連載小説
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まえ
「ふぃ〜……今週も疲れた……」

仕事終わりの帰り道。
よれよれになったスーツを着ながら、疲れを隠す事無く夜道を歩いていた。
夜道と言っても、今いる場所は人で賑わっている駅前という事もあり別に暗くはない。
街灯や店の光に照らされ、呼び込みを行っている人の額に垂れる汗まで見えるぐらいには明るい。

「あー、腹減ったなぁ……」

そんな駅前では、空きっ腹にダイレクトアタックをかましてくるラーメンや焼き鳥の匂いで溢れかえっていた。
特に焼いた肉やニンニクの香りは反則だ……さっきからお腹の音が鳴りやまない。

「今日は外食していこうかな……お金も手元に2万はあるし、高級バーとかでなければ大丈夫だろ」

家に帰っても、俺は親元を離れ一人暮らしをしている身なので飯は作らなければ無い。
食材はまだ冷蔵庫の中にあるが……疲れて作る気力も湧かないし、賞味期限が近い物もないのですぐ消費する必要もない。
あまり浪費しない事もあって財布の中身は潤っているし、俺は外食していく事にした。
何よりも、こんなにいい香りが漂っているのに我慢なんてできるはずがない。

「いらっしゃいませー! 空いている席へどうぞ!」

今日は週末で、明日からは休みだ。そんな事もあって、俺は美味しそうな匂いが漂う居酒屋に入る事にした。
俺は大学を卒業してから就職したのでもちろん20歳を越えているから、酒を飲んでも問題は無い。
あまり強いわけではないので量は飲めないし、そう日常で飲んでいる事もないが、たまに飲みたくなる時もある。今日がまさにそんな時だった。

「ご注文はお決まりですか?」
「そうですね……鳥皮串タレとチーズじゃがもちとそばめし、あと揚げニンニクと生中で」
「かしこまりましたー」

店に入り、入口近くの空いていた席に座って、とりあえず目についた物を適当に注文する。
疲れたとはいえ、ここに辿り着くまで胃を刺激されていたので、一人で食べるにはちょっと多いぐらいの量を注文した。

「生中でーす」
「ありがとうございます。んぐ……ぷはぁ」

最初に運ばれてきた、キンッキンに冷えたビールを一口飲む。泡がちょっと口に付く。
疲れた身体にビールの苦みと旨みが染み込む……そう毎日飲みたいとは思わないが、たまに飲むには良い物だ。

「鳥皮と揚げニンニクお持ちしましたー」
「おーきたきた。いっただっきまーす」

ビールをゴクゴク……と言いたいところだがそんな豪快な飲み方をするとすぐ酔い潰れてしまうのでちびちびと飲んでいると、おつまみが先に出てきた。
割り箸をパキッと割り、揚げニンニクをパクッと食べる。ほくほくとしたニンニクは一噛みする毎にその風味が口に広がる。
鳥皮の焼き鳥も口に運ぶ。パリパリとした触感がまた良く、絡んだタレの甘みがこれまた苦いビールに合う。

「チーズじゃがもちです」
「ありがとう」

チーズじゃがもち……大学時代で初めて食べたが、あまりの美味しさに自分で作ってみた程だった。
パリッとした表面に歯を入れると、もちっとした食感と共にとろりと濃厚なチーズが舌に垂れる。
そしてまたビールを一口飲む。個人的には最高の酒のおつまみだ。

「あーうめぇ……」
「そばめしお持ちしましたー」
「おっうまそうだ!」

おつまみをもぐもぐと空きっ腹に詰め込んでいると、メインであるそばめしが運ばれてきた。
机に置かれたそばめしを早速かっこむ。安物とはいえ、焼きそばソースがご飯と絡み絶妙なハーモニーを奏でて……というとなんだがクサいが、とにかく美味い。

「ごく……あ、すみません。生中もう一つ」
「かしこまりましたー!」

ビールが無くなったので、もう一杯注文する。
疲れているので酔いも回りそうではあるが、2杯までなら大丈夫だろう。

「むしゃむしゃ……んー美味い。この店は当たりだったな」

注文したビールが届くまでの間、ただ必死に注文したものを食べ続けた。
結構な量を頼んだが、止まる事無く全て胃に収まっていく。空いていたお腹も、いつしか膨らみ始めた。

「はい生中です」
「ありが……ん?」

注文した2杯目のビールが届いたので受け取った。
その時、不意に不思議な香りが……とはいえ決して不快な臭いでは無く、なんだか落ち着いた香りが鼻を刺激した。

「あ……」
「へ? あの、どうかなさいました?」

ふと顔を上げた先には、頭を色とりどりの花で飾っている女性の姿があった。
お腹が膨れてきて余裕ができたからか、初めて自分の所に注文したものを持ってきてくれた店員が女性だとわかったし、同時にこの香りがその店員から漂っていた事に気付いた。

「あ、いや。ちょっと匂いが漂ってきたから……」
「はわわ……す、すみません……やっぱり体臭キツイですよね私……」
「あ、いやいや。違いますよ。花のいい香りが漂ってきたので。それ本物?」
「あ、なるほど。ほっ……あ、はい。本物です」

その匂いは、彼女の頭に沢山飾られていた花から漂っていた。
普段から花の香りを嗅ぐようなロマンチストではないが、それでもいい匂いだと感じる。

「なんでそんな物を頭に……あー……」

いい匂いではあるのだが、どうしてそんな物を頭に飾っているのかと思ったが、ふと彼女の手足に目が移った。
よく見ると、彼女の手は人間のそれと比べてかなり大きい。足を見ても、成人男性である俺の靴のサイズは大体28センチなのだが、彼女はそれより二回り以上は大きいのだ。
そこから考えられる結論として、彼女は人ではなく……

「トロール……かな?」
「はい。私はトロールです。嫌でしたか?」
「いやいやそんな事はないよ。ただ自分は仕事を始めるまで魔物娘がほとんどいない街で暮らしていたから、ちょっと自信がなかっただけだよ」
「そ、そうですか……」

