後編(PART2)
昔、私はここから遠く離れた親魔物領のちいさな街に住んでいました。
そして、当時私には付き合っていた男性がいました。
一緒に出歩き、一緒に食事をし、一緒に笑いあう・・・それだけで幸せな毎日でした・・・。
しかし、ある日私はサキュバスに襲われました・・・。
「いや!誰か、助けて!!!」
私は必死で抵抗するが、拘束魔法を掛けられ身動きできない状態にされてしまった。
「うふふ♪そんなに怖がらなくても大丈夫よすぐに気持ちよくなるんだから♪♪そしてあなたも私の仲間になるのよ♪♪♪」
サキュバスは通常男性に襲い掛かり、精を搾取する魔物です。しかし、時にサキュバスは仲間を増やす為に女性を襲うことがあるのです。
・・・・・・・・・・私はそれに選ばれてしまいました・・・・・・・・・・
「いやぁ・・・サキュバスになんてなりたくない・・・お願い・・・助けて・・・」
「くすくす・・・♪嫌よ・・・せっかくかわいい娘を見つけたんだもの・・・絶対に逃がさないわ」
そう言ってサキュバスは尻尾を私の秘所にあてがいました・・・私をサキュバスに変えるための魔力を送り込むために・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・サア、ワタシトイッショニナリマショウ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いやああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その後、私は両親の捜索願いで駆けつけた自警団に救出された後、都市の大病院へと運ばれました・・・。しかし、その時すでに私はレッサーサキュバスとなっていました・・・。
通常であればサキュバス化が急速に進み、いずれは欲望のままに精を求める完全なサキュバスへとなるはずでした・・・。
しかし、検査の結果驚くべきことが発覚したのです・・・私には何万人に一人にしか持っていないとされる対サキュバス化の因子を持っていたのです・・・。
だから私はサキュバス化の進行が非常に遅く、レッサーサキュバスでありながら性欲をコントロールができ、ディオーレとしての人格を損なうこともありませんでした。
それから、しばらくの間この因子の調査・研究の為に病院での生活を余儀なくされました・・・。
数ヶ月後、ようやく私は退院することができ、自分の街に帰る事ができました。
レッサーサキュバスとなってしまった私を家族も友達も暖かく迎え入れてくれました・・・。それがとても救いになりました・・・。
けれど、彼は違いました・・・。
以前とは別人の様に私に対して冷たく接するようになり、距離をおく様になったのです・・・。
・・・・・理由は察しがつきました・・・・・けれど、それを言う勇気はありませんでした・・・・
そして遂に「その日」が来たのです・・・・その日私は近くの公園に彼から呼び出されました・・・そして・・・・
「もう、終わりにしよう・・・」
彼から別れを切り出されました・・・
「そんな・・・・なんで?・・・・どうして・・・・??」
なんとなく予感はしていました・・・でも、それでも納得ができず、私は彼を問いただしました・・・。
「僕はもう、君のことをディオーレとして接することができないんだ・・・いくら君が特別だからといっても、いずれは完全なサキュバスとなるんだろう?そうなれば、君と関わりを持てば、僕はインキュバスになってしまう・・・人間としての人生を・・・平穏な日常を失ってしまう・・・それが嫌なんだ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
何も・・・・・いえませんでした・・・・。そう、今は良くてもいずれ時間が経てばサキュバス化は進み、やがて私は正真正銘サキュバスとなってしまう。
現在の医療技術ではサキュバス化を止めることもサキュバス化した女性を人間に戻すことはできない。
そうなれば、いくら自我をコントロールできたとしても、やはり彼を求めてしまうだろう・・・そしてインキュバスにしようとしてしまう・・・彼と一生交わり続けたいと願ってしまう・・・彼から人間としての平穏を奪ってしまう・・・
