ルミナス王と緑のドラゴン
良い魔族の読み物
『ルミナス王と緑のドラゴン』
作「ルキフグス・ディオクレイス」
出版「魔導社」
むかしむかし、まだ今の魔王さまもうまれておらず、たくさんの魔物が恐ろしいかたちだったころ。
あるところに、ふしぎな力を使う強い騎士がいました。
名前はルミナス、ぴかぴかの銀のよろいと力強い槍さばき、アンティノラ(※1)を出発、ながいながい旅をはじめました。
旅の最中、ルミナスは森の中で道に迷い、ふしぎな町を見つけました。
そこはデーモンとデビルが暮らす魔族の町でした。
ですがどうしたことでしょうか、町を歩く魔族たちはルミナスが来たのに誰も見向きもしません。(※2)
ふしぎに思ったルミナスは、町の一番偉い王さまに会いに行くことにしました。
王さまは元気がなく、なんだか思いつめているようでした。
「王さま、何か私に出来ることがあるなら言ってください」
ルミナスがそう言うと、やっと王さまは話しはじめました。
「私の娘が、おそろしい緑のドラゴン、ひすいりゅうのエメラダにつかまってしまった」
ひすいりゅうエメラダ、口からはく炎はなんでも燃やし、見た人は怖くて怖くてたまらなくなる恐怖のドラゴン。
「娘を助けてくれ、白銀(※3)のルミナスよ、助けてくれたならはどんなほうびもきみにあげよう」
「おまかせください王さま、私がひすいりゅう、エメラダをやっつけてみせます」
こうしてルミナスは、ひすいりゅうエメラダを倒すために彼女がいるという古いお城に向かいました。
このお城、カイーナの城(※4)に辿り着いたルミナスは、手にした大きな青龍偃月刀(※5)を持ってエメラダに立ち向かいました。
ひすいりゅうエメラダの力はつよく、またそのからだに生えたうろこはきずつけることも出来ませんでした。
ですがルミナスは、お姫さまをたすけるために力を尽くしました。
どれだけ戦ったでしょうか、ルミナスはつかれ、エメラダもまたからだを引きずっていました。
その時、城の大きな塔の中からいっぽんの長い帯(※6)が投げられました。
お姫さまが投げたものでしょう、ルミナスはそれを手にすると、エメラダの背中にとびのりました。
あばれるエメラダを押さえつけ、帯を手綱(※7)のように口に咥えさせてから、ルミナスは背中にしがみつきます。
振り解こうとするエメラダに、しがみつくルミナス、しばらくそんなことがつづきます。
最後に勝ったのはルミナスでした、彼は見事エメラダを乗りこなすと、デーモンのお姫さまを乗せ、町に帰りました。
町中大騒ぎです、誰がドラゴンよりもずっと弱い人間がドラゴンを乗りこなすと考えたでしょうか。
王さまも大喜び、ですがエメラダの首を刎ねようとしたとき、ルミナスは止めました。
ドラゴンが悪いのではなく、悪くなるようにした神さまが悪い、そうルミナスは王さまをせっとくし、なんとかたすけてもらいました。
人間なのに魔族や魔物をたすけるためにがんばるすがたに、王さまは感激しました。
デーモンのお姫さまと結婚し、この魔族の町を治めてほしい、願いをうけたルミナスはこころよく引き受けました。
こうしてルミナスはデーモンのお姫さまと結婚し、末長く暮らしました。
このルミナスはまたの名前をルミナス一世、魔族都市ジュデッカの初めの人間の王さまです。
これが今でも続くジュデッカが人間と仲良しの理由なのです。
おしまい
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※1現在のレスカティエ近くにあった町
※2この頃は魔物は人間と争い、殺すこともあった(現在はありません)
※3しろがね、銀色のこと。
※4現在のカイーナ市のルミナリエカイーナ城。
※5せいりゅうえんげつとう、長い棒の先に刀がついた武器。
※6おび、着物を着るときに押さえるために腰につける細長い布。
※7たづな、馬や牛に乗るときに使う紐、これで動物をあやつる。
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作者あとがき
この『ルミナス王と緑のドラゴン』は私の故郷である魔族都市ジュデッカに伝わる一種の神話的伝説であります。
ですが、騎士がお姫さまを助けるためにドラゴンに挑むという体裁の話は誰もが一度くらいは耳にしたことがあるかと思います。
この物語の一番の特徴は、未だ魔物は人間の味方でないにも関わらずルミナス王は魔族を助ける点です。
ルミナス王のこの魔物と人間で共存したいという考え方は、後の現魔王陛下や魔物たちにも通じる理念です。
どうかこれを読んだみなさん一人一人がルミナス王のように強く優しい人になって、人間との共存を願ってくれることを祈ります。
「ルキフグス・ディオクレイス」
