ガラクタ道の終焉
俺の名は、ジャン・クロード。
今でこそ、貴族となったが、元はスラム街で生まれ育った貧しい貧民だ。
親がいない孤児だった俺は、生きるためなら何だってやった。
泥棒、裏切り、密売・・・さまざまな悪行をおこない、気がついたら傭兵家業に身を染めて、荒くれ者どもと共に、死の香りが漂う戦場でその日暮らし・・・。
自分が何のために生きているのかわからない日々が続いた。
しかし、そんな俺に意外なところから転機が訪れる。
妖魔貴族であるヴァンパイア。ローズ・フォン・ストロングホールドから、領地に攻め入ってくる教団撃退のために、戦力となる傭兵達を人、魔物問わず召集しているという噂が俺の耳に入った。
自分の存在意義がわからなかった俺は、何気も無く、金に目が眩んですぐさまその召集に駆け寄った。
どうせ何時朽ちるかわからない命、死ぬにしろ名を上げるにしろ早いほうがいい。
そんな心持ちで俺は戦場に赴いていた。
そして、広大な平地で、教団と妖魔貴族との壮絶な戦いは始まった。
あちらこちらで、阿鼻叫喚の地獄絵図が怒号と共に広がる。
教団の騎士達は、人であろうとも金で魔物に味方する俺達を激しく罵倒したが、無神論者である俺に、教団の教えなど、くだらない戯言にしか過ぎない。
こっちは、自力で、毎日毎日、生と死の狭間を味わっているんだ。
神さまなんて、糞喰らえ。
正しいのは自分と金だけだ。
それが、今まで孤独のなかで生きて汚れきった俺の真実だった。
金を出すなら例え人だろうが魔物だろうが、多く出すほうに味方する。
その方が、扱うほうも合理的で扱いやすいだろう。
戦の決着は辛くも妖魔貴族の勝利で終わった。
その時、軍を仕切っていたのは無論、この土地の領主であるローズ・フォン・ストロングホールドだ。
彼女は、自分が前線で指揮を取りつつも、この戦いで生き残った猛者達に感謝の言葉と、多くの報酬を支払った。
今時、珍しく果敢で太っ腹なその性格に、多くの傭兵達が、関心を示す。
彼女は飴と鞭の使い方を良くわかっていた。
ぬるま湯に浸っているその辺の貴族とは違い、非常に頭のキレる存在だ。
対して俺は、大きな成果を上げることも出来ずにこの戦いで右腕を失った。
これで、まともに金を稼ぐことが出来なくなる。
報酬は貰ったが、生活で金を食いつぶしてしまえば、一年も持たない金額だった。
このまま朽ち果てるしかないか・・・。
途方にくれていた俺に、突然領主が声を掛けてきてこう言った。
「その身体では、傭兵として生きていくのは心苦しいものがあるだろう。私の屋敷にこないか？」
それは俺にとって、またとない転機であり、二度と出ることが出来ない牢獄への招待でもあった。
コンコン、と金細工が施された部屋の扉にノックを鳴らして、領主の返事を待つ。
「入りなさい」
「・・・失礼致します」
その返事と共に、俺は彼女がいる部屋へと頭を下げながら入室した。
領主、ローズ・フォン・ストロングホールドは、机に腕をかけながら、長い金髪を靡かせて、気だるそうに書類に目を通している。
彼女は、色恋事に無縁な俺の目から見ても、凄まじいほどの美しさを秘めていた。
先ほども言ったとおり、長く、美しいシルクのように柔らかな金髪に、女性なら誰もが羨むような長身的なスタイル、小顔で整った顔は通りかかった男性が皆振り向くほど、凛々しく麗しい。
俺は少し緊張しつつも、すぐさま、いつもの調子を取り戻そうと、息を整え言葉を紡いだ。
「本日より此方のお屋敷にお世話になります。ジャン・クロードと申します。僭越ながら領主様のお役に立ちたいと・・・」
「堅苦しい挨拶はいいよ、ジャン。それより、早速頼みたいことがあるんだ」
「・・・は、なんなりと」
領主は、俺の挨拶などどうでもいい様だ。
確かに、貴族にとって傭兵なんてものは薄汚い、荒くれ者に他ならない。
そんな傭兵上がりの俺の挨拶など、聞きたいとも思わないだろう。
さて、早速仕事か・・・右腕を失った俺にも出来ることならいいのだが・・・。
しかし、領主が言った次の一言は、俺の想像を遥かに超えるものだった。
「今、メイドに準備をさせるから、私と一緒にお茶を飲んで欲しいんだ」
思いもよらない言葉に、は？・・・と俺は心の中でそう口走っていた。
「お茶・・・ですか？」
「ああ、隣国から上質なお菓子を取り寄せてね。是非、君と一緒に食べたいと思ったんだ。・・・駄目かな？」
「い・・・いえ、滅相もない。喜んでご一緒させていただきます」
どうしてこうなった？
今・・・俺こと、右腕を失くした落ちたる傭兵ジャン・クロードは、小鳥達が囀る見晴らしのいいテラスで、妖魔貴族であるローズ・フォン・ストロングホールドとお茶を共にしていた。
