2つの油断
ここはとある冒険者ギルドのクエスト受注場。
そこの受付窓で、一人の屈強な冒険者が受付嬢からクエストの依頼を探していた。
彼の名はテイン。数々のクエストをこなし、冒険者暦は10年というベテランで、ここのギルドでは知らない者はいないと言って過言ではない、有名な冒険者だ。
鍛え上げられた筋肉はとっても野性的で、彼の傷だらけの厳つい顔を引き立たせる立派なアクセントとなっている。ただそのせいで女性にはあまりもてず、とうとう一昨日、27歳を迎えてしまった。
「何か良い依頼はないかい?」
「んーテインさんクラスになると中々良い依頼ってそうそうないんですよぉ〜。 最近は高額な依頼もこないですしねえ」
「ぬぅ…どんな依頼でもいい、最近金欠気味で金を稼がないとやばいんだ」
テインは近頃、趣味の釣りばかりしていてまったく働いていなかったのである。気づけば手元にはほんの一握りの金しかなく、流石に不味いと思った彼は急いで冒険者ギルドに駆けつけた次第である。
しかしそういう時に限って、良い依頼が無いというのは、最早お約束というものであった。
「どんな依頼もですか…あるといえばあるのですが」
「おお、何だ見せてくれ」
受付嬢は怪訝な顔をしながら、机の引き出しから依頼書を取り出し、テインに受け渡した。
「・・・・・・オークの討伐か」
「えぇ、近頃ここら近辺の森で多数目撃されているんですよ。しかも、商業者の物資を荒らしてまわってるんだとか。商業者事態に被害は及んでないのですが…」
「そこからが問題なんだな」
「・・・はい。なんでも護衛についてた冒険者だけが無事ではないみたいなんです。皆、精気を抜かれた顔をして、まったく動かないんです。さらに聞いた話によると、行方が分からなくなっている者もいるんだとか・・・」
「それでも受けてみますか?」
「余裕」
「だと思いましたよ」
まったく動じていないテインに、受付嬢は呆れたように笑いながらもほっとした表情を見せた。
流石、10年も冒険者として生きているだけあって、肝が据わっている。そんなテインを見て受付嬢は安心したのであろう。
「では依頼場所の地図を渡します。出発は何時するんですか?」
彼女から地図を受け取ると、にぃっと口元を歪ませてこう言った。
「そんなの決まっている。今からだ」
あっけにとられている受付嬢を背に、テインはギルドを後にした。
「(ここか)」
地図に示された場所は、ギルドから約15kmほど離れた森林地帯。そこはギルドがある街と、他の街との物資を運搬するには欠かさず通らなくてはならないルートで、長年商業者が通っていたせいか、自然と森の中に道が出来ている。
「(さて、オークを探すとするか)」
オーク達はこの道を通る商業者達を狙っているのだから、ここを歩いていけば自然と襲ってくるだろう。テインはそう考え、薄暗い森の道をゆっくりと歩いていった。
「(いねぇー……)」
探索を始めて約六時間。
一向に目的のオークの気配はない。時折木や茂みが動き、臨戦態勢に入るがしかし、正体は小動物や野鳥であった。
何時何処から襲ってくるか分からない魔物に、神経を六時間も研ぎ澄まし続けるのは、流石のテインも精神的な疲労が隠せなかった。
更に日が暮れてきたのである。テインは夜の森がどれほど危険なものかを熟知していたため、今日の探索は切り上げ安全な場所での野宿を考え始めていた。
テインの集中力が薄れてきたその時である。
10m先の大木の根元に、真っ黒なマントを全身に纏わり付け、頭を隠すように蹲っている人らしき物体が目に止まった。
「(こんな森の奥に人…?)」
オークの罠か。と疑いを持ったが、近づくにつれ、すすり泣くような声が聞こえたのである。このとき初めてその人らしき物体が女性だと確信し、すっかりと警戒心を解いてしまった。
