俺の全て
「ああんっ……♥
イイっ、気持ちイイ、よぅっ……♥」
対面座位で抱き締め合いながら、俺はウィルマリナを突き上げる。
一日の大半を費やす、俺達にとって大切な時間。
俺達のセックスは、一般的な魔物夫婦のセックスのように激しく腰を振り合うものではない。
「ちゅっ……んむぅっ………」
「はむぅっ♥、あぁむっ……♪」
互いの唇を甘噛みしながら奪い合う、キスをする。
キスをしながらも腰は止めない。
ゆっくりと力強く、じっくりと彼女の膣を擦りあげる。
窮屈な膣壁に、俺のペニスを塗り込むように。
「んんんっ……♥、あむぅぅっ……ん♥♥」
キスをしている唇から、ウィルマリナの嬌声が漏れる。
その声と、甘い唾液と熱い吐息と、俺を見つめる蕩けた視線が、俺を燃え上がらせる。
思い切り激しく腰を振って、彼女を貪りたい衝動に襲われるが、実行はしない。
勿論、そうしてもウィルマリナは悦んでくれるが、もっとウィルマリナを悦ばせられる交わりを知っている。
もっともっと二人で気持ち良くなれる交わりがあるのだ。
ウィルマリナもそれを望んでいる。
挿入時から既に暴発寸前だったペニスに、更なる圧力が加わる。限界が近い。
キスを止め、彼女の背を抱いていた腕を解いて、シーツに後ろ手を着く。
ウィルマリナも俺の意を汲んで、絡めていた腕と脚を解き、俺と同じようにシーツに後ろ手を着く。
以前二人で読んだジパングの指南書で『カガミチャウス』とか書かれていた体位だ。
深い結合が解除され、浅くなってしまったが、コレでいい。
最初の一回目は。
―ぶぴゅるるるるっっ!!
「あああっ♥あああぁぁぁぁぁぁ………♥♥」
喉を反らしてウィルマリナが長い嬌声をあげる。俺の精液を受け取る。
彼女は俺の精液を注がれると簡単に絶頂に達してしまうらしく、子宮に注がれれば絶頂を重ねてしまうことさえある。
今のように、子宮口を亀頭で突き上げていない浅い位置で射精しても、彼女は達してしまう。軽くではあるが。
俺も似たようなものだ。
ウィルマリナにほんの少し愛撫され、挿入して締め付けられるだけで簡単に追い詰められる。
特に鈴口が子宮に吸い付かれたときなどは射精直後に殆ど間を置かず、2度3度と連続で射精させられてしまう。
無論、一度や二度の射精で満足などしない。
浅い位置での射精で、ウィルマリナの膣に充填するように精液を注ぐ。
子宮口と直接鈴口を接続しての射精でない分、子宮に注がれる量は少ないが、彼女の膣内に満遍なく吐き出す。
勢いのある精液が膣内を跳ねて肉壁を叩く。
「あぁぁあぁああぁぁぁ………♥♥」
背を反らし、白い喉を見せて、開いた口から舌を出してウィルマリナが長く長く喘ぐ。
精液の弾丸は何度も何度も何度も……断続して発射されて膣内を跳ね回る。
絶頂の快感を、息を止めてただただやり過ごす。
これで、一回目の射精。
最初の膣内射精を終えて、数秒だけ調息。
射精の快感が絶頂から降り始めたところで、再び交わりを再開する。
―ぐぢゅっ、くぶぷっっ……
ゆっくりと腰を揺らして、ペニスでウィルマリナの膣をかき回す。
子宮に届かない浅い位置で注いだ精液は膣の中に満たされて、彼女の愛液と混ざり合う。
膣内に満たされた精液と愛液の混合液を、ペニスで撹拌する。
膣壁の微細なヒダ、その一つ一つに俺の精液を塗りつけて馴染ませる。
ーぶちゅっ、くちゅっ、くちゅっ……
「ああ、んっ…♥ぁぁぁぁぁぁぁぁ……………っ」
ウィルマリナが嬌声を漏らす。
その声は快楽に塗れてはいるが、やや不満も混じった、語尾が小さく延びた声。
膣内射精で絶頂に達したものの、その快感は軽くて浅く、短い。
彼女にとって最高に気持ちが良い子宮内射精でない分、満足に絶頂を味わえないのだ。
精液を膣壁に塗り込まれて絶頂を引き延ばされているが、快楽をとろ火で煮込まれるもどかしさを感じていた。
だが、この先の至極の快楽を味わうためには必要な前準備だ。
経験でそれを知っているウィルマリナは、生殺しの快楽にただ耐える。
「ウィルマリナ」
