はじめまして
「はい」
ドアを開けてそう言う。いつもより低く、警戒心のこもった声で。
「隣に引っ越してきましたホルスタウロスのメグです。これからよろしくお願いします♪」
にこやかに言われた。が、魔物にあまり良いイメージは持っていない。スタイルが、…とっても良いのは認める。しかし男が連れ去られる話を時々聞くのであまり近寄らないようにしていた。が、まさか自分の住んでる地区に魔物の立ち入りが許されるとは思っていなかった。しかもよりによって隣に。
「よろしく」
感情のこもってない挨拶をとりあえずしてドアを閉める。なるべく関係を持たない方が良いと思った。愛想のない人と思われたくはないが好かれるよりましだ。とはいえ、自分とはあまり関係はないだろう、大人しそうだし。
しかし2日後、3時ごろ仕事場から帰ると。
「こ、こんにちはっ。あの、」
なぜか俺の家の前に隣の家のホルスタウロスがいた。なぜそこにいるのか気になりはしたが、
「こんにちは」
と、一昨日と同様の挨拶をする。最後の2文字ぐらいは聞こえなかったことにして、そそくさ家の中に入ろうとドアに手を触れたあたりで
「待ってくださいっ、なんでそんな避けるんですか!」
泣く3歩ぐらい手前の表情を浮かべ、強めに言われた。だが逆に聞きたい。俺がいつ何した。なぜ待ち伏せされなきゃなんないんだ。
「魔物にあんまりいい印象がないんだ、あなただから避けてるんじゃない、悪く思わないでくれ。」
少し強めに言ってしまった気もするがこれでも大分丸くした方だ。質問に答えたところで再び家に入ろうとするが、
「他の人は私を笑顔で迎えてくれましたけど、あなただけ笑ってくれませんでした…」
と続けて言われ無意識に動作が止まる。そう言われるとなんだかとても申し訳ない気持ちになってくるが、ここは我慢だ。好かれるよりはましだと自分に言い聞かせる。自分が連れ去られるなんてことは一番回避したい。
「なんでなのか気になっていたんです。でも、魔物の中にもいい娘はたくさんいるんです。私の友達にも…なので嫌いにならないであげてくださいっ。」
「んなこと言ったって…」
「な、なら。私が少しでもいい印象を持ってもらえるように頑張ります!」
「はい?」
「掃除とか家事とか、なんでも手伝います!私結構家事得意なんですっ。」
意外と魔物にもいい人っているのかな?と少し考えてしまう。何を思っているんだ。罠の可能性だってあるだろう。騙されちゃだめだ。それに家事って、…家に入るってことだろ…。
「一昨日越してきた人を家に入れるわけないだろ、少し頭冷やして出直せっ。」
言いながら家に入りバタンッとドアを閉める。これは…厄介な相手かもしれない…、しかも相手には悪気がないのがたちが悪い。別にここまで気嫌いする必要もないんじゃないかとも思ったりする自分がいるが、罠の可能s (ry。
〜その日の夜〜
コンコンッと誰かドアを鳴らす。
「は「こんばんはっ」
またか…。今度はなんだ。
「夜にすみません、頭を冷やしましたので出直して来ました。」
「…今度はなに、」
ため息をつきながらそう言う。普通ああ言われたら来にくくなんないのか。だが目の前で頭冷やしました、と自信満々な顔を見せられ無駄なことと理解し話を聞くことにした。まだそれほど遅い時間でもないし。
「その、昼間はすみません。話が飛躍しすぎました…。でも、家の前を掃除するくらいならいいですよね?」
