Report.05 俺と吸血鬼と巨人 後編
《オオォォォォォォッ!!》
少々、時間を遡行しよう。
エヴァンとホーヴァスが胃袋巨蟲に飲み込まれた後、残されたフェラン達は『GE‐02』及び『GE‐02』が吐き出した超巨蟲と激闘を繰り広げていた。
超巨蟲と対峙するは竜王形態となったボイド……ボイドは地上の王者の風格を露にして、超巨蟲を圧倒していた。
普段の竜人形態なら鍛え抜かれた技術があるものの、竜王形態では骨格の違いから技術を発揮する事は難しい。
故に、ボイドは純粋な力で只管に殴打していた。
《ハアァァァァァァッ!!》
殴打、殴打殴打殴打、殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打。
頑強な鱗に覆われた拳は超巨蟲の血で赤く染まり、拳の弾幕に超巨蟲は為す術無し。
サンドバックと化した超巨蟲は、抵抗する事も許されずに殴られ続ける。
吹き荒れる暴力、飛び散る鮮血、鳴り響く骨肉砕く轟音。
ボイドの姿は、まさしく地上の王者……いや、『暴君』の方が正確かもしれない。
暴君は殴打する、超巨蟲の生命を奪うまで。
「うおぉぉぉりゃぁぁぁぁぁっ!」
『GE‐02』と対峙するはフェラン、コラム、キーンの三人……三人は其々の得意分野を活用し、確実に『GE‐02』を追い詰めていた。
「『重榴塊(グラボム)』! 『重榴塊』! 『重榴塊』!」
フェランは小柄な体躯と破壊力に優れた闇属性魔法を活用し、足を止める事も無く魔法を放ち続け、『GE‐02』を攻撃する。
フェランが放つは『重塊』に似た黒い塊、その塊には疣のような小さな塊が付着している。
放たれた疣付き塊は『GE‐02』、若しくは『GE‐02』が吐き出した蟲にぶつかると、ぶつかった瞬間に疣付き塊は破裂する!
『重榴塊』……『重塊』の上位魔法であり、何かにぶつかるか、フェランが合図する事で小型の『重塊』を周囲に散布する広域攻撃魔法である。
『重榴塊』とは所謂『魔力で作られた手榴弾』、撒き散らされる小型『重塊』は小さくとも破壊力は充分である。
火力に優れた闇属性魔法の使い手たるフェランは只管に『重塊』と『重榴塊』を放ち続け、『GE‐02』を攻め立てる。
「フェラン、危ないっ! 反射結界、『因果壁(パラクス・ウォル)』!」
走るフェランを先回りするように細長い蟲共が吐き出され、迫る蟲共を確認したコラムは右腕を振るい、フェランと迫る細長い蟲共の間に透明な壁を生成する。
コラムは馬の脚力が齎す機動力と鉄壁に等しい防御力を活かし、縦横無尽に駆け巡っては『GE‐02』の攻撃を防いでいた。
生成された壁に細長い蟲共がぶつかった瞬間、壁は七色の輝きを放つ光をぶつかった蟲共へ放ち、蟲共は七色の光に貫かれて絶命する。
『因果壁』とは壁に加えられた衝撃を吸収して魔力へ変換、変換した魔力を光の矢にして放つ攻防一体の防御魔法である。
如何に苛烈であろうと生物である以上、攻撃し続ければ疲弊する。
疲弊は攻撃を鈍らせ、鈍りが焦りを生み、焦りは攻撃を単調にし、単調な攻撃は致命的な隙を何れ生み出す。
防御こそ最大の攻撃……その言葉を体現するかの如く、コラムは防御と拘束を駆使して、『GE‐02』を確実に疲弊させる。
「…………!」
キーンは『武装錬金』で生み出した一一本―複製元を含めて―の銛を駆使し、『GE‐02』の吐き出した蟲共を駆逐する。
唯一にして最強の魔法・『武装錬金』、自然の中で鍛え抜かれた肉体、己の力を最大限まで引き出し、キーンは吐き出された蟲共の相手をする。
複製された一〇本の銛は獲物狙う肉食魚の如く宙を駆け回り、正確に蟲共の脳髄を貫き、使い手たるキーンも蟲共の頭に乗っては直接脳髄を穿つ。
現状、『GE‐02』は終始蟲共を吐き出す事に徹し、その恵まれ過ぎた体躯による肉弾戦を仕掛けてこない。
キーンは直観で把握する、この無数に等しき蟲共が『GE‐02』の要であると。
無数に等しき蟲共を吐き出し、圧倒的物量で一切合切喰らい尽くす事が『GE‐02』に出来る事だと。
故に、キーンは『GE‐02』の力の根源たる蟲共を駆逐する事を選択した。
幾等無数に等しくとも、あくまで『等しい』だけであり、限界は何れ訪れる。
圧倒的物量で攻めるなら、その物量が無くなるまで削ぎ続けるまで……何れ訪れる限界を迎えれば、『GE‐02』はただの的でしかなく、討つ事は容易となる。
故に、キーンは『GE‐02』の要たる蟲共を駆逐し続ける。
「コラムッ! アイツ、蟲を吐かなくなってきた!」
「好機です! 一気にいきましょう!」
「…………!」
フェランは攻め、コラムは防ぎ、キーンは削ぐ。
己の出来る事に徹する三人は、確実に『GE‐02』を追い詰め、体内に収めている蟲が少なくなってきたのか、『GE‐02』は蟲を吐き出さずに拳を振るい始める。
ソレを見た三人は、一気呵成に仕掛ける!
「…………!」
「キーン! 少し我慢してください!」
キーンはコラムに向かって走り出し、コラムは向かってくるキーンに後脚を向ける。
後脚を向けられたキーンは身体の向きを変え、何故かコラムはキーンの背中を渾身の力で蹴飛ばし、蹴飛ばされたキーンは高く空を飛ぶ。
傍から見れば仲間割れに見えるが、コレは無言で交わされた戦術である。
「拘束結界、『束縛鎖陣』!」
天高く飛んだキーンを見届けたコラムは術式を詠唱、彼女の双掌に魔法陣が浮かび上がる。
浮かび上がった魔法陣の中心からは黒い鎖が伸び、伸びた二本の鎖は更に浮かび上がった魔法陣に吸い込まれるように消える。
魔方陣に吸い込まれた二本の鎖は『GE‐02』の足首近くに現れた魔法陣から再び現れ、蛇の如く『GE‐02』の足首に巻き付く。
「倒れなさい!」
鎖が巻き付いたのを確認したコラムは掌に浮かぶ鎖を掴んで力強く引っ張り、その動作に連動するように『GE‐02』の足首に巻き付いた鎖が引っ張られる。
足を掬われた『GE‐02』はうつ伏せに倒れそうになり、反射で腕を地面に付けるが、ソレこそがコラムの狙いである。
辛うじて転倒を防いだ『GE‐02』の四肢に、先程の魔方陣が浮かび上がり、其処から何本もの鎖が飛び出して四肢を束縛する!
「行っくぞぉぉぉ――――っ!!」
『GE‐02』が四肢を束縛される寸前、フェランは猛然と走り出す。
四肢を束縛された『GE‐02』の僅かな隙間に滑り込んだフェランは、滑り込んだ勢いを殺す事無く『GE‐02』の真下を潜り抜ける。
勿論、フェランは何もせずに潜り抜ける気は無い……真下を潜り抜ける最中、『GE‐02』の身体の中心線に沿うように『重榴塊』を立て続けに放つ。
放たれた『重榴塊』は皮膚を突き破り、
「爆発っ!」
潜り抜けたフェランの合図と共に、『GE‐02』の体内で破裂する!
「キーン!」
体内で破裂した『重榴塊』に悶える事も出来ぬ『GE‐02』、その目に上空から迫る影に気付く筈も無い。
「……超攻性魔銛結界!」
上空から迫るは、コラムに蹴飛ばされたキーン……既に術式詠唱を済ませていたらしく、キーンの周囲には二〇本の銛が浮かんでいる。
キーンの周囲に浮かぶ二〇本の銛は急降下し、立て続けに『GE‐02』の心臓があると思しき部分に一斉に突き刺さる。
先に突き刺さった銛達に追従するように、キーンは降下の勢いを乗せて『GE‐02』の背中へ深々と銛を突き立てる!
