読切小説
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傷だらけの男と癒しの魔物
ある所に旅人の男が居た。
「ふむ、シュトレイユか、住みやすそうな国だったな」
男の名前はレイ・イレイサー、歳は十代半ば、頭は良くも悪くも無いが武術は父に仕込まれた為、その辺の騎士より遥かに強い、武器は背中に背負っている少し長めの剣である。
「候補として上げておくとしよう」
旅の目的は、自分の住みやすい国を探す事である。
レイは地図を出し、先ほど出て来た国に印を付ける。
「さて、次の国に向かうか」
レイは地図を鞄に入れ次の国への道を歩き出した。

出国してからレイが森の道を歩いていると、
「うん?」
遠くから人の声が聞こえた。
「こんな人気の無い森で・・・魔物か!」
すると、その声はレイの方へ徐々に近づいて来る。レイは剣の柄に手を伸ばし構える。
ガサッガサッ、ヒュッ
不意に茂みが動いたと思うと、行き成り何かが飛び出して来た。
「こいつは・・・」
それは、白い馬の下半身に人の上半身、そして額に一本の角が有る少女だった。
「ユニコーンか」
そう、行き成りレイの目の前に現れたのはユニコーンだった。
「・・・・」
レイは余の美しさに少しの間見とれてしまった。
「はぁー、はぁー」
ユニコーンは肩で息をしながらその場に倒れそうになる。
パシッ
しかし、それをレイが抱く様に支える。よく見るとユニコーンの足には刃物で切った様な傷があった。
「何者かに襲われたようだな」
レイがそんな事を言っていると、
ガサッガサッ
少し離れた所の茂みが動き道に数人の男が出て来た。格好から察するに山賊だ。
「よし、やっと追いつめたぞ!うん?」
山賊のリーダーと思われる男がユニコーンを抱えて居るレイに気がついた。
「おい兄ちゃん、すまねえがそいつは俺たちの得物なんだ、こっちに渡してくれねえかな?」
山賊のリーダーがふざけた様に言う。その時、レイに抱かれていたユニコーンがレイの服を掴んで震えていた。
「・・・ふっ」
怯えるばかりのユニコーンの頭をレイは優しく撫でる。
「大丈夫だよ」
正直、レイは関わりたくなかった。このままユニコーンを差し出せば済む話なのだから。しかし、今レイの腕の中で震えているユニコーンが、目の前に居る山賊たちに何をされるかを想像すると、とてもそんな事は出来なかった。
「二つ聞きたい事がある」
「なんだい?」
「このユニコーンが何か悪い事をしたのか?」
「いいや」
「そうか、では、お前たちはこのユニコーンをどうするつもりだ?」
「決まってるだろ!ユニコーンを欲しがる貴族はいくらでも居る。そいつらに高く売りつけるのさ!」
「なるほど、ならば、渡す訳にはいかない!」
「なんだと!」
レイはユニコーンを寝かせ立ちあがり剣を構えた。
「てっ、てめえ!俺たちとやろうってのか!」
「ああ、私はどうにも罪の無い者が奴隷の様にされるのは好かんのでな!」
「くっ!舐めやがって!おいっお前ら、ちーとこの兄ちゃんに現実ってやつを見せてやれ!」
『おうっ!』
山賊たちはそれぞれの武器を出し、20人近い山賊たちがレイに襲いかかって来た。しかし、
シュンッ
レイは一瞬にして襲いかかって来る山賊たちの最後尾の後ろまで駆け抜けた。
「えっ!」
山賊たちは余の出来ごとに頭が混乱した。
スー、カチン
そして、レイが剣を背中に戻すと、
チンッ、パラッ、カスッ、カンッ、ボトッ
「うん?うおわっ!」
その場に居た山賊達の武器は粉々になっていた。そして、おまけに服も、際どい所だけ残して斬られていた。
「ドラゴンの牙より造られた剣、貴様らの持っている鈍らとは一味違うぞ!」
