変わったことで掴んだ幸せ
まだ日が昇ったばかりの朝、荒削りな岩石があちこちに転がっている道で、オイラはある人間を待ち伏せしていた。
待ち伏せしている理由?……あのいけすかない人間のオスを今度こそ殺すためだ。
毎度毎度挑んでいるのだが一向に殺せない……もう回数なんか忘れた。
そもそもたかが人間のくせにオイラよりも強く、頭も良いのが気に食わない。しかも絶対にオイラにとどめを刺さないのも腹が立つ。オイラには殺す価値もないってか!?
イライラしながらも手に持つ棍棒を構えじっと待っていると…
カツッ、カツッ、カツッ……
道の向こうから規則正しい足音が聞こえてきた。
足音がする方を睨んでいると…銀の鎧を身につけ、腰には大剣をぶら下げている人間のオスが歩いてきた。
顔もはっきりと見える距離まで近づいてきた……間違いない、あのいけすかない奴だ。
「死ねえええええええっ!!」
「……」
奴だと確認したオイラは、一気に岩陰から飛び出し、奴の頭に棍棒を振り下ろした!
だが…………
がしぃぃん……
「……はっ!勝てなさ過ぎてとうとう不意打ちかよ!」
「……チッ!」
奴はいつの間にか腰にぶら下げていたはずの大剣を鞘から抜いて右手に持ち、そのまま奴自身の頭上に振り上げ、オイラの渾身の一撃をあっさりと防ぎやがった。
「そもそもお前殺気出過ぎなんだよ。隠れていたってわかるっつーの」
「う、うるせー!!オイラはテメエを殺すつもりでやってんだ!殺気ぐらい出るわ!!」
不意打ちが失敗してしまったので、距離をとるために奴の大剣を踏み台にして後ろに跳んだ。
やはり一筋縄ではいかないか。剣をオイラに向ける奴は完全に隙が無くなっていた。
「そもそも何でお前は俺を殺そうとしているんだ?」
「オイラ達魔物が下等種族である人間を襲い喰らうのは当たり前だろ?テメエはそんなことも知らない馬鹿か!?」
上位種である魔物が下等種の人間を殺し喰らう、これはこの世界の常識である。
人間だってそこいらの魚や動物を殺して喰らっている…生きる為の行動だ。別に普通の事である。
そんな常識すら知らないとは…もしかして奴は本当はオイラ以上に馬鹿なのか?
「いや、そうじゃなくて…何でお前個人は俺個人を殺そうと躍起になっているんだと聞いているんだよ馬鹿」
「馬鹿って言うんじゃねえー!!素直にオイラに殺されないテメエが気に食わないからだ!!」
「……素直にお前を殺さない俺が気に食わないのね」
「だ・ま・れ!!今日こそ殺す!!」
これ以上無駄に会話をしていても腹が立つだけなのでオイラは一気に奴の懐に踏み込み棍棒を腹に向けて振りかぶった。
だが奴は軽く後ろに下がりオイラの攻撃をかわし、大剣をオイラの頭に向けて振りかざしてきた。
だがオイラは空いている方の手で剣を弾き返し、また大きく後ろに跳び距離をとる事にした。
「威勢の割には大した事ないな」
「うるせー!!余裕ぶってんのも今のうちだ!!」
オイラは近くにあったオイラの背の高さと同じ位大きな岩石を持ちあげ、奴にめがけてぶん投げた。
しかし奴はその岩石が当たる前にとても普通の人間では不可能なほど高く真上に跳びあがりかわした。
過去にも同じ事をしていたが、どうやら履いている靴に細工がしてあるようで、その為あそこまで高く跳べるらしい。
だが、ここまではオイラの予想通りだ。
「かかったなあ!!」
そのままオイラは上空にいる奴に向かって跳びあがる。翼など持っていない人間の奴では空中では上手く動けないはずだ。
オイラはありったけの力を込めて奴の顔面めがけて棍棒を振り抜いた。跳ぶ際に奴は重りになる剣を地上に残しているのでさっきのように防がれる事もなく奴の顔面を粉砕出来るはずだった。
パシィィィン!!
「はい、残念!狙うところが悪かったな!」
「なっ!?クソッ!!」
だが、顔面に当たる前に奴の両手がオイラの棍棒を挟み込むように受け止め、力を別の方向に流した。そのせいでオイラのバランスは一気に崩れ、逆に身動きが取れなくなり……
「それじゃあおやすみゴブリンさん!」
「クッソォォ……グガッ!!」
奴は両手で握り拳を作ってオイラの背中を力強く殴り、オイラは地面に向けてたたき落とされた。
地面に叩き付けられた衝撃で丈夫な魔物…ゴブリンであるオイラも流石に大きなダメージを負い、意識が朦朧としてきた。
「チ………ク…………ショ………」
「ふう…これに懲りたら二度と俺のところに来るなよ…って言っても来るんだろ?」
「あ…たり……まえ………だ!」
オイラと違い綺麗に着地した奴は余裕な顔をし、大剣を鞘に戻しながらオイラに話しかけてきた。
その余裕がムカつくし殺してやりたいが…ダメージのせいで身体が思うように動かない。
「まあ勤務前の肩慣らしにはちょうどいいから別にいいけど、流石に明日は休日だから来られると面倒なんだけど」
「る……せ……え………明日……も………覚悟……しとけ………!」
「はいはい……そんじゃあ今度こそおやすみ」
ガコッ!!
鞘に入った大剣で奴に頭を殴られ、オイラの意識は闇に落ちた。
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「うぅ……チクショウ……今日も殺せなかった……」
太陽がちょうど一番高い場所に来た頃、オイラはようやく意識を取り戻した。
意識を取り戻したってことは、やはり奴はオイラの命を奪っていかなかったようだ。
しかも奴と戦った道から少し離れた、目立たない岩陰まで移動させられている。道の上にオイラが倒れていても邪魔だからどかしたのか、それとも気絶しているオイラが他の誰かに止めを刺されないようにする為か、どちらにせよご丁寧な事である。
その余裕のある行動が、今日も殺せなかったという気持ちとあいまって余計に腹立たしく感じる。
「はぁぁ……帰るか……」
このままここにいたところで何も出来ないし、オイラはとぼとぼと寝床まで帰る事にした。
「よお、その様子からするとまたダメだったようだな!」
「いい加減諦めたらどうっすか?」
「うるせー黙れ!」
帰ったとたんに、頭から鋭い角を生やし、ニタニタと笑いながらこれまた鋭い牙を見せつけている、いかにも意地の悪そうな醜い顔つきのチビのオスのゴブリン達がオイラの神経を逆撫でするような事を言いながら話しかけてきた。
と言っても『いかにも意地の悪そうな』以降の特徴は人間共にとっての見た目であり、オイラ達ゴブリンのオスにとってはいたって普通の見た目である。
「まあまあエリトロ、オレっちの猪の肉わけてあげるから落ち着けっすよ」
「おっ!サンキュー、アルトロ!」
「ハッ!物で釣られてやんの!」
「黙れイドー!殺すぞ!?」
「だから落ち着けっすよ〜!!」
『〜っす』って喋り方をする方がアルトロ、ムカつく言い方をしてくる方がイドーという名前のゴブリンだ。ちなみにエリトロってのがオイラの名前。こんなやり取りをしているが、オイラ達は群れの中では特に仲が良いのだ。
「ふぅ…腹も満たされた事だしオイラはもう寝るわ」
「えっ!?もう寝るっすか?まだ夕方前っすよ?」
「奴は明日休みだって言ってたからな…早起きして奴が無防備のときに殺しに行く」
「うわー、エリトロ卑怯っす」
「違うわ!休みの日の奴はそのタイミングじゃないと外に出ないんだよ!」
「なんで一人の人間のオスの行動パターンを把握してるんだよ…キモいな」
「奴を殺す為にいろいろ調べたんだよ!キモいとか言ってんじゃねーよ!!」
そう、奴を殺すためにオイラは努力して奴の事を調べあげた。
奴は自分が暮らしている小さな村からこの寝床がある辺りをちょうど中間地点として隣にある大きな都市まで週6日勤務している。仕事内容はその都市を守る騎士、しかも上位の実力者ってところだ。それゆえに鎧や大剣をいつも装備して、靴に細工をしてあるらしい。
認めたくは無いが、だからあんなに強いのだ。
さらに週に一日だけある休みの日には、この寝床とは正反対の位置にある川まで趣味である釣りに朝早くから行っている。
そして釣りが終わった後は次の日まで家に籠りっぱなしだ。どうやら家の中で軽くトレーニングをしつつも身体の疲れを全力で癒しているらしい。
流石に奴の家の場所まではわからないし、わざわざ奴の住む村まで襲いに行く気にもならない。今は奴以外の人間を喰らう気分でも無いし、村人全員に囲まれたら流石にオイラ一人では敵わないだろうからな。
だから明日奴を殺しに行くためには早起きをして村と川の間も道で待ち伏せしなければいけないのだ。そのためにもオイラはもう寝る事にした。今日のダメージを完全回復させる目的もある。
「はぁ…まぁせいぜい頑張ってくれや」
「応援してるっす!」
「おう、ありがとうな。そんじゃあおやすみ………チッ!」
なんだかんだ言いつつもオイラを応援してくれているイドーとアルトロにありがとうと言った後につい「そんじゃあおやすみ」なんて言っちまった。
これは奴がオイラを気絶させるときに絶対に言う言葉なので奴の事が脳裏に浮かび上がり腹が立った。
そんなムカムカした気持ちのままオイラはすぐさま寝た。
「あーあ、エリトロの奴相当苦労してるな」
「ホントっすねえ……………ところでイドー、ちょっと聞きたい事があるっすけど」
「ん?なんだ?」
「なんか…なんて言ったら良いかよくわからないっすが…こう、身体がざわつくって言うか…変な感じしないっすか?」
「はあ?そんな事ない……ことも無いな。確かに変な感じがする…空気が変と言うか、何か違和感があるな……」
「やっぱりオレっちだけじゃないっすか…なんすかねこれ?」
「さあな…嫌な気はあまりしないが……俺達も早く寝た方がいいかもな…」
だから、二人のこんな会話もオイラには聞こえなかった。
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オイラは、何故か真っ暗な空間をふわふわと漂っていた。
この空間は、どこか冷たくて、押しつぶされそうな気がして、苦しかった。
怒りが、悲しみが、哀れみがオイラにまとわりついている感じがした。
自分の姿すら見えない。助けを呼ぼうにも声が出ない。
それどころか思考すらまとまらない…ってこれは夢か?
おそらく夢だろうけど…ただの夢とは思えなかった。
どこか、こう、オイラの精神とか、そんな感じの…
って何を考えているんだか。やはり思考がまとまらない。
そのままぼうっとしていると、いきなり大きなうねりが襲って来た。
だけど、そのうねりが、苦しみや悲しみ、怒りや哀れみなど、オイラを苦しめていたものをどこかに飛ばしていったようだ。
すがすがしい。とても気持ちが良い。
すると、いきなり目の前の闇にヒビが入った。
どんどん亀裂が広がって、やがて真っ暗な空間が崩れ去った。
崩れ去った先には真っ白な……いや、どちらかと言うとピンク色の空間が広がっていた。
このピンク色の空間は、どこか暖かくて、ふわりと抱擁してくれている気がして、嬉しかった。
癒しが、喜びが、幸せがオイラを包みこんでくれている感じがした。
目の前が全てピンク色に染まった瞬間、何故か人間のオs…男の姿……奴の姿が思い浮かんだ。
いつもなら腹が立ってくるはずなのに、何故か幸せな気分で満たされていく。
奴の事を鮮明に思い浮かべるたびに、心が温まっていく。
まるで自分と言う存在が自分のまま他の存在に変えられたような、不思議な気分だ。
幸福を感じながら、オイラの意識はまた遠退いて……
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ガバッ!!
朝になり目が覚めた。
なんだか不思議な夢を見ていた気がする。あんまり内容は覚えてないけど、不思議だった事だけは覚えている。
とりあえず準備をして奴を待ち伏せしに行く事にする。
待ち伏せする理由?………それは…………あれ?
(オイラ…なんで奴を待ち伏せするんだっけ?)
……ああ、そうだ。今度こそ奴を殺して喰らうためだ。
なんで今忘れていたんだろうか?毎日やっている事なのに。
(しかし、なんか殺したい気分じゃないんだよなあ…)
今自分で奴を殺す事を考えただけで少し気分が悪くなった気がする。今までそんな事ありえなかったのに。
(……まあいいや。とりあえず奴に会いに行くのが日課みたいになってるし出発するか。なんか行かなかったらそれはそれで気持ち悪いしな…)
オイラは愛用している自分の棍棒を手に持ち、少し寝ぼけているまま寝床を出発した。
寝ぼけていたから、いつもと自分の目線が違っても気付く事が無かった。
ガサガサッ
(ここらへんで待っていれば釣りが終わった奴が来るはずだ…)
奴が住んでいる村と魚を釣りに行っている川を結ぶ道に着いたオイラは、早速身を隠すのに最適な叢の中に隠れて奴を待ち伏せする事にした。
何故か以前同じ場所に隠れた時よりも隠れやすかった気がする。まあ草が成長したのだろう。
じっと待つ事約20分…
カツッ、カツッ、カツッ……
道の向こうから毎日聞く規則正しい足音が聞こえてきた。
足音がする方をじっと見ていると、いつもと違い青い無地のTシャツを着て釣り道具を持ちつつも、オイラへの対策かいつもと同じ靴を履き大剣を背負っている人間の男が歩いてきた。
顔を確認するまでもない……間違いなく奴だ。
ガササッ!!