《ヌゥゥオォゥゥラァァァァァァッ!!》
フェラン、コラム、キーンの連携が見事に決まった瞬間、ボイドの咆吼が墓所に響き渡る。
その咆吼を聞いた三人はボイドへ視線を向けると、血に塗れた拳が超巨蟲の腹を突き破り、背中から拳が現れる瞬間を目撃した。
貫かれた超巨蟲は苦悶と激痛で悶え、ボイドが拳を引き抜くと豪雨の如く超巨蟲の鮮血が墓所へ降り注ぐ。
外で繰り広げられた激闘は……
×××
「嘘、でしょ……」
「そんな、ありえません……」
「…………!」
《ナ、何ダト……!?》
終結しなかった。
心臓を貫かれても尚、『GE‐02』は四肢を束縛する鎖を引き千切ろうと悶える。
超巨蟲は腹に大穴を開け、血が濁流の如く抜けていっても、未だ生き永らえている。
両者の異常な生命力に、フェラン達は呆然とするしかなかった。
《ヌッ、グゥゥ、アァァ――――……》
「もう、駄目……魔力、空っぽだよぉ……」
最悪なのはフェラン達は全力を尽くし、既に魔力が底を尽きかけていた事……魔力欠乏に陥ったフェラン、コラム、キーンの三人は力無く座り込む。
限界を迎えたボイドの生存本能が『原初の形』を強制的に解除し、超次元的に竜王形態を折り畳ませ、ボイドは竜人形態へと戻る。
「いけません、『束縛鎖陣』が……!」
コラムが魔力欠乏に陥った事で『GE‐02』の束縛が解け、心臓に銛を突き立てられた状態で『GE‐02』は立ち上がる。
先程まで嬲られた鬱憤を晴らすつもりらしく、『GE‐02』と超巨蟲はジリジリと恐怖を煽るようにゆっくりとフェラン達に近付いていく。
「エヴァン、ゴメンね……」
死を覚悟したフェラン達……愛しいエヴァンを残して死ぬ事に、フェランは届く筈が無いと理解しても尚、彼に謝罪の言葉を漏らした。
『GE‐02』がゆっくりと二股に分かれた剛腕を振り上げ、超巨蟲が鋭利かつ巨大な牙を見せつけるように大きく口を開ける。
此処で死を迎えるのか、とフェラン達が諦めた時だった。
「「「「…………!」」」」
膨大な魔力を感じ取ったフェラン達は重たい身体を強引に動かし、その場から離れる。
離れた瞬間、フェラン達が居た場所を濁流の如く魔力の奔流が駆け抜け、駆け抜ける魔力の奔流は『GE‐02』と超巨蟲を飲み込む。
魔力の奔流に飲み込まれた『GE‐02』と超巨蟲は、フェラン達に止めを刺そうとした体勢のまま、何が起きたのかを理解する事も無く消滅した。
×××
「助けて……」
ホーヴァスの祈りは、教団が崇拝する神以外の神に届いたらしい。
ヒュルリ…と密閉された空間に吹く筈の無い微風が、流れ落ちる涙を拭うようにホーヴァスの頬を撫でる。
「…………え?」
微風がホーヴァスの頬を撫でた瞬間、微風は鋭利な風の刃と化し、風の刃はホーヴァスを拘束する細長い蟲共を、大蒜頭の幼児の股間の蟲を切り裂く。
「イィ、ンギィィィィィィッ!?」
「きゃんっ!」
拘束から解かれたホーヴァスは尻餅を付き、股間の蟲を切り裂かれた大蒜頭の幼児は痛みでゴロゴロと床を転げ回る。
痛みで悶え転げる大蒜頭の幼児、その顔面に爪先が深々と突き刺さり、鼻血を吹きながら大蒜頭の幼児は吹き飛んだ。
大蒜頭の幼児を蹴り飛ばした者は呆然とするホーヴァスの頭に手を置き、クシャクシャと荒っぽくも優しく撫でる。
「悪い、な……怖い、思い、させて、さ……」
ホーヴァスの頭を撫でるのは、全身を血で染め上げたエヴァンだった。
×××
「悪い、な……怖い、思い、させて、さ……」
血が抜けて重い身体を気力で支えながら、俺はホーヴァスの頭を撫でる。
細長い蟲共に貫かれた時は、本当に危なかった……血がダクダクと流れるわ、意識が朦朧とするわ、貫かれた所がズキズキ痛いわで、俺は本気で死を覚悟した。
だけど、俺は死ねなかった、死ぬ訳にはいかなかった。
『生きて、帰ってくるのだぞ……我と、汝の子の為にも……』
俺はローラさんと約束した、生きて帰るって。
『そりゃ、コッチの台詞だ、糞ガキ! オリバー・ウェイトリィ! テメェの面は心の目に焼きつけた! 今度その面を見たら、完膚無きにブッ飛ばす!』
俺は糞ガキに宣言した、テメェを完膚無きまでにブッ飛ばすと。
『それじゃ、アタシも一緒に探検するっ!』
『コレからもフェランさん共々、よろしくお願いします、『旦那様』❤』
『……エヴァンッ、好きっ、んぁっ、好きっ❤』
『エヴァン殿は拙者の『宝』、生涯を賭けてでも守り抜く大事な『宝』だ……』
俺は死ねない……フェランを、コラムを、キーンを、ボイドを残して、勝手に死ぬ訳にはいかねぇんだ。
何より、さ
『助けて……』
ホーヴァスが助けを求めてて、助けられるのが俺だけの状態で、死んでられるかよ!
「大丈夫だ、ホーヴァス……アイツは、俺が、ブッ飛ばしてやる!」
気を抜けば二度と戻れねぇ深淵に落ちそうな身体を気力で支え、俺はほんの少し先で鼻を押さえながら立ち上がる大蒜頭の幼児を、心の目で睨みつける。
すると、俺の身体を優しい光が包み込み、重たかった身体が少しだけ軽くなる。
「『癒光』で応急処置したわ……だけど、あくまで応急処置だから長くは持たないわよ」
どうやら、ホーヴァスが治癒魔法を施してくれたっぽいな。
安心しろ、ホーヴァス……サクッと決着を付けてやるからさぁっ!
×××
『昏き湖に眠る皇帝よ、我に力を与えたまえ』
エヴァンが呟くと同時に彼の身体から膨大な魔力が洪水の如く溢れだし、溢れる魔力は彼の服を黄色に染め上げる。
されど、エヴァンが纏う黄色は、黄色にして黄色に非ず。
黄色の持つイメージの持たない黄色、明るいにも関わらず輝きを放たぬ黄色。
宛ら、黄色の闇……輝かぬ黄色、只管に昏い黄色をエヴァンは纏っていた。
『汝の力を我に与えたまえ、我が現世(ウツシヨ)の黄衣の王となる為に』
徐に突き出されたエヴァンの右腕に怪異が起こる。
溢れる魔力が右腕に集うと、黒く艶やかな触手が無数に現れ、エヴァンの右腕は瞬く間に黒く艶やかな触手の群で覆われる。
右腕を覆う触手の群は絡まり合い、絡まり合う触手の群は漆黒の竜頭を形作る。
漆黒の竜頭の表面は脈動するかの如く蠢き、黒い雫を下顎から滴らせながら肉を引き裂く音と共に閉じられた口をゆっくりと開く。
『現世は狂気(クル)え、地獄は滅亡(ホロビ)よ、天国は慟哭(ナゲ)け』
顎を全開にした漆黒の竜頭の喉からは膨大な魔力が溢れ、喉に溜まった魔力が解放される瞬間を待ち侘びているかのように竜頭は激しく脈動する。
竜頭から溢れる膨大かつ圧倒的威圧感を放つ魔力に、ホーヴァスは吹き飛びそうな意識を懸命に繋ぎ止め、大蒜頭の幼児は戦慄で硬直する。
『是が、黄衣の王の力也』
右腕が異形と化したエヴァンは、空虚な目で戦慄する大蒜頭の幼児を見据え、異形の右腕を死刑宣告をするかの如く突きつける。
『狂気齎す黄衣の王の触腕(ルナティクス・トゥ・ザ・ハストゥール)』
エヴァンが最後の詞を紡ぐと同時に、竜頭から膨大な魔力が宛らドラゴンの吐息のように放たれ、放たれた魔力は一直線に大蒜頭の幼児目掛けて突き進む。
「ングガァァァァァッ!」
迸る魔力の奔流に未知なる感情を抱いた大蒜頭の幼児は、口から全ての蟲を放つ。
細長い蟲、巨蟲、胃袋巨蟲、超巨蟲、体内に収めた蟲共全てを動員し、盾にして防ごうと試みたのだろう。
されど、ソレは無駄な足掻きだと大蒜頭の幼児は知る。
迸る魔力の奔流に触れた瞬間、蟲共は塵一つ残さず消滅し、全ての蟲を吐き出した大蒜頭の幼児に最早抗う術は無い。
「アァ、アァァ、アアァァァ―――――――――ッ」
魔力の奔流が己を飲み込む刹那、大蒜頭の幼児は己が抱いた未知の感情が何かを悟る。
ソレは恐怖、生命を奪われる事に対する本能的恐怖。
ソレは恐怖、圧倒的な力に晒された者の唯一の抵抗。
ソレが恐怖だと知る事無く、大蒜頭の幼児は膨大な魔力の奔流に飲まれて消滅する。
迸る魔力の奔流は大蒜頭の幼児を消滅させても勢いは衰えず、胃袋巨蟲の腹を貫き、腹を貫かれた胃袋巨蟲も大蒜頭の幼児と同じ末路を辿る事になった。
そして、胃袋巨蟲の腹を貫いた魔力の奔流が、外の『GE‐02』と超巨蟲も巻き込んで消滅させた事をエヴァンは知る事も無く、彼の意識は闇に飲まれていった。
×××
「……ん、あ」
えっと、此処は何処だ? 何で、俺は寝てるんだ?
