乱れ、舞う
今日こそは止めよう。そう脳では思っても、身体の方が言う事を聞かない。迸る感情が制御できない。
（今ならまだ間に合います……。けど）
震える右手が、想一の部屋の戸へ伸びていく。それを止める役割を持つ左手は、先とは打って変わってピクリとも動きはしない。理性が役割を放棄していた。
（想一さん、いやらしい女でごめんなさい）
許しを請いながら、蓮花はその扉を開けた。
室内は主の性格を象徴するかのように整頓されている。クラシックな色合いの机に、かけ布団が畳まれたベッド。部屋の隅に置かれた姿見に、衣類が仕舞われているであろうクローゼット。机の横には子供の背丈くらいの本棚もある。そこに収められている本は文芸書やビジネス書、漫画など種類やカテゴリーも様々だ。
部屋スペースが実際より広く感じるのは、想一がレイアウトにこだわっているからだろう。
調度品も過度な装飾や華やかさは一切なく、彼の実直な性格がそこにも表れている。
（嗚呼……想一さんの部屋、想一さんの匂い……）
息を吸い込むと、彼の残り香が鼻腔に入ってくる。石鹸とシトラスを薄く混ぜたような匂いだ。
綺麗好きな想一は身体を石鹸で念入りに洗っており、体臭ケアにも気を遣っている。
蓮花に不快な思いをさせたくないというのも理由として大きい。
一方の蓮花としては彼の体臭を直に嗅ぎたいのが本音である。だが今はこの残り香を肺に取り入れるだけでも十分だ。
部屋で数回深呼吸しただけで、既に彼女の足元は頼りないものとなっている。
「ふふっ♪」
彼女が次に取った行動は迅速だった。
具体的には、クローゼットの引き出しから想一のボクサーパンツを引っ張り出し、それを勢いよく顔に押し当てた。そして一気に鼻と口で息を吸い込んだ。
洗剤で綺麗に洗い揉まれていても分かった。生地にしみついた愛しい男の匂いが。
（すごおおぉい……。そういちさんのぉ、いい匂いいぃぃ）
狐特有の優れた嗅覚で香りを味わう蓮花の眼が、危ないクスリをキメたかのように焦点を失う。
平日の朝。身体を震わせながら男物の下着を顔に押し当てて悦に浸るという、他人様にはお見せできない山城蓮花の姿がそこにあった。
（しゅごいぃ、これしゅごくいいれしゅうぅぅ）
黒地に販売社ロゴが引かれた、派手さがないデザインの下着。素材はポリエステル百パーセント。価格は一着で二百五十円。特筆すべき所はない。
（パンツぅ。実直でぇ、誠実でぇ、紳士的でかっこいい想一さんのパンツぅ）
持ち主が、想一であることを除いて。
シンプルで色気の欠片もないデザインだが、蓮花には気にならない。
彼が履いていた下着を洗濯したのも、畳んで収納したのも、そしてそれを今オナニーの材料にしているのも自分という事実が、彼女を昂らせるのだ。
「はむっ、はふむうっ、ふむうううっ」
ついに下着を口に咥えた。大和撫子の気品崩壊待ったなしの絵面である。
首筋から額にかけては薔薇よりも真っ赤。吐息は荒くなるばかりで、光のない瞳の端には涙が滲み垂れてきている。
下着を持つ右手はきつく握り締められていて、左手は割烹着の留め紐をするする解いている。蓮花の脳内といえば、これから行う自慰の事で一杯だ。
「ひゅふふっ、ふふふうぅぅ」
妙な声を上げながら身をくねらせ、片手で器用に服の結び目をゆるませていく狐娘。
程なくして、ぱさりと割烹着が彼女の足元に落とされた。続いて薄桃色の下着も。
身に纏っていた服を取り払ったことで、彼女の全容が露わとなる。
端的に言うならば、恐ろしく均衡の整った、かつ色気を持った肉体だった。
まず目を引くのは豊かな胸である。グラビアアイドル級の雄大な双丘は、彼女が動くだけでゆさりと揺れる。だがだらしなく垂れているという訳ではない。ツンと上向きの乳はハリ良し、形良し、サイズ良しの三拍子で男の情欲をこれでもかとそそるだろう。
丸みを帯びた乳房の先端は、直視した相手が女なら嫉妬するほど綺麗な桜色だ。
きゅっと曲線美を描くウエストは細くとも、いい塩梅に肉がついている。女性らしい美の象徴と健康的な印象を見る者に与えるくびれだ。
嫋やかな腰回りはそれだけでモデルと勝負ができそうなくらいに整っている。
そして乳とウエストを凌駕する色気を持つ魅惑のヒップ。
見た男が元気な赤子が産めそうだと確信するほどの桃尻が、今は惜しげもなく外気に晒されている。揉みしだけばさぞいい心地がするのは間違いないだろう。
ちなみに蓮花自身は知る由もないことだが、想一は胸も好きだがそれ以上に尻が大好物だ。
彼が二重ロックしてスマホに保存している秘蔵フォルダは、七割以上がヒップを強調したもの。つけ加えると想一のここ最近の悩みは、蓮花の後ろ姿、とりわけ衣服の奥に隠されている美尻を思って局部が痛くなることである。
さて、閑話休題。
頭頂部から伸びた三角耳と臀部から伸びたふわふわ尻尾が加われば、エロくて綺麗で可愛いという無双状態の美女が爆誕する。
実際、街ですれ違った男達が二度見ならぬ三度見するくらいに蓮花の纏う魅力は大きい。
何故こんな美女に彼氏がいないのか、想一が首を傾げるのも不思議な話ではない。
ホントの所は、蓮花自身が男避けの妖術を使っているため、話しかけるどころか近寄ってくる男性もいないというだけのことだが。勿論想一はその対象外である。
「そういちさん、そういちしゃん、そういちひゃん！」
呂律が怪しくなってきた蓮花が全裸のまま想一のベッドに寝転がった。
蠢く両手はそれぞれ乳房と秘所に伸びていく。
乳の先端は既にピンとそそり立っており、秘部からも愛液がじわりと滲み始めている。
「ふむっ、うむんんっ、ふああっ」
くぐもった喘ぎをつきながら、手で敏感な所をゆっくり虐めていく。
ベッドには想一の残り香がパンツ以上にしみついており、否応なくオスの匂いが鼻腔に届いた。
