Report.final 俺と皆と幸福な結末
全部、終わった。
俺、エヴァン・シャルズベニィは、糞ガキことオリバー・ウェイトリィを消滅させ、何故か決戦場に来たフェラン達と一緒にセレファイスへ帰還した。
俺達が帰還した時、セレファイスは残りの騎士達と戦ってる最中で、魔力欠乏を起こしてた俺とフェラン以外の皆は騎士の掃討―つっても、気絶させるだけだが―を開始。
能力差もあってか瞬く間に騎士達は捕縛され、セレファイスで繰り広げられていた戦いは僅か半日で終結した。
その後、魔力供給衝動を我慢出来なくなった俺はフェラン、コラム、ローラさん、キーン、ボイド、ホーヴァスの六人と大乱交、三日三晩シッカリガッツリ交わり続けた。
我ながら、よく涸れなかったもんだ。
皆と交わって魔力を回復した俺はフェラン達にどうして決戦場に来たのかを聞いたら、全員口を揃えて『大好きな俺を助けたいから』って言った。
何とも男冥利に尽きるが、正直セレファイスで待ってて欲しかった。
そうすりゃ、絶対に生きて帰るんだって気合が入るしな。
まぁ、嬉しかったから良しとしよう。
そして、俺達はブリチェスターとネフレン=カの墓所に避難してた一般市民と共に、廃墟と化したセレファイスの復興を始めた。
ローラさんが予め復興計画を立ててたのと、エルザ含めたブリチェスターのジャイアントアント達が手伝ってくれた事もあり、セレファイスの復興はどんどん進んだ。
復興作業で意外な活躍をしたのがゲイリーだ。
ゲイリーの奴、俺達が大乱交してる間にゴーレム―魔物の方じゃないぞ―を量産してた。
ゲイリー製作の土木作業用ゴーレムは、ジャイアントアントも吃驚な速度且つ不眠不休で復興作業に従事し、ローラさんの計画よりも早く復興は進んだんだ。
捕縛された『人類の護符』の騎士達は、スティーリィ率いる和平派に引き渡した。
引き渡した騎士達をどうすんのかをスティーリィに聞いたら
『オリバー・ウェイトリィの洗脳を解除した後、然るべき処置を与えるさ。まぁ、独身の魔物に婿として引き取ってもらうのが妥当かな?』
なんて言ったんだが、ソレでいいのかよ。
そして、此処で明かされた驚愕の事実。
『スティーリィ・ゴールディ』は偽名で、スティーリィの本名は『ウォーラン・ライス』。
その本名を聞いて、俺達は目玉が飛び出る―俺は飛び出る目玉が無いが―程に吃驚した。
ウォーラン・ライス。
大陸各地に散らばる教団の支部を総括する教団の団長、つまり、スティーリィは教団の一番上に立つ人間だった。
教団の団長が魔物との和平を目指してる事が驚きだが、ゲイリーが団長と友人関係を結んでた事が一番驚いた。
そして、糞ガキという頭を失った『人類の護符』は急速に勢力を弱め、ウォーラン率いる和平派の手に因って解体された。
解体されたのはいいんだが、何人かが逃げたらしい……厄介なのは、逃亡者は糞ガキに洗脳された奴じゃなくて、自らの意思で『人類の護符』へと参加した奴だって事だ。
あの糞ガキ、自ら加わった奴には洗脳を施してなかったらしい。
和平派は魔物との和平と並行しながら、逃亡者の捜索を続けるそうだ。
当分、争いの火種は残ってる事に俺は溜息を吐くしかなかった。
×××
〜魔界国家・レスカティエ〜
「…………………」
何だかんだで、早くも半年……復興も軌道に乗って漸く落ち着いた頃だ。
俺、フェラン、コラム、ローラさん、キーン、ボイド、ホーヴァス、ゲイリー、エルザ、フランシス様の一〇人は魔物国家・レスカティエを訪れた。
そして、俺は結婚式を挙げた時以上に緊張してた。
「あら、そんなに緊張しなくていいわよ。もっと気楽に構えてちょうだい」
(んな、無茶な……)
心の中で呟く俺。
机を挟んで俺の前にある椅子に座る人物が緊張しなくていいと言うが、幾等何でも無理!