確か、俺は胃袋巨蟲に突っ込んで、大蒜頭の幼児と戦って、それで……どうなった?
憶えてるのは俺の新必殺技を放った所まで、それからどうなったのかを全く憶えてない。
「良かった、気がついたのね」
記憶を探ろうとしたら直ぐ近くでホーヴァスの声が聞こえ、
「……ホーヴァス? 此処は」
此処は何処だ、と聞こうとしたら、ソレを遮るようにホーヴァスは話し出す。
「貴方は私も知らない魔法を放った後、気絶したのよ」
ホーヴァスの話に因ると、俺は新必殺技を放った後に気絶したそうで、放った新必殺技は大蒜頭の幼児どころか、胃袋巨蟲に『GE‐02』をも消滅させたんだと。
元の大きさに戻った後、気絶した俺をお姫様抱っこ―出会った時の意趣返しらしい―して、フェラン達と合流して屋敷に戻った。
因みに、俺は気絶してから丸一日眠ってたそうな。
「起きたのなら、あの馬鹿げた威力の魔法の事を説明してもらえるかしら?」
起きて早々、ソレかい……まぁ、アレを間近で見たホーヴァスには、アレが一体何なのかを知る権利がある。
『狂気齎す黄衣の王の触腕』。
俺が独自に編み出した『星間駆ける皇帝の葬送曲』に代わる俺の切り札。
昨日、ホーヴァスに相談した後、俺は自分に出来る事が何かを考えてる途中で、すっかり忘れてた事実を俺は思い出した。
忘れてた事実とはフェランが魔物学上、闇の精霊と言われるダークマターである事だ。
ダークマターが精霊の一種として考えられてる理由は肉体が魔力で構築されてる事、魔力還元に因る豊穣能力の他に、自身の力の一部譲渡がある。
長々と蘊蓄を垂れるのもアレだから結論だけ言うと、俺はフェランの持つ力の一部を利用出来るという事だ。
その事を思い出した俺は試しに『重塊』の術式を詠唱した所、フェラン程じゃないが見事行使に成功した。
そして、俺は脳内に刻まれた『星間駆ける皇帝の葬送曲』の術式を解析し、フェランから譲渡された力と組み合わせて編み出したのが『狂気齎す黄衣の王の触腕』だ。
簡単に言えば、全魔力を籠めた『重塊』……軌道安定を兼ねてダークマターの触手で腕を覆って保護して、全魔力を破壊力へ転換して放ち、一切合切のべつ幕無しに消滅させる。
俺が黄色くなったのは、まぁ、何というか……魔法の名前にある『ハストゥール』の化身、『黄衣の王』を気取ってみたかっただけだったりする。
「成程、ね……」
俺の説明を受けたホーヴァスは、納得したような呆れたような声で呟く。
まぁ、当然だよなぁ……『狂気齎す黄衣の王の触腕』は、彼の『星間駆ける皇帝の葬送曲』に匹敵するように編み出したんだ、その破壊力は言わずもがな、という奴だ。
その分、魔力消費も膨大で必然的に魔力供給衝動が起こるんだが、丸一日眠ってたお陰で魔力供給衝動は起きてないみてぇだ。
助かったぁ……気絶してなかったら、また強姦紛いの交わりでハーレム増やす所だった。
「ねぇ、エヴァン?」
「んぁ?」
ハーレム増やさずに済んでホッとしてたら、ホーヴァスが頬をホンノリ赤くしながら俺を見つめ、いきなり首根っこを噛んで……って、ウォイッ!
「ふふっ……貴方は私を助けてくれた、だからお礼をしてあげないと」
そう言いながらホーヴァスは妖艶な笑みを浮かべながら服を脱ぎ始め、
「ねぇ、ホーヴァス? エヴァン、起きた、の……」
運悪くも、フェランが扉を開けて硬直する。
何て最悪な状況ぉぉぉぉっ! フェランの事だ……
「あぁぁぁぁっ!? ホーヴァス、狡いっ! アタシも混ぜてぇ!」
混ぜろって言ってくるに決まってらぁなぁぁぁぁぁっ!
×××
「ふぁぁ……」
「えへへ……エヴァンのオ○ンチン、元気になってる♪」
俺は問答無用で服を剥かれ、曝け出された我が駄目息子はホーヴァスの吸血の所為で既に限界カチカチだった。
どうやらホーヴァスは初めてらしく、普段の凛とした雰囲気は無く、俺のチ○コを見つめてる。
一方、フェランがツンツンと俺のチ○コを突っつくと、チ○コが反応してビクビクと動く。
ふはは……我ながら制御が効いてねぇぜ、畜生。
「それじゃ、ご奉仕させて頂きまぁす♪」
「そ、それじゃ、ご、ごご、ご奉仕してあげる……努力するから、き、気持ち良くなりなさい……」
フェランは羞恥心の欠片無しに、ホーヴァスは恥ずかしがりながら奉仕すると言うんだが、何処で覚えた、んな台詞。
「「本能(よ)」」
魔物の本能、侮れねぇっ!
「それじゃ、ホーヴァスはアタシの真似でもする?」
「だ、だだだ、大丈夫よ……多分、だけど」
フェランが唇を俺のチ○コに近づけ、ホーヴァスは息を呑んでソレを見守ってる。
「ん、れるっ……ちゅ、ちゅる、れるる…ん、ぢゅるる❤」
「はむっ、れる……れろ、れるる…はふっ、ぢゅずっ❤」
赤い舌を這わせた後、フェランは亀頭を半分咥えてツンツンと舌で突っつく。
フェランを見て火が付いたのか、ホーヴァスもチ○コに舌を伸ばして丁寧に雁首を舐める。
そして、一心不乱にチ○コを舐め回し始めるフェランとホーヴァス。
う、うををっ……『エヴァン・シャルズヴェニィ、此処にありき』って遺書を書き残して、首吊っても構わんくらいに気持ち良いっ!
いや、死ぬつもりはねぇけどさ。
「ふぁむっ、んっ、ちゅるるっ❤ んへへ、エヴァンの匂い、れるっ、ちゅずる、アタシ、大好き❤」
フェランは蠱惑的な笑みを浮かべつつ、上目使いで俺を見つめながら、心底幸せそうな顔でチ○コを舐め回す。
「何だか、ちゅるっ、ん、幸せな気分に、ぢゅずっ、なってきたわ❤ んぐっ、じゅるっ、ちゅぱっ、ちゅぅっ❤」
ホーヴァスは初めて知った快感にうっとりするように、情熱的に激しくチ○コをしゃぶる。
どちらかが舐めた部分を舐め上げて間接キス―浪漫の欠片もねぇが―しつつ、フェランとホーヴァスは一心不乱に俺のチ○コに快感を送り続ける。
絶え間無く送られる快感に腰が浮きそうな感覚を感じ、俺は直観的に限界が近付いている事を理解する。
「あはっ❤ オチ○チン、凄くビクッてした❤ 精液、ドピュドピュ出したいんだ❤」
フェ、フェラァァァァンッ!
あ、あどけない表情で、んな台詞を言うんじゃねぇ! 何もしてねぇのに果てちまうから!
