今年一番の幸運
「全く、忌々しい…。」
俺は初詣の神社に向かって歩きながらほとんど聞こえない声で呟いた。
「しかし、みんなコミケか彼女と一緒だとはな。」
友人達はみんな予定があったことを思い出すだけで悲しくなり、虚しくなってくる。
「いっそあいつらが不幸になるように願うか…?」
俺は若干ヤケになりながら小さな声で呟いた。
「…いや、八つ当たりだよなそれって。」
俺は自分の嫉妬に気づいてまた悲しくなった。
「お、もう少しで俺の番だ。」
そんなことを考えながら神社で並んでいたらいつの間にかもうすぐで自分の番になるようだ。
「?」
一瞬誰かに見られていた気配を感じて辺りを見回したが参拝客が結構いたので解らなかった。
「俺の番だな。」
パン!パン!
二回手を叩いて礼拝を済ませた。
『ちょっと、いいかしら?』
帰ろうとしていると誰かが話しかけてきたようだ、俺ではないだろうけど。
『ちょっとー?』
随分返事をしない奴も居たらしい、まあ俺には関係ないだろうが。
『聞こえないのかしら?』
と誰かが言い終わってすぐに俺は肩を叩かれた。
「俺か。」
さっきからの声の主はどうやら俺に話しかけていたらしい。
『そう、貴方よ。』
俺は振り向いて声の主を確認した。
「…」
どうやら彼女は魔物のようだ、褐色肌に銀髪の赤い瞳だったら砂漠地方の魔物だろうか…?
「何か?」
『貴方も一人なの?』
「見て分からないか?」
『そう…。』
「何か用が?」
『私も一人なのよ、もし良かったら理由を聞かせてもらえないかしら?』
「貴方が同じ条件を飲むなら話す。」
『分かったわ、なら私から話すわね。』
「ああ。」
『その前にとりあえずあっちのコンビニ行かない?』
「そうしよう。」
俺達は神社から出て近くのコンビニで会話を始めた。
『私は、簡単に言えばお一人様よ。』
「!?」
『友達はみんな旦那や恋人と予定があるらしいわ。』
「そうか…。」
『貴方は?』
「大体同じだ、俺も友人はみんな彼女と一緒かコミケ行った。」
『貴方もお一人様なのね…。』
「だからあいつらが不幸になるように」
『願ったの?』
「いや、途中で八つ当たりだと分かってやめた。」
『そう。』
「忌々しいな、あれ。」
『全くね、本当に忌々しいわ。』
俺達はカップルを睨みながら呟いた。
『どこかで飲みに行かない?お互いお一人様だし。』
「俺は酒は飲めない、飲んだら吐く。」
『そう、ならどこかのファミレスにでも行って暖を取らない?』
「空いてるかな?年末だし。」
『そういえば年末だったわね…。』
「どうするか…。」
『なら私の家に来ない?』
「いや、未婚の女性の家に出会ってすぐの俺が行くのはな…。」
『意外と用心深いわね。』
「いや、なんか良くないと思った。」
『そう…。』
「貴方の家はここからどのくらいの距離にあるんだ?」
『大体30分くらいね。』
「俺の家とそんなに変わらんな。」
『そうなの?』
「大体5分くらいしか違わない。」
『そうなんだ…。』
「…。」
『貴方の家、行っていい?』
「!?」
『その方が近いじゃない?』
「まあ、いいか。」
『?』
「親になんて言われるかな…。」
『大丈夫、魔物はそこら辺おおらかだからって言うから。』
「そういえば貴方はどんな種族の魔物なんだ?」
『私はダークエルフのリシアよ。』
「俺はジュン、見てわかる通り人間だ。」
『貴方はジュンね。』
「そうだ。」
『ならここで何か買っていきましょう。』
「だな。」
俺達はコンビニで食べ物を買って俺の家に向かった。
「リシア、一つ聞いていいか?」
『なに?』
「ダークエルフって、男を力づくで屈服させて奴隷にするイメージがあるんだが。」
『まあ私はともかく、八割以上のダークエルフは合ってるわね。』
「…。」
『私は無理に奴隷にする必要性はないと思うわね。』
「それって変わり者に見えるけど。」
『私はダークエルフとしては変わり者だと思うわ。』
「やっぱり変わり者なんだ…。」
『ええ、変わり者よ。』
「まあ無理に奴隷にすることに拘ってチャンスを逃すよりはいいのかもしれないな。」
『でしょう?』
「ここのアパートだ。」
『ここなんだ。』
「なら鍵を開けて入るかな。」
『お邪魔します。』
「親どっちも寝てるな、これ。」
