もてない男達のお茶会
ここは、親魔物派の領域にあたる町・・・。
この町にある少しこ洒落た喫茶店にて、モテない童貞男子二人が愚痴をこぼし合っていた。
「聞いてくれよジャック!この間、超美人のラミアを連れたハンサムヤローが公園のど真ん中で抱き合いながら乳繰り合ってやがったんだ!」
「別にいいじゃねーか、気にしたら負けだぜ?」
「これが気にせずに居られるか!公共のど真ん中で昼真っからいちゃついてんじゃねーよ!って、悪態をついてやったんだが、そしたら男の方が俺に向かってなんて言ったと思う?」
「なんて言われたんだ?」
ジャックと呼ばれた男が静かに問いを返す。
「さえない童貞野郎は引っ込んでろ!なんて抜かしやがった!」
「今すぐそいつ殺しにいくぞ!案内しろ!」
いきなり、怒りはじめて今にも殺人を犯しそうなジャックの剣幕に、流石に、焚きつけた友人がなだめにはいる。
彼の前では童貞を馬鹿にする様な発言はご法度だったというのを友人であるベンはすっかり忘れていた。
「ま、まあまあ・・・。確かに俺もムカついたが、殺すまでは・・・殺人は拙いだろう・・・」
「くそっ!何も好きで童貞でいるわけじゃねーんだよ!内臓を引きずり出してやる!リア充爆発しろ!」
「ちょっ、ジャック声がでかいから!・・・ここ、喫茶店のど真ん中だから!」
「お前もさっきまででかい声で童貞野郎は引っ込んでろとか言われてどうのこうの言ってたじゃねーか!」
「わかった!だから大きな声で叫ぶのはやめろ!みんな変な目で見てんぞ!?」
「む・・・ファっク!」
流石に、周りの客や店員に聞こえていたのか視線や、小さな含み笑いを感じて、黙ってしまうジャック。
どうやらようやく落ち着きを取り戻したようだ。
「たくっ、お前はいきなり怒り出すと周りが見えなくなるから困るぜ」
「てめーが言うんじゃねーよ。世代が変わる前のデビルバグに性的な意味で食われちまえ」
「とんでもねー事言うんじゃねーよ!!一瞬襲われた瞬間を想像しちまったじゃねーか!!俺が巨大ゴキブリに性的な意味で食われる絵とか誰得だよ!?」
「みんな大損だ。金返せ!」
「俺が返して欲しいよ!」
滅茶苦茶口が悪いジャックに対して、ベンが泣きのツッコミを入れる。
約、週一度に行われるこの二人のお茶会は、ある意味この喫茶店内でも有名になっていた。
「ベン・・・それはそうと、向こうの席に座っているエルフと軟弱野郎のリア充カップルなんだが・・・」
ふと、ジャックは視界に入ったカップル達を指差して、ベンに言葉を投げかける。
「ん?ああ、リア充だな・・・それが?」
とベンが聞き返した瞬間彼らはおぞましい光景をカップルの二人から目撃した。
「はい、あ〜ん」
「あ〜」
今にもエルフの美女が差し出したスプーンに盛られたパフェ(イチゴパフェと思われる)に食らい付こうとする彼氏。(ジャックいわく軟弱野郎)
いかにもバカップル特有の甘ったるい雰囲気が彼等の視界をジャック(うまいこと言った)していた!