そう、人とは違う種族。俗に言う魔物娘の一種で、彼女はトロールという種族なのだろう。
この世界には魔物娘という、悪魔や亜人や獣人といった人間とは違う女の人が存在している。人口の割合的には人間のほうが圧倒的に多いが、それでも決して少ないというわけではない。
一言に魔物娘と言っても様々な種族がいるが、大体は人より丈夫で力もあり、そして美人でエッチなものが多いらしい。
そんな魔物娘が、この街では人と同じかそれ以上にいるみたいだ。実際店を見渡してみると、店員の中にはサキュバスやダークエルフなんかがいるし、客の中にもネコマタやオーガ、ドワーフなんてものがいる。仕事場にもかなりの魔物がいて、入った当初は驚いたと同時に目のやり場に困ったものだ。

「花、似合ってるね。可愛いよ」
「えっあ、ありがとうございます!」

彼女も胸がはち切れんばかりの大きさなので正直目のやり場に困るには困る。トロールだからか俺よりも頭一つ分は背が高いので、尚更目に入ってしまう。
とはいえ、そんな巨乳よりも俺は彼女のちょっとそばかすがある大人しい雰囲気を持った可愛い顔に目が行っていた。
正直に思うと、今まで出会った女性の中で一番可愛いと思えるかもしれない。

「ちょっと華ちゃーん、そろそろ仕事に戻ってくれない?」
「あ、す、すみません。それでは……」
「あ、はい……」

なんとなくもうちょっとだけお話してみたかったが、華と呼ばれた彼女は店長らしき人に注意されて業務に戻ってしまった。
一目惚れ……とまでは言わないが、仲良くなりたいな程度には気になる女性だった。

「……」

ぐびぐびとビールを飲みながら、俺はどうしようかなと考えた。
もう一杯頼む……のは潰れかねないし、かと言って食べる物を頼もうにももうお腹はいっぱいだ。

「ごちそうさまでしたー」
「まいどー」

結局、諦めて帰る事にした。
また今度来て、その時話をすればいい……そう思いながら、俺は会計を済ませて店を出たのであった。

「まあ、魔物娘が可愛いのが多いって言うのは知ってたけど……あの華ちゃんって娘はちょっと好みだったな……」

ああいった素朴な感じの子が俺は好みだったりする。
だから仲良くなりたいって想いはあるが……如何せん俺は最近流行りの草食系男子とか言うものみたいで彼女いない歴=年齢だ。
とはいえ、1回きりの関係になりたくはないと思うので、今回は頑張ってみようかなと思う。

「……なんだか青春してるな自分……」

まるで学生時代に戻ったみたいだなぁと思いながら、俺はちょっと酔っぱらった足取りで家に帰ったのであった……



……………………



…………



……







「いらっしゃいませー! 空いている席へどうぞ!」

そして、一週間が経過した。
忙しかった仕事も週末で一段落着いたので、俺は再び先週訪れた居酒屋へと足を運んだ。
本当はもう少し早く行こうと思ったが……土日は疲れが溜まってたせいか2杯しか飲んで無いのに二日酔いで倒れていたし、月曜から昨日まではとてもじゃないけど外食に行く余裕などなく、自炊どころか家に置いてあるインスタントで済ませていたほど大変だったので行けなかった。

「さーて、今日は何食べようかな……」

居酒屋に入りメニュー表を広げ、何を食べようかなと考える。
そして考えながら、店内の様子を観察する。
入った時、お目当ての彼女がいた事は確認済みだ。そして、その彼女が注文票を手にして、こちらに近付いているのも見えた。

「ご注文はお決まりですか?」
「はい。チーズじゃがもちと鳥軟骨、黄金チャーハンに生中で」
「かしこまりましたー」

そして彼女、華ちゃんに注文を伝える。
こちらの顔を見たが、特に反応がないので覚えていないのだろう……当たり前ではあるが、ちょっぴり寂しくなる。

「生中お持ちしましたー」
「ありがとう」

そんな寂しさを抱えたまま、彼女が持ってきた生中を受け取った時だった。

「あの〜、たしかお客様は先週も来ていましたよね?」
「え? あ、はい。覚えてたんだね」
「はい」

なんと覚えていないかと思いきや、彼女は俺の事をハッキリと覚えていたのであった。

「よく覚えてたね」
「はい。その……か、可愛いって言ってくれたので……」
「あーうん……華ちゃん、だっけ? 可愛いと思うよ」
「は、はうぅ……」

どうやら、可愛いと言った事を覚えていてくれたようだ。
彼女ほどの娘ならそれぐらい普通に言われていそうだが……なんにせよ覚えていてくれた事が嬉しくて、ついまた可愛いと言ってしまった。
俺の可愛いという言葉を聞いた華ちゃんは、真っ赤に染まった顔を大きな手で隠してしまった。

「ちょっと華ちゃん、その人のチーズじゃがもち揚がったから持っていって!」
「あ、は、はーい!」

そして、料理をしていた店長らしき人に呼ばれたため、そのまま厨房の方に戻って行った。

「ち、チーズじゃがもちをお持ちしました……」
「ありがとう」

まだちょっと赤い顔を少し伏せながら持ってきたチーズじゃがもちを食べながら、次も来ないかなぁと厨房の方を見ながらじっと待つ。

「鳥軟骨です」
「うん、ありがと」

鳥軟骨も華ちゃんが持ってきてくれた。

「黄金チャーハンです」
「ありがとう……おー美味そうだ」

コリコリと軟骨を食べていると、最後に注文した黄金チャーハンを持ってきた。
黄金チャーハンとは醤油ベースのチャーハンに卵が絡んでいるものだ。米もパラパラしているし、味も舌触りも下手な中華料理屋のチャーハンより美味い。
しかし、これで注文していた物も最後になってしまったので、また生中でも頼んで華ちゃんを呼ぼうかな……なんて思っていたら……

「……あれ? どうかしたの?」
「あ、いえ。店長にまた混んでくるまでは喋っててもいいって言われたので……迷惑でしたか?」
「いやいや。むしろこっちもちょっと喋りたかったなと思ってたよ」
「ホントですか!?」

戻ったと思った華ちゃんが、俺の横にジッと立っていた。
どうやら何かを感じた店長さんがちょっとお話する時間をくれたみたいだ。ナイス店長。

「それで……華ちゃん、で良いんだよね?」
「はい。私の名前は大野華(おおのはな)です。洛出大学の2年生で、この居酒屋でアルバイトしています」
「大学2年生か〜……あ、俺は土呂長流(とろたける)。駅前の茶色い3階建てのビルの小さな会社で働いてるサラリーマンさ」
「土呂さんって言うのですか」