俺達が居るのはレスカティエの王城、その一角にある豪華な客間。
ホーヴァスの屋敷の客間も豪華だったが、俺達が居る客間はホーヴァスの屋敷の客間が地味に思える程に豪華だ。
そして、俺達の前に居る人物は
「では、改めて自己紹介を……私の名はデルエラ、貴方達に会えて光栄だわ」
そう、デルエラ様。
レスカティエの実質的な支配者、魔王の第四王女そのヒトが俺達の前に居るんだ。
俺、フェラン、コラム、ボイド、エルザの五人はメドゥーサに石化されたかの如く緊張でカチコチに固まってる。
キーンは無表情で感情が判断し難いんだが、多分―いや、絶対―俺達と同じくカチコチに緊張してるだろうな。
ローラさん、ホーヴァス、フランシス様の三人はその立場上―ローラさんとホーヴァスは領主で、フランシス様は元・『偉大なる八人』―会う機会があったのか、あまり緊張してない。
「ふぅむ、この客間は豪華過ぎるのである。幾等、レスカティエの実質的支配者とはいえ、派手過ぎると思うのであ〜るな」
一般市民にとっちゃ雲の上の存在であるデルエラ様を前に、ゲイリーは普段と変わらずにさり気無く失礼な事をほざいてた。
う、うぅ……自然体でいられるゲイリーが、ある意味羨ましい。
「貴方達の健闘に敬意を。よく、世界の怨敵であるオリバー・ウェイトリィを討伐してくれました」
「は、ははは、はいっ!」
ア、アカン、度を超した緊張で声が上擦る。
何で、俺達はデルエラ様の前に居るのか……そりゃ、デルエラ様に招待されたからだ。
何でも、デルエラ様率いる部隊は超弩級危険人物の糞ガキをずっと探してたそうで、漸く糞ガキを見つけたと思ったら俺が消滅させた後だった。
んで、糞ガキ討伐の功績を称え、勲章を与える為にデルエラ様は俺達を招待したんだ。
デルエラ様から授かる名誉勲章は、民間人に与えられる勲章の中じゃ最上級の代物だ。
俺は此処に居る全員の代表として震えながら勲章を受け取り、デルエラ様はセレファイス防衛に尽力した『大蛮族』全員にも勲章を授ける旨を改めて発表した。
そして、俺達は観光ついでにレスカティエに暫く滞在する事にした。
「ミミル様相手でも、手加減しないからね!」
「あははっ♪ それじゃ、いっくよ〜♪」
「んじゃ、大怪我しないようにアタイが見張っておくかね」
フランシス様立ち合いの元、フェランとミミル様がドッチが上かで魔法対決したり。
「ボイド・シャルズヴェニィ、推して参る!」
「ウィルマリナ・ノースクリム、行きます!」
武人としての血が騒いだボイドはウィルマリナ様と模擬戦やったり。
「…………行く」
「さぁ、思う存分打ち込んできな!」
ボイドとウィルマリナ様の模擬戦に触発され、キーンとメルセ様も模擬戦おっ始めたり。
「ふふっ、チェックメイトです♪」
「む、むぅ……」
ホーヴァスはフランツィスカ様にチェスを挑んで見事に惨敗したり。
「『解光』は様々な毒性物質を浄化出来ますが、濃度や種類に応じて術式の一部を変更する事が必要です」
「成程、勉強になります」
コラムはサーシャ様から治癒魔法の指導を受けたり。
「こんなんはどうですか? ウチが昔住んでた所の名品なんよ」