「うんっ……」
声を掛けると同時に俺達は身を起こして、キスをする。
口付けたまま抱き合い、再び対面座位の体位に戻る。
至近距離で俺を見つめる彼女の目尻が、安心したように垂れ下がった。
離れ離れになっていた時間が長かった反動だろうか。
ウィルマリナはとにかく、俺と身体を密着させることを喜ぶ。
寝る時ものんびりと過ごす時も、手を握り合い、抱き合い、過剰なくらいにキスを繰り返す。
セックスする時も、向き合って抱き合う体位を最も好む。
後背位や騎乗位などでも快楽は得られるが、キスをしながら愉しめる体位が彼女のお気に入りなのだ。
俺も、激しく腰を振るよりも、彼女とじっくりと肌を重ねあう方が好きだ。
そして、激しく打ち付けるよりももっと深くて、絶頂を感じ続けられるセックスを俺達は知っている。
どちらからともなく、身体を揺する。性器を擦り合わせる。
上質な絹のような柔肌の感触に、汗ばんで発せられる彼女の甘い香り、心地良い鼓動と熱い体温。
貪欲に俺を貪る唇と、ほとんど零距離で見つめあう蕩けた視線。
ああ―――たまらなく愛おしい。
抱き合ったまま、自分の身体ごとゆっくりとベッドに押し倒す。
キスは続けたまま、今度は彼女の子宮を小突く。
「ふぁ…♥、んむぅ、んんっ……♥」
子宮を突かれて、唇から声を漏らし、またキスを再開する。
ウィルマリナの口内に舌を突き入れると、彼女の舌が俺を引き込むように迎え入れた。
お互いの舌を舐め合い、しゃぶり合い、唾液を交換する。
ディープキスを楽しみながらも、腰は止めない。
グラインドさせて、彼女の最奥、子宮を小刻みに小突く。
窮屈ではあるがひたすらに柔らかい彼女の膣内で唯一、軟骨のような固い感触を持つ箇所。
亀頭の先端でついばむように、そこを突く。
ーぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐぷぅっ……
――くりゅっ、こりゅっ、こりゅっ………
膣内を撹拌し、精液を塗り付ける。
子宮を亀頭で押し上げて、擦りあげる。
種類の異なる快感の波状攻撃に、ウィルマリナが堪らず唇を離す。
「ぷぁっ………!あぁんっ………!
あ、はむっ……、うぅんっ……♥」
離された唇に追い縋って捕まえて、再びキス。
俺を抱きしめるウィルマリナの腕に力が込められる。もう逃げないという意思表示。
ならばと
俺は抉るように亀頭を子宮に捻じ込んだ。
「んんーーーーっっっっ♥♥♥♥♥」
キスで塞がれた唇から、嬌声があがる。
精液を欲しがって降りてきた子宮の口が、鈴口に吸い付こうと亀頭を擦る。
子宮で直接、精液を吸い上げようと密着してきた。
鈴口と子宮口のキス。
灼熱の膣壁が、微細な柔ヒダがペニスを固定しながらも執拗に擦る。
子宮口が、もっと精液を飲ませろと言わんばかりに強烈に吸い付いてくる。
容赦無く貪欲な、子宮口のキス、否、ディープスロート。
あまりにも強烈な吸い付きに鈴口がこじ開けられて、尿道の奥に僅かに残っていた精液がせりあがってきた。
一度目の射精を終えたばかりの尿道を、注ぎ損ねた精液がゆっくりと押し広げて登ってくる。
「んっ………ぅっ………!!」
キスで塞がれた唇から、今度は俺の苦悶の声があがる。
快楽に背を押されての射精ではなく、ディープスロートで吸引されての射精。
精液が尿道を押し上げての無理矢理の。
放出するまでの長い時間を、射精し続けるのと同じ快楽に襲われ続ける。
再生産された精液で陰嚢が重くなってきた。
この調子だと、射精した瞬間にその快感で、立て続けに精を放ってしまいそうだ。
………なら、そうしよう。
ウィルマリナの背を抱いていた腕を放し、彼女の細い腰を両手で固定して抱き寄せる。
俺の意図を察したウィルマリナも、しがみつく腕と、俺の腰に巻きつけた足に力を込める。
彼女が子宮に精液を受け取る体勢だ。
腰を強く突き出して、こりっ、と音が鳴らすように子宮を突き上げた。
彼女の悲鳴に似た短い嬌声があがり、
決壊した。
―どっ………ぐんっっっ……!!
