連載小説
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旅極 共に進め未来の旅路へ!
「よいしょっと。無事転移出来たし、早速向かおうっと」

おやつの時間が終わり、丁度夕日が輝き始めた頃。
私は、とある用事の為に親魔物領『モノルナ』まで転移魔法で移動していた。
自分の足で向かってもよかったけれど……そうすると数日はおろか数ヶ月は掛かってしまいフランや他の魔物達に料理などの準備を全部任せっきりになってしまうので、もう完璧にマスターした転移魔法で移動したのだった。

「この村はあまり変わらないなあ……まあ、半年前にも来たからそう変わらないか」

それでも目的の家のすぐ手前ではなく、村の外れに転移した私。
他の人との待ち合わせって理由もあるけど、単純にこの村を見て回りたかったからって言うのもある。
自然豊かで畑や田んぼに囲まれたこののどかな村の中をゆっくりと歩くのが、私は好きだった。

「おーい!アメリちゃーん!」
「ん?」

私に集まる村の人達の視線を気にしないで村内をゆっくりと歩いていると、後ろから私を呼ぶ声が聞こえてきた。
振り向くとそこには……一見すると人間女性の姿をしている人物が私のもとへ駆けてきていた。
感じる魔力からしてもちろん人間ではなく、大きな籠の中にいろんな商品を入れている、人間に化けている刑部狸のお姉ちゃんが走ってきていた。
その刑部狸は……もちろん私がよく知る人物だった。

「あ!カリンお姉ちゃん!!」
「やっほーアメリちゃん!久しぶりやな!すっかり大きくなったなぁ……」
「うん!久しぶり……って前に会ってから1年も経ってないでしょ?前会った時からはそんなに変わってないよ」
「せやけどな。なんて言うか出会った頃の印象が大きいもんでなぁ……」
「まあたしかにもう私18歳だから流石に8歳の時よりはいろいろと大きくなってるけどさ……」
「せやな。背も胸も翼も大きくなって立派なリリムになったもんなぁ……精神面はまだまだなとこもあるけどな」
「だってそれはまあ……まだ20年も生きてないし……」
「それもそうやな。しっかしまあ背も胸も余裕でサマリより大きくなっとるもんな〜」

結構な速度で走っていたのにも関わらず、息切れ一つないカリンお姉ちゃん。
流石、今でも世界各地へ行商の旅をしているだけはある。

「村外れに来るって言うとったからここらで待っとったんやけど、丁度ええ具合やったみたいやな」
「まあね。もう少し中にいるかなって思ってたけどちゃんと外に居たんだね」
「そらウチかて長年アメリちゃんとは旅しとったからな。大体の行動は読めるで!」

おおよそ10年前……サマリお姉ちゃんとユウロお兄ちゃんが恋人となり、私が勝手に邪魔者だって思いこんで一人で先に行ってしまって、珍しくサマリお姉ちゃんに怒られた日。
その日の次の日かその次の日からカリンお姉ちゃんも合流して、一旦解散するまでの約4年間ずっと一緒に旅をしてきた。
その後もよく会っては遊んだり観光したりしている……だから、もう私の行動や思考はそう言った通り大体把握出来ていてもおかしくはないだろう。

「カリンお姉ちゃんはずっと変わらず行商の旅を元気にやっているようだね」
「まあな。最近やと人化の術の精度も上がったから反魔物領で商売したりしとるな。今は普通のもんやけど将来的には魔界の特産物なんかも売る予定や。そういうアメリちゃんは?」
「私?特に無いよ。いつも通りお城で過ごしてるだけ。ハプニングとかも特にないかな……相変わらずお母さん達の喧嘩が起きたりはするけど、別にたいした事じゃないし……」
「お、おう……たいした事ないなんて簡単に言うけどそれウチら魔物には結構運命を左右するもんやからな?」

一旦旅をやめてからは、私はずっと自分の家……つまり魔王城で暮らしていた。
もちろんまだ会った事のないお姉ちゃん全員と会ったわけじゃないが、皆で旅を続けることが困難になったから旅を一旦止めて、家でいろいろと学んだりする事にしたのだった。
まあ……それに旅に出ていた間に妹も増えていたし、その妹と仲良くする為っていうのもあったけど。

「そういえばカリンお姉ちゃん。ズバリ聞いちゃうけど夫候補とかできた?」
「残念ながらおらへん……例の幼馴染みの事はどれだけ探しても見つからんしすっぱり諦めがついたけど、あいつよりええ男手篭めにしちゃる思ってもそうおらへんからな」
「あらら……」

虫の鳴き声が響き涼しい風が吹く中、カリンお姉ちゃんとお話しながら歩く。

「そういうアメリちゃんはどうなん?」
「え?ど、どうって……?」
「あの王子君とはどこまで行ったんって聞いたんや。どうせちょいちょい遊びにいっとるんやろ?」
「あ、あの子はただの友達だから!そりゃあちょっと狙ってるっていうのは嘘じゃないし実際遊びには行ってるけどさ〜……」

途中で互いの人生のパートナーについてのお話になった。
カリンお姉ちゃんがいう王子君というのは、旅の途中連行されるような形で立ち寄った反魔物国家……今は中立国となっている国で出会った王子の事を指しているのだろう。
その国では一言じゃ表せられないような出来事が起きて、なんだかんだあって私はその王子と友達になった。
今でもたまにその国へ行って、二人でどこかへお出かけしたりしている。

「なんや。てっきり押し倒したりはしとると思ったわ」
「まあそうするお姉ちゃんなんかはいたりするけど、私はちょっとね。それに相手の気持ちと言うか、目標もあるから……」
「せやな。ま、相手おるだけウチよかええわ」
「まあね!」
「まあねやあらへんよ……はぁ……どこかにええ男おらへんかな……」

まあそんな感じにデートしたりはしてるけど……それ以上の事はまだしていない。
私がリリムとしての力を存分に使い、誘惑してしまえば簡単に身体を重ねる事だってできるだろう……しかし、相手には立派な王になるという夢が……いや、目標がある。
その目標が達成されたら結婚する約束になっており、それまではセックスはもちろん唇が触れ合うキスすらしない約束だ。
ある意味ではかつてのサマリお姉ちゃんより厳しいけど……一応中立国の王子としての立場もあるし、私もそれをきちんと理解して受け入れている。
それに、婚約はしているのだから気持ち的には余裕がある。彼が立派な王になってから改めて想いを伝え、求め合うように交わり続ければいいのだから。

「まあこの話はここまでにして……ところでカリンお姉ちゃん、先に行く?それとも一緒に行く?」
「ん〜、一応一緒かな。ちいとこの村に他の取引の用あるで先にそっち済ませる。一旦別れてまたあとで合流っちゅう事で。サマリ達のところでええんやろ?」
「うん。わかったそれじゃあまたあとで!」

そう言って違うほうへ向かったカリンお姉ちゃん。
駆けていくカリンお姉ちゃんを見送ってから、私は当初の目的地……そう、サマリお姉ちゃん達の家に向かって歩を進めた。

「ふんふふ〜ん……あっ!」

田畑に囲まれた道を鼻歌を奏でながら、相変わらず注目されている視線を無視しながらゆっくりと歩いていると、遠くの方に畑作業をしているよく見た事のある人物らしき影が見え始めた。

「こーんにーちはー!!」
「ん?おや、アメリちゃんじゃないか。久しぶりだね」
「サマリ達が言っていたパーティーのお迎えに来たのかい?」
「うん!」

近付いてみると……やっぱりその影はサマリお姉ちゃんのお父さんとお母さんだった。

「お姉ちゃん達は?」
「今はどうだろう……つい最近サマリの毛皮を刈り取ったところで、ここ数日はユウロ君と一緒に家に引きこもっていたからなぁ……」
「あー……すぐ動ける状態だったらいいんだけど……」