「ふむ……ジパングとの交易、本格的に視野に入れるとしようか」
今宵様にジパングの品を見せてもらったローラさんはジパングとの交易を考えたり。
「こらぁぁ―――っ! アンタ達、待ちなさぁぁ―――い!」
「ふはははははははっ! 捕まえられるものなら、捕まえてごらんなさいなのであ〜る♪」
「逃げろ逃げろ、なのさ〜♪」
ゲイリーとエルザがプリメーラ様の弓を勝手に改造して追い掛け回されたり。
「ダークマターにバイコーン、エキドナ、白いサハギン、ドラゴン、ヴァンパイア……上位の魔物や稀少種族ばっかりでエヴァンも大変だね……」
「種族云々より人数が多い分、エルトの方が大変だと俺は思うんだがなぁ……」
俺はウィルマリナ様達の夫であるエルトと親友と喋り合う感じで色々―主にハーレム性活での気苦労―と話したりした。
糞ガキ率いる『人類の護符』との死闘を繰り広げた後だけあってか。
レスカティエ滞在中は楽しく、騒がしく、平和を実感出来た。
が、楽しい時間は瞬く間に過ぎてくもんで、デルエラ様に招待されてから既に一ヶ月が経った。
怖いくらいに順調とはいえ復興作業が残ってるし、流石にこれ以上長居出来ない。
ウィルマリナ様達に見送られながら、俺達は愛しい我が家であるセレファイスへと戻った。
さて、と……頑張って復興させるとするか!
×××
〜二年後〜
「 様? 様? 何処ですかぁ?」
セレファイスの領主屋敷にて、サキュバスが屋敷内を走り回っていた。
このサキュバス、以前ローラの秘書としてセレファイス運営に携わっており、今は新たに領主へ就任した の秘書としてセレファイス運営に携わっている。
だが、 は頻繁に領主の仕事を放棄しては何処かに出掛け、サキュバスに領主の仕事を押し付けている。
「はぁ……もう少し、領主としての自覚を持ってくださいよぉ」
屋敷中を走り回って疲れたサキュバスは壁に靠れ、溜息を吐く。
サキュバスは の居場所の予想が既に付いており、屋敷中を探し回っても無駄である事は理解している。
それでも、
「早く戻ってきてくださいよぉ、エヴァン様ぁぁ――――――っ!」
早く戻ってきてくれと叫ばずにはいられなかった。
×××
「んぁ?」
「エヴァン、どうしたの?」
「あ、いや……誰かに呼ばれたような気が」
キャンプの設営中、俺は誰かに呼ばれた気がして振り返ると、設営を手伝ってたフェランが首を傾げてどうしたのかと聞いてきた。
うぅん、また秘書殿が俺を探してんのかねぇ?
俺、エヴァン・シャルズヴェニィは、ローラ―呼び捨てで呼んでるが、未だに慣れん―の後継者としてセレファイス領主に就任した。
いや、就任『した』じゃなくて『させられた』の方が正しいか。
一年前、ローラが領主の引退を宣言し、セレファイスの運営はどうすんだと俺が聞いた所、
『安心せよ、我の後継者は既に決まっておる……エヴァン、汝を次の領主に任命する』
とか言ってくれましたよ。
無論、俺は猛反対したがローラは俺の猛反対を無視して引き継ぎを始め、あっという間に俺は『探検家』から『セレファイス領主』になったんだ。
だが、然し! 領主に就任させられても俺は探検家だ!