「やいっ!今日こそお前を殺して喰らっ…て……………?」
「やっぱりきt……ん!?誰だキミは!?」
奴の顔が確認できる距離まで近づいてきたので叢から飛び出し奴を襲おうとしたのだが、奴に向かって叫びはじめたときの自分の声に違和感があった。
いつもの枯れた声ではなく、どこか可愛げのある声だった。
「だ、誰って、いつも殺しに来てるのにオイラの事がわからないってのか!?」
「え?いつも俺を殺しに来て返り討ちにしているゴブリンなら知っているが、君みたいに人間の少女みたいな魔物…だよな?耳尖ってるし角生えてるし…まあとにかくキミみたいなのは初めて見る気が…」
さらに奴が訳のわからない事を言ってきた。
だが、オイラがなんで人間の少女に見えるんだ?目がおかしくなっちまったのか?とは言えそうにもない。
なぜなら、まさしく自分の声がそんな感じだったからだ。
しかも、いつもよりも奴の背が高く感じる。というより、地面がいつもより近く感じるのでオイラの背が低くなった気がする。
なんとなく自分の身体を見てみると……
「……なんだこれ!?オイラの身体どうなってるんだ!?」
「いや…その手に持っている棍棒…それにその喋り方…まさか!?」
オイラの自慢の筋肉が一切無く、身体のあちこちが丸みを帯びていた。
しかもただでさえ短かった胴体や足がさらに短くなっている。
それに自分のやけに潤っている肌を触ってみると、プニプニとしてて気持ち良かった。
でも、オイラはこんな肌じゃなかった。とても自分の身体とは思えなかった。
それに…なんか股間に違和感を感じる。何故かスースーしている。
もしやと思いパンツの中を覗いてみると……
「…無くなってる…………………」
「お前、あのゴブリンなのか!?」
男に付いているはずのモノが無くなっていた。
代わりに女に付いているはずの一本の筋があった。
なんで!?なにがどうなってるの!?
「…おーい、人の話を聞いてるかー?」
「…はっ!わ、わるい……って顔近すぎだ馬鹿!離れろ!!」
パニックになっていたオイラに奴が話しかけてきた。
それでオイラは正気に戻ったが、まさしく目と鼻の先に奴の顔があったのでビックリした。
とりあえず突き飛ばしたが、何故かオイラの心臓がバクバク鳴っている。顔もほんのりと熱を帯びているようだ。
どうやら恥ずかしかったらしいが……なんでだろうか?
「とにかく、お前はいつものゴブリンだって事でいいんだな?」
「ああ…いつもテメエに会いに来ているゴブリンのエリトロだ!」
「えっ?お前名前なんて有ったの?」
「あたりまえだ!!ってそういえば名のったこと無かったっけ」
というより、なんでオイラ今こいつに名前を言ったんだろう?
聞かれたとしても言うものかと思っていたはずなのに……?
「で、なんでそんな人間の少女みたいな姿に化けているんだ?」
「し、知らねえよ!オイラ今自分がどんな顔してるかもわからねえんだぞ!!」
「ふーん、俺を油断させる作戦とかでは無いんだな。俺好みの顔をしていたからてっきり作戦の一つだと思ったよ」
「えっ!?」
今のオイラ、こいつの好みの顔してるんだ……嬉しいな…
…ってなんで嬉しいんだ!?意味わからん!!
まあそれはともかく今のオイラはどんな顔しているんだろうか……もの凄く気になる……
「な、なあ…テメエの家に鏡ってあるか?」
「あるにはあるが…それがどうした?」
「…テメエの家まで連れていってくれないか?」
「はあ!?なんで!?」
「…今の自分の姿が凄く気になるけど、オイラの寝床に鏡なんてないから……」
「…そういって俺の家を覚えて、寝ている時に俺を殺しに来るつもりか?」
「そんなんじゃねえよ!!ただ自分の姿が気になるだけだ…だから……」
「…はぁぁ、しょうがねえな…じゃあついてこい!」
「ホントに!ありがとう!」
やったあ!こいつの家に行く事が出来るんだ!!
…ってなんでオイラは家に行ける事そのものを喜んでいるんだ!?自分の顔を確認できるから嬉しいんだろ!?
オイラが悶々としている間に、奴はすたすたと先に歩きだしていた。
それを見たオイラは、遅れないように急いで追いかけようとはせずに…
「な、ちょっとまってくれよ!」
「ん?なんだ?」
「オイラを抱っこしてくれ!」
「……はああ!?」
奴を呼びとめてこんな事を叫んでいた。
抱っこしてくれとか言った自分ですら驚いているのだから奴が目を見開いて驚くのも無理は無い。
「お前、本当に何考えているんだよ?」
「自分でもわかんねえよ!あとオイラはお前じゃない!エリトロだ!」
「はいはい、俺もテメエじゃなくてトレオだよ」
「!?……トレオ……トレオ………」
奴が初めて自分の名前を言ってくれた。それを聞いたオイラは忘れないようトレオに聞こえないようにその名前を復唱した。
「おーい、結局エリトロは俺の家に来るのか?来ないのか?」
「行く!…でもさ、この身体思うように動かしづらいから抱っこでもしてくれないと置いてかれそうで…」
「あのなあ…毎日俺を殺しに来てる奴を抱っこすると思うか?」
「…ううん……」
そりゃあそうだよな。オイラだってそんな相手を抱っこするのは抵抗ある。
でも、トレオと離れて歩きたくないしなぁ……
あ、そうだ。
「じゃあさ、せめて手を繋いで歩いてくれないか?それならオイラもうかつにトレオに攻撃とか出来ないしいいだろ?」
「まあそれぐらいなら…ただしその棍棒は俺が預らせてもらうぞ」
そう言ってトレオはオイラが持っていた棍棒を右手で担ぎ、左手をオイラに差しのべてきた。
力を入れ過ぎて痛くするといけないから、オイラはその手を優しく握った。そしたら握り返してくれた。
トレオの手はとても温かかった。
心臓のドキドキがとまらない……バレたら恥ずかしいな……
「へへっ!」
「なんだよ、急に笑い出して…」
「いや、なんでもないよ……えへへっ!」
トレオと手を繋げた事が嬉しくてつい笑ってしまった。
なんだか今まで感じたことないほど幸せだった。
で、そのまま少し歩いてから思ったんだ。
『なんでオイラこんなに嬉しそうにしているんだろうか?』と。
なんかトレオの名前を聞いたあたりからトレオと触れ合っていたいという自分の考えを素直に受け入れていた。
トレオと触れ合っていたいと思うなんて昨日までは絶対あり得ない事だけど…今はむしろトレオを殺そうとしていた昨日までのオイラの行動があり得ないと思っている。
いったいオイラの身に何が起こったのだろうか?この心境の変化はいったいなんだろうか?
疑問はまだ尽きないが、今は何も考えずにトレオと手を繋いで一緒に歩いているという幸せをかみしめていたいので、オイラはこれ以上あれこれと考えるのをやめた。
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「よし、着いたぞ!」
「ここがトレオの家…意外と大きいな」
あっという間にトレオの家に着いてしまった。
いや、実際は20分以上掛ってはいると思うが、それを感じさせない程トレオと手を繋いで歩くのが楽しかったのだ。
で、トレオの家なのだが、一人暮らしをしている人間の家にしては大きかった。それこそ一家族が普通に生活していけるほどには大きい。
確か昔調べたときにトレオは独身でこの村に一人で暮らしていると情報を得たので、この大きさの家を持っているとは思っていなかった。
「まあ、昔は両親も住んでいたしな」
「ふーん、そう言えばトレオの両親は?」
「…もう何年も前に母親は病気で………父親は魔物に襲われて死んだよ」
「えっ!?……あっ……ごめん……」
父親は魔物に襲われて死んだと聞いた瞬間、オイラは胸が苦しくなった。
オイラだって魔物だ。もちろん人間を殺し、喰らったこともある。
だから、自分が責められている気がして自然と謝罪の言葉が出た。
「別にエリトロが気にすることはねえよ。お前が俺の父親を殺したわけじゃないんだし。俺の父親も騎士だったからいつ魔物に殺されてもおかしくは無かったしな」
「でも……」
「だから気にすんなって!お前らしくないぞ!」
トレオはそう言ってくれるけど、オイラの気分はなかなか晴れなかった。
「ほれ、ここが洗面所だ。鏡はここにあるからじっくりと見ていいぞ!」
オイラはトレオの家の中に入り、トレオに鏡のある洗面所まで案内された。
早速鏡を見ようとしたが、残念ながら今のオイラの身長では鏡が見れる高さに届かなかった。
その様子を見たトレオは笑いつつも椅子をどこかからか持ってきてくれた。
オイラはその椅子に乗って立つ事でようやく鏡で自分の顔を見る事が出来た。
「うわあ〜!!」
その鏡に映っていた顔は、とてもオイラの顔とは思えなかった。
鋭く獲物に突き刺せるようになっていた角は、立派なのは変わらないままどこか愛嬌のある丸みを帯びたものに変わっていた。
獲物の肉を引き裂けるように生えていた牙は、八重歯のように可愛げのあるものに変わっていた。
見たものに怖さを与えるように鋭かった目つきは、青緑色の透き通る瞳と共に凛々しい目つきに変わっていた。
ボサボサで汚らしい土色の髪は、赤茶色で艶のあるショートヘアーに変わっていた。
なによりも意地の悪そうで見にくかった顔が、人間の女の子のように可愛く愛着が湧くものに変わっていた。
「わあ〜!!すっげー可愛い!!これがオイラなのか!?」
オイラがとびはねるとと鏡の中の女の子も同じようにとびはね、オイラが目を見開くと鏡の中の女の子も目を見開いて輝かせており、オイラが喋ると同じように口を動かす。
つまり、鏡の中の可愛い女の子はオイラなのだ。
「満足したか?じゃあさっさと帰れよ」
「えっ………あっ…………」
はしゃいでいたオイラの後ろからトレオが帰れと言ってきた。
自分を殺そうとしていた魔物をいつまでも自分の家に置いておきたくないのはわかる。
だけど、その言葉を聞いたオイラは大ショックだった。
もっとトレオと一緒にいたかったから、帰れと言われて悲しくなってきた。
だから、オイラは……
「あっ………あのさぁトレオ……」
「ん?どうした?まだ何かあるのか?」
「いや……あまりにも自分の姿が変わっているショックで気分が悪いから少しこの家で寝かせてもらえないか?」
「……ハアッ!?」
嘘をついて、この家にまだ居られるようにしようとした。
「お前ホントどうした!?おかしなこと言ってるって自覚あるか?」
「一応ある………」
まあこんな反応されるのは予想ついていた。
だけどまだチャンスはある。
「でもさ……例えばトレオがある日急に女の子になったとしたら平気でいられるか?」
「……いや、確実にショックをうけるな」
「だろ?しかも身体の勝手が違うんだぜ?なるべく動きたくなくなるだろ?」
「まあ……でもお前さっき嬉しそうにはしゃいでなかったか?」
「うぐっ!?」
さっきまでのはしゃぎようを突っ込まれてしまった。確かに元気に跳ねていたから疑問には思うわな。
でもここで認めてしまうと速攻で帰らされてしまうだろう。それだけは何としても避けなければ。
「えーっと、その…確かに可愛くなってたから喜びはしたけど、よくよく考えたら昨日までのオイラの面影がほとんど無くなってる事に気づいて、しかも性別まで変わってるから急に不安になってきたんだよ…」
「ふーん……本当か?」
「ここで嘘をついてオイラに何のメリットがあるって言うんだよ?」
もう少しだ。もう少しで納得してくれそうだ。
「まぁ…俺の家の中じゃあ例え襲ってくるにしてもどこに何があるか把握できてる俺の方が有利だしな…確かに嘘をつくメリットは無いなあ……」
(メリットはトレオとより長く一緒にいられる事だけどな…)
「まあしょうがないか。いいぞ、少しゆっくりしていけ」
「本当に!?ありがとう!!」
よし!これでもっと一緒に居られる!!
「じゃあ連れて行くけど…また手を繋げって言うんじゃないだろうな?」
「ダメか?」
「はぁ……そんな可愛い顔して見つめてくるな。調子が狂う」
可愛いか……へへっ!
「しょうがないなあ…なんならさっきの要望通り抱きかかえてやるよ」
「えっ!?ちょ!!!?」
そう言ったトレオは、オイラの膝の下に左腕を差し入れ足を支え、肩から首にかけて右腕を回して上半身を軽く起こした。
つまりトレオにお姫様抱っこされている……ってこれはお姫様抱っこっていうのか。何で知っているんだろう?まあいいや。
オイラを支える為だろうけど、この抱きかかえ方はトレオとの密着度が凄い。
「な、なな、ななななにしてんだあ!!!!」
「何って、辛そうだから抱きかかえただけだろ?嫌なのか?」
「い、嫌じゃないけど、び、ビックリしただろ!!」
「そうか。あれ?お前顔赤くなってない?熱でもあるのか?」
「知るか!!」
心臓が暴れまくってる。身体中が燃えているんじゃないかと思うぐらい熱い。
かといって身体の調子が悪いわけじゃない。むしろ嬉しくて元気になってきた。
好きな人の顔が近い。好きな人の呼吸を感じる。こんな素晴らしい抱っこがあったなんて知らなかった。
「そうそう、ゴブリンが普段どんな場所で寝てるか知らないけど、とりあえず俺がいつも使っているベッドでいいか?」
「ええっ!?全然良いよ!!むしろ大歓迎だ!!」
トレオが自分のベッドでいいかと聞いてきた。
トレオがいつも使ってるベッドってことは、大好きなトレオの匂いが充満しているはず。そんなところで寝られるなんて幸せ以外の何者でも無いじゃないか。
「了解。じゃあちょっとの間揺れるかもしれんが我慢してくれよ!」
多少の振動は確かに感じるけど、それよりも大好きなトレオの温もりが全身で感じられるので我慢も何もあったものじゃない。
しかもオイラに気遣ってかかなりゆっくり動いてくれているのでそのぶんお姫様抱っこを堪能できるのだ。気分が悪いと言った手前我慢しなければいけないのにニヤニヤが止まらない。
…………………………えっ!?
「……」
「ん?どうした?急におとなしくなったけど…体調でも悪くなったか?」
「い、いや、何でもない!大丈夫だ!」
「それならいいが…もしなんかあったら遠慮せずに言えよ」
「お、おう…」
(オイラ、今…トレオの事をどう思っていた?)
(好きとか…大好きとか思ってなかったか?)
(しかも…異性の相手として好きだと…)
(どうして?トレオは人間、オイラはゴブリン…魔物だぞ!)
(魔物が人間に恋をするなんて…サキュバスじゃあるまいし…ありえないだろ!?)
