Report,01 俺と闇玉と包帯
〜大陸南西部・砂漠〜
「遺跡はあるのかなぁ、ワクワクすんなぁ!」
まだ見ぬ何かを楽しむように、砂と熱風ばかりの砂漠を軽やかな足取りで歩く、黒眼鏡を掛けた青年。
深緑色のフード付きの長外套(ロングコート)には幾何学的な紋様が刺繍され、その裾は幾筋も切れ込みが入っており、短冊状になった裾は羽を模したような形に整えられている。
良く見ると、裾付近には大量の羽飾りが長外套と一体化するように縫い付けられており、傍から見れば長外套の下半分が翼ではないかと錯覚してしまいそうだ。
長外套の下は逞しい胸板が露になっており、どうやら上には何も着ていないようだ。
下は、若草色と濃緑の二色が横向きで縞模様を描くズボン。
腰には革ベルトが二本、交差するように巻かれている。
「何が、あるかな? 何が、あるかな? 楽しみだなぁ!」
名はエヴァン・シャルズヴェニィ……二十歳という若さで、将来有望な若手探検家として注目を集め、名が知られるようになった青年だ。
エヴァンの父は高名な学者、母は『探検女王(アドベンチュラー・クイーン)』と呼ばれた屈指の探検家であり、その両親の血を受け継いだ彼は両親の死を切欠に一人旅に出た。
一人旅の中で、エヴァンは好奇心のまま遺跡や辺境を巡り、調査し、現在に至る。
「砂漠だから暑いけど、遺跡の為なら平気だぜぇ! さぁ、待ってろよ!」
砂漠の暑さを物ともせず、エヴァンは腕を上げて鼓舞し、まだ見ぬ遺跡に思いを馳せた。
×××
「……コレ、遺跡なのか?」
俺は砂漠を歩きまわって辿り着いた遺跡を前に、首を傾げていた。
何万、何億と石を積み上げて造られた四角錐型の小さな遺跡。
俺が辿り着いた遺跡は何というか真新しい感じがするし、入口らしき穴の近くには遺跡の番人であるワーキャットの亜種・スフィンクスがいない。
そもそも、此処に来るまでの間、性的な意味で恐れられるギルタブリルに遭遇しなかった。
誰も気付かない、気付いても無視する、寧ろ近付きたくない、そんな感じの遺跡だ。
「まぁ、いいか! んな事よりも調査、調査〜♪」
奇妙な遺跡に首を傾げるが、そんな事はどうでもいい。
俺は母さん譲りの好奇心のままに、遺跡に突入した。
まぁ、凄い今更なんだが……この遺跡が、俺の人生の分岐点になるとは思ってなかった。
×××
「……可笑しい、可笑し過ぎる」
カツン、カツン…と通路に響く俺の足音に、今更ながら疑問が生じる。
何も無い。
流石にアヌビスかマミーか罠が居るだろと予想してたんだが予想は大外れ、この遺跡には魔物が居ないし、魔物が居なけりゃ当然だが、侵入者撃退用の罠も無い。
真新しさもあって、この遺跡は何かが可笑しいぞ。
「………………」
可笑しいと言えばもう一つ、中に充満する異常なまでに濃い魔力だ。
俺は「ある事情」があって、魔法的感覚が滅茶苦茶鋭い。
バフォメット、とまでは言わんが、生まれたての上位の魔物よりは鋭敏で、魔力の流れや密度がしっかりと認識出来る。
それに、俺は下手な導師級(マスタークラス)―魔法使いの格の一つで、五つに分けられた格の中じゃ導師級は上から二番目だ―よりも魔法が使える。
まぁ、ドッチも自画自賛だけどな。
「『障壁(ウォル)』、一応張っといて正解だったな……」
『障壁』ってのは魔力で透明な壁を作る初歩的な魔法で、応用すれば大気に充満する魔力から身を守り、肉体への侵食をある程度は防いでくれる頼もしい魔法だ。
何の対策も無しに生身で入り込んだら、一瞬でインキュバス化しちまう……それ程までに此処の魔力は濃過ぎる。
「そう言えば、父さんの部屋の論文で面白いのがあったな」
その論文曰く、大気中の魔力を効率的に集約させるには四角錐型の構造物が最適であり、砂漠に点在する遺跡群は巨大な魔力集約装置である。
その論文を鵜呑みにすりゃ、異常に濃過ぎる魔力は納得は出来るが、魔物が居ない理由が分からない。
「お……?」
色々思考しながら通路を歩いていると、前方に何やら仄かな灯りが見えた。
灯りがあるって事は、魔物なり何なりが居るって事だ。
何も無い遺跡の中を探って、漸く見つけた何か。
俺は滾る好奇心のままに、灯りの見えた方へと向かい
『ふあぁっ、ああぁぁぁぁ――――――――――っ❤』
絶句した。
「…………………………」
何だ、この光景……幾等俺でも、こんなのは見た事ねぇ。
灯りの見えた方向に進んだ俺が見たモノ。
古代の王が眠る玄室にしては殺風景過ぎる部屋、灯りは玄室(?)を照らす小さな魔力球が放つ光のようで、玄室の奥にいたのは
「あふっ、ふぁっ、はふっ……」
場所が場所だけに玉座にも見える真っ黒な球体に跨り、息を荒げる素っ裸の幼女。
顔はトロンと蕩け、幼女の大事な部分には球体から伸びた触手が、ウネウネと蠢きながら大事な部分を弄くり回している。
い、いかん! エヴァン・シャルズヴェニィ、人生最大の貞操の危機!
「漸く見つけたと思ったら、ダークマターかよ……」
ダークマター……『闇の太陽』とも呼ばれ、超高密度の魔力が集う場所でしか生まれない稀少種族で、此処の異常魔力なら生まれても可笑しくないけどさ、不味いってば。
何が不味いって、コイツの性質が不味い。
ダークマターは存在自体が欲望の塊で、男を見つけたら跨る球体を男に流し込み、一瞬で強力なインキュバスへと変えちまう。
インキュバスになった男は、そのまま幼女の肉奴隷、延々と交わり続ける事になる。
「……そぉっと、そぉっと、気付かれないように」
俺は足音を立てないように、気付かれないようにしながら、ゆっくりと後退する。
俺は純愛派なんだ、触手付き逆強姦で童貞―下手したら、尻の純潔も一緒に―卒業して、肉奴隷に永久就職なんて絶対に御免だ!
絶頂で呆けてる今が最初で最後のチャンス、充分に離れたら後ろに向かって全力疾走!
「…………っ!」
なんて、考えてたら、俺の魔法的感覚が警鐘を鳴らす。
俺、ダークマター、土地固有の魔力……その三つと異なる魔力が、玄室に集まってくる。
そして、俺は見た……何処からか現れたマミーの群れが、ダークマターに襲い掛かろうとしているのを。
だぁぁっ、クソッタレがぁぁぁぁぁっ!
×××
「吹き荒め! 『風刃(ビエッジ)』!」
俺はダークマターに性的な意味で襲われるのを覚悟で玄室へ駆け出し、剣指を組んだ右手を突き出して術式を詠唱する。
『風刃』、生半可な剣よりも鋭い不可視の刃。
『風刃』はマミーの群れを切り刻み、バラバラ死体―あ、元々死体か―へと変える。
突然の出来事にも呆けたまんまのダークマターの元へと駆け寄った俺は、ダークマターを庇うようにマミーの群れの前に立つ。
「ほぇっ?」
ダークマターは見た目相応の可愛らしさで首を傾げるんだが、いい加減自分の置かれてる状況くらい理解しろよ。
そんな事を考えてる内にマミーを包む包帯が、宛ら盲目の蛇みたいに這いずり、バラバラにされた身体を繋ぎ合わせる。
いや、待て……コイツ等、マミーじゃねぇ!
