読切小説
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てのひらを闇の太陽に
むかーしむかしのおはなし。

とある小さな国に、それはそれはとても強い、太陽のような輝くオレンジ色の髪と空のように透き通った蒼い瞳を持った女性の勇者様がいました。

その勇者様が光り輝く聖剣を一振りすれば、悪い人達はみんな敵わず倒されます。

また勇者様が自慢の魔術をひと度使えば、恐ろしい魔物達はみんなおとなしくなります。

でも勇者様は、ただ強いだけではなく、とっても優しい女性でした。

優しい勇者様は、どんなに悪い人や恐ろしい魔物達が相手でも、その命を奪う事は一度としてありませんでした。

こらしめた後に改心させ、必ずその太陽みたいな朗らかな笑みと空のような広い心で許していました。



そんな優しい勇者様は国の子供達に大人気でした。

勇者という忙しく高貴な身分でありながらも、暇さえあれば国の子供達と遊んであげていました。

国の子供達に危険が迫れば、たとえ王様からの他の依頼があってもそれを投げ出してまで子供達を助けに向かってました。

勇者様は子供達が、子供達の笑顔が大好きなのです。

また、遊んでもらった子供達は、みんな勇者様が大好きでした。

危険から護ってもらった子供達は、みんな勇者様に憧れました。

勇者様は、村の子供達みんなから尊敬されていました。

そんな勇者様とずっと一緒にいたいと想う子供もいました。



ですが、そんな子供達に大人気な勇者様を良く思っていない人がいました。

それは、この小さな国の王様です。

王様からしてみれば、国で一番偉い自分の依頼を投げ出してまで子供達を危険から助けに行く事を不快に感じていました。

また、自分よりも人気がある勇者様に嫉妬していました。

なので、王様は嫌がらせとして勇者様にいろいろと無理難題を押し付けてきました。

でも、勇者様はその無理難題を難なくこなしていきました。

その活躍によって勇者様の人気はますます上がり、王様の気分はますます悪くなっていきました……


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「ふぅー……やっとここまで来ることができた……」

辺りを見渡すと、大地は乾き、草木は枯れ、家が崩壊し、あちこちに餓死した動物の死骸が転がっている。
ここには昔、村があった。けれども今は誰も住んではいない。
何故ならば、約10年前にこの元村のどこかに一般的には危険なあるものが現れそれを封印したため、住民達は皆この村から避難したからだ。

こんな生物の気配が一切無い荒れ果てた場所に、僕は1人でいる。

何故こんな場所にいるのかというと、僕はこの近くにあるその封印されたものを探しに来たのだ。
危ないから封印されているのだ。そんなものを探しに行くと他人に言えるわけが無い。だから僕は1人でいる。

ちなみに、封印されているものは、僕にとっては危ないものという認識は全く無い。
それどころか、封印されているのは僕にとっては憧れの存在、とても大切なものなのだ。
だから僕は封印を解きに来た。

それは、決して許される事ではないとわかっていながらだ。

僕は自分の力だけで封印されている場所を調べた。
そして、この村の存在にたどり着いたのである。

「えーっと、確かここら辺に緑色に光る小さな水晶があるはずなんだよな…」

どうやら大切なものは特殊な水晶から発生する結界を使って封印されているらしい。
そして、封印を解くにはその水晶を壊せばいいらしい。
なのでその水晶を見落としが無いように村の隅々まで探す。
それこそ今にも崩れそうな家の中や動物の死骸の下までもだ。

「ん?…なんだろこれ……」

村の中央広場だったと思われる広い場所の一角に、とても小さな小屋が建てられていた。
村がこんなに酷い状態であるのにも関わらず、その小屋は綺麗な状態を保っていた。
さらに、その小屋の裏側には石の壁があった…他の壁と比べるとあからさまに高さや丈夫さが違う不自然な壁が。
どうやら壁で四方を囲っているようだ。誰がどう見ても怪しい。

壁を触ってみた。触った感じでは普通の壁だった。
なので今度は小屋の中を覗いてみた。

「………あっ、あった!」

すると、中には緑色に光る飴玉のような大きさの水晶が大事そうに置かれていた。
おそらく目当ての水晶だろう。案外簡単に見つける事が出来た。

僕はその水晶を手に持って…

「………えいっ!!」

パリィィィン…

地面に勢いよく叩きつけた。

その結果、思ったよりも大きな音を出しながら水晶は砕け散った。
瞬間、小屋の裏側にあった壁全体に亀裂が走り、音もなく崩れ落ちた。やはりこの壁が結界だったようだ。

その壁の向こう側には空間があった。

その空間に、1人ぽつんと女性らしきものが空をぼーっと眺めながら『浮いて』いた。

その女性は真っ黒な長く真っ直ぐな髪に漆黒の瞳をしていて、服らしき物は何も身に付けていない。
その代わり、身体の大事な部分は最低限黒い触手みたいなものが覆い隠している。
その黒い触手は、女性が跨がっている暗黒の不気味な球体から伸びていた。