「させるか!」
「ちょっ、ジャック!?」
そう答えるとジャックは手元にあったコップ(水と氷入り)を全力投球でバカップルの彼氏の頭目掛けて投げつけた。
「あ〜〜〜、いだあああああああああああああああっ!?しかも冷たっ!!」
コップは見事、間抜けにあ〜んをしていた彼氏(ジャックによれば軟弱男)のこめかみにクリティカルヒットし、更にその顔面に水と氷の口付けをお見舞いしてやることに成功した。
「あ〜んの阻止完了!」
「完了!じゃねーよ!」
満ち足りた表情を浮かべてジャックはガッツポーズを取る。
そのあまりの破天荒ぶりに、ベンはすかさずツッコミを入れた。
「なに!?なんでコップ(水と氷入り)が飛んできたの?ダーリン大丈夫!?」
無論、向こうは大混乱である。
いきなりの出来事に慌てふためくカップルに向かって、ジャックはこう言い放った。
「すいませ〜ん、ちょっと封印されていた右腕が暴走してしまって思わず持っていたコップを投げてしまいました〜」
「何の封印だよ!?いいわけに無理がありすぎるだろ!誰が信じるんだそんな嘘!」
あまりにも無茶すぎるいいわけに、ベンがしつこくツッコミを入れる。
「ああ〜、封印ですかぁ。それでは仕方がないですね」
「いたたたた・・・確かにそれでは仕方がないね・・・。封印を開放しないように気をつけてくださいね」
しかし、相手のスペックはこちらを遥かに上回っていた。
エルフは愚か、痛い目に遭った彼氏(ジャックに以下略)まで嘘を信じている様子だ。
ちなみにエルフの彼氏(以下略)は頭蓋骨が変形していた。
「信じてるよおおおおおおぉ!しかも、あんな目に遭いながらも軟弱さん嘘の封印に気遣ってくださってるよおおおおおおぉ!」
「すいませ〜ん。封印された魔人を復活させないように気をつけます〜」
「お前は少し反省しろよ!!」
かなり人が良かったカップルを見送った後、二人はまたくだらない雑談に戻る。
「次の計画はこれだ!!RMP!!(リア充抹殺プロジェクト)」
「なにその凄惨なテロップ」
あまりにも大胆すぎる計画名に、思わずそう答えるベン。
「なに、計画は簡単だ・・・夜、街中をうろついているカップルの彼氏をこの釘バットで・・・」
シュバッと、勢いよくジャックはポケットから生々しく血がこびり付いた釘バットを取り出す。そして、ニヒルな笑みを浮かべた。
「そのまますぎるだろ!!もっとオブラートに包めよ!捕まるだろ!てゆーか、お前のポケットどうなってんの!?」
「大丈夫だ!このバットがあれば例え教団や魔王だって殺せる自信がある!」
「なにその自信!?逆にコワいわ!」
ジャックの目は据わっていた。これは、半分マジだ・・・。
ベンが全力で止めようと思ったところ、一人の魔物娘が彼等に向かって歩いてきた。
「あのう・・・そこのお方」
「ん?」
「へ?」
二人同時にその女性に顔を向ける。
なんと、少女は立派な角と翼を生やした美しいリリムであった。
「いや、そっちの釘バットを持った方に用が・・・」
頬を紅く染めてリリムはジャックの方に熱い視線を送った。
「えっ!?なんで、俺じゃねーの?」
「貴方など眼中にもありませんわ!この害虫め!内臓破裂しろ!」
「初対面でかなり毒舌すぎるだろ!?」
いきなりのりリムからの毒舌にツッコむベン。
「それで?どうかしましたか?」
そして、いきなり、まともな口調になったジャック。
「ええ実は・・・」
「スルーかい!!」
もはや、ベンの存在は空気と化していた。
「先ほどバカップル達にコップを全力投球した貴方の姿と勇士に惚れました!どうか私の夫になってください!」
「・・・・よろこんで」
「ええええええええええええええええェ!?どうしてそうなった!?」
最早理解しがたい状況に悲鳴をあげるベン。
「良かった!よろしかったらこの後ディナーでも如何ですか?」
「よろこんで!」