精液の塊が鈴口を抜けて、そのまま子宮に飲み込まれた。
一回目からわずか数十秒後の、二回目の射精。
その重たい快感は俺の尿道に収斂する隙を与えず、鈴口が射精時の広がりを保ったまま固定される。
陰嚢と子宮の間に、尿道を通路とした貢精の直通ルートが出来上がってしまった。
……ルートが開通した状態で吸引されれば、抗う術のない搾精が始まる。
ーどくどくどくどくどくどくどくどくどくっっっっっっっっっ………!!
「ぷっ、ぐ!うぅうぅぅううぅぅおぉぉぉぉぉあ…………っっっっ!!!!」
「ふぁっ、ああああぁぁああぁぁああああぁぁぁ…………っっっっ♥♥♥♥」
苦悶に似た強烈で暴力的な快楽に獣じみた呻き声をあげる俺。
絶頂を齎す精液を間断なく子宮で吸い上げる快感に歌うような嬌声をあげるウィルマリナ。
キスを続ける余裕もなく、互いを抱き締め、否、しがみついて快感が通り過ぎるまで耐える。
じっくりと快楽に煮込まれ煉られて吐き出したのと違い、生産されたてのさらさらとした精液。
まるで放尿でもしているかのような勢いと量で放たれる。
彼女が吸い上げ続ける限り、放たれ続ける。
三回分、四回分、五回分、六回分………
カウントするのが億劫になるほど大量に吐精、貢精して、ようやく止まる。
許容量一杯になった子宮が吸引を止めたからだ。
「かはっ……は……っ……!…あぁぁっっ…………!!」
「ああぁ………♥♥………ぁぁぁぁぁぁ………♥♥♥」
止まっていた呼吸を再開して、肺に酸素を取り込む。
心臓がバクバクと早鐘を打つ。全身がの毛穴が開き、汗がどっと噴き出してくる。
……インキュバスでなければ心臓が止まっていたかもな……。
疲労がすぐに回復するとはいえ、人間だったらショック死しかねない快感に曝されたら、流石に危機感を感じる。
………それでも今では病み付きになってしまって、自重する気なんて起きもしないが。
呼吸を整えつつ、身体に溜まった疲労が回復するのを待つ。
俺の下のウィルマリナは……
「ぁぁ……♥、ぁは………♥♥……ぁ、なたぁ………♥」
俺を拘束していた手足をシーツに投げ出し、四肢を弛緩させて快感に倒れ伏していた。
彼女も連続絶頂で忘我の境地にあるらしく、快楽に蕩け焦点のぼやけた瞳で俺を見上げていた。
喜びに蕩けに蕩けたその笑顔は筆舌に尽くし難いほど素敵で、無尽蔵の愛おしさが込み上げてくる。
半開きになっているウィルマリナの唇に、吸い寄せられるようにキスをした。
弛緩して力が入らないのだろう。
いつも俺の舌を捕まえてはしゃぶりつくす彼女の舌が、今はただ突き出されるだけだ。
彼女の後頭部に手をまわし、あやすように髪を撫でながら、舌を絡める。
「ぺちゃ………ちゅるっ……ぅん……ちゅっ……」
「はぁ……♥、チュッ……ぁむ…………♥」
たっぷりと唾液を載せて、彼女と舌を絡める。
ウィルマリナが水分を求めるように、執拗に俺の舌を吸う。
精液には及ばないが、唾液にもそれなりに精は含まれているのだそうだ。
ゆっくりと疲労を癒すのなら、精液を直接子宮に注ぐよりも、じっくりとキスをするほうが良い。
キスを通じて唾液を注いで、彼女の疲れを癒す。
脱力して俺にされるがままだったのが、次第に舌の動きが強くなっていった。
シーツに投げ出されていた腕が再び俺に巻きついて、強く抱き寄せる。
活発になった彼女の舌に負けじと、俺も彼女の唇を強く吸う。