テインは、山奥に強引に連れて行かれ強姦でもされたのではないかと心配になり、すぐさまその女の下に駆け寄り声をかけた。
「お、おい大丈夫か?」
「うっ…く・・・っひく…」
「何があった? 乱暴でもされたのか?」
落ち着かせる口調でゆっくりと話しかけ、背中をさする。すると女は落ち着きを取り戻し、か細い小さな声で喋り始めた。
「さがしているの……」
「…? 何をだ?」
「とっても、とーっても大切なもの…」
「・・・?」
女は少し間を置き、口を開いた。
「私達のお婿さん♪」
直後マントの中から女の握りこぶしが勢いよく飛び出し、テインの腹部にクリーンヒットした。その衝撃で後方へ約6mぶっ飛び、地面に倒れこんだ。激しい痛みがテインを襲い、悶絶する。
「うっぐおぉお…!」
「えへへー、油断したねお兄さん」
女は身にまとっていたマントを取り払い、自分の正体をあらわにした。
薄ピンク色の肌に、頭から生える豚のような大きな耳、むちっとしている尻から生えるくるくるとした尻尾。
テインが討伐する予定であったオークそのものであった。
「っく・・・っはぁ、まったくだっ」
腹部の激痛で顔を歪ませながらも、ゆっくりと立ち上がる。足腰がふらついている。相当ダメージを貰ったようだ。
「うんうん、その通り! こんな山奥で女の人なんて泣いてるわけないでしょ! しかも顔も確認しないくせに無闇に近づきすぎー!」
「くっははっ…、泣いてる女性を…ほおっておく…ほど冷たい人間じゃ…ないんでね」
「へぇー、その厳つい体と顔に似合わず優しいんだね。っていうかこの後どうなるか分かるかなぁ?」
魔物が『お婿さん』というからには大体の想像はついた。テインはようやく静まってきた痛みに落ち着きを取り戻し、自分の体制を立て直した。
「・・・ふん、俺を強姦する気か?」
「うん正解ー♪ でもそれだけじゃないんだなぁ。」
オークは口に手をあて、にししと笑う。不覚にも可愛いと思ってしまった。
「私達オークは群れで行動するんだけど、ある程度の年齢になったらその群れから離れて、自分の群れを持つようになるの。でね、どうせなら強い雄の精子で赤ちゃん孕みたいなあーって思うじゃん。そのために一度私達と戦って、強いと判断したら、お婿さんとして死ぬまで一緒に暮らすのー♪ ね?素敵でしょ?」
なるほど。とテインは思った。このオークの言う事が本当ならば、行方不明の冒険者がどこへ行ったか見当が付く。恐らく種付け役として、オークに連れさらわれたのだ。精気を失って発見された冒険者は、夫としては不合格だが、精だけはたっぷりと絞られたのであろう。
「生憎、俺はお前のお婿さんになる気はないよ」
「んふふー、それはお兄さんが決めることじゃないよ。 私達がゆっくりその気にさせてあ・げ・る♪」
オークは獲物を狙うかのような足取りで、じりじりとテインとの距離を詰める。
テインはふーっと鼻でため息をつくと、じろりとオークを睨みつけた。
「んじゃ、ちょっと抵抗してみようかな」
「えへへ、鎧も武器も持ってないくせになにいってんの? まさか素手で私達と戦うつもり?」
「―――そのとおりだっ」
刹那、オークの視界からテインの姿が消えた。
「あっ! 消えた!?」
慌てて辺りをきょろきょろと見回すも、姿が確認できない。しかし、地面を蹴る足音だけはしっかりと確認できる。恐らく高速で移動をしているのだ。しびれを切らしたオークが叫び声をあげる。
「どこいった! でてこーい!」
「ここだっ!」
はっとして振り返るが既に遅し。今度はテインの拳がオークの腹部にクリーンヒットした。そのままオークは2〜3mぶっ飛び、地面に仰向けに倒れこむ。
すかさずテインはそのオークの上に跨り、両手を押さえつけた。その光景は大男が女性を襲っているようにも見える。
