連載小説
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「カンドルの騎士」
 「なんというか、意外だな」

 「……………………そうだね」

 となりで酒ではなく、果実を絞り砂糖を入れたものをトウギは飲みながら頷く

 そして、その隣ではべろんべろんに酔っぱらい、テーブルに突っ伏して寝ているテニファ様がいた

 お忍びということもあり恰好は旅人がよく着る服だが、旅人は深酒をしないので余計に目立つ

 飲み始めてから半刻もたっていない、というか、一杯で酔っ払って寝てしまった。

 この人、下戸だ、相当な下戸だ

 やれやれ、といった風にトウギは着ている自分の外套を取ると、テニファ様にかける。

 俺たちが酒を飲んでいる場所はテニファ様のお勧めの店、といっても貴族連中御用達の高い食事処ではなく、二階が宿屋となっている一階が大衆食堂を兼ねているいった感じの酒場で、まぁ、俺とトウギにとっては慣れない町なので此処ぐらいがちょうどいい酒場だ

 ちなみに、俺たち、といったが、俺とトウギ、そしてテニファ様だけではない、店を貸し切り状態にして飲んでいる近衛騎士団特殊部隊、今日は非番の皆さまも一緒だ。

 テニファ様と城を出たところを見つかり、テニファ様の護衛という名目で飲みに来ている、なんというか、戦場で助けていただいた時には精鋭部隊、と言った感じであったが、どんちゃん騒ぎを起こして酒を飲んでいる彼らを見ていると、やはり、どこの騎士も変わらないのだなあ、としみじみと思う
 血も涙もない、地獄の騎士団、ローグスロー騎士団と魔物どもからいわれていたが、戦いが終わると大体こんな感じであったからな、ひと月ほど前のことなのに、なんだか懐かしい

 トウギも同じようなことを思っていたのか、特殊部隊の騎士様方を懐かしいものを見る目で見ていた。
 だから、紛らわすために俺は酒を飲み、トウギは料理を無心で口に運ぶ

 ふと、トウギの手が止まる

 「なぁ、セルセ」

 「なんだ?トウギ」

 「これ見てると、アレを思い出さない?」

 トウギが手に持っているのは、羊の肉を串にさして焼きあげた料理だ、それを見て、ふと思い出す料理があった、いや、料理と呼べる代物だったろうかあれは

 「……思い出すなぁ、あれはもう4年前か?死ぬほど暑かったよな、エンメルサード国は……」

 『王衆連盟』に加盟する国で魔物に関する問題などが発生し、その国が他国の支援を要請した場合など、支援する国の軍が派遣されることがある、4年前のエンメルサード国も魔物の問題が深刻化し、国内軍では収拾がつかなくなりつつあり、各国に要請し、要請を受け、当時、わが国はローグスロー騎士団の二番隊と七番隊の派遣を決定した。

 「…確か、魔物被害はアマゾネスどもだったな、本当に死ぬかと思ったぞ、あの時は…アマゾネスどもの夜襲はひどいは、他の国の軍が逃げやがって、補給線が分断、喰い物はなくなるは、本当にひどかったな」

 「それでさ、食料がなくなった時、副団長が森の中に入って行って胴回りがそこらに生えてる木と同じくらいのトカゲ捕まえてきたんだよね」

 「そうそう、俺たち極限まで腹減ってたからステーキに見えたよな、それで串に刺して焼いて食べて、あんなにうまいものがあるのか感動しちまったよ」

 「そのあとも面白かったね、ほら、みんな飢えてたから、アマゾネスの集落襲撃して食料奪ったんだけど、みんな飢えてたから終わったら血の海だったね。いくつの集落潰したんだっけあの時?」

 「確か潰した集落は5で、打ち取った首は200強じゃなかったか?あの時は?」

 「いやぁ、快挙だったね、本当に快挙、楽しかったな…」

 俺たちの会話は大概血なまぐさい話ばかりだ、だから嫌われると分かっているが、それが俺たちの日常であり、慣れるとどんなに血なまぐさい話をしても飯が食えるようになる
 大概、飯時にする会話は戦闘が終わった後だと何人殺っただの、昔こういうことあったな、だのそういう会話が俺たちの会話だ。

 その後も、他の人間が聞いたら食事の手が止まるような会話をする。
 今いる近衛騎士団の皆さま方とまじって酒を飲んでもいいが、やはり顔を知っているやつと酒を飲んだ方がうまい