腰を振っていた3倍以上の時間をキスに費やして、再び俺達は動き始める。
子宮を精液で満たすのも極上の快楽ではあるが、俺達にとってはまだまだ準備運動でしかない。
「ウィルマリナ、足を揚げて」
「ん………♥」
ウィルマリナの片足を揚げさせて、抱きかかえる。
もう片方の足を跨いで、俺の脚で挟み込む。
『マツバクズシ』とか書いてあった体位だ。
結合が浅くなってしまう代わりに、男側の動きに自由が利く体位だ。
子宮と亀頭を触れさせるのにも腰を深く突かねばならないが、今からすることには一番都合が良い。
二人で色々と試して、この体位が一番良いという結論に至ったのだ。
上体が離れてしまったのを惜しむように、ウィルマリナの手が俺の身体に触れる。
彼女の足を抱きかかえていないもう片方の手で、彼女の手を握る。
ウィルマリナが安心したように笑みを浮かべるのを見て、交わりを再開する。
激しくは腰を振らない。
ゆっくりと膣内をペニスで撹拌する。
子宮に収まりきらなかった精液と、新たに分泌された愛液。
掻き混ぜられて膣の中で泡立ち、ミックスジュースになる。
ぐちゃり、ぐちゃり、と
卑猥な粘液質な音を立てる。
俺と彼女の結合部から、泡立った白濁の混合液が零れ落ちる。
ウィルマリナが俺の精液を零したことに悲しまないよう、ペニスで突き上げ、刺激を与える。
「あぁぁぁっ………♥、イィっ………♥」
彼女の膣肉をじっくり掻き混ぜ、精液を馴染ませる。
十分な量の精液が染み込んだ膣肉は、満足したかのように弛緩してペニスへの拘束が緩くなる。
すると、より深く、より奥へとペニスを挿入できるようになるのだ。
―ぐちゃっ……ぐちゅっ……ぐちゅっ……ぐちゅっ……
膣をかき回してほぐす。
腰を一層深く突き出して、子宮を突く。
ただし、強く突き上げることはせず、小刻みに子宮を亀頭で小突く。
抽挿でポンプが水を吸い上げ、吐き出すように、精液が子宮と膣内を循環する。
容量一杯まで精液を受け取った子宮の口は、鈴口に吸い付くことなく亀頭のキスを受け入れる。
抽挿することで子宮と膣内に満ちた精液が流動し、ウィルマリナ曰くまるで子宮内射精をされ続けている気分になれるのだそうだ。
子宮口を抉るように、亀頭をぐりぐりと押し付ける。
このあとに待っている、意識がバラバラになるような交わりの前準備だ。
「ンっ……!!ヒッ……♥♥ンふっっ……!!」
枕に顔を埋め、小さく悦びの呻き声を漏らしながらウィルマリナが快楽を堪える。
子宮に精液を注がれるだけで達してしまう彼女は、精液が膣と子宮を循環するだけでも達してしまう。
今のように子宮が精液が満たされた状態で刺激を与えられれば、絶頂に達したまま降りてこれなくなる。
―グジュゥッ、じゅぽっ…じゅぽっ…じゅぽっ……っ
「ンンッ!……ンッ……ふっ………!」
イキ続ける快楽を、ウィルマリナは只管息を殺して耐え続ける。
この先に待っている快感を味わうためには入念な準備が必要で、同時に体力も必要とする。
互いの体力をほぼ使い切ってしまうその交わりは、残った体力が多ければ多いほど長く愉しむことが出来る。
その体力を温存するためにも、今は無遠慮に快楽を愉しめないのだ。
精によって体力を回復できる魔物娘は半永久的に交わることができる。
……といっても、体力の回復速度を上回るような激しい快感に身を曝せば、流石に限界を迎えて気絶してしまう。