「嘘、だろ?」
包帯の隙間から見えるのは女の子……女の子なんだが、マミーとは全然違う。
何処が違うのかって? 包帯の隙間から見えた女の子は、全員種族が違う魔物なんだ。
完全に乾涸びてるが、確認出来るだけでもワーウルフ、ハーピー、サキュバス、アラクネ、アルラウネ等々、様々な魔物がマミーっぽい姿になってやがる。
「どうなってんだよ!? クソッタレッ!」
再び襲い掛かってくるマミーもどきに、嫌悪感を抱きながら俺は『風刃』を放つんだが、バラバラになっても包帯が身体を繋ぎ合わせて再生させる。
何度も再生して迫るマミーもどきに『風刃』を放ちながら、俺は思考を高速回転させる。
其々中身が違うマミーもどきは、切った際に血が出てない事から死体なのは確実。
本来、マミーは人間の死体に魔力が宿るか、マミーが生きた人間の女性から魔力を奪う事で生まれる魔物であり、マミーとは別の魔物がマミーになる事は在り得ない。
在り得ないが、在り得ない事が現実に起きている。
オマケに、幾等バラバラにしても、包帯が身体を繋ぎ合わせるから、キリが無い。
「取り敢えず、戦略的撤退! 『大嵐刃(ウラガッジ)』!」
俺は『風刃』を放ちながら魔力を循環させ、『風刃』よりも上位の魔法を詠唱する。
すると、俺とダークマターを包むように巨大な竜巻が現れ、マミーもどきを巻き込みながら天井を破壊する。
「しっかり、掴ってろよ! ……あと、その黒球はくっ付けんな」
俺の言葉が通じたのか……ダークマターの幼女は黒い球体から下り、俺の腰に腕を回して抱き付き、球体は俺から少し離れた所にプカプカと浮かぶ。
ソレを確認した俺は、竜巻に乗るように天井に空いた大穴から飛び出した。
×××
―ドゴゴゴォォォォォッ!!
轟音と共に遺跡の上半分を吹き飛ばす程の竜巻が現れ、遺跡の周囲に広がる砂漠に瓦礫と内部に居たマミーもどきが撒き散らされる。
マミーもどきは瓦礫に押し潰されるか、竜巻で引き裂かれるかの二択を強いられた。
その大竜巻の中心、目の部分からエヴァンとダークマターが飛び出し、魔法で生み出した風を纏い、軽やかに着地する。
「あ〜あ、壊しちまった……まぁ、あんな奇妙で危険な遺跡は破壊した方がいいか」
振り返ったエヴァンは、未だに吹き荒れる大竜巻、見事に上半分が吹き飛んだ遺跡を見て、溜息を吐く。
一方、ダークマターの幼女は目を閉じたまま、ギュッとエヴァンの腰にしがみ付いており、黒い球体は相変わらずプカプカと風船のように浮いている。
「もう大丈夫だ、離れてもいいぞ」
そう言いながら、エヴァンは腰にしがみ付くダークマターの幼女の頭を安心させるように撫で、目を開けたダークマターの幼女はゆっくりと彼の腰から離れる。
「さぁて、今度はどうなるんだ?」
ダークマターの幼女が離れたのを確認したエヴァンは、警戒を解かずに、降り注ぐマミーもどきの破片を睨みつける。
一体あの小さな遺跡に、どれだけ居たのか……頭を数えれば、軽く二、三〇〇個はあり、頭の数に比例したマミーもどきが、あの遺跡に居た事になる。
瓦礫に押し潰され、竜巻に引き裂かれたマミーもどきの身体から包帯が伸び、身体を繋ぎ合わせようと
「オイオイ、今度はそうきたか……」
しなかった。
包帯は蛇のように死体から離れると一ヶ所に集まり始め、一ヶ所に集まった包帯は自らを絡ませ、編みあげ、繋ぎ合わせる。
その様子は、宛ら共食いじみた醜悪な交配といった感じだ。
醜悪な交配を繰り返した包帯は一個の塊と化し、包帯の塊は蠢きながら形を変える。
その形は、身長一九〇センチはあるエヴァンの五倍はありそうな程の巨人だった。
×××
「何でもありだなぁ……って、本体はコッチか!」
巨人になった包帯を見た俺は呆れるが、同時にマミーもどきの正体を悟った。
マミーもどきの正体は、目の前で巨人になった包帯の群れ……包帯に包まれてた死体は、コイツ等が動く為の依代だった訳か。
多分、依代の死体が使い物にならなくなったから、お互いを繋ぎ合わせて動こうと、巨人になったんだろな。
まぁ、正体が分かった所で、この状況が変わる訳でもないが。
「ふみゅぅ……」
「あぁ、もう……泣きそうな顔すんな」
目前の巨人が怖いのか、ダークマターの幼女は再び腰にしがみ付き、俺は安心させるように幼女の頭を撫でる。
頭を撫でられたダークマターの幼女は、なんだか嬉しそうな顔で、俺も和んでしまう。
だが、そんな和やかな空気は、目前の巨人はお気に召さなかったらしい。
自分無視して和やかな空気に浸ってんじゃねぇ、と言わんばかりに拳を振り下ろしてくる。
「うおわたたたっ!?」
俺はダークマターの幼女を抱えて拳を避けた後、黒球に幼女を渡してから『風刃』を放つ。
放たれた『風刃』は巨人の右腕を切り落とすが、切り落とされた右腕は繊維状に解けた後、再び包帯になって切り落とされた場所に集合。
あっという間に、右腕が元通りになりやがった。
胸の中で舌打ちして、俺は何度も『風刃』を放つが全く効果無し。
「クソッタレェッ!」
『風刃』、『大嵐刃』、『旋風刃(トルネッジ)』、『嵐鎚(ウラガンマ)』、『風鎌(ビサイス)』、俺の使える魔法を放てるだけ放っても、包帯巨人に効果無し。
切り落とした所で、繊維状に解けた後に集合して再生しちまうし、オマケにコッチは一発当たれば、ペラッペラの二次元になっちまう。
逃げるダークマターを守りながら、迫る包帯巨人に魔法を放ち続ける。
全く、どうしたらいいんだよ、この状況!
「うぐっ!?」
何度も何度も魔法を放った俺の身体に、いきなり激痛と虚脱感が襲う。
しまった、魔力欠乏(フリーズ)……我武者羅に放ってたから、魔力を使い切っちまった!
不味い、不味い不味い不味いっ!
激痛と虚脱感で足が縺れて倒れちまったが、ソレを見逃さない程度の知能はあったらしい。
包帯巨人はデカい拳を、俺目掛けて振り下ろす!
クソッタレッ!
俺は空っぽの魔力を振り絞って『障壁』を詠唱、拳と俺の間に『障壁』を割り込ませる。
止まったのは数瞬、なけなしの魔力で作った『障壁』は硝子みたいに砕け散り、俺に拳が叩き付けられる。
「―――――――――――!?」
言葉にもならない悲鳴、激痛を伴う圧迫感……生き埋めにあった人はこんな感じなのかと、しょうもない事を考えてしまう。
幸いなのは、俺を押し潰したのは岩じゃなくて包帯。
咄嗟の『障壁』のお陰で勢いが殺されたのも救いだが、それでもキレたオーガの全力の拳をしこたま貰ったみてぇに身体中が痛い。
包帯巨人は拳を持ち上げ、死刑宣告するみてぇにゆっくりと拳を振り上げる。
畜生、畜生畜生畜生畜生っ!
俺は此処でくたばるのかよぉっ!
「うぶっ!?」
死を覚悟した、その時だった。
砂漠にめり込んだ俺の上に柔らかいモノがのしかかり、俺の身体の中に流れ込んでくる。
ソレは、超高密度の魔力の塊……魔力が空っぽになってる俺の身体は、ソレを貪欲に貪り、飲み込み、俺の一部にしようとする。
急激な魔力回復に、さっきとは違う激痛が身体中を走り回るが、構うもんかよぉっ!