断ろうかと思った。結構です、のkまで出かかったが、まともな理由が思いつかない。それに冷静に考えて俺にとってマイナスではないだろう。家の前の掃除なんて自分でしたことないけど…。
「別にそれぐらい好きにしていいよ」
「ありがとうございますっ♪」
なんだかとっても嬉しそうだ。そして満更でもない自分がいる。
「それと、これ昼間のお詫びとして、どうぞっ!」
と紅茶の葉っぱを渡される、しかも地味に高いやつで俺の好み。あれ?俺が紅茶好きなのいつどこで知ったんだ?知ってるとしたら少し怖いぞ。
「なんで俺が紅茶好きなの知ってるんだ?」
「あ、やっぱり好きなんですね♪紅茶の良い香りが一昨日も昨日もしてたので、もしかして好きなのかなと。」
あ、それなら納得だ。魔物って鼻が利くのか?それにしてもプレゼントなんか貰ったのはいつぶりだろうか。
「まぁ、ありがと」
「えへへ〜♪」
とっても笑顔になってくれる。ついでに尻尾もふりふりしている。ちょっと可愛い。…まずい、流されかけてる…。
「用件は済んだ?」
「はい。おやすみなさいです♪」
「…おやすみ。」
そういいお互い家に戻る。まさか自分が魔物とあんなに話をするとは、もしかしたら今あの魔物にとって一番親しいのは自分なんじゃないか?しかしどうも今まで通り気嫌いする気になれない。これを貰ったからだろうか。…、…俺って単純だな…。ま、まぁ気を取り直して、貰った紅茶を淹れてみる。淹れ方に特にこだわりはないが紅茶は大好きだ。特にこの紅茶、少し高いがとても美味しい。棚からぼた餅というやつだろう。なんだかあの魔物をどうも嫌いになれない、そもそも魔物と係わりをもったのは初めてなわけだが。なにかお礼でも渡した方がいいのかなど色々考える。近所付き合い程度の関係ならいいんじゃないかと思い始めていた。
〜次の日の朝〜
前言撤回、昼だ、寝すぎた。休みだから別にいいけど。寝すぎると生活リズム戻すのが大変になるから嫌なんだ…。などと考えながら買い出しの準備を整える。そしてドアを開け
「うわあ!!」
て出発しようとしたら足元に隣のホルスタウロスがいた。掃除をしていたのだろう。こちらにつられて向こうも驚いてしまっている。
「お、驚かしちゃってすみません!」
ぶん、と頭を下げてくる。
「い、いや。そんな謝んなくていいよ。…あと、おはよう。」
顔をあげるとビックリしたような、嬉しそうな表情を向けてくる。
「…な、なんだよ」
「初めて挨拶してくれましたね♪おは、あれ?こんにちはじゃないですか?」
あ、忘れてた昼まで寝てたんだ。自分の抜けた部分を見られたようで妙にこっぱずかしい。少し赤くなりながら速足でその場を去った。気まずい…。
買い出しを終えて家に着き、おやつでも食おうと準備してると
「ん"ん"〜〜〜〜!!!!」
外から何か断末魔みたいな声が聞こえた。多分、隣のあいつだろう。ほどなくして、
コンコンコンコンコンコンッ
誰かがドアを鳴らしてる。まぁおそらく「誰か」である確率は皆無だが。
「はい」
「ん"〜〜…」
案の定。
「んーじゃないよ。何、」
「美味しいって言っていたので私も買ってみたんですけど…。紅茶が、…不味いです。」
どうすれば紅茶が不味くなるのか…。余程凄い淹れ方をしたんだろう。
「…どーやって淹れた?」
「えっと、カップにパックを」
「んー、やっぱもの見せて、それが一番早い」
説明を聞き始めてそう思った。そもそも紅茶の淹れ方のなんて間違えようがないと思うが…。