旅の途中、私達は再びサマリお姉ちゃんの生まれ故郷であるトリスの近くを通り抜ける事になった。
両親の様子が気になったサマリお姉ちゃんは、その時にこっそりと様子を見に行ったのだが……二人は既にその家にはおらず、この親魔物領であるモノルナへ引っ越していた。
あとで聞いた話だけど、どうやらサマリお姉ちゃんが魔物になったという手紙を受け取った後、サマリお姉ちゃんがいつでも気軽に自分達のもとへ帰って来られるようにと反魔物領から親魔物領へ移ることにしたらしい。
最初は幼かった私にも怯えていたぐらい魔物を怖がっていたぐらいだから相当な覚悟だったはずだ……サマリお姉ちゃんと出会った時の私とのお話や引っ越し先の御近所さんとの付き合いのおかげもあり、再び会った時には既に魔物に慣れていて普通に接していたけど。
まあつまり、サマリお姉ちゃんが魔物になってからずっと考えていた両親に嫌われていないかという心配は杞憂に終わったという事だ。
それともう一つ……

「まあ昼過ぎからは一切ギシギシという音も聞こえなくなってたし、たぶん今はある程度落ち着いて寝ていると思うよ」
「あ、ツムリお姉ちゃん!来てたんだね!」
「やあアメリ。ここで会うのは久しぶりだね。今言った通りサマリ姉ちゃんはたぶんユウロと寝室で寝てると思うよ」

大きな籠を抱えたサマリお姉ちゃんそっくりなアマゾネス……いつか出会ったツムリお姉ちゃんが後ろから声を掛けてきた。
初めて会った時は全然知らなかったけど、なんとツムリお姉ちゃんはサマリお姉ちゃんの実の妹との事だった。
実の姉妹ならば似ていても不思議ではない……私だって全く一緒じゃないけど姉妹とは全員どこか顔が似ているしね。

「ツムリもアメリちゃんのパーティーに行くのかい?」
「いや、今日は集落で大事な催し物があるからもう少ししたらセノンお母さんのところに戻るつもりだよ。日程がずれていたら行ったんだけどね……悪いねアメリちゃん」
「ううん。用事なら仕方ないよ」

そんなツムリお姉ちゃんともこのモノルナでたまたま再開して、サマリお姉ちゃんと実の姉妹である事を明かした。
そのまま二人して両親のもとへ行き、魔物になった自分達の姿を見せに行っていた。感動的な親子の再開に何故かカリンお姉ちゃんが号泣していた記憶がある。
それとその時にツムリお姉ちゃんがアマゾネスになって育ての両親のもとにいる理由やサマリお姉ちゃんがユウロお兄ちゃんと恋人になっている事を伝えていた。
最初はサマリお姉ちゃんのお父さんはユウロお兄ちゃんを試すような事を言っていたり、また突然行方知らずで忘れようとしていた第二子が魔物となって目の前に現れたのでツムリお姉ちゃんとはぎくしゃくしていたけど、月日が流れるとともにその蟠りは無くなり、このように家族皆が仲良くしているようだ。
ツムリお姉ちゃんも自分の生みの親の事は全く覚えていなかったから最初はどうしても他人みたいに壁を作ってるように見えたけど、やっぱり血は繋がっているので今じゃ20年近くも離れ離れに暮らしていたなんて言われても信じられない程親子仲は良い。

「それじゃあ私はサマリお姉ちゃんのところに様子見てくるね」
「ああ。ドリーも一人寂しく寝てると思うから早く行って一緒に遊んであげてね。それじゃあ私達は野菜の収穫始めようか」
「そうね。あ、そうそうツムリ、採れたての野菜をセノンさん達にも持っていってね」
「あ、うんわかったよ。ありがとう母さん。お母さん達も母さん達が作った野菜大好きだからきっと喜ぶよ」

そんなツムリお姉ちゃん達と別れ、私はサマリお姉ちゃん達が暮らしている離れに向かった。
サマリお姉ちゃん達は両親と同じ敷地内には住んでいるが、一応別の建物で生活している。
別に仲が悪いわけじゃないけど、お姉ちゃん曰く「自分達の性交で生じた魔力がお母さんを蝕まないようにするため」らしい。
まあたしかにサマリお姉ちゃんのお母さんは人間だけど……ここは親魔物領で魔物の姿もそこそこあるし、魔力は空気中に多少は漂っている。それに直接性交をしているわけじゃないから魔物化してしまう程の魔力侵食はどうしても起こらないとは思うが……まあ、他にもまた旅を始める時に家の中が静かになって寂しく思わせないようにって理由なんかもあるし、その家庭の都合もあるので私がとやかく言えはしない。

「おじゃましまーす!」

ちょっと考え事をしながら歩いていたらすぐについてしまった。
なので戸をノックして家の中に入った。

「たしかに静かだ……これは疲れて寝てるかな……」

家の中に入ると、本当に誰かがいるのかわからない程静かだった。
さっきツムリお姉ちゃんがつい最近サマリお姉ちゃんの毛皮を刈り取ったと言っていた……ユウロお兄ちゃんと結ばれてからは旅の途中でも毛が伸びきったら最小限以外は刈り取っていたけど、その度にサマリお姉ちゃんは貪欲にユウロお兄ちゃんを襲っていた。
一応ある程度シたらカリンお姉ちゃんお手製のワーシープウールウェアを着せていたけど、旅をやめてからは満足するまでギシアンしているはずだし、その音が聞こえないということは今はある程度獣欲も満たされて寝ているのだろう。

「様子でも見に行こうかな……ん?」

「すぅ……むにゅぅ……」

音を立てないように歩いていたら、リビングのほうから小さく寝息が聞こえてきた。
サマリお姉ちゃん達の寝室はこの先であり、リビングから聞こえるとは思えない……つまり、この寝息はサマリお姉ちゃん達のではないだろう。

「……」
「すぅ…………すぅ…………」

そうするとこの寝息の正体として思い当たる人物はたった一人……なので、私はそっとリビングの扉を開けて中を覗いた。

「ふふ……気持ちよさそうに寝ているね……」
「むにゅぅ……すぴー……」

リビングの一角にある白いもこもことした物の山……サマリお姉ちゃんから刈り取ったワーシープウールの山の中に、もぞもぞと動く『小さな白いもの』があった。

「つんつんっ♪」
「むにゃ…………ふぁ……あ……」
「んふふっ、おはようドリーちゃん♪」

その小さな白いもの……子供のワーシープの頬をつんつんと人差し指で突くと、目を覚ましたようだ。
この小さなワーシープの名前はドリーちゃん。現在5歳ののんびりとした女の子。
ユウロお兄ちゃんと同じ少し茶色交じりの瞳を持ち、サマリお姉ちゃんと同じクリーム色の毛皮を生やし優しく寝惚けた表情でこちらを見つめている。

そう、ドリーちゃんはサマリお姉ちゃんとユウロお兄ちゃんの娘である。

「あ〜おはようアメリお姉ちゃん!」
「おはよう!気持ちよさそうに寝てたね」
「うん!気持ち良かったしいいゆめ見てたよ〜。あのね、お花ばたけでお父さんとお母さんとおじいちゃんとおばあちゃんとおばちゃんとみんなでおひるねしてたゆめ見てたの〜」

今私達が一緒に旅していないのは、このドリーちゃんのためである。
やっぱり魔物だからそう簡単に子供は出来なかったけど、旅の途中で裏技じみた事をして見事に子を孕んだサマリお姉ちゃんを旅させるのは良くないという事で、丁度その時練習していた私の転移魔法でこの村まで送ったなんて事もあった。
そして無事ドリーちゃんを出産したわけだけど、初めての子育てという事もあり、落ち着いた環境で周囲の手助けも簡単に求められるようにとドリーちゃんがある程度成長するまでは旅をやめここで暮らす事にしたのだった。
それに、小さな頃からドリーちゃんを旅に連れ回して世界を見せるのも悪くは無いけど、それでドリーちゃんの身に何かが起きるとよくないので、ある程度自分でなんとか出来るまでは安住する事に決めたのだ。
その時私は再び二人と別れる事になったけど……カリンお姉ちゃんとも相談して、私達も一旦別れて旅を中断し、それぞれ成長してからまた一緒に旅をする事にしたのだった。

「お母さん達は?」
「ん〜と、毎日おへやでラブラブしてるよ!」
「あ、やっぱり?ご飯はきちんと食べてる?」
「お母さんたちはたまにでてきて私とお話したりはするけどずっと食べてない。でも私はおばあちゃんやツムリおばちゃんに作ってもらったごはん食べてたよ!」

