連載小説
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力が漲ってくる・・・!
「ハァハァハァ・・・シノノメクン・・・!」
「ハァハァハァ・・・可愛いぞ・・・!」
 まいった。こうまで執念深い変態だとは思わなかった。いや、誰も思わないだろう。第一に―
「普通、ミサに興奮するだろう!?」
 そう、男が男に興奮(性的な意味で)。二人もいるとは・・・。しかも似たような感じだし。
「フフフフフ、愛に性別の壁なんて無いのだよ。」
「私とキミらでは、次元が違う。」
「ならば、その次元すら超えてみよう。」
 男が女に言ったら、最高にかっこいいセリフなのに・・・。いいセリフの無駄遣いだ。
「それよりシノノメクン。キミ・・・まさか下賎な魔物と交わっていないだろうね?」
 ・・・まてよ、ここで『すでに経験済みだ。』とウソをつけば、こいつら諦めるんじゃ・・・?
「残念だったな既に「「「うそおおぉぉ!!」」」」経験済―なんでこの場の全員が反応するんだ!?」
 おかしい。何故誰もウソと疑わないんだ・・・?特にミサ。
「う、ウソだよね!?タッちゃん!まだ純粋だよね!?」
「とりあいず、全世界の経験者に謝れ。あまりにも失礼だ。」
「私が最初といったではないかああぁぁ!!」
「近い!近いよ!半径10m以上離れろ!」
「人婿・・・人婿・・・ハァハァハァ!」
「なんだその『人妻男バージョン』みたいな呼び方は!そして、そんなことにも興奮するな!あと近い!」
 だめだ!一人じゃとてもつっこみきれない!このままでは、予想していた状況とは違うが、別の意味でピンチだ!

―・・・元奴隷?
「アナタが私をおいて逃げたあの日から、ずっと会いたかったですよ?」
「好きだから殺すなんて理論、私は求めてないわ。」
 物凄い険悪な雰囲気。タツキのほうも(いろんな意味で)危険だが、こっちのほうがやばいのかも―
「あれ?私関係なくない?」
 そういえばそうだ。そもそも私がつるんでいる必要は無い。なーんだ、よかったよかっ―
「教団特殊異端査問会の名の下に、両名を倒滅します。」
「あんたがついてくるから!」
「あらやだ。人のせいにして。」
 信じらんない! (元から信じてないけど)どうしよう。私の『魔道武具』は基本的に補助用。でも、こんなダークエルフの補助はしたくない!
「いきますよ・・・!」
「悪いけど―」
 そうマリアが言った瞬間、男(なんて名前だっけ?)は体中のいたるところから血しぶきをあげた。・・・え!?
「か・・・は・・・!なにを・・・!」
「―あなたにもう、興味ないから。」
 そういってマリアは、懐から錆びた懐中時計を取り出した。
「そ・・・れは・・・?」
「やあね、私が何の細工もなしに、ペットを捨てるわけ無いでしょう?」
 ・・・タツキにもアレを仕掛ける気なのか、後でじっくり問い詰める必要があるわね。
「これはダークエルフのみが使える特殊な『魔道武具』なの。情報を持ってなくても仕方ないわ。」
「うぅ・・・ぐ・・・。」
 出血が止まらず、意識が消えかかっているわね・・・。っていうか、さすがダークエルフ。いざとなるとどんな相手でも容赦ないわ。
「最後に言い残したいことはある?」
「・・・・・・。」
 完全に意識が消えたみたい。それより―
「あんた、どんだけえげつない『魔道武具』持っているのよ!」
「いいじゃない。敵なんだし。」
「そういう問題じゃない!」
 いくら敵だからって、あまりにむごすぎる。
「この『魔道武具』―『時渡りの古傷(リライブ・キル)』は結構扱いが難しくてね、周囲にいる生き物の、現在、過去の傷を集約して、ターゲットに擦り付けるの。」
「本当にゲスな『魔道武具』ね。」
 つまり、熟練した戦士にとっては鬼門となる代物ね。
「まあ、一回使うとその反動でただの時計になっちゃうんだけど。」
 ・・・能力のわりに、フィードバックが優しい・・・。
「つまり、問題は私たちじゃなくて、タツキのほうってことよ。」
 そういいながら、倒れた人のうえに腰掛けるダークエルフ。・・・この男の人、本当にかわいそうね・・・。

―「どこだ!?シノノメクン!」
「キサマが飛びついてくるからこうなるのだ!」
「人のせいにするのか!?」
 先程、両変態が熱烈抱擁の構えで突進してきたため、咄嗟に回避。二人が激突している間にひとまず、隠れて今に至る。
『お前、逃げすぎだろ。』
『全くだ。』
 うるさい、あんな変態とまともにやり合っていられるものか。
「どうするの?タッちゃん。」
 そう、前回のように誰かに擦り付ける作戦は使えない。
「初めては戻ってこないんだよ・・・?」
 まだ信じていたのか。まあ、比較的ミサは常識がある。故に後からでも誤解は解けるだろう。
「なんしてるの?」
「「ほえ?」」
 ミサとハモった。
「・・・・・・?」
 そこに単眼の魔物がいた。えーっと確か。
「サイクロプス?」
「そうだけど。あ、名前はクロ。13歳。」
 たしか武器を作るのが凄くうまい魔物だ。魔物の中でも、比較的慎ましいし。
「・・・いや、待てよ。」
 今、ここで武器を借りるのって、結構いい案じゃないか・・・?
「すまないが、武器を貸してほしい。」
 ここは変に言うより、直球で言った方がいい。
「さすがに商品は貸せないけど・・・試作品なら。」
 そういって彼女が取り出して物は―