『ルミナス王と緑のドラゴン』
作「ルキフグス・ディオクレイス」
出版「魔導社」
むかしむかし、まだ今の魔王さまもうまれておらず、たくさんの魔物が恐ろしいかたちだったころ。
あるところに、ふしぎな力を使う強い騎士がいました。
名前はルミナス、ぴかぴかの銀のよろいと力強い槍さばき、アンティノラ(※1)を出発、ながいながい旅をはじめました。
旅の最中、ルミナスは森の中で道に迷い、ふしぎな町を見つけました。
そこはデーモンとデビルが暮らす魔族の町でした。
ですがどうしたことでしょうか、町を歩く魔族たちはルミナスが来たのに誰も見向きもしません。(※2)
ふしぎに思ったルミナスは、町の一番偉い王さまに会いに行くことにしました。
王さまは元気がなく、なんだか思いつめているようでした。
「王さま、何か私に出来ることがあるなら言ってください」
ルミナスがそう言うと、やっと王さまは話しはじめました。
「私の娘が、おそろしい緑のドラゴン、ひすいりゅうのエメラダにつかまってしまった」
ひすいりゅうエメラダ、口からはく炎はなんでも燃やし、見た人は怖くて怖くてたまらなくなる恐怖のドラゴン。
「娘を助けてくれ、白銀(※3)のルミナスよ、助けてくれたならはどんなほうびもきみにあげよう」
「おまかせください王さま、私がひすいりゅう、エメラダをやっつけてみせます」
こうしてルミナスは、ひすいりゅうエメラダを倒すために彼女がいるという古いお城に向かいました。
このお城、カイーナの城(※4)に辿り着いたルミナスは、手にした大きな青龍偃月刀(※5)を持ってエメラダに立ち向かいました。
ひすいりゅうエメラダの力はつよく、またそのからだに生えたうろこはきずつけることも出来ませんでした。
ですがルミナスは、お姫さまをたすけるために力を尽くしました。
どれだけ戦ったでしょうか、ルミナスはつかれ、エメラダもまたからだを引きずっていました。
その時、城の大きな塔の中からいっぽんの長い帯(※6)が投げられました。
お姫さまが投げたものでしょう、ルミナスはそれを手にすると、エメラダの背中にとびのりました。
あばれるエメラダを押さえつけ、帯を手綱(※7)のように口に咥えさせてから、ルミナスは背中にしがみつきます。
振り解こうとするエメラダに、しがみつくルミナス、しばらくそんなことがつづきます。
最後に勝ったのはルミナスでした、彼は見事エメラダを乗りこなすと、デーモンのお姫さまを乗せ、町に帰りました。
町中大騒ぎです、誰がドラゴンよりもずっと弱い人間がドラゴンを乗りこなすと考えたでしょうか。
王さまも大喜び、ですがエメラダの首を刎ねようとしたとき、ルミナスは止めました。
ドラゴンが悪いのではなく、悪くなるようにした神さまが悪い、そうルミナスは王さまをせっとくし、なんとかたすけてもらいました。
人間なのに魔族や魔物をたすけるためにがんばるすがたに、王さまは感激しました。
デーモンのお姫さまと結婚し、この魔族の町を治めてほしい、願いをうけたルミナスはこころよく引き受けました。
こうしてルミナスはデーモンのお姫さまと結婚し、末長く暮らしました。
このルミナスはまたの名前をルミナス一世、魔族都市ジュデッカの初めの人間の王さまです。
これが今でも続くジュデッカが人間と仲良しの理由なのです。
おしまい
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※1現在のレスカティエ近くにあった町
※2この頃は魔物は人間と争い、殺すこともあった(現在はありません)
※3しろがね、銀色のこと。
※4現在のカイーナ市のルミナリエカイーナ城。
※5せいりゅうえんげつとう、長い棒の先に刀がついた武器。
※6おび、着物を着るときに押さえるために腰につける細長い布。
※7たづな、馬や牛に乗るときに使う紐、これで動物をあやつる。
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作者あとがき
この『ルミナス王と緑のドラゴン』は私の故郷である魔族都市ジュデッカに伝わる一種の神話的伝説であります。
ですが、騎士がお姫さまを助けるためにドラゴンに挑むという体裁の話は誰もが一度くらいは耳にしたことがあるかと思います。
この物語の一番の特徴は、未だ魔物は人間の味方でないにも関わらずルミナス王は魔族を助ける点です。
ルミナス王のこの魔物と人間で共存したいという考え方は、後の現魔王陛下や魔物たちにも通じる理念です。
どうかこれを読んだみなさん一人一人がルミナス王のように強く優しい人になって、人間との共存を願ってくれることを祈ります。
「ルキフグス・ディオクレイス」
19/08/21 23:13更新 / 水無月花鏡