ローラやホーヴァスに手伝ってもらいながら領主の仕事をこなし、仕事の合間を縫っては探検の計画を練り、計画が出来たら領主の仕事を放棄して探検に出掛ける。
探検から戻ってきたら領主の仕事をこなして、その合間に次の探検の計画を練っては探検へと出掛けて、の繰り返し。
うん、見事なまでに駄目領主ですね、ハイ。
まぁ、兎に角、俺は領主と探検家の二足の草鞋を履いてる訳だ。
「くちゅんっ! うぅ、早くキャンプの設営を終わらせようよ」
「へっきしっ! そうだな、さっさと終わらせよう」
現在、俺はフェラン達にローラを加えた七人で常吹雪の永久凍土に来ている。
目的は糞ガキ……オリバー・ウェイトリィの研究所の調査。
『人類の護符』の残党が残ってる以上、此処を放っておけば後々不味い事になる。
糞ガキの生み出した窮極魔法や『魔物娘捕食者』の開発記録が残ってると、『人類の護符』の残党から第二、第三の糞ガキが現れる可能性があるからだ。
故に、糞ガキの残した資料を残さず回収した後、回収した資料をセラエノ大図書館の最奥へと封印する為、俺達は此処を訪れたんだ。
「うぅん、もう少し大きくするか?」
「だよねぇ、身体の大きいコラムやローラが居るもん」
そして、俺とフェランは猛吹雪の中でダークマターの黒球を応用してのキャンプ設営中。
布製キャンプだと猛吹雪で吹っ飛ぶ可能性がデカいが、そんな心配も黒球キャンプなら無用。
俺とフェランがしっかり制御してれば中はヌクヌクと温かく、猛吹雪で吹っ飛ぶ事も無い。
因みに、この場に居ないコラム達は糞ガキの研究所内部を調査中だ。
「ねぇ、エヴァン」
「ん?」
キャンプの設営が終わり、キャンプの中で寛いでるとフェランが俺に寄り掛かってくる。
寄り掛かってきたフェランは俺の右肩に頭を乗せ、
「ずっと、一緒に居ようね、エヴァン……」
そっと、噛み締めるように呟いた。
始まりはフェラン……フェランと出会ってから、俺の人生が変わり出した。
探検家だった俺は、魔物の殲滅を目論む『人類の護符』と何時の間にか関わった。
ングラネクの地底湖で出会った糞ガキを許せなくて、俺は『人類の護符』に喧嘩を挑んだ。
『人類の護符』に喧嘩を挑んで、俺は糞ガキを滅ぼした。
『探検家』だった俺は、今じゃ『英雄』だ。
そんな大層なモノが欲しくて、俺は糞ガキを滅ぼしたんじゃねぇんだけどなぁ。
俺が糞ガキを滅ぼそうとしたのは、俺の大好きなヒト達が居たからだ。
フェラン、コラム、ローラ、キーン、ボイド、ホーヴァス。
ローラとホーヴァス以外は無理矢理関係を持ったようなもんだが、俺は皆が大好きだ。
大好きなヒトを守りたいと思うのは、男として当然だ。
当然の事をやっただけなのに、俺は『英雄』になった。
全く、人生どう転がるかなんて分からないもんだな。
だけど、フェランと出会ったからこそ、今の『俺』が居る。
皆と結婚式を挙げた時も思ったが、こうして平和な世界―争いの火種は残ってるんだがな―で過ごしてると、ソレが一層実感出来る。
フェランと出会わなかったら、俺は『違う俺』になっていた。
フェランと出会ったからこそ、俺は『今の俺』になったんだ。
だから、俺は『今の俺』になる切欠になったフェランには感謝してる。
「あぁ……ずっと、一緒だ。でも、皆も一緒だぞ? 一人占めしたくないのか?」
俺が変わる切欠になったフェランの頭を感謝と愛情を籠めて撫でつつ、俺はフェランの呟きに、ちょっとだけ意地悪に答える。
「エヴァンを一人占めかぁ……アタシは皆が大好き、大好きな皆と一緒に居たいから、一人占めはしないかなぁ」
心地良さに目を細めながら、フェランは俺の意地悪な呟きに答える
済まん、意地悪言って悪かった。
フェランだけじゃなく、俺は大好きな皆と……コラム、ローラ、キーン、ボイド、ホーヴァスと、皆と一緒に生きていたい。
「エヴァン、大好き……」
「あぁ、俺もだ……」
キャンプの中で俺とフェランは身体を寄せ合う。
これからも、ずっと、俺は皆と一緒に生きていたい。