「すみません、ちょっと待ってて下さい…」
終始口を抑え眉間にシワを寄せている。本当にどんな淹れ方をしたんだ。
「こんな感じで淹れました。」
…絶句である。俺なら1パックしか入れないであろう大きさのポットに7、8個入っている。あぁ、茶葉がもったいない…。辺りに濃すぎる紅茶の臭いが漂う。きっと口に直接茶葉入れたらこんな香りだろうと思うほどに。しかしそれだけじゃない。渋味が出てしまっている臭いがする。
「それどんくらい浸けた?」
「お昼会った時ぐらいからです。」
…またも絶句である。平気で2時間以上経っている。濃さと相まってきっと凄まじい渋味だろう。しかし少しだけ怖いもの見たさがある。
「ちょっと飲ませてみ」
「え、いいですけど、美味しくないですよ?」
そういい渡されたものに舌を着けてみる。ん"ー、と言うのも納得の渋さだ。思わず眉間にシワが寄る。単に濃いだけなら薄めれば飲めるがこれは無理だ。
「あの、もし良かったら淹れ方教えてくれませんか?」
上目遣いをして言われ少しぐっときたのは秘密だ。
「え?まぁ別にいいけど、淹れ方(に特別なこだわりはないよ?)」
「ありがとうございます♪」
()の中は言おうとしたが言えなかった部分だ。途中で腕を引かれ、家に入れられた。といっても決して強引ではないので抵抗しようと思えばできたのだが、なんだかなぁ…。そんなことより昨日家に入るなと言った相手の家に入ることになるとは。それに、魔物とはいえ女性の家に上がるのはいつぶりだろう。しかも女の子の家の臭いがする。…あーもう、意識するんじゃない。
「じゃあ、さっそく淹れてみて下さい♪見て勉強します!」
さっそく、と言われてもまずお湯がない。当然沸かすのに時間がかかるわけで…。…一体この時間何をすればいいんだ…。
「…暇だ…」
無意識にボソッと呟く。
「ならお話しませんか?」
ニコニコしながら聞いてくる。また尻尾をふりふりしているのがやっぱり可愛い。
何かお話。えーっと話題話題…、
「んーと、この町に越して来る前はどこにいたの?」
「森です♪あ、草原もありましたよ♪」
「(…流石魔物、ななめ上からの返答だ…)そっちの方が気楽そうだけど、なんでわざわざ町に来たの?」
「ルナっていうゴブリンの友達がいるんですけど、この町に来て商売してるって話をよく聞いてて。私もどんな場所か気になったんで思いきって暮らしてみることにしたんです♪」
なんだろう、とっても自然に会話できてる気がする。でも久々の女の子との会話が楽しいのも事実だ。まぁ楽しいならいっか。
「そんな思いきって行動できるなら悩みなさそうだね。」
少し自分に素直になって思ったことをそのまま言ってみる。
「そんなことないですよー、私の種族っておっぱいが大きいんで、激しく動くのがちょっと苦手で//」
そう言ってはにかんでくる。確かに、今まであんまり意識しないようにしてたけど人間じゃありえないくらいに大きい。なのに形も良い。言ってる通り走った時とか凄そうだな、上下に、って何考えてんだ俺は//。目の前にいる娘のそんな姿想像するな…///
「あ、あの。ソラさんは、その。おっきいおっぱいは、好きですか?////」
「へ?///」
急な質問に思わず驚いてしまう。自分から振った話だ、答えないのは失礼だろう。しかしそんなことより赤面しながらまたも上目遣いは反則じゃないか…?