『そう。』
「今暖房を入れる。」
『ありがとう。』
「さて、どうする?」
『とりあえず雑談しながら食べない?』
「だな。」
とりあえず暖を取りながら会話をしつつ買って来たものを食べた。
『ジュンは飲めないのにおつまみは好きなのね。』
「まあ、リシアも酒のつまみにスイーツはあんまりいないと思うけど。」
『違わないわね。』
何気ない話をしたり食べ物を食べたりしていると、リシアが真面目な顔で切り出してきた。
『いいかしら?』
「?」
『もう私達、付き合っちゃわない?』
「はい!?」
『真っ赤よ、顔。』
「酔った勢いで行っているなら仕方ない、けど人をからかって楽しいか?」
『酔ってはいるけど、この感情は本物よ。』
「!?」
『貴方、私がダークエルフで種族としての特徴も知っていたのに逃げなかったでしょう?』
「力づくになったら逃げたらいいと考えていた、それにリシアからは攻撃的な雰囲気が感じられなかったからな。」
『そのことからしても、私はジュンの人間性を垣間見たわ。』
「美化しすぎだ、俺は話を聞いて普通の性格だったら逃げようと思っていたからな。」
『だとしてもよ、貴方は私の話を聞いてくれた、私から逃げなかったからよ。』
「まさか、ダークエルフだからって疎まれた経験あるのか?」
『ご名答ね、言いがかりならしばけばいいけど怖がられて避けられるのは辛かったわ。』
「ここまで同じなのか。」
『?』
「俺も小さい頃から高校くらいまで避けられてたからな。」
『ならなおさら付き合いたいわね。』
「同じ痛みを知ってるしな、そうしようか。」
それからしばらくの間、リシアはこの世の幸せを全部手にしたような表情で何を言っても上の空だった。
『一回帰ってシャワー浴びて着替え取って来るわね。』
「即泊まり確定なんですねわかります。」
『貴方を他の娘に取られたくないもの。』
「なら着いて行くか?」
『ぜひそうして欲しいわ。』
一度リシアの家で着替えを取って来てまた戻って来たのはいいが、いつ犯されるか俺は気が気でなかった。
「さて、帰って来たはいいがどうする?」
『そうね、もうしばらく起きた後にそれから寝ましょう。』
「…だな。」
俺はいきなり付き合った当日に犯されると思っていたのでホッとした。
『いきなり犯しはしないわ、もっと距離を詰めてからよ。』
「え、あ、はい。」
『したいなら今からでもいいわよ?』
「もう少ししてからがいい。」
『まあ私もそうだけどね。』
「お、おう。」
それから、リシアの着替えで俺が部屋の外に出るときに「別に居ていいのに」と言われたりした。
「リシアはベッド使っていい、俺はこれ使うから。」
『別に一緒でもいいじゃない、私達はもう付き合ってるんだし。』
「でもな。」
『正直、貴方から離れたくないしね。』
「え?」
『だから一緒に、ね?』
結局、同じ布団で寝ることになった。
『大好きよ、ジュン。』
「!」
リシアは俺に抱き付いてきた。
「リシア。」
『なに?』
「俺は今幸せだ。」
『私もよ♪』
「久しぶりにこんな幸せな睡眠を取れるな。」
『本当に、ね。』
こうして夜は明けて行った。
「…朝か。」
俺がトイレに行こうと目を覚ますとリシアはいなくなっていた。
「儚い夢だったなぁ…。」
『何の夢かしら?』
「リシア!」
『夢は終わらないわ、むしろ今から始まるのよ♪』
「かもな。」
『ずっと一緒よ、これは現実なんだから。』
「現実…か。」
俺は今年一番の幸せをここで手にしたのかもしれないと思ってまた眠るのだった。
俺は初詣の神社に向かって歩きながらほとんど聞こえない声で呟いた。
「しかし、みんなコミケか彼女と一緒だとはな。」
友人達はみんな予定があったことを思い出すだけで悲しくなり、虚しくなってくる。
「いっそあいつらが不幸になるように願うか…?」
俺は若干ヤケになりながら小さな声で呟いた。
「…いや、八つ当たりだよなそれって。」
俺は自分の嫉妬に気づいてまた悲しくなった。
「お、もう少しで俺の番だ。」
そんなことを考えながら神社で並んでいたらいつの間にかもうすぐで自分の番になるようだ。
「?」
一瞬誰かに見られていた気配を感じて辺りを見回したが参拝客が結構いたので解らなかった。
「俺の番だな。」
パン!パン!