そんな事、私にはできない・・・・・・そんな権利・・・私には・・・無い・・・・・・・・
もし私が因子を持っていなければ、欲望のままに彼を求め、誘惑し、襲い、彼をインキュバスにしようとしたでしょう。でも、因子を持ってしまった私の心は人間であった頃のディオーレのままでした・・・。
彼を悲しませたくない・・・・・・・・・
彼の望まないことをしたくない・・・・・
だったら彼の言う通り、別れてしまったほうがいい・・・・・
そう思ったのです・・・・・
こうして私と彼は別れました・・・
彼が去った後、誰もいなくなった公園のベンチで私は人目をはばからず泣きました・・・
・・・泣いて泣いて泣いて・・・
・・・ただただつらくて、悲しくて・・・
・・・涙が枯れるまで私は泣き続けました・・・
・・・彼との思い出を・・・幸せな日々をすべて洗い流す様に・・・
それから私は、家族にも友人にも・・・そして彼に何も告げず、あてのない放浪の旅へと出たのです・・・。
そうしてしばらくの間街へ街へと転々としているうちにこの街にたどり着きました。
路銀を稼ぐために仕事を探していた私は、偶然当時テンダーの店長だったルゥさんと出会いました・・・。
きさくに話しかけてくるルゥさんに私は自分の体質や旅の事情を話しました・・・ルゥさんはそれを知った上で私をテンダーで娼婦として働かないかと誘ってきました・・・。
「そっそんな・・・私・・・見ず知らずの方に・・・その・・・エッチなことなんて・・・」
この放浪の旅で何度かこうした誘いは確かに受けたが、すべて断ってきました。こうしたお店で働くなんて一度も考えたことはなかったのです・・・。
「確かに真面目そうなあなたに娼婦なんて抵抗があるかもしれないけど、あなたみたいな“お姉さん系”は需要があるし、何より、サキュバスとしての本能と向き合わないといけないと思うの・・・」
「えっ・・・?どういうことですか・・・??」
「あたしもサキュバスのいろんな娘をみてきたけど、あなたみたいなタイプは初めてだわ。確かにサキュバスとしては特別な存在といえる。でも間違いなくあなたは魔物であり、サキュバスであるの。」
「はい・・・・・」
「サキュバスは男の精を求めるのが当たり前。あなたはそれを自我でコントロールしてしまっている。つまり、知らず知らずの内にあなたは自分の体と心に大きな負荷を与えてしまっているのよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
実際にレッサーサキュバスになりたてのころは溢れ出る性欲を抑えきれないでいた・・・。それをリハビリを通して今ではそれをコントロールできる様になった。これこそ対サキュバス化の因子のなせる技なのだが、今でもあふれんばかりの性欲が自分の中を渦巻いている・・・。
確かに病院で医師からも定期的な精の摂取は必ず行うようにと言われていた。
私の対サキュバス化の因子を持っていたとしても、完全にサキュバス化をとめることはできず、ゆるやかにサキュバス化していくのだという。すでにサキュバスの前段階であるレッサーサキュバスとなった以上それは避けられないのだ。精を補給しなければ、レッサーサキュバスとなった私の身体に悪影響を
及ぼす可能性があるからだ。
しかし、退院してから彼とも、ましてや赤の他人ともそうしたことをすることはなかった・・・。
したくなかった・・・
それは彼との別れる原因にもなったレッサーサキュバスという名の魔物となった自分を肯定することだと考えていたから・・・・
「あなたの体質上、今はまだ影響がないでしょうが、いずれその負荷が限界を超えた時、あたたの精神、つまり心が壊れてしまうわ。そうなったら、あなたのディオーレという人格は完全に失われ、ただひたすら欲望のままに精を求めるサキュバスとなってしまうわ・・・」
「そんなサキュバスを野良サキュバスなんて呼ぶ人もいるわ・・・あなたを襲ったサキュバスもきっとそうね・・・あなたみたいにレッサーサキュバスの娘がサキュバス化に抵抗するあまり、心を壊してそうなってしまった娘を何人も見てきたの・・・・・」