という事で、早速というか、今更というか、とにかく自己紹介から始めた。
華ちゃんはある程度予想していたが、どうやらこの近所にあるこれまた魔物率が全国平均と比べて高い大学の学生らしい。居酒屋でアルバイトしているわけだし、大学2年生という事は大体20歳だろう。

「いきなりこんな事を聞くのはアレですが……土呂さんって彼女います?」
「いきなり聞いてきたね……いないよ」
「そ、そうですか……」

そして華ちゃんが最初に聞いてきた事は……まさかの彼女がいるかどうかだった。
普通なら失礼な奴だな……と思うが、華ちゃんからこんな事を聞かれたとなると、また別の期待が掛かる。

「じゃあ俺からも聞くけど、彼氏いたりする?」
「いやぁそれが……やっぱり大きな手足が怖いみたいですし、体臭がキツイのでなかなか……」
「そうなんだ……俺は大きな手足も華ちゃんの可愛さの一部でしかないし、体臭も気にならないけどな」
「そ、そうですか……ありがとうございます!」

そして彼女も彼氏なんていないらしい。
どうやらやたら大きな手足と体臭を気にしているらしいが……俺は気にならなかったどころか、手足に関しては華ちゃんの可愛さを更に引き立てていると思っている。
なんというか包容力がありそうだし、是非とも触ってみたい。

「そ、それでですね……その……」
「華ちゃん! 悪いが混んできたから業務に戻ってくれー!」
「あ、はーい!」

そして、彼女が何かを言おうとしたところで、店長さんからバイトに戻ってくれと言われてしまった。
もしかしたら期待通りの事を言ってくれるのかもと思っていたのに、それも聞けずに終わりそうだ。タイミングが悪いぞ店長。

「残念。お仕事がんばってね華ちゃん」
「はい。あ、もしよければまた会いに来て下さい。私は基本火曜と金曜と土曜にいますから。火曜なら人も少ないのでもっと話せるかもしれませんし……」
「わかった。仕事がきつくなかったら行くよ」
「ありがとうございます! では……」

また会いたいからと、自分がバイトを行っている日を俺に告げて、奥へと戻って行った華ちゃん。
これはもしかしたら脈ありかも……そう思いながら、俺は上機嫌で会計を払い店を出て家へ帰ったのであった。



……………………



「いらっしゃいま……あ、土呂さん!」
「やあ華ちゃん。約束通り来たよ」

という事で、週末を挟んだ火曜日。俺は華ちゃんに会うために例の居酒屋に入った。

「ご注文はどうしますか?」
「そうだね……明日も仕事があるから……でも居酒屋だしやっぱり生中で。それとチーズじゃがもちとソース焼きそばで」
「かしこまりましたー♪」

店に入ると、早速華ちゃんが対応してくれたので、笑顔で挨拶を済ませ注文をした。
たしかに、華ちゃんが言う通り火曜日は金曜日と比べお店にいる人が半分以下だ。まあ、平日の真っただ中で居酒屋に入る人はそこまで多くないから当たり前ではあるが。

「生中お持ちしました!」
「ありがとう。なんだか今日の華ちゃんはご機嫌だね」
「はい。だって土呂さんが来てくれたので嬉しいのですよ♪」

今日の華ちゃんは凄くご機嫌な様子だった。
なんでかと尋ねたらそう言った華ちゃん。そんな事言われて嬉しくならない男はいない。

「おお、そう言ってくれるとこっちも嬉しいね。俺も本気にしちゃうよ?」
「良いですよ♪」
「え……」

しかも……お世辞とかではないのかもしれない。
本気にしちゃうと言ったら、微笑みながらいいですよと言ったのだから。
華ちゃんがそんな意地悪な娘とは思えないし……これは本気で脈ありと見ていいのかもしれない。

「はい、チーズじゃがもちとソース焼きそばです」
「ありがとう」

注文したものが全部運ばれてきた。
そして、華ちゃんは奥へ戻らずに俺の横で立ち止まったままだ。

「そういえば土呂さんって毎回チーズじゃがもち頼んでますね」
「うん。だって好物だからね。大学時代に食べてから個人的好きな食べ物トップ5に入る程だよ」
「わかります。美味しいですよねチーズじゃがもち」
「だよね。あ、一個あげるよ」
「えっ? いえ、こちらはアルバイトの身ですので……」
「いいからいいから。美味しい物は分け合って食べたほうがより美味しいでしょ……なんか臭い事言ってて恥ずかしいな……」
「いえいえ、その通りだと思います。では、お言葉に甘えていただいちゃいますね♪」

はむはむと美味しそうにチーズじゃがもちを頬張る華ちゃん。可愛い以外の言葉が思い付かない。
そして、そのまま会話をし始めた。
今日は見た感じ他の客もいない事は無いが少ないからちょっとは長く話せるかもしれない。

「華ちゃんって他に好きな食べ物とかあったりするの?」
「私は……大体なんでも好きですが、リンゴなどの果物が一番好きです」
「へぇ……頭から生えたりする?」
「さ、流石にリンゴはできませんよ。あれは花じゃなくて木ですし……たしかに食べられるものもあったりしますし、昔から友人につまみ食いされたりしますけど……」
「そうなんだ」

どうやら華ちゃんは果物が好きみたいだ。
今度会う時はリンゴとか果物でも持って行こうかな……

「そういえばなんでアルバイトやってるの?」
「まあ、生々しい話ですが一番の理由は生活費を稼ぐためですね。現在一人暮らししてますし、親の仕送りだけに頼るのも悪いので……」
「へぇ、下宿して大学に通ってるって事は実家は遠いんだ」
「はい。ここから新幹線と電車とバスを乗り継いで片道8時間ぐらいかかる山奥のほうです。トロールやノームさん達が沢山いる村出身です」
「うわっすっごく遠いじゃん。どうしてわざわざ洛出大学にしたんだい?」
「えっと……私が行きたかった学部があったって事と、魔物娘が多く通っている事、あとは家から離れて暮らしかったってところです」
「家から離れてって……もしかして家族と仲悪い?」
「いえいえ全然そんな事ないですよ! わりと電話もしますし、お盆と年末年始はきちんと帰省してますしね。ただ、一回山奥のド田舎じゃないところでも暮らしてみたいなと思った事や一人暮らしへの憧れ、それと……いえ、まあそんなところです」
「なるほどね。どう一人暮らしは、大変でしょ?」
「そうですね……親のありがたみを実感してます」