（すてきいぃ。そういちさんのぉ、たくましいオスの匂いぃ）
好いた男の下着を口に含み、さらにその男のベッドで身悶え、乳と秘所に指を這わせる残念淫乱美人。当人に目撃でもされようものなら、精神的に軽く死ねるほどの痴態だ。
だが蓮花は自慰を止めない。止められない。
魔物娘にとって、パートナーや恋した男の体臭は麻薬にも似る。
どれほど貞淑な精神を持とうとしても、その性に逆らうことは魔物娘である限り難しい。
（そういちさん、そういちさぁん、欲しいんれしゅうぅ、あなたの太くて硬くてたくましいおちんぽがぁ、欲しいんれしゅうぅおちんぽおちんぽおちんぽぉ）
挙句には脳内で淫語を垂れ流し始める。こうなるともう始末がつかない。火照った身体を鎮めるまで、彼女はアクセルを緩めることはない。
「んんうっ！」
左手でみちりと乳首をつね上げると甘い痺れが脳髄を襲った。
思わず足がピンと反り返り、腰がくいっと宙に浮く。オスの劣情を誘う仕草だ。
（はしたない……けど……）
羞恥と快楽で顔を真っ赤にしつつも、蓮花は手の動きを一向に止めない。
どこをどのようにいじれば気持ちいいのかは、もう知っている。
自分の身体だから、というだけでない。何回も幾度も繰り返してきたことだから。どこが敏感なのか分かるのだ。
乳首をこねりつつ、右手の方は秘所へと手を伸ばす。
何にも覆われていない恥丘を下り、入口へ到着。既に愛液は分泌されており、指先でつつけばくちゃりと淫猥な水音が響く。
中指と薬指を立てて門の奥へ挿入。ほぼ抵抗なく、膣は二本の指をずちゅりと飲み込んだ。
「ふうううっ」
押し殺した呻きを漏らしつつ、さらに指を奥へ。膣内はにちゃっとしていて温かく、入ってきた両指を膣壁たちが歓待して出迎える。
（きもちいい、これきもちいい）
指を中で動かすとゾクゾクした快感が生まれ、肌にしっとり汗がにじみ始める。
だがこれじゃまだ物足りない。挿入させた指先を、膣の入口付近でぐにぐにと動かしつつ愛撫する角度や場所、位置を調整する。
（以前読んだレディース誌によると……）
鼻息を荒くしながら、蓮花は自分の記憶を辿っていく。
（そうです。雑誌に書かれていたＧスポットなるものは確か、このへん）
膣内上側をいじっていると少しザラっとした場所を探り当てた。触った感触から、雑誌に書かれていた性感帯と合致する。
（ちょっと怖いですけど、新しい扉を開く為に）
意を決した蓮花は指を押し当てた。
直後、下腹部から突き上げるような快楽が広がった。
「んあああああああっ！！」
あられもない嬌声が喉から飛び出す。それによって咥えていたボクサーパンツが、ぱさりと口元から落ちていく。
「ふあっ、あああっ！？ あっ、あっ、あっ、あおおっ！？」
先の比ではないくらいに腰がビクンと震え上がり、足がピンと一直線に伸びる。蓮花の瞳孔は見開き、膣内からはぷしゅりと透明な液が噴出した。
補足しておくが、Ｇスポットを指圧しても人間女性が即イキすることは難しい。
未開発の性感帯を刺激しただけで軽いアクメをキメられるのは、蓮花がひとえに魔物娘だからである。
逆に魔物娘だったら、人間では本来考えられないような肉体部位にも性的開発を施すことが可能となる。
「あっ、ああ、あひいいっ！？ おっ、おっ、おっ！」
女性器の中で跳ね回る指先は、味を占めたのか何度も同じ場所を指圧する。
角度を変え、強さを変え、リズムを変えて、テンポも変えて。
快楽が弾ける度に肉体だけでなく脳にも痺れが走り、部屋にはメスの匂いが充満していく。
午前九時半。主不在の寝室に、水音と喘ぎ声からなる協奏曲が艶めかしく響いていく。
膣の締め付けはより一層強くなり、指へ絡みつく膣壁のうねりも複雑さを増していく。あきらかに搾精のための動きだった。
「ふああっ！ ひぉおあっ？！ ぉっうっうっ！？」
自動で指が動き回る一方、未知の快感に蓮花は翻弄されっぱなしだ。
落ち着きたいなら指を止めればいいだけの話だが、魔物としての本能が理性を侵食している今、指を引き抜くという選択肢はとうに頭から消えている。
「すごぉおおいっ！ そういちしゃんの、ゆび、しゅごいれしゅううっ！」
嬌声と涎を撒き散らしながら、蓮花は夢想状態に入った。
部屋で下着を盗もうとした不埒な自分。それを目撃した想一に強引に押し倒され、お仕置きを受けることになってしまった。組み敷かれて拘束され、なす術なくカラダを指で折檻される。謝罪しても懇願しても攻め手が休まることはない。
……彼女が思い描いている自慰シチュエーションが、こんな感じである。
普通に考えれば、想一がそんなことをするのはまずあり得ないし、そもそも蓮花は妖術や神通力が扱えるので並の男はおろか武術の達人ですら相手にならない。
「ごめんなひゃいいっ、こんな淫乱な女でごめんなひゃいいいっ！」
だが彼女にとって重要なのは、自分に都合のいい幻想を抱いて本能のままオナニーをすること。
そこに理性だとか、貞淑さとか、建前とか、余計なものは一切いらないのだろう。
「そういちさっ、おねが、いいっ！ もうゆるして、ゆるしてくだしゃいいっ！」
『そうは言っても、蓮花さんのここはビショビショですよ？ 乳首だってほら、こんなにピンと立っている』
「いやああぁ、言わないでぇぇ」
終いには自ら投影した虚像の想一とやりとりを始める。
蓮花視点ではいやらしい笑みを浮かべた想一が秘部や乳を攻め立てているが、実際の所は彼女自身が自分で肉体を刺激しているだけだ。
『がっかりですよ、蓮花さんがこんな淫らな人だったなんて』
「もうひわけありましぇん、どうか、なにとぞ、ご容赦をぉぉ」
虚像との変態ごっこは続く。上から想一にのしかかられた、と思い込んでる蓮花は逃げることも抵抗もできない。