「どうだい？このクッキーはね、この香ばしくて芳醇な味が向こうではとても人気らしくて、なかなか手に入り辛らいんだが、どうしても君に食べて欲しくてね」
そういいながら、彼女はビスケットを一口齧り、優雅にハーブティーを啜る。
俺も、クッキーを一つ頂戴する。
適度な甘さと濃厚な香りと味が、口の中に広がり、極上の菓子だということが素人でもわかった。
ゆっくりと味わって飲み込むと、すぐさま彼女にお礼の言葉を口にする。
「ありがとうございます。とても美味しいです」
「そうか・・・。気に入ってもらえて良かった。まだあるから好きなだけ食べていいんだよ？」
「いえ、傭兵上がりの私なんかにはもったいない品物です。しかし、どうしてこんな高級なお菓子をわざわざ私なんかの為に？」
「それはね、こんなもてなしでは足りないくらいの恩が君にあるからだよ」
彼女はそう答えると、おもむろに椅子から立ち上がり、俺の側までやって来る。
そして、白魚のように美しい指先で、無くなった右腕の断面をそっとなぞった。
「君のその腕は私のせいで、失くなってしまったのだから・・・」
「いや、これは・・・。私の未熟さが招いた結果です。貴方に罪などありません」
「嘘をついてまで私を庇うなんて、優しいね・・・君は」
そう言って、領主は、紅い血のような瞳で俺の顔を見つめる。
確かに俺のこの腕は、不意打ちを襲ってきた教団の兵士から領主を庇った時に失ったものだが、別に俺がそんなことをしなくても魔物である彼女なら迫り来る敵を自慢の大剣で切り払うことが出来たに違いない。
俺の余計なおせっかいで、彼女を苦しませてしまったみたいだ。
だから、ここまで優遇な待遇を与えてくれたのか。
俺は、一傭兵にまで与えてくれる心優しい彼女の気遣いに感謝し、頭を下げた。
「私の出すぎた行動のせいで、領主様を苦しめることになってしまい誠に申し訳なく思っております。しかし、同情等でこのお屋敷に住まわせてもらう事は、一兵士として情けない事です。どうか、私のこと等お気になさらずこれからも誇らしく妖魔貴族としてのお勤めを全うして・・・」
「私は同情などで君をここへ呼んだのではない！」
俺の話を聞いていた彼女は突如に、凛とした怒声を上げた。
その思わぬ迫力に、俺は口を噤む。
そして、紅い瞳を涙で潤ませながら、彼女は言葉を続けた。
「君をここへ呼んだのは、私と生涯を共にする伴侶にするためだ・・・」
「伴侶・・・私がですか？」
「そうだ、あの大勢の敵との戦いの中、君は自分の命よりも、私の事を守るために戦って、その右腕を斬り落とされた。他の傭兵や兵士達は、手柄を立てる為に、多くの敵を殺すか自分の命を守る事しか考えていない、皆前線で戦う私のこと等、全く気にも掛けなかった。君みたいに大儀を尽くした男は初めてだよ」
「私は別に・・・。貴方を庇ったのは、とっさに身体が動いただけで・・・かえって貴方に負い目を付けてしまっただけです」
「そうじゃない、私の為にそこまで行動してくれたことが嬉しいんだ。金や名声の為だけに媚びへつらう奴等など、私の伴侶には必要ない。君のような果敢な男が私の・・・このローズ・フォン・ストロングホールドの伴侶に相応しい！」
彼女は高らかにそういい終えると、俺の頬を優しく手で挟み、その麗端な顔を近づける。
「ん・・・」
「・・・っ！？」
そして、ゆっくりとその瑞々しく赤い唇を、俺の口に当てた。
数秒後・・・名残惜しそうに唇を離した彼女は頬を赤らめながら、こう答える。
「すまない・・・。いきなりの告白で申し訳ないが、私はこの様にしか相手に想いを伝えることが出来ない・・・どうか、今日一日ゆっくりと考えてみて欲しい・・・。明日の夜、答えを聞かせてくれ・・・」
そう言うと、領主は、マントを翻して、威風堂々と自室に戻っていく。
俺は、彼女の姿が見えなくなるまで、その凛とした後姿を見送ることしか出来なかった。
夜・・・豪華な夕食を頂き、屋敷のメイドに豪華な来客用の部屋を案内されて、俺はすぐさまベッドへと横になった。
あの領主、妖魔貴族のローズ・フォン・ストロングホールドが俺に求愛をするという異常事態に、俺の脳はまだ付いて行かない。
たかだか、一人の傭兵に貴族がここまで本気になろうとは・・・領主様も気に迷っている事この上ない。
伴侶になるという話は断わろう・・・。その方が、彼女の為でもある。
そうと決まれば、この屋敷から出て行く必要があるな。
領主を振った男が、ここで世話になるわけにもいかないだろう・・・。
一時の感情だ。どうせ、暫くすれば冷静になって領主としての自制を取り戻すさ・・・。