至高の快楽を愉しむには互いのペース配分に気をつけて、計画的に交わらなければならない。
自制しながらの交わりは難しいものがあるが、これを越えた先に待っている“ごほうび”にはそれだけの価値があるのだ。
それを知っている俺達は、快楽を愉しまずに只管耐える。
二人とも言葉を交わす余裕も無い。
意識を手放さないように、歯を食いしばって小刻みな絶頂に耐える。
子宮を小突いてほぐしながら、既に暴発寸前のペニスに意識を集中して、射精を耐える。
どれくらいそうしていただろう。
ウィルマリナが涎と涙で枕を濡らし、結合部から漏れでる混合液でシーツがグショグショになった頃、ようやく……
ーヂュ…………リュッ………
亀頭がほぐれた子宮口にめり込んだ。
「……ィル、マリナッ……!」
焦らしに焦らされた俺も、最早限界だった。
準備が整ったことで、愛する妻に開始を伝える。
「ァァアっ………うんっ………!」
ようやく地獄の、否、極楽の責め苦から開放された妻も、待ちわびたように歓声を挙げる。
ほぐれた口が元に戻る前に、体勢を側位から正常位に戻す。
軽い絶頂で炙られ続けて力が入らないのか、両脚を巻きつけてのホールドはしてこなかった。
その代わり、自由な尻尾が巻きついてきて痛いくらいに俺を締め上げた。
その期待に応えるために、俺自身も至高の快楽を愉しむために、彼女の細い腰を両手で掴み、そして
腰を強く突き出すと同時に引き寄せた。
ーぢゅっ……!…………りゅるんっっっ!!
通過する。
ほぐれにほぐれた子宮口に、亀頭が丸ごと呑み込まれた。
二人して咆哮するような喚き声を挙げる。
完全に一つになった快感に、絶叫した。
互いの、否、己の半身が感じている快感に魂を震わせる。
亀頭を呑み込んだ子宮の口は、押し広げられた力に抗おうと復元する。愛する侵入者を締め付ける。
軟骨のように硬く、ぬめって滑る子宮壁が、ちょうどカリの部分を捉えて俵締めする。
締め上げられても外に押し出されることが無い亀頭にかけられた圧力は、溜まりに溜まったエネルギーと結びついて―
―暴発が始まった。
―ドビュ、ビュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルっっっっっっ!!!!!
爆発する、射出する、噴出する。
その勢いで子宮から亀頭が抜けてしまわないように、力いっぱい妻の細腰を抱き寄せる。
「―――グゥっっ………オオオォォォオォォォオッォォォオォォォっっっっ!!!!!!!!」
「―――ア♥………ァァアアァアアアアァアアァァァアアアアァアアアァァァっっっっ♥♥♥♥♥♥♥♥」
咆哮し、絶唱する。
許容量を遥かに超えた絶頂に、二人して身を曝す。
ただひたすら夫を最奥で受け止める。
ただひたすら妻に自分を捧げ続ける。
ただひたすら愛する半身を愛する悦びに身を委ねる。
至高の快楽を与えられて、精液を塗りたくられて蕩けていた膣壁が覚醒する。
愛する夫に更なる快感を与えんと、攻撃を再開する。
微細なヒダの一つ一つが肉幹に絡みつき、いや、まるで吸盤のように吸い付いてくる。
このまま、自らの一部として捕りこんでしまおうとするように。
子宮口はカリをがっちりと捉えて、滑りながらも締め上げてくる。
つるつるした感触で亀頭を容赦なく擦りあげる。
射精が止まらない。
抽挿もせずにじっと妻の最奥に留まっているだけなのに、自分を取り込まれる感触に為す術もない。