 「………そういえばさ、セルセ、グンテイに会いに行くつもりなの?」

 その話で、俺の手が止まる
 忘れてはいなかったが、いまだに悩んでいた問題だった

 「…会いに行きたいのはあるが、どこにいるのか分からないし、どうすることもできないだろうよ」

 はぁ、とため息をトウギがつき、俺の顔を覗き込むように見た

 「そうやって何かと理由付けて逃げるのがセルセの悪いところだよ。別に会ってあげるだけでいいじゃない、そんなに難しく考えなくたって」

 「…お前が楽観的なだけなんだよ」

 「そうですよ、会いに行くなら行きなさい。あとで後悔しますよ」

 突然、それまで顔を付していたテニファ様が突っ伏したまま言った。

 俺たちは驚いた、いや、突然寝ていたと思っていたテニファ様に声をかけられたからではなく、その声がさきほどまでの明るい声とは違い、重く疲れた声だったからだ

 「忙しい、場所が分からない、なんて理由を自分に言い聞かせても他人からしてみれば言い訳でしかなんです、あくまでもこっちの都合です。そんなこと、そんなくだらないことは相手には知ったことじゃないんですよ」

 その声には、どこか後悔の念が含まれているようだった、まるで、自分自身に言い聞かす、いや、自分の戒めを他人に聞かせるような声だった。
 きっと、テニファ様も同じような経験をなされたのだろう、だが、それは聞いてはいけないことだろうと推測はできる、だから何も聞かずに酒をあおる

 「それに、会いに行ける時があるか、これから分かりませんよ」

 もう一杯、酒をあおろうとしていた手が止まる、それは一体どういう?

 「…これから話すことは全部私の独り言です。旅人の独り言をとなりにたまたまいた騎士に聞かれても仕方ないですし、そんな戯言に騎士は反応しなくてもいいんです」

 ここで変に動きを止めれるな、ということだ、俺もトウギも止まっていた手を動かす

 「二週間後、王都で国王がガリメスト国の全ての領主を呼び御前会議が開かれます。議題は『王衆連盟』開催中、臨時で誰が国王の椅子に座るか、ですが、事実上ガリメスト国の立場をはっきりとさせる会議になるでしょうね」

 それは、つまり、

 「ガリメストは『王衆連盟』と魔王軍からしてみれば中立国ですが、それは国王の権力が弱く、領地によって親魔、反魔に分かれている、というだけで事実上弱国家の連合体に近いだけですが、親魔派と反魔派の領地の数からいえば反魔国家です」

 大きな権力を持つ領地は11あり、小さな領地が近くの大きな領地につき従う形を取っている、11ある大領地の内、8が反魔派、3が親魔派だ。

 「父は、グラード領主スパルトロ・カール侯は今度賭けにでるつもりです。つまりは国家を反魔派に統一する決議をするつもりです」

 思わずつばを飲みこんだ
 国内が反魔派と親魔派に分かれているため、国策として魔王軍に戦えず、今まで何度も苦戦を強いられてきた。もしも、国家としての主体が統一されれば、と思ったことがある、

 確かに、国内統一という点からしてみれば今が最高の機会だ

 今回の魔王軍の侵略で、かの大国デッ・レート国は陥落、そして強制的に魔界となったらしい。グラード領地でも半世紀にわたり魔王軍の侵攻を防いできたローグスロー騎士団は壊滅、その他の国や領地の被害を聞いてもひどいものだ
 今回ばかりは親魔派国家、親魔派の領地からも批判が多いと聞く

 国内の他の反魔派の領地は大変な騒ぎになっているだろう
 反魔派の領地といっても、それは魔王軍の侵略がないために反魔派の政策を行えるのであって、反魔派であるための戦いをしたことのない

 そんな領地はこれからどうするべきかをめぐって大変な騒ぎとなっているだろう

 しかし、そんな騒ぎの中、一人の強大な指導者が現れたとする、そうすればその場しのぎでも各領の領主はその指導者に従うだろう、そして、それがいつの間にか当たり前となってくるのだ、人はそれを、王と呼ぶ。つまり、領主様は新しい国王にでもなろうというのか、いや現状では、すでに国王デルンゼルV世は高齢だ、だが皇太子はまだ若い、大方摂政にでもなるつもりなのだろう