「だから、あなたみたいなレッサーサキュバスの娘を見かけると、放っておけないの・・・強制はしないけど、私の店で働いてほしいの」
「もちろん、精の搾取と共に性欲のコントロールの訓練にはうってつけだと思うし、あなた自身の為に・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
私は黙ってルゥさんの話に耳を聞くばかりだった・・・。
このまま、精の搾取を拒めばやがてサキュバス化が進行した際、その負荷に耐え切れず、心が、ディオーレとしての私の人格が死んでしまう・・・
そして、欲望を貪るただの魔物へと成り下がってしまう・・・・・
そうなれば、私を襲ったサキュバスと同様に私も他の人をを襲ってしまう・・・
私と同じ不幸な目にあわせてしまう人がでてしまう・・・
それだけは絶対にしてはいけない・・・もう誰も悲しませたくない・・・だから・・・・・
今の・・・レッサーサキュバスである自分と向き合おう・・・・
私は決意しました・・・・
私はテンダーで働くことを・・・・・
サキュバス・ディオーレとなることを・・・・・
「あの時ルゥさんに雇ってもらえなければ私は本当に野良サキュバスとなっていたかもしれません・・・・・」
「・・・そんなことがあったんですね・・・」
こうして彼女はテンダーで娼婦として働き始め、最初こそ失敗の連続だったそうだが、徐々に接客応対にも慣れ、徐々に実力を伸ばしていった。
それから数年後、ディオーレは完全なサキュバスとなったが、性欲に溺れることも、自我を失うこともなかった。
いつしか、テンダーでの娼婦という仕事にやりがいを感じ、今やテンダーのNo.1となったディオーレにとって娼婦という仕事はライフワークと呼べるまでとなった。
しかし、完全に「過去」をぬぐえたわけではなかった・・・
身請け話をすべて断り続けている理由は、過去のトラウマから「恋愛」というものに対して彼女は臆病になってしまったからだったのだ・・・・
そしてそれはディオーレの心にポッカリと大きな隙間を作ってしまった。
だから、僕の告白も、受け取る事ができなかったのだ・・・・。
・・・・・・・・・・また「捨てられる」のではないかと・・・・・・・・・
「・・・僕と同じだ・・・」
ディオーレの過去の話を聞いていた僕は複雑な感情をいだいていた。彼女を捨てた男に対する怒りや憎しみ気持ちとともに、ディオーレは経験こそしてはいるが、自分と同じく恋愛に対して「臆病」になっている。それが心の隙間のをつくっているのだ。
・
・・・・この話を聞いた僕の心はもう決まっていた・・・・・
「ごめんなさい・・・つまらない話をしてしまいましたね・・・」
「!?」
「こんな弱い私の過去なんて、聞いても何にもならないのに・・・でも、聞いてもらだけでも気分が楽に・・・」
「つまらない話なんかじゃありません!!!!!」
「え・・・?」
僕は思わす大声で叫んでしまった。突然の僕の怒声にディオーレさんは驚いていた。でも、僕は構わず言葉を続けた。
「ディオーレさんは何も悪くない!悪いのはディオーレさんを捨てたその男じゃないか!!」
「本当はその時ディオーレさん守らなきゃならなかったんだ!!!支えてあげなくちゃいけなかったんだ!!!!それなのに・・・それなのに・・・・・!!!!!」
「僕なら一生ディオーレさんを支える!!その為ならインキュバスにでもなんにでもなってやる!!!それでディオーレさんを守れるなら・・・・・!!!」
「ケイさん・・・」
僕はハッと我に返る。つい勢いにまかせて自分の本音をぶちまけてしまった・・・・・・ものすごく恥ずかしいことを口走ってしまったことに気がつき、恥ずかしくなってきた・・・
「あっ・・・いや・・・・その・・・・すっすみません!!!ついお話を聞いていたらなんというか・・・その、気持ちが高ぶってしまって・・・!!!」
僕はそのままディオーレの目の前で頭を下げながら謝罪の弁を述べる。
「ケっケイさん、頭を上げてください!」
ディオーレも思わずケイの行動に驚き頭を下げるケイをやめさせようとする。
自分のしてしまった浅はかな行為にケイは今すぐ崖から飛び降りたい気分だった。
