オウルメイジさんとおはよう暴走セックス
腰から下がとろけそうだ。覚めてまず最初に感じたことがそれだった。
「ん、お」
ぱちりとまぶたを開き、半分寝ぼけた頭でどうにか状況を把握する。
部屋は薄暗い。カーテンの隙間から差し込む日の光の強度から、まだ早朝の5時くらいだろう。室内気温が冬にも関わらず暖かいのは、今も動いているエアコンのお陰か。
敷布団の上に寝る僕の身体は、何故か裸。おかしい。就寝前は確かに寝巻に着替えたはずなのに。
そして何より。
裸の女が僕の下腹部に跨っていた。
正確にはフクロウの身体的特徴を持つ女性が、僕のペニスを女性器で咥え込んでいた。ゆっくりしたペースで腰を上下に揺する彼女の目尻は快楽に緩んでおり、小さな唇からこぼれる吐息も艶がある。身体が動く度に豊かな乳房も上下に揺れ、ぷるんぷるんと擬音が聞こえてきそう。
何回か射精を終えた後なのだろう。男と女の結合部からは、泡立った精液がぐぢゅぐぢゅと淫猥な音を立て漏れ出てくる。肉棒全体はトロトロした膣肉に抱擁され、ぬるま湯にも似た快感が僕を包む。
すごくいい。脳みそがのぼせる程気持ちいい。
「あ、起きた。おはよ」
僕の起床に気付いた女性が腰の動きは止めぬまま微笑みを浮かべる。透明感のある落ち着いた声色だ。
ここに来てようやく、ぼやけた頭が明瞭な輪郭を結んだ。
「おはよう。理莉(りり)」
恋人の名を呼ぶと、彼女は笑みを深め唇を近づけてきた。とても柔らかい唇だ。
軽く唇を重ねただけで、陶酔した気分が胸を満たす。ともすればキスだけでまどろんでしまいそうだ。
……しかし僕はなんで寝起きを襲われているんだろう?
「んむ」
疑問をよそに、彼女が舌を僕の口内に入れて来た。こちらも舌を絡ませ、おはようのディープキスを愉しむ。それだけで余計な思考は溶けてなくなる。
キスをしてる最中もまぶたは閉じぬまま、至近距離でお互いの瞳を見つめ合う。
黄金色の美しい瞳は、煮詰めた甘露のようにトロンとしている。交わいながらの接吻は彼女が特に好む愛情表現の一つだ。
肌に密着するもふもふした毛皮は温かくて柔らかく、ほのかにいい匂いがする。
ハーブと紅茶を混ぜたような、心が不思議と落ち着く香り。理莉がよくつけている香水の匂いだ。
「はむっ、んん、ずちゅうううう」
エサを欲しがるひな鳥のように理莉が僕の舌へ必死に吸い付いてくる。
(ああ、可愛いなぁ)
愛おしい人。姿形は人間と異なれど、そんなことが些事に思えるくらい最愛の女性。
僕も自分から舌を絡め合わせつつ、腰を下からゆっくり突き上げる。両手を彼女のおしりに回すのも忘れない。
勃起した剛直はドロドロになった密壺をえぐり、心地よい快楽を生む。スベスベの尻肉は高級調度品の如く触り心地が抜群で、いつまでも撫でていたいくらい。
「ふむうっ、ぢゅるうっ、ぢゅばっ」
ほっこりする体熱とふわふわの羽毛にくるまれることで、安心感がじんわりこみ上げてくる。天然湯たんぽとは彼女のことを指すのだろう。
「みゅちゅっ、はむっ、はむっ、ちゅうううううう」
しかし今日はやけにキスの時間が長い。そろそろ呼吸が苦しくなってきた。
「っぢゅむっ、びぢゅううっ、ぢゅぞぞぞっ、にゅぢうるるるる」
意識が薄れてきた。まずい、一旦停止を理莉に伝えなくては。
「ぢゅうううううううう! ずぢゅるるるっ、ぢゅううううううっ!」
「んーっ! んんーっ!」
本格的に呼吸がヤバくなってきたので、彼女のお尻をぱしぱし叩く。
しかし理莉は新しいプレイと勘違いしたのか、嬉しそうに目を細めると腰を上下に勢いよく揺らし始めた。そのせいで結合部から飛沫が飛び散り、暴力的な快楽が脳を焼く。
気持ちイイ。冗句ではなく死ぬほど気持ちイイ。
でも違う、そうじゃない。
「ちゅぱぅっ! ばはあああっ! ストップ! ストップ! ストーップ!」
なんとか唇を放すことに成功。
すかさず追撃の口づけをしようとしてきた理莉に、一時停止を求める。
窒息しかけていた気道が解放され酸素が供給される。役目を忘れていた肺が、正常に機能し始める。心臓がポンプの役割を果たし、停滞していた血流の脈動を再開する。
危うい所だった。呼吸困難と常軌を逸した快楽のせいでホントに逝きかけた。
澄み切った河と緑溢れる草原の向こうには、頭に輪っかを乗せた女性天使がいた。幻影……いや、走馬灯にしてはリアルすぎる光景だった。
呼吸ができるってとても素晴らしい。
「……。イヤ、だった?」
「だあああああっ、そういう訳じゃないから!」
生の実感を噛み締めていると悲しそうな声が降って来た。
じわっと一瞬で涙目になった彼女。僕は慌ててフォローの言葉を伝える。
「単純に、息継ぎができなくなっていただけなんだ。理莉とのキスが嫌になったとか、そういうのじゃないからさ」
「そうだったの……。ごめん、私、暴走しちゃって」
しょぼんとうつむく理莉。僕はくすりと笑うとその背中に腕を回し、もう片方の手で頭を撫でてあげる。もふもふの羽毛とサラサラの髪の感触が心地いい。
「え? 怒って、ないの?」
「別に怒ってないよ。ただ驚いただけ。理莉がこんなに強く求めてくるのは久しぶりだったからさ」
オウルメイジの彼女と同棲してから数年以上経つが、理莉は本来ゆっくりした性交を楽しむ子だ。
激しいセックスもすることにはするが、ここまで熱烈に求めてくるのはレアケースだ。
「でも珍しいね。寝ているところに仕掛けてくるのもそうだけど、感情の制御がきかなくなる程理莉が押してくるなんて」
コーヒー色の髪を梳いてあげながら、僕は彼女の首筋を甘噛みする。愛撫の度に膣内がきゅうっと締まり、理莉の口から切なげな吐息が漏れる。
「ひゃっ。うん、実は、ね。昨日あなた凄く疲れていたじゃない」
「うん」
「それで、ね。昨夜もお風呂に入った後、すぐ寝ちゃったじゃない?」
「うん」
そうだった。昨日は職場がてんてこ舞いの大騒動になってかなり忙しかったんだ。
それで疲れた身体を引きずってなんとか家に帰って来たんだっけ。
「ごはんにも手をつけられないほど疲れていたから、私心配で」
「ごめんよ、心配かけて」
そして食事を用意してくれていた理莉は、僕が帰ってくるまでリビングでポツンと待っていてくれた。だが僕は申し訳ない気持ちを抱えつつもシャワーを浴びた後、即座に布団で寝てしまったのだ。
「それで思ったの。エッチで魔力供給をしたら、元気になってくれるかなって」
「うん」
「それであなたが寝たのを見計らって夜這いをかけたの。気持ち良くさせてあげたら、あなたの顔色が凄く良くなっていって」
あれ? なんかおかしいぞ? と思った人は間違いではない。普通セックスとは気力をかなり消耗する行為だ。その逆はない。
しかし相手が魔物娘に限っては話が別である。
彼女達、つまり魔物娘はセックスをすることで、自らの生命エネルギーを相手に分け与えることができる種族なのだ。
「ちなみに、夜這いをかけた時間って覚えてる?」
「確か深夜1時くらいだったと思う」
「………ワオ」
仮に今の時間が5時だとしたら、僕は寝た状態で4時間も彼女と繋がりっぱなしだったと言う訳だ。どうりで彼女の中から大量の精液が逆流してきている訳だ。
そしてこれだけされても中々起きなかった自分の熟睡ぶりに驚く。
「迷惑、だった……?」
「いやいやいや!」
僕の沈黙をどう受け取ったのか、理莉がシュンとしてしまう。
いや、迷惑ではない。断じて。
「むしろ恋人から逆夜這いをかけられるのは、男冥利につきるというものだよ。それに理莉も理莉なりに僕の事を気遣ってくれたんだろう?」
「う、うん! そうなの! 私、体内にいっぱい魔力持ってる。だからいっぱいくっついてエッチしたら、身体の中にある魔力をあなたに移せる。魔力は生命力の源だから、あなたも元気になる!」
金色の瞳を爛々と輝かせ、彼女が腰を大きくグラインドする。再び始まった律動に、僕は思わずのけ反る。
「くおっ、理莉っ、その動きすごい!」
「またお腹の中でプクッと大きくなった。いいよ、出して。精液、一杯ちょうだい」
段階飛ばしで速くなっていく腰の動き。膣壁がきゅううっと締まり、肉棒を絞り上げていく。
下腹部の奥から熱がこみ上げ、視界が白く明滅を始める。
「らひてぇえ、ちょうらいっ、妊娠汁ちょうらいっ!」
平気じゃないのは理莉も一緒らしい。目じりは完全に垂れ下がり、口の端からは涎がタラタラと落ちてきている。柔らかい羽毛を纏った身体はかたかた震え、胸の先端はピンとそそり立っている。限界はすぐそこまで来ていた。
「くううあああっ! 出るうううっ!」
欲望が勢いよく爆ぜた。尿道から噴出された白濁は膣内を駆け巡り、彼女の子宮に到達した。
「ひやあああああああああッ!?」
弓なりに身体を反らせた理莉は、電流でも流されたかのように全身を痙攣させた。
ぷるぷると形の良い胸が震え、マンコが痛いくらいにチンポを締め付ける。
射精の勢いは留まる所を知らず、剛直は無遠慮に彼女の大事な所を白濁で染め続けた。
ドバドバと吐き出される種汁は、何度も、何度も子宮を駆け巡り、入りきらなかった精子は膣からゴボッと逆噴出してきた。
「お、お、あ、あ、あぁ、あー」