『・・・ぁ・・ぁ!』
山賊たちは余の威圧感に手足が震え何も言えなくなっていた。
「お前たちなど斬る価値も無い、今すぐ立ちされ!」
『ひぃーーーー』
ドドドドドドッ
山賊たちは我先にとその場から逃げだした。
「ふ〜〜」
レイは、溜め息をつき体から力を抜いた。するとレイは、そこで初めて、まだ自分を見ている者の視線に気づいた。
「・・・」
それは、先ほどまで意識を失いかけていたユニコーンだった。
レイが近寄ると少しビクッっとしたが逃げようとはしなかった。そして、レイは傷を負っている足を見る。深くは無いがまだ幼さが残るユニコーンには辛そうだった。
「回復魔法は使えないのか?」
レイがユニコーンに聞く。
ユニコーンは他の魔物と違い回復魔法を得意としている筈だが、
「ま、まだ、よく分からないの」
どうやら、まだ親に習っていないようだ。
「ふー」
レイは仕方なく鞄から薬と、包帯が無かったので白い生地に赤の刺繍がされているハンカチを出した。そして、ユニコーンの足に薬を塗る。
「お前、名前は?」
レイが治療をしながら聞く。
「コ、コハク!」
少々詰まりながら名前を言う。
「コハクか、良い名前だな」
「あ、貴方の名前は?」
「私か?私はレイ、レイ・イレイサー、ただの旅人さ」
「旅をしてるの?」
「ああ、暮らしやすい国を探してる」
「何処か良い所が有るの?」
「うん?そうだな、この道を真っ直ぐ行った所に有る国は良い所だった」
「へ〜」
「それより、なぜお前はこんな所に居る?」
本来ユニコーンは森の奥深くで暮らしている筈の魔物だ。この様な場所に居るのは珍しい。
「少し、人間の住む町を見てみたくて、こっそり森を抜け出したんだけど…」
「運悪く、あいつ等に見つかったと」
「うん」
レイは、薬を塗った所にハンカチを巻いた。
「これで良いだろう」
レイは薬を鞄にしまい立ちあがる。
「あっ、あの!」
「うん?」
行き成りコハクが声を上げた。
「あっ、ありがとうございました!」
「うっ!」
少し上目づかいに成りながらお礼を言うコハクにレイは少々ドキッっとした。
「あのう、何か?」
「あ、ああ、いや気にするな。さて、傷はこれで良いとして、これからどうすれば」
勿論、先ほどの山賊の仲間がまだ居るかも知れない森の道に、このままコハクを置いて行く訳にはいかない。
レイが考えていると、
ガサガサ
またしても近くの茂みが動いた。
「ふっ!」
レイは再度剣を構えるが、
ヒョコ
そこから頭を出したのは、ドワーフだった。
「あっ、モモちゃん!」
「あー、コハクちゃん見つけた!」
ドワーフが大声を上げると、更に周りの茂みが動き、
「居たのか!」
「どこどこ!」
アルラウネやらグリズリーやらマンティスやら森の魔物達が集まって来た。そして、コハクの親であろうユニコーンも、
「コハク!」
「ママ!」
そして、コハクに抱きつく。レイはそれを少し下がって見る。
「大丈夫だった!」
「うん!レイが助けてくれたから!」
「レイ?」
コハクはレイを指差す。すると、その場に集まっていた魔物たちの視線がレイに集中する。そして、
「おお!こいつは美味そうな男じゃないか!(性的な意味で)」
行き成りグリズリーがそんな事を言い出す。
「そうね、体なんかも引き締まってて体力も有りそうじゃないか」
ミノタウロスがそれに賛同する。そして、その場に集まっていた魔物たちの目が得物を狙う様に光る。
「(これは、まずいな!)」
直感で全てを悟ったレイは次の国へ向かう道を駆け出した。
「待てー!」
「逃げるなー!」
「私と良い事しましょー!(性的な意味で)」
走りだしたレイを魔物達が追うが、足の早さにも体力にも自信のあるレイの方が早かった。