そして、どうやら一人暮らしをしているみたいだ。
俺も社会人になってから一人暮らしをしているが、一人分とはいえ家事を全部やらないといけないのは疲れて帰ってからは辛い。

「そっか……それにしても一人暮らしか……一度尋ねてみたいな……」
「土呂さんならいいですよ」
「え? あれ、聞こえてた?」
「はい、聞こえてました。私の家に来てもらって構いませんよ」

そんな彼女の家に行ってみたいなと思い、それを口に出してしまったらしい。
来ても良いと言われ嬉しいが、そこまで常識知らずではない。

「い、いやいや、いくら魔物娘とはいえ女の子が一人で暮らしているところに男を、しかも付き合ってもいない年上をほいほいと受け入れるのはマズイでしょ」
「あはは、結構真面目なお方なんですね。大丈夫、ただ遊びに来てほしいだけですし、それに……」
「それに……?」

と、ここで笑顔だった彼女の雰囲気が変わった。
笑顔なのは変わりないが……朗らかな笑顔から妖しい笑顔に変わり……

「魔物娘が一人で暮らしている家に男が踏み込んだら……マズイ目に遭うのはどちらでしょうね……」

色っぽく潤んだ瞳をこちらに向けながら、意味深な発言をした。

「え、えっと……華ちゃん?」
「ふふ、冗談ですよ。私は土呂さんがそんな事する人じゃないと信じてますから家にもお招きできるのですよ。バイト中よりも、そっちのほうがゆっくりお話できますからね」
「あ、ああ、うん」

そしてまた、いつもの温厚で優しい雰囲気に戻った。
……もしかしたら、魔物娘が『魔物』と言われる所以はこれなのかもしれないと考えさせられる。

「華ちゃーん、悪いけどそろそろこっちに戻ってー」
「あ、はーい」

そして、このタイミングで奥から店長に呼ばれたので、アルバイトに戻って行った。

「あ、そうだ。これ、渡しておきますね」
「ん? これは……」

その直前、彼女は半分に折り畳められた紙を俺に渡してきた。

「……番号とメアド……か?」

その紙には、11桁の数字と英数字と記号の羅列が記されていた。
悪戯じゃなければ、これは華ちゃんの携帯電話の番号とメールアドレスだろう。

「よし……ありがと華ちゃん。帰ったらメールしよう」

彼女のくれた紙を無くさないようにポケットへ……というのはうっかりと無くしてしまいそうなので、先にアドレスを登録してから俺は濃厚なソースの香りが漂う焼きそばを平らげて店を出たのであった。



………………………



「……ここらへん……だよな?」

その週の日曜日。
俺は洛出大学の近くまでやってきていた。

「えっと……たぶんこの茶色い建物……だな」

何故こんな場所にいるのかというと……もちろん、華ちゃんの家に行くためだ。
メアドと番号を教えてもらったその日の寝る前、俺は華ちゃんに確認の為と自分のメアドと番号を教える為にメールを送った。
もちろんそのメアドは華ちゃんのものであり、その返信が次の日の夕方に届いていた。
その内容は……

『もっと土呂さんの事が知りたいので、今度の土日のどちらかで私の家でいっぱいおしゃべりしませんか?』

……という文面と共に、彼女の家の住所が書かれていた。
生憎今週の土曜は用事があったので、こうして日曜日である今日、彼女の家にお邪魔してお喋りをする事にしたのだ。

「……よし、鳴らすか」

女の子の家に行くのは、恋心の「こ」の字すらなかった小学生時代以来なのですごく緊張する。
手の震えを何とか抑えながら、俺は書かれた住所通りのアパートの、1階にある華ちゃんの家らしき場所の呼び鈴を鳴らした。

「はーい……あ、土呂さ〜ん。来てくれたんですね〜」
「おはよう華ちゃん。本当に来ちゃったよ」

開いた扉から出てきたのは色とりどりのお花……もとい、その花を頭から生やしている華ちゃんだった。
大体おやつ時とはいえ、彼女のアルバイトは夜遅くまであるし、さっきまで寝ていたのか華ちゃんはちょっと眠そうだ。

「さ〜どうぞ。上がってくださ〜い」
「はい、おじゃまします」

そのまま部屋の中に案内された。

「おお、花がいっぱいだ」
「はい。お花が大好きなので〜。それにいい香りですしね〜」

決して広くは無い部屋の中は、輝く太陽に照らされた、まるで花屋とでも言わんばかりの色とりどりの花が一面に飾られていた。
そして、彼女自身も普段のアルバイトの時とは違い、手足の袖口を中心に沢山の花を身に付けていた。

「こんなにいっぱいのお花……もしかして全部頭に生えたやつ?」
「いえいえ。中にはありますが〜、大半は摘んだか買ってきたか、もしくは実家から送られてきたやつですよ〜」
「なるほど」

たんぽぽから魔灯花まで様々な場所に生息している花が飾られており、いったいどこから持ってきたのかと思ったが、どうやら実家から送られてくるらしい。
あまり魔物娘の事は詳しくないからトロールの生態も手足を始め色々と大きいって事ぐらいしかわからないのでハッキリとは言えないが、きっと種族柄花は好きなのだろう。

「どうぞここに座ってくださ〜い」
「ありがと。あ、これちょっとしたお土産。家の近くにあるケーキ屋で買ってきたパイ。そんなに大きくないとはいえまだ昼食べたばかりかもしれないけど、食べる?」
「はい〜! 私も丁度飲み物として自家製の紅茶を用意していたのでいただいちゃいましょう♪」