「え、もう出そうなの? な、なら、タップリ出しなさい……んぅ、んふっ、ちゅるっ❤」
フェランの言葉で俺の限界を知ったホーヴァスは、止めを刺すように更に激しくチ○コを舐め回し始める。
「「じゅるるっ、んぅ、ちゅ、ちゅるるっ❤ れろ、れるるっ、ちゅぱっ、ちゅじゅるっ❤」」
フェランとホーヴァスは息を合わせ、二人で俺のチ○コを蹂躙する。
チ○コに唇を当てられ、根元から亀頭まで隅々にキスされる。
ドロドロに溶けそうな感覚に、俺は心身共に委ねるしかなかった。
「うひゃっ❤」
「きゃんっ❤」
蹂躙されてる内に俺のチ○コは限界を迎えて盛大に精液を放ち、フェランは嬉しそうに、ホーヴァスはキョトンとした表情で降り注がれる精液で顔を汚す。
うへぇ、既に俺はインキュバス化してるから凄い量だな、オイ。
「にへへ❤ ホーヴァスの顔、綺麗にしてあげる❤ ぺろっ、れるっ」
「ひゃっ、く、くすぐったいじゃない! お返しよ、れるっ、んちゅっ」
そして、フェランとホーヴァスは互いの顔に付いた精液を舐め合い、俺は淫猥かつ濃厚な舐め合いっこを直視する事になった。
何という桃色空間、何という淫猥世界……って、アレ? 自分で言ってる事なのに、全然理解出来ねぇ。
「それじゃ、お礼を……私の純潔を、貴方に奉げるわ」
顔を綺麗にした後、ホーヴァスは目を潤ませ、頬を真っ赤に染めながら囁いた。
「えへへ、えいっ!」
「ひゃんっ!?」
俺に尻を向けたホーヴァス、フェランは横に回り込んでホーヴァスの胸を揉みしだき始め、ホーヴァスは胸から来た快感に驚いた。
「ホーヴァスのおっぱい、おっきいよねぇ……羨ましいなぁ……」
「こ、こらっ、やめっ、んんっ、やめなさいっ……エヴァンも、そんなに見ないでっ」
いいえ、ジックリ見させてもらいます。
フニュフニュと、フェランの手で形を変えるホーヴァスの胸。
ソレに堪らなくなった俺はホーヴァスの秘所に口を付け、わざと聞こえるように大きな音を立てて舐め始める。
「あっ、駄目っ……❤」
ふふふ、駄目と言いつつ此処はビショ濡れやないけ♪
んな自分でも分からん台詞を心の中で呟きつつ、俺は陰核を包皮越しに突っつき、秘所を舐め回し、ホーヴァスが悶える様を堪能する。
「ん、んっ、ふぁっ❤ あんっ、あ、んぅっ、だ、めぇっ、あ、あふぅっ❤」
フェランが胸を、俺が秘所を責めるもんだから、ホーヴァスは甘い声で喘ぎ続ける。
とめどなく溢れる淫蜜が口を潤わせ、準備が整ったと判断した俺は名残惜しくはあるが口を離し、ホーヴァスの尻を掴んでチ○コを秘所に宛がう。
秘所に触れるチ○コの感触に身を強張らせるホーヴァスだが、
「えぇ、良いわ……貴方のモノで、私を貫いて」
ほんの少しの恐怖を乗り越えて頷いた。
「ん、んぁぁっ」
処女だけあってキツいが、それでも俺はホーヴァスの秘所をゆっくりと押し進む。
ゆっくり、ゆっくりと押し進める内に、俺のチ○コは根元までホーヴァスの秘所に埋まる。
「あ、あ、あぁっ……何だか、幸せな、気分よ……」
幸せそうな顔で囁くホーヴァスに、俺の理性はプツンと切れた。
つい先程までホーヴァスが処女であった事をすっかり忘れた俺は、ホーヴァスの秘所を荒々しく蹂躙し始める。
「んっ、く、あぁっ❤ いきなりっ、んふっ、あんっ、激し過ぎるっ、ふぁっ、あぁっ❤」
いきなり激しく突かれるホーヴァスは、初めてだけあって俺の為すがまま。
「ふあぁ……何時も、こんな感じだったんだぁ……」
「んんっ、ん、んぁっ❤ フェランッ、そんなにっ、んくっ、あふっ、見ないでっ❤」
興味津々といった感じでフェランが結合部を覗き、見られてる事にホーヴァスは甘い声を上げて嫌がるが、秘所はギュウギュウと締め付けてくる。
キツい締め付けを堪能しながら、俺はホーヴァスの秘所を突き上げ、秘所の奥をチ○コでコツコツと叩き続ける。
「ふぁっ、あ、あふっ❤ んくっ、あんっ、駄目ぇっ、気持ちっ、良過ぎてっ、んぁっ❤ おかしくっ、んんっ、なるわぁっ❤」
奥を叩かれる度にホーヴァスは甘い声を上げ、暇を持て余してるフェランは赤ん坊のようにホーヴァスの胸に吸いつく。
二人掛かりで齎される快感にホーヴァスは悶え、高貴なヴァンパイアが快感で悶える様に俺は興奮を隠せない。
「ん、ん、んぁっ、あぁっ❤ もうっ、私っ、んふっ、あんっ、限界よっ、あぁっ❤」
初っ端から激しく突かれ、フェランに胸を弄られるホーヴァス。
その甘い声は徐々に切羽詰ってき、ホーヴァスの限界が近い事を告げる。
ホーヴァスの限界が近い事を知った俺は、激しかった腰の動きをもっと激しくさせる。
肌と肌がぶつかり合う音、淫らな水音、ホーヴァスの悶える姿、その三つが俺の男の本能を否応無く昂らせてく。
昂りはチ○コに溜まっていき、ドクドクと熱く脈動し、次第に俺も限界が近付いてくる。
「ふあぁっ、んくっ、あぁっ❤ もうっ、駄目ぇっ、ん、んんっ、んあぁぁ――――っ❤」
一際高く、甘い声を上げてホーヴァスは絶頂を迎え、秘所はギュウッと締め付けてくる。
ソレが引金となり、俺は二回目と思えない量の精液をホーヴァスの秘所の奥目掛けて放つ。
放たれた精液はホーヴァスは俺のモノだと主張するように秘所に染み渡り、子宮は熱い塊で犯される。
「ふぁ、あぁ……エヴァンの魔力が、私に滲み込んでくる……」
ホーヴァスのうっとりした声と共に、俺の身体にホーヴァスの魔力が隅々まで行き渡り、俺の身体に更なる活力が滾ってくる。
「えへへ❤ エ〜ヴァンッ、今度はアタシの番だよ❤」
へいへい、分かってますよ。
俺はホーヴァスの秘所からチ○コを抜き、抜いたチ○コを幼さ残る秘所を広げるフェランに押し入れる。
全く、節操が無いなぁ、俺は。
その後、ホーヴァスとフェランの交わりを感じ取ったコラム、キーン、ボイドが部屋へと乱入し、俺は五人が満足するまで丸一日交わり続ける事になったとさ。
×××
「オイオイ、悪い冗談か何かか? 僕の造り上げた『GE』が全滅かよ……」
『人類の護符』の本拠地、ゴーツウッド……司令官室でオリバー・ウェイトリィは溜息を吐いた。
禁忌の魔法・『生命創造』で生み出した対魔物用生体兵器・魔物娘捕食者、ソレが全滅した事にオリバーは頭を抱えたくなった。
「ダァァァ……あのクソッタレの実力を見誤ってたぜ、畜生……」
ネフレン=カの墓所に投入した『GE‐02』には、エヴァンを想定した改良が施してあった。
『星間駆ける皇帝の葬送曲』への入念な魔法防御、『GE‐02』の生体制御装置の新造、ソレが対エヴァン用の改良だ。
投入した『GE‐02』は新造した生体制御装置が破壊されるまで半永久的に稼働し続け、要である生体制御装置には『魔法抗体(ワクチン)』を施した。
『魔法抗体』とは指定された魔法に対する防御力を飛躍的に高める、まさに毒に対抗する抗体のような働きをする魔法付与(エンチャント)の一種である。
今回の場合、『星間駆ける皇帝の葬送曲』への『魔法抗体』を突貫作業で編み出し、ソレを生体制御装置に付与したのだ。
編み出した本人が態々対策に編み出しただけあり、生体制御装置に施した『魔法抗体』は『星間駆ける皇帝の葬送曲』の超振動の九割を減衰させる計算だった。
「其処でそうくるかよ、畜生が……」
投入寸前の突貫改良の為、通用するか不安だったオリバーだが、その不安が見事的中した。
新造した『GE‐02』の生体制御装置……大蒜頭の幼児が、あの憎きエヴァンに重傷を与えたまでは良かった。
貫かれ、瀕死になっても、エヴァンが立ち上がる事も予想済みだった。
魔法で大蒜頭の幼児と視覚を共有していたオリバーは、エヴァンが蟲に貫かれ、血塗れで倒れるのを見て大笑いしたが、その大笑いは直ぐに止まった。
危機的状況に陥ったエヴァンは『星間駆ける皇帝の葬送曲』を使うだろうと踏んでいたが、エヴァンはオリバーの予想を覆した。
「ったくよぉ……認めてやるよ、エヴァン・シャルズヴェニィ。テメェは、僕も吃驚するくれぇのクソッタレだよ」
三〇〇年を生きたオリバーですら見た事の無い魔法をエヴァンは行使し、大蒜頭の幼児を消滅させたのだ。
アレは何時か来る自分との戦いに備え、エヴァンが独自に編み出した魔法だとオリバーは推測している。
オリバーは直観で、アレは『星間駆ける皇帝の葬送曲』に匹敵する破壊力を持っていると悟った。
『星間駆ける皇帝の葬送曲』に匹敵する魔法を目撃した以上、アレを編み出したエヴァンの潜在能力を、オリバーは認めるしかなかった。
「はぁぁ……あのクソッタレの所為で、暫くは大人しくしてるしかねぇなぁ……」
『GE』を生み出すのに必要な『生命創造』を行使出来るのが、現在オリバーのみである事もあり、『GE』は総じて量産が難しい。
量産を前提に生み出した05・06・08でも、数を揃えるには時間が掛かる。
「まぁ……精々、僅かな平穏を噛み締めろや、屑共が……」
そう呟いたオリバーは失った『GE』を揃えるべく、司令官室を後にする。
何時か来る、決着に備えて……
Report.05 俺と吸血鬼と巨人 Closed
少々、時間を遡行しよう。
エヴァンとホーヴァスが胃袋巨蟲に飲み込まれた後、残されたフェラン達は『GE‐02』及び『GE‐02』が吐き出した超巨蟲と激闘を繰り広げていた。
超巨蟲と対峙するは竜王形態となったボイド……ボイドは地上の王者の風格を露にして、超巨蟲を圧倒していた。
普段の竜人形態なら鍛え抜かれた技術があるものの、竜王形態では骨格の違いから技術を発揮する事は難しい。
故に、ボイドは純粋な力で只管に殴打していた。
《ハアァァァァァァッ!!》
殴打、殴打殴打殴打、殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打。
頑強な鱗に覆われた拳は超巨蟲の血で赤く染まり、拳の弾幕に超巨蟲は為す術無し。
サンドバックと化した超巨蟲は、抵抗する事も許されずに殴られ続ける。
吹き荒れる暴力、飛び散る鮮血、鳴り響く骨肉砕く轟音。
ボイドの姿は、まさしく地上の王者……いや、『暴君』の方が正確かもしれない。
暴君は殴打する、超巨蟲の生命を奪うまで。
「うおぉぉぉりゃぁぁぁぁぁっ!」
『GE‐02』と対峙するはフェラン、コラム、キーンの三人……三人は其々の得意分野を活用し、確実に『GE‐02』を追い詰めていた。
「『重榴塊(グラボム)』! 『重榴塊』! 『重榴塊』!」
フェランは小柄な体躯と破壊力に優れた闇属性魔法を活用し、足を止める事も無く魔法を放ち続け、『GE‐02』を攻撃する。
フェランが放つは『重塊』に似た黒い塊、その塊には疣のような小さな塊が付着している。
放たれた疣付き塊は『GE‐02』、若しくは『GE‐02』が吐き出した蟲にぶつかると、ぶつかった瞬間に疣付き塊は破裂する!