そんなことを考えながら俺は、ふかふかな高級ベッドに埋もれながら眠りについた。
翌朝、心地よい眠りから覚めた俺は身支度を整えながら、またメイドに案内されて食堂へと向かう。
馬鹿でかいテーブルには、朝食とは思えないような豪華な食事が用意されていた。
「おはよう、ジャン。椅子に着いてくれ、朝食にしよう」
優雅に、コーヒーを飲みながら、領主は俺に挨拶をして食事を促す。
「おはようございます、領主様。朝食、ありがたく頂きます」
すぐさま、挨拶と礼を交わし、俺も椅子へ着いた。
「昨日は良く眠れたかい？」
「ええ、おかげさまで・・・。あんなに豪華な部屋に泊まったのは初めてでしたので、最初は落ち着きませんでしたが、疲れていたせいですぐに眠ってしまいましたよ」
「私はなかなか眠れなかったよ。君の事をずっと考えていてね・・・」
「ハハハ・・・。そう思っていただけるだけで光栄です」
「今日は、メイドに屋敷の中を案内させよう。終わったら、夜まで好きに過ごして貰って構わない」
そのまま領主と他愛もない会話を続け、慣れないながらも片腕で朝食を片付けていく。
朝食を終えた後、仕事の為に部屋へと向かおうとする領主は、すれ違い様に俺の耳元に唇を近づけてこう言った。
「夜、私の部屋に来て欲しい・・・。昨日の返事を聞かせておくれ」
何故だろう、領主は微笑んでいるのに、どこか有無を言わせない圧力を彼女の声から感じる。
「・・・わかりました。必ず伺います」
俺の答えに、満足したのか、領主は麗しい笑みを浮かべて食堂を後にした。
メイドから屋敷の案内を受け終わった俺は、客室で荷造りをしていると、ドアからノックされる音が耳に入ってきた。
「はい・・・」
扉を開けると、高そうな洋服をきた小太りな男が、扉の前に立っていた。
「お前か？ジャン・クロードとかいう薄汚い傭兵は・・・」
「ええ・・・。昨日から此方の領主様にお世話になっております。ジャン・クロードとは私のことですが、何か御用でしょうか？」
初めて会って第一声で悪態をついてきた男に、俺は若干苛立ちを覚えつつも、冷静に答えを返す。
この出で立ちからして、男はおそらく貴族の人間だろう。
どうやら領主の許婚か何かのようだ。
俺は下手な行動を起こさない様に、下手に出ることにした。
「ローズ様に気に入られているようだが、あまり調子に乗らないことだ・・・。彼女と結婚するのはこの私、由所正しき貴族リチャード・フォン・バッカスなのだから・・・貴様のような片腕の傭兵何ぞ、彼女に相手をされること事態が間違いなのだ！早めに貴族の戯れだと気づくことだな！」
貴族の男は一気にそう捲くし立てると、息を切らしながら俺に向かって指を刺す。
「・・・承知しております。もう荷造りは整えてあります故、今日の夜にでも屋敷を発つところです」
「ハンっ！夜といわずに今からでも出て行って欲しいね・・・卑しい豚め！」
そう吐き捨てると、小太りの男は客室を後にした。
あんなのが、領主様の結婚候補とは・・・政略結婚とかは大変だな・・・。
俺はそんなことを考えながら、夜が来るのを待った。
夜、夕食を終えて、領主の部屋へと向かい、その扉をノックする。
「どうぞ・・・」
「失礼します」
がちゃり、と扉を閉めて、室内へと入る。
中では、胸元が開いた大胆な漆黒のドレスに身を包み、俺を見つめている領主の姿があった。
窓には銀色の月が煌々と輝いているのが見える。
「来てくれたんだね・・・さあ、此方へ」
金色の長髪を掻き揚げ、美しい領主は微笑みながら俺を自分の側へと誘う。
「・・・はい」
俺は領主の側まで近寄ると、足を止めて彼女の瞳を見た。
紅い・・・血のような瞳が俺の全てを見透かすように、捉えている。
「返事を聞かせてくれるかい？」
「ええ・・・せっかくのお話ですが・・・」
「まさか、断ろうとしているわけではないよね？」
どくんっ、と心臓が脈打つ・・・。
まるで、心臓をわし掴みにされたかのような衝動に、俺は口を噤んだ。
「ああ、そうだ。その前に君に見せておくものがあった。そこの窓から中庭を覗いてごらん？」
「え・・・中庭ですか？」
「ああ、面白いものが見えるよ？」
微笑みながら答える彼女に促された俺は、言われたとおりに窓から見える中庭の風景を覗いた。
「なっ！？」
その光景に、思わず俺は声を上げる。
そこには屋敷で飼われているであろう、獰猛な番犬達に襲われている一人の男の姿があった。
男の姿には見覚えがある。昼間、俺に悪態を付いてきた貴族の男だ。
「どうだい、豚が逃げ惑う姿がとても滑稽だろう？」
「っ・・・！」
そういいながら冷たい笑みを浮かべる彼女に、俺は絶句せずにはいられなかった。
番犬達に噛まれたのだろう、男の醜い悲鳴が、此方の方まで聞こえてくる。