彼女の家にあった、日光が良く当たる机の前に座り、手土産として買ってきたパイを取り出す。
もちろん、花ちゃんが好きと言っていた林檎を中心としたフルーツパイだ。

「もぐもぐ……おいひいれす」
「うん。紅茶も美味しいよ。これ華ちゃんの手作り?」
「もぐもぐ……はい。ほうれ〜す」
「えっと……まず食べちゃおっか」

アップルパイをお皿に移し、華ちゃん特製の紅茶でいただく。ほんのり甘い香りが漂ういい物だ。
大好物なのか、夢中で食べる華ちゃん。半分寝ぼけながらもぐもぐと頬張る姿が、普段の働いている姿とのギャップになり、より可愛く見える。

「それにしても、なんというかちゃんと女の子の部屋だね。魔物娘の部屋って人間の女の子とどう違うのかなとか思ったけど、特に差は無いみたいだね。花の香りが漂ってくるけど、不快どころか落ち付くしね」
「ホントですか〜? よかった〜」
「うん。全然気にならないよ。俺花粉症じゃないし、全く問題無いよ」

ここ数日のメールのやり取りの中で、華ちゃんの部屋に多くの花が置いてあるという事は事前に聞いていた。
多くの花に囲まれているので、部屋中いろんな花の香りが充満しており、それが不快になるかもしれないとも聞いていたが、全然そんな事は無かった。
ちなみにアルラウネのもの以外の花粉症の人だと地獄とは言われたが、全くそんな事無いので問題無い。花粉症の体質じゃなくて良かったとつくづく思う。

「そういえば華ちゃんは本当に花が好きなんだね。今日はいっぱい花を飾り付けちゃってるしさ」
「はい好きです。バイトの時は料理にお花が落ちるといけないから飾っちゃダメなので外してますが〜、普段も付けてますよ〜。でも〜飾っているのは好きだから以外にまた別の理由もあるんですよ〜」
「別の理由?」

そして、彼女自身も部屋に負けないほど、大きな手足が隠れて目立たなくなりかけているぐらいには色とりどりの花を飾り付けている。

「土呂さんは可愛いって言ってくれたから正直に言いますが……私、この大きな手足と体臭がコンプレックスなんですよ〜。なので〜、これを隠す為にもこうして飾っていたりするのですよ」
「えっそうなの?」
「はい。まあ、これは私だけじゃなくてトロールって種族全体に言える事なんですけどね〜。私のお母さんやお婆ちゃんも同じようにしてます」
「へぇ……俺は全く悪いとは思わないけどなぁ……足が大きいのは別に気にならないし、手のほうはそのなんというか、なんでも包んでくれそうというか、とにかく大きな手は包容力があって安心できるイメージがある」
「そうですか〜ありがとうございます♪」

それはただ花が好きで綺麗だからってだけじゃなく、自分のコンプレックスを覆い隠す為でもあるらしい。
俺自身は手足が大きい事や体臭はマイナスな面とは全く思わないが、どうやら種族全体でそういう意識があるみたいだ。

「で、こんな事頼むのは失礼かもしれないが……」
「はい、何でしょうか?」
「その大きな手、触らせてもらっていい?」
「もちろんいいですよ〜。この大きな手を受け入れて下さった土呂さんなら、どれだけ触ってくださっても構いません」
「ほ、ほんと? では……」

人とは違う大きな手。正直、触ってみたいという欲求はかなりあった。
でも、トロールとはいえ華ちゃんは女の子だ。無暗には触ってはただのセクハラだ。
とはいえ、やはり触ってみたかったので思いきって頼んでみたところすんなりと了承を得たので、差し出された大きな手を触ってみる。

「おお、やっぱり大きいね。指二本を掴んだ感覚が子供の腕掴んでるみたいだ」
「ん……土呂さんの手温かいですね」
「そう? あ、ちょっとパーにして大きさ比べさせてくれない?」
「いいですよ〜」
「では……おー、一回りどころか倍ぐらい違う。俺これでも手は大きいほうなんだけどなぁ……さすがトロール、凄いね」
「えへ……馬鹿にされた事はあっても褒められたのは初めてです」

握手するように触ってみようと思ったが、指二本ぐらいしか掴めない。
掌を合わせてみても、根元から指の関節までの間に俺の手全体がそのまま入ってしまうほどの差があった。
こうして自分と比較してみると、あらためて華ちゃんの手が大きいという事がわかる。
とはいえ、別にそれが怖いとは思わない。手が大きくても、むしろ大きいほうが綺麗だと思うぐらいだ。

「こーやって〜がしっと!」
「うおおっ! 頭を鷲掴みにされてる!」
「ここから少年漫画みたいに身体を持ち上げる事もできますが〜、それは痛いのでやめときますね〜」
「えっ持ち上げる事もできるの?」
「はい」

今度は、その大きな手で頭全体を掴まれた。目の前が華ちゃんの手で埋まる。
人間同士どころか、ほとんどの魔物娘が相手では到底できない貴重な体験だろう。

「でも今回は〜えいっ♪」
「むぷっ!?」

そして、頭を鷲掴みにされたまま……床に押し倒された。

「ちょ、華ちゃんいきなり何するの?」
「えへへ〜♪」
「は、華ちゃん!?」

クッションの上だったので痛くは無かったが、いきなり暴力的な事をしてきた華ちゃんに驚く俺。
起き上がろうにも、強い力で抑えられて起き上がれない。頭を掴んでいるだけなのに、全身が持ち上げられない。
いったいどうしたのかと声を掛けるが、楽しそうに笑う反応以外帰って来なかった。

「え〜いっ♪」
「わっちょっと華ちゃん!?」

それどころか、もう一方の手が俺のズボンを掴み、なんと下ろしてきたのだ。
急な展開に頭が付いて行かないが、それでも脱がされまいと暴れた……が、その甲斐も虚しく引き摺り下ろされてしまった。
露わになる俺の花柄模様の青色トランクス……いや、やたら股間がスースーするところから、これはパンツごと下ろされたのかもしれない。

「あはっ♪」
「うひっ!? 本当にどうしたの華ちゃん!?」

いや……かもしれないでは無く、パンツごと下ろされたのだ。
何故なら、彼女の大きな手が、俺のいつもより大きくなっていた愚息を直接優しく掴んだからだ。
いつの間に勃っていたのかはわからないが、半勃ちだった事もあり触られた瞬間変な声が出てしまった。