レイが居なくなった後、コハクはレイの走り去った方を見ながら呟いた。
「レイ・イレイサー・・」
コハクの頬がほんのりと赤く染まる。

一方レイは、森を抜けて少行った所で後ろを振り返り、誰も追ってきていないのを確認し、胸を撫で下ろす。そして、今抜けて来た森の方を見てレイはコハクの顔を思い出してしまう。
「(ふっ、我ながらあの様なユニコーンの子供に心引かれてしまうとは、)」
レイは小さく笑い次の国への道の方を向いた。
「(もう恋などしないと、誓ったのに、)」
そしてレイは道を歩き出した。


それから数年、レイは旅を終え、それまで見て来た国の中で良いと思った国を再度回っていた。だが、数年前までは良い国で会った所も、この数年で変わっている所が多かった。
レイは、その様に成った国は諦め、次の国へ向かった。そして、レイが最後に残った希望の国、シュトレイユへの道を進んでいた。

「次の国が最後か、何も変わっていなければ良いのだが」
そんな事を言いながら森の道を進む。すでに日が傾き始めている。
「不味いな、このままではシュトレイユに付く前に夜になってしまう」
旅人にとって、この様な魔物の居る森で野宿をするのは自殺行為である。
レイがそんな事を考えていると、
『きゅあああーー!』
「!!」
行き成り、何処からともなく女の悲鳴が聞こえて来た。
「こっちか!」
レイが声のした方へ急いで走って行くと、一人の美しい女性が三十人くらいの山賊であろう男に追い詰められていた。
「ぐへへ、こいつはまた上玉だぜ!」
「ああ、まったくだ!あの綺麗な手足、そそるぜ!」
山賊たちはそんな事を言いながら女性にじりじりと近寄る。
「いやっ、こないで!」
女性は後ずさりしながら逃げていたが、とうとう大きな木の所に追いつめられてしまった。
「へへへ、さあ、もう逃げ場はないぜ」
「いや、誰か!」
「くくく、こんな森で助けを求めても無駄だ!」
そして、男たちは更に女性に近づく。
「もっ、もう我慢できない!」
一人の山賊が女性に飛びかかった。
「いただきマンモス!」
「誰か助けてーー!」
女性が叫んだ時だった。
「はあああっ!」
ドフッ
「がはっ!」
女性に飛びかかろうとしていた男が、横からの鋭い拳の突きにより近くの木まで吹き飛ばされた。
スタッ
そして、女性の前に一人の男が立つ。
「だっ、誰だてめえは!」
それは、
「貴様らに名乗る名前は、生憎持ち合わせてはいない!」
レイだった。そして、レイの姿を見た山賊の内数人が悲鳴を上げた。
「こっ、こいつ、あの時の!」
「まっ、間違いねえ!あの時の男だ!」
その場に居た山賊の内、悲鳴を上げた者は直ぐにレイに背を向け走り出した。
「おっ、おい!お前ら!」
あっと言う間に、その場に居た盗賊は、三十人くらいから十人くらいになってしまう。
「くそっ、何だってんだよ!あいつら!構わねえ、やっちまえ!」
一人の男が叫ぶが、
『・・・・』
誰も襲いかかろうとしない。
「なっ、何をやっている!」
再度男が叫ぶが、誰も動こうとしない。否、動けなかったのだ。
実は、その場に残った十数人の男たちは、最初に殴り飛ばされた男の状態を見て、足がすくんで動けなくなっていただけなのだ。そして、先ほどまで叫んでいた男もやっとのことでそれに気付く。
ピクッピクッ
最初に殴り飛ばされた男は、近くの木まで吹き飛ばされ、木に当たった後、手足を痙攣させながら気を失っている。
「あっ・・、あっ」
叫んでいた男も顔を青くしながら動けなくなった。
レイはそんな男たちに言った。
「早くその男を連れて立ち去れ!」
『ひっ!』
男たちは気絶した男を引きずりながら逃げて行った。そして、レイは木の所で此方を見ていた女性の方を向く。
レイは、女性をまじかで見て美しいと思った。光を反射する様な白い髪、人とは思えない様な白い肌、此方を見て来る蒼い瞳、どれもが美しかった。
「怪我は無いか?」
「あっ、はっはい!」
レイが話しかけると慌てながら答え、直ぐに立ち上がった。
「あのう、助けていただいて、ありがとうございました!」
立ち上がるなり女性は頭を下げた。
「頭を上げてください、私が勝手にやった事ですから」
「はあ」
女性は頭を上げた。
「では、私の家でお礼に一晩泊まって行ってください」
「えっ!いや、少し助けただけでそこまでしてもらう訳には」
レイは遠慮しようとするが、
「そう言わず!」
女性はレイに詰め寄る。
「男の人を夜の森に行かせる訳にはいきません!」
「え?」
レイは、そこで初めて周りが薄暗くなっているのに気がついた。
「私の家は直ぐ近くに有りますから!」
なおも女性はレイを引き止めようとする。その姿勢にレイは折れてしまう。
「では、一晩お世話になろうか」
「はい!」
女性はレイの腕を掴んで森の道を歩き始めた。
「そう言えば、貴方の名前を聞いていませんでしたね」
「あっ、そうでしたね。私の名前は・・・レンと言います」

