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第三十八話「突撃」




神の戦車メルカバー、ゴルゴスが建造した完成型のプルガトリウムとも呼ぶべき巨大な移動要塞。


その主砲は四天王による結界すらも破壊して京都ボルテクスを地上へと呼び戻した。



遮那たちはこの超兵器を沈黙させるべくカテドラル屋上の戦艦プルガトリウムに集結、策を練るのだった。








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カテドラル屋上プルガトリウムの艦橋、スクリーンにはミカドの都国の上空に浮かぶ巨大な移動要塞が写っている。


神の戦車メルカバー、その姿だ。



「神の戦車メルカバー、現在のところ動きはないけれど、いつまた動き出すかはわからないわ」


ミカエルの説明に、遮那は頷く。


「あれを破壊しない限りこちらに勝機はない、どうすれば良い?」


メルカバーの主砲による一撃は容易く四天王の結界を破壊し、挙句京都ボルテクスを解除してしまうほどの威力。



直撃でもしてしまえば、国家の一つや二つは確実に蒸発するだろう。



「メルカバーは主砲を打つ間正面のシールドは解除される、主砲を照射している間にシールド発生装置を破壊出来れば攻撃出来るようになるわ、問題は・・・」



メルカバーの主砲は強力である、まず当たれば無事では済まず、囮になる者は確実に助からないだろう。



「とにかく可能な限り長時間主砲を照射させ、続けざまにシールド発生装置と主砲を破壊する必要があるわ」



しばらく一同黙り込んでいたが、しばらくして遮那は閉ざしていた瞳を開いた。




「私の防御障壁を最大にまで展開すれば十秒ほどならば耐えられるはずだ」


「遮那さまっ!?」


明らかに危険な任務に志願しようとしている遮那、真由は悲鳴じみた叫びを上げたが、今更止まる遮那ではない。


「サナト、貴方死ぬつもり?、仮にある程度は耐えられても、メルカバーの主砲は強力、場合によっては消し飛ぶわよ?」


ミカエルの追求に、遮那は軽く手を振る。


「話しは最後まで聞け、プルガトリウムにもメルカバー同様に無限動力炉ヤマトが搭載されている、ここからエネルギーを供給すれば障壁はメルカバーの主砲並みには強化出来るはずだ」



前にミカエルがやって見せたように、無限動力炉ヤマトからエネルギーを取り込めば一時的に力が上がる。


これを障壁に転用すればメルカバーの主砲に耐えられるはずだ。


「メルカバーの足止めはそれでなんとかなる、その間にみんなで力を合わせてなんとか神の戦車を撃墜してくれ」


もしメルカバーの撃墜が間に合わず、プルガトリウムの無限動力炉ヤマトが限界を迎えればどうなるか、それが想像できない遮那ではない。


だが、遮那はここまできた仲間を、かつての敵を信じていた。


信じているからこそ、自らもっとも危険な任務に志願することが出来たのだ。




「うむむ・・・」


遮那の説明にガヴリエルは少しだけ考え込む。


「しかし、メルカバーの主砲とプルガトリウムのエネルギーを計算に入れてもサナトが耐えられる時間は僅かしかない、下手をすれば副砲や艦載機による攻撃を受ける可能性も」


防御を全て正面に回している以上それ以外の場所には脆弱にならざるを得ない、真上や真下から攻撃されればひとたまりもない。



「それは私たちグリゴリがなんとかするよ」


ルシファーはにこやかに頷いたが、その視線は鋭く、遮那に向けられている。


「サナトお兄ちゃんはメルカバーの主砲を捌くことだけ考えてれば良いよ?」



「・・・助かる」


短く呟く遮那だが、その表情には微かに笑みが浮かんでいた。



天使、魔物娘、人間、共通の脅威に対して共に戦えることが嬉しいのだ。



「・・・意見は出尽くしたみたいね」


ミカエルはそう告げると、ふう、と軽く息を吐いた。


「そうなればプルガトリウムを制御し、遮那さまを手助けする助手が必要です」


真由の言葉に、遮那は目つきを厳しくした。



「・・・必要ない、私一人でなんとかなる」


「いえ必ず必要になります、そしてそんな危険な役目はアンデットである私以外にはあり得ません」


しばらく遮那と真由は見つめ合っていたが、やがて遮那は瞳を閉じた。



「何を言っても無駄だな?」



「当たり前です、どれくらい遮那さまは私と一緒にいるのですか?」



「では、好きにしろ」



遮那が破顔した直後、艦橋内部に警報が鳴り響いた。



「・・・メルカバーが動き出したみたいね」



ミカエルの言葉に遮那らは歯をくいしばる。




「作戦を開始するわ、各員に主神さまのご加護があらんことを」







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カテドラルの屋上からプルガトリウムが発進する、その甲板には遮那が立ち地平線の果てを見つめている。