「・・・・・ありがとうございます。そんな風に私の事を思っていてくださるんですね・・・・・とっても・・・嬉しいです・・・」
「え・・・・・??」
顔を上げさせたディオーレは僕に話しかけてきた。
「私の過去の話をお客様にしたのはケイさんが初めてでなんです・・・普段なら絶対にしないのに・・・する必要なんかなかったのに・・・・・でも、さっきケイさんに好きっていわれて・・・私も好きで・・・でも、昔の事が頭をよぎって・・・だからこそケイさんには話そう・・・話さないといけない・・・そう思ったんです・・・・・」
瞳にうっすら涙を浮かべながらディオーレは言葉を紡いでいく。
「きっと私は・・・過去を・・・私を理解してもらえる・・・受けとめてくれる人を私はずっと待っていたんです・・・」
「今まではその勇気がなかった・・・でも、ケイさんは私にその勇気をくれたんです・・・」
「ディオーレ・・・・さん・・・・」
「本当に・・・いいんですか・・・・?私と共にすれば、いずれあなたはインキュバスに・・・人間じゃなくなってしまいます・・・」
「・・・さっきも言ったはずです・・・もう、とっくに覚悟はできているんです・・・あなたを守るためなら、インキュバスにだって何にだってなります・・・あなたとずっと一緒にいます・・・」
そう言って僕はディオーレを優しく抱きしめた。
「・・・・・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・・・・・・・・・・」
そうして、僕とディオーレは「初めて」のキスを交わす・・・・・・・・・・
僕とディオーレが「恋仲」となった「初めて」のキスを・・・・・・・・・・
僕が・・・
僕が守るんだ・・・・
僕が支えるんだ・・・・・
「愛」するんだ・・・・・・・・・・
彼女を・・・・・ディオーレを・・・・・・
あの日の夜、私はベットの中で最後のお客様だったケイさんのことを振り返っていた。
実はケイさんが初めてお店にお見えになったとき、たまたまお客様の待合室の近くを通ったんです・・・ふとみたら、彼がいたと思ったんです・・・・驚きました・・・でも、会話を聞いていたら、人違いだってわかりました・・・そして、ケイさんが私を指名するっていうことを聞いて、慌てて控え室に戻りました・・・部屋に行くまでとても心臓がドキドキしてました・・・
ケイの第一印象は「かわいらしい」でした。顔立ちもいわゆる童顔であり、反応がどれも初心な感じで、放っておけない雰囲気でした。真いわゆる母性をくすぐるタイプでした。けれども、とても誠実で、優しく、芯の強さも感じました。
何もかも「あの人」に似ていました・・・・・・・
・・・はっきりいって一目惚れだったのです・・・
プレイ中も気持ちが高ぶってついつい性欲を抑えることを忘れ、興奮が収まらず、何度も搾り取ってしまいました・・・若干やりすぎた気もしなくはないですが、ケイは「気持ちよかった」と言ってくれました。
それに、「好き」とまでいってくれました・・・/////
普段、他のお客様からもいただく機会が多々ありますが、こんなに心が満たされるのはのは「あの」時以来でした・・・そう、「あの人」から告白されたとき以来・・・。
そう、私も彼を、ケイを「好き」になってしまったのです。
でも、同時にとても怖くなりました・・・・
また、「あの」時と同じ思いをするのではないかと・・・捨てられるのではないかと・・・・
それでも私は「賭け」をすることにしたのです。
私はお見送りの際、「券」を彼に渡しました・・・。
そう、私の「特別指名券」を・・・。
突然のことで彼もびっくりしていたけど、半ば強引に渡してしまいました。
彼と会う為には、店に来てもらうしかない。でも、連絡先もわからない、住んでいる場所もわからない、また店に来てくれるかさえわからない状況だった・・・。それだけは絶対に避けなければならない。
でも、「券」は渡したのだから、いずれ彼はまた店に来てくれるかもしれない・・・。
そして、もし彼が来てくれたら、彼に告白しよう・・・ケイに過去を、すべてを話そう・・・
ひょっとしたら、あの一緒にいた先輩や他の人に「券」をわたしてしまうかも・・・確かにその可能性も無くはない。