『そう言う割には慣れた手つきで私の下着を盗もうとしてましたよねぇ。あの機敏な動きからして初犯はあり得ない。常習犯ですね』
「ひぎあっ！？」
ごりゅっ。
乳首とクリトリスを同タイミングでつねあげられた。予想外の攻撃に、悲鳴に似た喘ぎが飛び出す。
……それも全て蓮花自身の手によるものだが。
『で？ これで何回目ですか？ 正直に言うならお仕置きを緩めてあげますよ』
「そ、それは……」
『言えないんですか。なら、もっと激しくする必要が』
「言います！ 言いますからどうかっ！」
必死である。傍から見たら単なる一人芝居だが、蓮花当人は至って大まじめだ。
ここまでくると、一種のトランス状態と見なした方がいいだろう。
ベッドで震える雌狐は、潤んだ瞳でオナニーの合計回数を虚空に呟く。
「ひゃ、ひゃくさんじゅう、百三十七回です。想一さんのパンツを盗んだり、ベッドの上で乱れたり、貴方を思って自宅でしたり……百三十七回オナニーをやりました」
『へぇ。それは私と出会ってから今日までの通算、ということで間違いないですか？』
「は、い。間違い、ないです」
瞬間。想一の虚像がより一層笑みを深めた。
『不合格。そんなド淫乱変態メス狐には、懲罰が必要ですね』
「ひっ、ひいっ！」
本人が絶対言わないであろう台詞を受けて恐怖とそれ以上の期待に震える蓮花。
彼の言葉を受けて興奮するのもアレだが、その脳内テキストを作り出す発想は正に救い難いド淫乱である。
『そのヤらしいケツをこっちに向けて下さい。そして突き出すんです。下品に、グイッとね』
「あ、あ、ああ」
『できないんですか？ ならば』
「やります！ やりますからっ！！」
ノリノリだ。心なしか声が上ずっているのは、嫌悪にかられてのことではない。
羞恥と興奮が混じり合った表情で、蓮花は体勢を仰向けから四つん這いにする。
そして立派なハリを誇る尻をぐいっと突き上げた。窓から差し込む朝日に照らされた、それは極上の尻だった。性という煩悩を捨て去った聖者が見たとしても、股間がスタンディングオベーションするであろう偉大なヒップだった。
『見事につるつるなケツですね。桃尻って言うんですか、これはお仕置きし甲斐がある』
自分の恥ずかしい場所を至近距離で、舐めるように視姦されている。そう感じた蓮花の秘所がまたもや愛液を大量に分泌し始める。
『もしかして見られて興奮したんですか？ とんだ淫乱ですね』
「ち、ちがっ！ わたくしはそんなんじゃ」
『じゃあこのダラダラ涎をたらしているマンコはなんですか？』
スパアアアン！！
「ぃぎいっ！？」
そして唐突に始まるヒップスパンキング。叩かれた尻が小気味のいい音を鳴らし、蓮花が目を白黒させる。ついでに叫びながら涎と嬌声も垂れ散らす。
『まだまだいきますよ。ほらっ！』
スパチイィィン！
「ひぎゃぁっ！！」
ピシャッ！ バチィィン！ ビチィィン！
想一、という名の虚像が繰り出すお仕置きは、さらに激しくなっていく。
叩かれる度にプルリと尻と乳が揺れ、ヴァギナも溢す涎の量を増やしていく
……実際に臀部を叩いているのは蓮花自身で、その手に握られているのは妖術で虚空から取り出したばら鞭だが。
「あぁぁっ！ うあ゛っ、ぁあひぃっ！」
『ははっ、いい声で鳴く。蓮花は変態の才能がありますよ』
「そういちさん、だめ、ですぅ。どうかご慈悲をぉ」
いつの間にか呼び捨てにされていることに喜色を浮かべつつ、形ばかりの懇願を蓮花は行う。声にしなだれかかるような甘さが乗っているのは、折檻されている当人が愉しんでいる証拠だろう。
『媚びるように揺れている尻尾と耳をくっつけておいて、よくそれを言えますね』
変態鬼畜野郎と化した虚像の想一は尻尾を掴むと、根本を勢いよくしごき始めた。
「ふほきゅうううううぅぅっ！？」
予想外の攻め手に、蓮花がブルブル全身を揺らす。連動して乳もいやらしく揺れ、女性器からは透明な飛沫がぷしゃぷしゃ断続的に漏れ出した。
『あーあ、おしっこまでしちゃって。そんなに尻尾シコシコされるの気持ちよかったんですか？』
「は、い。そういちさんの手でシコシコ、気持ちよかった、れしゅ」
トレードマークの三角耳と尻尾をビクつかせながら、陶酔した笑みを浮かべる蓮花。
『正直なのはいいことです。ならもっと弄ってあげましょう』
「え？ そんなことされたらきゃひいぃっ！？」
スパン！ しゅこしゅこ。 パァチィン！ しゅこしゅこ。 ビシリッ！ しゅこしゅこ。
「ひっ！ あうあっ！ きゃううんんっ！」
ばら鞭でのお仕置きと、尻尾しごきが交互に行われた。これには蓮花もたまらず目を剥き、全身を先よりも大きく痙攣させる。実際の光景がどうなっているかというと、右手で尻尾の根元をしごきつつ神通力で宙に浮かせたばら鞭で尻を叩くという、なんとも形容し難い状況が繰り広げられている。
無理矢理説明するなら、淫乱上級者が行う倒錯的なオナニーショーの図式がそこにあった。
「ぁひいあっ！ おおっ！ おっおっ、おあああ！ ひゃうあっ、えぎぃぃぃっ！！」
『それっ、それっ！ もっと聞かせてくださいよ、咽び鳴くメスの声を！！』
「あああああああ！ だめダメ駄目っ！ いぎまずうっ、もういっぢゃいまずぅ！」
『許可しません。あと三分は耐えるんです』
「無理でしゅぅぅ、おねがっ、お゛ねがいじまずうう゛う゛！」
『聞こえませんね』
濁った声を上げて絶頂をせがむ蓮花に、にべもなく想一はＮＯを突き付ける。
「いやっ、だめぇ、いぐっ、いぐうううううううっ！！」
叩かれ続ける衝撃でイッた。
背すじを仰け反らせ、蓮花は遥かな高みに飛翔した。視界に一筋の閃光が走り、女陰が水しぶきを飛ばす。せり上がった快感が身体を深く打ちのめし、絶頂はたっぷり数分続いた。
「ぁあ、はぅ、はひゃぁぁ」
夢見心地、という単語がぴったり当てはまる表情で女はベッドに突っ伏した。