壊れた水道のように、生産され続け、瞬時に練り上げられてゼリーになった精液を吐き出し続ける。
―ビュルルルルルルルルルっ
――ビュルルルルルルルルルっっ
―――ビュルルルルルルルルルっっっ
途切れては、また射精して、射精して、射精して。
妻のお腹がぽっこりと膨らんでも、まだまだまだまだ射精が続く。
耳に聞こえる、びちゃびちゃ、ぼちゃぼちゃという音はきっと、収まりきらなくて結合部から零れ落ちた精液がシーツに溜池を作っている音だろう。
今日も盛大にベッドを汚してしまいそうだ。
「アァァァ♥♥♥ああぁぁ♥♥♥ああぁぁああぁぁぁぁっ♥♥♥♥♥」
振り切れた絶頂へと押し上げられた妻は、涎を零しながらまるで歌うような嬌声を挙げる。
両脚はピンッと引き伸ばされ、両腕は俺を力いっぱいにかき抱き、翼は俺を包み、尻尾は俺を締め付ける。
――ああ、愛おしい。
それしかなかった。
止まらない快楽のなかで、粉砕されていく意識のなかで感じるのはその一念だけ。
それは、俺の最も根幹にある、俺の存在意義であり理由そのもの。
「―――ッ……ぃしてる………っっ」
忘我の境地で、それを開いた口から吐き出す。
言葉として紡ぐのではなく、己の内にある、己の根幹を為す力を包み隠さずそのまま吐き出す。
ビクリ、と、妻が身震いする。
「愛してるっっ……!!
ウィルマリナっっっ………愛してるっっっっ!!!」
引き伸ばされていた脚が、再び俺に巻きついてきた。
その僅かな衝撃だけでまた、射精した。
「愛してるぅぅ……!!
わらひもっ………愛してるぅぅぅっっっ!!!」
搾り出すように、妻も己の内を吐き出す。
抱き締めあう。強く、強く。
このまま、魂諸共一つになってしまおうといわんばかりに。
「愛してるっ!」
「愛してるぅっ!」
世界に音が無くなっていく。
「愛してるっ、愛してるっ、愛してるっ、愛してるっっ!!」
「愛してるぅっ、愛してるぅっ、愛してるぅっ、愛してるぅぅっ♥♥」
感じられるのは彼女のことだけ。
「俺のっ
俺だけのウィルマリナッッッ!!!」
「ひぁぁぁぁっっ!!
あなたぁぁっ♥ワタシだけのっ……あなたぁぁっっ!!!」
自分が何者か、自分が誰のモノなのか。
分かりきったことを口にするだけで、俺達は燃え上がる。
燃え上がり、燃え盛り続ける互いの魂を吐き出し続ける。
喜びと悦びとが混じりあって反応して、更なる喜びと悦びへと燃え上がる。
愛おしさが何倍も何倍も増幅され、濃縮され、膨張する。
意識が掠れる。
体力が尽きつつある。
なら、これで最後。
今日のところは、だが。
「愛してるっっっ!!!ウィル、マリナぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
「大好きぃぃっっ!!!愛してるっっ!!ワタシのっ、ワタシだけの―――ッッッ!!!」
愛する妻に名を呼ばれ、最後の精液塊を吐き出す。
ドグンっっ!!、と、衝撃のような精の塊を子宮に直接注ぎ込む。
ペニスが爆発四散して、彼女の中に吸収されていく錯覚の中、ホワイトアウトする視界。意識。
意識を刈り取られて動かなくなった身体が、彼女の上に突っ伏した。
快楽でバラバラにされ、真っ白く混濁した世界のなか
彼女のモノである俺の身体が
俺のモノである彼女の身体が
忘我の中、どちらからとも無く独りでに動き出して