 しかし、そんなことをすれば親魔派が黙ってはいない、待っている結果は

 「内乱になるでしょうね。反魔派の領地に囲まれたガンジューゼ領は鞍替えする、せざるをえないでしょうが、隣接する親魔派のデーデエルス領とリョウランク領は合併し、一方的な新国家を樹立宣言、まあ、どうあがいても結果は同じで、デーデエルス領とリョウランク領対残りのガリメスト国領地の戦いとなります」

 俺はじっと酒の注がれた杯を見ていた、そこには青白い顔が、自分の顔が映っている。

 「『王衆連盟』と魔王軍が結んだ休戦協定の期間は一年、その間に終わらせる必要があります。一年以内に魔王軍が介入してきたら協定違反で一方的に国土を元に戻せるでしょうが、一年過ぎてしまったらこちらとしては最悪のケースですね、魔王軍が介入してきます。その前に終わらせる必要があるのですよ」

 つまり、そのために

 「ラインバック騎士、ブラフォード騎士、ここからは秘匿任務です。ラインバック騎士はなるべく国内の反魔派領に近づかず、反魔派の国家に潜入すること。ブラフォード騎士の騎士団は最前線に投入されるでしょう、なので、二月以内にブラフォード騎士に預けた騎士団を仕えるようにしておいてください。これはあなたを生かすための戦いにもなります、下手にドリスタン騎士団に活躍でもされると、色々と領地として体面が悪いんですよ。だから、最低でも躊躇なく、魔物でも人でも殺すことができる騎士団に育ててください」

 「……なぜ、貴方様は私たちにお優しいのですか?そんなことを、貴方様でもそれを教えればただでは済まない事でしょうに」

 杯に注がれた酒を飲みながら、質問する。確かにこの情報はありがたかったが、この方は俺たちに寒気がするほど甘い
 だが、俺たちはこの方に対してなんの奉公も、ご恩に報いる働きなどしていない、俺たちが普通の人間でも、例え勇者であってもありえないぐらい、だ

 少しの間、沈黙が流れたが、決意したようにテニファ様が言った

 「……昔話をしましょう。あるところに貴族出身の身分の高い勇者がいました。その勇者はとっても武勇に秀でて、しかも民衆からの支持も厚く、とても自分のことを誇らしく思っていました。
 ある時、勇者は騎士団を結成し、その騎士団は数多の魔物を打ち取り、無敵とも思える強さを誇っておりました。
 その騎士団を率いていた勇者は部下を持つ者としてはあろうことか、神になった気すらしていたのかもしれません。しかし、その驕りが、そんな過信が、悲劇を招きました。
 ある日、その騎士団は魔物の策略にかかり、敗れました。
 仲間たちが、何よりも大切だった仲間たちが、男は魔物に犯され、女は魔物になっていく様を、捕らえられた勇者は見せつけられてどうすることもできませんでした。
 そして、勇者の番になりました。
 勇者が死を決意した時、ある騎士がその場に舞いおりました。
 騎士は、その場にいた魔物を殺しました。無論、元人間、騎士団の仲間であった者も殺しました
 それは、一瞬の出来事でその場にいた者は己の死すら理解できなかったでしょうね
 すべての戦いが終わった後、返り血で真っ赤に鎧が染まったまま、騎士は勇者に頭を垂れ、遅くなり申し訳ありません。と丁寧にお辞儀をしました」

 その騎士ってまさか

 「その騎士の名はオルフレッド・ド・バティスト、後にローグスロー騎士団という、その助けられた勇者が最も蔑み、忌み嫌っていた異端者の騎士団の団長になる男でした」

 トウギも俺も手が止まっていた

 「私は、オルフレッド騎士の元に弟子入りしました。まぁ、期間は一年足らずでしたが、本当の意味での騎士の在り方を教えてもらった気がします。
 それで、これは私と師の数少ない約束なんです。魔物は種族が違う、だから俺たち人間は忌み嫌う、そして人間の明日の未来を勝ち取るために戦うが、俺のような異端者は人間にも魔物にも忌み嫌われる。お前は数少ない異端者の理解者だ。だからきっかけを作ってくれってね。人間と異端者が分かりあえる世界のきっかけを、とね」