これらの特徴を持つ危険なもの…つまり『ダークマター』が結界の中で佇んでいた。

「やっぱりここに居ましたか……お久し振りです、勇者プローネさん。貴女は憶えていないと思いますが、僕は昔盗賊から貴女に助けてもらった子供です」

僕の言葉が聞こえたらしく、ずっと空を眺めていた彼女がこっちを向いた。
その顔は、子供だった時に盗賊に襲われた僕を助けてくれた、僕が子供の頃から憧れて、そしてずっと仲間として一緒に居たいと想っていた人物の顔だった。
そう、ある日王様からの命令でダークマターを討伐しに行き、死んだとされた女勇者、プローネさんそのものだったのだ……


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ある日、勇者様は王様に呼び出され、ある依頼をされました。

その内容は、この国の外れにある村に急に出現した魔物を殺せというものでした。

しかし、優しい勇者様は魔物であっても殺したくはないと断ろうとしました。

ですが、王様は勇者様が大嫌いです。断ろうとした勇者様に絶対的権力という名の脅しを叩きつけて断れなくしてしまいました。

仕方がないので王様の依頼を了承した勇者様は魔物の討伐に向かう事にしました。

王様の言い分から魔物は何も悪いことをしていないと考えた勇者様は、討伐に向かいながらもどうにかして魔物をこっそり逃がそうと考えていました。

そのため、勇者様は余り闘う準備をせずに出発したのです。

だけど、これは勇者様を亡きものにしようとした王様の罠でした。だから王様はどんな魔物かを言わなかったのです。



目的の村に着いた勇者様は早速魔物を探し始めました。

そして、村の中央でその魔物を見つけ、その姿を見て愕然としました。

村に現れた魔物。それは本来この反魔物国には絶対いるはずの無い魔物。

その魔物の姿は、裸の女性が黒い魔力の塊に跨がって、その塊からウネウネと動く細長い触手みたいなものがでているというもの。

つまり、本来は魔界にしかいないはずの闇の太陽、ダークマターでした。

この国は反魔物国家ですが、実はこの村のすぐ近くに魔物達が住む集落がひっそりと存在しており、魔力の溜まり場が出来ていました。

その溜まり場で、偶発的にダークマターが産まれ、この村まで流れてきたのです。

産まれたばかりのそのダークマターは、勇者様を見るや何故かいきなり襲い掛かりました。

魔物がダークマターと知らなかった勇者様は、闘う準備を余りしていなかった事もあり、あっという間に追い詰められてしまいました。

そして、勇者様は力尽きてダークマターの触手みたいなものに捕まってしまったのです。

触手は勇者様の着ていた服や鎧等を簡単に剥ぎ取り、瞬く間に裸にしてしまいました。

そして勇者様の全身を触手が弄り始めました。

勇者様は最初こそ抵抗しましたが、次第に触手が与える快感になすすべがなくなってきます。

その人外がもたらす快感に、そのうち勇者様は自ら触手を受け入れるようになりました。

自分の股をダークマターの球体にくっつけ、手足や背筋や胸やお尻…それこそ全身を黒い触手に犯されている勇者様の顔は、ダークマターの女体部が浮かべる表情と同じように蕩けていました。