思考は凪いだ水面のように静まるが、魂は業火の如く燃え盛る。
振り下ろされる包帯巨人の拳が、やたらゆっくりと動いているように見える。
そして、俺は
『――――――――――――――――』
声を超え、音を超え、世界の理をも超えた、声ならざる声で咆吼する。
声ならざる咆吼を受けた包帯巨人の拳は、一瞬で粉砕されて微塵と化し、その微塵ですら更に細かく、細かく、目に見えない領域にまで砕かれる。
砕かれたのは、拳だけじゃなかった。
包帯巨人の身体、砂漠の砂粒、遺跡の瓦礫、依代にされた不幸な死体達。
俺の周囲にあった、形あるモノ全てが砕かれていく。
声ならざる咆吼をまともに食らった包帯巨人は、拳を振り下ろそうとした体勢のまま、目に見えない領域にまで砕かれ、消滅した。
×××
「嘘、だろ……コレって」
包帯巨人を消滅させ、上半身を起こした俺は、自分のやった事を信じられなかった。
信じられる筈が、無い……何故なら、俺はさっきの『声ならざる咆吼』が、一体何なのかを知っているからだ。
『星間駆ける皇帝の葬送曲(レクイエム・トゥ・ザ・ハストゥール)』
その窮極的破壊力故に、どれだけ優れた魔法使いであっても、体得どころか、この魔法の存在を調べる事ですら赦されない、窮極にして禁断の魔法。
太古の昔、魔物と人間が世界の覇権と種族の存亡を賭けて争っていた時代、ある魔法使いが編み出した窮極必滅魔法。
何故なら、魔法に必須である詠唱行為自体が攻撃である事。
膨大な魔力を乗せた声は、あらゆる生物の可聴領域外の音ならざる音となり、声ならざる咆吼による超振動で、相手を完全に消滅させる。
声ならざる咆吼から逃れる事は不可能で、その窮極的破壊力が『星間駆ける皇帝の葬送曲』を禁断の魔法と言わせる理由だ。
「偶然が、俺を助けた……のか?」
何故、俺が危険過ぎる魔法を知っていたのか?
はっきり言えば、偶然だ。
俺が探検家として注目される切欠になった、大陸最北方の地で見つけた遺跡。
一年中、猛吹雪が吹き荒ぶ永久凍土の奥に、ひっそりと佇む遺跡。
当時遭難中だった俺は、偶然その遺跡を見つけた。
偶然にも、その遺跡が旧世代―魔王の代替わり以前の時代の事だ―の遺跡だった。
偶然にも、俺は件の窮極必滅魔法を記した魔法書を見つけた。
偶然ばっかりの大発見で、俺は将来有望な若手探検家と呼ばれるようになったんだ。
「俺、必死に術式を憶えようとしてたからなぁ……」
猛吹雪で助けも期待出来ない状況、俺は暇潰しと好奇心で術式だけでも憶えようとしてた。
なにせ、当時の魔力じゃ一秒も使えなかったし。
今の俺でも、あんな窮極魔法を使ったら、五秒で死んだ両親と再会しちまうわ。
「じゃあ、何で今になって……」
何故、突然使えるようになったのかを考えようとしたら
「エヴァ〜ン!」
―グキッ!
「ヌゴァッ!?」
いきなり背後から来た衝撃で、思いっきり前屈させられた。
こ、腰が、腰が……今、グキッて鳴ったぞ。
痛む腰を擦りながら立ち上がり、俺は背後から飛びついてきたのは誰かと振り返る。
其処に居たのは、俺が必死に逃がしたダークマターの幼女だった。
「エヴァン、大丈夫?」
「一応、生きてるし、大丈夫だ……って、何で俺の名前を?」
抱き付いてきたダークマターの幼女が俺の名前を呼んだんだが、何でだ?
俺、まだ自己紹介をしてな……アレ? 何か、可笑しいぞ? 何か、足りない気がする。
そう、俺の元に来たのはダークマターの幼女だけ。
ダークマターは幼女と黒球とセットの魔も……って、黒球! そうだ、黒球が無いんだ!
あの黒球、何処にいったんだ?
「エヴァンの中」
「はい?」
俺の心を読んだのか、ダークマターの幼女は俺を、正確には胸の辺りを指差す。
え、えぇと……ドウイウコトデショウカ?
「だから、エヴァンの中。さっき、アタシがエヴァンに向かって投げたから」
「……ええぇぇえぇえぇぇえぇええぇぇぇえぇぇっ!」
な、ななな、何ですとぉ!? あの黒球は俺の中!?
ま、まさか、さっき俺にのしかかってきたのはダークマターの黒球部分!?
だからか! だから、アレを使えたのか!
ダークマターの黒球は、高密度・高純度の魔力の塊。
一瞬で強力なインキュバスになるわ、一発交わっただけで周囲一帯が魔界に変貌するわ、魔界化の余波で魔物夫婦は発情するわ、とトンデモナイ魔力を秘めてるんだ。
「んん……やっぱり、か」
俺は体内に意識を巡らせると、ダークマターの魔力と俺の魔力が混ざり合ってる。
混ざり合ってはいるが、空っぽ。
まぁ、当然だよなぁ……禁断の魔法を放ったんだ、幾等魔力保有量が爆発的に増えても、一発ですっから
―ドクンッ……
「……っ!?」
突然、俺の心臓が大きく脈動する。
鼓動はドンドン大きくなり、早鐘のように鼓動の音が頭の中で鳴り響く。
なん、だ? なに、が、おきて、る?
「エヴァン、ホントウにダイジョウブ?」
オレのモクゼンには、シンパイそうなヒョウジョウをウかべるダークマター。
ホしい、ホしい、ホしい。
ダークマターが、ホしい。
×××
「何か、危ない雰い……きゃぁっ!?」
オレは、心配そうな表情を浮かべるダークマターを押し倒す。
ダークマターの身体は小柄で、手荒く扱えば直ぐに壊れてしまいそうな程に華奢だ。
欠片に等しい理性が、優しくダークマターを扱えと訴える。
「エ、エヴァ……ひゃんっ!」
オレはダークマターの虚乳に舌を這わせ、もう片方は蕾のような乳首を摘む。
優しく、丁寧に、硝子細工を扱うように、舌と指でダークマターの虚乳を責める。
「んっ、はぅっ、あふっ…何だか、エヴァン、んぅっ……赤ちゃん、みたいっ、ひゃんっ」
胸への愛撫で感じ始めたのか、ダークマターの顔は快感で赤く染まり、オレの頭を優しく抱き締める。
オレの頭を抱き締めるダークマターに、オレは死んだ母さんの温もりを思い出す。
「はぁっ、うんっ、あんっ…エヴァン、気持ち、良いよぉ……ひゃんっ、んぅっ、あぁっ」
母を求める赤ん坊のように、オレはダークマターの虚乳を責める。
時折、責める乳首を変えながら、オレはダークマターの虚乳を貪る。
赤ん坊のように、と例えたが、赤ん坊はこのような淫らに胸を貪らない。
「はぅんっ、あふっ、エヴァンッ……コッチも、触ってぇ…んうっ、あぁっ」
ダークマターは顔を真っ赤にしながら、胸を責めていたオレの手を掴み、掴んだ手を己の秘所へと誘う。
「あぁっ、ひぅっ、ふぁっ…もっとぉ、もっとぉ……弄ってぇ、あんっ、あふっ、んぅっ」
舌と余る片手で胸を責めながら、オレはダークマターの秘所に指を入れて掻き回す。
胸と秘所から齎される快感に、ダークマターはオレの頭を抱き締めつつ悶え、だらしなく開いた口からは唾液が滴り落ちる。
ダークマターの蕩けた顔を見上げたオレは物足りなさを感じ、物足りなさを満たす為に、ダークマターへの責めを強くする。
「ひゃんっ、あんっ、ふぁっ…エヴァン、駄目ぇ……あふっ、んぅっ、ひんっ、んんっ」