大波の如く寄せては返す快感の奔流に、蓮花は浅ましいメス顔を貼りつかせプルプルしている。ついさっきまで想一本人に手料理を振る舞っていた淑女の面影は一片もない。
（きもひ……よかったぁ……♪）
陶酔した気分で、ぜえぜえ呼吸を繰り返す。
しかし。
「ぅぎゅううあっ！？」
脳が満足しても、本能の方はまだ快感が足りぬらしい。
半自動的に動いた右手が、再度尻尾を激しくしごき始める。蓮花は混乱状態になった。そして後ろを見て、ぞっとした。
増えている。尻尾が、尻尾が四本に増えている。
「なっ、なんで……！」
見間違う訳がない。ついさっきまでは三本しか生えていなかったはずだ。
なのに何故四本……、いや、理由は分かり切っている。倒錯的かつ激しい自慰行為を行ったために、尻尾が四本に増えたのだ。
にわかには信じ難いが、現象を見て取った結果、筋の通る説明がそれしかない。
「ぁあぐうっ？！」
困惑を他所に、自慰の手はまたもや苛烈さを増していく。虚像の想一が再び現れ、お仕置きを与えてくる。
『だから言ったじゃないですか、あと三分我慢することって』
「あ、ああ、そんな、お願いです。もうこれ以上は」
『駄目ですね。もっと折檻が必要です』
「そんな、どぉしてぇ、どうして虐めるんですかぁ……」
大粒の涙を零しながら、童女みたいにいやいやする色情狂いの雌狐。繰り返しになるが肉体に刺激を与えているのは蓮花自身である。
それなのに彼女は想一に弄ばれているのだと信じて疑わず、泣いて許しを請い続ける。
凄まじい思い込みの強さだった。
注釈すると、彼女は自身の脳に妖術や神通力をかけている訳ではない。純粋に素の状態から、高い集中力のせいでこうなっているだけなのだ。
『何故虐めるか……。そんなの貴女の泣き顔が可愛いに決まっているからじゃないですか』
「ふぇ……？ 可愛い？」
突然の告白に目を丸くする蓮花。
これまで想一の虚像の口を借りて話されているのは、全て蓮花の妄想。
つまり彼女の深層心理が望んでいる事だ。
よって虚像の言動も、彼女が心の底で求めていることと合致する。
「想一さん、今、わたくしのことを可愛いって」
『ええ、そんな貴女を、ずっとこうしたくてたまらなかった！！』
ずぢゅぢゅみちみちみぢいいい！
「ふきゃあああああああっ！？」
太くて硬くて大きいモノが、アナルへ容赦なく入って来た。
「あ゛っ、お゛っお゛お゛？！ おしりぃ、おしりに、おちんちんがぁ……」
実際に入っているのは、陰茎の形をしたディルドだが。
『流石にキツキツですね。でもこれくらい締まりのある方が、ほじり甲斐があるというものです』
言うや否や。ピストンが始まった。
ゆっくりと、ねぶるように棒が奥へ押し進められ、そしてまた時間をかけて引き抜かれる。
挿入、抜去。 挿入、抜去。 挿入、抜去……。
二つの動作がじっくり交互に行われ、眩暈に似た感覚が蓮花を襲う。
「はっ、あっ、ふうぅぅぅぁぁぁぁぁ……！」
先のスパンキングとは異なる快楽に耐える為、女はベッドシーツをきつく握りしめる。
重力に引かれた乳房が律動の度にゆさゆさ揺れ、突き出した尻が再び紅に色づいていく。
四本に増えた尻尾は電流を流されたかのように小刻みに痙攣し、彼女の頭頂部から生える三角耳はペタンと倒れている。
『そろそろ、速く動かしますよ』
アナルを貫く棒の抽挿が速くなっていく。結合部からはみぢみぢと猥雑な水音が響き、増大した快感が女体に淫撃を見舞った。
「ぉおっ！？ はうっ、あひぃっ、ぉっぉっ、えあぁ、ふひゅぃ！」
奇妙な喘ぎを零す蓮花の顔は、既に涙でグチャグチャだ。瞳からは雫を流しっぱなしで、だらしなく垂らした舌からは壊れたように涎が分泌され続けている。
当然ながら、とうに何かを考えるだけの余裕は失われている。神通力で操った極太ディルドを菊穴へ突っ込むのに精一杯な様子だ。
『アナルはキツキツ、まんこはぐちゃぐちゃ、クリトリスはぷっくり膨れ上がって……。私に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた人と同一人物とは思えませんね』
「きもぢいいぃぃ！ おしりのあなほじほじされるのぎもぢいぃれじゅああああ！」
『そうですか。ならっ、このあざとい耳も！ 尻尾も！ 胸も尻もマンコだって、全部私のものだっ！！』
「はいっ！ はいっ、なりまずうぅ！ 全部貴方様のモノになりまずううう！」
髪を振り乱し、オスに媚びるような声を出し、いやらしく快楽を貪る狐娘。
彼女の視界に再び白い火花がちらつき始め、全身の血流が段階飛ばしで加速していく。
本日二回目のオーガズムはすぐそこまで来ていた。
『欲しいですか？ 私のザーメンが！』
「はいっ！ 想一さんのザーメンほしいれしゅぅぅ！」
『なら孕めええええっ！ チンポザーメンぶちこまれてケツ穴妊娠しろおおっ！！』
「はいいいいいっ！ 孕みましゅうううっ、おちんぽみるくでぇ、アナル受精しましゅうううううっ！！」
高らかに絶頂を宣言し、幻視した想一の射精によって蓮花はイった。
「んおおおおおおおおおおっ！！！」
ケダモノ染みた絶叫と共に蓮花は弓なりに背を反らす。
アナルからは下品極まりない淫音が鳴り響いた。
ヴァギナからは盛大に飛沫が飛び出し、透明なアーチが宙に大きな弧を描く。
愛液のシャワーはベッドシーツに降り注ぎ、いやらしい匂いのシミを作った。
「あ……ああ、あふぅ……」
呆然自失といった体で、意識と視線を虚空に彷徨わせる狐娘。全身を包む高揚と熱は、それからしばらく続いた。
今までしてきたオナニーで、間違いなく最高の快感だった。
多幸福感と愉悦感に包まれ、どさりと倒れ伏す。
ベッドの上で余韻に浸る蓮花は、得も言われぬ心地よさに身を漂わせた。
（今ならまだ間に合います……。けど）