くたりと僕の胸板に彼女がへたりこんできた。彼女のおっぱいがむにゅりとつぶれ、好ましい感触が直に伝わる。
「きもひ、よかったぁ……」
半開きになった理莉の瞳は情欲と涙で濡れており、ひどくエロティックだ。いつも落ち着いた雰囲気の彼女だが、今は見る影もなく呼吸が乱れており唇の端からは桃色の舌が覗いている。
「……ッ」
恋人のだらしなく蕩けた表情が、僕の中のオスに再び火をつけた。射精直後なのに陰茎が活力を取り戻す。
彼女が無防備なのをいいことに、僕は仕掛けることにした。お尻にまわしていた両手に力を込め、腹部のインナーマッスルに気力を注入。そして。
「ふっ!」
「ひにゃああああっ!?」
一気に腰を突き上げた。突然のピストンに理莉が白目を剥き、スパンという小気味のいい抽挿音が部屋に響く。
「え、う!? おああああ?!」
目を白黒させながら理莉が狼狽するがお構いなしに腰を振りまくり、ついでに唇も強引に奪う。舌と舌が触れ合った瞬間、膣内の締まりも良くなった。
度を越えた快楽に普通はおかしくなりそうなものだが、そこは流石魔物娘。
僕からの反撃に喜んだのか、間を置かず理莉の方も舌を絡めてきた。
「んんむうっ! ふむちゅっ、はむっ、れろおっ」
肉棒と舌先で恋人を可愛がりつつ、彼女の全身を思う存分堪能する。
宝石すら霞む輝きの瞳、蜂蜜みたいにとろける唾液、胸板に押し付けられる柔らかい乳房、いつまでも触っていたいすべすべしたお尻、一流歌手にも伍する綺麗で艶のある声、そして聖母の如く全身を包んでくれる温かい羽毛。
たまらない。すばらしい。極楽だ。
彼女は僕に勿体ないくらい最高の女性だ。脳味噌が茹っているせいで思考力は大幅に落ちているが、最高なのは間違いない。
それにしてもいくら腰を動かしても全く疲れない。いや、そもそも疲れ自体を感じない。
どうやら理莉の魔力はちゃんと僕の体内に供給されているみたいだ。
なんならこのまま夜までセックスが続けられそうなくらいである。
「〜〜〜〜〜〜!」
ペニスを突き上げるたびに彼女が震え、くぐっもった嬌声が寝室に響く。
膣内の収縮も激しくなり、肉棒全体が快感の大波に巻き込まれる。
下腹部が溢れてきた大量の精子と愛液によってグチャグチャとなり、ピストンを繰り返すたび淫らで下品な水音が鼓膜に届く。
「ふっ! ふむあっむうっ!」
「ちゅるっ、ぢゅるるっう!」
強く抱きしめ合う僕らは舌先でお互いの唾液を交換し合う。その様子はキスというより、唇でのセックスと評した方がいいかもしれない。
こちらの律動に合わせて理莉も腰を振ってくれている。さして時間も経たない内に次の射精感がこみ上げてきた。
お尻に回していた両手に更に力を込め、後先考えず腰をがむしゃらに動かす。
突きこまれた陰茎は何度も子宮口をノックし、その度に甘い雷が脊髄を焦がしていく。
生殖本能が命じるままに欲望を重ね続け、やがて僕は彼女の中で果てた。
「「――――――!!」」
射精。夥しい量の精子が膣に放たれたことが確認せずとも分かった。
声なき叫びを上げた僕たちはきつく抱き合い、絶頂を噛み締める。
肉棒は洗水ホースにも負けぬ勢いでザーメンを噴出し、あっという間に恋人の中を白濁まみれにした。
放出された妊娠用原液の量は半端ではなく、またもや中に入りきらなかった分がアソコから飛び出てきた。それでも僕は膣内射精を止めない。止められない。もっと、もっと彼女が欲しい。もっと彼女を精液漬けにしたい。
「ッ!」
剥き出しになった本能が、生殖行為を続けろと命じる。
迷うことなく下半身の運動を再開。射精しながらの往復運動。絶頂中なこともお構いなし。
「あ、あ、あああ! だめ、だめ、だめ! いま、いっでりゅのにぃ!」
大変なのは理莉の方だ。嗚咽を漏らしながら、必死に首を振っていやいやする。
美しい顔は今や涎や涙でぐしゃぐしゃになっていて、とても他人様にお見せできるものではない。俗に言うイキ顔という状態だ。
しかし僕からしてみれば彼女の崩れた顔さえ愛おしい。なんならこのままイキ狂って欲しいくらいだ。変態じみた感情が心から這い出てくるのを自覚しつつ、ひたすらピストンを穴の中に打ち込んでいく。
「ろうひてぇ!? どうひて、とまってくれないのぉ。お願いぃぃ」
切なげに懇願する理莉。だが彼女は、自身が無意識の内に膣内の締め付けを強くしていることには気付いてない。恋人の肉体は本日も欲望に正直なようだ。
僕は返答の代わりに、肉棒の出し入れ速度を倍にした。おしりを掴んでいた両手もきつく握り締めてホールド、彼女の首筋にもかぷりと吸い付く。
「きゃあああああああっ!!?」
可愛らしい悲鳴を上げて理莉はここではないどこかに意識を飛ばした。
瞳から理性の光が消失し、頭から生えている耳毛がピクンと逆立つ。
彼女が激しく絶頂した証拠だった。ガタガタ震える恋人をしっかり抱きしめ、グイッと腰を大きく突き上げる。それによってチンポが子宮口の奥に到達。同時にまたもや半固形状態のザーメンが無遠慮にぶちまけられる。
「―――――――――!!」
表現しようのない未知の快楽が全身を大きく揺さぶり、常識外れの快感で呼吸ができなくなる。
身体の内側から熱と慕情と肉欲が奔流を起こし、思考力そのものが溶け落ちる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
甘いうめき声が耳朶に響く。エクスタシー状態の理莉が、膣内射精を受けてさらにエクスタシー状態になったらしい。二重エクスタシーだ。大変だ。でも気持ち良さそうだ。
理莉が気持ち良くなってくれたなら、僕も気持ちいいし嬉しい。
「……!、……!」
色情の灼熱に炙られたせいか、身体全体がひどく昂揚している。何かを考えることはできず、何かを考える必要もない。
その証明として、忘我状態になっていても腰部は自律機械の如く自動的に動き続けている。自分の意思とは関係なしに動く肉体。
オスとしてメスを孕ませるために交尾をしている。至極単純な、生物としての営み。
「……う、あ……あ、ぁぁ……」
一方理莉の方と言えば、僕の胸板に突っ伏したままだ。目尻には大粒の涙を、開いた口の端からは泡をこぼし、与えられ続ける快楽にただただ震えている。
「ぉ、……おぁ、……ひぅっ、あ……」
意味を成さない言葉が彼女の喉から漏れ出す度に、劣情が否応なく掻き立てられる。
とりあえず僕は腰を揺すり、精巣や尿道に残っているザーメンをあらかた排出することにした。
射精は依然として止まる様子はなく、粘ついた精子がドクドクと彼女のお腹に注がれていく。
むせ返る性臭と淫臭が部屋を漂い、撒き散らされた大量の精液が行為の激しさを物語る。
常人を遥かに超えるサイズの肉棒と射精量。我がことながら絶倫とか艶福家とかいう単語では、到底説明できないセックスモンスターだ。
そう。文字通りの意味で僕は【人間】じゃない。
理莉のような魔物娘と交わい続けた男は、魔力の侵食により体内器官が大きく変化する。
見た目こそ人間男性と変わらないが、基礎体力を始めとする様々な点が全く違う。
病気にならない、老いない、体内に魔力を保有する他、性に関係する能力が桁違いに跳ね上がる。
こうなった男達の総称が、インキュバスという種族だ。
「ッ、ふぅ」
射精が一段落ついた所で、乱れていた呼吸をなんとか整える。
適度な息継ぎをしておかないと窒息が原因で腹上死してしまう。いくら人を捨てた身とはいえ、死と無縁になった訳ではない。
……ちなみに世のインキュバス達に対して行われている政府調査アンケートによれば、日常で死にかけたケース第2位が腹上死らしい。パートナーとの行き過ぎたプレイが元で昇天しそうになるのは、誰もが一緒のようだ。ちなみに1位は嫁と娘が可愛すぎて悶え死にそうになったとか。
世の人々が幸せそうで何よりである。
(でも人間だった頃と比べると、確かに性欲がケタ違いになったよなぁ)
ピクピクと痙攣を繰り返す理莉を撫でながら、以前の自分に想いを馳せる。
あの頃は3回射精しただけでぐったりとしてしまう事も多かったが、今は一日中繋がっていても体力が尽きない。インキュバスになったことで、恋人と長くイチャイチャできるのはメリットがとてつもなく大きい。
「ん?」
ピピっという電子音。目をやると枕元に置いてあった携帯が振動している。手に取ってみると、画面は6時半を示していた。普段起床する時間になったのでアラームが作動したらしい。
指でタップしてアラームを解除。そのまま脇に携帯を置いておく。
今日も明日も休日で本当に良かった。
時間はたっぷりあるので、まだまだ彼女と重なることができる。
「……ひあ、あ、おあっ、はっ……」
腕の中で小刻みに震える想い人を見下ろすと、またもや情欲が再燃する。
体位を変えることにした僕は、両腕を理莉の背と腰に回す。結合が解けないよう、チンポを子宮の最奥まで押し進めるのも忘れない。
「それっ」
「ひゃっ!」
そのままくるりと身体を反転。今度は彼女を布団に寝かせ、その上から僕が覆いかぶさる形になった。セックスの中でも一番メジャーな体位、正常位だ。
勢いよく腰を振りまくりたい衝動を抑え、今度はゆったりしたペースで抽挿を再開。