どうやらサマリお姉ちゃん達は食べずにずっとセックスし続けているらしい。
まあ、全魔物にはサキュバスの魔力が流れているため、性交によって精を得たり魔力を得ている二人が餓死する事はないだろうし、自分の母親や妹が娘の為にご飯を作っている事を知っているからずっと籠ってシているのだろう。

「でも今日のお昼は食べてないからおなかすいた……」
「大丈夫。これからいっぱい食べられるからね♪」
「わーい!」
「その為にも一緒にお母さん達のところに行って起こしに行こうか」
「うん!」

このまま目が覚めるまで寝かせ続けて遅れても他の皆に悪いから、私は純粋無垢な笑顔を浮かべているドリーちゃんを抱き上げてサマリお姉ちゃん達の眠る部屋まで行く事にした。
それにしてもドリーちゃんはまるでぬいぐるみのようにふわふわしてとても抱き心地が良い。
もっと小さい頃に夜一緒に寝た事もあるけど、抱き心地が最高過ぎてサマリお姉ちゃんに返すのを躊躇った程だ。
おもわずぎゅっとしたくなってしまうが、そうするとワーシープ特有の眠りの魔力で眠くなってしまうため軽く抱えるだけにしておく。

「そーっと……やっぱり寝てるね……」
「お母さんもお父さんもはだかだ〜」
「そうだね。裸で抱き合う事が一番愛を感じられるから二人とも裸なんだよ」
「へぇ〜。やっぱりお父さんとお母さんはラブラブだね♪」

ドリーちゃんを抱きかかえながら寝室のドアを開けると……そこでは尻尾と髪以外の毛皮が無くなっているサマリお姉ちゃんと全裸で大事な所すら丸見えのユウロお兄ちゃんがお互い抱き合ったまま寝ていた。
部屋にはキツイ性臭が立ち込めているし、ベッドの上のシーツはぐちゃぐちゃだし、二人とも乾いた精液と愛液に塗れているところを見るにさっきまでずっと激しくシていたのだろう。
仲良く寝ているところ悪いが、今日は予定があるので起きてもらう事にしよう。

「おーい二人ともー、迎えに来たよー。そろそろ時間だから起きて準備してね」
「ん……んふぅ〜……あ、アメリちゃん……久しぶり〜」
「久しぶりサマリお姉ちゃん!」
「お母さんおねぼうさーん」
「あ……ドリーの相手してくれてたの?ありがとうね〜」

毛がない時用の上着をサマリお姉ちゃんに掛けてから、二人の身体を揺らして起こす。
先に目を覚ましたのはサマリお姉ちゃんのほうだ。
上着のおかげで欲情して蕩けきった笑みじゃなくて普段の柔らかな笑みを浮かべている……お母さんになっても、そんなところは出会った時と何一つ変わらなかった。
変わったところと言えば……誤差範囲だけだけど胸が大きくなったぐらいだと思う……まあ今の私よりは小さいし、それを口に出したらどうなるかわかったものじゃないというか絶対揉みしだかれると思うから絶対言わないけど。

「ほらユウロお兄ちゃんも起きて!」
「お父さんおきてー!!」
「ん……ふぁ〜……お、アメリちゃんじゃねえか。ってことはもうそんな時間か」
「そうだよ。カリンお姉ちゃんが来たら出発するからそれまでに身体洗ってきてね。二人の準備が終わるまで私はドリーちゃんと遊んでるからさ」
「おうわかった……じゃあサマリ先に行ってきなよ。同時に行くとまた欲情にかられてシたくなってくるかもしれないからさ」
「うんわかった。じゃあアメリちゃんドリーの遊び相手お願いね」
「了解!」

ユウロお兄ちゃんもゆっくりと体を起こし、地味に布団で下半身を隠しながら私に挨拶をした。
ユウロお兄ちゃんも出会った当初とあまり変わらない……まあ、人間はとうの昔にやめてインキュバスになっているという大きな部分が変わっていたりはするが、見た目はほぼ変わらなかった。
ただ、昔はかなり大きく感じた二人が、今では私より小さい……これが一番変わった事かもしれない。
大きな目標で憧れていたお姉ちゃんとお兄ちゃんを身長で追い越した……それでも、やっぱり二人は私の憧れであり、頼りになるお姉ちゃんとお兄ちゃんには変わりない。
私も将来、この二人のように仲睦まじく夫と暮らしていきたいと思う。

「それにしてもユウロお兄ちゃん、昔はあまり乗り気じゃなかったのに今じゃ何の抵抗も無くサマリお姉ちゃんと身体を重ねているんだね」
「まあな。サマリが求めてきたら断れねえし、インキュバスになって性欲が跳ねあがったのも関係してると思うけど……やっぱ一番はドリーの存在かな?」
「えっ私?」

何日間シていたかまではわからないけど、多少は足腰にきているのかふらふらとした足取りでお風呂場へ向かって行ったサマリお姉ちゃん。
そんなお姉ちゃんを見送った後、私はぐちゃぐちゃになったベッドの比較的綺麗な場所に腰かけ、ドリーちゃんを膝の上に座らせながらユウロお兄ちゃんとも会話を始めた。

「ユウロお兄ちゃん、ずっと心配してたけど結局サマリお姉ちゃんから逃げることも無かったし、ドリーちゃんに理不尽な暴力をふるったりしてないもんね」
「ああ……結局サマリの言う通り、俺は大丈夫だったってことさ」
「えー?私たまに机の上とかでねてるとお父さんにげんこつくらうんだけど〜」
「そりゃお前悪い事したら軽く一発げんこつさ。俺は女の子だからってそこまで甘くは育てねえよ」
「はははっ!お父さんは厳しいねー。でもそんなお父さんの事嫌い?」
「ううん、だいすき!!」

サマリお姉ちゃんはもっと前から知ってたみたいだけど、以前私はユウロお兄ちゃんが小さい頃は虐待されていた事や、自身の誕生により父親が逃げていた事を聞かされた。
そして、自身が虐待されて育ったから、虐待するような暴力を振う事でしか叱れない事も同時に聞いた。
だからこそ、私と出会った時は彼女を作れないなんて言ってたし、サマリお姉ちゃんへの気持ちを押し殺していたのだ。
でも……実際はサマリお姉ちゃんが妊娠しても逃げる事は無かったし、ドリーちゃんを虐待なんてしていない。
叱らなければいけない時は心を鬼にしてきちんと叱り、そうでない時は優しいお父さん……そんな理想的なお父さんが、今のユウロお兄ちゃんだ。

「しかしホント可愛いなぁドリーちゃんは!」
「むにゅにゅ〜……えへへ……♪」
「あーもうホントお持ち帰りしたい!」
「それはやめてくれ……遠くへ連れ回すのもドリーが10歳になるまでは我慢してくれよな」
「わかってるよ冗談だってば!」

ユウロお兄ちゃんを大好きと言った時の笑顔が可愛すぎて思わず頭を強く撫でながらほっぺたをむにむにしてしまっていた。
ユウロお兄ちゃんの手前冗談とは言ったが本当にお持ち帰りしたいぐらい可愛い……将来自分の娘が出来るなら、絶対ドリーちゃんみたいに素直で可愛い娘がいいと常々思う。

「10歳になったら一緒に世界中を旅しようね〜ドリーちゃん!」
「うん!お父さんもお母さんもアメリお姉ちゃんもカリンお姉さんもみんないっしょにたびするのっ!」
「あと5年、それまでにお母さんのように料理ぐらい出来るようにならないとな」
「うん!私がんばる!!」

ちなみに10歳になるまでっていうのは……その歳になったら、また世界中を回る旅を再開するつもりだからだ。
今まで行った事ある国も、行った事のない場所も、親魔物領も反魔物領も魔界もすべて回っていくつもりだ……もちろん私はお姉ちゃん探しも兼ねているけど、昔よりは世界中を観て回りたいという思いのほうが強い。
だって……皆と世界中を旅するのは、絶対楽しいから!