「あ、あんまりそーゆーこと聞くなよっ///。…ま、まぁ、好き…、だけど(ゴニョゴニョ…)////」
「えへへ〜♪ありがとうございます♪///」
今度は赤面しながら微笑んでくる。個人的に思うのだが女の子の一番可愛い表情は笑顔と恥じらいだ。その2つを合わせられるとまぁドストライクなわけで。なんでこんなとこでフェチを明かさなきゃなんないんだ。恥ずかしいと思ったのも久々な気がする。
「ほ、ほら。そろそろお湯沸けるからっ///」
照れていることを必死に誤魔化しながら話を戻す。誤魔化しきれてないことぐらい自覚してるが。
「お、お湯ヲッ、う"ぅん"!!////」
ついでに声が裏返った。なんか自分自身にお前は動揺しているんだと言い聞かされているようだ。隣で笑われちゃってるし、とても恥ずかしい。
「き、気を取り直して///。ん"ん…。できることなら水は1日おいてカルキ飛ばした方が美味しくなるよ。…あー、メモとか取んなくて大丈夫?」
「あ、はい。じゃあちょっと取ってきます。」
(問題なく淹れたということで次のシーンへ)
「とまぁこんな感じ、」
「ぉ〜、紅茶って文字通り本当に紅いですね!」
そりゃそうだろと思ったが先ほど見た紅茶は赤黒いと言うより最早こげ茶色だった。驚くのも無理はない気がする。
「うん。じゃまずは無糖飲んでみる?甘いものと合わせる時は無糖がおすすめだね」
「あ、美味しいです…♪甘いものって、例えばなんです?」
「ん?別になんでも、チョコとかケーキとか、スイーツ全般的に…俺はたまにティラミス作ったりもするかな」
「てぃらみす?」
そうか、そりゃ知らないよな。魔物だもんな、普通に会話できてるけど…。なんかゆくゆくはこれも一緒につくることになりそうな気がする。けど、なんだろ、少し前なら嫌なことのはずなのに今は楽しみとして捉える自分がいる。自分の中の「ご近所付き合い」がどんどん幅を広げる。でもここまで付き合ってみて分かったけどホントいい娘なんだよな。しかし、魔物だ。そこだけは変わらない。
「昨晩作ったのがあるけど、食べてみるか?」
「いいんですか?!ありがとうございますっ♪」
「ん、ちょっと待ってて」
パアッと笑顔になる。やっぱりこの娘の笑顔はズルい。何度も見たくなってこうして喜びそうなことをしたくなってしまう。本人にその気はないのだろうけど。そんなことを考えながら適当な大きさに2つカットして持っていく。
「あれ?なんで2つあるんですか?」
「片方は俺の分、こっちあげる。」
「ありがとうございます♪」
あれ?確かになんで俺2つ持ってきたんだ?自ら一緒にいる時間長くしちゃってるじゃん…。ま、いいか。
「紅茶どうぞっ♪」
「ん、ありがと」
「それでは、いただきますっ。」
「ん、」
「…!、んん〜〜♪♪!、とっても美味しいです!!ソラさん凄いです!!」
「い、いや。レシピ見れば誰でもつくれるよ//」
凄く喜んでくれてる、正直とても嬉しい。…少々恥ずかしいが。
「いえ、それでも凄いです!こんなに美味しいの初めて食べました♪」
「…///」
頬をぽりぽり掻いて精一杯の照れ隠しをする。素直に喜ばれるのがここまで恥ずかしいとは…。
「ほ、ほらっ。最後に1つ。//」
「ごちそうさまでした…♪なんですか?」
「砂糖の量だよ、この量に対してならこのくらいかな。後は塩をほんの少し、これくらい。」
「塩入れるんですか?!」
「うん。すっきりした甘さになるからね、結構オススメだよ。飲んでみる?」
「はい。…んー甘い紅茶も美味しいですね♪」
「まぁ好みに合わせて適当に量は調整していいから。なんでもそうだけど分かんない時は薄めに作った方がいいよ、足せばどうにかなるから。逆に濃いと薄くすることは普通できないからね。…んー、こんくらいかな、教えられることは、」
「はい、今日はありがとうございますっ!あの、この、てぃらみす?の作り方も機会があったら教えてくれませんか?」
「レシピ教えようか?」
「それでもいいんですけど、その、できれば、一緒に作りたいです…///」
あーもう、いちいち赤面するんじゃない、可愛いなぁ//。はぁ、好かれるのは勘弁だと思ってたのはいつの話だっけ?