「お返しだ。効いたろ?」
「ゲホッ! …えへへ、容赦…ないなぁ」
「そりゃそうだ。俺はお前を討伐しにきたんだからな。…たけど、俺は魔物を殺したことが無い。素直にこの森から立ち去るなら直ぐに開放してやるぞ。それでも立ち去らないというなら…分かるな?」
テインは押さえつけているオークの手をぎゅっと強く握った。
テインは長年多くの魔物の討伐依頼をこなしてきたが、一度も殺したことがない。それは彼の戦闘スタイルが素手という点もあるが、魔物の姿が女性だからという点もあった。どうも女を殺すのは己の心情が許さないからである。なので、戦闘能力がなくなる程度ダメージを与えたら、その場で説得し、依頼された場所から立ち去らせるというのがテインの何時ものパターンだった。
「えへへ、やっぱり優しいんだね…。そのうえ強いなんてますますお兄さんの事好きになっちゃいそう・・・」
苦痛に耐えながらも、テインに向かって微笑むオークに、思わず赤面してしまった。
改めて近くで見ると、美人であると分かる。幼いながらもどこか妖艶な雰囲気を滲ませている顔立ちはテインの好みのタイプであった。
更に先程までは意識していなかったが、跨っている自分のごつい太もものせいで、オークのむちむちとした柔らかい胸が形を変えられている。そんな事を考えているとますます顔が赤くなってしまった。
「と、とにかく速く立ち去れ。いいな?」
そんなテインの言う事に反して、オークはにやりとした表情を見せた。
「お兄さん〜さっきから大事なこと忘れてない?」
「な、何だ?」
「会った時から『私』じゃなくて『私達』っていってるよねぇ〜」
「…っ! しまっ―――」
「「おやすみ〜♪」」
テインが慌てて振り返った直後、彼の視界は二匹のオークの拳で覆われていた。
どさっと跨っていたオークに倒れこむテイン。薄れいく意識の中で彼が聞いたのはオーク達の卑劣な笑い声だった。
そこの受付窓で、一人の屈強な冒険者が受付嬢からクエストの依頼を探していた。
彼の名はテイン。数々のクエストをこなし、冒険者暦は10年というベテランで、ここのギルドでは知らない者はいないと言って過言ではない、有名な冒険者だ。
鍛え上げられた筋肉はとっても野性的で、彼の傷だらけの厳つい顔を引き立たせる立派なアクセントとなっている。ただそのせいで女性にはあまりもてず、とうとう一昨日、27歳を迎えてしまった。
「何か良い依頼はないかい?」
「んーテインさんクラスになると中々良い依頼ってそうそうないんですよぉ〜。 最近は高額な依頼もこないですしねえ」
「ぬぅ…どんな依頼でもいい、最近金欠気味で金を稼がないとやばいんだ」
テインは近頃、趣味の釣りばかりしていてまったく働いていなかったのである。気づけば手元にはほんの一握りの金しかなく、流石に不味いと思った彼は急いで冒険者ギルドに駆けつけた次第である。
しかしそういう時に限って、良い依頼が無いというのは、最早お約束というものであった。
「どんな依頼もですか…あるといえばあるのですが」
「おお、何だ見せてくれ」
受付嬢は怪訝な顔をしながら、机の引き出しから依頼書を取り出し、テインに受け渡した。
「・・・・・・オークの討伐か」
「えぇ、近頃ここら近辺の森で多数目撃されているんですよ。しかも、商業者の物資を荒らしてまわってるんだとか。商業者事態に被害は及んでないのですが…」
「そこからが問題なんだな」
「・・・はい。なんでも護衛についてた冒険者だけが無事ではないみたいなんです。皆、精気を抜かれた顔をして、まったく動かないんです。さらに聞いた話によると、行方が分からなくなっている者もいるんだとか・・・」
「それでも受けてみますか?」
「余裕」
「だと思いましたよ」
まったく動じていないテインに、受付嬢は呆れたように笑いながらもほっとした表情を見せた。