震える右手が、想一の部屋の戸へ伸びていく。それを止める役割を持つ左手は、先とは打って変わってピクリとも動きはしない。理性が役割を放棄していた。
（想一さん、いやらしい女でごめんなさい）
許しを請いながら、蓮花はその扉を開けた。
室内は主の性格を象徴するかのように整頓されている。クラシックな色合いの机に、かけ布団が畳まれたベッド。部屋の隅に置かれた姿見に、衣類が仕舞われているであろうクローゼット。机の横には子供の背丈くらいの本棚もある。そこに収められている本は文芸書やビジネス書、漫画など種類やカテゴリーも様々だ。
部屋スペースが実際より広く感じるのは、想一がレイアウトにこだわっているからだろう。
調度品も過度な装飾や華やかさは一切なく、彼の実直な性格がそこにも表れている。
（嗚呼……想一さんの部屋、想一さんの匂い……）
息を吸い込むと、彼の残り香が鼻腔に入ってくる。石鹸とシトラスを薄く混ぜたような匂いだ。
綺麗好きな想一は身体を石鹸で念入りに洗っており、体臭ケアにも気を遣っている。
蓮花に不快な思いをさせたくないというのも理由として大きい。
一方の蓮花としては彼の体臭を直に嗅ぎたいのが本音である。だが今はこの残り香を肺に取り入れるだけでも十分だ。
部屋で数回深呼吸しただけで、既に彼女の足元は頼りないものとなっている。
「ふふっ♪」
彼女が次に取った行動は迅速だった。
具体的には、クローゼットの引き出しから想一のボクサーパンツを引っ張り出し、それを勢いよく顔に押し当てた。そして一気に鼻と口で息を吸い込んだ。
洗剤で綺麗に洗い揉まれていても分かった。生地にしみついた愛しい男の匂いが。
（すごおおぉい……。そういちさんのぉ、いい匂いいぃぃ）
狐特有の優れた嗅覚で香りを味わう蓮花の眼が、危ないクスリをキメたかのように焦点を失う。
平日の朝。身体を震わせながら男物の下着を顔に押し当てて悦に浸るという、他人様にはお見せできない山城蓮花の姿がそこにあった。
（しゅごいぃ、これしゅごくいいれしゅうぅぅ）
黒地に販売社ロゴが引かれた、派手さがないデザインの下着。素材はポリエステル百パーセント。価格は一着で二百五十円。特筆すべき所はない。
（パンツぅ。実直でぇ、誠実でぇ、紳士的でかっこいい想一さんのパンツぅ）
持ち主が、想一であることを除いて。
シンプルで色気の欠片もないデザインだが、蓮花には気にならない。
彼が履いていた下着を洗濯したのも、畳んで収納したのも、そしてそれを今オナニーの材料にしているのも自分という事実が、彼女を昂らせるのだ。
「はむっ、はふむうっ、ふむうううっ」
ついに下着を口に咥えた。大和撫子の気品崩壊待ったなしの絵面である。
首筋から額にかけては薔薇よりも真っ赤。吐息は荒くなるばかりで、光のない瞳の端には涙が滲み垂れてきている。
下着を持つ右手はきつく握り締められていて、左手は割烹着の留め紐をするする解いている。蓮花の脳内といえば、これから行う自慰の事で一杯だ。
「ひゅふふっ、ふふふうぅぅ」
妙な声を上げながら身をくねらせ、片手で器用に服の結び目をゆるませていく狐娘。
程なくして、ぱさりと割烹着が彼女の足元に落とされた。続いて薄桃色の下着も。
身に纏っていた服を取り払ったことで、彼女の全容が露わとなる。
端的に言うならば、恐ろしく均衡の整った、かつ色気を持った肉体だった。
まず目を引くのは豊かな胸である。グラビアアイドル級の雄大な双丘は、彼女が動くだけでゆさりと揺れる。だがだらしなく垂れているという訳ではない。ツンと上向きの乳はハリ良し、形良し、サイズ良しの三拍子で男の情欲をこれでもかとそそるだろう。
丸みを帯びた乳房の先端は、直視した相手が女なら嫉妬するほど綺麗な桜色だ。
きゅっと曲線美を描くウエストは細くとも、いい塩梅に肉がついている。女性らしい美の象徴と健康的な印象を見る者に与えるくびれだ。
嫋やかな腰回りはそれだけでモデルと勝負ができそうなくらいに整っている。
そして乳とウエストを凌駕する色気を持つ魅惑のヒップ。
見た男が元気な赤子が産めそうだと確信するほどの桃尻が、今は惜しげもなく外気に晒されている。揉みしだけばさぞいい心地がするのは間違いないだろう。
ちなみに蓮花自身は知る由もないことだが、想一は胸も好きだがそれ以上に尻が大好物だ。
彼が二重ロックしてスマホに保存している秘蔵フォルダは、七割以上がヒップを強調したもの。つけ加えると想一のここ最近の悩みは、蓮花の後ろ姿、とりわけ衣服の奥に隠されている美尻を思って局部が痛くなることである。
さて、閑話休題。
頭頂部から伸びた三角耳と臀部から伸びたふわふわ尻尾が加われば、エロくて綺麗で可愛いという無双状態の美女が爆誕する。
実際、街ですれ違った男達が二度見ならぬ三度見するくらいに蓮花の纏う魅力は大きい。
何故こんな美女に彼氏がいないのか、想一が首を傾げるのも不思議な話ではない。
ホントの所は、蓮花自身が男避けの妖術を使っているため、話しかけるどころか近寄ってくる男性もいないというだけのことだが。勿論想一はその対象外である。
「そういちさん、そういちしゃん、そういちひゃん！」
呂律が怪しくなってきた蓮花が全裸のまま想一のベッドに寝転がった。
蠢く両手はそれぞれ乳房と秘所に伸びていく。
乳の先端は既にピンとそそり立っており、秘部からも愛液がじわりと滲み始めている。
「ふむっ、うむんんっ、ふああっ」
くぐもった喘ぎをつきながら、手で敏感な所をゆっくり虐めていく。
ベッドには想一の残り香がパンツ以上にしみついており、否応なくオスの匂いが鼻腔に届いた。
（すてきいぃ。そういちさんのぉ、たくましいオスの匂いぃ）