強くなった責めにダークマターはより快感で悶え、オレの頭を強く抱き締める。
だが……足りない、足りない、満たされぬ物足りなさにオレは飢えるばかり。
「あふっ、んぅっ、ふぁっ……エヴァンの、オ○ンチン…凄く、あんっ、カチカチだよぉ」
密着していた為、オレのモノはダークマターの秘所に当たっており、熱く脈動している。
ダークマターの言葉で、オレは漸く物足りなさの正体を悟る。
繋がりたい、オレはダークマターと繋がりたい。
オレは責めを中断し、ズボンを脱ぎ捨て、熱く滾るモノをダークマターの秘所に当てる。
「あっ、んんっ!」
そして、ダークマターの秘所へオレのモノを一気に押し進める。
「あ、ふぁぁぁぁぁっ❤」
オレのモノが挿入されただけでダークマターは絶頂を迎え、小刻みに身体を震わせるが、オレは構う事無く腰を動かし始める。
絶頂を迎えて敏感だったダークマターの秘所は、オレのモノをキツく締め付け、心地良い快感がオレに伝わってくる。
「んふっ、あんっ、ふあぁっ、んんっ…エヴァン、激し、いっ……駄目、駄目ぇ❤」
絶頂で敏感になっている秘所は休む暇も無く、オレのモノで責められ、子宮を小突かれる度にダークマターは小さな絶頂を迎える。
幼女が快感でだらしなく顔を蕩けさせ、オレが動く度に細かな絶頂を迎える。
背徳感が快感を増幅し、背筋にゾワゾワとした何かが駆け上る。
「あんっ、ふぁっ、んくっ、ひんっ❤ ……らめ、らめぇ…ひゃぅんっ、ひぅっ、あ、ああっ、エヴァン、らめぇ❤」
津波のように襲う快感にダークマターは悶え、オレを小さな四肢で抱き締める。
今のオレには、最初に優しく扱えと命じていた理性は既に無い。
本能のまま、餓えた獣が久方振りの餌を貪るように、ダークマターを蹂躙する。
「あふっ、ふぁっ、ひぅっ、あ、んんっ❤ ……凄い、気持ち、ふぁんっ、良いよぉ❤ …エヴァン、エヴァン、エヴァン❤」
蕩けた顔を晒しながら、甘い声でオレの名を呼ぶダークマター。
蕩けきった甘い声は媚薬のように脳へと侵蝕し、オレは腰の動きを激しくする。
「ふぁっ、あんっ、ん、んっ❤ ……エヴァン、んひっ、アタシ、イっちゃうよ❤ …んふっ、あぅっ、ふぁっ、あ、あぅんっ❤」
細かな絶頂を繰り返してきたダークマターの秘所は、限界を告げるようにキツく締まる。
そのキツい締め付けにオレのモノは陥落し、ダークマターの秘所の奥へ叩きつけるように精液を放った。
「いいっ、イっちゃうっ、ふぁっ、あぁぁぁ――――――――――っ❤」
迸る精液を子宮に叩きつけられたダークマターは、一際大きな声を上げて絶頂を迎える。
ダークマターが絶頂を迎えた瞬間、理性が一瞬で蒸発してしまいそうな程に膨大で濃密な魔力が周囲に散布される。
だが、オレはソレを気にする事無く、貪り喰らうようにダークマターの蹂躙を続けていた。
×××
「ナ、ナニヲシテイタンダ、オレハ……」
思わず棒読みになってしまう程に、俺は呆然としていた。
そりゃ、呆然となるわ。
精液とか、愛液とか、汗とか、涎とか、汁という汁に塗れてドロドロに汚れた―あと、汁でくっ付いた砂―ダークマターが、俺の目前に居るんだから。
ダークマターは幸せそうな笑顔で気絶してるし、大事な部分とお尻の穴からは俺が出したと思しき精液が大量に溢れてるし。
オマケに、俺の記憶もダークマターの黒球が何処にいったのかを聞いた辺りから、綺麗にすっぽ抜けてるし、どうしてこうなったんだ?
「……取り敢えず、コイツの身体を綺麗にしよう」
俺は脱ぎ捨てられていたズボンを履いてから風を纏い、ドロドロに汚れたダークマターを綺麗にすべく、遺跡に来る途中で見つけたオアシスへ向かった。
「……成程、ねぇ」
オアシスで身体を綺麗にしてる途中で目覚めたダークマターに、何があったのかを聞いた俺は、盛大に溜息を吐いた。
何と、俺はダークマターと一三回もヤっちまったそうだ。
オマケに、後半戦は黒球の触手―俺の魔力で再現された奴らしいが―を交えての触手性交。
なんてこった、俺の理想―官能恋愛小説みたいな、愛溢れる交わり―を、俺自身で大粉砕。
「えへへぇ〜、エヴァンのケダモノ〜❤」
コラ、其処の幼女、お前が俺に黒球投げたのが原因だろが。
「エヴァンは、コレからどうするの?」
身体を綺麗にさせたダークマターが砂と汗塗れの身体を綺麗にしてた俺に、この後の事を聞いてきた。
この後の事、ねぇ……この後の事って言われても、答えは一つだけだが。
「まっ、探検だな」
俺の生き甲斐だし、寿命なり何なりで死ぬか、再起不能になるまで続けるつもりだしな。
そう答えると、ダークマターは太陽みたいな―あ、コイツもある意味『太陽』か―笑顔で
「それじゃ、アタシも一緒に探検するっ!」
なんて、言ってきやがりましたよ、オイ。
「う〜ん……」
俺と一緒に探検したい、と言い出したダークマターだが、ソレを断わる理由は無いな。
俺はダークマターの魔力に染まったコイツ専用インキュバス……つまり、ダークマターの黒球に代わる、コイツの片割れだ。
幼女と黒球のセットでダークマター、黒球である俺がコイツを置いてく訳にもいかねぇしな。
「いいぜ、一緒に探検でもすっか!」
「わ〜いっ!」
俺の答えに、ダークマターは大はしゃぎ。
ははっ、可愛いなぁ、コイツ。
……言っておくが、俺は幼女趣味者じゃねぇかんな。
そうと決めたら、先ずはコイツの名前と服だな。
流石に何時までも「コイツ」じゃ可哀想だし、俺に幼女を素っ裸で連れ回す趣味は無い。
俺ははしゃぐダークマターを横目に、コイツの名前を如何するかを考えた。
×××
〜破壊された遺跡〜
「ケッ! 様子を見にきたら、コレかよっ! あぁ、クソッタレ、クソッタレ!」
エヴァンの『大嵐刃』で破壊された遺跡の麓に佇む一人の少年が、悪態を吐いていた。
エヴァンが此処で発見したダークマターの幼女と、同程度の身長。
身に纏うはフード付きの白い上着に裾の擦り切れた白いハーフパンツ、猫の目が描かれた白い帽子、と白一色である事を除けば、如何にも少年らしさに溢れる服。
「クソ、クソクソクソッ! 誰だよ、『GE‐08』の生産工場、ぶっ壊したのはよぉ!」
されど、白一色の少年は、少年とは言い難い存在だ。
少年が苛立ち混じりに腕を振るう度に、瓦礫と死体が跡形も無く粉砕される。
その姿は、まるで癇癪を起こした子供のようだが、不可視の何かで自身よりも巨大な瓦礫を粉砕する様は異常である。
「どっかの誰かの所為で、『GE‐08』は使い物にならなくなった! クソッタレがぁ! 見つけたら、この屑共みてぇにバラバラにぶっ殺してやらぁ!」
苛立ちを隠す事無く、不可視の何かで瓦礫や死体に八つ当たりする、白一色の少年。
その少年の背中。
其処には、鮮血の如く禍々しい真紅の染料で『教団』の旗印が描かれていた……
Report.01 俺と闇玉と包帯 Closed
