連載小説
[TOP][目次]
新生の剣
俺は木原政人、今日からお盆休みと言うこともあり家で壊れてしまった模造剣の修理をしようと窓を開けたところで家のそとから子供の悲しそうな声が聞こえてきた。

なんなんだ?と玄関の除き穴から見ると、そこには子供が自分で作ったのであろう玩具の剣をたくさん持ちその子の親とゴミ捨て場に向かうところだった。
見える範囲でもかなりの力作揃いで捨てるにはもったいないと感じた俺はその親子に声をかけ、何があったのかを聞いてみることにした。

彼ら曰く作ったのは良いが数が多すぎて置場所が無くなったから捨てるしかないとなったらしいが俺は「それなら少し待っていてくれ」と俺が前に修理した短刀と長刀で一対の模造刀を持ってきて彼らに見せ「これらの剣全てを素材にして新しい1本の剣にする、だから捨てるのは待っていてもらえないだろうか?」と言うと父親の方は「これ、あんたが造ったのか…?」と言い俺は「そうだ、見てほしい」と模造刀を渡すと特に息子の方は食い入るように見ている…

少しして息子の方は「なら、お願いします…捨てるのはかわいそうだから…」と頭を下げ、俺はその彼の力作を受け取り、加工部屋に入る。
まずはあの少年の剣全てから思いをひとつにまとめるように目を閉じて持って修理予定の模造剣に込める動作をして準備完了だ。

次にベースにする予定の模造剣の素材を確認してプラスチックの系譜の樹脂であることを確認し、溶かしてパーツの型に流し込んでいく。火種には彼が作った紙製の剣の一部と木製の剣の持ち手のパーツを切り出した残りの部分を使い炎として新しい剣の素材になってもらう。

その間にプラスチックを切り出して作ったであろう剣と模造剣のパーツが同色だったので素材を調べてみると、どうやら同じ素材だったので合わせて溶かし、さらにパーツの型に入れていく。

パーツが冷めて固まったら次にやることは装飾のパーツを作ることだ、ラインをいれたり電飾をパーツに取り付けたりしつつバランスを整えていく。

粗方形が出来上がり、後は鞘を作ろうとすると『鞘はなくていい!!』と言う声が聞こえた、部屋には誰もいないはずだが…と思い疲れているのだろうと思い今日の作業はこの辺りにすることにした。

翌日も細かな調整や柄頭を取り付け、鞘ではなく背中につけるタイプのホルスターを合成皮で作り、背中に巻くベルトの長さも調整できるようにしていく…
最後にとっておきとして用意しておいた玉…これは数ヶ月前に模造剣の修理を友人から頼まれ、取りに来たときに友人の奥さんから『これ、飾りとして使えないかしら?』ともらったものだ。見ただけで良いものとわかったのでとっておきとして残しておいたものだがあの子なら大切にしてくれる。彼の持っていた剣は全て愛されていたのがわかるものだったから託す気になった。

完全に完成した。そう思っていると凄まじい深紅の光が剣から迸り目を開けていられなくなる…!!













光が収まり目を開けた俺が見たのは、先程完成した剣を持つ深紅の瞳と黒い髪をした剣と同じようなコンセプトの際どい鎧を着た妖しい美女がいた。

俺は「お前は、何者だ…?」と聞くと彼女は『お父様、捨てられ朽ちていくだけの私達をひとつに束ねてこんな新しい姿まで与えてくれて本当にありがとう…♪』と剣を床に置いてお辞儀をする。そういやあの玉をくれたのは魔物娘だったな…と思いだし「つまりおもちゃの剣から魔物娘に転生したってことか…」と言うと彼女は『そうよ、もとがおもちゃとはいえお父様の願いとあの子の想いによって私は玩具ではなくなり魔剣として生まれ変わったわ…♪』と嬉しそうに言う。

俺は「と、とりあえず完成したからあの子を呼ぶ。もとの姿、あの剣の姿に戻れるか?」と聞くと彼女は『そうね…確かにいきなりこの姿では驚いてしまうわね…』と言いもとの姿に戻る。俺は丁重に彼が俺に渡した剣のうち紙製のものを使い包みとして使い彼ら親子に連絡を取る。

十分もかからずに彼ら親子はやってきた、元々家が近所なのもあったが彼は「どんなのになったの?」と期待半分不安半分な顔で俺を見る。

俺は先程まで魔物娘の姿をしていた剣を渡す、彼は包みを解いて剣を見る…彼の表情が一気に歓喜と興奮に満ちたものになる。
彼は「こんなすごいのになったの!?」と驚いている。俺は「さらに」と彼に袈裟懸けでベルトを巻いて締め、背中に担がせるようにする。彼は『背中につけるタイプにしたんだね…♪♪』と上機嫌だ。そのまま彼の剣たちをどう使ったかを説明すると「紙の剣はこの剣を繋ぐための火になって残りは包みになったんだね」と言い俺は「木のやつは持ち手とかに使わせてもらった」と返す。

彼ら親子は何度もお礼を言い帰っていった。お金を彼の父は出してきたが俺としては趣味でやっているものだしと言うが引き下がってくれなかったので壊れてしまった模造剣の代金の半分だけをもらうことにした。

そして俺はこの後衝撃的なものを目にすることになる…

続く
24/08/16 20:34更新 / サボテン
戻る 次へ

■作者メッセージ
どうも、サボテンです

次回に続きます

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33