スローテンポで愚息を出し入れすると、また違った感覚が肉体にもたらされる。
荒波に揉まれるような先の快感とは違い、今度は焚火で暖を取るようなぬくもりと安らぎを感じる。
「あっ、うぁ、ひううぅ」
顔を朱に染めた理莉がもぞもぞと両羽をくねらせる。法悦のために言葉が意味を成さなくても、何をして欲しいのかすぐ分かった。
くびれに置いていた両手を移動させ、さわさわした彼女の羽に指を這わせる。
(あった)
目当てのものを探り当てた僕は、それに両手を重ね合わせ指を絡める。
それ、とはすなわち彼女の手だ。オウルメイジは普段両腕を羽毛の中に収納しているため、一見すると手がないように見えるのだ。
「えへ、へ……」
恋人つなぎになった途端、あどけない少女のように理莉がはにかみ、垂れ下がった瞳がじっと僕の方に向けられる。
吸い込まれるような眼だ。魅惑的で神秘的な雰囲気を放つその瞳は、何度見ても僕を惑わせる。
いつまでも見つめていたいと思った瞬間、頭が麻痺してくるような感覚を覚えた。
(あっ、しまっ)
……理莉はオウルメイジの例に漏れず、理知的で穏やかな娘だ。魔法を無闇やたらと使わないし、料理に魔界産の野菜や果物を投入するようなこともしない。
彼女自身が普段からそういったことに気を付けているので、日常生活ではその類のトラブルに巻き込まれたことはない。日常ではの話だが。
「ふおおおおおおおおおおっ!」
「ぁきゃあああああっ!?」
猛然と腰を振りだした僕に、理莉が身体をビクリと仰け反らせた。
自身の太刀を理莉の鞘へ乱暴に出し入れし、これでもかという程に抽挿と快楽を秘部にねじ込む。ばぢゅんばぢゅんと、下品を通り越してはしたないとすら思える水音が、繋がった箇所から響き渡り神経そのものが桃色に染まっていく。
「理莉! りり! リリ!」
「あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“!!」
獣のように吠え猛る僕の頭から余計な理性や自制心が次々と消えていく。もう目の前のメスを孕ませることしか考えられない。
何故僕が暴走状態になったのか。それは彼女の魔眼にあてられたからだ。
ここで言う魔眼とは、オウルメイジが持つ固有の魔法能力のこと。
対象に目を合わせることで発動し、思考能力低下、平衡感覚喪失、催淫状態誘発など精神に干渉する魔法である。
「好きだッ好きだッ好きだあああああ!」
「ひぎあああああああっ!?」
いつもは彼女が意識的に魔眼を使わないようにしているみたいだが、今回のように気が緩み切っている時は【暴発】してしまうらしい。
そうなったら最後。理性が木っ端微塵になった僕が止まるまで、連続絶頂セックスは終わらない。
「出る! また出すから! 孕んで! 孕んで理莉!」
早くも睾丸に精液が再装填され、肉棒がビキビキと肥大化していく。
うねうねと動く膣肉は搾精のため、竿全体を痛いくらいに締め付けてくる勢いだ。。
我慢する必要はない。いくらでも出してもいいし、いくらでも出せるのだから。
「お“、お”お“っ!? も、だめっ! お”がじぐなっぢゃう!」
濁った声を喉から絞り出す理莉は、気が触れた動物みたいに全身を弾ませている。それによって乳房が毬にように跳ね回り、羽毛がぶわわっと逆立った。
全身が性感帯になっているのだろう。肌が接触しただけでも、理莉の唇からあられもない嬌声と涎が飛び出る。
「ッ! フウッ!! フウッ!! フウッ!!」
その愛おしい顔から眼をそらすことができない。もしこれ以上の快楽に狂ったら、彼女はどんな顔を僕に見せてくれるのだろう。
見たい。見せて欲しい。君が僕のチンポでおかしくなるところを。
「あ“っうううううう!」
「――――――――?!!!!」
腹の底から湧き上がってきた熱を知覚した時には、もう射精が始まっていた。
マグマの爆発に呑まれた理莉は、今日一番のアクメをキメて目を剥いた。
脳髄どころか心臓までもを焼きつくす勢いの殺人的な快楽。
あ、これ、まずいかも。
「ぅ?」
バツンと脳の裏で何かが爆ぜる音。
視界が砕け散り、今度は誇張抜きで目の前が真っ白になった。上も下も、右も左も分からない。世界が揺れ、移ろい、何もかも白一色で見えなくなる。
僕という男の自我が曖昧になり、融解していくような感覚。ただ分かるのは、両手と性器で絆を確かめ合う想い人の存在だけ。ただひたすらに気持ちいいという快楽だけ。
明らかに、桁外れの快楽によってもたらされた副作用だった。
「――――――――――!」
声が遠い。意識が薄れてゆく。全身が一片もなく消し飛ぶような、凄まじい淫撃。
「―――! ―――! 〜〜〜〜!、―――△〇※@□*$♪♪!?」
かろうじて、理莉が叫んでいることが分かる。ただ、何を言っているのかは認識できない。
今は鼓膜すらも絶頂の暴風に阻まれ、器官としての役目を成さない。
「ッあ!!!」
時間にしてどのくらいだったのだろう。世界が色を取り戻したと感じた時には、荒い息が肺から出てきた。僕は仰け反りながら射精を行ったようで、視界一杯には部屋の天井が映っていた。
「あ、おああ……」
全身が軋みをあげるくらいに痛い。痛い? いや、これは気持ちいいという感覚だ。未だ冷めない熱と高揚がその証左。
身体中の穴という穴からは汗が吹き出し、喉がからからに乾いている。こころなしか扁桃腺がヒリヒリする。叫び過ぎたようだ。
「!」
そうだ理莉は大丈夫だろうか。インキュバスの僕でこれなのだ。快楽の上限値がない魔物娘がこんな目に遭ったら大変に違いない。
慌てて視線を下ろし、そしてぎょっとした。
「あ……う……あ、へ……」
まず目を引くのが膨らんだお腹だ。臨月妊婦かと勘違いするほど、理莉の腹部が膨らんでいる。精子だ。僕が放った夥しい量の精液が、彼女をこうしたのだ。
「……ひゃ、おっ……ぇへ、お“、お”」
まんまるしたお腹に今もなみなみと精液が注がれていく様子は、自分で言うのもなんだが現実感がなかった。
いや、呆けている場合ではない。イキ顔を越えた逝き顔を晒している恋人は、見た限り危うい様子で失神と引きつけを起こしている。
やりすぎた。
背すじが冷え、脳が一瞬で冷静さを取り戻す。
「理莉、理莉、大丈夫?」
彼女の頬に手を添えて名を呼ぶと、光のなかった目が色を取り戻した。
よかった。酸欠にはなってなかったみたいだ。
「ん、ん、……らい、じょうぶ……すごく、きもひよかった……」
いつもの大人しい居住まいからは、想像できない程陶酔しきった笑み。僕はこの表情を知っている。理莉が心の底から至福を感じている時のみに見せてくれる貌だ。
「あむっ」
かと思うと、彼女がおもむろに僕の指へ吸い付いてきた。思わぬ不意打ちに生唾を飲み込んでしまう。
「っ、りり」
ちゅうちゅうと赤子が乳を飲むように、理莉は僕の指を舌で舐め、しゃぶり、吸い上げてくる。連動して膣内の締め付けもまた再開された。最早別の生物と思えるくらいに、膣壁が複雑かつ精妙な動きで亀頭を攻め立てる。
これほど出されたのにまだ足りないというのか。
子種への異様な執着。オスの象徴をねだるのは魔物娘の本能だと、それは理解していたつもりだが、こうしてみると本当に彼女達は人外の存在なんだなと驚いてしまう。
「ちゅっ、ぷちゅるっ、ねぇ」
「なんだい?」
「もっと、してぇ」
甘えるような、媚びるような声音で理莉が僕を上目遣いに見てくる。舌で指先を舐めるのはそのままに、投げ出されていた彼女の手が膨らんだお腹の上に移動する。
「お腹の中、たぷたぷしてて、とってもシアワセなの。だから……ね? あなたの精液、もっと入れてぇ」
おへその上を羽毛に包まれた手が撫でる。円を描くように、ゆっくりと艶めかしく。
風船のように張りつめたボテ腹を愛おしそうにさする姿は、くしゃくしゃになったトロ顔と相まって背徳的な色香を振りまいている。
オスの劣情を刺激し、交配を誘う仕草だ。
「だ、だめだよ。これ以上したら理莉が壊れちゃうかもしれない」
だが普段の冷静さを取り戻した僕は、そのお願いを拒否する。今更何をと思うかもしれないが、流石に彼女をこんな風にしたら自制心が働く。
「なんで? して、お願いだからしてよぉ……」
玩具を取り上げられた子供のように、恋人がくしゃりと顔を歪める。罪悪感を感じつつも、僕は前後運動の再開をしない。
セックスのやりすぎで魔物娘がおかしくなったという話は聞いたことはないが、それでもこの状態の理莉を見たら行為の再開を躊躇ってしまう。
「心配して、くれてるの?」
「当然だよ。君に何かあったら僕はこの先、生きていける自信がない」
「優しい、ね。あなたのそんな所、好き。だぁいすき」
「!」
彼女はずっと前からそうだ。無条件で僕を愛してくれる。ただひたすらに、無償の好意を僕に向けてくれる。
ごく平凡な見た目に平均的な能力。他者と比べて突出したものがなく劣等感に苛まれていた僕を、彼女はいつも暖かく包んでくれる。
「僕も理莉のことが大好きだよ。でも、今日はやっぱりこれくらいにしておかない?」
だからこそ僕も彼女のことを大切に想う。初めて夜を共にしたのあの日。愛の言葉と共に優しさをくれた可愛い女性へ、大きな負荷をかける訳にはいかない。