「遺跡はあるのかなぁ、ワクワクすんなぁ!」
まだ見ぬ何かを楽しむように、砂と熱風ばかりの砂漠を軽やかな足取りで歩く、黒眼鏡を掛けた青年。
深緑色のフード付きの長外套(ロングコート)には幾何学的な紋様が刺繍され、その裾は幾筋も切れ込みが入っており、短冊状になった裾は羽を模したような形に整えられている。
良く見ると、裾付近には大量の羽飾りが長外套と一体化するように縫い付けられており、傍から見れば長外套の下半分が翼ではないかと錯覚してしまいそうだ。
長外套の下は逞しい胸板が露になっており、どうやら上には何も着ていないようだ。
下は、若草色と濃緑の二色が横向きで縞模様を描くズボン。
腰には革ベルトが二本、交差するように巻かれている。
「何が、あるかな? 何が、あるかな? 楽しみだなぁ!」
名はエヴァン・シャルズヴェニィ……二十歳という若さで、将来有望な若手探検家として注目を集め、名が知られるようになった青年だ。
エヴァンの父は高名な学者、母は『探検女王(アドベンチュラー・クイーン)』と呼ばれた屈指の探検家であり、その両親の血を受け継いだ彼は両親の死を切欠に一人旅に出た。
一人旅の中で、エヴァンは好奇心のまま遺跡や辺境を巡り、調査し、現在に至る。
「砂漠だから暑いけど、遺跡の為なら平気だぜぇ! さぁ、待ってろよ!」
砂漠の暑さを物ともせず、エヴァンは腕を上げて鼓舞し、まだ見ぬ遺跡に思いを馳せた。
×××
「……コレ、遺跡なのか?」
俺は砂漠を歩きまわって辿り着いた遺跡を前に、首を傾げていた。
何万、何億と石を積み上げて造られた四角錐型の小さな遺跡。
俺が辿り着いた遺跡は何というか真新しい感じがするし、入口らしき穴の近くには遺跡の番人であるワーキャットの亜種・スフィンクスがいない。
そもそも、此処に来るまでの間、性的な意味で恐れられるギルタブリルに遭遇しなかった。
誰も気付かない、気付いても無視する、寧ろ近付きたくない、そんな感じの遺跡だ。
「まぁ、いいか! んな事よりも調査、調査〜♪」
奇妙な遺跡に首を傾げるが、そんな事はどうでもいい。
俺は母さん譲りの好奇心のままに、遺跡に突入した。
まぁ、凄い今更なんだが……この遺跡が、俺の人生の分岐点になるとは思ってなかった。
×××
「……可笑しい、可笑し過ぎる」
カツン、カツン…と通路に響く俺の足音に、今更ながら疑問が生じる。
何も無い。
流石にアヌビスかマミーか罠が居るだろと予想してたんだが予想は大外れ、この遺跡には魔物が居ないし、魔物が居なけりゃ当然だが、侵入者撃退用の罠も無い。
真新しさもあって、この遺跡は何かが可笑しいぞ。
「………………」
可笑しいと言えばもう一つ、中に充満する異常なまでに濃い魔力だ。
俺は「ある事情」があって、魔法的感覚が滅茶苦茶鋭い。
バフォメット、とまでは言わんが、生まれたての上位の魔物よりは鋭敏で、魔力の流れや密度がしっかりと認識出来る。
それに、俺は下手な導師級(マスタークラス)―魔法使いの格の一つで、五つに分けられた格の中じゃ導師級は上から二番目だ―よりも魔法が使える。
まぁ、ドッチも自画自賛だけどな。
「『障壁(ウォル)』、一応張っといて正解だったな……」
『障壁』ってのは魔力で透明な壁を作る初歩的な魔法で、応用すれば大気に充満する魔力から身を守り、肉体への侵食をある程度は防いでくれる頼もしい魔法だ。
何の対策も無しに生身で入り込んだら、一瞬でインキュバス化しちまう……それ程までに此処の魔力は濃過ぎる。
「そう言えば、父さんの部屋の論文で面白いのがあったな」
その論文曰く、大気中の魔力を効率的に集約させるには四角錐型の構造物が最適であり、砂漠に点在する遺跡群は巨大な魔力集約装置である。
その論文を鵜呑みにすりゃ、異常に濃過ぎる魔力は納得は出来るが、魔物が居ない理由が分からない。
「お……?」
色々思考しながら通路を歩いていると、前方に何やら仄かな灯りが見えた。
灯りがあるって事は、魔物なり何なりが居るって事だ。
何も無い遺跡の中を探って、漸く見つけた何か。
俺は滾る好奇心のままに、灯りの見えた方へと向かい
『ふあぁっ、ああぁぁぁぁ――――――――――っ❤』
絶句した。
「…………………………」
何だ、この光景……幾等俺でも、こんなのは見た事ねぇ。
灯りの見えた方向に進んだ俺が見たモノ。
古代の王が眠る玄室にしては殺風景過ぎる部屋、灯りは玄室(?)を照らす小さな魔力球が放つ光のようで、玄室の奥にいたのは
「あふっ、ふぁっ、はふっ……」
場所が場所だけに玉座にも見える真っ黒な球体に跨り、息を荒げる素っ裸の幼女。
顔はトロンと蕩け、幼女の大事な部分には球体から伸びた触手が、ウネウネと蠢きながら大事な部分を弄くり回している。
い、いかん! エヴァン・シャルズヴェニィ、人生最大の貞操の危機!
「漸く見つけたと思ったら、ダークマターかよ……」
ダークマター……『闇の太陽』とも呼ばれ、超高密度の魔力が集う場所でしか生まれない稀少種族で、此処の異常魔力なら生まれても可笑しくないけどさ、不味いってば。
何が不味いって、コイツの性質が不味い。
ダークマターは存在自体が欲望の塊で、男を見つけたら跨る球体を男に流し込み、一瞬で強力なインキュバスへと変えちまう。
インキュバスになった男は、そのまま幼女の肉奴隷、延々と交わり続ける事になる。
「……そぉっと、そぉっと、気付かれないように」
俺は足音を立てないように、気付かれないようにしながら、ゆっくりと後退する。
俺は純愛派なんだ、触手付き逆強姦で童貞―下手したら、尻の純潔も一緒に―卒業して、肉奴隷に永久就職なんて絶対に御免だ!
絶頂で呆けてる今が最初で最後のチャンス、充分に離れたら後ろに向かって全力疾走!
「…………っ!」
なんて、考えてたら、俺の魔法的感覚が警鐘を鳴らす。
俺、ダークマター、土地固有の魔力……その三つと異なる魔力が、玄室に集まってくる。
そして、俺は見た……何処からか現れたマミーの群れが、ダークマターに襲い掛かろうとしているのを。
だぁぁっ、クソッタレがぁぁぁぁぁっ!
×××
「吹き荒め! 『風刃(ビエッジ)』!」
俺はダークマターに性的な意味で襲われるのを覚悟で玄室へ駆け出し、剣指を組んだ右手を突き出して術式を詠唱する。
『風刃』、生半可な剣よりも鋭い不可視の刃。
『風刃』はマミーの群れを切り刻み、バラバラ死体―あ、元々死体か―へと変える。
突然の出来事にも呆けたまんまのダークマターの元へと駆け寄った俺は、ダークマターを庇うようにマミーの群れの前に立つ。
「ほぇっ?」
ダークマターは見た目相応の可愛らしさで首を傾げるんだが、いい加減自分の置かれてる状況くらい理解しろよ。
そんな事を考えてる内にマミーを包む包帯が、宛ら盲目の蛇みたいに這いずり、バラバラにされた身体を繋ぎ合わせる。
いや、待て……コイツ等、マミーじゃねぇ!