流石、10年も冒険者として生きているだけあって、肝が据わっている。そんなテインを見て受付嬢は安心したのであろう。
「では依頼場所の地図を渡します。出発は何時するんですか?」
彼女から地図を受け取ると、にぃっと口元を歪ませてこう言った。
「そんなの決まっている。今からだ」
あっけにとられている受付嬢を背に、テインはギルドを後にした。
「(ここか)」
地図に示された場所は、ギルドから約15kmほど離れた森林地帯。そこはギルドがある街と、他の街との物資を運搬するには欠かさず通らなくてはならないルートで、長年商業者が通っていたせいか、自然と森の中に道が出来ている。
「(さて、オークを探すとするか)」
オーク達はこの道を通る商業者達を狙っているのだから、ここを歩いていけば自然と襲ってくるだろう。テインはそう考え、薄暗い森の道をゆっくりと歩いていった。
「(いねぇー……)」
探索を始めて約六時間。
一向に目的のオークの気配はない。時折木や茂みが動き、臨戦態勢に入るがしかし、正体は小動物や野鳥であった。
何時何処から襲ってくるか分からない魔物に、神経を六時間も研ぎ澄まし続けるのは、流石のテインも精神的な疲労が隠せなかった。
更に日が暮れてきたのである。テインは夜の森がどれほど危険なものかを熟知していたため、今日の探索は切り上げ安全な場所での野宿を考え始めていた。
テインの集中力が薄れてきたその時である。
10m先の大木の根元に、真っ黒なマントを全身に纏わり付け、頭を隠すように蹲っている人らしき物体が目に止まった。
「(こんな森の奥に人…?)」
オークの罠か。と疑いを持ったが、近づくにつれ、すすり泣くような声が聞こえたのである。このとき初めてその人らしき物体が女性だと確信し、すっかりと警戒心を解いてしまった。
テインは、山奥に強引に連れて行かれ強姦でもされたのではないかと心配になり、すぐさまその女の下に駆け寄り声をかけた。
「お、おい大丈夫か?」
「うっ…く・・・っひく…」
「何があった? 乱暴でもされたのか?」
落ち着かせる口調でゆっくりと話しかけ、背中をさする。すると女は落ち着きを取り戻し、か細い小さな声で喋り始めた。
「さがしているの……」
「…? 何をだ?」
「とっても、とーっても大切なもの…」
「・・・?」
女は少し間を置き、口を開いた。
「私達のお婿さん♪」
直後マントの中から女の握りこぶしが勢いよく飛び出し、テインの腹部にクリーンヒットした。その衝撃で後方へ約6mぶっ飛び、地面に倒れこんだ。激しい痛みがテインを襲い、悶絶する。
「うっぐおぉお…!」
「えへへー、油断したねお兄さん」
女は身にまとっていたマントを取り払い、自分の正体をあらわにした。
薄ピンク色の肌に、頭から生える豚のような大きな耳、むちっとしている尻から生えるくるくるとした尻尾。
テインが討伐する予定であったオークそのものであった。
「っく・・・っはぁ、まったくだっ」
腹部の激痛で顔を歪ませながらも、ゆっくりと立ち上がる。足腰がふらついている。相当ダメージを貰ったようだ。
「うんうん、その通り! こんな山奥で女の人なんて泣いてるわけないでしょ! しかも顔も確認しないくせに無闇に近づきすぎー!」
「くっははっ…、泣いてる女性を…ほおっておく…ほど冷たい人間じゃ…ないんでね」
「へぇー、その厳つい体と顔に似合わず優しいんだね。っていうかこの後どうなるか分かるかなぁ?」
魔物が『お婿さん』というからには大体の想像はついた。テインはようやく静まってきた痛みに落ち着きを取り戻し、自分の体制を立て直した。
「・・・ふん、俺を強姦する気か?」
「うん正解ー♪ でもそれだけじゃないんだなぁ。」
オークは口に手をあて、にししと笑う。不覚にも可愛いと思ってしまった。
