、愛液と精液の混じったものが漏れ出す音が聞こえるぐらい激しいストロークに、悦びは再び高く登っていく。
ゴリゴリとGスポットを擦ってくるペニス。上の口も下の口も涎が止まらない。
「あっ、あっ、んあっ、ふひぃぁああぁっ……❤」
ずんずんと押し付けられる肉棒に、またまたイッてしまった私。目の前がチカチカし、身体がビクビクと震え、止まらない。
まともに喋る事ができず、舌は力無く口から垂れる。
「ふぃあぁあっ、しっぽっ! しっぽイイィィィィっ❤」
勢いを殺さないまま、一番敏感な性感帯である尻尾の付け根をきゅっと握られ、更にイキ狂う。
「おほぉぉ、あっ、あっ、あはああぁぁぁあっ……❤」
されるがままになっていたら、膣内に熱いモノが射出された。どうやらユウロもイッたようだ。
どくんどくんと射精されているのを全身で感じる。全身に快楽が廻っている。
結合部の隙間からプシュっと勢い良く潮が噴出し、ユウロの身体に掛かる。潮を噴きやすい体質だというのは自分でもわかっているが、やはりいつまで経っても恥ずかしいものだ。
「あふ……あっ……ひああっ!?」
「もういっちょ行くぞサマリ!」
1回目よりも長く感じた射精が終わるとほぼ同時に、再び腰を打ちつけ始めたユウロ。
食べてはいないはずなのに、タケリダケを食べたかの如く激しい。普段はそれこそタケリダケでも食べない限りここまで積極的に攻める事はないのに……これが俗に言う年末の魔物だろうか。
もはや私は、ただ悦びの声を上げる事と、身体を痙攣させるだけしかできない。愛する人の乱暴とも言える攻めを、ただ受け入れるだけだ。
「しゅ、しゅごひぃぃぃっ❤」
左手でお尻を持ち身体を支えながら、右手で尻尾を扱かれ、股間の剣で私の秘裂をぐちゃぐちゃに攻める。
尻尾を握る手は、たまに乳首や耳、腋など他の性感帯にも触れる。というか、お腹や角、背骨など、もはやどこを触られても頭がショートしてしまう。
自分の膣襞を摩擦するアツい猛りが為すがままに、私は天より高く登り、地面より低く落ちる、その繰り返しだ。
「あひっ、ふああああっ、んはっ、ああぁあ〜❤」
鏡が目に入る範囲にないのでわからないが、おそらく今の私はかなり酷い顔をしているだろう。
少なくとも目は焦点が合わなくなって何も見えていないし、口も開きっぱなしで恍惚の笑みが浮かびっぱなしだ。
性交……いや、もはや交尾と言える、理性も何もない獣のような激しい交わりだが、今の私には幸せ以外感じない。
「あぁんっ❤ ん゛あ゛〜っ❤ ん゛ぐぅぅぅぅっ❤」
股下のシーツには、どちらのものかわからなくなった液体が私の足を流れ落ち、水溜りが形成されている。
もはやまともに喋る事はできない。身体中ドロドロで、酷い性臭が立ち込める。
あまり好きじゃないのか、普段はそこまで触れられる事のないお尻の穴にも、細い棒状のもの……おそらく指が入れられ、直腸内をにゅぷにゅぷとマッサージしてくる。
頭が幸せピンク一色な私には、その全てが興奮を高める材料になっている。
もはや私は、犯されて善がり狂う一匹の雌に成り果てていた。
「あひぃぃ❤ びゅぅびゅぅでてるぅ❤ ユウロに孕まされりゅぅぅぅぅぅっ❤」
またまた激しく腰を震わしながら、大量の濃厚ザーメンがビュクビュクと子宮に注がれる。
嬉しいのと、気持ち良いのと、おいしいのと、いろんなものが混ざり、私を幸せにする。
すこしぽっこりと膨らむ私の子宮内を、元気で新鮮な精子が泳ぎ回る。
身体の振動と共に、今にもたぷたぷと音が聞こえてきそうだ。
これだけ射精されたが……もう幸せの絶頂だが、もっともっと欲しい。
「はぁ……はぁ……くっ、ぁぁ……」
「はうぅぅ……はれ?」
だが、ユウロのペニスが膣から抜け出てしまった。
空高く飛んでいた意識も、それを機にすとんと降りてきた。
「ユウロぉ……もっとぉ……」
「はぁ……わりぃサマリ……ちと休ませて……」
普段慣れない攻め側に回ったせいか、普段以上に早く体力が切れたようで、息を荒げながらベッドの上に寝転ぶユウロ。
互いの体液で濡れたペニスも少し柔らかくなっている。
「いやぁ……もっと欲しいよぉ……」
「頼むって……せめて日付が変わるまで……」
もっともっと欲しいと思ったところでの突然のお預け……流石に不満も出てくる。
しかし、確かにユウロが疲れているのもわかる。そのユウロが日付が変わるまでは休ませてと言ってきたので、いったい何分ぐらい休む気なのかと思い時計を見てみたら……
「……ってあれ? 日付が変わってる……」
「あ、本当だ」
時計の針は頂点を越え、既に12時15分。とうの昔に日付が、いや年が変わっていた。
「あけましておめでとう。という事で早速姫始めしようね❤」
「いや、ホントちょっと待っ……うあっ!」
もう日付が変わっていたので、休憩タイムも終了だ。