「なぜ・・・あんな事を・・・」
「何故かって？あいつは君のことを罵倒しただろう？卑しい豚だと・・・本当に卑しい豚は自分自身だということを思い知らせているのさ・・・。ああやってね」
再び男の悲鳴が聞こえる。
男の姿は、身体中噛み付かれてボロボロだ。
ところどころから出血し、狂犬達から逃惑っている。
「だからってここまでしなくても・・・それに、こんなことが知られたらバッカス家の貴族達が黙っちゃいないのでは！？」
「バッカス家など私の・・・この、ストロングホールド家の前では弱小の貴族に過ぎない。取るに足らない問題だよ。元々、私もあの男は気に食わなかったんだ。なに・・・死なない程度に痛めつけて、トラウマを植えつけてやるさ」
彼女は、そう言いながら、窓で男の様子を見る俺に背後から抱きついてくる。
「さて、もう一度聞くよ？昨日の返事を聞かせてくれるかい？」
白魚のような細い指先を俺の頬に当てて、彼女の方を向かせられる。
俺は、まるで頬に刃物を当てられたかの様に硬直しながら、領主の方を向いた。
紅い・・・何処までも紅い瞳が再び俺の目に映る。
「お・・・おれ・・・は・・・」
「・・・・・・」
冷笑を向けながら、彼女は俺の返事を待つ。
「あ・・・あなたの・・・伴侶には・・・ならない！」
しかし、俺は震える声で確実に否定の意を示した。
「そうか、残念だよ・・・なら」
彼女はそう言いながら俯く、金色の髪に隠れてしまい、その表情を窺うことが出来ない。
「っ！？」
突如、俺の視界が揺れた。まるで足に力が入らなくなり、床に転げ落ちる。
「無理矢理にでも私のモノになってもらうまでだ・・・」
彼女は床に伏せた、俺を冷たい表情で見下す。
その能面な表情は美しくも、見るもの全てに恐怖を与えた。
すぐさま、立ち上がって逃げようとするが、激痛に襲われ、足に力が入らない。
身を捩って足をみると、両足の腱が何かによって、切られていた。
「無駄だよ。足の腱を切った・・・もう君は歩くことすらままならない」
再び領主の方を見ると、血にぬれた指先が目に映る。
どうやら瞬時に、鋭い爪で俺の脚の腱を切断したらしい・・・。
「だから私が面倒を見てあげよう・・・。この屋敷で一生ね・・・」
そう答えると、彼女はいともたやすく俺の身体を抱きかかえ、寝室へと向かう。
「う・・・うあああああああああああああああああぁ！！」
俺は叫び声を上げて抵抗するが、左腕しかまともに動かせない為その抵抗は無駄に終わる。
「助けを呼んでも誰も来ないよ？ここにいる使用人達は、皆私の怖さを知っているからね・・・」
領主はそう答えると、乱暴に俺をベッドに下ろし身体の上に馬乗りになる。
「さあ、君の血を貰おうか・・・ん・・・」
そして、無理矢理俺の身体を押さえつけると、俺の首筋に鋭い牙を突き刺し、血を啜り始めた。
「うお！ああああああぁ・・・・」
俺はこの世のものとは思えない甘い痛みと快楽に悶え、身を捩る。
そして、領主は嬉々として俺の血をジュルリと啜ると、小さな穴が開いた首筋を舌でなぞった。
「さあ、もう準備はいいだろう？私を愉しませてくれ・・・」
そういうと、領主はすぐさま下着を脱ぎ払い、俺の衣服を爪で切り裂いていく。
「りょ・・・領主様」
彼女は先ほどの行為で痛いほど勃起した俺の陰茎に指を這わせて、愛液に濡れた秘部へとあてがう。
じゅぷり、と生々しい音を立てて、俺の愚息は彼女の膣内へ導かれた。
凄まじい快楽にすぐさま射精する。
彼女は、射精されても気にする様子もなく、俺の精を貪る様に、腰を揺らした。
「ああ・・・いい！・・・いいぞ、ジャン！もっと、もっと私に注いでくれ！」
ばちんばちんと身体を揺すりながら、彼女は高まり、俺から精を搾り出す。
大きな胸がドレスからこぼれだし、目の前で大きく揺れる。
「りょっ領主様！そんなに動いたら俺・・・また・・・」
「領主様じゃない！私のことはローズと呼んでくれ！」
「ろ・・・ローズ！」」
「ああ、うれしい・・・うれしいぞ！ジャン！んんっ！」
そして、彼女は熱い口付けを俺に交わすと、同時に双方共絶頂する様なかたちとなった。
「んっ・・・んぐ・・・ん」
「んむ・・・ぱあっ・・・。ああ、おいしかったぞ・・・ジャン・・・もうこれで君は一生私のものだ・・・永遠にな・・・」
そしてその美しくも歪んだ表情で俺を見つめながら、彼女は満足そうに微笑む。
俺は二度とこの屋敷から出られなくなることを悟り、心地よい快楽の中、そのまま意識を手放した。
この吸血鬼の狂愛は・・・彼女が生きている限り終わることはないだろう。
否・・・死んでも逃れなれない・・・永遠に・・・。