「うん、いいよ、用意しといてほしいもんは事前に伝えとくから、」
「はい♪」
はぁ、これ完全に好かれてるな…。でも嫌じゃないのも事実なんだよなぁ…。はぁ、どうしたもんか。
「それじゃ、俺そろそろ帰るよ?」
「はい、ありがとうございました♪」
また尻尾ふりふりしてる。
「どーいたしまして。」
ドアを開けてそう言う。いつもより低く、警戒心のこもった声で。
「隣に引っ越してきましたホルスタウロスのメグです。これからよろしくお願いします♪」
にこやかに言われた。が、魔物にあまり良いイメージは持っていない。スタイルが、…とっても良いのは認める。しかし男が連れ去られる話を時々聞くのであまり近寄らないようにしていた。が、まさか自分の住んでる地区に魔物の立ち入りが許されるとは思っていなかった。しかもよりによって隣に。
「よろしく」
感情のこもってない挨拶をとりあえずしてドアを閉める。なるべく関係を持たない方が良いと思った。愛想のない人と思われたくはないが好かれるよりましだ。とはいえ、自分とはあまり関係はないだろう、大人しそうだし。
しかし2日後、3時ごろ仕事場から帰ると。
「こ、こんにちはっ。あの、」
なぜか俺の家の前に隣の家のホルスタウロスがいた。なぜそこにいるのか気になりはしたが、
「こんにちは」
と、一昨日と同様の挨拶をする。最後の2文字ぐらいは聞こえなかったことにして、そそくさ家の中に入ろうとドアに手を触れたあたりで
「待ってくださいっ、なんでそんな避けるんですか!」
泣く3歩ぐらい手前の表情を浮かべ、強めに言われた。だが逆に聞きたい。俺がいつ何した。なぜ待ち伏せされなきゃなんないんだ。
「魔物にあんまりいい印象がないんだ、あなただから避けてるんじゃない、悪く思わないでくれ。」
少し強めに言ってしまった気もするがこれでも大分丸くした方だ。質問に答えたところで再び家に入ろうとするが、
「他の人は私を笑顔で迎えてくれましたけど、あなただけ笑ってくれませんでした…」
と続けて言われ無意識に動作が止まる。そう言われるとなんだかとても申し訳ない気持ちになってくるが、ここは我慢だ。好かれるよりはましだと自分に言い聞かせる。自分が連れ去られるなんてことは一番回避したい。
「なんでなのか気になっていたんです。でも、魔物の中にもいい娘はたくさんいるんです。私の友達にも…なので嫌いにならないであげてくださいっ。」
「んなこと言ったって…」
「な、なら。私が少しでもいい印象を持ってもらえるように頑張ります!」
「はい?」
「掃除とか家事とか、なんでも手伝います!私結構家事得意なんですっ。」
意外と魔物にもいい人っているのかな?と少し考えてしまう。何を思っているんだ。罠の可能性だってあるだろう。騙されちゃだめだ。それに家事って、…家に入るってことだろ…。
「一昨日越してきた人を家に入れるわけないだろ、少し頭冷やして出直せっ。」
言いながら家に入りバタンッとドアを閉める。これは…厄介な相手かもしれない…、しかも相手には悪気がないのがたちが悪い。別にここまで気嫌いする必要もないんじゃないかとも思ったりする自分がいるが、罠の可能s (ry。
〜その日の夜〜
コンコンッと誰かドアを鳴らす。
「は「こんばんはっ」
またか…。今度はなんだ。
「夜にすみません、頭を冷やしましたので出直して来ました。」
「…今度はなに、」
ため息をつきながらそう言う。普通ああ言われたら来にくくなんないのか。だが目の前で頭冷やしました、と自信満々な顔を見せられ無駄なことと理解し話を聞くことにした。まだそれほど遅い時間でもないし。