好いた男の下着を口に含み、さらにその男のベッドで身悶え、乳と秘所に指を這わせる残念淫乱美人。当人に目撃でもされようものなら、精神的に軽く死ねるほどの痴態だ。
だが蓮花は自慰を止めない。止められない。
魔物娘にとって、パートナーや恋した男の体臭は麻薬にも似る。
どれほど貞淑な精神を持とうとしても、その性に逆らうことは魔物娘である限り難しい。
（そういちさん、そういちさぁん、欲しいんれしゅうぅ、あなたの太くて硬くてたくましいおちんぽがぁ、欲しいんれしゅうぅおちんぽおちんぽおちんぽぉ）
挙句には脳内で淫語を垂れ流し始める。こうなるともう始末がつかない。火照った身体を鎮めるまで、彼女はアクセルを緩めることはない。
「んんうっ！」
左手でみちりと乳首をつね上げると甘い痺れが脳髄を襲った。
思わず足がピンと反り返り、腰がくいっと宙に浮く。オスの劣情を誘う仕草だ。
（はしたない……けど……）
羞恥と快楽で顔を真っ赤にしつつも、蓮花は手の動きを一向に止めない。
どこをどのようにいじれば気持ちいいのかは、もう知っている。
自分の身体だから、というだけでない。何回も幾度も繰り返してきたことだから。どこが敏感なのか分かるのだ。
乳首をこねりつつ、右手の方は秘所へと手を伸ばす。
何にも覆われていない恥丘を下り、入口へ到着。既に愛液は分泌されており、指先でつつけばくちゃりと淫猥な水音が響く。
中指と薬指を立てて門の奥へ挿入。ほぼ抵抗なく、膣は二本の指をずちゅりと飲み込んだ。
「ふうううっ」
押し殺した呻きを漏らしつつ、さらに指を奥へ。膣内はにちゃっとしていて温かく、入ってきた両指を膣壁たちが歓待して出迎える。
（きもちいい、これきもちいい）
指を中で動かすとゾクゾクした快感が生まれ、肌にしっとり汗がにじみ始める。
だがこれじゃまだ物足りない。挿入させた指先を、膣の入口付近でぐにぐにと動かしつつ愛撫する角度や場所、位置を調整する。
（以前読んだレディース誌によると……）
鼻息を荒くしながら、蓮花は自分の記憶を辿っていく。
（そうです。雑誌に書かれていたＧスポットなるものは確か、このへん）
膣内上側をいじっていると少しザラっとした場所を探り当てた。触った感触から、雑誌に書かれていた性感帯と合致する。
（ちょっと怖いですけど、新しい扉を開く為に）
意を決した蓮花は指を押し当てた。
直後、下腹部から突き上げるような快楽が広がった。
「んあああああああっ！！」
あられもない嬌声が喉から飛び出す。それによって咥えていたボクサーパンツが、ぱさりと口元から落ちていく。
「ふあっ、あああっ！？ あっ、あっ、あっ、あおおっ！？」
先の比ではないくらいに腰がビクンと震え上がり、足がピンと一直線に伸びる。蓮花の瞳孔は見開き、膣内からはぷしゅりと透明な液が噴出した。
補足しておくが、Ｇスポットを指圧しても人間女性が即イキすることは難しい。
未開発の性感帯を刺激しただけで軽いアクメをキメられるのは、蓮花がひとえに魔物娘だからである。
逆に魔物娘だったら、人間では本来考えられないような肉体部位にも性的開発を施すことが可能となる。
「あっ、ああ、あひいいっ！？ おっ、おっ、おっ！」
女性器の中で跳ね回る指先は、味を占めたのか何度も同じ場所を指圧する。
角度を変え、強さを変え、リズムを変えて、テンポも変えて。
快楽が弾ける度に肉体だけでなく脳にも痺れが走り、部屋にはメスの匂いが充満していく。
午前九時半。主不在の寝室に、水音と喘ぎ声からなる協奏曲が艶めかしく響いていく。
膣の締め付けはより一層強くなり、指へ絡みつく膣壁のうねりも複雑さを増していく。あきらかに搾精のための動きだった。
「ふああっ！ ひぉおあっ？！ ぉっうっうっ！？」
自動で指が動き回る一方、未知の快感に蓮花は翻弄されっぱなしだ。
落ち着きたいなら指を止めればいいだけの話だが、魔物としての本能が理性を侵食している今、指を引き抜くという選択肢はとうに頭から消えている。
「すごぉおおいっ！ そういちしゃんの、ゆび、しゅごいれしゅううっ！」
嬌声と涎を撒き散らしながら、蓮花は夢想状態に入った。
部屋で下着を盗もうとした不埒な自分。それを目撃した想一に強引に押し倒され、お仕置きを受けることになってしまった。組み敷かれて拘束され、なす術なくカラダを指で折檻される。謝罪しても懇願しても攻め手が休まることはない。
……彼女が思い描いている自慰シチュエーションが、こんな感じである。
普通に考えれば、想一がそんなことをするのはまずあり得ないし、そもそも蓮花は妖術や神通力が扱えるので並の男はおろか武術の達人ですら相手にならない。
「ごめんなひゃいいっ、こんな淫乱な女でごめんなひゃいいいっ！」
だが彼女にとって重要なのは、自分に都合のいい幻想を抱いて本能のままオナニーをすること。
そこに理性だとか、貞淑さとか、建前とか、余計なものは一切いらないのだろう。
「そういちさっ、おねが、いいっ！ もうゆるして、ゆるしてくだしゃいいっ！」
『そうは言っても、蓮花さんのここはビショビショですよ？ 乳首だってほら、こんなにピンと立っている』
「いやああぁ、言わないでぇぇ」
終いには自ら投影した虚像の想一とやりとりを始める。
蓮花視点ではいやらしい笑みを浮かべた想一が秘部や乳を攻め立てているが、実際の所は彼女自身が自分で肉体を刺激しているだけだ。
『がっかりですよ、蓮花さんがこんな淫らな人だったなんて』
「もうひわけありましぇん、どうか、なにとぞ、ご容赦をぉぉ」
虚像との変態ごっこは続く。上から想一にのしかかられた、と思い込んでる蓮花は逃げることも抵抗もできない。
『そう言う割には慣れた手つきで私の下着を盗もうとしてましたよねぇ。あの機敏な動きからして初犯はあり得ない。常習犯ですね』
「ひぎあっ！？」
ごりゅっ。