という事で、静止しようとするユウロの声を聞かず、私は少し柔らかくなってしまったペニスにしゃぶりついた。
「じゅっ、じゅぅ、ちゅぱ……大丈夫、今度は私がリードするからさ♪」
「わ、わかったよ……好きにしろ……」
尿道に残っていた精液を吸ったり、舌で竿や鈴口に付着した精液を舐め取っているうちに、硬さを取り戻したペニス。結局はユウロもヤる気満々なので、観念して止めるのを止めた。
舌に乗る精液をかみしめる。そういえば今日はフェラをしていなかったが、子供を作るためにはなるべく子宮に出して欲しいので、今日はこれぐらいにしておく。
という事で、私はいつものように寝転ぶユウロの上に乗り、腰をゆっくりと下ろす。
「んっ……でもなんでこんなに積極的だったの?」
白濁液をぽたぽたと零れ落としているおまんこを、血管が浮き出る程膨らんだペニスに宛がう。互いの粘液が触れる感触に声を漏らしながら、さっきまで積極的だった理由を尋ねる。
「ふぅぅ……言ったろ? 二人目作るぞって……」
「……うん、そうだね。じゃあもっと注いでもらわないとねぇ❤」
簡単な事だった。二人目を作るために、ユウロは頑張ってくれたのだ。
その想いに応える為にも、もっともっと精液を搾り出す為に、私はユウロのペニスを、自身の秘所で飲み込んだ。
「はぅっ……ふぁぁぁっ」
そのままユウロの上に軽く圧し掛かり、今度は自分のペースで、ゆっくりと腰を動かす。
「ぁっ、んっ……はぁんっ♪」
動かす度に、じわじわと広がっていく快感に、自然と声が漏れてしまう。
先程までの激しい交わりも良いが、毛がないならともかく、ワーシープとしては、やっぱりゆっくりねっとりとした動きのほうがあっている。
「っくぅ……サマリぃ……」
「ユウロぉ……んん……」
互いに求めあい、互いの名前を呼び合う。ただそれだけの事でも、幸せな雰囲気になる。
腰を振りながらも、身体を抱き寄せて、唇を塞ぐ。
「んっ……んふぅ……❤」
重なる前に行った接吻のように、互いの唾液を交換するように舌を絡める濃厚で厭らしい口づけを交わす。
身体を抱き寄せていない方の手でユウロの身体を撫でまわす。
毛皮の魔力が通じてきたのか、目がとろんとしてきたユウロも、ゆっくりと私の頭に手を伸ばし、撫でてくる。
初めてセックスした時も、頭を撫でられて嬉しかった。今も初めての時と同じだ。幸福感で胸がいっぱいになる。
「んんっ……んちゅぅ……んむっ❤」
キスをしたり、身体を撫で回している間も腰を振るのを止めてはいない。
ぬちゃっにちゃっと、一定のリズムを刻みながら抜き差しする。
さっきまでイッていた私は、それだけで身体がビクビクと跳ねる。
でも、それも一緒だ。気持ち良さにユウロも、腰を無意識に震わせている。
「ぷあっ……ひっ、あっ、ああっ❤」
「ぅぁ……ぅ……」
性的な反応はともかく、それ以外の反応が鈍くなってきたユウロ。
まぶたもほとんど閉じて、まどろんでいると言える状態だ。
そこまで毛皮が長くはないとはいえ、ワーシープに密着されながら気持ち良い事をしているので、当たり前といえば当たり前だ。
私はその逆で、精を絞り出そうと腰が勝手に動いてしまう。ゆったりしながらも大きく、快楽を膨らませて行く。
「サマ……リ……も……でる……」
「うんっ、いっぱい出してぇ……私を孕ませてぇ……❤」
膣内でぐちゃぐちゃにされているペニスが大きく震えた。もうすぐユウロが射精する合図だ。
それに合わせ、私の腰の動きも少し速くする。既にいっぱい入っているのに、ドロドロアツアツな白濁液を、早く食べさせてと貪欲な子宮が疼く。
それに応えるように、ユウロの腰が反射的にガクッと上に突いてきて……一番奥に射精した。
「ぅぁっ……!」
「ああぁぁ……❤」
子宮口にぺとっと鈴口が触れ、私も何度目かわからない絶頂に至る。
直接子宮内に注がれる精液を感じ、私は腰を痙攣させながら、ふわふわとした幸せを感じる。
「ふぅ…………はぁ…………」
「あふぅ……はぁ……」
ぽかぽかとした心地良さと共に、強い眠気が襲ってきた。ユウロに覆い被さるように、体重を預ける。
布団は掛けられそうにないが……その代わり、私の毛皮で温まってもらおう。これなら冬の夜も温かく寝られる。
瞼がゆっくりと閉じられ、視界が狭くなって行く……既に目を閉じているユウロの顔が、段々ぼやけてきた。
「おやすみ……ユウロ……」
「……ああ……おやすみ、サマリ……妹……できてたらいいな…………」
「う……ん……」
延ばされたユウロの手が、私の背に力無く触れた。
そのぬくもりを感じながら、私は初夢の世界に旅立つ。
愛しい人と繋がったまま、二人目ができる事を願いながら、私は眠りについたのだった……
14/12/31 23:52更新 / マイクロミー