そう誘われながら釘バットを右手に、左手に彼女の手を取り席を立つジャック。
「すまん。ベン・・・。しばらく遭うことはないだろう・・・」
「“遭う”っていう字が違う!こっちの“会う”だろ!?俺は災害か何かか!?てかRMP(リア充抹殺プロジェクト)はどうした!?」
「ああ、あんな物騒なことやるわけねーじゃん。馬鹿じゃねーの?お前」
「お前マジでやりそうだっただろうが!」
「最早リア充となった俺には過去の話だ・・・これいらないからやるよ。じゃあ元気でな!」
そう言ってジャックは釘バットをテーブルの上に置いて、リリムと共に喫茶店を後にした。
「てめええええええええええ!!」
彼等の友情は脆くも、儚い×汚い○
その夜、ジャックは童貞を卒業し、ベンは枕を濡らした。
数日後、街中で、釘バットを持った下半身半裸の青年が目撃され、自衛団に捕まり、その元友人はヤンデレだったリリムに監禁される事となるのだがそれはまた別のお話。
おわり
この町にある少しこ洒落た喫茶店にて、モテない童貞男子二人が愚痴をこぼし合っていた。
「聞いてくれよジャック!この間、超美人のラミアを連れたハンサムヤローが公園のど真ん中で抱き合いながら乳繰り合ってやがったんだ!」
「別にいいじゃねーか、気にしたら負けだぜ?」
「これが気にせずに居られるか!公共のど真ん中で昼真っからいちゃついてんじゃねーよ!って、悪態をついてやったんだが、そしたら男の方が俺に向かってなんて言ったと思う?」
「なんて言われたんだ?」
ジャックと呼ばれた男が静かに問いを返す。
「さえない童貞野郎は引っ込んでろ!なんて抜かしやがった!」
「今すぐそいつ殺しにいくぞ!案内しろ!」
いきなり、怒りはじめて今にも殺人を犯しそうなジャックの剣幕に、流石に、焚きつけた友人がなだめにはいる。
彼の前では童貞を馬鹿にする様な発言はご法度だったというのを友人であるベンはすっかり忘れていた。
「ま、まあまあ・・・。確かに俺もムカついたが、殺すまでは・・・殺人は拙いだろう・・・」
「くそっ!何も好きで童貞でいるわけじゃねーんだよ!内臓を引きずり出してやる!リア充爆発しろ!」
「ちょっ、ジャック声がでかいから!・・・ここ、喫茶店のど真ん中だから!」
「お前もさっきまででかい声で童貞野郎は引っ込んでろとか言われてどうのこうの言ってたじゃねーか!」
「わかった!だから大きな声で叫ぶのはやめろ!みんな変な目で見てんぞ!?」
「む・・・ファっク!」
流石に、周りの客や店員に聞こえていたのか視線や、小さな含み笑いを感じて、黙ってしまうジャック。
どうやらようやく落ち着きを取り戻したようだ。
「たくっ、お前はいきなり怒り出すと周りが見えなくなるから困るぜ」
「てめーが言うんじゃねーよ。世代が変わる前のデビルバグに性的な意味で食われちまえ」
「とんでもねー事言うんじゃねーよ!!一瞬襲われた瞬間を想像しちまったじゃねーか!!俺が巨大ゴキブリに性的な意味で食われる絵とか誰得だよ!?」
「みんな大損だ。金返せ!」
「俺が返して欲しいよ!」
滅茶苦茶口が悪いジャックに対して、ベンが泣きのツッコミを入れる。
約、週一度に行われるこの二人のお茶会は、ある意味この喫茶店内でも有名になっていた。
「ベン・・・それはそうと、向こうの席に座っているエルフと軟弱野郎のリア充カップルなんだが・・・」
ふと、ジャックは視界に入ったカップル達を指差して、ベンに言葉を投げかける。
「ん?ああ、リア充だな・・・それが?」
とベンが聞き返した瞬間彼らはおぞましい光景をカップルの二人から目撃した。
「はい、あ〜ん」
「あ〜」
今にもエルフの美女が差し出したスプーンに盛られたパフェ(イチゴパフェと思われる)に食らい付こうとする彼氏。(ジャックいわく軟弱野郎)
いかにもバカップル特有の甘ったるい雰囲気が彼等の視界をジャック(うまいこと言った)していた!