乳首とクリトリスを同タイミングでつねあげられた。予想外の攻撃に、悲鳴に似た喘ぎが飛び出す。
……それも全て蓮花自身の手によるものだが。
『で？ これで何回目ですか？ 正直に言うならお仕置きを緩めてあげますよ』
「そ、それは……」
『言えないんですか。なら、もっと激しくする必要が』
「言います！ 言いますからどうかっ！」
必死である。傍から見たら単なる一人芝居だが、蓮花当人は至って大まじめだ。
ここまでくると、一種のトランス状態と見なした方がいいだろう。
ベッドで震える雌狐は、潤んだ瞳でオナニーの合計回数を虚空に呟く。
「ひゃ、ひゃくさんじゅう、百三十七回です。想一さんのパンツを盗んだり、ベッドの上で乱れたり、貴方を思って自宅でしたり……百三十七回オナニーをやりました」
『へぇ。それは私と出会ってから今日までの通算、ということで間違いないですか？』
「は、い。間違い、ないです」
瞬間。想一の虚像がより一層笑みを深めた。
『不合格。そんなド淫乱変態メス狐には、懲罰が必要ですね』
「ひっ、ひいっ！」
本人が絶対言わないであろう台詞を受けて恐怖とそれ以上の期待に震える蓮花。
彼の言葉を受けて興奮するのもアレだが、その脳内テキストを作り出す発想は正に救い難いド淫乱である。
『そのヤらしいケツをこっちに向けて下さい。そして突き出すんです。下品に、グイッとね』
「あ、あ、ああ」
『できないんですか？ ならば』
「やります！ やりますからっ！！」
ノリノリだ。心なしか声が上ずっているのは、嫌悪にかられてのことではない。
羞恥と興奮が混じり合った表情で、蓮花は体勢を仰向けから四つん這いにする。
そして立派なハリを誇る尻をぐいっと突き上げた。窓から差し込む朝日に照らされた、それは極上の尻だった。性という煩悩を捨て去った聖者が見たとしても、股間がスタンディングオベーションするであろう偉大なヒップだった。
『見事につるつるなケツですね。桃尻って言うんですか、これはお仕置きし甲斐がある』
自分の恥ずかしい場所を至近距離で、舐めるように視姦されている。そう感じた蓮花の秘所がまたもや愛液を大量に分泌し始める。
『もしかして見られて興奮したんですか？ とんだ淫乱ですね』
「ち、ちがっ！ わたくしはそんなんじゃ」
『じゃあこのダラダラ涎をたらしているマンコはなんですか？』
スパアアアン！！
「ぃぎいっ！？」
そして唐突に始まるヒップスパンキング。叩かれた尻が小気味のいい音を鳴らし、蓮花が目を白黒させる。ついでに叫びながら涎と嬌声も垂れ散らす。
『まだまだいきますよ。ほらっ！』
スパチイィィン！
「ひぎゃぁっ！！」
ピシャッ！ バチィィン！ ビチィィン！
想一、という名の虚像が繰り出すお仕置きは、さらに激しくなっていく。
叩かれる度にプルリと尻と乳が揺れ、ヴァギナも溢す涎の量を増やしていく
……実際に臀部を叩いているのは蓮花自身で、その手に握られているのは妖術で虚空から取り出したばら鞭だが。
「あぁぁっ！ うあ゛っ、ぁあひぃっ！」
『ははっ、いい声で鳴く。蓮花は変態の才能がありますよ』
「そういちさん、だめ、ですぅ。どうかご慈悲をぉ」
いつの間にか呼び捨てにされていることに喜色を浮かべつつ、形ばかりの懇願を蓮花は行う。声にしなだれかかるような甘さが乗っているのは、折檻されている当人が愉しんでいる証拠だろう。
『媚びるように揺れている尻尾と耳をくっつけておいて、よくそれを言えますね』
変態鬼畜野郎と化した虚像の想一は尻尾を掴むと、根本を勢いよくしごき始めた。
「ふほきゅうううううぅぅっ！？」
予想外の攻め手に、蓮花がブルブル全身を揺らす。連動して乳もいやらしく揺れ、女性器からは透明な飛沫がぷしゃぷしゃ断続的に漏れ出した。
『あーあ、おしっこまでしちゃって。そんなに尻尾シコシコされるの気持ちよかったんですか？』
「は、い。そういちさんの手でシコシコ、気持ちよかった、れしゅ」
トレードマークの三角耳と尻尾をビクつかせながら、陶酔した笑みを浮かべる蓮花。
『正直なのはいいことです。ならもっと弄ってあげましょう』
「え？ そんなことされたらきゃひいぃっ！？」
スパン！ しゅこしゅこ。 パァチィン！ しゅこしゅこ。 ビシリッ！ しゅこしゅこ。
「ひっ！ あうあっ！ きゃううんんっ！」
ばら鞭でのお仕置きと、尻尾しごきが交互に行われた。これには蓮花もたまらず目を剥き、全身を先よりも大きく痙攣させる。実際の光景がどうなっているかというと、右手で尻尾の根元をしごきつつ神通力で宙に浮かせたばら鞭で尻を叩くという、なんとも形容し難い状況が繰り広げられている。
無理矢理説明するなら、淫乱上級者が行う倒錯的なオナニーショーの図式がそこにあった。
「ぁひいあっ！ おおっ！ おっおっ、おあああ！ ひゃうあっ、えぎぃぃぃっ！！」
『それっ、それっ！ もっと聞かせてくださいよ、咽び鳴くメスの声を！！』
「あああああああ！ だめダメ駄目っ！ いぎまずうっ、もういっぢゃいまずぅ！」
『許可しません。あと三分は耐えるんです』
「無理でしゅぅぅ、おねがっ、お゛ねがいじまずうう゛う゛！」
『聞こえませんね』
濁った声を上げて絶頂をせがむ蓮花に、にべもなく想一はＮＯを突き付ける。
「いやっ、だめぇ、いぐっ、いぐうううううううっ！！」
叩かれ続ける衝撃でイッた。
背すじを仰け反らせ、蓮花は遥かな高みに飛翔した。視界に一筋の閃光が走り、女陰が水しぶきを飛ばす。せり上がった快感が身体を深く打ちのめし、絶頂はたっぷり数分続いた。
「ぁあ、はぅ、はひゃぁぁ」
夢見心地、という単語がぴったり当てはまる表情で女はベッドに突っ伏した。
大波の如く寄せては返す快感の奔流に、蓮花は浅ましいメス顔を貼りつかせプルプルしている。ついさっきまで想一本人に手料理を振る舞っていた淑女の面影は一片もない。