「料理と言えば……今日のパーティーってアメリちゃんがご飯作るのか?」
「全部じゃないけどそうだよ。もうほとんど作って魔術で保温しておいてあるよ。いっぱい作ったから楽しみにしててね!」
「たのしみ〜!」

将来するだろう旅に想いを馳せながらユウロお兄ちゃん達とお話を続けていたら……

「おまたせー。次はユウロ入ってきてよ。ドリーは……まあ入らなくても大丈夫か」
「そりゃドリーは汗もかいてないし寝ていただけみたいだからな。それじゃあ俺も行ってくるか」
「いってらっしゃい。たぶんお姉ちゃん達が最後だからなるべく急いでね〜」

サマリお姉ちゃんがお風呂から出てきて部屋に戻ってきたので、今度はユウロお兄ちゃんがお風呂に向かった。

「ふう……さっぱりした。毛を刈るとたまに冷静にはなるけどほとんど頭の中はピンク一色になるというか、ユウロの事しか考えられなくなるからな〜。特に今回はドリーのご飯もお母さんやツムリに任せちゃったしずっとシ続けちゃってたよ」
「ずっと……何日ぐらい?」
「ん〜……今日今からアメリちゃんのパーティーって事は……」
「お母さんたち4日はラブラブし続けてたよね!」
「うんそう。それぐらい」
「はは……まあ毛皮のないワーシープなら仕方ないかな……」
「そういう事。私をワーシープにした張本人は引いちゃダメだからね。あ、そういえばアメリちゃん、カリンは一緒じゃないの?」
「あれ、さっき言わなかったっけ?他の取引先に行ってからくるって。多分そろそろ来るんじゃないかな?」
「そうなんだ……お、着たっぽいね」

だから今度はサマリお姉ちゃんともお話しようと思ったら……玄関から誰かがノックする音が聞こえてきた。
おそらくカリンお姉ちゃんかなと思いつつ、サマリお姉ちゃんは来訪者を迎えに玄関まで行った。

「カリンお姉ちゃんもたぶん着たし、お父さんの準備が終わったら早速出発するからね」
「はーい!ねえねえアメリお姉ちゃん、今日ってフエルお姉ちゃんっている?」
「もちろんいるよ!フエルも今日ドリーちゃんに会うの楽しみにしてたからね」

その間、私はピコピコ動くドリーちゃんの耳をプニプニと触りながら待っていた。
ちなみにドリーちゃんの口から出たフエルというのは私の妹の事だ。
旅をしているうちに増えた10歳年下の妹で、ドリーちゃんに負けず劣らず可愛い。
フエルが小さい頃からずっと遊んだりしていたからか私ともかなり仲がよく、サマリお姉ちゃん達に会いに行く時もたまに連れて行った事があり、ドリーちゃんとも仲良くなっていた。

「早く行きたいな〜」
「もうちょっと待ってね。あとはドリーちゃんのお父さんが準備を終えたら……と、この足音はお母さん達かな?」

今日はドリーちゃんとも会えるからとフエルもとても楽しみにしており、パーティー会場の設営を手伝ってくれていた。
おそらくそろそろ準備も出来ているだろう……まあほとんど完成するところまでは私が準備してきたし、残っていた部分もきっとフランが準備を終えているだろうし、移動したらすぐに始められるだろう。
なんて事を考えていたら、部屋に向かってくる足音が3つ聞こえてきた。

「お待たせ!俺も準備できたぜ!」
「丁度タイミングばっちりやったみたいやな。サマリの毛についてもちと相談したかったけどそれはまあパーティー後でええから、早速行こうや!」
「待たせちゃってごめんね!もう荷物も纏めたし、早速魔王城に行こう!」

そして部屋に入ってきたサマリお姉ちゃんとユウロお兄ちゃん……あとカリンお姉ちゃん。
3人とも手荷物を持って、きちんと服を着ているので、その言葉通り準備はバッチリなのだろう。

「じゃあ行くよ!皆私の近くにきて!」

だから、私は皆に近くに来てもらい、転移魔法陣を展開して移動を始めた。

「そーれっ!」

魔王城の大きな部屋まで……そう、私が主催するパーティー会場へ!



=======[サマリ視点]=======



「全員揃ったので、これより私、アメリが主催するパーティーを開始しまーす!皆いっぱい食べたり飲んだりおしゃべりしたりしよー!!」
『おおおーーーー!!』

現在19時。
アメリちゃんの転移魔法で魔王城まで転移した私達は、アメリちゃんが開催したパーティーに参加していた。
このパーティーの目的は特になく、どうやらアメリちゃんがたまには皆で集まりたいと思ったから気紛れで開いたらしい。
参加者は一緒に旅した人や旅の途中で出会った人達など、かなりの人数がいる。
最近も会っている人もいれば、別れて以来の人なんかもいてなんだか懐かしさを感じる。

「おっし!それじゃあアメリちゃんの言う通りいっぱい食べるぞ!ドリー、何か欲しいものはあるか?」
「自分でとるから大丈夫だよお父さん!でもついでだからそこのやさいジュースとって!」
「よし!ほら、零さない様に飲めよ!」
「うん!ありがとうお父さん!」

勿論人だけではなく、アメリちゃんが言うように所狭しと料理が沢山並んでいる。
流石に量が多いため全部では無く、一部は魔王城の厨房担当の人達やフランちゃんが作ったらしいけど、そのほとんどがアメリちゃんが作ったものだそうだ……出会った当初よりはもちろん、その時の私よりは確実に上手だろう。
私も料理の腕は日々上げているけど、これは抜かれたかもしれない。でも、教えていた身としては悔しさより嬉しさのほうが込み上がってくる。

「サマリー!おっひさしぶりー!!」
「おっと!」

そんな気持ちを抱えながらも私も料理を楽しもうとしたら、後ろから誰かが抱きついてきた。
肩に掛かる鱗の生えた蒼い腕や声からして、後ろから抱きついている者の正体は……

「リンゴ!それにツバキも!久しぶり!」
「やっほーサマリ!ユウロ!ドリーちゃんも大きくなったわね!」
「やあ。毛皮じゃなくて上着ってことは最近毛を刈り取ったのかい?」
「まあね。これが無いとパーティーどころじゃなくなっちゃうからね。たぶん脱いだら10分もしないうちにユウロを求めて押し倒してると思う」
「いくらなんでもそれは困るからな。悪いがこれを着せて性欲を抑えてもらってるんだよ」
「その代わりパーティー終わった後からはこのままシてもらうつもりだけどね」

すっかり大人びた雰囲気を持ったネレイスのリンゴと、着物をきちっと着こなしている見事インキュバスになったツバキがいた。
二人ともドリーが生まれてすぐ辺りにお祝いとして掛け付けてくれて以来だったから本当に久しぶりだ。

「あー本当にいいな〜わたしも娘ほしいよ〜」
「みゅぅ〜!」
「はは……知らせが無いからそうとは思ってたけど、お前達子供まだ出来てないんだな」
「そうなんだよね。僕らも毎日する事はシてるから出来ても良いと思うんだけど……やっぱりユウロ達と同じように触手の森に挑戦したほうがいいのかな?」
「いや、あれはオススメしない。そもそもリンゴはネレイスで触手の森に行くにも人化の術を使わねえといけないし、男もキツイんだぜ?実際俺も何度イキ狂いかけた事か……既にインキュバス化した後だったのにも関わらずあの後しばらく動けなかったんだぜ?」
「そう簡単に行くとは思ってないよ。でもまあ、ゆっくりと波に揺られながら身籠るのを待つ事にするよ……早く林檎との子供がほしいとは思ってるけど、こればかりはポセイドン様や水神様でもどうしようもないからね」

ドリーの身体をぺたぺたと触るリンゴ……ドリーはくすぐったそうに身体を捻っている。
流石にまだ0歳だったのでリンゴの事は覚えていないだろうけど、人見知りする子じゃないのでそこは問題無いだろう。
そんなリンゴとツバキの間にはまだ子供はいない。
まあ、魔物との間では子供は出来にくいから仕方がない気はする……パッと見ると何人か子供の姿もあるけど、それでも多くはない。
私だって触手の森の子宝宝樹まで辿り着いていなければきっとドリーもこの世に居なかっただろう……ドリーの後もユウロとセックスし続けているし、毛刈りのあとは我を忘れ子宮に納まりきらない程精液を搾るようにユウロを犯しているし、発情期でも構わずヤり続けているのにもかかわらず第2子は出来そうにもないしね。