「えへ、えへへ……❤」

竿全体を手のひらにすっぽりと収め、ゆっくりと扱き始めた。
余すところなく感じる彼女の熱……素手で扱かれているのに、さながらオナホールを使っているかのような錯覚に陥る。

「にちゃにちゃ……❤」

頭を覆っていた手が、胸元に移動した。
それによって視界が広がり……股間の上には、いつもあるはずの棒が無く、代わりに彼女の握りこぶしがあった。
時々指を軽く圧縮して刺激を加えながら、ひたすら扱き続ける。その中がぬるぬるとしてきたのは、おそらく先走りだろう。
そして……夢中に俺のペニスを弄っている華ちゃんの目は……パイを食べる時以上に、ぼんやりとした表情を浮かべていた。
それはまるで……思考を放棄して獣な本能に身を任せているかのようだった。

「は、華ちゃ……」
「ぴゅっぴゅ〜♪」
「ううっ」

最近は忙しかった事もあり、もう一月近く自慰行為はしていない。
その為か、まだそこまで激しく擦られていないのにもう射精してしまいそうだった。
いや、それだけではない。華ちゃんのテクニックがとにかく凄いのだ。俺の感じる部分を見逃す事無く刺激してくる。
大きな手は一見すると不器用そうだが、大きいなりの緩急の付け方でテンポよく、そして気持ち良く扱かれてしまうのだ。

「んっふふ〜ぴゅー♪」

あっという間に限界を越えてしまい、俺は彼女の手の中で達してしまった。
びゅるるる……と勢いのよい射精が続く。久々な事もあって量も凄いのか、指の隙間から黄ばみがかった白い液体が漏れ出て垂れ落ちる。
そんな状況でも彼女は扱くのを止めない。まるで、一滴残らず搾り出すかのように。

「んふふ〜……ぺろっ」
「あ……華ちゃん……」

射精が止まると同時に、奥から絞り出すようにしながらペニスから手を離した華ちゃん。
そして、手のひらに並々と注がれた精液を、相変わらずボーっとした表情で舐め取る。
そう……俺の身体から出た精液を、少し顔を赤らめながら夢中になって舐め取っているのだ。
眩しい夕方の陽射しで輝く、可愛くも妖しい笑顔で……

「……えへへ〜♪」

そんな状況を目の前にして、興奮しないわけがない。
些か復活が早い気がするが、俺は華ちゃんの痴態を見て再び股間を硬くしていた。
それを見た華ちゃんは、嬉しそうに笑ったのだ。いつもの優しい笑顔と違い、妖しい笑顔で。

「あははっ♪」

笑いながら華ちゃんは……なんと、服を脱いだ。
服の上からでも肉付きが良さそうとは思っていたが、実際に見ると思った以上に肉付きが良かった。
特に、胸にある双丘はむっちりなんて言葉じゃ表しきれない程だ。
ジッと見ていたら特に恥ずかしがる事もなく大きなブラジャーも外し……たわわに実った二房のおっぱいが目の前に零れた。

「むにむにぃ〜♪」
「あふっ!?」

そんなたわわに実ったおっぱいを持ち上げ……なんと、俺のペニスを間に挟んだのだ。
柔らかな乳房が、彼女の手の動きに合わせてむにっと卑猥に歪む。

「あっんっ……♪」

たらりと彼女の口から唾液が零れ……胸に挟まれた俺のペニスをコーティングする。
くちゅくちゅと音を立てながらおっぱいでペニスを弄る華ちゃん。
おっぱいの大きさに反し可愛らしい乳首が、目の先で円を描くように動き、時折硬くなった先端が亀頭や茎に押し付けられる。あまりの気持ち良さに、腰が勝手に浮いてしまう。

「いっぱい……あっ❤」

滑らかで、豊満な乳房にもみくちゃにされた愚息が、暴力的であり優しく包んでもいる圧力に耐えられるはずもなかった。
腰が快感で痙攣し、先程手のひらに放出した白濁液を、それ以上の量で胸の谷間に射精してしまった。

「あはぁ……れるっ❤」

射精が終わり、ゆっくりと胸を持ちあげペニスを抜いた。
胸の谷間の中に出し、それを零さないように大きな手で支え続けているので、華ちゃんの胸元は白く穢れている……胸に溜まったそれを、舌を伸ばして舐め取る。
それでも時々つぅ……と谷間から零れ落ち、お腹に白い線を作っている。それがまた性的な興奮を誘う。

「はむ……じゅる……」

胸に溜まった精液を全て舐め取った華ちゃん。
その頃にはもうすっかり夕方になり、部屋も暗くなってきた。
ただ、この先をするとしたらまさにそんな雰囲気になってきたが……

「……ああ……」
「……ん?」

先程まで積極的に搾り出してきていた華ちゃんの動きが、ピタリと止まった。

「はわわわ……」
「ど、どうかしたの華ちゃん?」

そして、今までの態度が嘘であるかのように、突然慌てふためき始めた。
丸出しのおっぱいをしまおうとはしないが、顔を真っ赤にしてその大きな手で隠してしまった。

「えっと……」
「ご、ごめんなさい土呂さん……本当にごめんなさい!」
「へ? えっと……状況を説明してもらえるとありがたいんだけど……」

手で顔を覆ったまま、頭をブンブンと振り回して謝り始めた華ちゃん。
さっきまでの積極的な姿勢が嘘みたいに消えてしまい、いつも通り……を若干通り越してしまっている。
とりあえず様子を見た感じ、さっきまでの事は記憶にあるみたいだ。
だから俺は、いったい何が起きていたのかの説明を聞きだす事にした。

「えっと……実はボーっとしてまして……」
「ボーっとしてた? それでその……逆レイプじみた事を?」
「は、はい……他のトロールにも多いのですが、私は太陽の光を浴びるとボーっと……その……エッチな気分になってしまって……」
「へぇ……もしかして頭のお花にそういった効果のあるものがあるとか?」
「はい……たぶんそうです。いつもは家の中でならまだある程度はハッキリと物事を考えられるのですが、今日はいつもよりボーっとする効果が強くて……」