愛する半身と唇を重ねた。
ふと、目が覚めた。
「んぅ………すぅ……すぅ……」
胸元では、俺に頭を預けたウィルマリナが安らかな寝息を立てている。
目を覚まして、身を清めて、清めている最中にまた交わってその後、また二人揃って気絶するまで交わって……
そのまま眠ってしまったらしい。
俺達にとっては日常と化した光景だ。
一日に交わった回数を数えるのは、もう随分前にやめた。
覚えられないし、その意味も無いからだ。
初めて結ばれたあの日から、一日の例外もなく俺達は交わり続けていた。
交わって、疲れたら寝て、キスと抱擁をしながら過ごして、また交わっての繰り返し。
その日の交わり方に違いはあっても、することに変わりはない、変わり映えのない毎日。
不思議と飽きることはない。
感じる快感は日に日に大きく深くなっていくし、ウィルマリナへの愛しさも際限なく膨らみ続けていく。
ウィルマリナも交わりを重ねる度にその美しさに磨きがかけられていき、最早、病的とも言えるほど妖艶になってきた。
何よりも、ウィルマリナと繋がっているときは思考を含めた何もかもが彼女に支配され、他の事を考える余地が無くなってしまうのだ。
それこそ時間の感覚を忘れて、三日三晩のつもりが一月交わり続けたことすらある。
ウィルマリナと繋がっているときは、何もかもが彼女で塗りつぶされてしまう。
問題は丁度今のように、彼女と繋がらずに眠り、一人で目を覚ましてしまったときだ。
そんなときは、考えても仕方のない不毛な考えばかりが浮かんでくる。
あの日、初めて結ばれた日から、もう随分と経つ。経ったように思う。
表現が曖昧なのは、正確な時間を把握していないからだ。
部屋の隅に追いやった、手入れをしていないガラクタ。調度品。
嘗ての目に痛いほどの煌きはくすんでしまって見る影も無い。
そのくすみ具合から少なくとも10年以上が経過している……ようだが、実感が湧かない。
魔法処理で一切の老朽化が起きないベッドの天幕を見上げて、久しぶりの一人の思考に耽る。
インキュバスになった影響だろうか。
最近、ウィルマリナ以外の事柄……特にウィルマリナ以外の女性に対する認識力が低くなり、今に至るまでの記憶が酷く曖昧になってきていた。
ウィルマリナが敬愛しているあのリリムの名前すら、教えられた次の日には忘れてしまうほどだ。
昔の記憶を失くしている訳ではないが、なんというか、自分の記憶が自分の物でなくなってきているような……
思い出が、自分の実体験ではなく、誰かの記憶を映像で見せられている『借り物』のような違和感を感じているのだ。
自分がどうやって生まれたのかは憶えている。
どこで生まれ、何を考え、どうやってウィルマリナと出会い、いかにしてウィルマリナを愛するようになったのか。
それは紛れも無い、自分の記憶として焼きついている。
問題はそれ以外。
ウィルマリナと引き離されてから、ウィルマリナと結ばれるまでの記憶が、酷く曖昧なのだ。
ウィルマリナの役に立ちたくて自分を磨き続けた。
ウィルマリナの傍にいられることを諦めても諦めきれず、必死に強くなろうと足掻いた。
ウィルマリナの隣に居られないのなら、せめて役に立ちたいと、そう考えて努力していた。
その記憶は今の俺を構築する大切なものだ。忘れるはずが無い。
だが……
その時の俺の傍には、ウィルマリナではない『誰か』が居なかったか?