終
今でこそ、貴族となったが、元はスラム街で生まれ育った貧しい貧民だ。
親がいない孤児だった俺は、生きるためなら何だってやった。
泥棒、裏切り、密売・・・さまざまな悪行をおこない、気がついたら傭兵家業に身を染めて、荒くれ者どもと共に、死の香りが漂う戦場でその日暮らし・・・。
自分が何のために生きているのかわからない日々が続いた。
しかし、そんな俺に意外なところから転機が訪れる。
妖魔貴族であるヴァンパイア。ローズ・フォン・ストロングホールドから、領地に攻め入ってくる教団撃退のために、戦力となる傭兵達を人、魔物問わず召集しているという噂が俺の耳に入った。
自分の存在意義がわからなかった俺は、何気も無く、金に目が眩んですぐさまその召集に駆け寄った。
どうせ何時朽ちるかわからない命、死ぬにしろ名を上げるにしろ早いほうがいい。
そんな心持ちで俺は戦場に赴いていた。
そして、広大な平地で、教団と妖魔貴族との壮絶な戦いは始まった。
あちらこちらで、阿鼻叫喚の地獄絵図が怒号と共に広がる。
教団の騎士達は、人であろうとも金で魔物に味方する俺達を激しく罵倒したが、無神論者である俺に、教団の教えなど、くだらない戯言にしか過ぎない。
こっちは、自力で、毎日毎日、生と死の狭間を味わっているんだ。
神さまなんて、糞喰らえ。
正しいのは自分と金だけだ。
それが、今まで孤独のなかで生きて汚れきった俺の真実だった。
金を出すなら例え人だろうが魔物だろうが、多く出すほうに味方する。
その方が、扱うほうも合理的で扱いやすいだろう。
戦の決着は辛くも妖魔貴族の勝利で終わった。
その時、軍を仕切っていたのは無論、この土地の領主であるローズ・フォン・ストロングホールドだ。
彼女は、自分が前線で指揮を取りつつも、この戦いで生き残った猛者達に感謝の言葉と、多くの報酬を支払った。
今時、珍しく果敢で太っ腹なその性格に、多くの傭兵達が、関心を示す。
彼女は飴と鞭の使い方を良くわかっていた。
ぬるま湯に浸っているその辺の貴族とは違い、非常に頭のキレる存在だ。
対して俺は、大きな成果を上げることも出来ずにこの戦いで右腕を失った。
これで、まともに金を稼ぐことが出来なくなる。
報酬は貰ったが、生活で金を食いつぶしてしまえば、一年も持たない金額だった。
このまま朽ち果てるしかないか・・・。
途方にくれていた俺に、突然領主が声を掛けてきてこう言った。
「その身体では、傭兵として生きていくのは心苦しいものがあるだろう。私の屋敷にこないか？」
それは俺にとって、またとない転機であり、二度と出ることが出来ない牢獄への招待でもあった。
コンコン、と金細工が施された部屋の扉にノックを鳴らして、領主の返事を待つ。
「入りなさい」
「・・・失礼致します」
その返事と共に、俺は彼女がいる部屋へと頭を下げながら入室した。
領主、ローズ・フォン・ストロングホールドは、机に腕をかけながら、長い金髪を靡かせて、気だるそうに書類に目を通している。
彼女は、色恋事に無縁な俺の目から見ても、凄まじいほどの美しさを秘めていた。
先ほども言ったとおり、長く、美しいシルクのように柔らかな金髪に、女性なら誰もが羨むような長身的なスタイル、小顔で整った顔は通りかかった男性が皆振り向くほど、凛々しく麗しい。
俺は少し緊張しつつも、すぐさま、いつもの調子を取り戻そうと、息を整え言葉を紡いだ。
「本日より此方のお屋敷にお世話になります。ジャン・クロードと申します。僭越ながら領主様のお役に立ちたいと・・・」
「堅苦しい挨拶はいいよ、ジャン。それより、早速頼みたいことがあるんだ」
「・・・は、なんなりと」
領主は、俺の挨拶などどうでもいい様だ。
確かに、貴族にとって傭兵なんてものは薄汚い、荒くれ者に他ならない。
そんな傭兵上がりの俺の挨拶など、聞きたいとも思わないだろう。
さて、早速仕事か・・・右腕を失った俺にも出来ることならいいのだが・・・。
しかし、領主が言った次の一言は、俺の想像を遥かに超えるものだった。
「今、メイドに準備をさせるから、私と一緒にお茶を飲んで欲しいんだ」
思いもよらない言葉に、は？・・・と俺は心の中でそう口走っていた。
「お茶・・・ですか？」
「ああ、隣国から上質なお菓子を取り寄せてね。是非、君と一緒に食べたいと思ったんだ。・・・駄目かな？」
「い・・・いえ、滅相もない。喜んでご一緒させていただきます」
どうしてこうなった？
今・・・俺こと、右腕を失くした落ちたる傭兵ジャン・クロードは、小鳥達が囀る見晴らしのいいテラスで、妖魔貴族であるローズ・フォン・ストロングホールドとお茶を共にしていた。