快感の波にもみくちゃにされ、思考がとろとろになり、何度も絶頂を繰り返す勇者様。

そのうち頭の中が真っ白になり、黒が迫ってきて、同調して、『あなた』と『わたし』がまざりあって……………

勇者様の意識が戻ってきた時には、もう勇者様は人では無くなっていました。

勇者様の自慢のオレンジの髪や蒼い瞳は、闇のような真っ黒になり、下半身には魔力の塊である黒い球体がありました。

勇者様は、魔物に…ダークマターになっていました。

そして、勇者様だったダークマターの周りにはいつの間にか壁が出来ていました。

空が見えるので浮かんで出ようとしましたが、見えない天井でもあるのか壁より上に行く事ができません。

何故さっきまでは無かった壁がいきなり出現したのか……

それは、その壁は、勇者様を嵌めた王様が教団に依頼して遣わされた4人の魔法使いが造り出した結界でした。

4人の魔法使い達は、隠れながらダークマターだけを封印するつもりでしたが、勇者様がダークマターと一体化しそうだったので仕方なく一緒に封印しました。

これにより、王様の企みは成功してしまったのです。

勇者様だったダークマターは、自力での脱出が不可能だと悟ると、一切の行動を停止しました。魔力の補給が出来ないこの状況で、少しでも長く生き続けるために。

そんなダークマターは、唯一外の様子がわかる空を見ながら、ただ時が流れていくのをぼーっと感じていました……


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「あはぁ♪オトコノコだあ♪」

僕の事を認識したプローネさんは、僕の身体に黒い球体から出る触手を絡ませてきた。
僕以外は何も映してはいない瞳、まるで獲物を狩るような目付き、単純な言動から察するに、理性は無く本能で動いているようだ。
無理もない。約10年も魔力を補給出来ない状況だったのだ。普通に生きているのが不思議だ。

「ねぇ、イッショになろ♪」

触手で僕を黒い球体の中に引きずり込もうとしてきた。
僕は抵抗しない。こうなる事は予想出来ていた。
むしろこうなる事を望んでいた。

僕が球体の中に入れられた瞬間、逆に黒い球体が僕の中に入ってくる感覚がした。






気付くと、僕は真っ暗な空間に居た。
おそらくだけど、ここはダークマターの黒い球体の中…というより、ダークマターの中だろう。
僕の中に、大きな欲望…性欲が湧きあがってくる。
全身が闇に犯されている感覚がする。そして、自分が変えられている感覚がする。


でも嫌では無い。


ダークマターの膨大な魔力を僕に流し込み、インキュバスにされているだけだ。
僕は、プローネさんが言ったとおり、一緒にされているのだ。



つまり、憧れだったプローネさんとずっと一緒に居られるようになるのだ。喜びこそすれど嫌がる理由は無い。



ダークマターの魔力が僕の中に侵入してくればくるほど、僕の力や男性器が漲ってくる。
それと同時に、僅かながら他のものが流れ込んでくる。
王様に嵌められたときの悔しさ…外に出る事が出来ないとわかった悲しさ…そして、やっと自分以外の人に出会えた嬉しさ…
つまり、プローネさんの心が流れ込んでくる感じがした。

彼女の心を感じ取りながら、僕は目を瞑り、魔力の流れに身を任せた……






「んっ♪ねえおきて…わたしに…いっぱいダして♪」

ふいにプローネさんの声が聞こえたので僕は目を開けた。
先程とは違い、目の前には少し不気味な空が広がっていて、視界の淵には荒れ果てた村と不規則に跳ねているプローネさんが見えた。
プローネさんが跨っていた球体はきっと全部僕の中に入ったのだろう。黒い触手みたいなものは彼女の身体を覆っては無く、彼女の乳首が胸が跳ねあがるたび見える。

そういえば下半身に熱を感じる。自分から出ている熱と、それを包み込むような熱との二種類の熱を。
それに何かが乗っているのだろうか?身体が思うように動かない。
何だろうと思い顔をあげて下半身の方を見てみたら……

「あっ♪ねぇ……はやくダしてよ♪」

もうすでにプローネさんが僕の陰茎を自分の女性器に挿入れて腰を振っていた。どうりで彼女が跳ねているわけだ。
グチュグチュと卑猥な音を鳴らしながら、膣内に収めた僕の陰茎をまさしく貪っている。
その行為を認識したためか、すぐさま射精感が込み上げてきた。

「もうでるのね♪いっぱいダしてね♪」

僕がもう射精しそうなのを感じ取ったらしく、蕩けた笑みを浮かべながらより激しく腰を動かし、膣内の襞が僕の陰茎に絡みついてくる。
彼女の魔力によってインキュバスになった僕がそんな彼女の攻めに耐えられるわけが無く…

「うっ、くああ、ぅおおあああ!!」
「んあっ♪あっ♪きたぁぁ♪」

あっという間に自分の欲望を…僕の上で腰を振っている愛おしい人が望んでいる精を彼女の中に射精した。
あまりもの快感に自分の身体が勝手に跳ねあがるほどの射精だ。
彼女は恍惚とした表情で僕の精を膣内で受け止めている。僕の精を即座に吸収でもしているのか、かなりの量を射精しているのに結合部からは全く精が漏れ出してこない。