(しかも、今は女の子の身体になっているけど…オイラは男だ。)
(でも…この胸の高鳴りは……このトレオが好きという感情は……間違いなくオイラの本物の気持ちだ。)
(何故だろう…昨日までは嫌っていた相手のはずなのに…好きって気持ちが溢れかえってくる。)
(それに…何故か下腹部が疼く…まるでトレオの何かを欲しがっているように。)
(オイラの身体の変化が原因だろうけど…別に嫌じゃない。)
(むしろ今は人間の女の子に近い身体をしているんだ…人間の男であるトレオを好きになってもおかしくは無い。)
(おかしくは無いのだったら…何も迷う事ないじゃないか!)
(オイラはトレオの事が大好き。ずっと一緒に居たいと思うほど大好き。それでいいじゃないか!)
そう考えたオイラは、寝室に着いたらトレオに気持ちを伝えようと決心した。
====================
「これがトレオの部屋…トレオのベッド…」
「ああ、ちょっとサイズを間違えて注文したやつだから少し大きいが気にしないでくれ」
お姫様抱っこのまま、あまり物が置かれておらずすっきりしているトレオの部屋のベッドまで運ばれた。
二人ぐらいなら一緒に寝られそうなサイズのベッドの上にそっと下ろされ、幸せの時間が終わってしまった。
だけどがっかりしている暇は無い。今からが大勝負だ。
「そんじゃあ気が済むまで寝ててくれ。一応お前が何かやらかさないように俺はこの椅子に座って見張っているがな」
「あ、あのさあトレオ…ちょっとこっちに来てくれないか?」
「ん?なんだ?何かあるのか?」
オイラは上半身を起こしてベッドに腰掛け、隣に腰掛けるようにトレオに言った。疑問はあるようだが、嫌な顔をせずに来て腰掛けてくれた。
「いや、ちょっと…上手く言えないんだけどさ…あの……その……」
「なんだ?言いにくい事なのか?」
でも、恥ずかしくってなかなか言いだせない。その間もトレオはオイラの方をじっと見つめてくるから余計に言いづらい。
「うんと……えっと……………………もういいや!えいっ!」
「うおわっ!!いきなり何するんだ!?」
言いづらいのでオイラは行動で気持ちを伝える事にした。
ベッドに腰掛けるトレオの上半身をおもいっきり押し倒しトレオの顔に手を添えて、突然の事で驚いているトレオの唇に向かってオイラの唇を押しつけてやろうとした。
つまり、オイラはトレオとキスをしようとした。こっちのほうがオイラの好きって気持ちが伝わるような気がしたからだ。
でも……
カチャッ!
「……!!?」
「お前……やっぱり俺を襲う気だったのかよ。いつもと完全に態度が違いすぎるから油断してたぜ」
気がついたら、近くに置いてあったのか、オイラの首にトレオの大剣が押し当てられていた。
トレオの表情は、青筋を浮かべながらオイラを鋭く睨みつけていて…怖かった。
「どうせ俺が完全に気が抜けているときに殺してやろうとしたんだろ?ここまで芝居や変装が上手いなんて思いもしなかったぜ。お前本当にゴブリンか?ゴブリンにしては頭が良いじゃないか」
「……」
どうやら、トレオはオイラが殺すためにここまで芝居や変装をしたと考えているようだ。
「………ちがう………」
「ん?何か言ったか?」
確かに、オイラは昨日までトレオを殺そうと躍起になっていた。勘違いされても仕方は無い。
「ちがうんだ……ちがうんだよ……!!」
「違う?何が違うんだ?俺を殺そうとしたんじゃないのか?」
仕方は無いけれど…でも……!!
「ちがう!!オイラはトレオにキスしたかっただけだ!!」
「……はあっ!?」
でも……拒絶されたのは悲しい。
「オイラは…ひっく……トレオの事が……ひっく……一人の男として好きなだけなんだ!!」
「へっ!?はっ!?えっ!?」
悲しくて、苦しくて、辛くて……
「なのに…ぐすっ……それなのにぃ……ぅ、ぅわあああああああん!」
「ちょっ!?な、泣くなよ!?」
自然と……涙が溢れだしてきた。
「うええぇぇぇぇぇぇぇぇぇん……!」
「なんで泣くんだよ!ていうかキスしたかったとか俺の事好きとかどういう事だよ!?」
「しるかバカ!ヒトのキモチもかんがえないで…うわあぁぁぁぁあん……!」
「そんな事言われてもなぁ……んー……」
溢れた涙は止まらない……いくら泣いても止まらない……
「んー………あーもーくそっ!!」
難しい顔をしてずっと何かを考えていたトレオだったが、急に決心したような顔になり…
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁあんぷっ!?」
オイラの顔にトレオ自身の顔を近付け……泣いてる為に開きっぱなしだったオイラの唇を、トレオの唇でふさいできた。
「んっ………こ、これでいいか?泣きやんだか?」
つまり、トレオのほうからオイラにキスをしてくれた。
「えっ、う、うん、嬉しいけど…なんで急に…」
トレオはいつの間にか大剣を遠くまで放り投げてオイラを抱きしめていた。
さっきまで拒絶していたのに急な態度の変わりようにオイラはついていけなくなっていた。
「まあ……その、なんだ……まず、エリトロの気持ちも知らないで拒絶した事を謝る。ごめん」
「え、うん。こっちこそ急にキスしようとしてゴメン…」
「それでさ…やっぱり今まで俺の事を殺しに来てたわけだし、今日のお前の変な行動は俺を油断させるための芝居だとずっと思っていたんだけど…」
「ちがうよ…」
「ああ、違った。お前の涙を見て、告白を聞いて、本気なんだろうなと思った」
「うん…で、なんでキスしてくれたの?」
一番聞きたいのはここだ。
泣いているのを止めるだけならキスをする必要は無い。それこそ最悪オイラの息の根を止めれば済む事だ。
「そりゃあ……ここまで俺の事を想ってくれてる『女の子』を好きにならない奴はいないだろ?顔も俺好みだし…」
「えっ!?そ、それじゃあ…!?」
女の子として好き…つまり、トレオはオイラの事が……!!
「ああ、俺もお前が、エリトロが好きだからキスをした。わかったな!」
「……うんっ!!」
顔を真っ赤にしながら、トレオがオイラの事を好きだと言ってくれた!
互いに好きだってわかった瞬間、他の事が何もわからなくなるほどの幸福に包まれた。
これが、女としての幸せなんだろうか。もう男に戻りたいとは思えない。
だからずっと、オイラは女としてトレオと幸せに暮らす。ただそれだけでいいのだ…
って感じには終われなさそうだ……
「はぁ……はぁ……トレオぉ……」
「どうしたエリトロ?顔がさっきよりも真っ赤だし息も荒いぞ!」
何故かさっきから落ち着かない。オイラの下腹部が何かを訴えているのかキュンとする。
「おい!本当に病気とかじゃないよなあ?」
「わからない…オイラどうしたんだろ……?」
もっとトレオに近付きたい。もっとトレオを感じてたい。そんな想いが溢れだす。
「はぁ……はぁ………ん?」
「どうした!?」
「いや…なんか……トレオからいいにおいがする……」
「はい?」
トレオに近付くにつれ、どこからかいい匂いがする。その匂いを嗅いだら、オイラの身体はその匂いのもとを欲しがっているとわかった。なのでどこからその匂いが出ているのかを探す。
「ここからいい匂いがする……」
「えっ!?ま、まて!何する気だ!?」
その匂いは、トレオの身体全体に感じるが、特に股の間から強く感した。
そこに何があるかを考える事もなく、オイラはもっと匂いを感じたいとトレオのズボンに手を掛けた。
トレオはオイラが何をしようとしているかわかったようで必至に抵抗をしているが、オイラは自分でも驚くような強い力でトレオの抵抗を払い除け身体をベッドの上に押し倒し一気にズボンをおろした。一気に下ろしたせいか下着まで一緒に下ろしてしまったようだ。目の前にトレオの逸物が現れた。
「……ふわぁぁぁあ!」
「おい!ジロジロ見るな!例え昨日まで男だった奴でも女に見られて良いもんじゃないんだよ!」
まだ一切勃っておらずふにゃってしているのにもかかわらず大きいトレオの逸物を見たとき、オイラの身体が求めているものの正体がわかった。
わかったところで、オイラは何の抵抗も無く……
「あーん……ぱくっ!」
「うわあ!な、なにしてんだ!?はううっ!」
トレオの逸物を口を大きく開けて銜えた。
オイラはとりあえず逸物を銜えたまま顔を上下に動かしてみた。
たまに舌を使って裏筋を舐めたりすると気持ちよさそうな声を出してくれる。
そのまま裏筋を舐めたり顔を動かしていると、だんだんトレオの逸物が硬く太くなってきた。
「じゅぷっ、じゅぽっ…ほうは、ひほひひいは?」
「ひうっ!く、口に入れたまま喋らないで!ひあっ!」
「ふふっ、はんひへふへへふほは…」
もしかしてこの身体の本能が働いているのか、オイラ口でこう言う事をするのは初めてなのに感じてくれているようだ。もうオイラの口の中に入りきらないほどトレオの逸物は大きく膨らんでいた。
さらに顔を動かして刺激を与え続けているとその先端から何かの粘液が溢れてきた。恐る恐る舐めてみると、とてもおいしく感じた。けれど、真に欲しいものとはかけ離れている気がした。
なのでオイラはさらに顔を動かす速度をあげて、舌で粘液が溢れている所や膨らんでいる亀頭部分を舐めまわした。時折吸ってみたり甘噛みしたりするとビクッと大きく動く。
「や、やめろエリトロ!出しちまう!」
「じゅぷっ、じゅぽっ、ちゅぱ、ずずっ…れるる……」
「ああっ、もう、もう…!!」
もうすぐ何か出そうなのか、逸物の膨らみがさらに大きくなった。トレオは必死に耐えているが、早く出してほしいオイラはとどめとして、自分の八重歯のようになった牙をトレオのカリ首に引っかけた。
「うあっ!!うあぁぁああああ!!」
「んぶっ!?」
その瞬間、トレオの逸物が暴れながらオイラの口の中に何かを…というか精子を吐き出した。
溢れ出る精子をオイラは零れないように舌で全部受け止める。舌の上にかかったトレオの精子の味は、とても甘く感じた…いや、甘いだけじゃなく、この世のあらゆる物の中で一番おいしいものと感じた。
オイラはそのおいしいものを夢中で飲み始めた。もちろんトレオの尿道内に残っている精子も残さず飲むために吸ったりした。
そんなトレオは射精した疲れからかぐったりしている。
「トレオ〜、トレオが出した精子おいしかった!」
が、トレオの精子を飲んだからかオイラの下腹部は更に熱を帯びて、まるでこっちにも精子を飲ませろと言わんばかりに疼いている。なのでここで終わらせる気は無いので元気になってもらわねば。
「でも、今度は…」
オイラは着てるものを全て脱いで全裸になった。
トレオの精子を飲んで興奮しているからかすでにオイラの乳首は勃っていた。それにさっきから精子をよこせと子宮が疼いているせいか、オイラの秘部はもういつでもトレオの逸物を受け入れられるように濡れていた。
「オイラのここにおいしい精子を飲ませてほしいな〜」
その濡れている秘部を指で押し広げトレオの顔の前に持っていき、おねだりしてみた。
すると、トレオは目を見開きゴクッと喉を鳴らしたかと思ったら、呼吸を荒げながらガバッと起き上がり逆にオイラをベッドに押し倒した。
急に景色が変わったことで混乱していたが、オイラの足と股に何か熱を持ったものが触れている事に気付いた。
視線をオイラの下半身に向けると、トレオがオイラの足を広げながらすでに肥大化している逸物をオイラの秘部に擦りつけていた。
オイラの筋に沿ってトレオの逸物が動くたびに痺れるような快感がくるけれど、子宮が疼きまくっているオイラにはおあずけ状態のままでかなり切なくなってくる。
「あぁ……トレオ…擦りつけるだけじゃなくてぇ…早く入れてくれぇ…」
もどかしくて我慢が出来なくなってきたので早く入れてと催促したら…
「そんな事言ってもなぁ……俺初めてでよくわからねえんだよ…」
「えっ…?うそぉっ!?本当に!?」
「恥ずかしながらな……」
まさかの童貞宣言されました。
ということは、オイラが初めての相手になるんだ……やったあ!!