『重榴塊』……『重塊』の上位魔法であり、何かにぶつかるか、フェランが合図する事で小型の『重塊』を周囲に散布する広域攻撃魔法である。
『重榴塊』とは所謂『魔力で作られた手榴弾』、撒き散らされる小型『重塊』は小さくとも破壊力は充分である。
火力に優れた闇属性魔法の使い手たるフェランは只管に『重塊』と『重榴塊』を放ち続け、『GE‐02』を攻め立てる。
「フェラン、危ないっ! 反射結界、『因果壁(パラクス・ウォル)』!」
走るフェランを先回りするように細長い蟲共が吐き出され、迫る蟲共を確認したコラムは右腕を振るい、フェランと迫る細長い蟲共の間に透明な壁を生成する。
コラムは馬の脚力が齎す機動力と鉄壁に等しい防御力を活かし、縦横無尽に駆け巡っては『GE‐02』の攻撃を防いでいた。
生成された壁に細長い蟲共がぶつかった瞬間、壁は七色の輝きを放つ光をぶつかった蟲共へ放ち、蟲共は七色の光に貫かれて絶命する。
『因果壁』とは壁に加えられた衝撃を吸収して魔力へ変換、変換した魔力を光の矢にして放つ攻防一体の防御魔法である。
如何に苛烈であろうと生物である以上、攻撃し続ければ疲弊する。
疲弊は攻撃を鈍らせ、鈍りが焦りを生み、焦りは攻撃を単調にし、単調な攻撃は致命的な隙を何れ生み出す。
防御こそ最大の攻撃……その言葉を体現するかの如く、コラムは防御と拘束を駆使して、『GE‐02』を確実に疲弊させる。
「…………!」
キーンは『武装錬金』で生み出した一一本―複製元を含めて―の銛を駆使し、『GE‐02』の吐き出した蟲共を駆逐する。
唯一にして最強の魔法・『武装錬金』、自然の中で鍛え抜かれた肉体、己の力を最大限まで引き出し、キーンは吐き出された蟲共の相手をする。
複製された一〇本の銛は獲物狙う肉食魚の如く宙を駆け回り、正確に蟲共の脳髄を貫き、使い手たるキーンも蟲共の頭に乗っては直接脳髄を穿つ。
現状、『GE‐02』は終始蟲共を吐き出す事に徹し、その恵まれ過ぎた体躯による肉弾戦を仕掛けてこない。
キーンは直観で把握する、この無数に等しき蟲共が『GE‐02』の要であると。
無数に等しき蟲共を吐き出し、圧倒的物量で一切合切喰らい尽くす事が『GE‐02』に出来る事だと。
故に、キーンは『GE‐02』の力の根源たる蟲共を駆逐する事を選択した。
幾等無数に等しくとも、あくまで『等しい』だけであり、限界は何れ訪れる。
圧倒的物量で攻めるなら、その物量が無くなるまで削ぎ続けるまで……何れ訪れる限界を迎えれば、『GE‐02』はただの的でしかなく、討つ事は容易となる。
故に、キーンは『GE‐02』の要たる蟲共を駆逐し続ける。
「コラムッ! アイツ、蟲を吐かなくなってきた!」
「好機です! 一気にいきましょう!」
「…………!」
フェランは攻め、コラムは防ぎ、キーンは削ぐ。
己の出来る事に徹する三人は、確実に『GE‐02』を追い詰め、体内に収めている蟲が少なくなってきたのか、『GE‐02』は蟲を吐き出さずに拳を振るい始める。
ソレを見た三人は、一気呵成に仕掛ける!
「…………!」
「キーン! 少し我慢してください!」
キーンはコラムに向かって走り出し、コラムは向かってくるキーンに後脚を向ける。
後脚を向けられたキーンは身体の向きを変え、何故かコラムはキーンの背中を渾身の力で蹴飛ばし、蹴飛ばされたキーンは高く空を飛ぶ。
傍から見れば仲間割れに見えるが、コレは無言で交わされた戦術である。
「拘束結界、『束縛鎖陣』!」
天高く飛んだキーンを見届けたコラムは術式を詠唱、彼女の双掌に魔法陣が浮かび上がる。
浮かび上がった魔法陣の中心からは黒い鎖が伸び、伸びた二本の鎖は更に浮かび上がった魔法陣に吸い込まれるように消える。
魔方陣に吸い込まれた二本の鎖は『GE‐02』の足首近くに現れた魔法陣から再び現れ、蛇の如く『GE‐02』の足首に巻き付く。
「倒れなさい!」
鎖が巻き付いたのを確認したコラムは掌に浮かぶ鎖を掴んで力強く引っ張り、その動作に連動するように『GE‐02』の足首に巻き付いた鎖が引っ張られる。
足を掬われた『GE‐02』はうつ伏せに倒れそうになり、反射で腕を地面に付けるが、ソレこそがコラムの狙いである。
辛うじて転倒を防いだ『GE‐02』の四肢に、先程の魔方陣が浮かび上がり、其処から何本もの鎖が飛び出して四肢を束縛する!
「行っくぞぉぉぉ――――っ!!」
『GE‐02』が四肢を束縛される寸前、フェランは猛然と走り出す。
四肢を束縛された『GE‐02』の僅かな隙間に滑り込んだフェランは、滑り込んだ勢いを殺す事無く『GE‐02』の真下を潜り抜ける。
勿論、フェランは何もせずに潜り抜ける気は無い……真下を潜り抜ける最中、『GE‐02』の身体の中心線に沿うように『重榴塊』を立て続けに放つ。
放たれた『重榴塊』は皮膚を突き破り、
「爆発っ!」
潜り抜けたフェランの合図と共に、『GE‐02』の体内で破裂する!
「キーン!」
体内で破裂した『重榴塊』に悶える事も出来ぬ『GE‐02』、その目に上空から迫る影に気付く筈も無い。
「……超攻性魔銛結界!」
上空から迫るは、コラムに蹴飛ばされたキーン……既に術式詠唱を済ませていたらしく、キーンの周囲には二〇本の銛が浮かんでいる。
キーンの周囲に浮かぶ二〇本の銛は急降下し、立て続けに『GE‐02』の心臓があると思しき部分に一斉に突き刺さる。
先に突き刺さった銛達に追従するように、キーンは降下の勢いを乗せて『GE‐02』の背中へ深々と銛を突き立てる!