『こちら艦橋、遮那さま、ご用意はいいですか?』



「ああ、いつでも良いぞ?」



短く答える遮那、ゆっくりとプルガトリウムは浮上すると、カテドラルから発進した。



高速で進むプルガトリウム、メルカバーはすぐに見えてきた。



「来るぞっ!」


遮那は無限動力炉ヤマトからエネルギーを取り込むと、戦艦の前方に強化された防御障壁をはりめぐらす。



瞬間、メルカバーの主砲が赤く輝き、凄まじい威力の光波熱線がプルガトリウムめがけて放たれる。



「はあっ!」


しかしメルカバーの主砲はプルガトリウム正面の防御障壁により弾かれ、本艦を容易く破壊出来ない。




「っ!、頼むぞ、みんな・・・」



主砲による攻撃は無理と見たのか、メルカバー正面の副砲が全てプルガトリウムに向けられる。



だが、副砲がエネルギーをチャージする前に、空の彼方から現れたルシファーがシールドの合間を縫ってメギドの炎を放つ。



「脆い脆い、シールドに頼りすぎだよ?」


だがルシファーのいる位置からは主砲もシールド発生装置も破壊出来そうにない。



「案ずるでない」



いつの間にいたのか、広目天はその手に持っていた巨大な槍を構える。



「エロス神様と帝釈天様の名において貴様らを討つ」


瞬間広目天はすさまじい気合とともに槍をメルカバーめがけて投擲したが、さすがは四天王の槍、ただの槍ではない。


シールドそのものを貫通し、メルカバーの内部に突き刺さった。



「むっ!、シールドが破られたかっ!」



障壁を張りながらも遮那はメルカバー全体のシールドが消えてなくなったことを察知していた。



『チャンスは今しかありません、遮那さまっ!」


真由の言葉に遮那は頷くと、足元の空間を引き裂き、無限動力炉ヤマトのエネルギーを含めた力をメルカバーめがけて放つ。



「受けてみろ、『地母、晩餐』っ!」



凄まじいエネルギーの放流にメルカバーは主砲を破壊され、完全な無防備に陥る。



「よし、下がってなさい、サナト、マユ」


地上にいた四大天使は、円陣を組むと、それぞれのエネルギーを高め、中心に向けて放出する。



「受けてみなさい、『偉大秘法・四大天使(アルスマグナ・セラフィム)』っ!」



瞬間四大天使のエネルギーが一つにまとまり、シールドが消滅したメルカバーを直撃する。


あちこちが爆発し、ゆっくりと降下を始めるメルカバーだが、まだ終わったわけではなさそうだ。


残されていた一部の滑走路から無人の艦載機が大量に飛び立つ。




「最後まで往生際の悪い・・・」


『しかし遮那さま、厄介なことには違いありません』



確かに放置していれば厄介なことになる、なんとかしなければ。



「それは我々に任せてもらいたい」



三津島は虎徹を引き抜くと、全身からエネルギーを放ち、刀身に力を込める。


「一刀両断っ!」


高速で引き抜かれた刀から放たれたエネルギーは衝撃となって近づいてきた艦載機を全て撃墜する。


「ふん、見たか、これこそが人間の底力だ」


褌姿になりながら、三津島は刀を鞘に納める。


「これで、とどめだっ!」


だめ押しとばかりに放たれるプルガトリウムの主砲と遮那の破邪光弾。



眩く煌めく二つの閃光は一つの力となって収束し、シールドと主砲を失い無防備となったメルカバーを直撃した。



これにより、ようやくメルカバーは沈黙し、ミカドの都国の郊外に墜落した。




「ようやく、終わりか」



神の戦車メルカバーの撃破、それは長きに渡る神と魔物娘の、戦いの終焉も意味していた。


『いえ、まだのようですよ?』



プルガトリウムの艦橋、真由からの通信とともに、野太い鬨の声とともに、おびただしい数の兵士がメルカバー、そしてミカドの都国から現れた。


「まだ、やるつもりか・・・」


あまりに数が多い、ざっと見渡しただけでも十万は下るまい。



『遮那さま、やるしかありません』



真由の言葉に、遮那は覚悟を決めた。
16/10/08 21:37更新 / 水無月花鏡
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■作者メッセージ
みなさまこんばんは〜、水無月であります。

人間、魔物娘、天使、本来ならば敵対していた種族による初めての共同作業でありました。

お話しもクライマックス、遮那とは違った中庸の形を掲げるゴルゴス、最後の戦いが始まります。

では今回はこの辺りで。

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