「どうだい？このクッキーはね、この香ばしくて芳醇な味が向こうではとても人気らしくて、なかなか手に入り辛らいんだが、どうしても君に食べて欲しくてね」
そういいながら、彼女はビスケットを一口齧り、優雅にハーブティーを啜る。
俺も、クッキーを一つ頂戴する。
適度な甘さと濃厚な香りと味が、口の中に広がり、極上の菓子だということが素人でもわかった。
ゆっくりと味わって飲み込むと、すぐさま彼女にお礼の言葉を口にする。
「ありがとうございます。とても美味しいです」
「そうか・・・。気に入ってもらえて良かった。まだあるから好きなだけ食べていいんだよ？」
「いえ、傭兵上がりの私なんかにはもったいない品物です。しかし、どうしてこんな高級なお菓子をわざわざ私なんかの為に？」
「それはね、こんなもてなしでは足りないくらいの恩が君にあるからだよ」
彼女はそう答えると、おもむろに椅子から立ち上がり、俺の側までやって来る。
そして、白魚のように美しい指先で、無くなった右腕の断面をそっとなぞった。
「君のその腕は私のせいで、失くなってしまったのだから・・・」
「いや、これは・・・。私の未熟さが招いた結果です。貴方に罪などありません」
「嘘をついてまで私を庇うなんて、優しいね・・・君は」
そう言って、領主は、紅い血のような瞳で俺の顔を見つめる。
確かに俺のこの腕は、不意打ちを襲ってきた教団の兵士から領主を庇った時に失ったものだが、別に俺がそんなことをしなくても魔物である彼女なら迫り来る敵を自慢の大剣で切り払うことが出来たに違いない。
俺の余計なおせっかいで、彼女を苦しませてしまったみたいだ。
だから、ここまで優遇な待遇を与えてくれたのか。
俺は、一傭兵にまで与えてくれる心優しい彼女の気遣いに感謝し、頭を下げた。
「私の出すぎた行動のせいで、領主様を苦しめることになってしまい誠に申し訳なく思っております。しかし、同情等でこのお屋敷に住まわせてもらう事は、一兵士として情けない事です。どうか、私のこと等お気になさらずこれからも誇らしく妖魔貴族としてのお勤めを全うして・・・」
「私は同情などで君をここへ呼んだのではない！」
俺の話を聞いていた彼女は突如に、凛とした怒声を上げた。
その思わぬ迫力に、俺は口を噤む。
そして、紅い瞳を涙で潤ませながら、彼女は言葉を続けた。
「君をここへ呼んだのは、私と生涯を共にする伴侶にするためだ・・・」
「伴侶・・・私がですか？」
「そうだ、あの大勢の敵との戦いの中、君は自分の命よりも、私の事を守るために戦って、その右腕を斬り落とされた。他の傭兵や兵士達は、手柄を立てる為に、多くの敵を殺すか自分の命を守る事しか考えていない、皆前線で戦う私のこと等、全く気にも掛けなかった。君みたいに大儀を尽くした男は初めてだよ」
「私は別に・・・。貴方を庇ったのは、とっさに身体が動いただけで・・・かえって貴方に負い目を付けてしまっただけです」
「そうじゃない、私の為にそこまで行動してくれたことが嬉しいんだ。金や名声の為だけに媚びへつらう奴等など、私の伴侶には必要ない。君のような果敢な男が私の・・・このローズ・フォン・ストロングホールドの伴侶に相応しい！」
彼女は高らかにそういい終えると、俺の頬を優しく手で挟み、その麗端な顔を近づける。
「ん・・・」
「・・・っ！？」
そして、ゆっくりとその瑞々しく赤い唇を、俺の口に当てた。
数秒後・・・名残惜しそうに唇を離した彼女は頬を赤らめながら、こう答える。
「すまない・・・。いきなりの告白で申し訳ないが、私はこの様にしか相手に想いを伝えることが出来ない・・・どうか、今日一日ゆっくりと考えてみて欲しい・・・。明日の夜、答えを聞かせてくれ・・・」
そう言うと、領主は、マントを翻して、威風堂々と自室に戻っていく。
俺は、彼女の姿が見えなくなるまで、その凛とした後姿を見送ることしか出来なかった。
夜・・・豪華な夕食を頂き、屋敷のメイドに豪華な来客用の部屋を案内されて、俺はすぐさまベッドへと横になった。
あの領主、妖魔貴族のローズ・フォン・ストロングホールドが俺に求愛をするという異常事態に、俺の脳はまだ付いて行かない。
たかだか、一人の傭兵に貴族がここまで本気になろうとは・・・領主様も気に迷っている事この上ない。
伴侶になるという話は断わろう・・・。その方が、彼女の為でもある。
そうと決まれば、この屋敷から出て行く必要があるな。
領主を振った男が、ここで世話になるわけにもいかないだろう・・・。
一時の感情だ。どうせ、暫くすれば冷静になって領主としての自制を取り戻すさ・・・。
そんなことを考えながら俺は、ふかふかな高級ベッドに埋もれながら眠りについた。