「じゃあ…オイラから挿れるからトレオは寝転がってくれよ」
「あ、ああ……」
オイラはトレオを再びベットに寝かせて、トレオの反り立つ逸物の上に跨った。
右手を逸物に添えて、左手で自身の秘部を広げながら、トレオに見せつけるようにゆっくりと腰を下ろしていった。
そして、亀頭がオイラの秘部に触れた途端、待ち望んだトレオの逸物を銜えこんだ膣は一気に中に入れたいと思ったのかオイラの足の力が急に抜け、トレオの逸物を根元まで一気に飲み込んでしまった。
「はあうっ!!」
「ぐっ!きっつ……ってお前!血がでてるぞ!!大丈夫か!?」
「う、うん…大丈夫…」
オイラの身体の大きさに対して少し大きすぎるトレオの逸物を一気に入れた事によってオイラの処女が一瞬のうちに破れ、痛みが襲ってきた。結合部からは愛液に混ざって赤い液体が垂れ流れている。
「トレオ…はぁ…もうちょっとだけ…このまま…」
「うっ…おう…」
じっと痛みに耐えているうちにだんだんと痛みが引いてきた。それと同時に膣内で銜えているトレオの逸物が帯びている熱を感じ気持ちよくなってきた。
「そろそろ動いていいよトレオ…オイラまだ足腰に力が入らない…」
「ああ…」
痛みがほぼ無くなったので動こうとしたがまだ足腰に力が入らないのでトレオから動いてとお願いした。
返事をしたトレオは起き上がりオイラをまたベッドに寝かせ、オイラの足をトレオの背中に回した。
その体勢のままゆっくりと腰を動かし始めた。ぎこちない動きではあるが、オイラは感じていた。
けれど、やっぱり物足りない。もっと刺激が欲しい。
「トレオォ…もっと…もっとはげしくぅ…」
「い、いいのか?」
「うん…もっと激しくずぽずぽしてぇ……うあんっ!」
やっぱりトレオは加減していたようで、オイラの腰をがっしりと支えながら激しくオイラの子宮を逸物で打ち付けるように動いてきた。子宮を一突きされる度にさっきとは比べ物にならない快感が全身を駆け抜け、腰が勝手に浮かびあがる。
オイラが意識せずともトレオの逸物を貪るように動く膣が気持ちいいのか、トレオの顔も快感に染まりきっている。
「やべぇ……もう、射精しそう…!!」
「だしてぇ……オイラのナカにいっぱい……オイラのナカをトレオでいっぱいにしてぇ♪」
オイラの膣内でトレオの逸物が一回り大きくなり、振動しているのを感じた。それを感じ取ったオイラは、もう射精が近いことを本能で悟った。
トレオは抜けそうなほど腰を大きく引き、そのまま一気に突き入れオイラの子宮口を亀頭で貫いた!オイラはそれと同時にトレオの逸物を逃さんとするように足でトレオの腰を引きつけ、膣をきゅっと窄めた。
「くっ、うああああああああああ!!」
「ひぃあああああ!!あ、あちゅいのが、トレオのせーしがはいってくりゅううううう!!」
それが引き金となり、トレオの逸物が大きく震えだし大量の精子をオイラの子宮の奥に吐き出した。
トレオの精子を感じ取ったオイラの身体は激しく痙攣し、目がチカチカし、頭が真っ白になった。
これらは苦しいからではなく、もちろん大きな快感から来るものだ。
オイラは遠退いていく意識の中で、確かな幸せを感じていた。
「はぁ……はぁ……はぁ………ふぅ……」
「はっ……はっ……あはぁ♪」
やがて子宮もトレオの精子で満たされ満足し始めたころになってようやくトレオの射精がとまり、オイラの意識が戻ってきた。
お腹を擦ってみると、トレオの精子がいっぱい入っているのがわかる。
硬さをほとんど失ったトレオの逸物がオイラの秘部から引き抜かれた時に寂しさを感じたが、一気にたくさん射精した反動かトレオが所謂賢者タイムに入ってしまったのでこれ以上求めるのは一旦諦める。トレオの精子でオイラのナカが満たされている、それだけで幸せなのだから。
「しかしなぁ……よく考えたら俺魔物とヤっちゃったんだよなぁ…いいのかな……」
「なんだよ、別にいいじゃねえか。どうせ他の魔物もオイラみたいになっているんだ。今後オイラ達みたいに互いが好きになってヤる魔物と人間なんてたくさん出てくるさ!」
「え?そうなの?」
「多分。そんな気がするだけだ。かなり自信はあるけどな」
「ふーん。魔物にしかわからない何かでもあるのかねぇ…」
一人で何かを納得しているトレオにオイラはもう一つ言いたい事を言う。
「さあな。それと、トレオがたくさん精子を子宮に注いでくれたからオイラ多分トレオとの子供孕むかも」
「うええええええええええ!?」
トレオの身体が飛び跳ねた。正直驚き過ぎだと思う。
「いやいや!いくらなんでも人間と魔物で子供なんて出来るわけがないだろ!?」
「そうでもなさそうだぜ?だって今のオイラの姿は人間の女性に近い姿してるだろ?あり得ない事じゃあ無さそうだぜ!」
「その自信はどこからくるんだよ!?」
「この身体が教えてくれてる気がする。けっこうはっきりとな」
「はぁぁ…そうかい……」
実際、本能とでも言うのか、オイラの脳に直接答えが浮かび上がってくるから呆れられても困るのだが…まあいいや。
「というわけで、トレオは責任とってオイラを嫁として迎え入れてくれよ!」
「…………嫌だね!!」
なん………だと………!?
「どうしてだ!?オイラの事好きだって言ってくれたじゃないか!!」
「もちろん好きだよ!ってそうじゃなくて……」
「じゃなくて?」
「『責任とって』ってのが嫌なだけだ!」
ってことは……つまり…もしかして……!?
「エリトロ、責任とか考えず、普通に俺の嫁になってくれ!」
トレオは満面の笑みでオイラにそう言ってきた。
「うん!!」
オイラも、満面の笑みで返事をした。
====================
「ねぇエリトロさん、この白いお皿もっと安く出来ない?」
「無理だ。これでも結構安くしてあるんだぜ?これ以上安くしたら赤字になっちまう」
オイラの身体が今の姿に変わってしまった日から約10年経った。
トレオと繋がったあの日からオイラの生活は激変した。
まずオイラ達は結婚した。もちろん村の人達はそんなオイラとトレオに疑念を抱いていた。
そりゃあそうだ。今まで自分達の生活を脅かしてきた魔物と、そんな魔物から人々を守っていた騎士が結婚するとか正気とは思えないだろう。
だけどずっとおとなしいままで人間と大差ない行動をするオイラや、そのオイラと仲良く歩いているトレオを見ているうちにその疑念もどうやら晴れたらしい。
他にも、魔物の生態が大きく変わったのもあり、もともとここら一帯は主神信仰が薄かったことも影響してオイラ達はすぐに村人達に認められた。
「そう言わずにお願い!!どうしても家族4人分欲しいのよ!!」
「そうは言ってもオイラだって生活がかかっているんだ。トレオだっていつ騎士として働けなくなるかわからないからなるべく稼いどかなきゃいけないしな」
あのあと自分の寝床に戻ってみたら、案の定群れの皆は、というかゴブリン以外も含めて知っている魔物全てが、若干面影を残しつつもオイラと同じく人間の少女のような姿に変わって戸惑っていた。
後でわかったことだが、どうやらあの日に魔王がサキュバス種の誰かさんに交代したことによってオイラ達魔物全員の姿が人間の女に近いものになったらしい。それに伴いオイラ達の人間に対する感情も変化したらしく、誰も人間を殺して喰らおうとは思わなくなり、人間の男を番として認識するようになったとのこと。
さらにオイラ達は人間の男と繋がることでしか子孫を残せなくなったとか。その為オイラ達の姿は人間を誘惑しやすいようにもなっているとのこと。
そのおかげでオイラはトレオと結ばれたわけだ。今の魔王様には感謝してもしきれないね。
それで、トレオと幸せそうにしている姿を見た他のゴブリンや魔物達も人間と仲良くしたいと思い村にきた。オイラ達の事もあってすぐに魔物達は村人たちに受け入れられた。そしてオイラ達が持っている知恵や技術を人間達と共有してこの村は発展し街になった。
「うーん…そこをなんとか…」
「ダメったらダメだ!」
「いいじゃねえかエリトロ!どうせお前の旦那さんが騎士として働けなくなるなんてこの先当分起こらねえだろうしよ!」
「そうっすよ!ちょっとぐらい赤字でも困らないじゃないっすか!」
「ほら!他の店員さんもそう言ってくれてるし安くしてよ!」
「……イドー、アルトロ、お前らの給料から抜いといていいか?」
「「………まあ安くしなくても良いんじゃない(っすか)」」
「わーー、うらぎりものーー!」
オイラは今トレオが暮らしていた村…今は大きく発展して街と言えるほどの大きさになったこの場所で雑貨屋を開いている。
流石に盗賊をする気にはなれなかったし、人間達とも仲良くやっていきたかったので、前から興味があった自分のお店を開いてみた。当時村には雑貨屋と呼べるものが無かったのであっという間にオイラの店は繁盛し大きくなった。
なので仲が良かったイドーやアルトロをはじめ何人かのゴブリンを従業員として雇い、皆で働いている。
オイラの群れには上下関係なんてなかったが、今はオイラが店長ということや一番最初に結婚したこともありリーダーみたいな扱いになっている。イドーとアルトロとは相変わらずの関係のままだが。
「うーん、じゃあしょうがない!これをエリトロさんにあげるから安くして!」
「ん?こ、これは…まさか…!?」
「そう!サバト印のロリッ娘専用お兄ちゃん悩殺エプロンよ!」
「な、なんでこんな素晴らしいものをもっているんだ!?あんた人間だよな!?」
「私のお姉ちゃんが魔女になったのよ。私もサバトに誘うつもりか知らないけど渡してきたから持ってるの。でも残念ながら私は息子が欲しいから魔物になる気は無いからいらないしエリトロさんにあげるわ。だからその分このお皿安くして頂戴!」
「よし!お皿4枚分を1枚分の値段で持ってって良いぞ!!」
「ホント!?さすがエリトロさん!ありがとう!!」
「相変わらずエリトロの奴物に釣られやすいな……」ボソッ
「そうっすね……エリトロらしいっちゃらしいっすけど……」ボソッ
そういうわけで今オイラ達は人間と混ざって生活している。魔王が交代する前にはとても考えられなかった生活だけど結構充実しているってわけだ。
「じゃあ今日はもう閉店だ。明日は隣町からミノタウロスの業者さんがくるから赤いものは絶対に身に着けてこないように。それじゃあお疲れさん!」
『おつかれさまでした(っす)!』
夕方になったので閉店して片付け、従業員達に明日の連絡をして解散した。皆それぞれの家に帰っていく。
旦那が居るやつはきっと旦那とイチャイチャするだろうし、いないやつはいないやつでまあ自分の好きな事をやるのだろう。あっという間に店の中はオイラ一人になった。
オイラも最後に在庫や売上のチェックをしてから厳重に鍵を閉め帰宅する事にした。
今から帰って夕食の準備をすればちょうど完成したころにはトレオも帰ってくるだろうと思い、急ぎ足で家に帰って早速夕飯の準備に取り掛かった。
ガチャッ
「ただいまー。ん、いい匂いがする…」
「おかーさんただいまー!!おなかすいたー!!」
夕飯がもうすぐで完成するところでトレオと、オイラ達の愛の結晶、娘のリセルが帰ってきた。
トレオは今でも騎士をしている。ただし、魔物から人間を守るのではなく、オイラ達魔物と仲良く暮らしている土地に居る人々を教団やその他平和を脅かす存在から守るための騎士をしている。
隣の大きな都市もオイラとトレオが幸せそうに暮らしている様子や、他の魔物達の生態が変わったのを目の当たりにして今やすっかり大きな親魔物領となっている。騎士として働いている魔物もおり、結果人数が増えた事もありトレオの勤務は週6日から週5日になり、この街周辺の護衛になった事でトレオが家に居る時間が増えたのでオイラとしては嬉しい限りである。
「おかえりー!もうすぐ夕飯できるから席についてちょっとまってて!」
「おう……って待て!なんて恰好してるんだ!?」
「わ〜おかーさんすごーい!」
帰ってきた二人に待つように言ったら、オイラの姿を見たトレオがびっくりした。
「なんて恰好って…料理中だしエプロンするのはあたりまえだろ?」
「なんでエプロン以外なにも身に着けていないのか聞いているんだよ!」
オイラは何も来ていない状態からさっきお客さんにもらった『サバト印のロリッ娘専用お兄ちゃん悩殺エプロン』を身につけている。つまり裸エプロンの状態だ。所謂男のロマンってやつかな?
「お客さんからこのエプロン貰ったんだよ。どう?かわいいだろ?」
「いやかわいいけどさあ…」
なんだかんだ言いつつもトレオも気に行ってくれてるみたいだ。ズボンの股の部分が膨らんでいるのがはっきりとわかる。今日の夜は沢山シてもらおう。
「それでも、子供のリセルもいるのにその格好をするのはダメだろ!?」
「なにいってんだ!リセルは将来大物になる事が確定してるんだ!今のうちにいろいろ知っておかなきゃダメだろ!」
「わーー//」
そう、リセルは確実にゴブリン達のリーダーになる存在なのだ。今のうちにいろんな景色や経験、男を悩殺する方法とかを学んでおいたって損は無い。
だから今日みたいにトレオが危ない場所に行く仕事じゃない時は一緒に行っているのだ。ちなみにトレオが休みの日や教団の騎士と戦いに行く時なんかはオイラの店の看板娘をやってもらっている。
「いっつも思うんだけど、リセルが大物になるってどうしても信じられないのだが…」
「はあ?なんでだよ?」
「だって、今日も何回か転んでたし、いっつもぽけ〜っとしてるし、パワーは確かに他のゴブリン達、それこそエリトロより強いけど心配になるほどドジだし……」
「はうぅ……あたしドジじゃないもん……」
「だから何だって言うんだ!リセルが大物になるってのはそこじゃないだろ!?」
「じゃあここが大きいからか?」
そう言ってトレオはリセルのある部分を指差した。
「そうだ!その大きなおっぱいが大物になる確かなものだ!胸が大きいってことは凄いんだぞ!」
そう、娘のリセルはおっぱいが大きいのだ!まだ9歳なのにもの凄く立派なのだ!
「俺にはゴブリンの常識が理解できない…」
「なんでだー!?大きいことは凄いと思わないのか!?」
「まあ凄いっちゃあ凄いけど…」
「わーい!あたしすごーい!」
「そうだ!リセルは凄いんだ!」
「はぁ…もうわかったよ……それより夕飯は?」
「おなかすいたー!ごはんー!!」
「あっ!忘れてた!悪いけどもうちょっと待ってて!すぐ完成させて持ってくから!」
トレオにリセルの凄さを教えていたら夕飯の準備をしていた事をすっかり忘れていた。
トレオもリセルも空腹で夕飯を催促し始めたので急いで完成させて持っていかなければ!
「はい、完成!」
「おー!相変わらずウマそうだな!」
「おいしそー!!」
「ふっふーん!隣の奥さんから教えてもらった料理テクは日々磨きあげているからな!」
やっと完成させた夕飯を持っていったら二人がおいしそうだと言ってくれた。嬉しい。
それじゃあさっそく食べる事にしますか。
「もぐもぐ……おいしーー!!」
「そうか、ありがとリセル!」
「うん、相変わらずウマい」
「だろ?」
オイラ達は家族で和気あいあいと夕飯を食べている。
旦那がいて、娘がいて、皆笑顔で過ごしている。
10年前、まだオイラがオスの魔物で、トレオを殺そうとしていたころでは絶対に考えられなかった光景だ。
でも、今となってはこの光景が当たり前なのだ。
この、幸せな時間が、幸せな空間がオイラにとっての当たり前なのだ。
そう、オイラの身体が、考えが変わったから、掴む事が出来た幸せなのだ。
「ねえ、おかーさん、おとーさん」
「ん?」「なんだ?」
リセルが急に食べるのを止めて話しかけてきた。
「おかーさんとおとーさんはいまシアワセ?」
「何を唐突に…」
そして、幸せかどうか聞いてきた。
「だっておかーさんもおとーさんもいつもえがおでいるからシアワセなのかなーって」
「なるほどね…そんなの決まってるじゃないか!」
もちろん答えは決まっている。
「「シアワセ!!」」
待ち伏せしている理由?……あのいけすかない人間のオスを今度こそ殺すためだ。
毎度毎度挑んでいるのだが一向に殺せない……もう回数なんか忘れた。
そもそもたかが人間のくせにオイラよりも強く、頭も良いのが気に食わない。しかも絶対にオイラにとどめを刺さないのも腹が立つ。オイラには殺す価値もないってか!?