「なんだ、娘がほしいのか?なら旦那の上で腰を振り続ければすぐ出来るだろうに」
「いつもされてるのに出来ないから困ってる……ってプロメじゃないか!」
「ようツバキ!それとリンゴだっけ?あとサマリ達も久しぶりだね!」

娘がほしいと呟いていたツバキとリンゴの後ろから一人のワーウルフ……プロメが話しかけてきた。
きりっとした表情で腰に片手をあて、もう片手で大きな骨付き肉を頬張りながら私達の会話に混じった。
ちなみにプロメとリンゴはプロメの子供が生まれた時とドリーが生まれた時に集まったぐらいとはいえ一応面識はある。

「そういえばプロメ、ネオムさんと子供達は?」
「ごくんっ、ネオムは向こうの方で他の人と喋ってる。娘達は遠方の調査中だったからお義母さん達に預けてあるさ」
「プロメって双子産んでたよね。二人もいっぺんに産むなんて羨ましいよ……」
「ははっ。毎日騒がしくて大変だよ。あの家の使用人やお義母さん達を噛まないように言い聞かせるのにも苦労してるからね」
「あはは……ワーウルフの習性からして結構大変じゃないのそれ?たしか私もプロメに噛んであげようかとかよく言われてたし」
「まあ、仲間を増やしたい衝動はあるさ。でも相手が望んで無いのにワーウルフに変えるのは良くないってアタシは思うからね」
「そう?わたしはたまに有無を言わさずネレイスに変えてるけど……ネレイスになった時の解放感はぜひ知ってもらいたいからね」
「うわ……リンゴこわ……」
「あ、一応言っておくけど海上で遭難してる女性や思いつめた顔をして今にも自殺しそうな女性だけだからね。だからそこ引かない」

プロメには双子の娘がいるが、今日は見当たらなかった。
どうしたのかと思えば丁度タイミングが悪かったみたいだ……いたらドリーと一緒に遊んでもらおうと思っていたけど、いないのであれば仕方は無い。

「おいサマリ、俺ちょっとツバキといろいろ回ってくるわ!」
「え?あ、うんわかった。いってらっしゃい。私も適当に回ってるよ」
「え……ツバキちょっと待ってよ!わたしも一緒に行く!!」
「うーん……別に浮気はしないし言い寄られても僕には林檎がいるから無視するしあとでいっぱい相手してあげるからここは男だけで、ね」
「うむむ……仕方ないなぁ……絶対だからね!!」

そんな感じに女同士でお話していたら、男同士でどこか回ってくると言い出したユウロとツバキ。
まあユウロの浮気はありえないし、あのペンダントも未だ持っている(曰く思い出の品らしい)ので魅了される心配もないし、それに男同士でしか話せない事もあるだろうからと私は普通に見送った。
ただやはりというか、リンゴはツバキと離れたくないようだった……大丈夫とは思っても、どこか不安ではあるのだろう……そうでなければ初対面で私にいきなり攻撃なんてしてこない。

「む〜でも心配だな……」
「おいおい、少しは夫であるツバキを信用しなって」
「そうそう。それに男同士の話もあるだろうし、束縛し過ぎは良くないよ」
「そりゃあ信用はしてるけど……あれ?なんか出会ったばかりのアメリちゃんみたいな女の子がこっちに……」

そんなリンゴに言い聞かせていると……遠くからトテトテと走ってきている女の子がいた。
黒い角と白い翼と尻尾を生やし、赤い瞳を持ったリリムの女の子が……あれは……

「あ!フエルお姉ちゃん!」
「やっほードリーちゃん!!アメリお姉ちゃんのごはんおいしい?」
「うん!お母さんのごはんと同じぐらいおいしい!!」

やっぱり、アメリちゃんとかなり仲のいいアメリちゃんの妹のフエルちゃんだった。
ドリーと会うのを楽しみにしていたってさっきアメリちゃんが言っていたので、見つけたので一目散に駆け寄って来たのだろう。

「君はアメリちゃんの妹?」
「うん!わたしフエル!今8さいなの!」
「へぇ〜8歳かー。丁度アタシ達と出会った頃のアメリの歳と同じだね」

そんなフエルちゃんは、今8歳という事もあり当時のアメリちゃんと本当にそっくりだ。
微妙に角の形状は違うけど、それ以外のしぐさや表情、言動なんかはまさにアメリちゃんと瓜二つだった。

「ドリーちゃん!あっちにおいしいケーキがあるからいっしょに食べにいこうよ!」
「うん!お母さん、行ってきてもいい?」
「もちろんいいよ。フエルちゃん、ドリーの面倒よろしくね!」
「うんまかせてサマリお姉ちゃん!じゃあ行こうドリーちゃん!!」

ドリーの手を引いてまたどこかに駆けていくフエルちゃん。
プロメとリンゴもそれぞれどこかに行くみたいだし、私もいろんな人とお話をする為に回ろうと思う。

「さてと、どこに行こうかな……お、あれは……」

パリパリフレッシュサラダを頬張りながら適当に歩いていると、ミートパイを食べながらお腹を食べ過ぎとはまた別の理由で膨らませている黒い翼を持つ蒼い少女が目に入った。

「おーい!」
「ん……あ、サマリ。お久しぶりですね」
「やあセレンちゃん!どうしたのそのお腹?」

やけに膨らんでいるのが気になったので私はその少女のような見た目のダークエンジェル……セレンちゃんに声を掛けた。

「ああこれですか。そうですね……ワタシとセニックの愛の結晶です」
「本当に!?おめでとうセレンちゃん!!」
「ありがとうございます。ワタシもようやく身籠る事ができましたよ……本当に長かったです」

どうやら、その中にはやはり新たな命が芽生えているようだった。
私の恩人であるセレンちゃんが子供を授かった……非常に喜ばしい事である。
見た感じ妊娠4ヶ月ほどといったところだろうか……うっとりと膨らんだお腹を優しく撫でる様は、まさに母の表情だ。

「そういえばセニックは?」
「ああ。今はサマリの旦那さんとお喋りしてると思いますよ。いろいろと募る話もあるでしょうしね」
「え……あ、本当だ。いつの間にかネオムさんにニオブさん、それにエルビやチモンさんまで混ざってるや」

近くに見当たらないので旦那であるセニックはどうしたのかと思えば……ちゃっかりユウロ達の話の輪に混ざっていたようだ。

「寂しかったりする?」
「いえ……まあ妊娠しているからかいつも以上にセニックを求めて仕方ない状態ですが、折角アメリが開いてくれたこのパーティーを楽しまないと損ですからね。あなたともそうですが、基本パンデモニウムに引き籠っているのでほとんどの人が会うのは久しぶりですし、いろんな人とお話をしようと思います」
「はは……たしかにセレンちゃんも私のお祝いに駆けつけてくれた時から会ってなかったね」
「というかそれ以降外界に出た期間は一月分もないと思いますね。たしか3泊4日程度の旅行をたまにしていたぐらいです」

妊娠していた時の私は、どんなに毛が長くてもユウロを求めて止まなかった記憶がある。
旅をしている途中でも恋しくなってユウロの身体に抱き付き、押し倒し、交わり、落ち着いたと思ったらまた恋しくなり……と、これぐらいの期間にはとても旅を続けられるような状態ではなかった程だった。
だからセレンちゃんもそうなのかと思ったが……一応そうみたいだけど、きちんとした考えがあってある程度我慢しているようだ。
私より幾分かは年下だけど、やっぱりしっかりしている分なんだか年上にも見える。

「しかしこの料理はアメリが作ったのですよね?」
「全部じゃないらしいけどそうみたいだよ」
「そうですか……家庭のあるサマリには悪いと思ってるので、アメリに頼んでみようかな……」
「何、料理でも教えてほしいの?」
「ええまあ……食事自体は精液で済ませてますが、たまには普通の料理も食事もしたくなりますし……毎回セニックに作らせているので……」
「セレンちゃんの手料理を食べてもらいたいと」
「はい……そういう事です」

そんなセレンちゃんにも悩みはあるようで、アメリちゃんに料理を教えてもらおうか考えているようだ。
たしかに、旦那さんに自分の手料理を食べてもらえるのは楽しいし、おいしいなんて言ってもらえたら嬉し過ぎてついそのままベッドインなんて事もあるだろう……私はいつもの事なのでベッドインまではしないけど。

