来訪者の手記
来訪者の手記
一日目
念願の初海外旅行である、場所はアメリカ合衆国、マサチューセッツの地方都市アーカムシティである。
アーカムにはかの有名なミスカトニック大学や、魔女狩りを逃れたギザイア・メイスンの隠れ家もある、今から楽しみだ。
さて、などと書いている内に私の乗る『理梨夢航空666番便』は出発するようだ。
何故か他に乗客は女性しかおらず、CAも信じられないような美女揃いだが、眼福と思うとしよう。
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二日目
信じられないことが私の身に起こってしまった。
というのも、飛行機がバミューダ海域に差し掛かるころ、いきなり雷とも爆発ともつかぬ音がして、重量が反転したのだ。
屋根に転がりながら見上げると、全ての乗客の背中からは悪魔のような翼が生えている。
信じられない光景に自分の目を疑う間もなく、私は闇の中へと落ちていった。
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三日目
気づくと、どうにもわからないまま雪原の中にいた。
昔から寒さに強く、風邪も滅多にひかない私にとっては微風のような気温、ともかく私は先へ進むことにした。
こんな場所にも関わらず、巨大な宮殿があった。
しかし宮殿の部屋に案内してくれた女の子は、明らかに人間ではないにも関わらず何とも言えない色気があった。
さて、部屋に行く途中に柱の影からこちらを覗く人がいたが、誰だろうか?
部屋では尋問、何人かの女の子が担当についたが、その中心人物は信じられないような美しい女の子。
すらっとした身体に美しくも冷たい瞳、一目惚れとはこのことか。
とりあえず日本のことを話したが、時刻も遅いため、尋問はある程度にとどめられる。
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四日目
出てくる食べ物は見たことのないものも混じっていたが、大半は見覚えのある品ばかりだった。
どれも非常に美味しいため、ついつい食べてしまったが、窓の外で氷の女の子が表情一つ変えずに巨大な蠍を捌いているのを見て、寒気がした。
さて、今日も女王(仮)は私の尋問に現れ、様々なことを訊いてきた。
今回はここに来た原因のこと、私は正直に飛行機に乗っている中、バミューダ海域で事故に逢い、流れ着いたことを話した。
だが、何故かはわからないが、揺れ動く飛行機の中でサキュバスのような乗客を目撃したのは黙っていた。
女王(仮)は真剣に私の話しを聞いてくれてはいたが、どうも途中から別のことを考えていたように感じた。
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五日目
どうにも女王(仮)では判断がつかないらしく、知り合いの物知りを呼ぶことにしたらしい。
尋問そのものはなかったため、ずっと部屋にいたのだが、時として別に大した用事もないのに氷の女の子たちが来ることがあった。
来ては部屋の片付けをしたり、飲み水を置いて行ったりしてくれていたのだが、一時間おきに来るため、どうも来る理由がよくわからない。
もしかしたら、私を信用出来るかどうかを見定めようとしているのかもしれない。
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六日目
女王(仮)による尋問が再開されたが、どうにも様子が違う。
前までと同じくらい、クールな、表情を一切変えないような冷たい相貌は変わらないのだが、どこか、楽しんでいるような。
ともあれ、今日は『グラキエス』やら『ホワイトホーン』やら聞かれたが、私には聞き覚えのない単語だ。
しかし、『ゆきおんな』やら『セルキー』なんかは聞いたことがある、勿論伝説の中での話しではあるが。
何故そんなことを聞いてきたかは不明だったが、そんな名前の魔物、否こちらでは魔物娘と呼ぶらしいが、とにかくそんな存在がいるらしい。
なんとなく感じていたが、やはりここは異世界らしい。
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七日目
意外と快適な異世界に流れ着いて早くも一週間が経とうとしている。
最近では女王(仮)ではなく、氷の女王も自分のことを話すようになってきた。