けど、何故か不思議と不安はなかった・・・絶対にまた来てくれる・・・。
そんな予感があったのです。
何故、あんなことをしたのか、私自身もわかりません・・・。
でも、私自身がが過去から逃げたくない、受け止めてほしいという思いが強くあったのだと思うのです。
そして、ケイなら私を受け止めてくれる・・・。そんな気がしたのです。
そしてその日はやってきたのです。ケイが店に来てくれたのです。
・・・・・そして私はケイに自分の過去の話をしたのです・・・・・
・・・ケイは何も言わずただただ聞いてくれました。
そして、話が終わった後、私に対して「悪くない」、そして「守りたい、支えたい」そう言ってくれました・・・・。
よかった・・・・
嬉しかった・・・・・
話をしてよかった・・・・
受け止めてくれた・・・私を・・・・
ケイを・・・・・・信じていいんだ・・・・
ケイを・・・「好き」になっていいんだ・・・・
そして私をそっと優しく抱きしめてくれたケイ。
私は誓ったのです。
この人を、ケイを一生「愛」するということを・・・・・・・
運命に導かれたのごとく出会ったある男と女
共に新たな一歩が踏み出せずにいた・・・
しかし、お互いに勇気を出し、一歩踏み出した結果、お互いを、支えあい、愛しあえることを知った。
そして、二人は結ばれることとなった。運命の赤い糸で・・・
そして、ほどけることは無いだろう・・・・・
・・・・・・・・二人が「Love Communication」を続ける限り・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・“愛を伝え合う”限り・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・永遠に・・・・・・・・・・・・・・・・・
〜Fin〜
そして、当時私には付き合っていた男性がいました。
一緒に出歩き、一緒に食事をし、一緒に笑いあう・・・それだけで幸せな毎日でした・・・。
しかし、ある日私はサキュバスに襲われました・・・。
「いや!誰か、助けて!!!」
私は必死で抵抗するが、拘束魔法を掛けられ身動きできない状態にされてしまった。
「うふふ♪そんなに怖がらなくても大丈夫よすぐに気持ちよくなるんだから♪♪そしてあなたも私の仲間になるのよ♪♪♪」
サキュバスは通常男性に襲い掛かり、精を搾取する魔物です。しかし、時にサキュバスは仲間を増やす為に女性を襲うことがあるのです。
・・・・・・・・・・私はそれに選ばれてしまいました・・・・・・・・・・
「いやぁ・・・サキュバスになんてなりたくない・・・お願い・・・助けて・・・」
「くすくす・・・♪嫌よ・・・せっかくかわいい娘を見つけたんだもの・・・絶対に逃がさないわ」
そう言ってサキュバスは尻尾を私の秘所にあてがいました・・・私をサキュバスに変えるための魔力を送り込むために・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・サア、ワタシトイッショニナリマショウ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いやああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その後、私は両親の捜索願いで駆けつけた自警団に救出された後、都市の大病院へと運ばれました・・・。しかし、その時すでに私はレッサーサキュバスとなっていました・・・。
通常であればサキュバス化が急速に進み、いずれは欲望のままに精を求める完全なサキュバスへとなるはずでした・・・。
しかし、検査の結果驚くべきことが発覚したのです・・・私には何万人に一人にしか持っていないとされる対サキュバス化の因子を持っていたのです・・・。
だから私はサキュバス化の進行が非常に遅く、レッサーサキュバスでありながら性欲をコントロールができ、ディオーレとしての人格を損なうこともありませんでした。
それから、しばらくの間この因子の調査・研究の為に病院での生活を余儀なくされました・・・。