「その、昼間はすみません。話が飛躍しすぎました…。でも、家の前を掃除するくらいならいいですよね?」
断ろうかと思った。結構です、のkまで出かかったが、まともな理由が思いつかない。それに冷静に考えて俺にとってマイナスではないだろう。家の前の掃除なんて自分でしたことないけど…。
「別にそれぐらい好きにしていいよ」
「ありがとうございますっ♪」
なんだかとっても嬉しそうだ。そして満更でもない自分がいる。
「それと、これ昼間のお詫びとして、どうぞっ!」
と紅茶の葉っぱを渡される、しかも地味に高いやつで俺の好み。あれ?俺が紅茶好きなのいつどこで知ったんだ?知ってるとしたら少し怖いぞ。
「なんで俺が紅茶好きなの知ってるんだ?」
「あ、やっぱり好きなんですね♪紅茶の良い香りが一昨日も昨日もしてたので、もしかして好きなのかなと。」
あ、それなら納得だ。魔物って鼻が利くのか?それにしてもプレゼントなんか貰ったのはいつぶりだろうか。
「まぁ、ありがと」
「えへへ〜♪」
とっても笑顔になってくれる。ついでに尻尾もふりふりしている。ちょっと可愛い。…まずい、流されかけてる…。
「用件は済んだ?」
「はい。おやすみなさいです♪」
「…おやすみ。」
そういいお互い家に戻る。まさか自分が魔物とあんなに話をするとは、もしかしたら今あの魔物にとって一番親しいのは自分なんじゃないか?しかしどうも今まで通り気嫌いする気になれない。これを貰ったからだろうか。…、…俺って単純だな…。ま、まぁ気を取り直して、貰った紅茶を淹れてみる。淹れ方に特にこだわりはないが紅茶は大好きだ。特にこの紅茶、少し高いがとても美味しい。棚からぼた餅というやつだろう。なんだかあの魔物をどうも嫌いになれない、そもそも魔物と係わりをもったのは初めてなわけだが。なにかお礼でも渡した方がいいのかなど色々考える。近所付き合い程度の関係ならいいんじゃないかと思い始めていた。
〜次の日の朝〜
前言撤回、昼だ、寝すぎた。休みだから別にいいけど。寝すぎると生活リズム戻すのが大変になるから嫌なんだ…。などと考えながら買い出しの準備を整える。そしてドアを開け
「うわあ!!」
て出発しようとしたら足元に隣のホルスタウロスがいた。掃除をしていたのだろう。こちらにつられて向こうも驚いてしまっている。
「お、驚かしちゃってすみません!」
ぶん、と頭を下げてくる。
「い、いや。そんな謝んなくていいよ。…あと、おはよう。」
顔をあげるとビックリしたような、嬉しそうな表情を向けてくる。
「…な、なんだよ」
「初めて挨拶してくれましたね♪おは、あれ?こんにちはじゃないですか?」
あ、忘れてた昼まで寝てたんだ。自分の抜けた部分を見られたようで妙にこっぱずかしい。少し赤くなりながら速足でその場を去った。気まずい…。
買い出しを終えて家に着き、おやつでも食おうと準備してると
「ん"ん"〜〜〜〜!!!!」
外から何か断末魔みたいな声が聞こえた。多分、隣のあいつだろう。ほどなくして、
コンコンコンコンコンコンッ
誰かがドアを鳴らしてる。まぁおそらく「誰か」である確率は皆無だが。
「はい」
「ん"〜〜…」
案の定。
「んーじゃないよ。何、」
「美味しいって言っていたので私も買ってみたんですけど…。紅茶が、…不味いです。」
どうすれば紅茶が不味くなるのか…。余程凄い淹れ方をしたんだろう。
「…どーやって淹れた?」
「えっと、カップにパックを」