どうやら、華ちゃんの頭の花には催淫効果を持つものもあるみたいで、日光を浴びてその花が活性化していた結果魔物の本能の刺激もあってあんな行為に及んだらしい。

「その状態で土呂さんに触れてしまい、もう歯止めが利かなくなって……」
「それで俺を押し倒したってわけか。なるほどね……」
「はい……本当にごめんなさい……」

たしかに、今日来た時からずっと華ちゃんはボーっとしていた感じがあった。その花の効果で思考が蕩けていたのだろう。

「それで……その……そんな事しておいてこんな事を言うのはアレですが……」
「ん?」

と、ずっと謝っていた華ちゃんが、目だけを指の間から覗かせて、申し訳なさそうにこう呟いた。

「ここまでヤってしまったので、最後までしませんか?」
「……え? な、何を……?」
「もちろん、エッチな事をです」

この行為を最後までやらないか、と。

「……もしかしてまだ催淫効果が残ってる?」
「否定はできませんが……私、これでも魔物ですよ? 土呂さんの美味しい精液を舐めてしまったのでもう身体が火照って仕方ないのです。パンティだってベトベトです。それに……」
「ん? あ……」
「まだまだ元気じゃないですか……♪」

華ちゃんの視線は俺の股間を指していた。
華ちゃんの花の匂いによるものか、それとも未だ丸出しのおっぱいに反応したのか、それとも別の何かなのかはわからないが、たしかに、もう2発射精したにもかかわらず、隠し忘れていたペニスは硬く勃っていた。
それを見て、更に顔を赤くさせつつももの欲しそうにする華ちゃん。魔物娘とはいえ大人しそうだった華ちゃんの予想外のエッチな一面だが、それはそれで良いかもしれない。

「い、いやいや、でもそんな……付き合っているわけでもないし……」
「ではカップルなら良いんですよね?」
「えっま、まあ……」

良いかもしれないが、それと性行為を行っていいかはまた別だ。
彼女は水商売とは無関係な大学生であり、カップルの関係でもない。襲われたのはこちらだとしても、こうして落ち着いた中で続けるのは良くないだろう。
だから俺は、本心では続きがしたいと思いながらも、理性で抑えてそれらしい理由で断ろうとしたが……

「なら土呂さん……私の彼氏になってください」
「……ええ?」
「実は初めてお話した時から好きでした。好きだからこそこうして家にもお呼びして押し倒したわけです。土呂さん以外の人にはこんな事言えません。ですから私と付き合って下さい!」

なんと、彼女の方から告白されてしまった。

「え、えっと〜……」
「だ、ダメですか?」
「いやいや、ダメじゃないよ! むしろ俺も華ちゃんの事が好きだからその……彼女になってほしい」
「土呂さん……!」

ここまで言われて断る男なんてまずいない。少なくとも俺は断る理由が一切思い付かなかった。
先に言われてしまった事が少し悔やまれるが、俺も好きだ、だから彼女になってほしいという事を華ちゃんに伝えた。

「おっと」
「ありがとうございます。そしてよろしくお願いします❤」

そして、俺の想いを聞いた華ちゃんは、感極まって俺に飛びついてきた。
ちょっとよろめきながらも、しっかりと抱きしめた。

「なんか華ちゃん、抱き心地いいな……」
「えへへ……ありがとうございます土呂さん」

肉付きが良く、背も自分よりよっぽど高いからか、ぎゅっと抱きしめた感じが下手なクッションよりも断然心地いい。嬉しい難点として、身長差の関係上胸が顔に当たるぐらいだ。
思わず抱きしめ続けていると、ふと花とは違う香りが漂ってきた。

「この匂いは……」
「あ……体臭、やっぱり臭いですか?」
「ううん……たしかに臭いは強いけど……なんか、その……変態みたいだけど……ずっと嗅いでいたいぐらい良い」
「ホントですか!? そんな事言われたの初めてです……嬉しい!」

花とは違い、強い匂いを放つ体臭。
それは決して不快ではなく、それどころかずっと嗅いでいたいと思う、そんな中毒性を孕んだ匂いだった。
これは雌の匂いとでも言うべきだろうか……華ちゃんの体臭を嗅いでいると、それに合わせて息子が段々と元気になっていく。
そして、そういう効果でもあるのか……華ちゃんと行為を及ぼしたくなってきた。

「……あは♪ おちんちんピクピクってしてますね❤」
「ああ。その……挿入していいかい?」
「はい、いいですよ。来て下さい……❤」

我慢できなくなり、挿入していいか……つまり、本番をしても良いかと聞いたら、華ちゃんは嬉しそうに下着を脱ぎ、上半身を倒し両足を広げ、大きな手で自身の性器を開いた。
そこは華ちゃんが言う通り、既に弄る必要がないほど濡れていた。つうっと、彼女の陰唇から一筋の粘液が零れ落ちる。

「じゃあ……挿れるよ」
「はい……んうっ❤」

華ちゃんが期待する通りに、僕は彼女の足の間に入りこみ……硬く反り勃ったペニスを彼女の性器に押し当てた。
こちらも童貞なので上手くできるかなと思ったが、余程相性がいいのか、ずぶずぶと吸いこまれるように沈んでいった。
途中で膜みたいなものに引っ掛かり、愛液に混ざって血も出てきたので処女だったみたいだが、その膣肉はとても柔らかく、みっちりと快楽を与えてくる。

「い、痛くない?」
「はい……むしろ気持ちいいです♪」

初めては痛いと聞いたが、魔物娘だからか華ちゃんは痛くないみたいだ。
それどころか気持ちいいらしい。顔がふにゃっと蕩けている。

「土呂さんは気持ちいいですか?」
「ああ……ちょっと動かすだけですぐ射精してしまいそうだよ……」

心地良く膣に包まれたペニス。気持ち良さを感じながらもゆっくりと進めていき、やがて全部中に入った。
ぎゅっぎゅと刺激してくるそれに、俺の陰茎は大きく反応し、今すぐにでも精液を射出してしまいそうになっていた。
むしろ、今まで手や胸に射精していなかったら暴発していただろう。

「ならば動かして下さい。ゆっくりでも、激しくでも、土呂さんのお好みでどうぞ♪」
「わかった……」
「んっ、凄い……私の中でおちんちんがビクッて……❤」

自分だけ気持ち良くなっても悪いので、俺は彼女の腰を両手でしっかりと抱え、腰をゆっくりと動かし始めた。
テクニックも何もないが、気持ちいいのか顔を紅潮させ悦んでくれている。