 五個ほどボタンが取り付けられた、ガントレット。

「・・・武器?」
「あ、ごめん。格闘家じゃなきゃ無理だね。」
「いえ、借ります。」
 早速装備。・・・思っていた以上に軽いし何より。
「力が漲ってくる・・・!」
「まあ、試作品だけどね。」
 さすがサイクロプス!試作品でコレということは、商品化したらかなりの代物に!
「・・・いって来る。」
 今の私なら確実にあの変態を打倒出来るだろう。と、その前に。
「コレはなんという名前なのだ?」
「予定では『打撃数計算機(カウンター・ナックル)』。」
 ふむ、どんな字にそのルビが振られるのかは判らないが、名前だけでも十分に強そうだ。
「今度こそいって来る。」
 そういって大通りに出ると、すぐにゴレオが来た。
「フフフ、やっと見つけたよ、シノノメクン。」
 ガントレットの様子をさりげなく確認してみる。・・・うん、問題ない!決してよく考えたらわからないからいいや、という理由ではない。
「フヘへ・・・。」
 気味の悪い笑みを浮かべながら、ムチを構えようとするゴレオ。だが甘い!
「がら空きだ。」
 今の私はガントレットの力で、身体能力が向上している(気のせいじゃなかった)。懐に入るなど容易い!がらあきの頬に渾身のフックを叩き込む!
『一っぱああぁぁつ!!』
「・・・・・・。」

 ・・・・・・はい?

「おかしいな、いまガントレットから変な声が・・・?」
「好きだ!シノノメクン!」
 ムチを捨て、両手を広げて飛び掛ってくるゴレオ。半歩下がって、顔面にストレートを叩き込み『二はああぁぁつ!!』、さらに、脳天にチョップを打ち込『三ぱああぁぁつ!!』む。・・・うん、この声は気のせいじゃない。
「何だコレ!」
 おかしい!サイクロプスってもっと凄いで武器を作るんじゃなかったのか!?いや、確かに凄いけど!なにこのオモチャ的な演出!
「まあ、試作品に誤動作はつき物だしね。」
「誤動作のレベルじゃない!いますぐこの渋くて煩い声を止めるのだ!」
「まあまあ、どうせ、試作品の誤動作だし。」
 意味がわからない。どう誤動作すれば、こんな声が出るんだ・・・?
『本当に誤動作なんですか?』
『いや、闘技場とかでタイムアップのときの判定に、何発攻撃したかがわかるようにすれば、便利かなって思って作ったから、誤動作じゃないよ。むしろ成功!』
 うしろのほうで、なにかミサと話しているがそれ以上に周囲の視線がいたい!
「フッ、我が義弟を倒すとはやるではないか、シノノメクン。」
 もう一人の変態にも追いつかれた。
「すぐに、手の甲のところのスイッチを押すんだ!」
「あ、ああ。」
 言われたとおりにスイッチを押す。・・・この世界にも『ティロリーン!カウントがリセットされたゾ☆』スイッチなんて言葉があるのか。・・・もう、どこから突っ込みを入れればいいか判らない・・・。
「ほら!私の試作品だ!もっと性能チェックをしてくれ!」
「それが目的かキサマ!」
 はめられた!サイクロプスなんか嫌いだ!
「フハハ!覚悟!シノノメクン!」
「今だ!『FVボタン其の一』を使うんだ!」
 スイッチとかボタンとか統一しろよ。えっとコレでいい『ハッハッハ!尋常に勝負!』のか―やっぱりこうなったか!
「お前は何が作り『一っぱあぁぁつ!!』たいん『二はああぁぁつ!!』だよ!?これ『三ぱあぁぁつ!!』じゃ武器以『四ぱああぁぁつ!!』前にいろいろと『五はああぁぁつ!!』だめだ『見事だ・・・シノノメクン・・・!』ろ!お前やられるの早いな!」
 無意識のうちに体が動いて、まだ名前すら知らない敵をぼこぼこにしてしまった。・・・だが、一番の敗北感を感じているのは私だろう。
「おい、『FVボタン』に何の意味があったか、じっくり教えてもらおう。」
「『FV』は『Fightong Voice』の略。ついてたらなんか面白いかなと思って。」
「理由はそれだけ!?しかも、まじめな戦闘中に『今だ!』ってタイミング狙って言ったよな!?」
「まあまあ、そんなときは『FVボタン其の三』だ。」
 コレでへんな内容だったら殺す。
『負けたっていいじゃないか。ニンゲンだもの。ミッツ・王』
「・・・・・・。」
「よし、判っているな。今から説教だ。」

―あーあ。せっかくタッちゃんとお出かけに来たのに。タッちゃんってば、お説教始めちゃったよ・・・。
「はあ・・・。」
「どうしたの?ミサ?」
「ふええぇぇ!」
 慌てて後ろを振り向くと、マリアさんと、とても不機嫌な顔をしたミリアムさんがいた。
「せっかくタッちゃんとお出かけに来たんですけど、タッちゃんがお説教始めちゃって。」
「あらあら。なら、今度はもっと凄いこと教えてアゲル・・・。今日もまた、私の部屋に来なさい。」
「はいっ!師匠!」
 何て頼もしい!コレで私もタッちゃん争奪戦を巻き返せる!
11/05/01 23:04更新 / ああああ
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■作者メッセージ
今日は遅れていた分ちゃんと更新できました。
そろそろ、龍紀と誰かの(体的意味で)絡みを書きたいです。

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