イライラしながらも手に持つ棍棒を構えじっと待っていると…
カツッ、カツッ、カツッ……
道の向こうから規則正しい足音が聞こえてきた。
足音がする方を睨んでいると…銀の鎧を身につけ、腰には大剣をぶら下げている人間のオスが歩いてきた。
顔もはっきりと見える距離まで近づいてきた……間違いない、あのいけすかない奴だ。
「死ねえええええええっ!!」
「……」
奴だと確認したオイラは、一気に岩陰から飛び出し、奴の頭に棍棒を振り下ろした!
だが…………
がしぃぃん……
「……はっ!勝てなさ過ぎてとうとう不意打ちかよ!」
「……チッ!」
奴はいつの間にか腰にぶら下げていたはずの大剣を鞘から抜いて右手に持ち、そのまま奴自身の頭上に振り上げ、オイラの渾身の一撃をあっさりと防ぎやがった。
「そもそもお前殺気出過ぎなんだよ。隠れていたってわかるっつーの」
「う、うるせー!!オイラはテメエを殺すつもりでやってんだ!殺気ぐらい出るわ!!」
不意打ちが失敗してしまったので、距離をとるために奴の大剣を踏み台にして後ろに跳んだ。
やはり一筋縄ではいかないか。剣をオイラに向ける奴は完全に隙が無くなっていた。
「そもそも何でお前は俺を殺そうとしているんだ?」
「オイラ達魔物が下等種族である人間を襲い喰らうのは当たり前だろ?テメエはそんなことも知らない馬鹿か!?」
上位種である魔物が下等種の人間を殺し喰らう、これはこの世界の常識である。
人間だってそこいらの魚や動物を殺して喰らっている…生きる為の行動だ。別に普通の事である。
そんな常識すら知らないとは…もしかして奴は本当はオイラ以上に馬鹿なのか?
「いや、そうじゃなくて…何でお前個人は俺個人を殺そうと躍起になっているんだと聞いているんだよ馬鹿」
「馬鹿って言うんじゃねえー!!素直にオイラに殺されないテメエが気に食わないからだ!!」
「……素直にお前を殺さない俺が気に食わないのね」
「だ・ま・れ!!今日こそ殺す!!」
これ以上無駄に会話をしていても腹が立つだけなのでオイラは一気に奴の懐に踏み込み棍棒を腹に向けて振りかぶった。
だが奴は軽く後ろに下がりオイラの攻撃をかわし、大剣をオイラの頭に向けて振りかざしてきた。
だがオイラは空いている方の手で剣を弾き返し、また大きく後ろに跳び距離をとる事にした。
「威勢の割には大した事ないな」
「うるせー!!余裕ぶってんのも今のうちだ!!」
オイラは近くにあったオイラの背の高さと同じ位大きな岩石を持ちあげ、奴にめがけてぶん投げた。
しかし奴はその岩石が当たる前にとても普通の人間では不可能なほど高く真上に跳びあがりかわした。
過去にも同じ事をしていたが、どうやら履いている靴に細工がしてあるようで、その為あそこまで高く跳べるらしい。
だが、ここまではオイラの予想通りだ。
「かかったなあ!!」
そのままオイラは上空にいる奴に向かって跳びあがる。翼など持っていない人間の奴では空中では上手く動けないはずだ。
オイラはありったけの力を込めて奴の顔面めがけて棍棒を振り抜いた。跳ぶ際に奴は重りになる剣を地上に残しているのでさっきのように防がれる事もなく奴の顔面を粉砕出来るはずだった。
パシィィィン!!
「はい、残念!狙うところが悪かったな!」
「なっ!?クソッ!!」
だが、顔面に当たる前に奴の両手がオイラの棍棒を挟み込むように受け止め、力を別の方向に流した。そのせいでオイラのバランスは一気に崩れ、逆に身動きが取れなくなり……
「それじゃあおやすみゴブリンさん!」
「クッソォォ……グガッ!!」
奴は両手で握り拳を作ってオイラの背中を力強く殴り、オイラは地面に向けてたたき落とされた。
地面に叩き付けられた衝撃で丈夫な魔物…ゴブリンであるオイラも流石に大きなダメージを負い、意識が朦朧としてきた。
「チ………ク…………ショ………」
「ふう…これに懲りたら二度と俺のところに来るなよ…って言っても来るんだろ?」
「あ…たり……まえ………だ!」
オイラと違い綺麗に着地した奴は余裕な顔をし、大剣を鞘に戻しながらオイラに話しかけてきた。
その余裕がムカつくし殺してやりたいが…ダメージのせいで身体が思うように動かない。
「まあ勤務前の肩慣らしにはちょうどいいから別にいいけど、流石に明日は休日だから来られると面倒なんだけど」
「る……せ……え………明日……も………覚悟……しとけ………!」
「はいはい……そんじゃあ今度こそおやすみ」
ガコッ!!
鞘に入った大剣で奴に頭を殴られ、オイラの意識は闇に落ちた。
====================
「うぅ……チクショウ……今日も殺せなかった……」
太陽がちょうど一番高い場所に来た頃、オイラはようやく意識を取り戻した。
意識を取り戻したってことは、やはり奴はオイラの命を奪っていかなかったようだ。
しかも奴と戦った道から少し離れた、目立たない岩陰まで移動させられている。道の上にオイラが倒れていても邪魔だからどかしたのか、それとも気絶しているオイラが他の誰かに止めを刺されないようにする為か、どちらにせよご丁寧な事である。
その余裕のある行動が、今日も殺せなかったという気持ちとあいまって余計に腹立たしく感じる。
「はぁぁ……帰るか……」
このままここにいたところで何も出来ないし、オイラはとぼとぼと寝床まで帰る事にした。
「よお、その様子からするとまたダメだったようだな!」
「いい加減諦めたらどうっすか?」
「うるせー黙れ!」
帰ったとたんに、頭から鋭い角を生やし、ニタニタと笑いながらこれまた鋭い牙を見せつけている、いかにも意地の悪そうな醜い顔つきのチビのオスのゴブリン達がオイラの神経を逆撫でするような事を言いながら話しかけてきた。
と言っても『いかにも意地の悪そうな』以降の特徴は人間共にとっての見た目であり、オイラ達ゴブリンのオスにとってはいたって普通の見た目である。
「まあまあエリトロ、オレっちの猪の肉わけてあげるから落ち着けっすよ」
「おっ!サンキュー、アルトロ!」
「ハッ!物で釣られてやんの!」
「黙れイドー!殺すぞ!?」
「だから落ち着けっすよ〜!!」
『〜っす』って喋り方をする方がアルトロ、ムカつく言い方をしてくる方がイドーという名前のゴブリンだ。ちなみにエリトロってのがオイラの名前。こんなやり取りをしているが、オイラ達は群れの中では特に仲が良いのだ。
「ふぅ…腹も満たされた事だしオイラはもう寝るわ」
「えっ!?もう寝るっすか?まだ夕方前っすよ?」
「奴は明日休みだって言ってたからな…早起きして奴が無防備のときに殺しに行く」
「うわー、エリトロ卑怯っす」
「違うわ!休みの日の奴はそのタイミングじゃないと外に出ないんだよ!」
「なんで一人の人間のオスの行動パターンを把握してるんだよ…キモいな」
「奴を殺す為にいろいろ調べたんだよ!キモいとか言ってんじゃねーよ!!」
そう、奴を殺すためにオイラは努力して奴の事を調べあげた。
奴は自分が暮らしている小さな村からこの寝床がある辺りをちょうど中間地点として隣にある大きな都市まで週6日勤務している。仕事内容はその都市を守る騎士、しかも上位の実力者ってところだ。それゆえに鎧や大剣をいつも装備して、靴に細工をしてあるらしい。
認めたくは無いが、だからあんなに強いのだ。
さらに週に一日だけある休みの日には、この寝床とは正反対の位置にある川まで趣味である釣りに朝早くから行っている。
そして釣りが終わった後は次の日まで家に籠りっぱなしだ。どうやら家の中で軽くトレーニングをしつつも身体の疲れを全力で癒しているらしい。
流石に奴の家の場所まではわからないし、わざわざ奴の住む村まで襲いに行く気にもならない。今は奴以外の人間を喰らう気分でも無いし、村人全員に囲まれたら流石にオイラ一人では敵わないだろうからな。
だから明日奴を殺しに行くためには早起きをして村と川の間も道で待ち伏せしなければいけないのだ。そのためにもオイラはもう寝る事にした。今日のダメージを完全回復させる目的もある。
「はぁ…まぁせいぜい頑張ってくれや」
「応援してるっす!」
「おう、ありがとうな。そんじゃあおやすみ………チッ!」
なんだかんだ言いつつもオイラを応援してくれているイドーとアルトロにありがとうと言った後につい「そんじゃあおやすみ」なんて言っちまった。
これは奴がオイラを気絶させるときに絶対に言う言葉なので奴の事が脳裏に浮かび上がり腹が立った。
そんなムカムカした気持ちのままオイラはすぐさま寝た。
「あーあ、エリトロの奴相当苦労してるな」
「ホントっすねえ……………ところでイドー、ちょっと聞きたい事があるっすけど」
「ん?なんだ?」
「なんか…なんて言ったら良いかよくわからないっすが…こう、身体がざわつくって言うか…変な感じしないっすか?」
「はあ?そんな事ない……ことも無いな。確かに変な感じがする…空気が変と言うか、何か違和感があるな……」
「やっぱりオレっちだけじゃないっすか…なんすかねこれ?」
「さあな…嫌な気はあまりしないが……俺達も早く寝た方がいいかもな…」
だから、二人のこんな会話もオイラには聞こえなかった。
====================
オイラは、何故か真っ暗な空間をふわふわと漂っていた。
この空間は、どこか冷たくて、押しつぶされそうな気がして、苦しかった。
怒りが、悲しみが、哀れみがオイラにまとわりついている感じがした。
自分の姿すら見えない。助けを呼ぼうにも声が出ない。
それどころか思考すらまとまらない…ってこれは夢か?
おそらく夢だろうけど…ただの夢とは思えなかった。
どこか、こう、オイラの精神とか、そんな感じの…
って何を考えているんだか。やはり思考がまとまらない。
そのままぼうっとしていると、いきなり大きなうねりが襲って来た。
だけど、そのうねりが、苦しみや悲しみ、怒りや哀れみなど、オイラを苦しめていたものをどこかに飛ばしていったようだ。
すがすがしい。とても気持ちが良い。
すると、いきなり目の前の闇にヒビが入った。
どんどん亀裂が広がって、やがて真っ暗な空間が崩れ去った。
崩れ去った先には真っ白な……いや、どちらかと言うとピンク色の空間が広がっていた。
このピンク色の空間は、どこか暖かくて、ふわりと抱擁してくれている気がして、嬉しかった。
癒しが、喜びが、幸せがオイラを包みこんでくれている感じがした。
目の前が全てピンク色に染まった瞬間、何故か人間のオs…男の姿……奴の姿が思い浮かんだ。
いつもなら腹が立ってくるはずなのに、何故か幸せな気分で満たされていく。
奴の事を鮮明に思い浮かべるたびに、心が温まっていく。
まるで自分と言う存在が自分のまま他の存在に変えられたような、不思議な気分だ。
幸福を感じながら、オイラの意識はまた遠退いて……
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ガバッ!!
朝になり目が覚めた。
なんだか不思議な夢を見ていた気がする。あんまり内容は覚えてないけど、不思議だった事だけは覚えている。
とりあえず準備をして奴を待ち伏せしに行く事にする。
待ち伏せする理由?………それは…………あれ?
(オイラ…なんで奴を待ち伏せするんだっけ?)
……ああ、そうだ。今度こそ奴を殺して喰らうためだ。
なんで今忘れていたんだろうか?毎日やっている事なのに。
(しかし、なんか殺したい気分じゃないんだよなあ…)
今自分で奴を殺す事を考えただけで少し気分が悪くなった気がする。今までそんな事ありえなかったのに。
(……まあいいや。とりあえず奴に会いに行くのが日課みたいになってるし出発するか。なんか行かなかったらそれはそれで気持ち悪いしな…)
オイラは愛用している自分の棍棒を手に持ち、少し寝ぼけているまま寝床を出発した。
寝ぼけていたから、いつもと自分の目線が違っても気付く事が無かった。
ガサガサッ
(ここらへんで待っていれば釣りが終わった奴が来るはずだ…)
奴が住んでいる村と魚を釣りに行っている川を結ぶ道に着いたオイラは、早速身を隠すのに最適な叢の中に隠れて奴を待ち伏せする事にした。
何故か以前同じ場所に隠れた時よりも隠れやすかった気がする。まあ草が成長したのだろう。
じっと待つ事約20分…
カツッ、カツッ、カツッ……
道の向こうから毎日聞く規則正しい足音が聞こえてきた。
足音がする方をじっと見ていると、いつもと違い青い無地のTシャツを着て釣り道具を持ちつつも、オイラへの対策かいつもと同じ靴を履き大剣を背負っている人間の男が歩いてきた。
顔を確認するまでもない……間違いなく奴だ。
ガササッ!!