《ヌゥゥオォゥゥラァァァァァァッ!!》
フェラン、コラム、キーンの連携が見事に決まった瞬間、ボイドの咆吼が墓所に響き渡る。
その咆吼を聞いた三人はボイドへ視線を向けると、血に塗れた拳が超巨蟲の腹を突き破り、背中から拳が現れる瞬間を目撃した。
貫かれた超巨蟲は苦悶と激痛で悶え、ボイドが拳を引き抜くと豪雨の如く超巨蟲の鮮血が墓所へ降り注ぐ。
外で繰り広げられた激闘は……
×××
「嘘、でしょ……」
「そんな、ありえません……」
「…………!」
《ナ、何ダト……!?》
終結しなかった。
心臓を貫かれても尚、『GE‐02』は四肢を束縛する鎖を引き千切ろうと悶える。
超巨蟲は腹に大穴を開け、血が濁流の如く抜けていっても、未だ生き永らえている。
両者の異常な生命力に、フェラン達は呆然とするしかなかった。
《ヌッ、グゥゥ、アァァ――――……》
「もう、駄目……魔力、空っぽだよぉ……」
最悪なのはフェラン達は全力を尽くし、既に魔力が底を尽きかけていた事……魔力欠乏に陥ったフェラン、コラム、キーンの三人は力無く座り込む。
限界を迎えたボイドの生存本能が『原初の形』を強制的に解除し、超次元的に竜王形態を折り畳ませ、ボイドは竜人形態へと戻る。
「いけません、『束縛鎖陣』が……!」
コラムが魔力欠乏に陥った事で『GE‐02』の束縛が解け、心臓に銛を突き立てられた状態で『GE‐02』は立ち上がる。
先程まで嬲られた鬱憤を晴らすつもりらしく、『GE‐02』と超巨蟲はジリジリと恐怖を煽るようにゆっくりとフェラン達に近付いていく。
「エヴァン、ゴメンね……」
死を覚悟したフェラン達……愛しいエヴァンを残して死ぬ事に、フェランは届く筈が無いと理解しても尚、彼に謝罪の言葉を漏らした。
『GE‐02』がゆっくりと二股に分かれた剛腕を振り上げ、超巨蟲が鋭利かつ巨大な牙を見せつけるように大きく口を開ける。
此処で死を迎えるのか、とフェラン達が諦めた時だった。
「「「「…………!」」」」
膨大な魔力を感じ取ったフェラン達は重たい身体を強引に動かし、その場から離れる。
離れた瞬間、フェラン達が居た場所を濁流の如く魔力の奔流が駆け抜け、駆け抜ける魔力の奔流は『GE‐02』と超巨蟲を飲み込む。
魔力の奔流に飲み込まれた『GE‐02』と超巨蟲は、フェラン達に止めを刺そうとした体勢のまま、何が起きたのかを理解する事も無く消滅した。
×××
「助けて……」
ホーヴァスの祈りは、教団が崇拝する神以外の神に届いたらしい。
ヒュルリ…と密閉された空間に吹く筈の無い微風が、流れ落ちる涙を拭うようにホーヴァスの頬を撫でる。
「…………え?」
微風がホーヴァスの頬を撫でた瞬間、微風は鋭利な風の刃と化し、風の刃はホーヴァスを拘束する細長い蟲共を、大蒜頭の幼児の股間の蟲を切り裂く。
「イィ、ンギィィィィィィッ!?」
「きゃんっ!」
拘束から解かれたホーヴァスは尻餅を付き、股間の蟲を切り裂かれた大蒜頭の幼児は痛みでゴロゴロと床を転げ回る。
痛みで悶え転げる大蒜頭の幼児、その顔面に爪先が深々と突き刺さり、鼻血を吹きながら大蒜頭の幼児は吹き飛んだ。
大蒜頭の幼児を蹴り飛ばした者は呆然とするホーヴァスの頭に手を置き、クシャクシャと荒っぽくも優しく撫でる。
「悪い、な……怖い、思い、させて、さ……」
ホーヴァスの頭を撫でるのは、全身を血で染め上げたエヴァンだった。
×××
「悪い、な……怖い、思い、させて、さ……」
血が抜けて重い身体を気力で支えながら、俺はホーヴァスの頭を撫でる。
細長い蟲共に貫かれた時は、本当に危なかった……血がダクダクと流れるわ、意識が朦朧とするわ、貫かれた所がズキズキ痛いわで、俺は本気で死を覚悟した。
だけど、俺は死ねなかった、死ぬ訳にはいかなかった。
『生きて、帰ってくるのだぞ……我と、汝の子の為にも……』
俺はローラさんと約束した、生きて帰るって。
『そりゃ、コッチの台詞だ、糞ガキ! オリバー・ウェイトリィ! テメェの面は心の目に焼きつけた! 今度その面を見たら、完膚無きにブッ飛ばす!』
俺は糞ガキに宣言した、テメェを完膚無きまでにブッ飛ばすと。
『それじゃ、アタシも一緒に探検するっ!』
『コレからもフェランさん共々、よろしくお願いします、『旦那様』❤』
『……エヴァンッ、好きっ、んぁっ、好きっ❤』
『エヴァン殿は拙者の『宝』、生涯を賭けてでも守り抜く大事な『宝』だ……』
俺は死ねない……フェランを、コラムを、キーンを、ボイドを残して、勝手に死ぬ訳にはいかねぇんだ。
何より、さ
『助けて……』
ホーヴァスが助けを求めてて、助けられるのが俺だけの状態で、死んでられるかよ!
「大丈夫だ、ホーヴァス……アイツは、俺が、ブッ飛ばしてやる!」
気を抜けば二度と戻れねぇ深淵に落ちそうな身体を気力で支え、俺はほんの少し先で鼻を押さえながら立ち上がる大蒜頭の幼児を、心の目で睨みつける。
すると、俺の身体を優しい光が包み込み、重たかった身体が少しだけ軽くなる。
「『癒光』で応急処置したわ……だけど、あくまで応急処置だから長くは持たないわよ」
どうやら、ホーヴァスが治癒魔法を施してくれたっぽいな。
安心しろ、ホーヴァス……サクッと決着を付けてやるからさぁっ!
×××
『昏き湖に眠る皇帝よ、我に力を与えたまえ』
エヴァンが呟くと同時に彼の身体から膨大な魔力が洪水の如く溢れだし、溢れる魔力は彼の服を黄色に染め上げる。
されど、エヴァンが纏う黄色は、黄色にして黄色に非ず。
黄色の持つイメージの持たない黄色、明るいにも関わらず輝きを放たぬ黄色。
宛ら、黄色の闇……輝かぬ黄色、只管に昏い黄色をエヴァンは纏っていた。
『汝の力を我に与えたまえ、我が現世(ウツシヨ)の黄衣の王となる為に』
徐に突き出されたエヴァンの右腕に怪異が起こる。
溢れる魔力が右腕に集うと、黒く艶やかな触手が無数に現れ、エヴァンの右腕は瞬く間に黒く艶やかな触手の群で覆われる。
右腕を覆う触手の群は絡まり合い、絡まり合う触手の群は漆黒の竜頭を形作る。
漆黒の竜頭の表面は脈動するかの如く蠢き、黒い雫を下顎から滴らせながら肉を引き裂く音と共に閉じられた口をゆっくりと開く。
『現世は狂気(クル)え、地獄は滅亡(ホロビ)よ、天国は慟哭(ナゲ)け』
顎を全開にした漆黒の竜頭の喉からは膨大な魔力が溢れ、喉に溜まった魔力が解放される瞬間を待ち侘びているかのように竜頭は激しく脈動する。
竜頭から溢れる膨大かつ圧倒的威圧感を放つ魔力に、ホーヴァスは吹き飛びそうな意識を懸命に繋ぎ止め、大蒜頭の幼児は戦慄で硬直する。
『是が、黄衣の王の力也』
右腕が異形と化したエヴァンは、空虚な目で戦慄する大蒜頭の幼児を見据え、異形の右腕を死刑宣告をするかの如く突きつける。
『狂気齎す黄衣の王の触腕(ルナティクス・トゥ・ザ・ハストゥール)』
エヴァンが最後の詞を紡ぐと同時に、竜頭から膨大な魔力が宛らドラゴンの吐息のように放たれ、放たれた魔力は一直線に大蒜頭の幼児目掛けて突き進む。
「ングガァァァァァッ!」
迸る魔力の奔流に未知なる感情を抱いた大蒜頭の幼児は、口から全ての蟲を放つ。
細長い蟲、巨蟲、胃袋巨蟲、超巨蟲、体内に収めた蟲共全てを動員し、盾にして防ごうと試みたのだろう。
されど、ソレは無駄な足掻きだと大蒜頭の幼児は知る。
迸る魔力の奔流に触れた瞬間、蟲共は塵一つ残さず消滅し、全ての蟲を吐き出した大蒜頭の幼児に最早抗う術は無い。
「アァ、アァァ、アアァァァ―――――――――ッ」
魔力の奔流が己を飲み込む刹那、大蒜頭の幼児は己が抱いた未知の感情が何かを悟る。
ソレは恐怖、生命を奪われる事に対する本能的恐怖。
ソレは恐怖、圧倒的な力に晒された者の唯一の抵抗。
ソレが恐怖だと知る事無く、大蒜頭の幼児は膨大な魔力の奔流に飲まれて消滅する。
迸る魔力の奔流は大蒜頭の幼児を消滅させても勢いは衰えず、胃袋巨蟲の腹を貫き、腹を貫かれた胃袋巨蟲も大蒜頭の幼児と同じ末路を辿る事になった。
そして、胃袋巨蟲の腹を貫いた魔力の奔流が、外の『GE‐02』と超巨蟲も巻き込んで消滅させた事をエヴァンは知る事も無く、彼の意識は闇に飲まれていった。
×××
「……ん、あ」
えっと、此処は何処だ? 何で、俺は寝てるんだ?