どうやら彼女の周りにはグラキエスの女の子しかおらず、男性とまともに話しをしたのは私が初めてのようだ。
私も彼女のような美しい女の子と話しをしたのは初めてだが、ともあれ、初めて同士にしては意外と話しが続く。
私としてはこの世界や彼女自身のことに関心があったが、どうも彼女は私を気にしているのか、故郷のことを良く訊いてきた。
向こうで私は神隠しの扱いかもしれないが、せっかく彼女と友人になれたのだ、もう少しいてもバチは当たるまい。
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八日目
氷の女王の知り合いとやらの魔物娘がようやくやってきた。
リリムという種族で、聞くところによれば魔物娘の最高位、魔王の娘であるらしい。
なるほど、確かに凄まじい力と、途方もないような圧力を感じる、しばらく魅入っていたが、別方向から何やら殺気を感じて、目をそらした。
さて、リリムの話しによれば、私はサキュバスの飛行機に乗り合わせてしまい、バミューダ海域に突入したらしい。
あの海域は昔から不思議なことがあるが、どうやら世界の境界線があやふやで、異世界への扉が絶えず開閉しているようだ。
リリムの力を使えばどうやら、私を帰還させることも出来るようだが、どうしたものか私は決めあぐねている。
結論は先延ばしにさせてもらうとしよう。
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九日目
一体全体何があったのかさっぱりわからない。
リリムに氷の女王が寝込んでいることを知らされ、見舞いを勧められたのが全ての始まりだ。
友人が寝込んでいるのに何もしないのは礼節にもとる、すぐに私は氷の女王の見舞いにいくことにしたわけだが。
部屋に入り、彼女の寝台に近づくや否や、いきなり中に引きずり込まれ、凄まじい凍気を浴びせられた。
その凍気たるや、身体はおろか心も凍てつきそうになるくらいである。
私は、完全に我を失い、気づけば彼女の唇を奪ってしまっていた。
これは彼女も予想外だったのか、かすかに瞳の奥に驚くような色が見えたが、結局それまで。
次の瞬間には着ていた服を脱がされ、そのまま・・・。
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十日目
まさか彼女も私のことが好きだったとは思わなかった。
私は今日、グラキエスのいる前で氷の女王にプロポーズをして、彼女の夫となることを誓った。
これからは彼女とともに歩んでいくことになるが、どうもあのリリムは私と女王を結婚させようとしていたらしい、完全にその通りになってしまった。
しかしこうして見返すと、手記には氷の女王のことしかかいていないな・・・。
一日目
念願の初海外旅行である、場所はアメリカ合衆国、マサチューセッツの地方都市アーカムシティである。
アーカムにはかの有名なミスカトニック大学や、魔女狩りを逃れたギザイア・メイスンの隠れ家もある、今から楽しみだ。
さて、などと書いている内に私の乗る『理梨夢航空666番便』は出発するようだ。
何故か他に乗客は女性しかおらず、CAも信じられないような美女揃いだが、眼福と思うとしよう。
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二日目
信じられないことが私の身に起こってしまった。
というのも、飛行機がバミューダ海域に差し掛かるころ、いきなり雷とも爆発ともつかぬ音がして、重量が反転したのだ。
屋根に転がりながら見上げると、全ての乗客の背中からは悪魔のような翼が生えている。
信じられない光景に自分の目を疑う間もなく、私は闇の中へと落ちていった。
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三日目
気づくと、どうにもわからないまま雪原の中にいた。
昔から寒さに強く、風邪も滅多にひかない私にとっては微風のような気温、ともかく私は先へ進むことにした。
こんな場所にも関わらず、巨大な宮殿があった。
しかし宮殿の部屋に案内してくれた女の子は、明らかに人間ではないにも関わらず何とも言えない色気があった。
さて、部屋に行く途中に柱の影からこちらを覗く人がいたが、誰だろうか?