「んんっ、あっ❤ 硬くて熱いモノが、私のナカでごりごりってして気持ちいいです❤」

本当に初めてだと思えない程膣内は熟れており、腰を突き入れる度に押し返してきて、引き抜こうとすると吸いついて離さなくなる。
出し入れする度に響く肉と肉がぶつかる音。そして、溢れてくる愛液が滑りを良くし、より一層深く早く突き入れる。

「んひぃ、いい、あっ、ああっ❤」

時折自分の意図しないタイミングで華ちゃんの腰が当たるので、華ちゃんの方からも腰を振っているようだ。
その為か時々通常よりも深くまで突き進み、華ちゃんの最奥、プニッとした子宮口らしきものに鈴口が当たる。
また、激しく動いているため、彼女の巨大なおっぱいがブルンブルンと揺れ動いている。表面を伝う汗が、あちらこちらに飛び交う。

「はぁうっ! ひぁあっ♪ そ、それ、すごっですぅぅ❤」

彼女の大きな足が、俺の腰を通して背中側で組まれている。
これなら片手で支えていてもそうずれたりする事はないだろう……そう思い、俺は離した片手で華ちゃんの揺れ動くおっぱいを鷲掴みにした。
ぐっと指先に力を入れると、その通りに変形する柔らかさ。そして、押された部分を元に戻そうとする張りの良さを感じた。
また、俺に揉まれる度に、華ちゃんは甲高い喘ぎ声を漏らす。おっぱいを揉まれるのが気持ちいいみたいだ。
何より、彼女のおっぱいを揉む度に手のひらに硬く勃起した乳首が当たる。それだけ興奮しているのだろう。

「ああっ、ふあぁあ❤ イク♪ イッちゃいますぅぅう❤」

俺の腰の後ろで組まれていた彼女の足でガシッと腰を掴まれた。更に深い場所まで沈んでいくペニス。
華ちゃんは言葉通りそろそろオーガズムに達しそうなのだろう。身体が細かく震え始め、膣が狭窄し始めた。

「は、華ちゃん……射精る!」
「はあぃぃ❤ 中にぃ、中に射精してくださぁぁあっ❤」

それは自分も同じだ。精巣は既に上がり切っており、もう既に射精まで秒読み状態だった。

「ふあああ、あっ、ああっ、ふぁぁぁあああああっ……❤」

そして……華ちゃんがイッて身体が痙攣すると同時に、俺も腰が痙攣し、彼女の膣内に射精した。
本日3回目だというのに、花の香りの影響か、それとも華ちゃんの体臭の影響か、今まで以上に射精している。
ドクッドクッと音が聞こえるような気がするぐらい激しく出した精液は、許容量を超えて結合部から漏れ出している。

「はぁ……はぁ……いっぱい射精しましたね……❤」
「はぁ……ふぅ……ほ、本当に中に出しても良かったの?」
「はい。だって、土呂さんの精液ですから……❤」

射精が終わり、少し柔らかくなったペニスを華ちゃんの膣から引き抜く。抵抗するようにしぼめられた膣に、尿道に残っていた精液も全て搾り取られる。
華ちゃんは恍惚の笑みを浮かべながら、満足そうに下腹部を大きな手で撫でる。

「どうします、もっとシますか?」
「あーうん……そうだなぁ……」

いや、まだまだ満足はしていないようだ。
絶頂を迎え潤んだ瞳で、上目遣いでもっとシないかと誘ってきた。

「まだ収まらないし、そうしたいのは山々なんだけど……今日はバスで来たし、明日も仕事だからそろそろ片付けて帰らないと……」
「あ……もうこんな時間でしたか……」

だが、時計を見るともう8時前であり、終バスまであと少ししかなくなっていた。この路線は大学方面だからか、休日は9時には最終バスが来てしまうのだ。
流石に互いの体液と体臭が付いている中でバスに乗りたくはないし、このまま部屋を荒らした状態にするのも良くないので、片付けをするとしたらそろそろ始めないと間に合わない。
今までは特に必要はないと思っていたが、こういった時自分の車があったら良かったなと痛感する。

「私もまだまだ土呂さんと居たいですが、土呂さんの都合もありますからね……仕方がないですね。また、お店に来て下さい」
「それが……来週も忙しいだろうから、多分お店には行けないかなと……」
「そう……ですか……」

だったら平日も仕事終わりに、それこそ華ちゃんが例の居酒屋でアルバイトをしている時に会いに行けばいいじゃないかとも考えたが、来週は出張も多くそんな余裕がない。
魔物が多いので『そういった事態』には結構融通が利く会社とはいえ、流石に出張先に迷惑を掛けるわけにはいかないので安易な行動はできない。
だが……寂しそうにしゅんとした表情を浮かべる華ちゃんをみると、流石に心苦しくなる。どうしたものか……

「あ、じゃあ華ちゃん」
「はい、何でしょうか?」

と、少し考えてみたところで、部屋に掛けてあったカレンダーを見てふと思い付いた。

「来週の日曜日、どこかに遊びに行かないかい?」
「遊び……もしかしてデートですか?」
「うんそうだよ。丁度来週は3連休だし、華ちゃんの都合が良ければだけど……」

それは、二人でどこかにデートしに行く事だった。

「はい! 是非行きましょう! アルバイトも土曜日だけですし大丈夫です!」
「じゃあ決まりだね。また場所とか時間とかはメールか電話で決めようか」
「はい!」

まだどこに行くかまでは決めていないが、行く事だけでも決めておいたほうが色々と動ける。
そう考えて俺は華ちゃんをデートに誘い、見事了承を得る事ができた。

「じゃあ……ちょっとシャワー借りていい?」
「もちろん。タオルも置いておきますね」
「ありがとう」

最後にシャワーを借りていろんな液体を流し、俺は華ちゃんの家を出発した。
ちょっと寂しく思いながらも、来週のデートを楽しみにしながら家へと帰ったのであった。
14/09/04 22:55更新 / マイクロミー
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■作者メッセージ
久々の現代SS
前半からエロがあるのは珍しい…のかな?

あとへ続く!

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