数ヶ月後、ようやく私は退院することができ、自分の街に帰る事ができました。
レッサーサキュバスとなってしまった私を家族も友達も暖かく迎え入れてくれました・・・。それがとても救いになりました・・・。
けれど、彼は違いました・・・。
以前とは別人の様に私に対して冷たく接するようになり、距離をおく様になったのです・・・。
・・・・・理由は察しがつきました・・・・・けれど、それを言う勇気はありませんでした・・・・
そして遂に「その日」が来たのです・・・・その日私は近くの公園に彼から呼び出されました・・・そして・・・・
「もう、終わりにしよう・・・」
彼から別れを切り出されました・・・
「そんな・・・・なんで?・・・・どうして・・・・??」
なんとなく予感はしていました・・・でも、それでも納得ができず、私は彼を問いただしました・・・。
「僕はもう、君のことをディオーレとして接することができないんだ・・・いくら君が特別だからといっても、いずれは完全なサキュバスとなるんだろう?そうなれば、君と関わりを持てば、僕はインキュバスになってしまう・・・人間としての人生を・・・平穏な日常を失ってしまう・・・それが嫌なんだ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
何も・・・・・いえませんでした・・・・。そう、今は良くてもいずれ時間が経てばサキュバス化は進み、やがて私は正真正銘サキュバスとなってしまう。
現在の医療技術ではサキュバス化を止めることもサキュバス化した女性を人間に戻すことはできない。
そうなれば、いくら自我をコントロールできたとしても、やはり彼を求めてしまうだろう・・・そしてインキュバスにしようとしてしまう・・・彼と一生交わり続けたいと願ってしまう・・・彼から人間としての平穏を奪ってしまう・・・
そんな事、私にはできない・・・・・・そんな権利・・・私には・・・無い・・・・・・・・
もし私が因子を持っていなければ、欲望のままに彼を求め、誘惑し、襲い、彼をインキュバスにしようとしたでしょう。でも、因子を持ってしまった私の心は人間であった頃のディオーレのままでした・・・。
彼を悲しませたくない・・・・・・・・・
彼の望まないことをしたくない・・・・・
だったら彼の言う通り、別れてしまったほうがいい・・・・・
そう思ったのです・・・・・
こうして私と彼は別れました・・・
彼が去った後、誰もいなくなった公園のベンチで私は人目をはばからず泣きました・・・
・・・泣いて泣いて泣いて・・・
・・・ただただつらくて、悲しくて・・・
・・・涙が枯れるまで私は泣き続けました・・・
・・・彼との思い出を・・・幸せな日々をすべて洗い流す様に・・・
それから私は、家族にも友人にも・・・そして彼に何も告げず、あてのない放浪の旅へと出たのです・・・。
そうしてしばらくの間街へ街へと転々としているうちにこの街にたどり着きました。
路銀を稼ぐために仕事を探していた私は、偶然当時テンダーの店長だったルゥさんと出会いました・・・。
きさくに話しかけてくるルゥさんに私は自分の体質や旅の事情を話しました・・・ルゥさんはそれを知った上で私をテンダーで娼婦として働かないかと誘ってきました・・・。
「そっそんな・・・私・・・見ず知らずの方に・・・その・・・エッチなことなんて・・・」
この放浪の旅で何度かこうした誘いは確かに受けたが、すべて断ってきました。こうしたお店で働くなんて一度も考えたことはなかったのです・・・。
「確かに真面目そうなあなたに娼婦なんて抵抗があるかもしれないけど、あなたみたいな“お姉さん系”は需要があるし、何より、サキュバスとしての本能と向き合わないといけないと思うの・・・」
「えっ・・・?どういうことですか・・・??」
「あたしもサキュバスのいろんな娘をみてきたけど、あなたみたいなタイプは初めてだわ。確かにサキュバスとしては特別な存在といえる。でも間違いなくあなたは魔物であり、サキュバスであるの。」
「はい・・・・・」