理莉とまだまだ繋がっていたいという欲望は確かにあるけど、これ以上の交わりは彼女の身体に無視できない負担がかかるはずだ。
「〜〜なんて事を考えているのも、お見通しなんだから」
「こ、心を読まれた!?」
直前の思考をそのままオウム返しにされて、僕はあんぐりと口を開く。
「あれ? 理莉って種族はオウルメイジだよね? 本当の種族は日本に大昔から居るという妖怪サトリじゃ……」
「違うよ。あなたの顔に、思っていることが書いてあっただけ」
ぷうっと頬を膨らませる仕草も可愛い。あやうく悶死しかけた。
「どっちにしろ、こんなぱんぱんにお腹が膨らんだ状態じゃ君の身体が」
「ふふ。じゃあ、私のことを犯したくてたまらない風にしてあげる♪」
「え?」
言うや否や。彼女の双眸が、どこか煽情的な光と色を放ち始める。
まずい、魔眼だ。
「ああ、だめだ。だめだよ理莉……そんなこと、いけない……」
彼女の瞳に見つめられた端から、せっかく取り戻した理性がいとも容易く喪失していく。
「逃げちゃ……いや……」
身を引こうとした僕に、下から理莉がひしっと抱き着いた。両羽根は背中に、ふさふさの脚は腰に固定され身動きが取れなくなる。
それで詰みだった。まぶたを下ろすよりも速く、彼女の光が僕を虜にする。
数秒と待たぬうちに精神が混濁し、脳味噌が単純な命令以外を受け付けなくなる。
「う、お、お」
それでもギリギリで耐えた。必死に耐えた。ここで流されたら、僕は間違いなくケダモノになると分かっていたから。だが。
「我慢強いね。惚れ惚れしちゃう」
「り、りぃ」
僕の耳元へ彼女が囁きかけてくる。耳に心地よい澄み通った優しい声。しかしその声の内には隠し切れない色情がある。
「けど遠慮する必要はないの。あなたが満足するまで、あなたの好きなだけ中にだしていいの。びゅううぅって、何も考えずに出したらきっと気持ちいいと思うよ?」
彼女の肉声が妖艶な熱を帯びてきた。至近距離での囁きは、僕の精神を着実に蝕み堕落へと引きずっていく。甘味を直接耳へ流し込まれたかのように、ぞわりとうなじの毛が逆立つ。
逃げることも抵抗することも、今の僕には叶わない。魔物からの誘惑は更に続く。
「ね、赤ちゃんつくろ? あなたとの子供、たくさん欲しいの」
「つうっ!」
それが理性へのトドメとなった。
魔法抵抗判定及び、正気度判定失敗。SAN値ゼロ。
狂おしいまでの獣欲が、肉体にエンジンをかけた。
「もう手加減しないからなあああああっ!」
「きゃひいいいっ!? う、嬉しいっ、こんなに、求めてくれるなんて、お“っ、お”っ!?」
結果はセックス続行。
抗うなんて無理だろう。こんなことを言われた日には、僕でなくても野獣になる。
「う“う”っ! うがっ、あ“っ! お”お“お”お“お”!!」
いきり立って腰を振り回し、ケダモノ同然に吠え猛りながら女体を貪った。
(僕のものだ! 全部! ぜんぶ僕だけのものだ!!)
えぐりこまれたチンポにむしゃぶりつく膣壁も、口に含めば興奮の材料となる乳首も、安らぎと幸福を与えてくれる羽毛も、乱暴に独占する。
律動の度に理莉の膨らんだお腹がゆさゆさと揺れ、シェイクされた精液の振動音も聞こえてくる。
胎内からは決壊したダムの如き勢いで愛液と白濁が噴出しており、布団の上はこぼれた汁で水たまりが出てきている惨状だ。
(もっとだ! もっと欲しい! この女性の何もかもが!!)
ぐずぐずと深みに嵌まっていく淫獄の最中、暴力的な本能が鎌首をもたげる。
この雌を滅茶苦茶にしたい。精液中毒にして、一生自分から離れることができないカラダにしてやりたい。
孕ませて、孕ませて、頭がおかしくなるまで孕ませて、頭がパーになった後も孕ませて、子供を五十人くらい産ませてやりたい。
妊娠中でも容赦なく種付けして、朝も昼も夜もずっとマンコにチンポを突っ込んだままにしたい。
彼女が泣いて懇願しても、ずっとオス汁をメス穴の中に注ぎ続ける日々を送りたい、いや送らせてやる。
「ぎもぢいいいいっ! ぎもぢいいいのおおお! もっどおおお! もっどじでえええ!」
下敷きにされた理莉は全身に余すところなく性愛をぶつけられ、涙や涎、愛液を撒き散らしている。精神異常とすら映るほどの肉欲と愛を欲しがる、魔物娘としての本能がそこにあった。
「おぐっ!! おぐがいいいのおお! おぐを、おぐをゴリゴリじでえええええ!!」
イカれ果てるんじゃないかと思う程くらい、喜悦の表情で理莉はアヘり続ける。
しかし普段の理知的な仮面を脱ぎ去った下に、こんな素敵な本性があったなんて。
これはヤり甲斐があるというものだ。
「孕め! 孕め! 孕め! 孕めよおっ!」
一切の人間性を奪われた副作用によるものか、肉棒と睾丸がありえないくらいに膨らみ次なる劣情の塊が充填されていく。そろそろだ。またアレがくる。
「あがっ! うおっあああああああ!」
「ひああああっ!? 熱い、せーし熱いいいっ!?」
望み通りに奥にぶち込んで吐き出した。僕の恥骨と彼女の恥骨をこれ以上ない程密着させ、種付けプレスを敢行。
全自動孕ませ機となった僕は、子供ができる魔法の液体を秘部にドバドバ吐き出す。
幸せだった。一生分の幸運を使い切っても後悔がない程に素晴らしい体験だった。
「「―――――」」
もう、叫びも、嬌声も、呻きも、言葉すら出ない。
限界を超越した交わりのせいで言語を司る器官がショートし、目に映る全てのものがキラキラ光っていた。
彼女と自分の境界線すら曖昧になり、溶けて一つになるような、次元違いの恍惚が全身を満たす。そして自分だけでなく相手も同じ状態、同じ世界を見ていることが直感的に分かった。
並大抵の官能では到底辿り着けない境地。自分の語彙のなさが恨めしくなる程の、最高位の絶頂。
産まれてきたこと、理莉と巡り合えたこと、そして彼女と一つになれたこと。
泣いて感謝したくなるくらいに、心が幸福と快感と愛に満ち溢れ爆発する。
「「―――――♡」」
一向に収束する気配がない快楽の中、僕らは深い口づけを交わし愛欲の底に沈んでいった。
「……ん」
僕らは様々な体位で繋がり続けた。時間が経つのも忘れて子づくりに没頭した。そして気付いた時には夕暮れだった。窓の外には茜色の空が広がり、カラスたちの鳴き声が一日の暮れを知らせていた。
部屋内は淫惨たる有様で、精液や愛液で汚れていない場所を探す方が難しい。
理莉と言えば膨らんだお腹を両手で抱えてすやすや寝ている。正常位で僕に突かれている間に気を失ったようだ。彼女の下腹部はザーメンでべっとりデコレーションされており、茶褐色の羽毛に白の白濁がよく映えている。
「流石に、やりすぎたかな」
未だ萎える気配のない愚息と、それをぐぷぐぷ締め付ける理莉の女陰に苦笑しつつ、僕は大きく息をつく。
とりあえずお風呂に入って身体を清めよう。今すぐは無理だが十分くらい休憩すれば彼女を抱きかかえるくらいの気力は戻るだろう。
いや、正確には違う。長時間に及ぶ性交のせいでむしろ力は有り余っている。だが火照った身体が快楽の熱に燻られているせいで、思うように動けないのだ。
それにしてもすさまじい官能だった。めくるめく肉欲の宴に身を投じてみたが、何度も違う世界に旅立つところだった。
「すぅ、すぅ……」
理莉といえば、微笑みすら浮かぶ安心しきった寝顔で夢を見ている。時々くすりと笑う様子から夢の中でも幸福感に包まれているらしい。
どんな内容かすごく気になるが、今はもう少し寝させておいてあげよう。
「愛してるよ、理莉」
こみ上げる想いのまま恋人の頬をゆっくり撫でた。当然、今は聞こえないだろう。
だから彼女が目を覚ました時にはもう一度言ってあげよう。
好きだ、愛していると。
「ん、お」
ぱちりとまぶたを開き、半分寝ぼけた頭でどうにか状況を把握する。
部屋は薄暗い。カーテンの隙間から差し込む日の光の強度から、まだ早朝の5時くらいだろう。室内気温が冬にも関わらず暖かいのは、今も動いているエアコンのお陰か。
敷布団の上に寝る僕の身体は、何故か裸。おかしい。就寝前は確かに寝巻に着替えたはずなのに。
そして何より。
裸の女が僕の下腹部に跨っていた。
正確にはフクロウの身体的特徴を持つ女性が、僕のペニスを女性器で咥え込んでいた。ゆっくりしたペースで腰を上下に揺する彼女の目尻は快楽に緩んでおり、小さな唇からこぼれる吐息も艶がある。身体が動く度に豊かな乳房も上下に揺れ、ぷるんぷるんと擬音が聞こえてきそう。
何回か射精を終えた後なのだろう。男と女の結合部からは、泡立った精液がぐぢゅぐぢゅと淫猥な音を立て漏れ出てくる。肉棒全体はトロトロした膣肉に抱擁され、ぬるま湯にも似た快感が僕を包む。
すごくいい。脳みそがのぼせる程気持ちいい。
「あ、起きた。おはよ」
僕の起床に気付いた女性が腰の動きは止めぬまま微笑みを浮かべる。透明感のある落ち着いた声色だ。
ここに来てようやく、ぼやけた頭が明瞭な輪郭を結んだ。
「おはよう。理莉(りり)」
恋人の名を呼ぶと、彼女は笑みを深め唇を近づけてきた。とても柔らかい唇だ。
軽く唇を重ねただけで、陶酔した気分が胸を満たす。ともすればキスだけでまどろんでしまいそうだ。
……しかし僕はなんで寝起きを襲われているんだろう?