 そこで言葉を区切る

 「私はあなたたちに機会を与えます。本来ならばもっとちゃんとした騎士団をブラフォード騎士には与えたかったのですが、反対が多くてできませんでした。ですから、貴方には私のできる限りにおいてお手伝いします。ラインバック騎士も同様ですよ…ですからあなたたちは存分に活躍しなさい、私がサポートします。これは命令です」

 その声は指導者としての声であった

 だから、この方は俺たちに機会をくださったのか

 「テニファ様」

 俺は、言う

 「ありがとうございます。二月で使い物にして見せます」

 トウギは、言う

 「必ずや、騎士の素質を持つ者を見つけ出して御覧に入れます」

 騎士としての宣言だった

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「指揮官殿に、敬礼!!」

 俺の前に、35名の騎士が、いや、騎士の鎧を着た子供が横5列、縦7列になり、敬礼する、肌の色は俺と変わらないが、兜からはみ出ている髪の色はカンドル人特有の栗色だ

 だが、テニファ様の仰っていたことは本当らしい、まともな騎士団ではないということだ

 資料には最年少は12歳と書かれていたが、思いのほか、体が華奢な者が多い
 中には鎧の重さで敬礼した時によろめいた者もいた。鎧が体に合っていないのだろう、いや子供用の鎧なんてないから仕方ないか

 武器も統一されていない。ある者は3間半の長槍を持っている者もいれば、腰に一丁短銃をぶら下げている者もいる

 ここはエルメラ城の外庭、練習場の一画だが、まだ太陽は東のコルグレー山脈から上っていない、辺りには朝霧が立ち込めている。他に騎士はいない。ただ広い場所にこれだけの少人数だとなんだか落ち着かない
 ちなみに位の低い騎士団から早朝稽古をするため、俺たちが一番格下ということであり、この城で練習できるのも今日だけ、明日から郊外にある場所で鍛錬を行うことになっている

 「…これが精鋭たちか」

 思わず呟いてしまった

 最前列の一人に声をかける

 「貴様、年は?」

 まだあどけなさが残るその騎士はおどおどとした様子で答える

 「じゅ、十三であります!!」

 「実戦経験は?」

 「ま、まだありません」

 となりの騎士に声をかける、いや服装からして騎士の鎧ではなく術者の鎧だ

 「術式では何が使える?」

 「ガルセルット式の耐魔術式を使えます」

 「では何種使える?」

 「よ、4種使えます」

 ………4種、たった4種、俺でも71種使えるのに、その専門の術者がたった4種しか使えなのか、いやカンドル人は確か武人が多い、だから術者が少ないと聞いたことがあるし、現に背中にアックスを背負っていた、だが、専門の術者が4種とは…

 ………頭が痛くなってきた

 あぁ、ドチクショウ、こんな騎士の集まった騎士団がテニファ様の言葉通りなら二月後には実戦だ、どうすればいいのか…

 ふと、目の前の術者の少年兵がなにか言いたげな目をしていた

 「なにか、言いたいことがあるのか?構わないからいってみろ」

 術者はおどおどとした様子だったが意を決したように叫ぶ

 「私は、私は戦いに来ました!!」

 その声の大きさに度肝を抜かれた。まだ子供がだせる声の大きさとは思えなかったからだ

 「私は、憎き魔物を殺しに来ました!!父と兄は祖国を守るために散りました、私を逃がすために最期は目の前で散って行きました。私は魔物が、魔王が憎いです。祖国の地を踏みにじり、山を川を、空を奪った魔物どもが憎いです!!我々はまだ未熟です!!戦うすべを、知識を持っておりません!!しかし、未熟ですが、身を犠牲にしても魔物どもに一矢報覚悟があります!!!どうか我々にご指導をお願いします!!」

 深深と礼をする。そして、それに続くように他の騎士たちも深深と礼をした。

 顔を上げろ、と命令する

 一人ひとりの顔をのぞくが、どいつもこいつも体格も恰好も改めて戦闘に適していないと判断したが、一つだけ見落としていたことがある、こいつらは一つだけこれ以上ないほどの戦闘の適正を持っていることだ