「やいっ!今日こそお前を殺して喰らっ…て……………?」
「やっぱりきt……ん!?誰だキミは!?」
奴の顔が確認できる距離まで近づいてきたので叢から飛び出し奴を襲おうとしたのだが、奴に向かって叫びはじめたときの自分の声に違和感があった。
いつもの枯れた声ではなく、どこか可愛げのある声だった。
「だ、誰って、いつも殺しに来てるのにオイラの事がわからないってのか!?」
「え?いつも俺を殺しに来て返り討ちにしているゴブリンなら知っているが、君みたいに人間の少女みたいな魔物…だよな?耳尖ってるし角生えてるし…まあとにかくキミみたいなのは初めて見る気が…」
さらに奴が訳のわからない事を言ってきた。
だが、オイラがなんで人間の少女に見えるんだ?目がおかしくなっちまったのか?とは言えそうにもない。
なぜなら、まさしく自分の声がそんな感じだったからだ。
しかも、いつもよりも奴の背が高く感じる。というより、地面がいつもより近く感じるのでオイラの背が低くなった気がする。
なんとなく自分の身体を見てみると……
「……なんだこれ!?オイラの身体どうなってるんだ!?」
「いや…その手に持っている棍棒…それにその喋り方…まさか!?」
オイラの自慢の筋肉が一切無く、身体のあちこちが丸みを帯びていた。
しかもただでさえ短かった胴体や足がさらに短くなっている。
それに自分のやけに潤っている肌を触ってみると、プニプニとしてて気持ち良かった。
でも、オイラはこんな肌じゃなかった。とても自分の身体とは思えなかった。
それに…なんか股間に違和感を感じる。何故かスースーしている。
もしやと思いパンツの中を覗いてみると……
「…無くなってる…………………」
「お前、あのゴブリンなのか!?」
男に付いているはずのモノが無くなっていた。
代わりに女に付いているはずの一本の筋があった。
なんで!?なにがどうなってるの!?
「…おーい、人の話を聞いてるかー?」
「…はっ!わ、わるい……って顔近すぎだ馬鹿!離れろ!!」
パニックになっていたオイラに奴が話しかけてきた。
それでオイラは正気に戻ったが、まさしく目と鼻の先に奴の顔があったのでビックリした。
とりあえず突き飛ばしたが、何故かオイラの心臓がバクバク鳴っている。顔もほんのりと熱を帯びているようだ。
どうやら恥ずかしかったらしいが……なんでだろうか?
「とにかく、お前はいつものゴブリンだって事でいいんだな?」
「ああ…いつもテメエに会いに来ているゴブリンのエリトロだ!」
「えっ?お前名前なんて有ったの?」
「あたりまえだ!!ってそういえば名のったこと無かったっけ」
というより、なんでオイラ今こいつに名前を言ったんだろう?
聞かれたとしても言うものかと思っていたはずなのに……?
「で、なんでそんな人間の少女みたいな姿に化けているんだ?」
「し、知らねえよ!オイラ今自分がどんな顔してるかもわからねえんだぞ!!」
「ふーん、俺を油断させる作戦とかでは無いんだな。俺好みの顔をしていたからてっきり作戦の一つだと思ったよ」
「えっ!?」
今のオイラ、こいつの好みの顔してるんだ……嬉しいな…
…ってなんで嬉しいんだ!?意味わからん!!
まあそれはともかく今のオイラはどんな顔しているんだろうか……もの凄く気になる……
「な、なあ…テメエの家に鏡ってあるか?」
「あるにはあるが…それがどうした?」
「…テメエの家まで連れていってくれないか?」
「はあ!?なんで!?」
「…今の自分の姿が凄く気になるけど、オイラの寝床に鏡なんてないから……」
「…そういって俺の家を覚えて、寝ている時に俺を殺しに来るつもりか?」
「そんなんじゃねえよ!!ただ自分の姿が気になるだけだ…だから……」
「…はぁぁ、しょうがねえな…じゃあついてこい!」
「ホントに!ありがとう!」
やったあ!こいつの家に行く事が出来るんだ!!
…ってなんでオイラは家に行ける事そのものを喜んでいるんだ!?自分の顔を確認できるから嬉しいんだろ!?
オイラが悶々としている間に、奴はすたすたと先に歩きだしていた。
それを見たオイラは、遅れないように急いで追いかけようとはせずに…
「な、ちょっとまってくれよ!」
「ん?なんだ?」
「オイラを抱っこしてくれ!」
「……はああ!?」
奴を呼びとめてこんな事を叫んでいた。
抱っこしてくれとか言った自分ですら驚いているのだから奴が目を見開いて驚くのも無理は無い。
「お前、本当に何考えているんだよ?」
「自分でもわかんねえよ!あとオイラはお前じゃない!エリトロだ!」
「はいはい、俺もテメエじゃなくてトレオだよ」
「!?……トレオ……トレオ………」
奴が初めて自分の名前を言ってくれた。それを聞いたオイラは忘れないようトレオに聞こえないようにその名前を復唱した。
「おーい、結局エリトロは俺の家に来るのか?来ないのか?」
「行く!…でもさ、この身体思うように動かしづらいから抱っこでもしてくれないと置いてかれそうで…」
「あのなあ…毎日俺を殺しに来てる奴を抱っこすると思うか?」
「…ううん……」
そりゃあそうだよな。オイラだってそんな相手を抱っこするのは抵抗ある。
でも、トレオと離れて歩きたくないしなぁ……
あ、そうだ。
「じゃあさ、せめて手を繋いで歩いてくれないか?それならオイラもうかつにトレオに攻撃とか出来ないしいいだろ?」
「まあそれぐらいなら…ただしその棍棒は俺が預らせてもらうぞ」
そう言ってトレオはオイラが持っていた棍棒を右手で担ぎ、左手をオイラに差しのべてきた。
力を入れ過ぎて痛くするといけないから、オイラはその手を優しく握った。そしたら握り返してくれた。
トレオの手はとても温かかった。
心臓のドキドキがとまらない……バレたら恥ずかしいな……
「へへっ!」
「なんだよ、急に笑い出して…」
「いや、なんでもないよ……えへへっ!」
トレオと手を繋げた事が嬉しくてつい笑ってしまった。
なんだか今まで感じたことないほど幸せだった。
で、そのまま少し歩いてから思ったんだ。
『なんでオイラこんなに嬉しそうにしているんだろうか?』と。
なんかトレオの名前を聞いたあたりからトレオと触れ合っていたいという自分の考えを素直に受け入れていた。
トレオと触れ合っていたいと思うなんて昨日までは絶対あり得ない事だけど…今はむしろトレオを殺そうとしていた昨日までのオイラの行動があり得ないと思っている。
いったいオイラの身に何が起こったのだろうか?この心境の変化はいったいなんだろうか?
疑問はまだ尽きないが、今は何も考えずにトレオと手を繋いで一緒に歩いているという幸せをかみしめていたいので、オイラはこれ以上あれこれと考えるのをやめた。
====================
「よし、着いたぞ!」
「ここがトレオの家…意外と大きいな」
あっという間にトレオの家に着いてしまった。
いや、実際は20分以上掛ってはいると思うが、それを感じさせない程トレオと手を繋いで歩くのが楽しかったのだ。
で、トレオの家なのだが、一人暮らしをしている人間の家にしては大きかった。それこそ一家族が普通に生活していけるほどには大きい。
確か昔調べたときにトレオは独身でこの村に一人で暮らしていると情報を得たので、この大きさの家を持っているとは思っていなかった。
「まあ、昔は両親も住んでいたしな」
「ふーん、そう言えばトレオの両親は?」
「…もう何年も前に母親は病気で………父親は魔物に襲われて死んだよ」
「えっ!?……あっ……ごめん……」
父親は魔物に襲われて死んだと聞いた瞬間、オイラは胸が苦しくなった。
オイラだって魔物だ。もちろん人間を殺し、喰らったこともある。
だから、自分が責められている気がして自然と謝罪の言葉が出た。
「別にエリトロが気にすることはねえよ。お前が俺の父親を殺したわけじゃないんだし。俺の父親も騎士だったからいつ魔物に殺されてもおかしくは無かったしな」
「でも……」
「だから気にすんなって!お前らしくないぞ!」
トレオはそう言ってくれるけど、オイラの気分はなかなか晴れなかった。
「ほれ、ここが洗面所だ。鏡はここにあるからじっくりと見ていいぞ!」
オイラはトレオの家の中に入り、トレオに鏡のある洗面所まで案内された。
早速鏡を見ようとしたが、残念ながら今のオイラの身長では鏡が見れる高さに届かなかった。
その様子を見たトレオは笑いつつも椅子をどこかからか持ってきてくれた。
オイラはその椅子に乗って立つ事でようやく鏡で自分の顔を見る事が出来た。
「うわあ〜!!」
その鏡に映っていた顔は、とてもオイラの顔とは思えなかった。
鋭く獲物に突き刺せるようになっていた角は、立派なのは変わらないままどこか愛嬌のある丸みを帯びたものに変わっていた。
獲物の肉を引き裂けるように生えていた牙は、八重歯のように可愛げのあるものに変わっていた。
見たものに怖さを与えるように鋭かった目つきは、青緑色の透き通る瞳と共に凛々しい目つきに変わっていた。
ボサボサで汚らしい土色の髪は、赤茶色で艶のあるショートヘアーに変わっていた。
なによりも意地の悪そうで見にくかった顔が、人間の女の子のように可愛く愛着が湧くものに変わっていた。
「わあ〜!!すっげー可愛い!!これがオイラなのか!?」
オイラがとびはねるとと鏡の中の女の子も同じようにとびはね、オイラが目を見開くと鏡の中の女の子も目を見開いて輝かせており、オイラが喋ると同じように口を動かす。
つまり、鏡の中の可愛い女の子はオイラなのだ。
「満足したか?じゃあさっさと帰れよ」
「えっ………あっ…………」
はしゃいでいたオイラの後ろからトレオが帰れと言ってきた。
自分を殺そうとしていた魔物をいつまでも自分の家に置いておきたくないのはわかる。
だけど、その言葉を聞いたオイラは大ショックだった。
もっとトレオと一緒にいたかったから、帰れと言われて悲しくなってきた。
だから、オイラは……
「あっ………あのさぁトレオ……」
「ん?どうした?まだ何かあるのか?」
「いや……あまりにも自分の姿が変わっているショックで気分が悪いから少しこの家で寝かせてもらえないか?」
「……ハアッ!?」
嘘をついて、この家にまだ居られるようにしようとした。
「お前ホントどうした!?おかしなこと言ってるって自覚あるか?」
「一応ある………」
まあこんな反応されるのは予想ついていた。
だけどまだチャンスはある。
「でもさ……例えばトレオがある日急に女の子になったとしたら平気でいられるか?」
「……いや、確実にショックをうけるな」
「だろ?しかも身体の勝手が違うんだぜ?なるべく動きたくなくなるだろ?」
「まあ……でもお前さっき嬉しそうにはしゃいでなかったか?」
「うぐっ!?」
さっきまでのはしゃぎようを突っ込まれてしまった。確かに元気に跳ねていたから疑問には思うわな。
でもここで認めてしまうと速攻で帰らされてしまうだろう。それだけは何としても避けなければ。
「えーっと、その…確かに可愛くなってたから喜びはしたけど、よくよく考えたら昨日までのオイラの面影がほとんど無くなってる事に気づいて、しかも性別まで変わってるから急に不安になってきたんだよ…」
「ふーん……本当か?」
「ここで嘘をついてオイラに何のメリットがあるって言うんだよ?」
もう少しだ。もう少しで納得してくれそうだ。
「まぁ…俺の家の中じゃあ例え襲ってくるにしてもどこに何があるか把握できてる俺の方が有利だしな…確かに嘘をつくメリットは無いなあ……」
(メリットはトレオとより長く一緒にいられる事だけどな…)
「まあしょうがないか。いいぞ、少しゆっくりしていけ」
「本当に!?ありがとう!!」
よし!これでもっと一緒に居られる!!
「じゃあ連れて行くけど…また手を繋げって言うんじゃないだろうな?」
「ダメか?」
「はぁ……そんな可愛い顔して見つめてくるな。調子が狂う」
可愛いか……へへっ!
「しょうがないなあ…なんならさっきの要望通り抱きかかえてやるよ」
「えっ!?ちょ!!!?」
そう言ったトレオは、オイラの膝の下に左腕を差し入れ足を支え、肩から首にかけて右腕を回して上半身を軽く起こした。
つまりトレオにお姫様抱っこされている……ってこれはお姫様抱っこっていうのか。何で知っているんだろう?まあいいや。
オイラを支える為だろうけど、この抱きかかえ方はトレオとの密着度が凄い。
「な、なな、ななななにしてんだあ!!!!」
「何って、辛そうだから抱きかかえただけだろ?嫌なのか?」
「い、嫌じゃないけど、び、ビックリしただろ!!」
「そうか。あれ?お前顔赤くなってない?熱でもあるのか?」
「知るか!!」
心臓が暴れまくってる。身体中が燃えているんじゃないかと思うぐらい熱い。
かといって身体の調子が悪いわけじゃない。むしろ嬉しくて元気になってきた。
好きな人の顔が近い。好きな人の呼吸を感じる。こんな素晴らしい抱っこがあったなんて知らなかった。
「そうそう、ゴブリンが普段どんな場所で寝てるか知らないけど、とりあえず俺がいつも使っているベッドでいいか?」
「ええっ!?全然良いよ!!むしろ大歓迎だ!!」
トレオが自分のベッドでいいかと聞いてきた。
トレオがいつも使ってるベッドってことは、大好きなトレオの匂いが充満しているはず。そんなところで寝られるなんて幸せ以外の何者でも無いじゃないか。
「了解。じゃあちょっとの間揺れるかもしれんが我慢してくれよ!」
多少の振動は確かに感じるけど、それよりも大好きなトレオの温もりが全身で感じられるので我慢も何もあったものじゃない。
しかもオイラに気遣ってかかなりゆっくり動いてくれているのでそのぶんお姫様抱っこを堪能できるのだ。気分が悪いと言った手前我慢しなければいけないのにニヤニヤが止まらない。
…………………………えっ!?
「……」
「ん?どうした?急におとなしくなったけど…体調でも悪くなったか?」
「い、いや、何でもない!大丈夫だ!」
「それならいいが…もしなんかあったら遠慮せずに言えよ」
「お、おう…」
(オイラ、今…トレオの事をどう思っていた?)
(好きとか…大好きとか思ってなかったか?)
(しかも…異性の相手として好きだと…)
(どうして?トレオは人間、オイラはゴブリン…魔物だぞ!)
(魔物が人間に恋をするなんて…サキュバスじゃあるまいし…ありえないだろ!?)
(しかも、今は女の子の身体になっているけど…オイラは男だ。)
(でも…この胸の高鳴りは……このトレオが好きという感情は……間違いなくオイラの本物の気持ちだ。)
(何故だろう…昨日までは嫌っていた相手のはずなのに…好きって気持ちが溢れかえってくる。)
(それに…何故か下腹部が疼く…まるでトレオの何かを欲しがっているように。)
(オイラの身体の変化が原因だろうけど…別に嫌じゃない。)
(むしろ今は人間の女の子に近い身体をしているんだ…人間の男であるトレオを好きになってもおかしくは無い。)
(おかしくは無いのだったら…何も迷う事ないじゃないか!)