ぱあぁぁぁぁぁん……



このとき、何かが弾けた気がした。だけど、何かまではわからなかった。
今すぐ確認は出来そうでもない。なぜなら…

「あんっ♪もっと、もっとダしてぇ♪」
「うあっ!あっ、うっ、くおぉぉ!」

プローネさんが僕の上で再び腰を振り始めたからだ。
射精したのに一向に萎えない僕の陰茎を再び魔性の膣で弄ってくる。
インキュバスになった影響なのか、射精したばかりだと言うのにもう限界が近い。

「もっとぉ♪もっとホシイの♪んちゅ♪」
「んんんっ!!」

彼女の顔が突然近付いてきたと思ったら、気がついたら唇を奪われていた。
僕の口は快感によってずっと声を出すために開いていたので、彼女の舌がすんなりと侵入してきた。
その舌は僕の舌を絡め取り、自身の唾液を僕の舌に塗りつけたり、逆に僕の唾液を掬い取ったりしながら貪ってくる。
彼女のディープキスで、僕の脳は完全に蕩けてしまったのか考える事が出来なくなってきて…

「んんんんんんんっ!!!!」
「んふっ♪いっぱいデたー♪」

彼女のナカに再び大量の精を吐き出したのと同時に、僕は意識を手放した……



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ダークマターが封印されてから、約10年の時が経ちました。

一切の行動を停止していたため、ダークマターはなんとか生きていました。

ですが、自分が何者なのか、どうしてここにいるのかがほとんどわからなくなっていました。



そんなある日の事。突然目の前にあった壁が崩れました。

そして、ダークマターの耳に声が聞こえてきました。

その声に反応したダークマターが振り向いた先には、一人の青年がいました。

この青年は、昔勇者様に盗賊から助けてもらい、勇者様に憧れ、そして勇者様とずっと一緒にいたいと想っていた子供でした。

勇者様が封印された際、表向きには魔物に殺された事になっていました。

それを聞いたほとんどの子供達は悲しみました。

しかし、勇者様と一緒にいたいと想っていた子供だけは、それを信じませんでした。

勇者様は必ず生きていると信じていたのです。

やがて子供は成長し、立派な青年になりました。

そして青年は勇者様の事をいろいろ調べて、勇者様がダークマターになって封印されている事を突き止めたのです。

青年はダークマターが封印されている場所に一人で行きました。

そして、あっという間に封印を解きました。

ダークマターが憧れの勇者様の姿をしているのを確認した青年は、早速話しかけたのです。



ですが、ダークマターは魔力がつきかけていました。

なので、目の前にいる青年が何を言ってるのか理解できず、ただ待ち望んでいる男がいると認識しただけでした。

男を認識したダークマターは、早速自分の球体、魔力の塊をその男…青年に流し込みました。

これで勇者様とずっと一緒に居られる、そう考えた青年は全く抵抗せずそれを受け入れました。

そして青年は、ダークマターの番に…インキュバスになったのです。



それを見計らってダークマターは青年の上に跨り、自分の秘所で青年の膨張した性器を咥え込みました。

魔力が足りていなかったダークマターは、青年に早く射精するよう懇願しました。

インキュバスになった青年は、その要望通りに射精しました。

精を吸収したダークマターは、無意識のうちに自身から何かを放出しました。

だけど、それに構うことなくダークマターは再び精を吸収するために腰を振り始めます。

何度も何度も精を出してもらうために、ダークマターは青年に快感を与え続けました。

青年が快感に耐えられず意識を失った後も、自身が満たされるまで本能に身を任せて貪り続けました。



そのおかげでダークマターは、自分が誰なのか、どうしてここに居るのか、すべて思いだすことが出来ました。

それに、自分の下で気絶している青年が居ることにも気付く事が出来たのです……


====================



「ねえ、起きてアポロ君…大丈夫?」
「う、うーん………大丈夫です……」
「本当に?はぁ〜よかった〜…」

プローネさんの声が聞こえ、僕の意識が戻ってきた。
目を開けると、心配そうに僕を見つめている彼女の顔が目の前にあった。
漆黒の瞳に確かな光を感じ取れたので、僕の精を吸収した事により魔力が回復し彼女の理性が戻ったのだろう。