「んー、やっぱもの見せて、それが一番早い」
説明を聞き始めてそう思った。そもそも紅茶の淹れ方のなんて間違えようがないと思うが…。
「すみません、ちょっと待ってて下さい…」
終始口を抑え眉間にシワを寄せている。本当にどんな淹れ方をしたんだ。
「こんな感じで淹れました。」
…絶句である。俺なら1パックしか入れないであろう大きさのポットに7、8個入っている。あぁ、茶葉がもったいない…。辺りに濃すぎる紅茶の臭いが漂う。きっと口に直接茶葉入れたらこんな香りだろうと思うほどに。しかしそれだけじゃない。渋味が出てしまっている臭いがする。
「それどんくらい浸けた?」
「お昼会った時ぐらいからです。」
…またも絶句である。平気で2時間以上経っている。濃さと相まってきっと凄まじい渋味だろう。しかし少しだけ怖いもの見たさがある。
「ちょっと飲ませてみ」
「え、いいですけど、美味しくないですよ?」
そういい渡されたものに舌を着けてみる。ん"ー、と言うのも納得の渋さだ。思わず眉間にシワが寄る。単に濃いだけなら薄めれば飲めるがこれは無理だ。
「あの、もし良かったら淹れ方教えてくれませんか?」
上目遣いをして言われ少しぐっときたのは秘密だ。
「え?まぁ別にいいけど、淹れ方(に特別なこだわりはないよ?)」
「ありがとうございます♪」
()の中は言おうとしたが言えなかった部分だ。途中で腕を引かれ、家に入れられた。といっても決して強引ではないので抵抗しようと思えばできたのだが、なんだかなぁ…。そんなことより昨日家に入るなと言った相手の家に入ることになるとは。それに、魔物とはいえ女性の家に上がるのはいつぶりだろう。しかも女の子の家の臭いがする。…あーもう、意識するんじゃない。
「じゃあ、さっそく淹れてみて下さい♪見て勉強します!」
さっそく、と言われてもまずお湯がない。当然沸かすのに時間がかかるわけで…。…一体この時間何をすればいいんだ…。
「…暇だ…」
無意識にボソッと呟く。
「ならお話しませんか?」
ニコニコしながら聞いてくる。また尻尾をふりふりしているのがやっぱり可愛い。
何かお話。えーっと話題話題…、
「んーと、この町に越して来る前はどこにいたの?」
「森です♪あ、草原もありましたよ♪」
「(…流石魔物、ななめ上からの返答だ…)そっちの方が気楽そうだけど、なんでわざわざ町に来たの?」
「ルナっていうゴブリンの友達がいるんですけど、この町に来て商売してるって話をよく聞いてて。私もどんな場所か気になったんで思いきって暮らしてみることにしたんです♪」
なんだろう、とっても自然に会話できてる気がする。でも久々の女の子との会話が楽しいのも事実だ。まぁ楽しいならいっか。
「そんな思いきって行動できるなら悩みなさそうだね。」
少し自分に素直になって思ったことをそのまま言ってみる。
「そんなことないですよー、私の種族っておっぱいが大きいんで、激しく動くのがちょっと苦手で//」
そう言ってはにかんでくる。確かに、今まであんまり意識しないようにしてたけど人間じゃありえないくらいに大きい。なのに形も良い。言ってる通り走った時とか凄そうだな、上下に、って何考えてんだ俺は//。目の前にいる娘のそんな姿想像するな…///
「あ、あの。ソラさんは、その。おっきいおっぱいは、好きですか?////」
「へ?///」
急な質問に思わず驚いてしまう。自分から振った話だ、答えないのは失礼だろう。しかしそんなことより赤面しながらまたも上目遣いは反則じゃないか…?