（きもひ……よかったぁ……♪）
陶酔した気分で、ぜえぜえ呼吸を繰り返す。
しかし。
「ぅぎゅううあっ！？」
脳が満足しても、本能の方はまだ快感が足りぬらしい。
半自動的に動いた右手が、再度尻尾を激しくしごき始める。蓮花は混乱状態になった。そして後ろを見て、ぞっとした。
増えている。尻尾が、尻尾が四本に増えている。
「なっ、なんで……！」
見間違う訳がない。ついさっきまでは三本しか生えていなかったはずだ。
なのに何故四本……、いや、理由は分かり切っている。倒錯的かつ激しい自慰行為を行ったために、尻尾が四本に増えたのだ。
にわかには信じ難いが、現象を見て取った結果、筋の通る説明がそれしかない。
「ぁあぐうっ？！」
困惑を他所に、自慰の手はまたもや苛烈さを増していく。虚像の想一が再び現れ、お仕置きを与えてくる。
『だから言ったじゃないですか、あと三分我慢することって』
「あ、ああ、そんな、お願いです。もうこれ以上は」
『駄目ですね。もっと折檻が必要です』
「そんな、どぉしてぇ、どうして虐めるんですかぁ……」
大粒の涙を零しながら、童女みたいにいやいやする色情狂いの雌狐。繰り返しになるが肉体に刺激を与えているのは蓮花自身である。
それなのに彼女は想一に弄ばれているのだと信じて疑わず、泣いて許しを請い続ける。
凄まじい思い込みの強さだった。
注釈すると、彼女は自身の脳に妖術や神通力をかけている訳ではない。純粋に素の状態から、高い集中力のせいでこうなっているだけなのだ。
『何故虐めるか……。そんなの貴女の泣き顔が可愛いに決まっているからじゃないですか』
「ふぇ……？ 可愛い？」
突然の告白に目を丸くする蓮花。
これまで想一の虚像の口を借りて話されているのは、全て蓮花の妄想。
つまり彼女の深層心理が望んでいる事だ。
よって虚像の言動も、彼女が心の底で求めていることと合致する。
「想一さん、今、わたくしのことを可愛いって」
『ええ、そんな貴女を、ずっとこうしたくてたまらなかった！！』
ずぢゅぢゅみちみちみぢいいい！
「ふきゃあああああああっ！？」
太くて硬くて大きいモノが、アナルへ容赦なく入って来た。
「あ゛っ、お゛っお゛お゛？！ おしりぃ、おしりに、おちんちんがぁ……」
実際に入っているのは、陰茎の形をしたディルドだが。
『流石にキツキツですね。でもこれくらい締まりのある方が、ほじり甲斐があるというものです』
言うや否や。ピストンが始まった。
ゆっくりと、ねぶるように棒が奥へ押し進められ、そしてまた時間をかけて引き抜かれる。
挿入、抜去。 挿入、抜去。 挿入、抜去……。
二つの動作がじっくり交互に行われ、眩暈に似た感覚が蓮花を襲う。
「はっ、あっ、ふうぅぅぅぁぁぁぁぁ……！」
先のスパンキングとは異なる快楽に耐える為、女はベッドシーツをきつく握りしめる。
重力に引かれた乳房が律動の度にゆさゆさ揺れ、突き出した尻が再び紅に色づいていく。
四本に増えた尻尾は電流を流されたかのように小刻みに痙攣し、彼女の頭頂部から生える三角耳はペタンと倒れている。
『そろそろ、速く動かしますよ』
アナルを貫く棒の抽挿が速くなっていく。結合部からはみぢみぢと猥雑な水音が響き、増大した快感が女体に淫撃を見舞った。
「ぉおっ！？ はうっ、あひぃっ、ぉっぉっ、えあぁ、ふひゅぃ！」
奇妙な喘ぎを零す蓮花の顔は、既に涙でグチャグチャだ。瞳からは雫を流しっぱなしで、だらしなく垂らした舌からは壊れたように涎が分泌され続けている。
当然ながら、とうに何かを考えるだけの余裕は失われている。神通力で操った極太ディルドを菊穴へ突っ込むのに精一杯な様子だ。
『アナルはキツキツ、まんこはぐちゃぐちゃ、クリトリスはぷっくり膨れ上がって……。私に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた人と同一人物とは思えませんね』
「きもぢいいぃぃ！ おしりのあなほじほじされるのぎもぢいぃれじゅああああ！」
『そうですか。ならっ、このあざとい耳も！ 尻尾も！ 胸も尻もマンコだって、全部私のものだっ！！』
「はいっ！ はいっ、なりまずうぅ！ 全部貴方様のモノになりまずううう！」
髪を振り乱し、オスに媚びるような声を出し、いやらしく快楽を貪る狐娘。
彼女の視界に再び白い火花がちらつき始め、全身の血流が段階飛ばしで加速していく。
本日二回目のオーガズムはすぐそこまで来ていた。
『欲しいですか？ 私のザーメンが！』
「はいっ！ 想一さんのザーメンほしいれしゅぅぅ！」
『なら孕めええええっ！ チンポザーメンぶちこまれてケツ穴妊娠しろおおっ！！』
「はいいいいいっ！ 孕みましゅうううっ、おちんぽみるくでぇ、アナル受精しましゅうううううっ！！」
高らかに絶頂を宣言し、幻視した想一の射精によって蓮花はイった。
「んおおおおおおおおおおっ！！！」
ケダモノ染みた絶叫と共に蓮花は弓なりに背を反らす。
アナルからは下品極まりない淫音が鳴り響いた。
ヴァギナからは盛大に飛沫が飛び出し、透明なアーチが宙に大きな弧を描く。
愛液のシャワーはベッドシーツに降り注ぎ、いやらしい匂いのシミを作った。
「あ……ああ、あふぅ……」
呆然自失といった体で、意識と視線を虚空に彷徨わせる狐娘。全身を包む高揚と熱は、それからしばらく続いた。
今までしてきたオナニーで、間違いなく最高の快感だった。
多幸福感と愉悦感に包まれ、どさりと倒れ伏す。
ベッドの上で余韻に浸る蓮花は、得も言われぬ心地よさに身を漂わせた。
20/03/09 08:50更新 / 風車小屋
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