「嘘、だろ?」
包帯の隙間から見えるのは女の子……女の子なんだが、マミーとは全然違う。
何処が違うのかって? 包帯の隙間から見えた女の子は、全員種族が違う魔物なんだ。
完全に乾涸びてるが、確認出来るだけでもワーウルフ、ハーピー、サキュバス、アラクネ、アルラウネ等々、様々な魔物がマミーっぽい姿になってやがる。
「どうなってんだよ!? クソッタレッ!」
再び襲い掛かってくるマミーもどきに、嫌悪感を抱きながら俺は『風刃』を放つんだが、バラバラになっても包帯が身体を繋ぎ合わせて再生させる。
何度も再生して迫るマミーもどきに『風刃』を放ちながら、俺は思考を高速回転させる。
其々中身が違うマミーもどきは、切った際に血が出てない事から死体なのは確実。
本来、マミーは人間の死体に魔力が宿るか、マミーが生きた人間の女性から魔力を奪う事で生まれる魔物であり、マミーとは別の魔物がマミーになる事は在り得ない。
在り得ないが、在り得ない事が現実に起きている。
オマケに、幾等バラバラにしても、包帯が身体を繋ぎ合わせるから、キリが無い。
「取り敢えず、戦略的撤退! 『大嵐刃(ウラガッジ)』!」
俺は『風刃』を放ちながら魔力を循環させ、『風刃』よりも上位の魔法を詠唱する。
すると、俺とダークマターを包むように巨大な竜巻が現れ、マミーもどきを巻き込みながら天井を破壊する。
「しっかり、掴ってろよ! ……あと、その黒球はくっ付けんな」
俺の言葉が通じたのか……ダークマターの幼女は黒い球体から下り、俺の腰に腕を回して抱き付き、球体は俺から少し離れた所にプカプカと浮かぶ。
ソレを確認した俺は、竜巻に乗るように天井に空いた大穴から飛び出した。
×××
―ドゴゴゴォォォォォッ!!
轟音と共に遺跡の上半分を吹き飛ばす程の竜巻が現れ、遺跡の周囲に広がる砂漠に瓦礫と内部に居たマミーもどきが撒き散らされる。
マミーもどきは瓦礫に押し潰されるか、竜巻で引き裂かれるかの二択を強いられた。
その大竜巻の中心、目の部分からエヴァンとダークマターが飛び出し、魔法で生み出した風を纏い、軽やかに着地する。
「あ〜あ、壊しちまった……まぁ、あんな奇妙で危険な遺跡は破壊した方がいいか」
振り返ったエヴァンは、未だに吹き荒れる大竜巻、見事に上半分が吹き飛んだ遺跡を見て、溜息を吐く。
一方、ダークマターの幼女は目を閉じたまま、ギュッとエヴァンの腰にしがみ付いており、黒い球体は相変わらずプカプカと風船のように浮いている。
「もう大丈夫だ、離れてもいいぞ」
そう言いながら、エヴァンは腰にしがみ付くダークマターの幼女の頭を安心させるように撫で、目を開けたダークマターの幼女はゆっくりと彼の腰から離れる。
「さぁて、今度はどうなるんだ?」
ダークマターの幼女が離れたのを確認したエヴァンは、警戒を解かずに、降り注ぐマミーもどきの破片を睨みつける。
一体あの小さな遺跡に、どれだけ居たのか……頭を数えれば、軽く二、三〇〇個はあり、頭の数に比例したマミーもどきが、あの遺跡に居た事になる。
瓦礫に押し潰され、竜巻に引き裂かれたマミーもどきの身体から包帯が伸び、身体を繋ぎ合わせようと
「オイオイ、今度はそうきたか……」
しなかった。
包帯は蛇のように死体から離れると一ヶ所に集まり始め、一ヶ所に集まった包帯は自らを絡ませ、編みあげ、繋ぎ合わせる。
その様子は、宛ら共食いじみた醜悪な交配といった感じだ。
醜悪な交配を繰り返した包帯は一個の塊と化し、包帯の塊は蠢きながら形を変える。
その形は、身長一九〇センチはあるエヴァンの五倍はありそうな程の巨人だった。
×××
「何でもありだなぁ……って、本体はコッチか!」
巨人になった包帯を見た俺は呆れるが、同時にマミーもどきの正体を悟った。
マミーもどきの正体は、目の前で巨人になった包帯の群れ……包帯に包まれてた死体は、コイツ等が動く為の依代だった訳か。
多分、依代の死体が使い物にならなくなったから、お互いを繋ぎ合わせて動こうと、巨人になったんだろな。
まぁ、正体が分かった所で、この状況が変わる訳でもないが。
「ふみゅぅ……」
「あぁ、もう……泣きそうな顔すんな」
目前の巨人が怖いのか、ダークマターの幼女は再び腰にしがみ付き、俺は安心させるように幼女の頭を撫でる。
頭を撫でられたダークマターの幼女は、なんだか嬉しそうな顔で、俺も和んでしまう。
だが、そんな和やかな空気は、目前の巨人はお気に召さなかったらしい。
自分無視して和やかな空気に浸ってんじゃねぇ、と言わんばかりに拳を振り下ろしてくる。
「うおわたたたっ!?」
俺はダークマターの幼女を抱えて拳を避けた後、黒球に幼女を渡してから『風刃』を放つ。
放たれた『風刃』は巨人の右腕を切り落とすが、切り落とされた右腕は繊維状に解けた後、再び包帯になって切り落とされた場所に集合。
あっという間に、右腕が元通りになりやがった。
胸の中で舌打ちして、俺は何度も『風刃』を放つが全く効果無し。
「クソッタレェッ!」
『風刃』、『大嵐刃』、『旋風刃(トルネッジ)』、『嵐鎚(ウラガンマ)』、『風鎌(ビサイス)』、俺の使える魔法を放てるだけ放っても、包帯巨人に効果無し。
切り落とした所で、繊維状に解けた後に集合して再生しちまうし、オマケにコッチは一発当たれば、ペラッペラの二次元になっちまう。
逃げるダークマターを守りながら、迫る包帯巨人に魔法を放ち続ける。
全く、どうしたらいいんだよ、この状況!
「うぐっ!?」
何度も何度も魔法を放った俺の身体に、いきなり激痛と虚脱感が襲う。
しまった、魔力欠乏(フリーズ)……我武者羅に放ってたから、魔力を使い切っちまった!
不味い、不味い不味い不味いっ!
激痛と虚脱感で足が縺れて倒れちまったが、ソレを見逃さない程度の知能はあったらしい。
包帯巨人はデカい拳を、俺目掛けて振り下ろす!
クソッタレッ!
俺は空っぽの魔力を振り絞って『障壁』を詠唱、拳と俺の間に『障壁』を割り込ませる。
止まったのは数瞬、なけなしの魔力で作った『障壁』は硝子みたいに砕け散り、俺に拳が叩き付けられる。
「―――――――――――!?」
言葉にもならない悲鳴、激痛を伴う圧迫感……生き埋めにあった人はこんな感じなのかと、しょうもない事を考えてしまう。
幸いなのは、俺を押し潰したのは岩じゃなくて包帯。
咄嗟の『障壁』のお陰で勢いが殺されたのも救いだが、それでもキレたオーガの全力の拳をしこたま貰ったみてぇに身体中が痛い。
包帯巨人は拳を持ち上げ、死刑宣告するみてぇにゆっくりと拳を振り上げる。
畜生、畜生畜生畜生畜生っ!
俺は此処でくたばるのかよぉっ!
「うぶっ!?」
死を覚悟した、その時だった。
砂漠にめり込んだ俺の上に柔らかいモノがのしかかり、俺の身体の中に流れ込んでくる。
ソレは、超高密度の魔力の塊……魔力が空っぽになってる俺の身体は、ソレを貪欲に貪り、飲み込み、俺の一部にしようとする。
急激な魔力回復に、さっきとは違う激痛が身体中を走り回るが、構うもんかよぉっ!