「サキュバスは男の精を求めるのが当たり前。あなたはそれを自我でコントロールしてしまっている。つまり、知らず知らずの内にあなたは自分の体と心に大きな負荷を与えてしまっているのよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
実際にレッサーサキュバスになりたてのころは溢れ出る性欲を抑えきれないでいた・・・。それをリハビリを通して今ではそれをコントロールできる様になった。これこそ対サキュバス化の因子のなせる技なのだが、今でもあふれんばかりの性欲が自分の中を渦巻いている・・・。
確かに病院で医師からも定期的な精の摂取は必ず行うようにと言われていた。
私の対サキュバス化の因子を持っていたとしても、完全にサキュバス化をとめることはできず、ゆるやかにサキュバス化していくのだという。すでにサキュバスの前段階であるレッサーサキュバスとなった以上それは避けられないのだ。精を補給しなければ、レッサーサキュバスとなった私の身体に悪影響を
及ぼす可能性があるからだ。
しかし、退院してから彼とも、ましてや赤の他人ともそうしたことをすることはなかった・・・。
したくなかった・・・
それは彼との別れる原因にもなったレッサーサキュバスという名の魔物となった自分を肯定することだと考えていたから・・・・
「あなたの体質上、今はまだ影響がないでしょうが、いずれその負荷が限界を超えた時、あたたの精神、つまり心が壊れてしまうわ。そうなったら、あなたのディオーレという人格は完全に失われ、ただひたすら欲望のままに精を求めるサキュバスとなってしまうわ・・・」
「そんなサキュバスを野良サキュバスなんて呼ぶ人もいるわ・・・あなたを襲ったサキュバスもきっとそうね・・・あなたみたいにレッサーサキュバスの娘がサキュバス化に抵抗するあまり、心を壊してそうなってしまった娘を何人も見てきたの・・・・・」
「だから、あなたみたいなレッサーサキュバスの娘を見かけると、放っておけないの・・・強制はしないけど、私の店で働いてほしいの」
「もちろん、精の搾取と共に性欲のコントロールの訓練にはうってつけだと思うし、あなた自身の為に・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
私は黙ってルゥさんの話に耳を聞くばかりだった・・・。
このまま、精の搾取を拒めばやがてサキュバス化が進行した際、その負荷に耐え切れず、心が、ディオーレとしての私の人格が死んでしまう・・・
そして、欲望を貪るただの魔物へと成り下がってしまう・・・・・
そうなれば、私を襲ったサキュバスと同様に私も他の人をを襲ってしまう・・・
私と同じ不幸な目にあわせてしまう人がでてしまう・・・
それだけは絶対にしてはいけない・・・もう誰も悲しませたくない・・・だから・・・・・
今の・・・レッサーサキュバスである自分と向き合おう・・・・
私は決意しました・・・・
私はテンダーで働くことを・・・・・
サキュバス・ディオーレとなることを・・・・・
「あの時ルゥさんに雇ってもらえなければ私は本当に野良サキュバスとなっていたかもしれません・・・・・」
「・・・そんなことがあったんですね・・・」
こうして彼女はテンダーで娼婦として働き始め、最初こそ失敗の連続だったそうだが、徐々に接客応対にも慣れ、徐々に実力を伸ばしていった。
それから数年後、ディオーレは完全なサキュバスとなったが、性欲に溺れることも、自我を失うこともなかった。
いつしか、テンダーでの娼婦という仕事にやりがいを感じ、今やテンダーのNo.1となったディオーレにとって娼婦という仕事はライフワークと呼べるまでとなった。
しかし、完全に「過去」をぬぐえたわけではなかった・・・
身請け話をすべて断り続けている理由は、過去のトラウマから「恋愛」というものに対して彼女は臆病になってしまったからだったのだ・・・・
そしてそれはディオーレの心にポッカリと大きな隙間を作ってしまった。
だから、僕の告白も、受け取る事ができなかったのだ・・・・。
・・・・・・・・・・また「捨てられる」のではないかと・・・・・・・・・
「・・・僕と同じだ・・・」