確か、俺は胃袋巨蟲に突っ込んで、大蒜頭の幼児と戦って、それで……どうなった?
憶えてるのは俺の新必殺技を放った所まで、それからどうなったのかを全く憶えてない。
「良かった、気がついたのね」
記憶を探ろうとしたら直ぐ近くでホーヴァスの声が聞こえ、
「……ホーヴァス? 此処は」
此処は何処だ、と聞こうとしたら、ソレを遮るようにホーヴァスは話し出す。
「貴方は私も知らない魔法を放った後、気絶したのよ」
ホーヴァスの話に因ると、俺は新必殺技を放った後に気絶したそうで、放った新必殺技は大蒜頭の幼児どころか、胃袋巨蟲に『GE‐02』をも消滅させたんだと。
元の大きさに戻った後、気絶した俺をお姫様抱っこ―出会った時の意趣返しらしい―して、フェラン達と合流して屋敷に戻った。
因みに、俺は気絶してから丸一日眠ってたそうな。
「起きたのなら、あの馬鹿げた威力の魔法の事を説明してもらえるかしら?」
起きて早々、ソレかい……まぁ、アレを間近で見たホーヴァスには、アレが一体何なのかを知る権利がある。
『狂気齎す黄衣の王の触腕』。
俺が独自に編み出した『星間駆ける皇帝の葬送曲』に代わる俺の切り札。
昨日、ホーヴァスに相談した後、俺は自分に出来る事が何かを考えてる途中で、すっかり忘れてた事実を俺は思い出した。
忘れてた事実とはフェランが魔物学上、闇の精霊と言われるダークマターである事だ。
ダークマターが精霊の一種として考えられてる理由は肉体が魔力で構築されてる事、魔力還元に因る豊穣能力の他に、自身の力の一部譲渡がある。
長々と蘊蓄を垂れるのもアレだから結論だけ言うと、俺はフェランの持つ力の一部を利用出来るという事だ。
その事を思い出した俺は試しに『重塊』の術式を詠唱した所、フェラン程じゃないが見事行使に成功した。
そして、俺は脳内に刻まれた『星間駆ける皇帝の葬送曲』の術式を解析し、フェランから譲渡された力と組み合わせて編み出したのが『狂気齎す黄衣の王の触腕』だ。
簡単に言えば、全魔力を籠めた『重塊』……軌道安定を兼ねてダークマターの触手で腕を覆って保護して、全魔力を破壊力へ転換して放ち、一切合切のべつ幕無しに消滅させる。
俺が黄色くなったのは、まぁ、何というか……魔法の名前にある『ハストゥール』の化身、『黄衣の王』を気取ってみたかっただけだったりする。
「成程、ね……」
俺の説明を受けたホーヴァスは、納得したような呆れたような声で呟く。
まぁ、当然だよなぁ……『狂気齎す黄衣の王の触腕』は、彼の『星間駆ける皇帝の葬送曲』に匹敵するように編み出したんだ、その破壊力は言わずもがな、という奴だ。
その分、魔力消費も膨大で必然的に魔力供給衝動が起こるんだが、丸一日眠ってたお陰で魔力供給衝動は起きてないみてぇだ。
助かったぁ……気絶してなかったら、また強姦紛いの交わりでハーレム増やす所だった。
「ねぇ、エヴァン?」
「んぁ?」
ハーレム増やさずに済んでホッとしてたら、ホーヴァスが頬をホンノリ赤くしながら俺を見つめ、いきなり首根っこを噛んで……って、ウォイッ!
「ふふっ……貴方は私を助けてくれた、だからお礼をしてあげないと」
そう言いながらホーヴァスは妖艶な笑みを浮かべながら服を脱ぎ始め、
「ねぇ、ホーヴァス? エヴァン、起きた、の……」
運悪くも、フェランが扉を開けて硬直する。
何て最悪な状況ぉぉぉぉっ! フェランの事だ……
「あぁぁぁぁっ!? ホーヴァス、狡いっ! アタシも混ぜてぇ!」
混ぜろって言ってくるに決まってらぁなぁぁぁぁぁっ!
×××
「ふぁぁ……」
「えへへ……エヴァンのオ○ンチン、元気になってる♪」
俺は問答無用で服を剥かれ、曝け出された我が駄目息子はホーヴァスの吸血の所為で既に限界カチカチだった。
どうやらホーヴァスは初めてらしく、普段の凛とした雰囲気は無く、俺のチ○コを見つめてる。
一方、フェランがツンツンと俺のチ○コを突っつくと、チ○コが反応してビクビクと動く。
ふはは……我ながら制御が効いてねぇぜ、畜生。
「それじゃ、ご奉仕させて頂きまぁす♪」
「そ、それじゃ、ご、ごご、ご奉仕してあげる……努力するから、き、気持ち良くなりなさい……」
フェランは羞恥心の欠片無しに、ホーヴァスは恥ずかしがりながら奉仕すると言うんだが、何処で覚えた、んな台詞。
「「本能(よ)」」
魔物の本能、侮れねぇっ!
「それじゃ、ホーヴァスはアタシの真似でもする?」
「だ、だだだ、大丈夫よ……多分、だけど」
フェランが唇を俺のチ○コに近づけ、ホーヴァスは息を呑んでソレを見守ってる。
「ん、れるっ……ちゅ、ちゅる、れるる…ん、ぢゅるる❤」
「はむっ、れる……れろ、れるる…はふっ、ぢゅずっ❤」
赤い舌を這わせた後、フェランは亀頭を半分咥えてツンツンと舌で突っつく。
フェランを見て火が付いたのか、ホーヴァスもチ○コに舌を伸ばして丁寧に雁首を舐める。
そして、一心不乱にチ○コを舐め回し始めるフェランとホーヴァス。
う、うををっ……『エヴァン・シャルズヴェニィ、此処にありき』って遺書を書き残して、首吊っても構わんくらいに気持ち良いっ!
いや、死ぬつもりはねぇけどさ。
「ふぁむっ、んっ、ちゅるるっ❤ んへへ、エヴァンの匂い、れるっ、ちゅずる、アタシ、大好き❤」
フェランは蠱惑的な笑みを浮かべつつ、上目使いで俺を見つめながら、心底幸せそうな顔でチ○コを舐め回す。
「何だか、ちゅるっ、ん、幸せな気分に、ぢゅずっ、なってきたわ❤ んぐっ、じゅるっ、ちゅぱっ、ちゅぅっ❤」
ホーヴァスは初めて知った快感にうっとりするように、情熱的に激しくチ○コをしゃぶる。
どちらかが舐めた部分を舐め上げて間接キス―浪漫の欠片もねぇが―しつつ、フェランとホーヴァスは一心不乱に俺のチ○コに快感を送り続ける。
絶え間無く送られる快感に腰が浮きそうな感覚を感じ、俺は直観的に限界が近付いている事を理解する。
「あはっ❤ オチ○チン、凄くビクッてした❤ 精液、ドピュドピュ出したいんだ❤」
フェ、フェラァァァァンッ!
あ、あどけない表情で、んな台詞を言うんじゃねぇ! 何もしてねぇのに果てちまうから!