暗くなりつつある森をレンに腕を引かれ少し歩くと、森の開けた所に一軒の家が見えて来た。
「着きました。さあ、中へどうぞ」
「では、失礼します」
レンに続きレイもその家に入る。
家の中には、キッチンと机などの家具が置かれているだけで、奥の方には扉が幾つかあるだけのシンプリな感じであった。
「椅子に座って少し待っていてください。直ぐに食事の準備をしますから」
「お構いなく」
レンはキッチンに行き、レイは鞄を降ろし椅子に座った。暫くするとレンが料理の乗った皿を持って来た。
料理は山菜を煮込んだものとスープとパンだった。
「では、いただきます!」
「いただきます」
二人は両手を会わせてから食事を始めた。レンの料理はどれも美味しかった。
食事を初めて暫くしてからレイは気に成っていた事をレンに聞く事にした。
「そう言えば」
「ふぇ?」
煮物を食べていたレンがレイの言葉に反応する。
「なぜ貴方は、こんな森に一人で住んでいるのですか?」
レイは、山賊や魔物達が居る森にこんな美しい女性が一人で住んでいると言うのも可笑しな話だと思っていた。
「え?ああ、それは〜」
レンは少し考えてから言う。
「じっ、実は私、少し前までこの森で両親と暮らしていまして」
「ほう」
「でも、その両親も数年前に病で亡くしてしまったんです」
「ああ、これは失敬、嫌な事を思い出させてしまいましたね」
「いえ、それで、近くの町にも行こうと思ったのですが、この家を捨てる事が出来ず、ここで暮らしているのです」
「この森では、どの様に暮らしているのですか?」
「小さな頃から此処に住んでいましたので、森の魔物達とは仲良くて、アルラウネに蜜を貰ったり、ドワーフたちと装飾品などを作って、それを近くの町に持って行って売ったりしています」
「なるほど」
レイは納得した様に頷いた。
「あ、あの〜、如何してそんな事を聞くのですか?」
「ああ、いや、魔物の中には、貴方の様な美しい姿に成って、男を誘い込む魔物も居ると聞いた事が有ったものですから」
ギクッ
「つい疑ってしまったのです。申し訳ない事を致しました」
「い、いえ」
「食事の手が止まってしまいましたね。折角の料理、冷めないうちにいただきましょう」
「そっ、そうですね」
そして、レイとレンは食事を再開した。

食事を終えるとレンに風呂を進められた。
「先にお入りになってください、私は奥で布団の準備をして来ますので」
「分かりました」
「では、ごゆっくり」
そう言うとレンは家の奥に行き、レイは風呂に向かった。

「よい、しょっと」
レンは誰かが泊まれるようにと用意していた布団を出して敷いて行く。
「(うふふ、あの人は今お風呂、助けてくれたお礼ですって言えば、背中くらい流させてくれるよね♪)」
綺麗な姿と裏腹に、頭は桃色の事を考えているレンがそこに居た。
「よし、出来上がり」
そして、布団を敷き終わったレンは扉に向かう。
「(そうと決まれば、急がなくっちゃ♪)」
少し浮かれているレンが部屋の出口を開けると、
「ふ〜、あっこれはレンさん、良いお湯でした」
ドサッ
レンが扱けた。
「あっ!すいません、驚かせてしまいましたか?」
扱けたレンをレイが気遣う。
「えっ、ええ少し。はっ早かったですね」
レンは立ちあがりながら言う。
「ええ、旅の後遺症の様な物で、誰かの家に止めてもらうと早風呂に成ってしまうんですよ」
「へっへぇ〜(うう、折角背中流しをしようと思ったのに)」

「ふぅ〜」
レンはレイと入れ替わりにお風呂に入った。そして、レンは体を洗い湯船に浸かりながら考える。
「(たっ、確かこう言う時、男の人って絶対覗きに来るって、前に来てたリリムさんが言って筈)」
その考えを元にレンは風呂に浸かって待つが、
「・・・・」
レイは来ない。
「もう少し待ってみようかな」
そして待つが、
「・・・・」
レイは来ない。
「もう少し・・」
更に待つが、
「・・・・」
レイは来る様子も無い。そして、
「無理、もう、げん・・か・・い」
湯船から上がり、体をタオルで拭き服を着てから、フラフラした足取りで浴室から出る。
「あっ、レンさん、長かったですね」
「はっはい、少し長風呂に成ってしまいました〜」
レイは椅子に腰かけ本を読んでいた。すでに終わり近くまで読まれていた。
「(道理で来ない、わけ・・ね)」
フラッ
長風呂で湯中りし、レンはその場に倒れそうになる。だが、
「レンさん!」
パシッ
それをレイが抱く様にして支える。
「(ああ、この感じ、あの時と同じだ)」
そして、レンは気を失った。