探検家をやってると身の危険は多いんだが、皆と一緒ならどんな危険でも乗り越えられると、俺は確信してる。
だから、俺は死ぬまでずっと、皆と一緒に生きていこうと思う。
Report.final 俺と皆と幸福な結末 Closed
俺、エヴァン・シャルズベニィは、糞ガキことオリバー・ウェイトリィを消滅させ、何故か決戦場に来たフェラン達と一緒にセレファイスへ帰還した。
俺達が帰還した時、セレファイスは残りの騎士達と戦ってる最中で、魔力欠乏を起こしてた俺とフェラン以外の皆は騎士の掃討―つっても、気絶させるだけだが―を開始。
能力差もあってか瞬く間に騎士達は捕縛され、セレファイスで繰り広げられていた戦いは僅か半日で終結した。
その後、魔力供給衝動を我慢出来なくなった俺はフェラン、コラム、ローラさん、キーン、ボイド、ホーヴァスの六人と大乱交、三日三晩シッカリガッツリ交わり続けた。
我ながら、よく涸れなかったもんだ。
皆と交わって魔力を回復した俺はフェラン達にどうして決戦場に来たのかを聞いたら、全員口を揃えて『大好きな俺を助けたいから』って言った。
何とも男冥利に尽きるが、正直セレファイスで待ってて欲しかった。
そうすりゃ、絶対に生きて帰るんだって気合が入るしな。
まぁ、嬉しかったから良しとしよう。
そして、俺達はブリチェスターとネフレン=カの墓所に避難してた一般市民と共に、廃墟と化したセレファイスの復興を始めた。
ローラさんが予め復興計画を立ててたのと、エルザ含めたブリチェスターのジャイアントアント達が手伝ってくれた事もあり、セレファイスの復興はどんどん進んだ。
復興作業で意外な活躍をしたのがゲイリーだ。
ゲイリーの奴、俺達が大乱交してる間にゴーレム―魔物の方じゃないぞ―を量産してた。
ゲイリー製作の土木作業用ゴーレムは、ジャイアントアントも吃驚な速度且つ不眠不休で復興作業に従事し、ローラさんの計画よりも早く復興は進んだんだ。
捕縛された『人類の護符』の騎士達は、スティーリィ率いる和平派に引き渡した。
引き渡した騎士達をどうすんのかをスティーリィに聞いたら
『オリバー・ウェイトリィの洗脳を解除した後、然るべき処置を与えるさ。まぁ、独身の魔物に婿として引き取ってもらうのが妥当かな?』
なんて言ったんだが、ソレでいいのかよ。
そして、此処で明かされた驚愕の事実。
『スティーリィ・ゴールディ』は偽名で、スティーリィの本名は『ウォーラン・ライス』。
その本名を聞いて、俺達は目玉が飛び出る―俺は飛び出る目玉が無いが―程に吃驚した。
ウォーラン・ライス。
大陸各地に散らばる教団の支部を総括する教団の団長、つまり、スティーリィは教団の一番上に立つ人間だった。
教団の団長が魔物との和平を目指してる事が驚きだが、ゲイリーが団長と友人関係を結んでた事が一番驚いた。
そして、糞ガキという頭を失った『人類の護符』は急速に勢力を弱め、ウォーラン率いる和平派の手に因って解体された。
解体されたのはいいんだが、何人かが逃げたらしい……厄介なのは、逃亡者は糞ガキに洗脳された奴じゃなくて、自らの意思で『人類の護符』へと参加した奴だって事だ。
あの糞ガキ、自ら加わった奴には洗脳を施してなかったらしい。
和平派は魔物との和平と並行しながら、逃亡者の捜索を続けるそうだ。
当分、争いの火種は残ってる事に俺は溜息を吐くしかなかった。
×××
〜魔界国家・レスカティエ〜
「…………………」
何だかんだで、早くも半年……復興も軌道に乗って漸く落ち着いた頃だ。
俺、フェラン、コラム、ローラさん、キーン、ボイド、ホーヴァス、ゲイリー、エルザ、フランシス様の一〇人は魔物国家・レスカティエを訪れた。
そして、俺は結婚式を挙げた時以上に緊張してた。
「あら、そんなに緊張しなくていいわよ。もっと気楽に構えてちょうだい」
(んな、無茶な……)
心の中で呟く俺。
机を挟んで俺の前にある椅子に座る人物が緊張しなくていいと言うが、幾等何でも無理!