翌朝、心地よい眠りから覚めた俺は身支度を整えながら、またメイドに案内されて食堂へと向かう。
馬鹿でかいテーブルには、朝食とは思えないような豪華な食事が用意されていた。
「おはよう、ジャン。椅子に着いてくれ、朝食にしよう」
優雅に、コーヒーを飲みながら、領主は俺に挨拶をして食事を促す。
「おはようございます、領主様。朝食、ありがたく頂きます」
すぐさま、挨拶と礼を交わし、俺も椅子へ着いた。
「昨日は良く眠れたかい？」
「ええ、おかげさまで・・・。あんなに豪華な部屋に泊まったのは初めてでしたので、最初は落ち着きませんでしたが、疲れていたせいですぐに眠ってしまいましたよ」
「私はなかなか眠れなかったよ。君の事をずっと考えていてね・・・」
「ハハハ・・・。そう思っていただけるだけで光栄です」
「今日は、メイドに屋敷の中を案内させよう。終わったら、夜まで好きに過ごして貰って構わない」
そのまま領主と他愛もない会話を続け、慣れないながらも片腕で朝食を片付けていく。
朝食を終えた後、仕事の為に部屋へと向かおうとする領主は、すれ違い様に俺の耳元に唇を近づけてこう言った。
「夜、私の部屋に来て欲しい・・・。昨日の返事を聞かせておくれ」
何故だろう、領主は微笑んでいるのに、どこか有無を言わせない圧力を彼女の声から感じる。
「・・・わかりました。必ず伺います」
俺の答えに、満足したのか、領主は麗しい笑みを浮かべて食堂を後にした。
メイドから屋敷の案内を受け終わった俺は、客室で荷造りをしていると、ドアからノックされる音が耳に入ってきた。
「はい・・・」
扉を開けると、高そうな洋服をきた小太りな男が、扉の前に立っていた。
「お前か？ジャン・クロードとかいう薄汚い傭兵は・・・」
「ええ・・・。昨日から此方の領主様にお世話になっております。ジャン・クロードとは私のことですが、何か御用でしょうか？」
初めて会って第一声で悪態をついてきた男に、俺は若干苛立ちを覚えつつも、冷静に答えを返す。
この出で立ちからして、男はおそらく貴族の人間だろう。
どうやら領主の許婚か何かのようだ。
俺は下手な行動を起こさない様に、下手に出ることにした。
「ローズ様に気に入られているようだが、あまり調子に乗らないことだ・・・。彼女と結婚するのはこの私、由所正しき貴族リチャード・フォン・バッカスなのだから・・・貴様のような片腕の傭兵何ぞ、彼女に相手をされること事態が間違いなのだ！早めに貴族の戯れだと気づくことだな！」
貴族の男は一気にそう捲くし立てると、息を切らしながら俺に向かって指を刺す。
「・・・承知しております。もう荷造りは整えてあります故、今日の夜にでも屋敷を発つところです」
「ハンっ！夜といわずに今からでも出て行って欲しいね・・・卑しい豚め！」
そう吐き捨てると、小太りの男は客室を後にした。
あんなのが、領主様の結婚候補とは・・・政略結婚とかは大変だな・・・。
俺はそんなことを考えながら、夜が来るのを待った。
夜、夕食を終えて、領主の部屋へと向かい、その扉をノックする。
「どうぞ・・・」
「失礼します」
がちゃり、と扉を閉めて、室内へと入る。
中では、胸元が開いた大胆な漆黒のドレスに身を包み、俺を見つめている領主の姿があった。
窓には銀色の月が煌々と輝いているのが見える。
「来てくれたんだね・・・さあ、此方へ」
金色の長髪を掻き揚げ、美しい領主は微笑みながら俺を自分の側へと誘う。
「・・・はい」
俺は領主の側まで近寄ると、足を止めて彼女の瞳を見た。
紅い・・・血のような瞳が俺の全てを見透かすように、捉えている。
「返事を聞かせてくれるかい？」
「ええ・・・せっかくのお話ですが・・・」
「まさか、断ろうとしているわけではないよね？」
どくんっ、と心臓が脈打つ・・・。
まるで、心臓をわし掴みにされたかのような衝動に、俺は口を噤んだ。
「ああ、そうだ。その前に君に見せておくものがあった。そこの窓から中庭を覗いてごらん？」
「え・・・中庭ですか？」
「ああ、面白いものが見えるよ？」
微笑みながら答える彼女に促された俺は、言われたとおりに窓から見える中庭の風景を覗いた。
「なっ！？」
その光景に、思わず俺は声を上げる。
そこには屋敷で飼われているであろう、獰猛な番犬達に襲われている一人の男の姿があった。
男の姿には見覚えがある。昼間、俺に悪態を付いてきた貴族の男だ。
「どうだい、豚が逃げ惑う姿がとても滑稽だろう？」
「っ・・・！」
そういいながら冷たい笑みを浮かべる彼女に、俺は絶句せずにはいられなかった。
番犬達に噛まれたのだろう、男の醜い悲鳴が、此方の方まで聞こえてくる。