「さて、そうと決まればアメリに頼んできましょうかね……サマリも一緒に来ます?」
「いや、私はあそこで赤ちゃんを抱えている人のところに行ってくるよ」
「赤ちゃん?ああ……ある意味ワタシにきっかけをくれたあの人ですね。ワタシも後で行くことにしますかね……」

セレンちゃんはこのままアメリちゃんとお話するようだけど、私はとある人物が目に入ったのでそっちに行くことにした。
赤ん坊を抱きながら……幸せそうにお肉を頬張るウシオニのもとへ。

「もぐもぐ……ん〜うまい!やっぱステーキってサイコー!!」
「おーいスズ!野菜もしっかり食べないと母乳にバランスの良い栄養行かないよー」
「わ、わかってるって……ってサマリ!久しぶり!!」

相変わらず野菜を避けてお肉ばかり食べている若いウシオニ……スズのもとへレタスチャーハンを盛ってから移動した私。
そんなスズは片手でサイコロステーキを食べながら、もう片方の腕でウシオニらしく大きな赤ちゃんを抱えていた。

「ねえその赤ちゃんって……」
「ああ。この子はアタイとチモンの娘さ!名前は志奈美って言うんだよ。つい最近生まれたばかりで、まだアタイのおっぱいがご飯さ!」
「へぇ、シナミちゃんって言うんだ……可愛いね!」
「だろ?もうアタイもチモンも父ちゃんもデレッデレでさー、母ちゃんがその様子見てため息吐くのが日常茶飯事なんだよ」
「はは……」

全然知らなかったけど、やっぱりこの子はスズの娘らしい。
母の腕の中ですやすやと気持ちよさそうに寝ている……この姿だけならウシオニが凶暴な怪物だなんて言えないだろう。

「娘が産まれるなら教えてくれてもよかったのにな〜」
「仕方ないじゃないか。丁度その時はルヘキサでもいざこざがあって大変だったからさ。アタイは妊婦だからってずっと家に居たけど、父ちゃんは毎日戦いにかり出されてたからな」
「そうなんだ……それは大変だったね」
「まあ今は落ち着いたから問題無いけどな。じゃなかったらルヘキサ組は誰一人ここにはいなかっただろうね」

スズとは1年ちょっと前ぐらいに会っているが、その時は妊娠の兆しは無かった。
おそらくその後から妊娠したのだろう……なんで教えてくれなかったのか聞いてみたけど、それならば仕方がない。

「ま、というわけで今日が志奈美の初お披露目ってことさ」
「なるほどねぇ……ん?ちょっともぞもぞ動き始めたって……」
「ぅ、ぅぇええええええええええんっ!えええんっ!」

スズの話を聞きながら寝ているシナミちゃんを見ていたら、突然シナミちゃんが身体を振わせて……大きな声で泣き始めた。

「わわっ!?ど、どうした志奈美!?おもらしか!?」
「いや、たぶんこれはお腹が空いたんだよ」
「そ、そうなのか?」
「たぶんね。ドリーでの経験で言ってるだけだから違うかもしれないけど……少なくともおしめは濡れてないからおもらしではないよ」
「そ、そうか。じゃあ飯だな!」

自分の経験を頼るとこれはきっと空腹で泣いているのだろう。
まだ慣れていないのか慌てふためくスズにその事を伝えると、自分の胸当てを外してシナミちゃんの口を乳首に持って行き……

「ほ、ほら飲むんイテッ!!」
「おいサクラ、なんで注目を集めたうえで胸を晒してるんだ」

飲ませようとしたところで、後ろから旦那であるチモンさんに頭を小突かれた。
たしかに……シナミちゃんの泣き声のせいか、結構な人達がスズの方を注目していた。

「いやだって志奈美が腹空かせたみたいだから……」
「だったら休憩室行って飲ませてこい。たとえ知り合いだとしても自分の嫁の胸を他人に見られていい気分じゃないんだよこっちは」
「お、おう……そうか……へへっ♪」

他人に自分の嫁の胸を見られたくない……そうちょっと強めの口調で注意するチモンさん。
自分を気遣ってくれる夫の発言に、スズはとっても嬉しそうだ。

「なんだい?チモンだっていつもところ構わず奥さんからおっぱい貰ってるんだろ?」
「バカ言え俺はちゃんと他人に見られないところで……って貰ってねえよ!何言うんだよエルビ!」
「いやもう否定しても遅いから。チモンも吸ってたりするんだろ?」
「あー……………………いやそんな事はないよ。流石にそんな事してたら父ちゃんがチモンをしばき倒してるよ」
「……今の沈黙が気になるけど、あのイヨシさんがしばいてないところからして信じることにするよ」
「だからしてないっての。あとサクラは早く休憩所に行って志奈美のご飯を与えてこい!」
「はいはいわかったよ。それじゃあサマリ、また後で」

そんな二人に割り込むように眼鏡を掛けた金髪の小柄な男性……エルビがチモンさんをからかいにきた。
チモンさんはエルビを弟のように見ていたなんて言っていた事もあったけど……たしかに兄弟みたいに見える。
そんなエルビの後ろには、見慣れない小さなグールの少女が……

「ねえエルビ、その女の子は?」
「ん?ああ、この子は……」
「はじめまして。エルビ兄ちゃんの妹のケイです。よろしくおねがいします」

ケイちゃんと名乗るこのグールの少女は……どうやらエルビの妹らしい。

「はじめましてケイちゃん。私はサマリ。よろしくね」
「グールになった母さんが産んだから正真正銘ボクの妹だ。ついて行きたいって言うから連れてきたんだよ。ちなみにトリーさんのほうは残念ながらまだ産んでないからね」

ケイちゃんはエルビと違ってかなり礼儀正しい。
ちょっと失礼な考えだが、私にペコリとお辞儀しながら自己紹介する姿はとてもエルビと同じ血が流れているとは思えなかった。

「というか未だにトリーさんの事お母さんって呼ばないんだね」
「当たり前だ!あの女はボク達家族に割り込んできた他人でしかないからね」
「もうエルビ兄ちゃんったら!トリーお母さんもお母さんでしょ?」
「ふん!ボクは認めないね!」
「とか言いながらトリー母さんって言う練習をここ数年間ほぼ毎日鏡の前でしているのはどこの誰でしょうかね」
「なななななに言ってるんだホルミ!!そそそそんな事誰もしてないぞ!!」
「録音機能がある道具とかないですかねぇ……あればいつでも証拠を揃えられるんですが……」

エルビのほうは相変わらずトリーさんを母親とは認めてない……という体でいるみたいだ。
カルボナーラパスタを摘みながら近付いてきた巨乳ミノタウロス……ホルミさんにこっそり練習している事を暴露されて顔を真っ赤にしながら否定している。

「エルビ、血が繋がって無いとはいえ母親を悲しませるのは良くないぞ?」
「そうですよエルビ。ケイちゃんだってそんなお兄ちゃん嫌ですよね?」
「はい!はずかしいのはわかるけど、トリーお母さんお兄ちゃんにきらわれてるんじゃないかって前泣いてたからね!」
「え、それホント?」
「うん」
「あーそうか……う〜ん……」

10年経とうが関係なくよっぽど素直になれない性格らしい……ホルミさんもケイちゃんも困り顔を浮かべている。

「まあケイちゃんはこんな困ったお兄ちゃんは放っておいてあっちにいる子供達と遊んできてもいいですよ」
「あっち……あ、あそこにいる子供たちですね」
「あーその中のワーシープは私の娘だね。ドリーって言うんだけど、仲良くしてくれるかなケイちゃん?」
「はい!ではいってきます!」

何かを悩ましげに考えてるエルビ……
たまにある光景なのか、長くなるだろうと判断したホルミさんはエルビを放っておいて子供達の中に混ざっておいてと言い始めた。
その子供達の中にはドリーやフエルちゃんも居た。なので仲良くしてやってとケイちゃんに言って、駆けて行くのを見送った。