「え、もう出そうなの? な、なら、タップリ出しなさい……んぅ、んふっ、ちゅるっ❤」
フェランの言葉で俺の限界を知ったホーヴァスは、止めを刺すように更に激しくチ○コを舐め回し始める。
「「じゅるるっ、んぅ、ちゅ、ちゅるるっ❤ れろ、れるるっ、ちゅぱっ、ちゅじゅるっ❤」」
フェランとホーヴァスは息を合わせ、二人で俺のチ○コを蹂躙する。
チ○コに唇を当てられ、根元から亀頭まで隅々にキスされる。
ドロドロに溶けそうな感覚に、俺は心身共に委ねるしかなかった。
「うひゃっ❤」
「きゃんっ❤」
蹂躙されてる内に俺のチ○コは限界を迎えて盛大に精液を放ち、フェランは嬉しそうに、ホーヴァスはキョトンとした表情で降り注がれる精液で顔を汚す。
うへぇ、既に俺はインキュバス化してるから凄い量だな、オイ。
「にへへ❤ ホーヴァスの顔、綺麗にしてあげる❤ ぺろっ、れるっ」
「ひゃっ、く、くすぐったいじゃない! お返しよ、れるっ、んちゅっ」
そして、フェランとホーヴァスは互いの顔に付いた精液を舐め合い、俺は淫猥かつ濃厚な舐め合いっこを直視する事になった。
何という桃色空間、何という淫猥世界……って、アレ? 自分で言ってる事なのに、全然理解出来ねぇ。
「それじゃ、お礼を……私の純潔を、貴方に奉げるわ」
顔を綺麗にした後、ホーヴァスは目を潤ませ、頬を真っ赤に染めながら囁いた。
「えへへ、えいっ!」
「ひゃんっ!?」
俺に尻を向けたホーヴァス、フェランは横に回り込んでホーヴァスの胸を揉みしだき始め、ホーヴァスは胸から来た快感に驚いた。
「ホーヴァスのおっぱい、おっきいよねぇ……羨ましいなぁ……」
「こ、こらっ、やめっ、んんっ、やめなさいっ……エヴァンも、そんなに見ないでっ」
いいえ、ジックリ見させてもらいます。
フニュフニュと、フェランの手で形を変えるホーヴァスの胸。
ソレに堪らなくなった俺はホーヴァスの秘所に口を付け、わざと聞こえるように大きな音を立てて舐め始める。
「あっ、駄目っ……❤」
ふふふ、駄目と言いつつ此処はビショ濡れやないけ♪
んな自分でも分からん台詞を心の中で呟きつつ、俺は陰核を包皮越しに突っつき、秘所を舐め回し、ホーヴァスが悶える様を堪能する。
「ん、んっ、ふぁっ❤ あんっ、あ、んぅっ、だ、めぇっ、あ、あふぅっ❤」
フェランが胸を、俺が秘所を責めるもんだから、ホーヴァスは甘い声で喘ぎ続ける。
とめどなく溢れる淫蜜が口を潤わせ、準備が整ったと判断した俺は名残惜しくはあるが口を離し、ホーヴァスの尻を掴んでチ○コを秘所に宛がう。
秘所に触れるチ○コの感触に身を強張らせるホーヴァスだが、
「えぇ、良いわ……貴方のモノで、私を貫いて」
ほんの少しの恐怖を乗り越えて頷いた。
「ん、んぁぁっ」
処女だけあってキツいが、それでも俺はホーヴァスの秘所をゆっくりと押し進む。
ゆっくり、ゆっくりと押し進める内に、俺のチ○コは根元までホーヴァスの秘所に埋まる。
「あ、あ、あぁっ……何だか、幸せな、気分よ……」
幸せそうな顔で囁くホーヴァスに、俺の理性はプツンと切れた。
つい先程までホーヴァスが処女であった事をすっかり忘れた俺は、ホーヴァスの秘所を荒々しく蹂躙し始める。
「んっ、く、あぁっ❤ いきなりっ、んふっ、あんっ、激し過ぎるっ、ふぁっ、あぁっ❤」
いきなり激しく突かれるホーヴァスは、初めてだけあって俺の為すがまま。
「ふあぁ……何時も、こんな感じだったんだぁ……」
「んんっ、ん、んぁっ❤ フェランッ、そんなにっ、んくっ、あふっ、見ないでっ❤」
興味津々といった感じでフェランが結合部を覗き、見られてる事にホーヴァスは甘い声を上げて嫌がるが、秘所はギュウギュウと締め付けてくる。
キツい締め付けを堪能しながら、俺はホーヴァスの秘所を突き上げ、秘所の奥をチ○コでコツコツと叩き続ける。
「ふぁっ、あ、あふっ❤ んくっ、あんっ、駄目ぇっ、気持ちっ、良過ぎてっ、んぁっ❤ おかしくっ、んんっ、なるわぁっ❤」
奥を叩かれる度にホーヴァスは甘い声を上げ、暇を持て余してるフェランは赤ん坊のようにホーヴァスの胸に吸いつく。
二人掛かりで齎される快感にホーヴァスは悶え、高貴なヴァンパイアが快感で悶える様に俺は興奮を隠せない。
「ん、ん、んぁっ、あぁっ❤ もうっ、私っ、んふっ、あんっ、限界よっ、あぁっ❤」
初っ端から激しく突かれ、フェランに胸を弄られるホーヴァス。
その甘い声は徐々に切羽詰ってき、ホーヴァスの限界が近い事を告げる。
ホーヴァスの限界が近い事を知った俺は、激しかった腰の動きをもっと激しくさせる。
肌と肌がぶつかり合う音、淫らな水音、ホーヴァスの悶える姿、その三つが俺の男の本能を否応無く昂らせてく。
昂りはチ○コに溜まっていき、ドクドクと熱く脈動し、次第に俺も限界が近付いてくる。
「ふあぁっ、んくっ、あぁっ❤ もうっ、駄目ぇっ、ん、んんっ、んあぁぁ――――っ❤」
一際高く、甘い声を上げてホーヴァスは絶頂を迎え、秘所はギュウッと締め付けてくる。
ソレが引金となり、俺は二回目と思えない量の精液をホーヴァスの秘所の奥目掛けて放つ。
放たれた精液はホーヴァスは俺のモノだと主張するように秘所に染み渡り、子宮は熱い塊で犯される。
「ふぁ、あぁ……エヴァンの魔力が、私に滲み込んでくる……」
ホーヴァスのうっとりした声と共に、俺の身体にホーヴァスの魔力が隅々まで行き渡り、俺の身体に更なる活力が滾ってくる。
「えへへ❤ エ〜ヴァンッ、今度はアタシの番だよ❤」
へいへい、分かってますよ。
俺はホーヴァスの秘所からチ○コを抜き、抜いたチ○コを幼さ残る秘所を広げるフェランに押し入れる。
全く、節操が無いなぁ、俺は。
その後、ホーヴァスとフェランの交わりを感じ取ったコラム、キーン、ボイドが部屋へと乱入し、俺は五人が満足するまで丸一日交わり続ける事になったとさ。
×××
「オイオイ、悪い冗談か何かか? 僕の造り上げた『GE』が全滅かよ……」
『人類の護符』の本拠地、ゴーツウッド……司令官室でオリバー・ウェイトリィは溜息を吐いた。
禁忌の魔法・『生命創造』で生み出した対魔物用生体兵器・魔物娘捕食者、ソレが全滅した事にオリバーは頭を抱えたくなった。
「ダァァァ……あのクソッタレの実力を見誤ってたぜ、畜生……」
ネフレン=カの墓所に投入した『GE‐02』には、エヴァンを想定した改良が施してあった。
『星間駆ける皇帝の葬送曲』への入念な魔法防御、『GE‐02』の生体制御装置の新造、ソレが対エヴァン用の改良だ。
投入した『GE‐02』は新造した生体制御装置が破壊されるまで半永久的に稼働し続け、要である生体制御装置には『魔法抗体(ワクチン)』を施した。
『魔法抗体』とは指定された魔法に対する防御力を飛躍的に高める、まさに毒に対抗する抗体のような働きをする魔法付与(エンチャント)の一種である。
今回の場合、『星間駆ける皇帝の葬送曲』への『魔法抗体』を突貫作業で編み出し、ソレを生体制御装置に付与したのだ。
編み出した本人が態々対策に編み出しただけあり、生体制御装置に施した『魔法抗体』は『星間駆ける皇帝の葬送曲』の超振動の九割を減衰させる計算だった。
「其処でそうくるかよ、畜生が……」
投入寸前の突貫改良の為、通用するか不安だったオリバーだが、その不安が見事的中した。
新造した『GE‐02』の生体制御装置……大蒜頭の幼児が、あの憎きエヴァンに重傷を与えたまでは良かった。
貫かれ、瀕死になっても、エヴァンが立ち上がる事も予想済みだった。
魔法で大蒜頭の幼児と視覚を共有していたオリバーは、エヴァンが蟲に貫かれ、血塗れで倒れるのを見て大笑いしたが、その大笑いは直ぐに止まった。
危機的状況に陥ったエヴァンは『星間駆ける皇帝の葬送曲』を使うだろうと踏んでいたが、エヴァンはオリバーの予想を覆した。
「ったくよぉ……認めてやるよ、エヴァン・シャルズヴェニィ。テメェは、僕も吃驚するくれぇのクソッタレだよ」
三〇〇年を生きたオリバーですら見た事の無い魔法をエヴァンは行使し、大蒜頭の幼児を消滅させたのだ。
アレは何時か来る自分との戦いに備え、エヴァンが独自に編み出した魔法だとオリバーは推測している。
オリバーは直観で、アレは『星間駆ける皇帝の葬送曲』に匹敵する破壊力を持っていると悟った。
『星間駆ける皇帝の葬送曲』に匹敵する魔法を目撃した以上、アレを編み出したエヴァンの潜在能力を、オリバーは認めるしかなかった。
「はぁぁ……あのクソッタレの所為で、暫くは大人しくしてるしかねぇなぁ……」
『GE』を生み出すのに必要な『生命創造』を行使出来るのが、現在オリバーのみである事もあり、『GE』は総じて量産が難しい。
量産を前提に生み出した05・06・08でも、数を揃えるには時間が掛かる。
「まぁ……精々、僅かな平穏を噛み締めろや、屑共が……」
そう呟いたオリバーは失った『GE』を揃えるべく、司令官室を後にする。
何時か来る、決着に備えて……
Report.05 俺と吸血鬼と巨人 Closed
12/10/25 13:36更新 / 斬魔大聖
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