「させるか!」
「ちょっ、ジャック!?」
そう答えるとジャックは手元にあったコップ(水と氷入り)を全力投球でバカップルの彼氏の頭目掛けて投げつけた。
「あ〜〜〜、いだあああああああああああああああっ!?しかも冷たっ!!」
コップは見事、間抜けにあ〜んをしていた彼氏(ジャックによれば軟弱男)のこめかみにクリティカルヒットし、更にその顔面に水と氷の口付けをお見舞いしてやることに成功した。
「あ〜んの阻止完了!」
「完了!じゃねーよ!」
満ち足りた表情を浮かべてジャックはガッツポーズを取る。
そのあまりの破天荒ぶりに、ベンはすかさずツッコミを入れた。
「なに!?なんでコップ(水と氷入り)が飛んできたの?ダーリン大丈夫!?」
無論、向こうは大混乱である。
いきなりの出来事に慌てふためくカップルに向かって、ジャックはこう言い放った。
「すいませ〜ん、ちょっと封印されていた右腕が暴走してしまって思わず持っていたコップを投げてしまいました〜」
「何の封印だよ!?いいわけに無理がありすぎるだろ!誰が信じるんだそんな嘘!」
あまりにも無茶すぎるいいわけに、ベンがしつこくツッコミを入れる。
「ああ〜、封印ですかぁ。それでは仕方がないですね」
「いたたたた・・・確かにそれでは仕方がないね・・・。封印を開放しないように気をつけてくださいね」
しかし、相手のスペックはこちらを遥かに上回っていた。
エルフは愚か、痛い目に遭った彼氏(ジャックに以下略)まで嘘を信じている様子だ。
ちなみにエルフの彼氏(以下略)は頭蓋骨が変形していた。
「信じてるよおおおおおおぉ!しかも、あんな目に遭いながらも軟弱さん嘘の封印に気遣ってくださってるよおおおおおおぉ!」
「すいませ〜ん。封印された魔人を復活させないように気をつけます〜」
「お前は少し反省しろよ!!」
かなり人が良かったカップルを見送った後、二人はまたくだらない雑談に戻る。
「次の計画はこれだ!!RMP!!(リア充抹殺プロジェクト)」
「なにその凄惨なテロップ」
あまりにも大胆すぎる計画名に、思わずそう答えるベン。
「なに、計画は簡単だ・・・夜、街中をうろついているカップルの彼氏をこの釘バットで・・・」
シュバッと、勢いよくジャックはポケットから生々しく血がこびり付いた釘バットを取り出す。そして、ニヒルな笑みを浮かべた。
「そのまますぎるだろ!!もっとオブラートに包めよ!捕まるだろ!てゆーか、お前のポケットどうなってんの!?」
「大丈夫だ!このバットがあれば例え教団や魔王だって殺せる自信がある!」
「なにその自信!?逆にコワいわ!」
ジャックの目は据わっていた。これは、半分マジだ・・・。
ベンが全力で止めようと思ったところ、一人の魔物娘が彼等に向かって歩いてきた。
「あのう・・・そこのお方」
「ん?」
「へ?」
二人同時にその女性に顔を向ける。
なんと、少女は立派な角と翼を生やした美しいリリムであった。
「いや、そっちの釘バットを持った方に用が・・・」
頬を紅く染めてリリムはジャックの方に熱い視線を送った。
「えっ!?なんで、俺じゃねーの?」
「貴方など眼中にもありませんわ!この害虫め!内臓破裂しろ!」
「初対面でかなり毒舌すぎるだろ!?」
いきなりのりリムからの毒舌にツッコむベン。
「それで?どうかしましたか?」
そして、いきなり、まともな口調になったジャック。
「ええ実は・・・」
「スルーかい!!」
もはや、ベンの存在は空気と化していた。
「先ほどバカップル達にコップを全力投球した貴方の姿と勇士に惚れました!どうか私の夫になってください!」
「・・・・よろこんで」
「ええええええええええええええええェ!?どうしてそうなった!?」
最早理解しがたい状況に悲鳴をあげるベン。
「良かった!よろしかったらこの後ディナーでも如何ですか?」
「よろこんで!」
そう誘われながら釘バットを右手に、左手に彼女の手を取り席を立つジャック。
「すまん。ベン・・・。しばらく遭うことはないだろう・・・」
「“遭う”っていう字が違う!こっちの“会う”だろ!?俺は災害か何かか!?てかRMP(リア充抹殺プロジェクト)はどうした!?」
「ああ、あんな物騒なことやるわけねーじゃん。馬鹿じゃねーの?お前」
「お前マジでやりそうだっただろうが!」
「最早リア充となった俺には過去の話だ・・・これいらないからやるよ。じゃあ元気でな!」
そう言ってジャックは釘バットをテーブルの上に置いて、リリムと共に喫茶店を後にした。
「てめええええええええええ!!」
彼等の友情は脆くも、儚い×汚い○
その夜、ジャックは童貞を卒業し、ベンは枕を濡らした。
数日後、街中で、釘バットを持った下半身半裸の青年が目撃され、自衛団に捕まり、その元友人はヤンデレだったリリムに監禁される事となるのだがそれはまた別のお話。
おわり
12/01/06 21:56更新 / ポン太