思考は凪いだ水面のように静まるが、魂は業火の如く燃え盛る。
振り下ろされる包帯巨人の拳が、やたらゆっくりと動いているように見える。
そして、俺は
『――――――――――――――――』
声を超え、音を超え、世界の理をも超えた、声ならざる声で咆吼する。
声ならざる咆吼を受けた包帯巨人の拳は、一瞬で粉砕されて微塵と化し、その微塵ですら更に細かく、細かく、目に見えない領域にまで砕かれる。
砕かれたのは、拳だけじゃなかった。
包帯巨人の身体、砂漠の砂粒、遺跡の瓦礫、依代にされた不幸な死体達。
俺の周囲にあった、形あるモノ全てが砕かれていく。
声ならざる咆吼をまともに食らった包帯巨人は、拳を振り下ろそうとした体勢のまま、目に見えない領域にまで砕かれ、消滅した。
×××
「嘘、だろ……コレって」
包帯巨人を消滅させ、上半身を起こした俺は、自分のやった事を信じられなかった。
信じられる筈が、無い……何故なら、俺はさっきの『声ならざる咆吼』が、一体何なのかを知っているからだ。
『星間駆ける皇帝の葬送曲(レクイエム・トゥ・ザ・ハストゥール)』
その窮極的破壊力故に、どれだけ優れた魔法使いであっても、体得どころか、この魔法の存在を調べる事ですら赦されない、窮極にして禁断の魔法。
太古の昔、魔物と人間が世界の覇権と種族の存亡を賭けて争っていた時代、ある魔法使いが編み出した窮極必滅魔法。
何故なら、魔法に必須である詠唱行為自体が攻撃である事。
膨大な魔力を乗せた声は、あらゆる生物の可聴領域外の音ならざる音となり、声ならざる咆吼による超振動で、相手を完全に消滅させる。
声ならざる咆吼から逃れる事は不可能で、その窮極的破壊力が『星間駆ける皇帝の葬送曲』を禁断の魔法と言わせる理由だ。
「偶然が、俺を助けた……のか?」
何故、俺が危険過ぎる魔法を知っていたのか?
はっきり言えば、偶然だ。
俺が探検家として注目される切欠になった、大陸最北方の地で見つけた遺跡。
一年中、猛吹雪が吹き荒ぶ永久凍土の奥に、ひっそりと佇む遺跡。
当時遭難中だった俺は、偶然その遺跡を見つけた。
偶然にも、その遺跡が旧世代―魔王の代替わり以前の時代の事だ―の遺跡だった。
偶然にも、俺は件の窮極必滅魔法を記した魔法書を見つけた。
偶然ばっかりの大発見で、俺は将来有望な若手探検家と呼ばれるようになったんだ。
「俺、必死に術式を憶えようとしてたからなぁ……」
猛吹雪で助けも期待出来ない状況、俺は暇潰しと好奇心で術式だけでも憶えようとしてた。
なにせ、当時の魔力じゃ一秒も使えなかったし。
今の俺でも、あんな窮極魔法を使ったら、五秒で死んだ両親と再会しちまうわ。
「じゃあ、何で今になって……」
何故、突然使えるようになったのかを考えようとしたら
「エヴァ〜ン!」
―グキッ!
「ヌゴァッ!?」
いきなり背後から来た衝撃で、思いっきり前屈させられた。
こ、腰が、腰が……今、グキッて鳴ったぞ。
痛む腰を擦りながら立ち上がり、俺は背後から飛びついてきたのは誰かと振り返る。
其処に居たのは、俺が必死に逃がしたダークマターの幼女だった。
「エヴァン、大丈夫?」
「一応、生きてるし、大丈夫だ……って、何で俺の名前を?」
抱き付いてきたダークマターの幼女が俺の名前を呼んだんだが、何でだ?
俺、まだ自己紹介をしてな……アレ? 何か、可笑しいぞ? 何か、足りない気がする。
そう、俺の元に来たのはダークマターの幼女だけ。
ダークマターは幼女と黒球とセットの魔も……って、黒球! そうだ、黒球が無いんだ!
あの黒球、何処にいったんだ?
「エヴァンの中」
「はい?」
俺の心を読んだのか、ダークマターの幼女は俺を、正確には胸の辺りを指差す。
え、えぇと……ドウイウコトデショウカ?
「だから、エヴァンの中。さっき、アタシがエヴァンに向かって投げたから」
「……ええぇぇえぇえぇぇえぇええぇぇぇえぇぇっ!」
な、ななな、何ですとぉ!? あの黒球は俺の中!?
ま、まさか、さっき俺にのしかかってきたのはダークマターの黒球部分!?
だからか! だから、アレを使えたのか!
ダークマターの黒球は、高密度・高純度の魔力の塊。
一瞬で強力なインキュバスになるわ、一発交わっただけで周囲一帯が魔界に変貌するわ、魔界化の余波で魔物夫婦は発情するわ、とトンデモナイ魔力を秘めてるんだ。
「んん……やっぱり、か」
俺は体内に意識を巡らせると、ダークマターの魔力と俺の魔力が混ざり合ってる。
混ざり合ってはいるが、空っぽ。
まぁ、当然だよなぁ……禁断の魔法を放ったんだ、幾等魔力保有量が爆発的に増えても、一発ですっから
―ドクンッ……
「……っ!?」
突然、俺の心臓が大きく脈動する。
鼓動はドンドン大きくなり、早鐘のように鼓動の音が頭の中で鳴り響く。
なん、だ? なに、が、おきて、る?
「エヴァン、ホントウにダイジョウブ?」
オレのモクゼンには、シンパイそうなヒョウジョウをウかべるダークマター。
ホしい、ホしい、ホしい。
ダークマターが、ホしい。
×××
「何か、危ない雰い……きゃぁっ!?」
オレは、心配そうな表情を浮かべるダークマターを押し倒す。
ダークマターの身体は小柄で、手荒く扱えば直ぐに壊れてしまいそうな程に華奢だ。
欠片に等しい理性が、優しくダークマターを扱えと訴える。
「エ、エヴァ……ひゃんっ!」
オレはダークマターの虚乳に舌を這わせ、もう片方は蕾のような乳首を摘む。
優しく、丁寧に、硝子細工を扱うように、舌と指でダークマターの虚乳を責める。
「んっ、はぅっ、あふっ…何だか、エヴァン、んぅっ……赤ちゃん、みたいっ、ひゃんっ」
胸への愛撫で感じ始めたのか、ダークマターの顔は快感で赤く染まり、オレの頭を優しく抱き締める。
オレの頭を抱き締めるダークマターに、オレは死んだ母さんの温もりを思い出す。
「はぁっ、うんっ、あんっ…エヴァン、気持ち、良いよぉ……ひゃんっ、んぅっ、あぁっ」
母を求める赤ん坊のように、オレはダークマターの虚乳を責める。
時折、責める乳首を変えながら、オレはダークマターの虚乳を貪る。
赤ん坊のように、と例えたが、赤ん坊はこのような淫らに胸を貪らない。
「はぅんっ、あふっ、エヴァンッ……コッチも、触ってぇ…んうっ、あぁっ」
ダークマターは顔を真っ赤にしながら、胸を責めていたオレの手を掴み、掴んだ手を己の秘所へと誘う。
「あぁっ、ひぅっ、ふぁっ…もっとぉ、もっとぉ……弄ってぇ、あんっ、あふっ、んぅっ」
舌と余る片手で胸を責めながら、オレはダークマターの秘所に指を入れて掻き回す。
胸と秘所から齎される快感に、ダークマターはオレの頭を抱き締めつつ悶え、だらしなく開いた口からは唾液が滴り落ちる。
ダークマターの蕩けた顔を見上げたオレは物足りなさを感じ、物足りなさを満たす為に、ダークマターへの責めを強くする。
「ひゃんっ、あんっ、ふぁっ…エヴァン、駄目ぇ……あふっ、んぅっ、ひんっ、んんっ」
強くなった責めにダークマターはより快感で悶え、オレの頭を強く抱き締める。