「うっ、う〜〜ん、はっ!」
気が付くとレンは自分のベッドに寝かされていた。
「気が付きました?」
ベッドの横には団扇でレンを煽るレイの姿があった。
「あっ!すいません、迷惑かけちゃって!」
「いえ、別段気にしてはいません」
「はあ、あれから私どの位寝ていましたか?」
「二時間くらいかと」
「もしかして、ずっとここに居ましたか?」
「はい」
「私の寝顔、見ちゃいました?」
「はい、とても可愛い寝顔でした」
「/////」
レンの顔が真っ赤になった。
「(わ、わわ私の寝顔、み、みみ見られちゃった。しっしかも、かっ可愛かったなんて!!)」
レンがそんな事を考えていると、
ボーン、ボーン
部屋に有った時計が鳴った。
「ええ、もうこんな時間ですか!」
既に時計の針は深夜を回っていた。
「そうですね、もう遅いですし、このまま寝た方が良いでしょう」
そう言うとレイは立ちあがった。そして、レンの部屋から出て行く。出て行くさいにレイは一度振り向きレンに一言
「では、おやすみなさい」
と言って自分の為に宛がわれた部屋に戻った。
「あっ!」
レンは何かを言おうとしたが、
バタン
それを言う前に扉が閉まった。

そして、夜遅く
キー
レイの寝ている部屋の扉が開いた。
「そーと」
暗闇の中からゆっくりと誰かが部屋に入って来た。そして、盛り上がった布団に近づく。そして、思いっきり布団を掴んで引っ張った。
「?!」
しかし、布団の中にはレイの鞄が置かれているだけだった。そして、侵入者が驚いていると首元に剣が突き付けられた。
「動かないでもらえますか」
それは、部屋の高い位置に張られたハンモックで寝ていたレイの剣先だった。
「どういう事か説明してもらおうか」
スタッ
レイはハンモックから降りると近くに置かれていたランプに明かりを灯す。すると、明かりで侵入者の姿が照らされた。
「レンさん」
侵入者はレンだった。
「なっ、なぜそんな所で寝ているのですか?」
レンは、レイの質問の前に自分の質問をレイにする。
「しぃーて言うなら、これも旅の後遺症の様なものです。私は、旅の途中で何度も民家に泊めて頂きましたが、一度も用意してくれた布団で寝た事は有りません。今夜の様に寝込みを襲われますから」
「そっ、そうでしたか」
「話しが逸れました。では、聞かせて貰いましょうか、貴方がこんな夜中にここに来た訳を」
「・・・・」
レンは少しの間押し黙った。
レイから見て此方の命が狙いで無いのは直ぐに分かった。なぜなら、レンの手には武器と呼べるような物が無かった為である。普通は、ナイフの一本も持っていそうなものなのだが、レンはそれすら待っている様子は無い。
レイがそんな事を考えていると、レンが頭を下げ口を開いた。
「すいませんでした!」
「えっ?」
「たっ、確かに私はレイさんの寝込みを襲おうとしました。でも、誤解しないでください!決して、貴方を殺そうとした訳ではありません!」
「・・・・わっ、分かりました」
行き成りの動作にレイは少々戸惑ってしまった。
「では、訳を話してもらえますか」
「はっ、はい、分かりました」
少し落ち着いたのか、レンはゆっくりと話し始めた。
「貴方は覚えていないと思いますが、私は貴方に命を助けられた事が有るのです」
「えっ!」
「その時は、私もまだ幼くて、良く分からなかったのですが、貴方に助けられた日から、私は貴方の事を時折思い出していました」
「・・・・」
レイの目を伏せた。それはまるで何かに耐えている様だった。
「それから数年して、貴方の事を思い出すと胸が苦しくなる様になってしまいました」
「・・・・・・・」
「そして、一年前、この感情がなんなのか分かりました」
「黙れ・・・」
レイは小さな声で何かを言ったがレンには聞こえなかった。
「この感情が、恋なのだと」
「それ以上喋るな・・」
「それから、私は貴方にもう一度会えるのを夢見てきました。そして、やっと会えたんです!」
「・・・・・」
「レイさん、私は・・・私は貴方の事が!」
「黙れ!」