 それは、眼の色だ、あるものに誓いをたて、覚悟を決めた眼だ

 たとえ、どんなに優れた体格と、百戦錬磨に磨き上げられた技、それと臨機応変に動ける頭をもっていたとしても手に入らない物がある、それは覚悟だ

 それが傭兵と騎士の違いでもあるのかもしれない

 傭兵は銭のためなら畜生にもなるが、領主のためにも、神のためにすら畜生にも、獣にもならない。しかし、騎士は違う

 騎士は、一度誓った主君のためなら五臓六腑を撒き散らしても、地べたをはいずりまわっても、四肢をもがれても、主君のためにならどこまでも身を落とす

 そして、その覚悟は絶対に手に入らない物だ、こいつらは危険だ
 なぜなら、我が主君グラード領主スパルトロ・カール候に忠誠を誓ったわけではない、こいつらが誓ったのは魔王に対しての復讐に誓ったのだろう、だが、

 嫌いじゃない、その覚悟は

 精神があちら側に行く感じが分かった、だから大声で笑う
 笑った後、腰をかがめ、さっきの演説をした術者の目線に合わせる

 「おい、お前、名前は?」

 兵は先ほどの笑いで怯えたように言った。

 「ガ、ガンデルド・バイセンであります」

 「ふむ、ではバイセン、お前は俺をどこまで知っている?どこまで聞いた?」

 「い、いえ、指揮官殿については百戦錬磨、果敢な猛将であるとお聞きしただけです」

 それは、誇張しすぎだ、つまりこいつらは俺が異端者であることを知らないのか

 兵の多くは怪訝な顔で俺を見たが構うものか、遅かれ早かればれるのだから、今ばらすだけだ

 「ありがとう若き騎士たちよ、お前たちの覚悟は分かった。だからお礼に、俺の正体も見せてやるよ」

 腰の脇差を抜刀すると、首に突き刺す

 脇差を抜くと鮮血があふれ、鎧を赤く染める。兵たちがどよめき、俺に駆け寄ろうとしたが手で制した

 「ばぁ」

 傷口を手で押さえていたが、おどけたように手を離し、傷どころか、跡すらもない首を見せる
 兵たちにどよめきが広がった。そして、誰かがぽつりと異端者、と呟くのが聞こえた

 「いま異端者って言ったやつ大正解だ。俺は異端者、本名はあるが俺のことはセルセと呼べ」

 兵たちが唾を飲み込むのが分かる

 「ちなみに、お前たちは最強のアンラッキーだ、なぜかわかるか?外人騎士団を率いているのは異端者、どこの国にしても、どこの領地にしてもできれば一斉に処分したくてたまらない連中が組んじまったわけだ。わかるだろ?俺たちは捨て駒だ。確実に投入される戦場も地獄の連続だ、いや、地獄の方がましかもな。だがな、復讐には困らない戦場の連続だ。俺たちにはお似合いってことよ、俺はてめぇらを戦場で子守りするために戦いに行くんじゃねぇ、俺は俺の戦いのために戦場に行く、俺は地獄の水先案内人じゃねぇ、てめぇら自身が案内人だ」

 ここで言葉を区切る、笑みがますます大きくなる

 「俺が教えることはてめぇらを守るためじゃねぇ、てめぇらが戦場で魔物を殺すために戦いを教える。それ以外の戦いは教えねぇ、俺も知らねぇからな」

 兵たちをもう一度見回す、先ほどの顔には恐怖と困惑があったが、今の顔にはそんなものはない、熱心に俺の話を聞いてやがる、昔、俺と組んでいた奴が言っていた、俺の狂気は感染すると、その通りだと思う

 「まずてめぇらに教えてやる。いいかしっかりと耳の穴かっぽじって頭にたたきつけておけ、戦場で魔物を殺せるのは人間である自分だけだ、敵も殺せねぇ馬鹿野郎はとっとと死ね。最期まであがいて敵を巻き込んで死ね。返事は?」

 「「「「はい!!!!」」」」

 いい返事だ、そう思いながら俺は思案する、さて、まずは何から教えるべきかと




かつて戦場を共にした者たち
しかし、散った者と残った者
残された者たちは再会を果たす
次回「再会」
一足先に自由になった友に告ぐ
11/11/16 01:10更新 / ソバ
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■作者メッセージ
今回は自分の中では試行錯誤があった回です。
セルセがあちら側にいったはいつも戦闘の時だったので、今回戦闘ではないのにあちら側に行かせてみました。
いや、本当に難しかったです。今までで一番苦労しました。
次回の更新に少し時間がかかりますが、よろしくお願いします。
ご意見ご感想お待ちしております。

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