俺達が居るのはレスカティエの王城、その一角にある豪華な客間。
ホーヴァスの屋敷の客間も豪華だったが、俺達が居る客間はホーヴァスの屋敷の客間が地味に思える程に豪華だ。
そして、俺達の前に居る人物は
「では、改めて自己紹介を……私の名はデルエラ、貴方達に会えて光栄だわ」
そう、デルエラ様。
レスカティエの実質的な支配者、魔王の第四王女そのヒトが俺達の前に居るんだ。
俺、フェラン、コラム、ボイド、エルザの五人はメドゥーサに石化されたかの如く緊張でカチコチに固まってる。
キーンは無表情で感情が判断し難いんだが、多分―いや、絶対―俺達と同じくカチコチに緊張してるだろうな。
ローラさん、ホーヴァス、フランシス様の三人はその立場上―ローラさんとホーヴァスは領主で、フランシス様は元・『偉大なる八人』―会う機会があったのか、あまり緊張してない。
「ふぅむ、この客間は豪華過ぎるのである。幾等、レスカティエの実質的支配者とはいえ、派手過ぎると思うのであ〜るな」
一般市民にとっちゃ雲の上の存在であるデルエラ様を前に、ゲイリーは普段と変わらずにさり気無く失礼な事をほざいてた。
う、うぅ……自然体でいられるゲイリーが、ある意味羨ましい。
「貴方達の健闘に敬意を。よく、世界の怨敵であるオリバー・ウェイトリィを討伐してくれました」
「は、ははは、はいっ!」
ア、アカン、度を超した緊張で声が上擦る。
何で、俺達はデルエラ様の前に居るのか……そりゃ、デルエラ様に招待されたからだ。
何でも、デルエラ様率いる部隊は超弩級危険人物の糞ガキをずっと探してたそうで、漸く糞ガキを見つけたと思ったら俺が消滅させた後だった。
んで、糞ガキ討伐の功績を称え、勲章を与える為にデルエラ様は俺達を招待したんだ。
デルエラ様から授かる名誉勲章は、民間人に与えられる勲章の中じゃ最上級の代物だ。
俺は此処に居る全員の代表として震えながら勲章を受け取り、デルエラ様はセレファイス防衛に尽力した『大蛮族』全員にも勲章を授ける旨を改めて発表した。
そして、俺達は観光ついでにレスカティエに暫く滞在する事にした。
「ミミル様相手でも、手加減しないからね!」
「あははっ♪ それじゃ、いっくよ〜♪」
「んじゃ、大怪我しないようにアタイが見張っておくかね」
フランシス様立ち合いの元、フェランとミミル様がドッチが上かで魔法対決したり。
「ボイド・シャルズヴェニィ、推して参る!」
「ウィルマリナ・ノースクリム、行きます!」
武人としての血が騒いだボイドはウィルマリナ様と模擬戦やったり。
「…………行く」
「さぁ、思う存分打ち込んできな!」
ボイドとウィルマリナ様の模擬戦に触発され、キーンとメルセ様も模擬戦おっ始めたり。
「ふふっ、チェックメイトです♪」
「む、むぅ……」
ホーヴァスはフランツィスカ様にチェスを挑んで見事に惨敗したり。
「『解光』は様々な毒性物質を浄化出来ますが、濃度や種類に応じて術式の一部を変更する事が必要です」
「成程、勉強になります」
コラムはサーシャ様から治癒魔法の指導を受けたり。
「こんなんはどうですか? ウチが昔住んでた所の名品なんよ」
「ふむ……ジパングとの交易、本格的に視野に入れるとしようか」
今宵様にジパングの品を見せてもらったローラさんはジパングとの交易を考えたり。
「こらぁぁ―――っ! アンタ達、待ちなさぁぁ―――い!」
「ふはははははははっ! 捕まえられるものなら、捕まえてごらんなさいなのであ〜る♪」
「逃げろ逃げろ、なのさ〜♪」
ゲイリーとエルザがプリメーラ様の弓を勝手に改造して追い掛け回されたり。
「ダークマターにバイコーン、エキドナ、白いサハギン、ドラゴン、ヴァンパイア……上位の魔物や稀少種族ばっかりでエヴァンも大変だね……」
「種族云々より人数が多い分、エルトの方が大変だと俺は思うんだがなぁ……」
俺はウィルマリナ様達の夫であるエルトと親友と喋り合う感じで色々―主にハーレム性活での気苦労―と話したりした。
糞ガキ率いる『人類の護符』との死闘を繰り広げた後だけあってか。
レスカティエ滞在中は楽しく、騒がしく、平和を実感出来た。
が、楽しい時間は瞬く間に過ぎてくもんで、デルエラ様に招待されてから既に一ヶ月が経った。
怖いくらいに順調とはいえ復興作業が残ってるし、流石にこれ以上長居出来ない。
ウィルマリナ様達に見送られながら、俺達は愛しい我が家であるセレファイスへと戻った。
さて、と……頑張って復興させるとするか!