二回手を叩いて礼拝を済ませた。
『ちょっと、いいかしら?』
帰ろうとしていると誰かが話しかけてきたようだ、俺ではないだろうけど。
『ちょっとー?』
随分返事をしない奴も居たらしい、まあ俺には関係ないだろうが。
『聞こえないのかしら?』
と誰かが言い終わってすぐに俺は肩を叩かれた。
「俺か。」
さっきからの声の主はどうやら俺に話しかけていたらしい。
『そう、貴方よ。』
俺は振り向いて声の主を確認した。
「…」
どうやら彼女は魔物のようだ、褐色肌に銀髪の赤い瞳だったら砂漠地方の魔物だろうか…?
「何か?」
『貴方も一人なの?』
「見て分からないか?」
『そう…。』
「何か用が?」
『私も一人なのよ、もし良かったら理由を聞かせてもらえないかしら?』
「貴方が同じ条件を飲むなら話す。」
『分かったわ、なら私から話すわね。』
「ああ。」
『その前にとりあえずあっちのコンビニ行かない?』
「そうしよう。」
俺達は神社から出て近くのコンビニで会話を始めた。
『私は、簡単に言えばお一人様よ。』
「!?」
『友達はみんな旦那や恋人と予定があるらしいわ。』
「そうか…。」
『貴方は?』
「大体同じだ、俺も友人はみんな彼女と一緒かコミケ行った。」
『貴方もお一人様なのね…。』
「だからあいつらが不幸になるように」
『願ったの?』
「いや、途中で八つ当たりだと分かってやめた。」
『そう。』
「忌々しいな、あれ。」
『全くね、本当に忌々しいわ。』
俺達はカップルを睨みながら呟いた。
『どこかで飲みに行かない?お互いお一人様だし。』
「俺は酒は飲めない、飲んだら吐く。」
『そう、ならどこかのファミレスにでも行って暖を取らない?』
「空いてるかな?年末だし。」
『そういえば年末だったわね…。』
「どうするか…。」
『なら私の家に来ない?』
「いや、未婚の女性の家に出会ってすぐの俺が行くのはな…。」
『意外と用心深いわね。』
「いや、なんか良くないと思った。」
『そう…。』
「貴方の家はここからどのくらいの距離にあるんだ?」
『大体30分くらいね。』
「俺の家とそんなに変わらんな。」
『そうなの?』
「大体5分くらいしか違わない。」
『そうなんだ…。』
「…。」
『貴方の家、行っていい?』
「!?」
『その方が近いじゃない?』
「まあ、いいか。」
『?』
「親になんて言われるかな…。」
『大丈夫、魔物はそこら辺おおらかだからって言うから。』
「そういえば貴方はどんな種族の魔物なんだ?」
『私はダークエルフのリシアよ。』
「俺はジュン、見てわかる通り人間だ。」
『貴方はジュンね。』
「そうだ。」
『ならここで何か買っていきましょう。』
「だな。」
俺達はコンビニで食べ物を買って俺の家に向かった。
「リシア、一つ聞いていいか?」
『なに?』
「ダークエルフって、男を力づくで屈服させて奴隷にするイメージがあるんだが。」
『まあ私はともかく、八割以上のダークエルフは合ってるわね。』
「…。」
『私は無理に奴隷にする必要性はないと思うわね。』
「それって変わり者に見えるけど。」
『私はダークエルフとしては変わり者だと思うわ。』
「やっぱり変わり者なんだ…。」
『ええ、変わり者よ。』
「まあ無理に奴隷にすることに拘ってチャンスを逃すよりはいいのかもしれないな。」
『でしょう?』
「ここのアパートだ。」
『ここなんだ。』
「なら鍵を開けて入るかな。」
『お邪魔します。』
「親どっちも寝てるな、これ。」
『そう。』
「今暖房を入れる。」