「ごめんね…私のせいでこんな…」
「大丈夫ですよプローネさん。僕が自ら望んだ事ですから…」
「えっ…!?」

僕がそう言うと、プローネさんは驚いた顔をした。

「でも…私、無意識のうちにアポロ君に襲いかかって…インキュバスにしちゃったんだよ?」
「ですから、それは僕が自ら望んでなったのです。プローネさんは何も悪くありません」
「……ホントに?」
「ええ…そもそもそうでなければわざわざダークマターの封印を解きになんて来ませんよ」

これで僕の目標はほぼ達成した。ずっとプローネさんと一緒に居るという目標が。

「そうなの……アポロ君、ありがとう…」
「いえいえ………ん?」

プローネさんにお礼を言われて照れている時に気がついた。
名乗っていないはずなのに…なぜか僕の名前を彼女が知っていた。

「何故僕の名前を…」
「え?だってアポロ君が小さい頃自分で私に教えてくれたよね?」
「確かに言いましたが…あれから10年は経ってますし、それに成長して見た目も結構変わりましたし…」

確かに僕は子供のころ盗賊から助けられたときに名乗った。
つまり、プローネさんはその事を覚えてくれていたという事だろう。
それでも僕はあの頃からずいぶん見た目は変わっている。顔も身体も少しごつくなったし、身長も40センチ位は伸びている。
だけど僕がアポロだってわかったのはなんでだろうか?

「見た目は確かにかなり変わってるけど、面影が無いわけじゃないしね。それに…」
「それに?」
「アポロ君だけだもん。私と一緒に居たいと言ってくれたの。他の皆は私に憧れたり懐いたりしてくれるけど、私とずっと一緒に居たいと思っている子はキミ以外には居なかった。私は勇者だから、尊敬の対象にはなっても仲間として、一人の人間としての自分と一緒に居たいと思っている人は誰も居なかった。だからアポロ君がずっと一緒に居たいと言ってくれた時はとても嬉しかった。そんなキミの事はたとえ何年経っても、私が人じゃなくなっても覚えているよ」

どうやら僕が一緒に居たいと言った事が勇者であったプローネさんには嬉しかったらしい。笑顔を浮かべていた。

「ダークマターになった時、アポロ君の所に行こうと思ったんだ。いつ頃かそんな事すら頭から抜けてしまったけどね…まあ、私的には結局キミが来てくれたから嬉しかった。でも、本能で動いていた私がキミの考えを無視して襲っただけだから、もしかしたら恨まれるんじゃないかと……しん……うっ……ぱい………で………ぐすっ……」

そして、今度は泣きながらその心境を語ってくれた。
初めて見るプローネさんの泣いているところ……その顔も綺麗だと思いはしたけど、やっぱり彼女には笑顔でいてほしい……
だから僕は……

「僕はプローネさんを絶対に恨みなんてしませんよ……」

まずはプローネさんの不安を取り除いてから……

「それどころか、僕はプローネさんの事が大好きです!この先何があってもずっと一緒に居ます!」

僕はプローネさんに告白した。

「………ホントに?」
「はい。プローネさんが良ければですが」

僕はそっとてのひらをプローネさんに差しだした。

「もしよければ僕の手を握って下さい」
「………」

そしてプローネさんは……

「私でよければ、ずっと一緒に居て下さい!!」

ダークマターになっても変わらない太陽みたいな朗らかな笑顔で、僕のてのひらを握ってくれた。




「プローネさん、これからどうしましょうか?」
「アポロ君、敬語とさん付けは止めてほしいな……そうねぇ…私はもうこの国には居たくないけど…」
「なら僕も君付けはやめてほしいな……一応この国もいつの間にか魔界になってるけど…やっぱり自分を嵌めた王様が居る国は嫌か…」
「うん……」

落ち着いて周りを見てみると、いつの間にか景色が少し変わっていた。
空はまるで夜のように薄暗くなっており、枯れていた草木が禍々しい形ではあるものの葉を付けていた。
それにあちこちでゴーストやスケルトン、ゾンビといったアンデッド型の魔物がふよふよ、ふらふらとしている。
どうやらこの国、少なくともここら一帯は魔界になってしまったようだ。
おそらくさっきの交わりの最中に弾けた何かはプローネさんの魔力で、それが周りにまき散らされた事によって魔界化してしまったのだろう。

「だったらさ、僕達が安心して暮らせる場所を探しに行こうよ!」
「え、でも…私が…ダークマターが漂っていたら、それだけでその土地も魔界になっちゃうんじゃ…」
「なら魔界に探しに行けばいい!もう僕達は魔物のようなものだし何の問題もないよ!!」
「…うん…そうだねアポロ!」