×××
〜二年後〜
「 様? 様? 何処ですかぁ?」
セレファイスの領主屋敷にて、サキュバスが屋敷内を走り回っていた。
このサキュバス、以前ローラの秘書としてセレファイス運営に携わっており、今は新たに領主へ就任した の秘書としてセレファイス運営に携わっている。
だが、 は頻繁に領主の仕事を放棄しては何処かに出掛け、サキュバスに領主の仕事を押し付けている。
「はぁ……もう少し、領主としての自覚を持ってくださいよぉ」
屋敷中を走り回って疲れたサキュバスは壁に靠れ、溜息を吐く。
サキュバスは の居場所の予想が既に付いており、屋敷中を探し回っても無駄である事は理解している。
それでも、
「早く戻ってきてくださいよぉ、エヴァン様ぁぁ――――――っ!」
早く戻ってきてくれと叫ばずにはいられなかった。
×××
「んぁ?」
「エヴァン、どうしたの?」
「あ、いや……誰かに呼ばれたような気が」
キャンプの設営中、俺は誰かに呼ばれた気がして振り返ると、設営を手伝ってたフェランが首を傾げてどうしたのかと聞いてきた。
うぅん、また秘書殿が俺を探してんのかねぇ?
俺、エヴァン・シャルズヴェニィは、ローラ―呼び捨てで呼んでるが、未だに慣れん―の後継者としてセレファイス領主に就任した。
いや、就任『した』じゃなくて『させられた』の方が正しいか。
一年前、ローラが領主の引退を宣言し、セレファイスの運営はどうすんだと俺が聞いた所、
『安心せよ、我の後継者は既に決まっておる……エヴァン、汝を次の領主に任命する』
とか言ってくれましたよ。
無論、俺は猛反対したがローラは俺の猛反対を無視して引き継ぎを始め、あっという間に俺は『探検家』から『セレファイス領主』になったんだ。
だが、然し! 領主に就任させられても俺は探検家だ!