顔も声も名前も思い出せない。
靄がかかっていて、本当にそんな存在が居たのかどうかもはっきりしない。
ただ、そんな気がするだけに過ぎない。
例えば……
憎まれ口を叩きながらも声無き声で助けてと叫び続けていた小さな女の子
共に過ごし、ウィルマリナと同じく力になりたいと、頼られたいと思っていた憧れの女性
周りと違う存在であることに苦しみ続けていた、君は俺達と違ってなんかいないと伝えたかった女の子
理由を問うこともせず、俺の非才を嗤うこともせず、望むままに俺を鍛えてくれた面倒見の良い上司であり恩人
助けてあげたかった人と、助けてくれた人。
そんな人たちが居た『ような気がする』。
そんな、大切な人たちを置き去りにしてきてしまった『ような気がする』。
ウィルマリナだけを愛することには不必要な記憶が、どんどん削れてぼやけてしまっていた。
今の俺は、ウィルマリナを愛するだけの生き物だ。只管に彼女を愛する存在。
そのことに疑問は無い。
俺はそうなることを望んだ。選んだ。決めた。
紛れも無く、俺自身の意志で、だ。
そして俺は、ウィルマリナだけを愛し続ける生き物へとなった。
不満など感じはしない。
彼女を愛し愛されることは幸せだ。
ウィルマリナと愛し合うこと以外に、俺の幸福など有り得ない。
なのに感じる、この後ろめたさは………。
そう、これは、後ろめたさだ。
自分のすべきこと、役割、責任から逃げ出した。
人間は自分を愛してくれる人たちを大切にしなければいけないのに。
俺は、それを放棄して逃げ出したのだ。
一番愛しい人を愛して、その人以外のすべてを置いてきた。
人間として生きること、人間で在り続けることから逃げ出してきたのだ。
どんなに言い繕ってもその事実は変えることができない。
かといって、もうその後ろめたさを償おうという気も起きない。
人間を辞めれば、強くなる。
魔物は、インキュバスは人の進化した姿なのだと誰かが言った。
嘘だ。
肉体はともかく、俺の精神は人間だった頃と比べて遥かに脆くなっている。
俺はもう、ウィルマリナと離れ離れになることには耐えられないだろう。
試したことはないが、確信めいた予感があった。
きっと俺は、ウィルマリナを失えば、気が触れて、壊れて死ぬ。
ウィルマリナがあのリリムに呼ばれて、レスカティエの防衛に行ったとき。
ウィルマリナが傷ついたらどうしようと、気が気でなかった。
ウィルマリナと半日程度も離れていなかったのに、半身を引き裂かれるような寂しさに襲われた。
彼女の為に死ぬ自信ならあるが、彼女の幸せを思って自ら身を引くことはもう無理だ。
人間だった頃は、ウィルマリナが誰と結ばれても、心から祝福するつもりだった。
俺よりもずっと彼女に相応しい、勇者やどこかの国の王子様に嫁いだほうが彼女の為になるだろうと。
今は、その『もしも』の光景を頭に思い浮かべるだけで、吐き気すら催す。
―いやだ。ウィルマリナは俺のモノだ。
――誰にも渡さない。誰にも触らせてやらない。
―――彼女を愛する男は俺一人だけ。彼女が愛する男は俺一人だけ。
――――俺だけのウィルマリナを、誰にくれてやるものか。
ほんの少し不快な光景を思い浮かべるだけで、こんなに狭量な独占欲が噴出してくるのだ。
俺の心は、弱い。どうしようもないほどに弱くなっている。
しかも、その弱さを克服しようとも思わなくなってしまった。
今の生活を変えたいという気も起こらない。
どうしようもないほどに弱くなった俺は、どうしようもないほどに彼女に依存してしまっている。
もう俺には、彼女を愛し続けること以外に人生の選択肢なんて無いのだろう。
ならば、と、思う。
ならば、命の限りウィルマリナを愛し続けよう。
人間だった時から今に至るまで、ウィルマリナを大切に想う気持ちにだけは変わりがなかった。
俺が人間性を未だに失わずにいられるのは、きっと俺のこの芯の部分が変わっていないから。
ウィルマリナへの想いだけが、俺を俺として保っている。
ウィルマリナを想うことだけが、俺が俺である意味、なのだと思う。
主神に背いた俺達は、天国には行けないのだろう。
人でなくなった以上、地獄に行けるかも疑わしい。
構うものか。
俺は天国にも地獄にも行かない。
ずっとウィルマリナの傍に居る。
二度とウィルマリナを悲しませたりはしない。
永遠にウィルマリナを愛し続ける。何があっても。
人であることから逃げ出した俺だけど。
ウィルマリナを愛することだけには嘘をつかない。逃げたりしない。
きっとこれからも俺は『後ろめたさ』に襲われるのだろう。
開き直ることはできないけれど、受け入れよう。
受け入れて、その上でもっともっとウィルマリナを愛し続けよう。
それがきっと、彼女を護る力の無い、弱い俺に唯一できる事。
ウィルマリナが、ウィルマリナを愛することが、俺の全てだ。
ウィルマリナが俺の全てだと、それだけは迷い無く言うことが出来る。
明日も、もっとウィルマリナを愛し抜こう。
二人でずっと一緒に、生きるために。
12/03/20 22:57更新 / ドラコン田中に激似
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