「んむ」
疑問をよそに、彼女が舌を僕の口内に入れて来た。こちらも舌を絡ませ、おはようのディープキスを愉しむ。それだけで余計な思考は溶けてなくなる。
キスをしてる最中もまぶたは閉じぬまま、至近距離でお互いの瞳を見つめ合う。
黄金色の美しい瞳は、煮詰めた甘露のようにトロンとしている。交わいながらの接吻は彼女が特に好む愛情表現の一つだ。
肌に密着するもふもふした毛皮は温かくて柔らかく、ほのかにいい匂いがする。
ハーブと紅茶を混ぜたような、心が不思議と落ち着く香り。理莉がよくつけている香水の匂いだ。
「はむっ、んん、ずちゅうううう」
エサを欲しがるひな鳥のように理莉が僕の舌へ必死に吸い付いてくる。
(ああ、可愛いなぁ)
愛おしい人。姿形は人間と異なれど、そんなことが些事に思えるくらい最愛の女性。
僕も自分から舌を絡め合わせつつ、腰を下からゆっくり突き上げる。両手を彼女のおしりに回すのも忘れない。
勃起した剛直はドロドロになった密壺をえぐり、心地よい快楽を生む。スベスベの尻肉は高級調度品の如く触り心地が抜群で、いつまでも撫でていたいくらい。
「ふむうっ、ぢゅるうっ、ぢゅばっ」
ほっこりする体熱とふわふわの羽毛にくるまれることで、安心感がじんわりこみ上げてくる。天然湯たんぽとは彼女のことを指すのだろう。
「みゅちゅっ、はむっ、はむっ、ちゅうううううう」
しかし今日はやけにキスの時間が長い。そろそろ呼吸が苦しくなってきた。
「っぢゅむっ、びぢゅううっ、ぢゅぞぞぞっ、にゅぢうるるるる」
意識が薄れてきた。まずい、一旦停止を理莉に伝えなくては。
「ぢゅうううううううう! ずぢゅるるるっ、ぢゅううううううっ!」
「んーっ! んんーっ!」
本格的に呼吸がヤバくなってきたので、彼女のお尻をぱしぱし叩く。
しかし理莉は新しいプレイと勘違いしたのか、嬉しそうに目を細めると腰を上下に勢いよく揺らし始めた。そのせいで結合部から飛沫が飛び散り、暴力的な快楽が脳を焼く。
気持ちイイ。冗句ではなく死ぬほど気持ちイイ。
でも違う、そうじゃない。
「ちゅぱぅっ! ばはあああっ! ストップ! ストップ! ストーップ!」
なんとか唇を放すことに成功。
すかさず追撃の口づけをしようとしてきた理莉に、一時停止を求める。
窒息しかけていた気道が解放され酸素が供給される。役目を忘れていた肺が、正常に機能し始める。心臓がポンプの役割を果たし、停滞していた血流の脈動を再開する。
危うい所だった。呼吸困難と常軌を逸した快楽のせいでホントに逝きかけた。
澄み切った河と緑溢れる草原の向こうには、頭に輪っかを乗せた女性天使がいた。幻影……いや、走馬灯にしてはリアルすぎる光景だった。
呼吸ができるってとても素晴らしい。
「……。イヤ、だった?」
「だあああああっ、そういう訳じゃないから!」
生の実感を噛み締めていると悲しそうな声が降って来た。
じわっと一瞬で涙目になった彼女。僕は慌ててフォローの言葉を伝える。
「単純に、息継ぎができなくなっていただけなんだ。理莉とのキスが嫌になったとか、そういうのじゃないからさ」
「そうだったの……。ごめん、私、暴走しちゃって」
しょぼんとうつむく理莉。僕はくすりと笑うとその背中に腕を回し、もう片方の手で頭を撫でてあげる。もふもふの羽毛とサラサラの髪の感触が心地いい。
「え? 怒って、ないの?」
「別に怒ってないよ。ただ驚いただけ。理莉がこんなに強く求めてくるのは久しぶりだったからさ」
オウルメイジの彼女と同棲してから数年以上経つが、理莉は本来ゆっくりした性交を楽しむ子だ。
激しいセックスもすることにはするが、ここまで熱烈に求めてくるのはレアケースだ。
「でも珍しいね。寝ているところに仕掛けてくるのもそうだけど、感情の制御がきかなくなる程理莉が押してくるなんて」
コーヒー色の髪を梳いてあげながら、僕は彼女の首筋を甘噛みする。愛撫の度に膣内がきゅうっと締まり、理莉の口から切なげな吐息が漏れる。
「ひゃっ。うん、実は、ね。昨日あなた凄く疲れていたじゃない」
「うん」
「それで、ね。昨夜もお風呂に入った後、すぐ寝ちゃったじゃない?」
「うん」
そうだった。昨日は職場がてんてこ舞いの大騒動になってかなり忙しかったんだ。
それで疲れた身体を引きずってなんとか家に帰って来たんだっけ。
「ごはんにも手をつけられないほど疲れていたから、私心配で」
「ごめんよ、心配かけて」
そして食事を用意してくれていた理莉は、僕が帰ってくるまでリビングでポツンと待っていてくれた。だが僕は申し訳ない気持ちを抱えつつもシャワーを浴びた後、即座に布団で寝てしまったのだ。
「それで思ったの。エッチで魔力供給をしたら、元気になってくれるかなって」
「うん」
「それであなたが寝たのを見計らって夜這いをかけたの。気持ち良くさせてあげたら、あなたの顔色が凄く良くなっていって」
あれ? なんかおかしいぞ? と思った人は間違いではない。普通セックスとは気力をかなり消耗する行為だ。その逆はない。
しかし相手が魔物娘に限っては話が別である。
彼女達、つまり魔物娘はセックスをすることで、自らの生命エネルギーを相手に分け与えることができる種族なのだ。
「ちなみに、夜這いをかけた時間って覚えてる?」
「確か深夜1時くらいだったと思う」
「………ワオ」
仮に今の時間が5時だとしたら、僕は寝た状態で4時間も彼女と繋がりっぱなしだったと言う訳だ。どうりで彼女の中から大量の精液が逆流してきている訳だ。
そしてこれだけされても中々起きなかった自分の熟睡ぶりに驚く。
「迷惑、だった……?」
「いやいやいや!」
僕の沈黙をどう受け取ったのか、理莉がシュンとしてしまう。
いや、迷惑ではない。断じて。
「むしろ恋人から逆夜這いをかけられるのは、男冥利につきるというものだよ。それに理莉も理莉なりに僕の事を気遣ってくれたんだろう?」
「う、うん! そうなの! 私、体内にいっぱい魔力持ってる。だからいっぱいくっついてエッチしたら、身体の中にある魔力をあなたに移せる。魔力は生命力の源だから、あなたも元気になる!」
金色の瞳を爛々と輝かせ、彼女が腰を大きくグラインドする。再び始まった律動に、僕は思わずのけ反る。
「くおっ、理莉っ、その動きすごい!」
「またお腹の中でプクッと大きくなった。いいよ、出して。精液、一杯ちょうだい」
段階飛ばしで速くなっていく腰の動き。膣壁がきゅううっと締まり、肉棒を絞り上げていく。
下腹部の奥から熱がこみ上げ、視界が白く明滅を始める。
「らひてぇえ、ちょうらいっ、妊娠汁ちょうらいっ!」
平気じゃないのは理莉も一緒らしい。目じりは完全に垂れ下がり、口の端からは涎がタラタラと落ちてきている。柔らかい羽毛を纏った身体はかたかた震え、胸の先端はピンとそそり立っている。限界はすぐそこまで来ていた。
「くううあああっ! 出るうううっ!」
欲望が勢いよく爆ぜた。尿道から噴出された白濁は膣内を駆け巡り、彼女の子宮に到達した。
「ひやあああああああああッ!?」
弓なりに身体を反らせた理莉は、電流でも流されたかのように全身を痙攣させた。
ぷるぷると形の良い胸が震え、マンコが痛いくらいにチンポを締め付ける。
射精の勢いは留まる所を知らず、剛直は無遠慮に彼女の大事な所を白濁で染め続けた。
ドバドバと吐き出される種汁は、何度も、何度も子宮を駆け巡り、入りきらなかった精子は膣からゴボッと逆噴出してきた。
「お、お、あ、あ、あぁ、あー」
くたりと僕の胸板に彼女がへたりこんできた。彼女のおっぱいがむにゅりとつぶれ、好ましい感触が直に伝わる。
「きもひ、よかったぁ……」
半開きになった理莉の瞳は情欲と涙で濡れており、ひどくエロティックだ。いつも落ち着いた雰囲気の彼女だが、今は見る影もなく呼吸が乱れており唇の端からは桃色の舌が覗いている。
「……ッ」
恋人のだらしなく蕩けた表情が、僕の中のオスに再び火をつけた。射精直後なのに陰茎が活力を取り戻す。
彼女が無防備なのをいいことに、僕は仕掛けることにした。お尻にまわしていた両手に力を込め、腹部のインナーマッスルに気力を注入。そして。
「ふっ!」
「ひにゃああああっ!?」
一気に腰を突き上げた。突然のピストンに理莉が白目を剥き、スパンという小気味のいい抽挿音が部屋に響く。
「え、う!? おああああ?!」