ローラやホーヴァスに手伝ってもらいながら領主の仕事をこなし、仕事の合間を縫っては探検の計画を練り、計画が出来たら領主の仕事を放棄して探検に出掛ける。
探検から戻ってきたら領主の仕事をこなして、その合間に次の探検の計画を練っては探検へと出掛けて、の繰り返し。
うん、見事なまでに駄目領主ですね、ハイ。
まぁ、兎に角、俺は領主と探検家の二足の草鞋を履いてる訳だ。
「くちゅんっ! うぅ、早くキャンプの設営を終わらせようよ」
「へっきしっ! そうだな、さっさと終わらせよう」
現在、俺はフェラン達にローラを加えた七人で常吹雪の永久凍土に来ている。
目的は糞ガキ……オリバー・ウェイトリィの研究所の調査。
『人類の護符』の残党が残ってる以上、此処を放っておけば後々不味い事になる。
糞ガキの生み出した窮極魔法や『魔物娘捕食者』の開発記録が残ってると、『人類の護符』の残党から第二、第三の糞ガキが現れる可能性があるからだ。
故に、糞ガキの残した資料を残さず回収した後、回収した資料をセラエノ大図書館の最奥へと封印する為、俺達は此処を訪れたんだ。
「うぅん、もう少し大きくするか?」
「だよねぇ、身体の大きいコラムやローラが居るもん」
そして、俺とフェランは猛吹雪の中でダークマターの黒球を応用してのキャンプ設営中。
布製キャンプだと猛吹雪で吹っ飛ぶ可能性がデカいが、そんな心配も黒球キャンプなら無用。
俺とフェランがしっかり制御してれば中はヌクヌクと温かく、猛吹雪で吹っ飛ぶ事も無い。
因みに、この場に居ないコラム達は糞ガキの研究所内部を調査中だ。
「ねぇ、エヴァン」
「ん?」
キャンプの設営が終わり、キャンプの中で寛いでるとフェランが俺に寄り掛かってくる。
寄り掛かってきたフェランは俺の右肩に頭を乗せ、
「ずっと、一緒に居ようね、エヴァン……」
そっと、噛み締めるように呟いた。
始まりはフェラン……フェランと出会ってから、俺の人生が変わり出した。
探検家だった俺は、魔物の殲滅を目論む『人類の護符』と何時の間にか関わった。
ングラネクの地底湖で出会った糞ガキを許せなくて、俺は『人類の護符』に喧嘩を挑んだ。
『人類の護符』に喧嘩を挑んで、俺は糞ガキを滅ぼした。
『探検家』だった俺は、今じゃ『英雄』だ。
そんな大層なモノが欲しくて、俺は糞ガキを滅ぼしたんじゃねぇんだけどなぁ。
俺が糞ガキを滅ぼそうとしたのは、俺の大好きなヒト達が居たからだ。
フェラン、コラム、ローラ、キーン、ボイド、ホーヴァス。
ローラとホーヴァス以外は無理矢理関係を持ったようなもんだが、俺は皆が大好きだ。
大好きなヒトを守りたいと思うのは、男として当然だ。
当然の事をやっただけなのに、俺は『英雄』になった。
全く、人生どう転がるかなんて分からないもんだな。
だけど、フェランと出会ったからこそ、今の『俺』が居る。
皆と結婚式を挙げた時も思ったが、こうして平和な世界―争いの火種は残ってるんだがな―で過ごしてると、ソレが一層実感出来る。
フェランと出会わなかったら、俺は『違う俺』になっていた。
フェランと出会ったからこそ、俺は『今の俺』になったんだ。
だから、俺は『今の俺』になる切欠になったフェランには感謝してる。
「あぁ……ずっと、一緒だ。でも、皆も一緒だぞ? 一人占めしたくないのか?」
俺が変わる切欠になったフェランの頭を感謝と愛情を籠めて撫でつつ、俺はフェランの呟きに、ちょっとだけ意地悪に答える。
「エヴァンを一人占めかぁ……アタシは皆が大好き、大好きな皆と一緒に居たいから、一人占めはしないかなぁ」
心地良さに目を細めながら、フェランは俺の意地悪な呟きに答える
済まん、意地悪言って悪かった。
フェランだけじゃなく、俺は大好きな皆と……コラム、ローラ、キーン、ボイド、ホーヴァスと、皆と一緒に生きていたい。
「エヴァン、大好き……」
「あぁ、俺もだ……」
キャンプの中で俺とフェランは身体を寄せ合う。
これからも、ずっと、俺は皆と一緒に生きていたい。
探検家をやってると身の危険は多いんだが、皆と一緒ならどんな危険でも乗り越えられると、俺は確信してる。
だから、俺は死ぬまでずっと、皆と一緒に生きていこうと思う。
Report.final 俺と皆と幸福な結末 Closed
12/11/12 15:24更新 / 斬魔大聖
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