まだこの国の王はあの王様だ。ここには居たくない。
だから僕達は安心して暮らせる土地を探しに旅に出る事にした。
魔界であれば魔物とその伴侶ぐらいしか居ないので、たとえダークマターが魔力を拡散しても他の人達の迷惑にはならないだろう。そう考えた僕はプローネに提案し、彼女は笑顔で承諾してくれた。

「じゃあ早速行こ!」
「あ、ちょっと待って……」

いままですっかり忘れていたけど、僕は彼女に渡すプレゼントがあった。

「はいっ!これ、着てほしいな!」
「えっ!?私に!?」
「うん!裸のままじゃ困るでしょ?」

彼女の特徴である黒によく映える…

「でも私魔力で最低限は隠せるけど…」
「…本音を言えば他の人になるべくプローネの身体を見られたくないんだよ」

太陽の模様があしらってある、純白のワンピースを。

「……ありがとう//」

彼女は照れた顔をしながらも、受け取ってそのワンピースを着てくれた。



「それじゃあ、今度こそ行こ!」
「そうだね……」

僕は自身の中にある魔力を掌の前に集中させ…

「……はあああっ!!」
「えっ!?」

ダークマターが跨っている黒い球体を作りだした。
出来そうな気がしたからやってみたけど案外簡単に出来た。

「これに乗ってよ。僕の魔力で出来ているからプローネも喜ぶかなと…」
「うん……うん!凄い!アポロを感じる!嬉しい!!」

黒い球体に乗ったプローネは早速触手みたいなのを出して身体に絡ませている。喜んでもらえて何よりだ。

「じゃあ出発しよう!」

僕は彼女にてのひらを差し出し…

「うん!」

彼女のてのひらを握って、見知らぬ魔界へ一緒に歩きはじめた。

僕達が安心して暮らせる場所を探すための旅へ……


====================


しばらくして、青年は意識を取り戻しました。

自分が無意識のうちに青年をインキュバスに変えてしまった事を、彼女は後悔していました。

なので青年の意識が戻ったことを確認したダークマターは、安心すると同時に青年に謝りました。

青年は自分が望んでやったことだとそれを許しました。

許してもらえた事で、ダークマターは喜びました。



そしてダークマターは、自分が青年の事を覚えている事を伝えました。

勇者だった自分を、神格化せずに見てくれていた、唯一の少年の事を…

自分の想いを伝えているうちに、ダークマターは泣きはじめました。

結果として良かったとはいえ、本能で青年を襲った事で恨まれていないかを心配して…

ダークマターに笑っていてもらいたい青年は、恨んでいないと告げました。

そして、ずっと一緒に居たいと告白をし、てのひらを差し出しました。

告白を受けて喜びに満ちたダークマターは、勇者様だった時と変わらない太陽みたいな朗らかな笑みを浮かべながらそのてのひらを握りました。

こうして、青年とダークマターは結ばれました。



青年とダークマターは旅に出る事にしました。

交わりの最中にダークマターから放出された魔力の影響で、すっかりこの国は魔界になってしまいました。

ですが、あの王様が居るこの国に、ダークマターは居たくなかったのです。

だから、二人で安心して暮らせる場所を探すために、魔界を旅する事にしました。

早速出発しようとしたところで、ダークマターは青年からプレゼントを貰いました。

それは、まるで勇者様とダークマター、どちらも象徴するような太陽の模様が描かれた、黒に映える純白のワンピースでした。

青年からのプレゼントに喜ぶダークマターのために、黒い球体を出した青年。

青年はダークマターをその球体に乗せ、てのひらを差し出し、魔界へと一緒に旅立ちました。



魔界を旅する青年とダークマター。

彼らは立ち寄った様々な場所で、いろんな人や魔物と触れ合い、自分たち自身もいっぱい愛し合い…

そして、旅先の豊かな土地で、いつまでも仲良く、二人して太陽の様な笑みを浮かべながら、幸せに暮らしましたとさ。

めでたし、めでたし。
12/02/25 15:25更新 / マイクロミー

■作者メッセージ
マイクロミーのSS、記念すべき10作目。
僕のSSで少しは皆さんに楽しんでもらえているだろうか?

今回は物語みたいな部分と、実際のお話を混ぜたような感じにしたのでちょっと読み辛かったかもしれません。
それと、本番描写こそあれどいつも以上に薄いので微エロってことで。

ここまで読んで下さりありがとうございました!

…こんなタイトルとあらすじにしたせいか、全く関係ないのに「てのひらを太陽に」が脳内で再生され続けてる…

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33