『ありがとう。』
「さて、どうする?」
『とりあえず雑談しながら食べない?』
「だな。」
とりあえず暖を取りながら会話をしつつ買って来たものを食べた。
『ジュンは飲めないのにおつまみは好きなのね。』
「まあ、リシアも酒のつまみにスイーツはあんまりいないと思うけど。」
『違わないわね。』
何気ない話をしたり食べ物を食べたりしていると、リシアが真面目な顔で切り出してきた。
『いいかしら?』
「?」
『もう私達、付き合っちゃわない?』
「はい!?」
『真っ赤よ、顔。』
「酔った勢いで行っているなら仕方ない、けど人をからかって楽しいか?」
『酔ってはいるけど、この感情は本物よ。』
「!?」
『貴方、私がダークエルフで種族としての特徴も知っていたのに逃げなかったでしょう?』
「力づくになったら逃げたらいいと考えていた、それにリシアからは攻撃的な雰囲気が感じられなかったからな。」
『そのことからしても、私はジュンの人間性を垣間見たわ。』
「美化しすぎだ、俺は話を聞いて普通の性格だったら逃げようと思っていたからな。」
『だとしてもよ、貴方は私の話を聞いてくれた、私から逃げなかったからよ。』
「まさか、ダークエルフだからって疎まれた経験あるのか?」
『ご名答ね、言いがかりならしばけばいいけど怖がられて避けられるのは辛かったわ。』
「ここまで同じなのか。」
『?』
「俺も小さい頃から高校くらいまで避けられてたからな。」
『ならなおさら付き合いたいわね。』
「同じ痛みを知ってるしな、そうしようか。」
それからしばらくの間、リシアはこの世の幸せを全部手にしたような表情で何を言っても上の空だった。
『一回帰ってシャワー浴びて着替え取って来るわね。』
「即泊まり確定なんですねわかります。」
『貴方を他の娘に取られたくないもの。』
「なら着いて行くか?」
『ぜひそうして欲しいわ。』
一度リシアの家で着替えを取って来てまた戻って来たのはいいが、いつ犯されるか俺は気が気でなかった。
「さて、帰って来たはいいがどうする?」
『そうね、もうしばらく起きた後にそれから寝ましょう。』
「…だな。」
俺はいきなり付き合った当日に犯されると思っていたのでホッとした。
『いきなり犯しはしないわ、もっと距離を詰めてからよ。』
「え、あ、はい。」
『したいなら今からでもいいわよ?』
「もう少ししてからがいい。」
『まあ私もそうだけどね。』
「お、おう。」
それから、リシアの着替えで俺が部屋の外に出るときに「別に居ていいのに」と言われたりした。
「リシアはベッド使っていい、俺はこれ使うから。」
『別に一緒でもいいじゃない、私達はもう付き合ってるんだし。』
「でもな。」
『正直、貴方から離れたくないしね。』
「え?」
『だから一緒に、ね?』
結局、同じ布団で寝ることになった。
『大好きよ、ジュン。』
「!」
リシアは俺に抱き付いてきた。
「リシア。」
『なに?』
「俺は今幸せだ。」
『私もよ♪』
「久しぶりにこんな幸せな睡眠を取れるな。」
『本当に、ね。』
こうして夜は明けて行った。
「…朝か。」
俺がトイレに行こうと目を覚ますとリシアはいなくなっていた。
「儚い夢だったなぁ…。」
『何の夢かしら?』
「リシア!」
『夢は終わらないわ、むしろ今から始まるのよ♪』
「かもな。」
『ずっと一緒よ、これは現実なんだから。』
「現実…か。」
俺は今年一番の幸せをここで手にしたのかもしれないと思ってまた眠るのだった。
16/01/02 17:04更新 / サボテン