だが……足りない、足りない、満たされぬ物足りなさにオレは飢えるばかり。
「あふっ、んぅっ、ふぁっ……エヴァンの、オ○ンチン…凄く、あんっ、カチカチだよぉ」
密着していた為、オレのモノはダークマターの秘所に当たっており、熱く脈動している。
ダークマターの言葉で、オレは漸く物足りなさの正体を悟る。
繋がりたい、オレはダークマターと繋がりたい。
オレは責めを中断し、ズボンを脱ぎ捨て、熱く滾るモノをダークマターの秘所に当てる。
「あっ、んんっ!」
そして、ダークマターの秘所へオレのモノを一気に押し進める。
「あ、ふぁぁぁぁぁっ❤」
オレのモノが挿入されただけでダークマターは絶頂を迎え、小刻みに身体を震わせるが、オレは構う事無く腰を動かし始める。
絶頂を迎えて敏感だったダークマターの秘所は、オレのモノをキツく締め付け、心地良い快感がオレに伝わってくる。
「んふっ、あんっ、ふあぁっ、んんっ…エヴァン、激し、いっ……駄目、駄目ぇ❤」
絶頂で敏感になっている秘所は休む暇も無く、オレのモノで責められ、子宮を小突かれる度にダークマターは小さな絶頂を迎える。
幼女が快感でだらしなく顔を蕩けさせ、オレが動く度に細かな絶頂を迎える。
背徳感が快感を増幅し、背筋にゾワゾワとした何かが駆け上る。
「あんっ、ふぁっ、んくっ、ひんっ❤ ……らめ、らめぇ…ひゃぅんっ、ひぅっ、あ、ああっ、エヴァン、らめぇ❤」
津波のように襲う快感にダークマターは悶え、オレを小さな四肢で抱き締める。
今のオレには、最初に優しく扱えと命じていた理性は既に無い。
本能のまま、餓えた獣が久方振りの餌を貪るように、ダークマターを蹂躙する。
「あふっ、ふぁっ、ひぅっ、あ、んんっ❤ ……凄い、気持ち、ふぁんっ、良いよぉ❤ …エヴァン、エヴァン、エヴァン❤」
蕩けた顔を晒しながら、甘い声でオレの名を呼ぶダークマター。
蕩けきった甘い声は媚薬のように脳へと侵蝕し、オレは腰の動きを激しくする。
「ふぁっ、あんっ、ん、んっ❤ ……エヴァン、んひっ、アタシ、イっちゃうよ❤ …んふっ、あぅっ、ふぁっ、あ、あぅんっ❤」
細かな絶頂を繰り返してきたダークマターの秘所は、限界を告げるようにキツく締まる。
そのキツい締め付けにオレのモノは陥落し、ダークマターの秘所の奥へ叩きつけるように精液を放った。
「いいっ、イっちゃうっ、ふぁっ、あぁぁぁ――――――――――っ❤」
迸る精液を子宮に叩きつけられたダークマターは、一際大きな声を上げて絶頂を迎える。
ダークマターが絶頂を迎えた瞬間、理性が一瞬で蒸発してしまいそうな程に膨大で濃密な魔力が周囲に散布される。
だが、オレはソレを気にする事無く、貪り喰らうようにダークマターの蹂躙を続けていた。
×××
「ナ、ナニヲシテイタンダ、オレハ……」
思わず棒読みになってしまう程に、俺は呆然としていた。
そりゃ、呆然となるわ。
精液とか、愛液とか、汗とか、涎とか、汁という汁に塗れてドロドロに汚れた―あと、汁でくっ付いた砂―ダークマターが、俺の目前に居るんだから。
ダークマターは幸せそうな笑顔で気絶してるし、大事な部分とお尻の穴からは俺が出したと思しき精液が大量に溢れてるし。
オマケに、俺の記憶もダークマターの黒球が何処にいったのかを聞いた辺りから、綺麗にすっぽ抜けてるし、どうしてこうなったんだ?
「……取り敢えず、コイツの身体を綺麗にしよう」
俺は脱ぎ捨てられていたズボンを履いてから風を纏い、ドロドロに汚れたダークマターを綺麗にすべく、遺跡に来る途中で見つけたオアシスへ向かった。
「……成程、ねぇ」
オアシスで身体を綺麗にしてる途中で目覚めたダークマターに、何があったのかを聞いた俺は、盛大に溜息を吐いた。
何と、俺はダークマターと一三回もヤっちまったそうだ。
オマケに、後半戦は黒球の触手―俺の魔力で再現された奴らしいが―を交えての触手性交。
なんてこった、俺の理想―官能恋愛小説みたいな、愛溢れる交わり―を、俺自身で大粉砕。
「えへへぇ〜、エヴァンのケダモノ〜❤」
コラ、其処の幼女、お前が俺に黒球投げたのが原因だろが。
「エヴァンは、コレからどうするの?」
身体を綺麗にさせたダークマターが砂と汗塗れの身体を綺麗にしてた俺に、この後の事を聞いてきた。
この後の事、ねぇ……この後の事って言われても、答えは一つだけだが。
「まっ、探検だな」
俺の生き甲斐だし、寿命なり何なりで死ぬか、再起不能になるまで続けるつもりだしな。
そう答えると、ダークマターは太陽みたいな―あ、コイツもある意味『太陽』か―笑顔で
「それじゃ、アタシも一緒に探検するっ!」
なんて、言ってきやがりましたよ、オイ。
「う〜ん……」
俺と一緒に探検したい、と言い出したダークマターだが、ソレを断わる理由は無いな。
俺はダークマターの魔力に染まったコイツ専用インキュバス……つまり、ダークマターの黒球に代わる、コイツの片割れだ。
幼女と黒球のセットでダークマター、黒球である俺がコイツを置いてく訳にもいかねぇしな。
「いいぜ、一緒に探検でもすっか!」
「わ〜いっ!」
俺の答えに、ダークマターは大はしゃぎ。
ははっ、可愛いなぁ、コイツ。
……言っておくが、俺は幼女趣味者じゃねぇかんな。
そうと決めたら、先ずはコイツの名前と服だな。
流石に何時までも「コイツ」じゃ可哀想だし、俺に幼女を素っ裸で連れ回す趣味は無い。
俺ははしゃぐダークマターを横目に、コイツの名前を如何するかを考えた。
×××
〜破壊された遺跡〜
「ケッ! 様子を見にきたら、コレかよっ! あぁ、クソッタレ、クソッタレ!」
エヴァンの『大嵐刃』で破壊された遺跡の麓に佇む一人の少年が、悪態を吐いていた。
エヴァンが此処で発見したダークマターの幼女と、同程度の身長。
身に纏うはフード付きの白い上着に裾の擦り切れた白いハーフパンツ、猫の目が描かれた白い帽子、と白一色である事を除けば、如何にも少年らしさに溢れる服。
「クソ、クソクソクソッ! 誰だよ、『GE‐08』の生産工場、ぶっ壊したのはよぉ!」
されど、白一色の少年は、少年とは言い難い存在だ。
少年が苛立ち混じりに腕を振るう度に、瓦礫と死体が跡形も無く粉砕される。
その姿は、まるで癇癪を起こした子供のようだが、不可視の何かで自身よりも巨大な瓦礫を粉砕する様は異常である。
「どっかの誰かの所為で、『GE‐08』は使い物にならなくなった! クソッタレがぁ! 見つけたら、この屑共みてぇにバラバラにぶっ殺してやらぁ!」
苛立ちを隠す事無く、不可視の何かで瓦礫や死体に八つ当たりする、白一色の少年。
その少年の背中。
其処には、鮮血の如く禍々しい真紅の染料で『教団』の旗印が描かれていた……
Report.01 俺と闇玉と包帯 Closed
12/09/24 15:00更新 / 斬魔大聖
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