「私達オークは群れで行動するんだけど、ある程度の年齢になったらその群れから離れて、自分の群れを持つようになるの。でね、どうせなら強い雄の精子で赤ちゃん孕みたいなあーって思うじゃん。そのために一度私達と戦って、強いと判断したら、お婿さんとして死ぬまで一緒に暮らすのー♪ ね?素敵でしょ?」
なるほど。とテインは思った。このオークの言う事が本当ならば、行方不明の冒険者がどこへ行ったか見当が付く。恐らく種付け役として、オークに連れさらわれたのだ。精気を失って発見された冒険者は、夫としては不合格だが、精だけはたっぷりと絞られたのであろう。
「生憎、俺はお前のお婿さんになる気はないよ」
「んふふー、それはお兄さんが決めることじゃないよ。 私達がゆっくりその気にさせてあ・げ・る♪」
オークは獲物を狙うかのような足取りで、じりじりとテインとの距離を詰める。
テインはふーっと鼻でため息をつくと、じろりとオークを睨みつけた。
「んじゃ、ちょっと抵抗してみようかな」
「えへへ、鎧も武器も持ってないくせになにいってんの? まさか素手で私達と戦うつもり?」
「―――そのとおりだっ」
刹那、オークの視界からテインの姿が消えた。
「あっ! 消えた!?」
慌てて辺りをきょろきょろと見回すも、姿が確認できない。しかし、地面を蹴る足音だけはしっかりと確認できる。恐らく高速で移動をしているのだ。しびれを切らしたオークが叫び声をあげる。
「どこいった! でてこーい!」
「ここだっ!」
はっとして振り返るが既に遅し。今度はテインの拳がオークの腹部にクリーンヒットした。そのままオークは2〜3mぶっ飛び、地面に仰向けに倒れこむ。
すかさずテインはそのオークの上に跨り、両手を押さえつけた。その光景は大男が女性を襲っているようにも見える。
「お返しだ。効いたろ?」
「ゲホッ! …えへへ、容赦…ないなぁ」
「そりゃそうだ。俺はお前を討伐しにきたんだからな。…たけど、俺は魔物を殺したことが無い。素直にこの森から立ち去るなら直ぐに開放してやるぞ。それでも立ち去らないというなら…分かるな?」
テインは押さえつけているオークの手をぎゅっと強く握った。
テインは長年多くの魔物の討伐依頼をこなしてきたが、一度も殺したことがない。それは彼の戦闘スタイルが素手という点もあるが、魔物の姿が女性だからという点もあった。どうも女を殺すのは己の心情が許さないからである。なので、戦闘能力がなくなる程度ダメージを与えたら、その場で説得し、依頼された場所から立ち去らせるというのがテインの何時ものパターンだった。
「えへへ、やっぱり優しいんだね…。そのうえ強いなんてますますお兄さんの事好きになっちゃいそう・・・」
苦痛に耐えながらも、テインに向かって微笑むオークに、思わず赤面してしまった。
改めて近くで見ると、美人であると分かる。幼いながらもどこか妖艶な雰囲気を滲ませている顔立ちはテインの好みのタイプであった。
更に先程までは意識していなかったが、跨っている自分のごつい太もものせいで、オークのむちむちとした柔らかい胸が形を変えられている。そんな事を考えているとますます顔が赤くなってしまった。
「と、とにかく速く立ち去れ。いいな?」
そんなテインの言う事に反して、オークはにやりとした表情を見せた。
「お兄さん〜さっきから大事なこと忘れてない?」
「な、何だ?」
「会った時から『私』じゃなくて『私達』っていってるよねぇ〜」
「…っ! しまっ―――」
「「おやすみ〜♪」」
テインが慌てて振り返った直後、彼の視界は二匹のオークの拳で覆われていた。
どさっと跨っていたオークに倒れこむテイン。薄れいく意識の中で彼が聞いたのはオーク達の卑劣な笑い声だった。
10/08/11 03:09更新 / 365