「さて、私も他のところに回るか……」

山菜の天ぷらを堪能しながら、次は誰とお話しようかなと思いながら再びぶらぶらと歩き始めた。

「しかし本当にいっぱいいるなぁ……」

ツムリのようにたまたま外せない用事があってこれなかったのか、アメリちゃんの彼氏候補のあの子みたいに居ない人もいるみたいだが、4年とちょっとの旅の中で出会った人が大勢居た。
一緒に旅をした者やとある町でお世話になった者、一時的に敵対していた事のある者など本当に大勢の人達が揃っている。

「お久しぶりですサマリさん!」
「ん……あ!」

今までしてきた旅の集大成みたいだな……なんて思いながらタマゴサンドを食べ歩いていたら、後ろから声を掛けられた。

「フランちゃん!元気だった?」
「はいもちろん!毎日アメリに振り回されながらも元気にやってます!」

振り向くと、そこにはワイン……ではなく葡萄ジュースが入ったグラスを片手に持つ妖麗なヴァンパイア……アメリちゃんと同じく、美人へと成長を遂げたフランちゃんが立っていた。
ドレスをきちっと着こなし凛として立ち振る舞うその姿は、ヴァンパイアらしく貴族と言えるだろう。
ただまあ、そんな姿をしていても中身はあの素直で礼儀正しく可愛らしいフランちゃんそのままであるけどね。

「お姉さんも元気?」
「はい。ただ今はまた別の場所へ潜入しているのでここ1,2年は会ってないのですけどね……でも寂しくはありませんよ。アメリもいますしね!」
「そっか……恋人のほうは?」
「残念ながらまだ居ません……アメリのように出会いがあればいいのですけどね……」

立派なヴァンパイアであるが、人間に対しても対等で素直に付き合う事の出来るフランちゃんなので恋人もいそうであったのだが、どうやらまだ居ないようだ。
でもきっとフランちゃんであればすぐにでも恋人が出来る気がする……特に最近は成長して力もつけたので、一緒に旅をしていた時と違って日光の下でもある程度活動できるようになっているし、これから出会いも増えていくだろう。

「まあフランならすぐにいい人と出会えるって!」
「あ、アメリ。何時の間に近くに……さっきまで向こうの方に居なかった?」
「サマリお姉ちゃんと話してるのを見掛けたからね」

そんなフランちゃんとお話していたら、ミルクセーキを片手にどこからともなく現れたアメリちゃん。

「楽しんでるサマリお姉ちゃん?」
「もちろん!こうして懐かしい皆とお喋り出来るからね。パーティーを開いてくれてありがとうねアメリちゃん」
「へへ……まあフランや他の皆の協力があったからできたんだけどね」
「でもアメリが言いださなかったらあたしは何もしなかったからね。言いだしっぺが一番の功労者だよ」
「そう言ってくれると嬉しいよフラン」
「どういたしましてアメリ……へへっ!」

二人の関係は主人と従者……けれども、その姿はどこからどう見ても親友同士でしかなかった。

「二人とも凄く仲いいね!」
「だって私達親友だもん!ねー!」
「うん!なんといってもあたし達親友ですから!」
「はは……タメ口もとりあえずオッケーみたいだしね」
「はい。ですがまあきちんとした場ではやはり従者として敬語を使うようにはしてますけどね。アメリは嫌がりますが」
「だって私敬語とか嫌いだもん。なんか壁作られてるみたいでさー」
「そうは言ってもね……アメリの威厳にも関わってくるし、あの人の睨み怖いし……」
「ああうん。それはね……私は別に姉妹の中では下の方なんだから威厳も権力もないと思うからそっちはどうでもいいけど、風規律姫のお姉ちゃんがいるからね〜……」
「あの人?」
「あのね、家に住んでるお姉ちゃんの中にやたら躾や教育にうるさいお姉ちゃんがいてね……私知ってるお姉ちゃんの中で一番苦手なんだよね……」
「あの人の前でアメリにタメ口使っていると強く睨まれるんですよ……一応魔王様直々に許可をいただけたので文句こそ言ってきませんが、あの目を見ると恐怖が……」
「あはは……大変みたいだね……」

魔王様という大きな存在が味方してくれるから問題は無いみたいだが、それでも苦労は多いようだ。
まあ、アメリちゃんの場合王女として敬語嫌いって済ませるのは良くないが、この二人はこうして気軽に付き合っていてもらいたいものだ。

「まあそれでもあたしはアメリの従者である前に親友ですからね。これから先もずっとアメリについて行くつもりです。アメリが先にあたしを捨てなければですけどね」
「そんな事しないって!たとえ夫が出来てもフランとはいつも一緒だよ!」
「わかってるよ!もちろん冗談だよ!!」

和やかに冗談を言い合っている二人は、とても微笑ましいのだから。

「お母さんただいまー!」
「お姉ちゃんたちなんのお話してるの?」
「おかえりフエル、ドリーちゃん」

そうやって二人の仲睦まじい姿を見ていたら、フエルちゃんとドリーの二人がやってきた。
どうやら子供達での集まりも一旦解散したようだ……ケイちゃんがエルビのもとに駆け寄っている姿が見える。

「もしかして旅のおはなし?」
「だったら私も聞きたいよお母さん!!」
「んー、旅のお話じゃなかったけど、二人がそう言うならする?」
「そうだね。あ、丁度ユウロお兄ちゃんとカリンお姉ちゃんも近くに来たししちゃおうか!」
「ん?なんだ?」
「旅の話するん?ええで、しよっか!」

どうやら私達が旅の話をしていると思ったらしく、自分達にも聞かせてほしいとねだる二人。
別に今は旅の話をしていたわけではないが……小さな子供達が旅に興味を持ってくれているのし、丁度カリンとユウロも近くに居たので、目を輝かせている二人に私達の旅の話を聞かせてあげようと思う。

「そうだね……まずは私とアメリちゃん、それにユウロが出会った頃の話からしようか――」



世界中を見る為に旅に出ようとしたその日、私は自分の姉探しをしている幼き魔物の王女と出会った。
その王女と共に旅に出て、将来旦那になる勇者と出会い、彼とも一緒に旅をすることになった。
道中溺れかけたり、風邪を引きながらも、王女の姉の一人と会った。

そして旅を続け、犯罪組織との戦いに巻き込まれて、重傷を負って……
足が動かなくなってしまった私は、皆と旅を続けるために……幼き王女の手で魔物になる事を決意した。

魔物になった私は、新たなお姉さん達に会った。
教団のエンジェルと勇者の襲撃をかわし、魔物になった事に気付いていなかった勇者とも戦いながらも足を進めた。
そして、新たな仲間に誤解されながらも、私達は話でしか聞いた事のなかったジパングへ向かった。

ジパングでは早々に仲間の故郷が襲われていたりもしたし、記憶喪失の少女がいたりしたけど、大陸と違う文化に触れられて……楽しかったし、新鮮だった。
食べ物も結構違っていて、料理のレパートリーも増えた。
そこに住む人達も、宴会でどんちゃん騒ぎしている鬼達や、きゅうりで一人遊び(性的な意味で)なんかしている河童など、どこか個性的な人も多く、王女の姉達も一際個性が強かった。
そして大陸へ帰る時……旅仲間の家族が怪我をしたので経営するお店を手伝い、船に乗って……遭難した。
サバイバル生活を行い、ようやく船に乗せてもらったと思ったら海賊船で……でも、皆優しくて、そしてスリル満天で面白かった。

大陸に帰った後もエンジェルの襲撃や王女の幼馴染みとの遭遇などしながら、灼熱の砂漠を旅した。
オアシスのある街で芸術に触れ、遺跡で酷い目に遭いながらも、楽しく過ごした。
そして砂漠を越え、精霊使いを返り討ちにし、魔界で一風変わった姉に会い……美食姫と共に幼馴染みは去っていった。
その後に入った魔物の森で、私は生き別れの妹と出会い、それに気付かないまま楽しいひと時を過ごし、ジパングみたいな町を堪能した。

その後に立ち寄った街で、記憶喪失の少女は記憶を取り戻した。
その街で起きていたいざこざに自ら巻き込まれ、大勢の人達と戦った。
その結果、大勢の実験台にされていた人達と、ある一人の少年の心を救う事ができた。