(オイラはトレオの事が大好き。ずっと一緒に居たいと思うほど大好き。それでいいじゃないか!)
そう考えたオイラは、寝室に着いたらトレオに気持ちを伝えようと決心した。
====================
「これがトレオの部屋…トレオのベッド…」
「ああ、ちょっとサイズを間違えて注文したやつだから少し大きいが気にしないでくれ」
お姫様抱っこのまま、あまり物が置かれておらずすっきりしているトレオの部屋のベッドまで運ばれた。
二人ぐらいなら一緒に寝られそうなサイズのベッドの上にそっと下ろされ、幸せの時間が終わってしまった。
だけどがっかりしている暇は無い。今からが大勝負だ。
「そんじゃあ気が済むまで寝ててくれ。一応お前が何かやらかさないように俺はこの椅子に座って見張っているがな」
「あ、あのさあトレオ…ちょっとこっちに来てくれないか?」
「ん?なんだ?何かあるのか?」
オイラは上半身を起こしてベッドに腰掛け、隣に腰掛けるようにトレオに言った。疑問はあるようだが、嫌な顔をせずに来て腰掛けてくれた。
「いや、ちょっと…上手く言えないんだけどさ…あの……その……」
「なんだ?言いにくい事なのか?」
でも、恥ずかしくってなかなか言いだせない。その間もトレオはオイラの方をじっと見つめてくるから余計に言いづらい。
「うんと……えっと……………………もういいや!えいっ!」
「うおわっ!!いきなり何するんだ!?」
言いづらいのでオイラは行動で気持ちを伝える事にした。
ベッドに腰掛けるトレオの上半身をおもいっきり押し倒しトレオの顔に手を添えて、突然の事で驚いているトレオの唇に向かってオイラの唇を押しつけてやろうとした。
つまり、オイラはトレオとキスをしようとした。こっちのほうがオイラの好きって気持ちが伝わるような気がしたからだ。
でも……
カチャッ!
「……!!?」
「お前……やっぱり俺を襲う気だったのかよ。いつもと完全に態度が違いすぎるから油断してたぜ」
気がついたら、近くに置いてあったのか、オイラの首にトレオの大剣が押し当てられていた。
トレオの表情は、青筋を浮かべながらオイラを鋭く睨みつけていて…怖かった。
「どうせ俺が完全に気が抜けているときに殺してやろうとしたんだろ?ここまで芝居や変装が上手いなんて思いもしなかったぜ。お前本当にゴブリンか?ゴブリンにしては頭が良いじゃないか」
「……」
どうやら、トレオはオイラが殺すためにここまで芝居や変装をしたと考えているようだ。
「………ちがう………」
「ん?何か言ったか?」
確かに、オイラは昨日までトレオを殺そうと躍起になっていた。勘違いされても仕方は無い。
「ちがうんだ……ちがうんだよ……!!」
「違う?何が違うんだ?俺を殺そうとしたんじゃないのか?」
仕方は無いけれど…でも……!!
「ちがう!!オイラはトレオにキスしたかっただけだ!!」
「……はあっ!?」
でも……拒絶されたのは悲しい。
「オイラは…ひっく……トレオの事が……ひっく……一人の男として好きなだけなんだ!!」
「へっ!?はっ!?えっ!?」
悲しくて、苦しくて、辛くて……
「なのに…ぐすっ……それなのにぃ……ぅ、ぅわあああああああん!」
「ちょっ!?な、泣くなよ!?」
自然と……涙が溢れだしてきた。
「うええぇぇぇぇぇぇぇぇぇん……!」
「なんで泣くんだよ!ていうかキスしたかったとか俺の事好きとかどういう事だよ!?」
「しるかバカ!ヒトのキモチもかんがえないで…うわあぁぁぁぁあん……!」
「そんな事言われてもなぁ……んー……」
溢れた涙は止まらない……いくら泣いても止まらない……
「んー………あーもーくそっ!!」
難しい顔をしてずっと何かを考えていたトレオだったが、急に決心したような顔になり…
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁあんぷっ!?」
オイラの顔にトレオ自身の顔を近付け……泣いてる為に開きっぱなしだったオイラの唇を、トレオの唇でふさいできた。
「んっ………こ、これでいいか?泣きやんだか?」
つまり、トレオのほうからオイラにキスをしてくれた。
「えっ、う、うん、嬉しいけど…なんで急に…」
トレオはいつの間にか大剣を遠くまで放り投げてオイラを抱きしめていた。
さっきまで拒絶していたのに急な態度の変わりようにオイラはついていけなくなっていた。
「まあ……その、なんだ……まず、エリトロの気持ちも知らないで拒絶した事を謝る。ごめん」
「え、うん。こっちこそ急にキスしようとしてゴメン…」
「それでさ…やっぱり今まで俺の事を殺しに来てたわけだし、今日のお前の変な行動は俺を油断させるための芝居だとずっと思っていたんだけど…」
「ちがうよ…」
「ああ、違った。お前の涙を見て、告白を聞いて、本気なんだろうなと思った」
「うん…で、なんでキスしてくれたの?」
一番聞きたいのはここだ。
泣いているのを止めるだけならキスをする必要は無い。それこそ最悪オイラの息の根を止めれば済む事だ。
「そりゃあ……ここまで俺の事を想ってくれてる『女の子』を好きにならない奴はいないだろ?顔も俺好みだし…」
「えっ!?そ、それじゃあ…!?」
女の子として好き…つまり、トレオはオイラの事が……!!
「ああ、俺もお前が、エリトロが好きだからキスをした。わかったな!」
「……うんっ!!」
顔を真っ赤にしながら、トレオがオイラの事を好きだと言ってくれた!
互いに好きだってわかった瞬間、他の事が何もわからなくなるほどの幸福に包まれた。
これが、女としての幸せなんだろうか。もう男に戻りたいとは思えない。
だからずっと、オイラは女としてトレオと幸せに暮らす。ただそれだけでいいのだ…
って感じには終われなさそうだ……
「はぁ……はぁ……トレオぉ……」
「どうしたエリトロ?顔がさっきよりも真っ赤だし息も荒いぞ!」
何故かさっきから落ち着かない。オイラの下腹部が何かを訴えているのかキュンとする。
「おい!本当に病気とかじゃないよなあ?」
「わからない…オイラどうしたんだろ……?」
もっとトレオに近付きたい。もっとトレオを感じてたい。そんな想いが溢れだす。
「はぁ……はぁ………ん?」
「どうした!?」
「いや…なんか……トレオからいいにおいがする……」
「はい?」
トレオに近付くにつれ、どこからかいい匂いがする。その匂いを嗅いだら、オイラの身体はその匂いのもとを欲しがっているとわかった。なのでどこからその匂いが出ているのかを探す。
「ここからいい匂いがする……」
「えっ!?ま、まて!何する気だ!?」
その匂いは、トレオの身体全体に感じるが、特に股の間から強く感した。
そこに何があるかを考える事もなく、オイラはもっと匂いを感じたいとトレオのズボンに手を掛けた。
トレオはオイラが何をしようとしているかわかったようで必至に抵抗をしているが、オイラは自分でも驚くような強い力でトレオの抵抗を払い除け身体をベッドの上に押し倒し一気にズボンをおろした。一気に下ろしたせいか下着まで一緒に下ろしてしまったようだ。目の前にトレオの逸物が現れた。
「……ふわぁぁぁあ!」
「おい!ジロジロ見るな!例え昨日まで男だった奴でも女に見られて良いもんじゃないんだよ!」
まだ一切勃っておらずふにゃってしているのにもかかわらず大きいトレオの逸物を見たとき、オイラの身体が求めているものの正体がわかった。
わかったところで、オイラは何の抵抗も無く……
「あーん……ぱくっ!」
「うわあ!な、なにしてんだ!?はううっ!」
トレオの逸物を口を大きく開けて銜えた。
オイラはとりあえず逸物を銜えたまま顔を上下に動かしてみた。
たまに舌を使って裏筋を舐めたりすると気持ちよさそうな声を出してくれる。
そのまま裏筋を舐めたり顔を動かしていると、だんだんトレオの逸物が硬く太くなってきた。
「じゅぷっ、じゅぽっ…ほうは、ひほひひいは?」
「ひうっ!く、口に入れたまま喋らないで!ひあっ!」
「ふふっ、はんひへふへへふほは…」
もしかしてこの身体の本能が働いているのか、オイラ口でこう言う事をするのは初めてなのに感じてくれているようだ。もうオイラの口の中に入りきらないほどトレオの逸物は大きく膨らんでいた。
さらに顔を動かして刺激を与え続けているとその先端から何かの粘液が溢れてきた。恐る恐る舐めてみると、とてもおいしく感じた。けれど、真に欲しいものとはかけ離れている気がした。
なのでオイラはさらに顔を動かす速度をあげて、舌で粘液が溢れている所や膨らんでいる亀頭部分を舐めまわした。時折吸ってみたり甘噛みしたりするとビクッと大きく動く。
「や、やめろエリトロ!出しちまう!」
「じゅぷっ、じゅぽっ、ちゅぱ、ずずっ…れるる……」
「ああっ、もう、もう…!!」
もうすぐ何か出そうなのか、逸物の膨らみがさらに大きくなった。トレオは必死に耐えているが、早く出してほしいオイラはとどめとして、自分の八重歯のようになった牙をトレオのカリ首に引っかけた。
「うあっ!!うあぁぁああああ!!」
「んぶっ!?」
その瞬間、トレオの逸物が暴れながらオイラの口の中に何かを…というか精子を吐き出した。
溢れ出る精子をオイラは零れないように舌で全部受け止める。舌の上にかかったトレオの精子の味は、とても甘く感じた…いや、甘いだけじゃなく、この世のあらゆる物の中で一番おいしいものと感じた。
オイラはそのおいしいものを夢中で飲み始めた。もちろんトレオの尿道内に残っている精子も残さず飲むために吸ったりした。
そんなトレオは射精した疲れからかぐったりしている。
「トレオ〜、トレオが出した精子おいしかった!」
が、トレオの精子を飲んだからかオイラの下腹部は更に熱を帯びて、まるでこっちにも精子を飲ませろと言わんばかりに疼いている。なのでここで終わらせる気は無いので元気になってもらわねば。
「でも、今度は…」
オイラは着てるものを全て脱いで全裸になった。
トレオの精子を飲んで興奮しているからかすでにオイラの乳首は勃っていた。それにさっきから精子をよこせと子宮が疼いているせいか、オイラの秘部はもういつでもトレオの逸物を受け入れられるように濡れていた。
「オイラのここにおいしい精子を飲ませてほしいな〜」
その濡れている秘部を指で押し広げトレオの顔の前に持っていき、おねだりしてみた。
すると、トレオは目を見開きゴクッと喉を鳴らしたかと思ったら、呼吸を荒げながらガバッと起き上がり逆にオイラをベッドに押し倒した。
急に景色が変わったことで混乱していたが、オイラの足と股に何か熱を持ったものが触れている事に気付いた。
視線をオイラの下半身に向けると、トレオがオイラの足を広げながらすでに肥大化している逸物をオイラの秘部に擦りつけていた。
オイラの筋に沿ってトレオの逸物が動くたびに痺れるような快感がくるけれど、子宮が疼きまくっているオイラにはおあずけ状態のままでかなり切なくなってくる。
「あぁ……トレオ…擦りつけるだけじゃなくてぇ…早く入れてくれぇ…」
もどかしくて我慢が出来なくなってきたので早く入れてと催促したら…
「そんな事言ってもなぁ……俺初めてでよくわからねえんだよ…」
「えっ…?うそぉっ!?本当に!?」
「恥ずかしながらな……」
まさかの童貞宣言されました。
ということは、オイラが初めての相手になるんだ……やったあ!!