部屋では尋問、何人かの女の子が担当についたが、その中心人物は信じられないような美しい女の子。
すらっとした身体に美しくも冷たい瞳、一目惚れとはこのことか。
とりあえず日本のことを話したが、時刻も遅いため、尋問はある程度にとどめられる。
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四日目
出てくる食べ物は見たことのないものも混じっていたが、大半は見覚えのある品ばかりだった。
どれも非常に美味しいため、ついつい食べてしまったが、窓の外で氷の女の子が表情一つ変えずに巨大な蠍を捌いているのを見て、寒気がした。
さて、今日も女王(仮)は私の尋問に現れ、様々なことを訊いてきた。
今回はここに来た原因のこと、私は正直に飛行機に乗っている中、バミューダ海域で事故に逢い、流れ着いたことを話した。
だが、何故かはわからないが、揺れ動く飛行機の中でサキュバスのような乗客を目撃したのは黙っていた。
女王(仮)は真剣に私の話しを聞いてくれてはいたが、どうも途中から別のことを考えていたように感じた。
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五日目
どうにも女王(仮)では判断がつかないらしく、知り合いの物知りを呼ぶことにしたらしい。
尋問そのものはなかったため、ずっと部屋にいたのだが、時として別に大した用事もないのに氷の女の子たちが来ることがあった。
来ては部屋の片付けをしたり、飲み水を置いて行ったりしてくれていたのだが、一時間おきに来るため、どうも来る理由がよくわからない。
もしかしたら、私を信用出来るかどうかを見定めようとしているのかもしれない。
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六日目
女王(仮)による尋問が再開されたが、どうにも様子が違う。
前までと同じくらい、クールな、表情を一切変えないような冷たい相貌は変わらないのだが、どこか、楽しんでいるような。
ともあれ、今日は『グラキエス』やら『ホワイトホーン』やら聞かれたが、私には聞き覚えのない単語だ。
しかし、『ゆきおんな』やら『セルキー』なんかは聞いたことがある、勿論伝説の中での話しではあるが。
何故そんなことを聞いてきたかは不明だったが、そんな名前の魔物、否こちらでは魔物娘と呼ぶらしいが、とにかくそんな存在がいるらしい。
なんとなく感じていたが、やはりここは異世界らしい。
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七日目
意外と快適な異世界に流れ着いて早くも一週間が経とうとしている。
最近では女王(仮)ではなく、氷の女王も自分のことを話すようになってきた。
どうやら彼女の周りにはグラキエスの女の子しかおらず、男性とまともに話しをしたのは私が初めてのようだ。
私も彼女のような美しい女の子と話しをしたのは初めてだが、ともあれ、初めて同士にしては意外と話しが続く。
私としてはこの世界や彼女自身のことに関心があったが、どうも彼女は私を気にしているのか、故郷のことを良く訊いてきた。
向こうで私は神隠しの扱いかもしれないが、せっかく彼女と友人になれたのだ、もう少しいてもバチは当たるまい。
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氷の女王の知り合いとやらの魔物娘がようやくやってきた。
リリムという種族で、聞くところによれば魔物娘の最高位、魔王の娘であるらしい。
なるほど、確かに凄まじい力と、途方もないような圧力を感じる、しばらく魅入っていたが、別方向から何やら殺気を感じて、目をそらした。
さて、リリムの話しによれば、私はサキュバスの飛行機に乗り合わせてしまい、バミューダ海域に突入したらしい。
あの海域は昔から不思議なことがあるが、どうやら世界の境界線があやふやで、異世界への扉が絶えず開閉しているようだ。
リリムの力を使えばどうやら、私を帰還させることも出来るようだが、どうしたものか私は決めあぐねている。
結論は先延ばしにさせてもらうとしよう。
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九日目
一体全体何があったのかさっぱりわからない。
リリムに氷の女王が寝込んでいることを知らされ、見舞いを勧められたのが全ての始まりだ。
友人が寝込んでいるのに何もしないのは礼節にもとる、すぐに私は氷の女王の見舞いにいくことにしたわけだが。
部屋に入り、彼女の寝台に近づくや否や、いきなり中に引きずり込まれ、凄まじい凍気を浴びせられた。
その凍気たるや、身体はおろか心も凍てつきそうになるくらいである。
私は、完全に我を失い、気づけば彼女の唇を奪ってしまっていた。
これは彼女も予想外だったのか、かすかに瞳の奥に驚くような色が見えたが、結局それまで。
次の瞬間には着ていた服を脱がされ、そのまま・・・。
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十日目
まさか彼女も私のことが好きだったとは思わなかった。
私は今日、グラキエスのいる前で氷の女王にプロポーズをして、彼女の夫となることを誓った。
これからは彼女とともに歩んでいくことになるが、どうもあのリリムは私と女王を結婚させようとしていたらしい、完全にその通りになってしまった。
しかしこうして見返すと、手記には氷の女王のことしかかいていないな・・・。
16/11/06 20:57更新 / 水無月花鏡
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