無事解決して、さらに旅を続けていると、何度か敵対していたエンジェルが血を流しながら道端に倒れていた。
介抱したけどあまり魔物に心を開いてくれなかったエンジェルと共に、人魔関係無く活気に満ち溢れた街を訪れた。
人魔共栄を掲げている街を巡り、人々の心と触れ合ううちに、そのエンジェルはいつしか心を開き、自分の現状を受け入れられた。
でも、その時はまだ自分の過去を切り捨てきれていない男の子がいた。
その男の子の過去を覗いてしまった私は、後悔の念とともに、その男の子を護ろうと決めた。
でも……恋を拒んでいるその男の子に、私は恋してしまった。
そして、その恋心に気付かされてしまった……




「――それでも抑えきれない恋心を持ってた私は、まだ8歳だったアメリちゃんに説教されてね……」
「あったねそんな事も。もどかしかったもんなあの時のサマリお姉ちゃん。知ってた?ユウロお兄ちゃんが寝てる間にユウロお兄ちゃんの匂い嗅いだりおっぱい押し付けたりしてたんだよ?」
「えーお母さんそんなことしてたのー!?」
「ちょっ!?言わないでよアメリちゃん!!」
「……おい、今初めて知ったんだが……」
「あ、あはは……それは時効って事で……ま、まあそれで私はユウロに告白して、この通り見事夫婦になったわけなんだけどね……」
「それで?」
「フエルちゃん、君のお姉ちゃんがそんな俺達の邪魔になると思いこんじゃって一人寂しく先に旅立っちまったんだよ。全くそんな事思ってなかったのにな」
「あーうん。そのちょっと前にサマリお姉ちゃんに勝手に思い込むなって言っておきながら自分もそう思い込んでたっていうね……はは……」

みんな、どれもこれも、全てが良い思い出だ。
私の経験した旅は、苦しい事も無かった事は無いけれど、それも含めて全部が楽しかった思い出だ。

「む〜!」
「ん?どうしたのドリー?」


でも、旅はこれで終わりじゃない。


「やっぱり私も早く旅がしたい!!」
「……ふふ……」
「ん、なにお母さん?私ヘンなこと言った?」


そう、これからも、何年経っても旅は続いて行くのだ。


「いや、私が小さい頃と同じこと言ってるなって思ってね」
「流石親子やな……ま、旅は楽しいからこう言うやろな!」



そう、未来という道を、私達は共に旅をしていくのだ。



「そうそう、また皆で旅に出ようね!」
「そうだな。その時はドリーも一緒だ!」
「フエルちゃんにもいっぱい旅のお話聞かせてあげるからな!」
「うん……世界中を、いっぱい旅しよう!!」



私達は、これからもずっと……



「うん!私もみんなと世界中を旅する!!」








幼き王女と、きままな旅を!!
13/09/05 22:30更新 / マイクロミー
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■作者メッセージ
という事で後日談、10年後の物語でした。
成長したアメリに、子供が出来たサマリとユウロ……他のみんなもそれぞれが、あまり変わらないけどちょっとずつ変化しました。

これにて幼き王女ときままな旅は完結です。
全61話、1年半も書き続けてきましたが……ようやく無事に完結する事が出来ました。
これも今までこのお話を読んで応援して下さった皆様ならびにこのお話とコラボをして下さった
ひげ親父様
ネームレス様
ノワール・B・シュヴァルツ様
jackry様
シャークドン様
星村空理様
エンプティ様
初ヶ瀬マキナ様
『エックス』様
空き缶号様
テラー様
バーソロミュ様
のおかげです。本当に感謝しております。ありがとうございました!!

それでは、また別のお話でお会いしましょう!


以下おまけ↓



「やっと追いついたで……ほんま疲れた……」
「カリン!」
「やあ皆!これからはウチもずっと旅についていけるで!」

それは、旅終から旅極までの物語。

「なんやサマリとユウロようやっと夫婦になったんか!」
「うんそうだよ!」
「まあな。ってようやっとってどういう事だよ!」
「それだけ二人が結ばれない事にみんなもやもやしてたって事だよユウロお兄ちゃん」

カリンを再び加え、姉探し兼世界中を回る旅を続けるサマリ達の旅は……

「わああ!おいしそうなケーキだ〜!!」
「虜の果実をふんだんに使ったスイートケーキか……買って食べてみるか?」
「やったー!」

ほのぼのあり!

「えっと……なにしとるん?」
「豊胸マッサージ」
「……ユウロにしてもらえばええんとちゃう?」
「自分の口でたのむのがはずかしいんだってさ」

ぐだぐだあり!

「ねえなんでそんなにおっぱい大きいの……?」
「え……いやこれは……遺伝?」
「ゆ る さ ん」
「へ?ちょ、ちょっとサマリ……?」
「もぎとってやらあああああああああああああああ!!」
「きゃああああああああああああああああ!!」

黒サマリという笑いあり!

「ユウロ、ゆうろぉ♪」
「ちょ、ま、激し過ぎだ、がああああっ!!」
「やぁん♪いっぱいどくどくっていってるぅ♪でもまだ足りないよぉ♪」

もちろんエッチなこともあり!

「お母さん、お父さん、ただいま!」
「魔物になっちゃったけど、私達姉妹は、元気に帰ってきたよ!」

そしてちょっぴり涙あり。

「ではあたいも一緒に行くとしよう!変身したあたいの背中に乗ればあっという間に着くぞ!」
「うん!アメリ達といっしょに行こう!」
「よろしくね!でも旅は歩いていこうよ。そのほうが楽しいからね!」

新たなる仲間!

「英知のお宝!?」
「そうだ!この5つの宝を集めるのがあたいの夢だ!!」

新たなる冒険!

「危険になりかねないリリムだもの!今の内に排除するのが得策よ!」
「はん!させるかっての!!」
「アメリ負けないもん!!」

そして……新たな敵も!!

「へぇ……キミがボク達姉妹に会うために旅をしてる妹かい?」
「うんそうだよ!アメリって言うんだ!よろしくねお姉ちゃん!!」

もちろん新たな姉も登場!!

「うぅ……寒いなしかし……」
「えっそう?」
「んな事無いけどな……」
「これだから獣人型は……」

きままに旅を続ける一行は

「貴様らは皆死刑だ。温情などあると思うなよ」
「そん……な……」

時には命の危機に陥ったり

「そんな攻撃が当たるとでも?」
「いや思ってねえよ。だって俺は当てる事を目的としてないからな!今だアメリちゃん!!」
「うん!『ドロップアイシクル』!!」
「んなっがあっ!!」

時には戦ったりもしながら旅を続けていく。

「なあ魔物の王女……オレはどうしたらいいのかな……」
「そんなの簡単だよ……自分が正しいって思った事をすればいいんだよ」
「……簡単に言ってくれるなよ……お前達とは違うんだよ!オレは……何が正しいのかわからないんだよ……」
「……」

出会いや挫折を繰り返し

「前断っておいてあれだけどさ……お前は魔物とか、オレは人間とか関係なくさ……オレと友達になってくれよ!」
「もちろん!私達はずっと友達だよ!!」

幼き王女は大きくなっていく!

「アメリは皆の邪魔ものでしかない。旅の仲間は皆アメリを除外しようと思っている」
「……そんな事あるものか……」
「皆言ってたでしょ?アメリちゃんはいらない子。アメリちゃんは旅の足枷だって」
「違う!お姉ちゃん達はそんな事言わない!それに……」
「違わないよ。アメリはわがままで迷惑ばかりかける女の子。消えてほしいって世界中の皆が言うんだ」
「それに、アメリは……私は……!」

時には困難や壁にぶつかりながらも

「……ん?なんだかアメリ久しく会わないうちに大きくなった?」
「まあね……ちょっと成長したかもね!」

幼き王女は、大きく成長していく!

「あらアメリ、折角あげた地図無くしちゃったの?」
「うん……ゴメンねデルエラお姉ちゃん……」
「いいわよ。無くても無事に旅を続けてるようだしね」

彼女達の旅は、いったい何が起こるのだろうか!?

「これが……」
「子宝……宝樹……」

旅の先にあるものは、いったいなんなのか!?

「誕生日……おめでとう……♪」

幼き王女ときままな旅2(仮)

「さあ、また皆で旅に出ようか!」
「それじゃあ……しゅっぱーつ!!」

予定は未定!!

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33