目を白黒させながら理莉が狼狽するがお構いなしに腰を振りまくり、ついでに唇も強引に奪う。舌と舌が触れ合った瞬間、膣内の締まりも良くなった。
度を越えた快楽に普通はおかしくなりそうなものだが、そこは流石魔物娘。
僕からの反撃に喜んだのか、間を置かず理莉の方も舌を絡めてきた。
「んんむうっ! ふむちゅっ、はむっ、れろおっ」
肉棒と舌先で恋人を可愛がりつつ、彼女の全身を思う存分堪能する。
宝石すら霞む輝きの瞳、蜂蜜みたいにとろける唾液、胸板に押し付けられる柔らかい乳房、いつまでも触っていたいすべすべしたお尻、一流歌手にも伍する綺麗で艶のある声、そして聖母の如く全身を包んでくれる温かい羽毛。
たまらない。すばらしい。極楽だ。
彼女は僕に勿体ないくらい最高の女性だ。脳味噌が茹っているせいで思考力は大幅に落ちているが、最高なのは間違いない。
それにしてもいくら腰を動かしても全く疲れない。いや、そもそも疲れ自体を感じない。
どうやら理莉の魔力はちゃんと僕の体内に供給されているみたいだ。
なんならこのまま夜までセックスが続けられそうなくらいである。
「〜〜〜〜〜〜!」
ペニスを突き上げるたびに彼女が震え、くぐっもった嬌声が寝室に響く。
膣内の収縮も激しくなり、肉棒全体が快感の大波に巻き込まれる。
下腹部が溢れてきた大量の精子と愛液によってグチャグチャとなり、ピストンを繰り返すたび淫らで下品な水音が鼓膜に届く。
「ふっ! ふむあっむうっ!」
「ちゅるっ、ぢゅるるっう!」
強く抱きしめ合う僕らは舌先でお互いの唾液を交換し合う。その様子はキスというより、唇でのセックスと評した方がいいかもしれない。
こちらの律動に合わせて理莉も腰を振ってくれている。さして時間も経たない内に次の射精感がこみ上げてきた。
お尻に回していた両手に更に力を込め、後先考えず腰をがむしゃらに動かす。
突きこまれた陰茎は何度も子宮口をノックし、その度に甘い雷が脊髄を焦がしていく。
生殖本能が命じるままに欲望を重ね続け、やがて僕は彼女の中で果てた。
「「――――――!!」」
射精。夥しい量の精子が膣に放たれたことが確認せずとも分かった。
声なき叫びを上げた僕たちはきつく抱き合い、絶頂を噛み締める。
肉棒は洗水ホースにも負けぬ勢いでザーメンを噴出し、あっという間に恋人の中を白濁まみれにした。
放出された妊娠用原液の量は半端ではなく、またもや中に入りきらなかった分がアソコから飛び出てきた。それでも僕は膣内射精を止めない。止められない。もっと、もっと彼女が欲しい。もっと彼女を精液漬けにしたい。
「ッ!」
剥き出しになった本能が、生殖行為を続けろと命じる。
迷うことなく下半身の運動を再開。射精しながらの往復運動。絶頂中なこともお構いなし。
「あ、あ、あああ! だめ、だめ、だめ! いま、いっでりゅのにぃ!」
大変なのは理莉の方だ。嗚咽を漏らしながら、必死に首を振っていやいやする。
美しい顔は今や涎や涙でぐしゃぐしゃになっていて、とても他人様にお見せできるものではない。俗に言うイキ顔という状態だ。
しかし僕からしてみれば彼女の崩れた顔さえ愛おしい。なんならこのままイキ狂って欲しいくらいだ。変態じみた感情が心から這い出てくるのを自覚しつつ、ひたすらピストンを穴の中に打ち込んでいく。
「ろうひてぇ!? どうひて、とまってくれないのぉ。お願いぃぃ」
切なげに懇願する理莉。だが彼女は、自身が無意識の内に膣内の締め付けを強くしていることには気付いてない。恋人の肉体は本日も欲望に正直なようだ。
僕は返答の代わりに、肉棒の出し入れ速度を倍にした。おしりを掴んでいた両手もきつく握り締めてホールド、彼女の首筋にもかぷりと吸い付く。
「きゃあああああああっ!!?」
可愛らしい悲鳴を上げて理莉はここではないどこかに意識を飛ばした。
瞳から理性の光が消失し、頭から生えている耳毛がピクンと逆立つ。
彼女が激しく絶頂した証拠だった。ガタガタ震える恋人をしっかり抱きしめ、グイッと腰を大きく突き上げる。それによってチンポが子宮口の奥に到達。同時にまたもや半固形状態のザーメンが無遠慮にぶちまけられる。
「―――――――――!!」
表現しようのない未知の快楽が全身を大きく揺さぶり、常識外れの快感で呼吸ができなくなる。
身体の内側から熱と慕情と肉欲が奔流を起こし、思考力そのものが溶け落ちる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
甘いうめき声が耳朶に響く。エクスタシー状態の理莉が、膣内射精を受けてさらにエクスタシー状態になったらしい。二重エクスタシーだ。大変だ。でも気持ち良さそうだ。
理莉が気持ち良くなってくれたなら、僕も気持ちいいし嬉しい。
「……!、……!」
色情の灼熱に炙られたせいか、身体全体がひどく昂揚している。何かを考えることはできず、何かを考える必要もない。
その証明として、忘我状態になっていても腰部は自律機械の如く自動的に動き続けている。自分の意思とは関係なしに動く肉体。
オスとしてメスを孕ませるために交尾をしている。至極単純な、生物としての営み。
「……う、あ……あ、ぁぁ……」
一方理莉の方と言えば、僕の胸板に突っ伏したままだ。目尻には大粒の涙を、開いた口の端からは泡をこぼし、与えられ続ける快楽にただただ震えている。
「ぉ、……おぁ、……ひぅっ、あ……」
意味を成さない言葉が彼女の喉から漏れ出す度に、劣情が否応なく掻き立てられる。
とりあえず僕は腰を揺すり、精巣や尿道に残っているザーメンをあらかた排出することにした。
射精は依然として止まる様子はなく、粘ついた精子がドクドクと彼女のお腹に注がれていく。
むせ返る性臭と淫臭が部屋を漂い、撒き散らされた大量の精液が行為の激しさを物語る。
常人を遥かに超えるサイズの肉棒と射精量。我がことながら絶倫とか艶福家とかいう単語では、到底説明できないセックスモンスターだ。
そう。文字通りの意味で僕は【人間】じゃない。
理莉のような魔物娘と交わい続けた男は、魔力の侵食により体内器官が大きく変化する。
見た目こそ人間男性と変わらないが、基礎体力を始めとする様々な点が全く違う。
病気にならない、老いない、体内に魔力を保有する他、性に関係する能力が桁違いに跳ね上がる。
こうなった男達の総称が、インキュバスという種族だ。
「ッ、ふぅ」
射精が一段落ついた所で、乱れていた呼吸をなんとか整える。
適度な息継ぎをしておかないと窒息が原因で腹上死してしまう。いくら人を捨てた身とはいえ、死と無縁になった訳ではない。
……ちなみに世のインキュバス達に対して行われている政府調査アンケートによれば、日常で死にかけたケース第2位が腹上死らしい。パートナーとの行き過ぎたプレイが元で昇天しそうになるのは、誰もが一緒のようだ。ちなみに1位は嫁と娘が可愛すぎて悶え死にそうになったとか。
世の人々が幸せそうで何よりである。
(でも人間だった頃と比べると、確かに性欲がケタ違いになったよなぁ)
ピクピクと痙攣を繰り返す理莉を撫でながら、以前の自分に想いを馳せる。
あの頃は3回射精しただけでぐったりとしてしまう事も多かったが、今は一日中繋がっていても体力が尽きない。インキュバスになったことで、恋人と長くイチャイチャできるのはメリットがとてつもなく大きい。
「ん?」
ピピっという電子音。目をやると枕元に置いてあった携帯が振動している。手に取ってみると、画面は6時半を示していた。普段起床する時間になったのでアラームが作動したらしい。
指でタップしてアラームを解除。そのまま脇に携帯を置いておく。
今日も明日も休日で本当に良かった。
時間はたっぷりあるので、まだまだ彼女と重なることができる。
「……ひあ、あ、おあっ、はっ……」
腕の中で小刻みに震える想い人を見下ろすと、またもや情欲が再燃する。
体位を変えることにした僕は、両腕を理莉の背と腰に回す。結合が解けないよう、チンポを子宮の最奥まで押し進めるのも忘れない。
「それっ」
「ひゃっ!」
そのままくるりと身体を反転。今度は彼女を布団に寝かせ、その上から僕が覆いかぶさる形になった。セックスの中でも一番メジャーな体位、正常位だ。
勢いよく腰を振りまくりたい衝動を抑え、今度はゆったりしたペースで抽挿を再開。
スローテンポで愚息を出し入れすると、また違った感覚が肉体にもたらされる。