「じゃあ…オイラから挿れるからトレオは寝転がってくれよ」
「あ、ああ……」
オイラはトレオを再びベットに寝かせて、トレオの反り立つ逸物の上に跨った。
右手を逸物に添えて、左手で自身の秘部を広げながら、トレオに見せつけるようにゆっくりと腰を下ろしていった。
そして、亀頭がオイラの秘部に触れた途端、待ち望んだトレオの逸物を銜えこんだ膣は一気に中に入れたいと思ったのかオイラの足の力が急に抜け、トレオの逸物を根元まで一気に飲み込んでしまった。
「はあうっ!!」
「ぐっ!きっつ……ってお前!血がでてるぞ!!大丈夫か!?」
「う、うん…大丈夫…」
オイラの身体の大きさに対して少し大きすぎるトレオの逸物を一気に入れた事によってオイラの処女が一瞬のうちに破れ、痛みが襲ってきた。結合部からは愛液に混ざって赤い液体が垂れ流れている。
「トレオ…はぁ…もうちょっとだけ…このまま…」
「うっ…おう…」
じっと痛みに耐えているうちにだんだんと痛みが引いてきた。それと同時に膣内で銜えているトレオの逸物が帯びている熱を感じ気持ちよくなってきた。
「そろそろ動いていいよトレオ…オイラまだ足腰に力が入らない…」
「ああ…」
痛みがほぼ無くなったので動こうとしたがまだ足腰に力が入らないのでトレオから動いてとお願いした。
返事をしたトレオは起き上がりオイラをまたベッドに寝かせ、オイラの足をトレオの背中に回した。
その体勢のままゆっくりと腰を動かし始めた。ぎこちない動きではあるが、オイラは感じていた。
けれど、やっぱり物足りない。もっと刺激が欲しい。
「トレオォ…もっと…もっとはげしくぅ…」
「い、いいのか?」
「うん…もっと激しくずぽずぽしてぇ……うあんっ!」
やっぱりトレオは加減していたようで、オイラの腰をがっしりと支えながら激しくオイラの子宮を逸物で打ち付けるように動いてきた。子宮を一突きされる度にさっきとは比べ物にならない快感が全身を駆け抜け、腰が勝手に浮かびあがる。
オイラが意識せずともトレオの逸物を貪るように動く膣が気持ちいいのか、トレオの顔も快感に染まりきっている。
「やべぇ……もう、射精しそう…!!」
「だしてぇ……オイラのナカにいっぱい……オイラのナカをトレオでいっぱいにしてぇ♪」
オイラの膣内でトレオの逸物が一回り大きくなり、振動しているのを感じた。それを感じ取ったオイラは、もう射精が近いことを本能で悟った。
トレオは抜けそうなほど腰を大きく引き、そのまま一気に突き入れオイラの子宮口を亀頭で貫いた!オイラはそれと同時にトレオの逸物を逃さんとするように足でトレオの腰を引きつけ、膣をきゅっと窄めた。
「くっ、うああああああああああ!!」
「ひぃあああああ!!あ、あちゅいのが、トレオのせーしがはいってくりゅううううう!!」
それが引き金となり、トレオの逸物が大きく震えだし大量の精子をオイラの子宮の奥に吐き出した。
トレオの精子を感じ取ったオイラの身体は激しく痙攣し、目がチカチカし、頭が真っ白になった。
これらは苦しいからではなく、もちろん大きな快感から来るものだ。
オイラは遠退いていく意識の中で、確かな幸せを感じていた。
「はぁ……はぁ……はぁ………ふぅ……」
「はっ……はっ……あはぁ♪」
やがて子宮もトレオの精子で満たされ満足し始めたころになってようやくトレオの射精がとまり、オイラの意識が戻ってきた。
お腹を擦ってみると、トレオの精子がいっぱい入っているのがわかる。
硬さをほとんど失ったトレオの逸物がオイラの秘部から引き抜かれた時に寂しさを感じたが、一気にたくさん射精した反動かトレオが所謂賢者タイムに入ってしまったのでこれ以上求めるのは一旦諦める。トレオの精子でオイラのナカが満たされている、それだけで幸せなのだから。
「しかしなぁ……よく考えたら俺魔物とヤっちゃったんだよなぁ…いいのかな……」
「なんだよ、別にいいじゃねえか。どうせ他の魔物もオイラみたいになっているんだ。今後オイラ達みたいに互いが好きになってヤる魔物と人間なんてたくさん出てくるさ!」
「え?そうなの?」
「多分。そんな気がするだけだ。かなり自信はあるけどな」
「ふーん。魔物にしかわからない何かでもあるのかねぇ…」
一人で何かを納得しているトレオにオイラはもう一つ言いたい事を言う。
「さあな。それと、トレオがたくさん精子を子宮に注いでくれたからオイラ多分トレオとの子供孕むかも」
「うええええええええええ!?」
トレオの身体が飛び跳ねた。正直驚き過ぎだと思う。
「いやいや!いくらなんでも人間と魔物で子供なんて出来るわけがないだろ!?」
「そうでもなさそうだぜ?だって今のオイラの姿は人間の女性に近い姿してるだろ?あり得ない事じゃあ無さそうだぜ!」
「その自信はどこからくるんだよ!?」
「この身体が教えてくれてる気がする。けっこうはっきりとな」
「はぁぁ…そうかい……」
実際、本能とでも言うのか、オイラの脳に直接答えが浮かび上がってくるから呆れられても困るのだが…まあいいや。
「というわけで、トレオは責任とってオイラを嫁として迎え入れてくれよ!」
「…………嫌だね!!」
なん………だと………!?
「どうしてだ!?オイラの事好きだって言ってくれたじゃないか!!」
「もちろん好きだよ!ってそうじゃなくて……」
「じゃなくて?」
「『責任とって』ってのが嫌なだけだ!」
ってことは……つまり…もしかして……!?
「エリトロ、責任とか考えず、普通に俺の嫁になってくれ!」
トレオは満面の笑みでオイラにそう言ってきた。
「うん!!」
オイラも、満面の笑みで返事をした。
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「ねぇエリトロさん、この白いお皿もっと安く出来ない?」
「無理だ。これでも結構安くしてあるんだぜ?これ以上安くしたら赤字になっちまう」
オイラの身体が今の姿に変わってしまった日から約10年経った。
トレオと繋がったあの日からオイラの生活は激変した。
まずオイラ達は結婚した。もちろん村の人達はそんなオイラとトレオに疑念を抱いていた。
そりゃあそうだ。今まで自分達の生活を脅かしてきた魔物と、そんな魔物から人々を守っていた騎士が結婚するとか正気とは思えないだろう。
だけどずっとおとなしいままで人間と大差ない行動をするオイラや、そのオイラと仲良く歩いているトレオを見ているうちにその疑念もどうやら晴れたらしい。
他にも、魔物の生態が大きく変わったのもあり、もともとここら一帯は主神信仰が薄かったことも影響してオイラ達はすぐに村人達に認められた。
「そう言わずにお願い!!どうしても家族4人分欲しいのよ!!」
「そうは言ってもオイラだって生活がかかっているんだ。トレオだっていつ騎士として働けなくなるかわからないからなるべく稼いどかなきゃいけないしな」
あのあと自分の寝床に戻ってみたら、案の定群れの皆は、というかゴブリン以外も含めて知っている魔物全てが、若干面影を残しつつもオイラと同じく人間の少女のような姿に変わって戸惑っていた。
後でわかったことだが、どうやらあの日に魔王がサキュバス種の誰かさんに交代したことによってオイラ達魔物全員の姿が人間の女に近いものになったらしい。それに伴いオイラ達の人間に対する感情も変化したらしく、誰も人間を殺して喰らおうとは思わなくなり、人間の男を番として認識するようになったとのこと。
さらにオイラ達は人間の男と繋がることでしか子孫を残せなくなったとか。その為オイラ達の姿は人間を誘惑しやすいようにもなっているとのこと。
そのおかげでオイラはトレオと結ばれたわけだ。今の魔王様には感謝してもしきれないね。
それで、トレオと幸せそうにしている姿を見た他のゴブリンや魔物達も人間と仲良くしたいと思い村にきた。オイラ達の事もあってすぐに魔物達は村人たちに受け入れられた。そしてオイラ達が持っている知恵や技術を人間達と共有してこの村は発展し街になった。
「うーん…そこをなんとか…」
「ダメったらダメだ!」
「いいじゃねえかエリトロ!どうせお前の旦那さんが騎士として働けなくなるなんてこの先当分起こらねえだろうしよ!」
「そうっすよ!ちょっとぐらい赤字でも困らないじゃないっすか!」
「ほら!他の店員さんもそう言ってくれてるし安くしてよ!」
「……イドー、アルトロ、お前らの給料から抜いといていいか?」
「「………まあ安くしなくても良いんじゃない(っすか)」」
「わーー、うらぎりものーー!」
オイラは今トレオが暮らしていた村…今は大きく発展して街と言えるほどの大きさになったこの場所で雑貨屋を開いている。
流石に盗賊をする気にはなれなかったし、人間達とも仲良くやっていきたかったので、前から興味があった自分のお店を開いてみた。当時村には雑貨屋と呼べるものが無かったのであっという間にオイラの店は繁盛し大きくなった。
なので仲が良かったイドーやアルトロをはじめ何人かのゴブリンを従業員として雇い、皆で働いている。
オイラの群れには上下関係なんてなかったが、今はオイラが店長ということや一番最初に結婚したこともありリーダーみたいな扱いになっている。イドーとアルトロとは相変わらずの関係のままだが。
「うーん、じゃあしょうがない!これをエリトロさんにあげるから安くして!」
「ん?こ、これは…まさか…!?」
「そう!サバト印のロリッ娘専用お兄ちゃん悩殺エプロンよ!」
「な、なんでこんな素晴らしいものをもっているんだ!?あんた人間だよな!?」
「私のお姉ちゃんが魔女になったのよ。私もサバトに誘うつもりか知らないけど渡してきたから持ってるの。でも残念ながら私は息子が欲しいから魔物になる気は無いからいらないしエリトロさんにあげるわ。だからその分このお皿安くして頂戴!」
「よし!お皿4枚分を1枚分の値段で持ってって良いぞ!!」
「ホント!?さすがエリトロさん!ありがとう!!」
「相変わらずエリトロの奴物に釣られやすいな……」ボソッ
「そうっすね……エリトロらしいっちゃらしいっすけど……」ボソッ
そういうわけで今オイラ達は人間と混ざって生活している。魔王が交代する前にはとても考えられなかった生活だけど結構充実しているってわけだ。
「じゃあ今日はもう閉店だ。明日は隣町からミノタウロスの業者さんがくるから赤いものは絶対に身に着けてこないように。それじゃあお疲れさん!」
『おつかれさまでした(っす)!』
夕方になったので閉店して片付け、従業員達に明日の連絡をして解散した。皆それぞれの家に帰っていく。
旦那が居るやつはきっと旦那とイチャイチャするだろうし、いないやつはいないやつでまあ自分の好きな事をやるのだろう。あっという間に店の中はオイラ一人になった。
オイラも最後に在庫や売上のチェックをしてから厳重に鍵を閉め帰宅する事にした。
今から帰って夕食の準備をすればちょうど完成したころにはトレオも帰ってくるだろうと思い、急ぎ足で家に帰って早速夕飯の準備に取り掛かった。
ガチャッ
「ただいまー。ん、いい匂いがする…」
「おかーさんただいまー!!おなかすいたー!!」
夕飯がもうすぐで完成するところでトレオと、オイラ達の愛の結晶、娘のリセルが帰ってきた。
トレオは今でも騎士をしている。ただし、魔物から人間を守るのではなく、オイラ達魔物と仲良く暮らしている土地に居る人々を教団やその他平和を脅かす存在から守るための騎士をしている。
隣の大きな都市もオイラとトレオが幸せそうに暮らしている様子や、他の魔物達の生態が変わったのを目の当たりにして今やすっかり大きな親魔物領となっている。騎士として働いている魔物もおり、結果人数が増えた事もありトレオの勤務は週6日から週5日になり、この街周辺の護衛になった事でトレオが家に居る時間が増えたのでオイラとしては嬉しい限りである。
「おかえりー!もうすぐ夕飯できるから席についてちょっとまってて!」
「おう……って待て!なんて恰好してるんだ!?」
「わ〜おかーさんすごーい!」
帰ってきた二人に待つように言ったら、オイラの姿を見たトレオがびっくりした。
「なんて恰好って…料理中だしエプロンするのはあたりまえだろ?」
「なんでエプロン以外なにも身に着けていないのか聞いているんだよ!」
オイラは何も来ていない状態からさっきお客さんにもらった『サバト印のロリッ娘専用お兄ちゃん悩殺エプロン』を身につけている。つまり裸エプロンの状態だ。所謂男のロマンってやつかな?
「お客さんからこのエプロン貰ったんだよ。どう?かわいいだろ?」
「いやかわいいけどさあ…」
なんだかんだ言いつつもトレオも気に行ってくれてるみたいだ。ズボンの股の部分が膨らんでいるのがはっきりとわかる。今日の夜は沢山シてもらおう。
「それでも、子供のリセルもいるのにその格好をするのはダメだろ!?」
「なにいってんだ!リセルは将来大物になる事が確定してるんだ!今のうちにいろいろ知っておかなきゃダメだろ!」
「わーー//」
そう、リセルは確実にゴブリン達のリーダーになる存在なのだ。今のうちにいろんな景色や経験、男を悩殺する方法とかを学んでおいたって損は無い。
だから今日みたいにトレオが危ない場所に行く仕事じゃない時は一緒に行っているのだ。ちなみにトレオが休みの日や教団の騎士と戦いに行く時なんかはオイラの店の看板娘をやってもらっている。
「いっつも思うんだけど、リセルが大物になるってどうしても信じられないのだが…」
「はあ?なんでだよ?」
「だって、今日も何回か転んでたし、いっつもぽけ〜っとしてるし、パワーは確かに他のゴブリン達、それこそエリトロより強いけど心配になるほどドジだし……」
「はうぅ……あたしドジじゃないもん……」
「だから何だって言うんだ!リセルが大物になるってのはそこじゃないだろ!?」
「じゃあここが大きいからか?」
そう言ってトレオはリセルのある部分を指差した。
「そうだ!その大きなおっぱいが大物になる確かなものだ!胸が大きいってことは凄いんだぞ!」
そう、娘のリセルはおっぱいが大きいのだ!まだ9歳なのにもの凄く立派なのだ!
「俺にはゴブリンの常識が理解できない…」
「なんでだー!?大きいことは凄いと思わないのか!?」
「まあ凄いっちゃあ凄いけど…」
「わーい!あたしすごーい!」
「そうだ!リセルは凄いんだ!」
「はぁ…もうわかったよ……それより夕飯は?」
「おなかすいたー!ごはんー!!」
「あっ!忘れてた!悪いけどもうちょっと待ってて!すぐ完成させて持ってくから!」
トレオにリセルの凄さを教えていたら夕飯の準備をしていた事をすっかり忘れていた。
トレオもリセルも空腹で夕飯を催促し始めたので急いで完成させて持っていかなければ!
「はい、完成!」
「おー!相変わらずウマそうだな!」
「おいしそー!!」
「ふっふーん!隣の奥さんから教えてもらった料理テクは日々磨きあげているからな!」
やっと完成させた夕飯を持っていったら二人がおいしそうだと言ってくれた。嬉しい。
それじゃあさっそく食べる事にしますか。
「もぐもぐ……おいしーー!!」
「そうか、ありがとリセル!」
「うん、相変わらずウマい」
「だろ?」
オイラ達は家族で和気あいあいと夕飯を食べている。
旦那がいて、娘がいて、皆笑顔で過ごしている。
10年前、まだオイラがオスの魔物で、トレオを殺そうとしていたころでは絶対に考えられなかった光景だ。
でも、今となってはこの光景が当たり前なのだ。
この、幸せな時間が、幸せな空間がオイラにとっての当たり前なのだ。
そう、オイラの身体が、考えが変わったから、掴む事が出来た幸せなのだ。
「ねえ、おかーさん、おとーさん」
「ん?」「なんだ?」
リセルが急に食べるのを止めて話しかけてきた。
「おかーさんとおとーさんはいまシアワセ?」
「何を唐突に…」
そして、幸せかどうか聞いてきた。
「だっておかーさんもおとーさんもいつもえがおでいるからシアワセなのかなーって」
「なるほどね…そんなの決まってるじゃないか!」
もちろん答えは決まっている。
「「シアワセ!!」」
12/02/22 12:28更新 / マイクロミー