「あ、あんまりそーゆーこと聞くなよっ///。…ま、まぁ、好き…、だけど(ゴニョゴニョ…)////」
「えへへ〜♪ありがとうございます♪///」
今度は赤面しながら微笑んでくる。個人的に思うのだが女の子の一番可愛い表情は笑顔と恥じらいだ。その2つを合わせられるとまぁドストライクなわけで。なんでこんなとこでフェチを明かさなきゃなんないんだ。恥ずかしいと思ったのも久々な気がする。
「ほ、ほら。そろそろお湯沸けるからっ///」
照れていることを必死に誤魔化しながら話を戻す。誤魔化しきれてないことぐらい自覚してるが。
「お、お湯ヲッ、う"ぅん"!!////」
ついでに声が裏返った。なんか自分自身にお前は動揺しているんだと言い聞かされているようだ。隣で笑われちゃってるし、とても恥ずかしい。
「き、気を取り直して///。ん"ん…。できることなら水は1日おいてカルキ飛ばした方が美味しくなるよ。…あー、メモとか取んなくて大丈夫?」
「あ、はい。じゃあちょっと取ってきます。」
(問題なく淹れたということで次のシーンへ)
「とまぁこんな感じ、」
「ぉ〜、紅茶って文字通り本当に紅いですね!」
そりゃそうだろと思ったが先ほど見た紅茶は赤黒いと言うより最早こげ茶色だった。驚くのも無理はない気がする。
「うん。じゃまずは無糖飲んでみる?甘いものと合わせる時は無糖がおすすめだね」
「あ、美味しいです…♪甘いものって、例えばなんです?」
「ん?別になんでも、チョコとかケーキとか、スイーツ全般的に…俺はたまにティラミス作ったりもするかな」
「てぃらみす?」
そうか、そりゃ知らないよな。魔物だもんな、普通に会話できてるけど…。なんかゆくゆくはこれも一緒につくることになりそうな気がする。けど、なんだろ、少し前なら嫌なことのはずなのに今は楽しみとして捉える自分がいる。自分の中の「ご近所付き合い」がどんどん幅を広げる。でもここまで付き合ってみて分かったけどホントいい娘なんだよな。しかし、魔物だ。そこだけは変わらない。
「昨晩作ったのがあるけど、食べてみるか?」
「いいんですか?!ありがとうございますっ♪」
「ん、ちょっと待ってて」
パアッと笑顔になる。やっぱりこの娘の笑顔はズルい。何度も見たくなってこうして喜びそうなことをしたくなってしまう。本人にその気はないのだろうけど。そんなことを考えながら適当な大きさに2つカットして持っていく。
「あれ?なんで2つあるんですか?」
「片方は俺の分、こっちあげる。」
「ありがとうございます♪」
あれ?確かになんで俺2つ持ってきたんだ?自ら一緒にいる時間長くしちゃってるじゃん…。ま、いいか。
「紅茶どうぞっ♪」
「ん、ありがと」
「それでは、いただきますっ。」
「ん、」
「…!、んん〜〜♪♪!、とっても美味しいです!!ソラさん凄いです!!」
「い、いや。レシピ見れば誰でもつくれるよ//」
凄く喜んでくれてる、正直とても嬉しい。…少々恥ずかしいが。
「いえ、それでも凄いです!こんなに美味しいの初めて食べました♪」
「…///」
頬をぽりぽり掻いて精一杯の照れ隠しをする。素直に喜ばれるのがここまで恥ずかしいとは…。
「ほ、ほらっ。最後に1つ。//」
「ごちそうさまでした…♪なんですか?」
「砂糖の量だよ、この量に対してならこのくらいかな。後は塩をほんの少し、これくらい。」
「塩入れるんですか?!」
「うん。すっきりした甘さになるからね、結構オススメだよ。飲んでみる?」
「はい。…んー甘い紅茶も美味しいですね♪」
「まぁ好みに合わせて適当に量は調整していいから。なんでもそうだけど分かんない時は薄めに作った方がいいよ、足せばどうにかなるから。逆に濃いと薄くすることは普通できないからね。…んー、こんくらいかな、教えられることは、」
「はい、今日はありがとうございますっ!あの、この、てぃらみす?の作り方も機会があったら教えてくれませんか?」
「レシピ教えようか?」
「それでもいいんですけど、その、できれば、一緒に作りたいです…///」
あーもう、いちいち赤面するんじゃない、可愛いなぁ//。はぁ、好かれるのは勘弁だと思ってたのはいつの話だっけ?
「うん、いいよ、用意しといてほしいもんは事前に伝えとくから、」
「はい♪」
はぁ、これ完全に好かれてるな…。でも嫌じゃないのも事実なんだよなぁ…。はぁ、どうしたもんか。
「それじゃ、俺そろそろ帰るよ?」
「はい、ありがとうございました♪」
また尻尾ふりふりしてる。
「どーいたしまして。」
17/08/08 22:16更新 / ぬー
戻る
次へ