荒波に揉まれるような先の快感とは違い、今度は焚火で暖を取るようなぬくもりと安らぎを感じる。
「あっ、うぁ、ひううぅ」
顔を朱に染めた理莉がもぞもぞと両羽をくねらせる。法悦のために言葉が意味を成さなくても、何をして欲しいのかすぐ分かった。
くびれに置いていた両手を移動させ、さわさわした彼女の羽に指を這わせる。
(あった)
目当てのものを探り当てた僕は、それに両手を重ね合わせ指を絡める。
それ、とはすなわち彼女の手だ。オウルメイジは普段両腕を羽毛の中に収納しているため、一見すると手がないように見えるのだ。
「えへ、へ……」
恋人つなぎになった途端、あどけない少女のように理莉がはにかみ、垂れ下がった瞳がじっと僕の方に向けられる。
吸い込まれるような眼だ。魅惑的で神秘的な雰囲気を放つその瞳は、何度見ても僕を惑わせる。
いつまでも見つめていたいと思った瞬間、頭が麻痺してくるような感覚を覚えた。
(あっ、しまっ)
……理莉はオウルメイジの例に漏れず、理知的で穏やかな娘だ。魔法を無闇やたらと使わないし、料理に魔界産の野菜や果物を投入するようなこともしない。
彼女自身が普段からそういったことに気を付けているので、日常生活ではその類のトラブルに巻き込まれたことはない。日常ではの話だが。
「ふおおおおおおおおおおっ!」
「ぁきゃあああああっ!?」
猛然と腰を振りだした僕に、理莉が身体をビクリと仰け反らせた。
自身の太刀を理莉の鞘へ乱暴に出し入れし、これでもかという程に抽挿と快楽を秘部にねじ込む。ばぢゅんばぢゅんと、下品を通り越してはしたないとすら思える水音が、繋がった箇所から響き渡り神経そのものが桃色に染まっていく。
「理莉! りり! リリ!」
「あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“!!」
獣のように吠え猛る僕の頭から余計な理性や自制心が次々と消えていく。もう目の前のメスを孕ませることしか考えられない。
何故僕が暴走状態になったのか。それは彼女の魔眼にあてられたからだ。
ここで言う魔眼とは、オウルメイジが持つ固有の魔法能力のこと。
対象に目を合わせることで発動し、思考能力低下、平衡感覚喪失、催淫状態誘発など精神に干渉する魔法である。
「好きだッ好きだッ好きだあああああ!」
「ひぎあああああああっ!?」
いつもは彼女が意識的に魔眼を使わないようにしているみたいだが、今回のように気が緩み切っている時は【暴発】してしまうらしい。
そうなったら最後。理性が木っ端微塵になった僕が止まるまで、連続絶頂セックスは終わらない。
「出る! また出すから! 孕んで! 孕んで理莉!」
早くも睾丸に精液が再装填され、肉棒がビキビキと肥大化していく。
うねうねと動く膣肉は搾精のため、竿全体を痛いくらいに締め付けてくる勢いだ。。
我慢する必要はない。いくらでも出してもいいし、いくらでも出せるのだから。
「お“、お”お“っ!? も、だめっ! お”がじぐなっぢゃう!」
濁った声を喉から絞り出す理莉は、気が触れた動物みたいに全身を弾ませている。それによって乳房が毬にように跳ね回り、羽毛がぶわわっと逆立った。
全身が性感帯になっているのだろう。肌が接触しただけでも、理莉の唇からあられもない嬌声と涎が飛び出る。
「ッ! フウッ!! フウッ!! フウッ!!」
その愛おしい顔から眼をそらすことができない。もしこれ以上の快楽に狂ったら、彼女はどんな顔を僕に見せてくれるのだろう。
見たい。見せて欲しい。君が僕のチンポでおかしくなるところを。
「あ“っうううううう!」
「――――――――?!!!!」
腹の底から湧き上がってきた熱を知覚した時には、もう射精が始まっていた。
マグマの爆発に呑まれた理莉は、今日一番のアクメをキメて目を剥いた。
脳髄どころか心臓までもを焼きつくす勢いの殺人的な快楽。
あ、これ、まずいかも。
「ぅ?」
バツンと脳の裏で何かが爆ぜる音。
視界が砕け散り、今度は誇張抜きで目の前が真っ白になった。上も下も、右も左も分からない。世界が揺れ、移ろい、何もかも白一色で見えなくなる。
僕という男の自我が曖昧になり、融解していくような感覚。ただ分かるのは、両手と性器で絆を確かめ合う想い人の存在だけ。ただひたすらに気持ちいいという快楽だけ。
明らかに、桁外れの快楽によってもたらされた副作用だった。
「――――――――――!」
声が遠い。意識が薄れてゆく。全身が一片もなく消し飛ぶような、凄まじい淫撃。
「―――! ―――! 〜〜〜〜!、―――△〇※@□*$♪♪!?」
かろうじて、理莉が叫んでいることが分かる。ただ、何を言っているのかは認識できない。
今は鼓膜すらも絶頂の暴風に阻まれ、器官としての役目を成さない。
「ッあ!!!」
時間にしてどのくらいだったのだろう。世界が色を取り戻したと感じた時には、荒い息が肺から出てきた。僕は仰け反りながら射精を行ったようで、視界一杯には部屋の天井が映っていた。
「あ、おああ……」
全身が軋みをあげるくらいに痛い。痛い? いや、これは気持ちいいという感覚だ。未だ冷めない熱と高揚がその証左。
身体中の穴という穴からは汗が吹き出し、喉がからからに乾いている。こころなしか扁桃腺がヒリヒリする。叫び過ぎたようだ。
「!」
そうだ理莉は大丈夫だろうか。インキュバスの僕でこれなのだ。快楽の上限値がない魔物娘がこんな目に遭ったら大変に違いない。
慌てて視線を下ろし、そしてぎょっとした。
「あ……う……あ、へ……」
まず目を引くのが膨らんだお腹だ。臨月妊婦かと勘違いするほど、理莉の腹部が膨らんでいる。精子だ。僕が放った夥しい量の精液が、彼女をこうしたのだ。
「……ひゃ、おっ……ぇへ、お“、お”」
まんまるしたお腹に今もなみなみと精液が注がれていく様子は、自分で言うのもなんだが現実感がなかった。
いや、呆けている場合ではない。イキ顔を越えた逝き顔を晒している恋人は、見た限り危うい様子で失神と引きつけを起こしている。
やりすぎた。
背すじが冷え、脳が一瞬で冷静さを取り戻す。
「理莉、理莉、大丈夫?」
彼女の頬に手を添えて名を呼ぶと、光のなかった目が色を取り戻した。
よかった。酸欠にはなってなかったみたいだ。
「ん、ん、……らい、じょうぶ……すごく、きもひよかった……」
いつもの大人しい居住まいからは、想像できない程陶酔しきった笑み。僕はこの表情を知っている。理莉が心の底から至福を感じている時のみに見せてくれる貌だ。
「あむっ」
かと思うと、彼女がおもむろに僕の指へ吸い付いてきた。思わぬ不意打ちに生唾を飲み込んでしまう。
「っ、りり」
ちゅうちゅうと赤子が乳を飲むように、理莉は僕の指を舌で舐め、しゃぶり、吸い上げてくる。連動して膣内の締め付けもまた再開された。最早別の生物と思えるくらいに、膣壁が複雑かつ精妙な動きで亀頭を攻め立てる。
これほど出されたのにまだ足りないというのか。
子種への異様な執着。オスの象徴をねだるのは魔物娘の本能だと、それは理解していたつもりだが、こうしてみると本当に彼女達は人外の存在なんだなと驚いてしまう。
「ちゅっ、ぷちゅるっ、ねぇ」
「なんだい?」
「もっと、してぇ」
甘えるような、媚びるような声音で理莉が僕を上目遣いに見てくる。舌で指先を舐めるのはそのままに、投げ出されていた彼女の手が膨らんだお腹の上に移動する。
「お腹の中、たぷたぷしてて、とってもシアワセなの。だから……ね? あなたの精液、もっと入れてぇ」
おへその上を羽毛に包まれた手が撫でる。円を描くように、ゆっくりと艶めかしく。
風船のように張りつめたボテ腹を愛おしそうにさする姿は、くしゃくしゃになったトロ顔と相まって背徳的な色香を振りまいている。
オスの劣情を刺激し、交配を誘う仕草だ。
「だ、だめだよ。これ以上したら理莉が壊れちゃうかもしれない」
だが普段の冷静さを取り戻した僕は、そのお願いを拒否する。今更何をと思うかもしれないが、流石に彼女をこんな風にしたら自制心が働く。
「なんで? して、お願いだからしてよぉ……」
玩具を取り上げられた子供のように、恋人がくしゃりと顔を歪める。罪悪感を感じつつも、僕は前後運動の再開をしない。
セックスのやりすぎで魔物娘がおかしくなったという話は聞いたことはないが、それでもこの状態の理莉を見たら行為の再開を躊躇ってしまう。
「心配して、くれてるの?」