「!!」
レイが行き成り叫んだ。
「もう喋るな、何も喋るな・・これ以上、私に、その様な優しい言葉を、かけるな!」
そう言うとレイは剣を突き付けたまま一歩後ろへ下がる。
「私は、今まで幾度となく、その様な言葉を信じて来た。しかし、どれも偽りだった」
レイの心の奥底に隠されていた感情が表に出た瞬間だった。
「信じていた母も、信頼していた友も、愛した女性の言葉さえも偽りだった」
今まで騙され続けてきたレイは、いつの間にか人に対する信頼と愛情と言う言葉を拒絶するように成っていた。
「そして、私は誓ったのだ。もう、人は信じないと、どんな言葉であろうと、人の言葉だけは、信じないと、そして、人は愛さないと」
レイは言いきった。そしてレイは、やっと正気に戻った。
「すまない、取り乱してしまった」
レイは剣を降ろし、俯きながらレンに謝った。
「驚かせてしまったが、今のが、私の本心です。だから、貴方の思いに答える事はで―――」
レイが『出来ない』と言おうとした時だった、
「人でなければ良いのですね?」
レンの言葉がそれを遮った。
「えっ?」
次の瞬間、レンの姿が光りに包まれた。
「うっ!」
余の眩しさにレイは目を閉じた。そして、目を開けると、
「!!」
そこにレンの姿は無かった。その代わり、下半身が白い馬で上半身が人、そして額に一本の角が生えた女が居た。それは間違いなくユニコーンだった。
「おっ、お前は!」
行き成りのことでレイは少し動揺したが、レイはその姿に覚えが有った。
「コハク、なのか?」
「はい」
それが、数年前にこの森でレイが助けたユニコーンの子供、コハクだった。
「覚えてくれて、いたのですね」
「・・・・あっ、ああ」
「うふ、嬉しい」
良く見ると今までは服で見えなかったが、手首にはあの時レイが足に巻いてやったハンカチが巻かれていた。
「なっ、なぜ人の姿をしていたんだ?」
「この姿で旅人の前に出ると、人は直ぐに逃げてしまうので、貴方にも逃げられてしまうのでは無いか思って」
「なっ、なるほど」
確かに、旅人にとって魔物との遭遇はとても危険な事である。その為、殆どの旅人は魔物に遭遇すると全力でその場から逃げる。増してや、レイならばコハクが声をかける頃にはその場には居ないだろう。
そして、レイが落ち着くと、
「レイさん」
「はい」
ポフッ
コハクが行き成り抱きついて来た。
「私は貴方の事が好きです」
「・・・はい」
「もし、貴方が私を受け入れてくれるなら、抱きしめてください。もし、無理なら、突き放してください。そうしてくれれば、私は貴方を諦めます」
「・・・分かりました」
そして、コハクは目を閉じて待つ。すると、レイが手を伸ばした。しかし、その手は、コハクの後ろには行かず、コハクの肩を掴んでコハクを体から離した。
「(やっぱり、無理か)」
コハクが諦めた時だった。
スッ
先ほどまでコハクの肩を掴んでいた手がコハクの頬に触れた。
「(え?)」
そして、
チュッ
不意にコハクの唇に何かが触れた。それは、温かく柔らかい物だった。
「(!!)」
驚いて目を開けると、目の前にはレイの顔が有り、レイの唇とコハクの唇は触れあっていた。
「んっ!んーーんん!っは!」
そして、触れていた二人の唇が離れる。
「これが、私の答えです」
「え?」
ガシッ
今度はレイがコハクを抱きしめた。そして、コハクの耳元で囁く。
「実は、初めて貴方と出会ったあの日、貴方を見て、私はドキドキしていました。その時は、何を考えているのだと思っていました。でも、私も今なら分かります。あの感情の意味が」
「・・・・」
「私は、貴方に引かれていたのだと。貴方の事が好きになっていたんだと」
レイは抱きしめる力を強くした。
「コハクさん、私も貴方が好きです」
「〜〜〜〜!」
コハクの目から涙が零れた。そして、コハクもレイの背中に手を回し抱きしめた。
「私も、ひくっ、貴方の事が、ひくっ、好きです、ひくっ、大好きです!」
そして、そのままコハクが泣きやむまで二人は抱き合っていた。