「なぜ・・・あんな事を・・・」
「何故かって？あいつは君のことを罵倒しただろう？卑しい豚だと・・・本当に卑しい豚は自分自身だということを思い知らせているのさ・・・。ああやってね」
再び男の悲鳴が聞こえる。
男の姿は、身体中噛み付かれてボロボロだ。
ところどころから出血し、狂犬達から逃惑っている。
「だからってここまでしなくても・・・それに、こんなことが知られたらバッカス家の貴族達が黙っちゃいないのでは！？」
「バッカス家など私の・・・この、ストロングホールド家の前では弱小の貴族に過ぎない。取るに足らない問題だよ。元々、私もあの男は気に食わなかったんだ。なに・・・死なない程度に痛めつけて、トラウマを植えつけてやるさ」
彼女は、そう言いながら、窓で男の様子を見る俺に背後から抱きついてくる。
「さて、もう一度聞くよ？昨日の返事を聞かせてくれるかい？」
白魚のような細い指先を俺の頬に当てて、彼女の方を向かせられる。
俺は、まるで頬に刃物を当てられたかの様に硬直しながら、領主の方を向いた。
紅い・・・何処までも紅い瞳が再び俺の目に映る。
「お・・・おれ・・・は・・・」
「・・・・・・」
冷笑を向けながら、彼女は俺の返事を待つ。
「あ・・・あなたの・・・伴侶には・・・ならない！」
しかし、俺は震える声で確実に否定の意を示した。
「そうか、残念だよ・・・なら」
彼女はそう言いながら俯く、金色の髪に隠れてしまい、その表情を窺うことが出来ない。
「っ！？」
突如、俺の視界が揺れた。まるで足に力が入らなくなり、床に転げ落ちる。
「無理矢理にでも私のモノになってもらうまでだ・・・」
彼女は床に伏せた、俺を冷たい表情で見下す。
その能面な表情は美しくも、見るもの全てに恐怖を与えた。
すぐさま、立ち上がって逃げようとするが、激痛に襲われ、足に力が入らない。
身を捩って足をみると、両足の腱が何かによって、切られていた。
「無駄だよ。足の腱を切った・・・もう君は歩くことすらままならない」
再び領主の方を見ると、血にぬれた指先が目に映る。
どうやら瞬時に、鋭い爪で俺の脚の腱を切断したらしい・・・。
「だから私が面倒を見てあげよう・・・。この屋敷で一生ね・・・」
そう答えると、彼女はいともたやすく俺の身体を抱きかかえ、寝室へと向かう。
「う・・・うあああああああああああああああああぁ！！」
俺は叫び声を上げて抵抗するが、左腕しかまともに動かせない為その抵抗は無駄に終わる。
「助けを呼んでも誰も来ないよ？ここにいる使用人達は、皆私の怖さを知っているからね・・・」
領主はそう答えると、乱暴に俺をベッドに下ろし身体の上に馬乗りになる。
「さあ、君の血を貰おうか・・・ん・・・」
そして、無理矢理俺の身体を押さえつけると、俺の首筋に鋭い牙を突き刺し、血を啜り始めた。
「うお！ああああああぁ・・・・」
俺はこの世のものとは思えない甘い痛みと快楽に悶え、身を捩る。
そして、領主は嬉々として俺の血をジュルリと啜ると、小さな穴が開いた首筋を舌でなぞった。
「さあ、もう準備はいいだろう？私を愉しませてくれ・・・」
そういうと、領主はすぐさま下着を脱ぎ払い、俺の衣服を爪で切り裂いていく。
「りょ・・・領主様」
彼女は先ほどの行為で痛いほど勃起した俺の陰茎に指を這わせて、愛液に濡れた秘部へとあてがう。
じゅぷり、と生々しい音を立てて、俺の愚息は彼女の膣内へ導かれた。
凄まじい快楽にすぐさま射精する。
彼女は、射精されても気にする様子もなく、俺の精を貪る様に、腰を揺らした。
「ああ・・・いい！・・・いいぞ、ジャン！もっと、もっと私に注いでくれ！」
ばちんばちんと身体を揺すりながら、彼女は高まり、俺から精を搾り出す。
大きな胸がドレスからこぼれだし、目の前で大きく揺れる。
「りょっ領主様！そんなに動いたら俺・・・また・・・」
「領主様じゃない！私のことはローズと呼んでくれ！」
「ろ・・・ローズ！」」
「ああ、うれしい・・・うれしいぞ！ジャン！んんっ！」
そして、彼女は熱い口付けを俺に交わすと、同時に双方共絶頂する様なかたちとなった。
「んっ・・・んぐ・・・ん」
「んむ・・・ぱあっ・・・。ああ、おいしかったぞ・・・ジャン・・・もうこれで君は一生私のものだ・・・永遠にな・・・」
そしてその美しくも歪んだ表情で俺を見つめながら、彼女は満足そうに微笑む。
俺は二度とこの屋敷から出られなくなることを悟り、心地よい快楽の中、そのまま意識を手放した。
この吸血鬼の狂愛は・・・彼女が生きている限り終わることはないだろう。
否・・・死んでも逃れなれない・・・永遠に・・・。
終
12/02/19 19:48更新 / ポン太