「当然だよ。君に何かあったら僕はこの先、生きていける自信がない」
「優しい、ね。あなたのそんな所、好き。だぁいすき」
「!」
彼女はずっと前からそうだ。無条件で僕を愛してくれる。ただひたすらに、無償の好意を僕に向けてくれる。
ごく平凡な見た目に平均的な能力。他者と比べて突出したものがなく劣等感に苛まれていた僕を、彼女はいつも暖かく包んでくれる。
「僕も理莉のことが大好きだよ。でも、今日はやっぱりこれくらいにしておかない?」
だからこそ僕も彼女のことを大切に想う。初めて夜を共にしたのあの日。愛の言葉と共に優しさをくれた可愛い女性へ、大きな負荷をかける訳にはいかない。
理莉とまだまだ繋がっていたいという欲望は確かにあるけど、これ以上の交わりは彼女の身体に無視できない負担がかかるはずだ。
「〜〜なんて事を考えているのも、お見通しなんだから」
「こ、心を読まれた!?」
直前の思考をそのままオウム返しにされて、僕はあんぐりと口を開く。
「あれ? 理莉って種族はオウルメイジだよね? 本当の種族は日本に大昔から居るという妖怪サトリじゃ……」
「違うよ。あなたの顔に、思っていることが書いてあっただけ」
ぷうっと頬を膨らませる仕草も可愛い。あやうく悶死しかけた。
「どっちにしろ、こんなぱんぱんにお腹が膨らんだ状態じゃ君の身体が」
「ふふ。じゃあ、私のことを犯したくてたまらない風にしてあげる♪」
「え?」
言うや否や。彼女の双眸が、どこか煽情的な光と色を放ち始める。
まずい、魔眼だ。
「ああ、だめだ。だめだよ理莉……そんなこと、いけない……」
彼女の瞳に見つめられた端から、せっかく取り戻した理性がいとも容易く喪失していく。
「逃げちゃ……いや……」
身を引こうとした僕に、下から理莉がひしっと抱き着いた。両羽根は背中に、ふさふさの脚は腰に固定され身動きが取れなくなる。
それで詰みだった。まぶたを下ろすよりも速く、彼女の光が僕を虜にする。
数秒と待たぬうちに精神が混濁し、脳味噌が単純な命令以外を受け付けなくなる。
「う、お、お」
それでもギリギリで耐えた。必死に耐えた。ここで流されたら、僕は間違いなくケダモノになると分かっていたから。だが。
「我慢強いね。惚れ惚れしちゃう」
「り、りぃ」
僕の耳元へ彼女が囁きかけてくる。耳に心地よい澄み通った優しい声。しかしその声の内には隠し切れない色情がある。
「けど遠慮する必要はないの。あなたが満足するまで、あなたの好きなだけ中にだしていいの。びゅううぅって、何も考えずに出したらきっと気持ちいいと思うよ?」
彼女の肉声が妖艶な熱を帯びてきた。至近距離での囁きは、僕の精神を着実に蝕み堕落へと引きずっていく。甘味を直接耳へ流し込まれたかのように、ぞわりとうなじの毛が逆立つ。
逃げることも抵抗することも、今の僕には叶わない。魔物からの誘惑は更に続く。
「ね、赤ちゃんつくろ? あなたとの子供、たくさん欲しいの」
「つうっ!」
それが理性へのトドメとなった。
魔法抵抗判定及び、正気度判定失敗。SAN値ゼロ。
狂おしいまでの獣欲が、肉体にエンジンをかけた。
「もう手加減しないからなあああああっ!」
「きゃひいいいっ!? う、嬉しいっ、こんなに、求めてくれるなんて、お“っ、お”っ!?」
結果はセックス続行。
抗うなんて無理だろう。こんなことを言われた日には、僕でなくても野獣になる。
「う“う”っ! うがっ、あ“っ! お”お“お”お“お”!!」
いきり立って腰を振り回し、ケダモノ同然に吠え猛りながら女体を貪った。
(僕のものだ! 全部! ぜんぶ僕だけのものだ!!)
えぐりこまれたチンポにむしゃぶりつく膣壁も、口に含めば興奮の材料となる乳首も、安らぎと幸福を与えてくれる羽毛も、乱暴に独占する。
律動の度に理莉の膨らんだお腹がゆさゆさと揺れ、シェイクされた精液の振動音も聞こえてくる。
胎内からは決壊したダムの如き勢いで愛液と白濁が噴出しており、布団の上はこぼれた汁で水たまりが出てきている惨状だ。
(もっとだ! もっと欲しい! この女性の何もかもが!!)
ぐずぐずと深みに嵌まっていく淫獄の最中、暴力的な本能が鎌首をもたげる。
この雌を滅茶苦茶にしたい。精液中毒にして、一生自分から離れることができないカラダにしてやりたい。
孕ませて、孕ませて、頭がおかしくなるまで孕ませて、頭がパーになった後も孕ませて、子供を五十人くらい産ませてやりたい。
妊娠中でも容赦なく種付けして、朝も昼も夜もずっとマンコにチンポを突っ込んだままにしたい。
彼女が泣いて懇願しても、ずっとオス汁をメス穴の中に注ぎ続ける日々を送りたい、いや送らせてやる。
「ぎもぢいいいいっ! ぎもぢいいいのおおお! もっどおおお! もっどじでえええ!」
下敷きにされた理莉は全身に余すところなく性愛をぶつけられ、涙や涎、愛液を撒き散らしている。精神異常とすら映るほどの肉欲と愛を欲しがる、魔物娘としての本能がそこにあった。
「おぐっ!! おぐがいいいのおお! おぐを、おぐをゴリゴリじでえええええ!!」
イカれ果てるんじゃないかと思う程くらい、喜悦の表情で理莉はアヘり続ける。
しかし普段の理知的な仮面を脱ぎ去った下に、こんな素敵な本性があったなんて。
これはヤり甲斐があるというものだ。
「孕め! 孕め! 孕め! 孕めよおっ!」
一切の人間性を奪われた副作用によるものか、肉棒と睾丸がありえないくらいに膨らみ次なる劣情の塊が充填されていく。そろそろだ。またアレがくる。
「あがっ! うおっあああああああ!」
「ひああああっ!? 熱い、せーし熱いいいっ!?」
望み通りに奥にぶち込んで吐き出した。僕の恥骨と彼女の恥骨をこれ以上ない程密着させ、種付けプレスを敢行。
全自動孕ませ機となった僕は、子供ができる魔法の液体を秘部にドバドバ吐き出す。
幸せだった。一生分の幸運を使い切っても後悔がない程に素晴らしい体験だった。
「「―――――」」
もう、叫びも、嬌声も、呻きも、言葉すら出ない。
限界を超越した交わりのせいで言語を司る器官がショートし、目に映る全てのものがキラキラ光っていた。
彼女と自分の境界線すら曖昧になり、溶けて一つになるような、次元違いの恍惚が全身を満たす。そして自分だけでなく相手も同じ状態、同じ世界を見ていることが直感的に分かった。
並大抵の官能では到底辿り着けない境地。自分の語彙のなさが恨めしくなる程の、最高位の絶頂。
産まれてきたこと、理莉と巡り合えたこと、そして彼女と一つになれたこと。
泣いて感謝したくなるくらいに、心が幸福と快感と愛に満ち溢れ爆発する。
「「―――――♡」」
一向に収束する気配がない快楽の中、僕らは深い口づけを交わし愛欲の底に沈んでいった。
「……ん」
僕らは様々な体位で繋がり続けた。時間が経つのも忘れて子づくりに没頭した。そして気付いた時には夕暮れだった。窓の外には茜色の空が広がり、カラスたちの鳴き声が一日の暮れを知らせていた。
部屋内は淫惨たる有様で、精液や愛液で汚れていない場所を探す方が難しい。
理莉と言えば膨らんだお腹を両手で抱えてすやすや寝ている。正常位で僕に突かれている間に気を失ったようだ。彼女の下腹部はザーメンでべっとりデコレーションされており、茶褐色の羽毛に白の白濁がよく映えている。
「流石に、やりすぎたかな」
未だ萎える気配のない愚息と、それをぐぷぐぷ締め付ける理莉の女陰に苦笑しつつ、僕は大きく息をつく。
とりあえずお風呂に入って身体を清めよう。今すぐは無理だが十分くらい休憩すれば彼女を抱きかかえるくらいの気力は戻るだろう。
いや、正確には違う。長時間に及ぶ性交のせいでむしろ力は有り余っている。だが火照った身体が快楽の熱に燻られているせいで、思うように動けないのだ。
それにしてもすさまじい官能だった。めくるめく肉欲の宴に身を投じてみたが、何度も違う世界に旅立つところだった。
「すぅ、すぅ……」
理莉といえば、微笑みすら浮かぶ安心しきった寝顔で夢を見ている。時々くすりと笑う様子から夢の中でも幸福感に包まれているらしい。
どんな内容かすごく気になるが、今はもう少し寝させておいてあげよう。
「愛してるよ、理莉」
こみ上げる想いのまま恋人の頬をゆっくり撫でた。当然、今は聞こえないだろう。
だから彼女が目を覚ました時にはもう一度言ってあげよう。
好きだ、愛していると。
20/02/07 08:51更新 / 風車小屋