コハクが泣きやんだのは数分後の事だった。
「もう良いのかい?」
レイはコハクに聞く。
「はい、もう良いです。それに、これから遣る事があるので」
「遣る事?」
レイがコハクの言葉の意味が良く分からなかった。
「レイさん、私のお願いを聞いてくれますが」
「はい、何なりと」
「私を・・・抱いてください」
「・・・・」
コハクな顔が真っ赤になり、レイの頭を混乱した。
「駄目・・ですか?」
コハクはレイを上目遣いで見る。そして、レイはその上目遣いにあっさり折れる。
「コハクさんがそれを望むのなら」
「お願いします」
「分かりました」
そして、二人は身に着けていた服を脱ぎ、生まれたまま姿に成った。
「実は、私はこう言う事をするのは初めてなので、少し手荒に成ってしまうかもしれないが」
「大丈夫です。私も、初めてですから」
「・・・そうかですか」
そう言って、再びキスを交わす。
ユニコーンの姿となったコハクの背は、レイより少し高い位なので下半身は座った様な形に成っている。レイはコハクの口の中に舌を入れ、コハクの舌と絡める。
すると、コハクがレイの手を自分の胸に持って行った。レイもそれに答えコハクの胸を揉む。
「んっ・・んちゅ・・はむっ・・ちゅ・・ううん♪」
そのやり取りを少し続ける。
「レイさん、そろそろ準備が出来たようです」
そう言うと、今度がレイの手を自分の秘部に持って行く。
ヌチョ
「あんっ♪」
レイが秘部に触れるとしっとりと濡れていた。
「その様ですね」
「レイさんも、準備出来たようですし♪」
コハクがレイのそそり立つ逸物を見ながら言う。
「はい」
そして、レイは自分の逸物をコハクの秘部に宛がう。
「行きます」
「はい、来てください」
そして、レイは逸物をゆっくりと入れて行く。
「うっ・・うんっ・・!」
コハクは逸物が入って行くに従って、少し悶える。
「レっ、レイさん」
「はい」
「一気に・・入れてください」
「・・・分かりました」
レイはコハクの言うとうり、少し力を入れ、一気に逸物を入れた。
「ああんっ!」
「くっ!」
そして、一気に奥に到達する。すると、コハクの秘部から少し血が出た。
「はぁ・・はぁ・・」
「大丈夫ですか?」
「は・・はい、構わずに・・・続けてください」
「分かりました」
レイは、そのまま逸物を出し入れする。
「はぁ・・はぁ・・はぁ」
「あっ、はぁっ・・・んぁ、すごい・・・ん」
レイが動くたびにコハクが甘美な声を上げる。
「はぁ、はぁ、コハクさん、もう、出そうだ!」
「はいっ、出してください、レイさんの子種を、私の中に!」
「くっ!出る!」
「んぁぁぁぁぁっ!」
ドビッ、ビュッ・・・
そして、レイとコハクは同時に絶頂を迎え、レイの精子がコハクの中へと注ぎ込まれる。
「はぁ・・はぁ・・」
「はぁ・・はぁ・・」
二人は少しそのままの形で少しの時間を過ごした。
「レイさん」
「何でしょう?」
「まだ、終わりじゃないですよね♪」
「・・はい」
その後も二人は何度か肌を合わせ、夜が明ける頃には二人とも力尽き、レイの為に用意されていた布団に倒れて眠りについていた。

二人が起きたのは昼過ぎだった。
レイは、寝たままの状態でコハクと向き合う。そして、自分の過去を話し始めた。
「私の家は、武術の名家でした。父は真面目で、よく私に剣の稽古をつけてくれた。しかし、母は駄目な人間でした。働きもせず、父の稼いだ金で道楽をする様な人だった。そんなある日、私の家に数人の男が来ました。そいつらは奴隷商人だった。私はそいつらに拘束され、馬車に乗せられた。そして、俺は驚く物を見ました」
「驚く物?」
「その男たちから金を受け取っている母の姿です」
「えっ!」
「母は、俺を奴隷商人に売ったのです!」
「それから、どうなったんですか?」
「私は、奴隷商人達の隙を見て逃げ出しました。そして、家に帰えりました。そしたら、母は父にこう言っていた。『行き成り男たちが入ってきてレイを』と、私はそんな母を恨んだ。その後、私が帰って来た事によって、母の目論見はばれ、母は処刑されました」
「・・・・」
「それから数年、私は騎士団に入り、そこで、ある男と友達になった。お互い、戦場で戦果をあげて行った。しかし、そいつは戦場で私を斬ろうとした」
「どうして!」
「手柄を一人占めしようとしたのだ。そして、私はその友を斬った。私は、友の裏切りに絶望した」
「・・・・」
「そんな私を励ましてくれた女が居た。そのお陰で、私は少し立ち直る事が出来た。そして、私はその女と恋をした。しかし、その女も、母と似た様なものだった。女は私の家柄と金が目的で私に近づいていたのです。そして、その情報を聞いた日、私は迷うことなく女を斬った。そして、」
「貴方は誰も信じられなくなった・・」
「・・・はい」
「そして、それが貴方の心の傷となった」
レイは何も言わず、一度だけ頷いた。すると、コハクがレイの顔を胸元に抱きよせた。
「私の治癒魔法では、レイさんの心に出来た傷は癒せません。でも、必ず私が癒して見せます。レイさんの心に出来た傷を、これから、一生掛かっても、必ず」
「コハクさん・・」
「もう〜、レイさん、私の事は、コハクっと読んでください」
「ふっ、では、これからも、よろしく頼みますよ。コハク」
「はい、あ・な・た♪」
そして、二人は抱きしめ合い、口づけを交わす。

それから数年、
「せいっ!やあっ!」
「たあっ!うりゃ!」
キンッ、カンッ、キンッ
とある広場で兵士たちが戦っていた。
皆は、二つのチーム同士で旗の取り合いをしていた。そして、
「よしっ!青組の旗を取ったぞ!」
兵士の一人が青い旗を掲げる。
「よし!そこまでだ!」
その訓練を見ていた訓練教官の声で兵士たちは戦いを止める。
「総員!整列!」
一人の兵士の掛け声で教官の前に兵士たちが整列する。
「皆、よい戦いだった。赤組は今回の勝利を胸に秘め、青組は今回の敗北を糧に更に努力する様に、以上!」
「レイ教官に、礼!」
『ありがとうございました!』

あの後、レイとコハクは一年ほど森で過ごしたが、レイの願いにより、二人はシュトレイユに移り住む事にした。
レイたちはシュトレイユに着いて驚いた。
国には、人と魔物が入り乱れていたのだ。
前にレイが来た時は、魔物などは居ない以前に国に魔物を入れる事自体が禁止だった。
レイが門番に理由を聞くと、その理由は簡単なものだった。
シュトレイユを納めていた王の息子が魔物と結婚したため、国自体が魔物の受け入れを始めたのだ。
そのお陰で、レイたちは直ぐに町に馴染む事が出来た。
レイは国の騎士団に入った。すると、レイの強さを見た王に言われ、レイは強い兵士を育てる為の訓練教官に任命された。
コハクはと言うと、町で小さな診療所を遣っている。

「パパ〜」
「うん?」
レイが声に反応して後ろを向くと、
ポフッ
「おっと」
レイのお腹にユニコーンの子供が飛び込んできた。
「こらこら、行き成り飛びつくと危ないじゃないか。レン」
そう、この子は、レイとコハクの子供でレン、その姿は初めてレイが見たコハクによく似ている。
「あっ、ごめんなさい」
レンの耳が下を向きシュンとなる。
「分かればよろしい」
そう言ってレイはレンの頭を撫でる。
「えへへ」
すると、レンは元気を取り戻す。
その姿を数人の兵士が見ている。
「流石の鬼教官も、娘の前では甘いな」
「ああ、確かにな」
兵士がそんなこそこそ話をしていると、
ヒュッ、ガスッ
レイの剣が勢い良く飛んできた。
「聞こえているぞ」
『ひーー!』
そんな事をしていると、
「終わりましたか?」
訓練が終わった広場にコハクが遣って来た。
「ああ、何時もの様に手当てしてやってくれ」
「はい、来なさい、レン」
「は〜い」
そう言うとコハクはレンを連れて負傷兵の所へ行く。
「怪我をされている方は此方に並んでください」
コハクは言うと負傷兵達はコハクとレンの前に並ぶ。これが何時もの光景なのだ。
簡単な話、レイが訓練で兵を壊し、コハクがそれを直す。
これが、レイが訓練教官に選ばれた理由の一つである。因みに、レンはコハクに治癒魔法を教えて貰っている最中である。
そして、負傷兵の治療が終わるとコハクとレンが帰って来た。
「終わったか?」
「はい、終わりました」
「そうか」
レイは兵士たちの方を向いて言う。
「では、これにて解散!」
『お疲れさまでした』
レイは兵士たちに号令をかける。そして、レイたちは並んで帰り始める。すると、レンが二人の間に入りレンの右手とコハクの左手を握った。
「パパ、ママ、帰ろう」
「ああ、」
「うふふ、はいはい」
そして、レイたちは家への道を歩き始めた。
「貴方」
「うん?」
レイ歩いていると不意にコハクが話しかけて来た。
「今、幸せですか?」
「私の顔が不満そうに見えるのか?」
「いいえ・・・それでも、貴方の口から聞かせてください」
コハクはニコリと笑い、レイは『ふ〜』少々溜め息を漏らす。そして、レイも笑顔で答える。
「ああ、とても幸せだ!」
二人の手には指輪が光る。

END
11/10/30 16:57更新 / アキト

■作者メッセージ
小説は初めてで、誤字脱字が在るかも知れませんが、頑張って書きました!読んでください!

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