ディオーレの過去の話を聞いていた僕は複雑な感情をいだいていた。彼女を捨てた男に対する怒りや憎しみ気持ちとともに、ディオーレは経験こそしてはいるが、自分と同じく恋愛に対して「臆病」になっている。それが心の隙間のをつくっているのだ。
・
・・・・この話を聞いた僕の心はもう決まっていた・・・・・
「ごめんなさい・・・つまらない話をしてしまいましたね・・・」
「!?」
「こんな弱い私の過去なんて、聞いても何にもならないのに・・・でも、聞いてもらだけでも気分が楽に・・・」
「つまらない話なんかじゃありません!!!!!」
「え・・・?」
僕は思わす大声で叫んでしまった。突然の僕の怒声にディオーレさんは驚いていた。でも、僕は構わず言葉を続けた。
「ディオーレさんは何も悪くない!悪いのはディオーレさんを捨てたその男じゃないか!!」
「本当はその時ディオーレさん守らなきゃならなかったんだ!!!支えてあげなくちゃいけなかったんだ!!!!それなのに・・・それなのに・・・・・!!!!!」
「僕なら一生ディオーレさんを支える!!その為ならインキュバスにでもなんにでもなってやる!!!それでディオーレさんを守れるなら・・・・・!!!」
「ケイさん・・・」
僕はハッと我に返る。つい勢いにまかせて自分の本音をぶちまけてしまった・・・・・・ものすごく恥ずかしいことを口走ってしまったことに気がつき、恥ずかしくなってきた・・・
「あっ・・・いや・・・・その・・・・すっすみません!!!ついお話を聞いていたらなんというか・・・その、気持ちが高ぶってしまって・・・!!!」
僕はそのままディオーレの目の前で頭を下げながら謝罪の弁を述べる。
「ケっケイさん、頭を上げてください!」
ディオーレも思わずケイの行動に驚き頭を下げるケイをやめさせようとする。
自分のしてしまった浅はかな行為にケイは今すぐ崖から飛び降りたい気分だった。
「・・・・・ありがとうございます。そんな風に私の事を思っていてくださるんですね・・・・・とっても・・・嬉しいです・・・」
「え・・・・・??」
顔を上げさせたディオーレは僕に話しかけてきた。
「私の過去の話をお客様にしたのはケイさんが初めてでなんです・・・普段なら絶対にしないのに・・・する必要なんかなかったのに・・・・・でも、さっきケイさんに好きっていわれて・・・私も好きで・・・でも、昔の事が頭をよぎって・・・だからこそケイさんには話そう・・・話さないといけない・・・そう思ったんです・・・・・」
瞳にうっすら涙を浮かべながらディオーレは言葉を紡いでいく。
「きっと私は・・・過去を・・・私を理解してもらえる・・・受けとめてくれる人を私はずっと待っていたんです・・・」
「今まではその勇気がなかった・・・でも、ケイさんは私にその勇気をくれたんです・・・」
「ディオーレ・・・・さん・・・・」
「本当に・・・いいんですか・・・・?私と共にすれば、いずれあなたはインキュバスに・・・人間じゃなくなってしまいます・・・」
「・・・さっきも言ったはずです・・・もう、とっくに覚悟はできているんです・・・あなたを守るためなら、インキュバスにだって何にだってなります・・・あなたとずっと一緒にいます・・・」
そう言って僕はディオーレを優しく抱きしめた。
「・・・・・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・・・・・・・・・・」
そうして、僕とディオーレは「初めて」のキスを交わす・・・・・・・・・・
僕とディオーレが「恋仲」となった「初めて」のキスを・・・・・・・・・・
僕が・・・
僕が守るんだ・・・・
僕が支えるんだ・・・・・
「愛」するんだ・・・・・・・・・・
彼女を・・・・・ディオーレを・・・・・・
あの日の夜、私はベットの中で最後のお客様だったケイさんのことを振り返っていた。
実はケイさんが初めてお店にお見えになったとき、たまたまお客様の待合室の近くを通ったんです・・・ふとみたら、彼がいたと思ったんです・・・・驚きました・・・でも、会話を聞いていたら、人違いだってわかりました・・・そして、ケイさんが私を指名するっていうことを聞いて、慌てて控え室に戻りました・・・部屋に行くまでとても心臓がドキドキしてました・・・
ケイの第一印象は「かわいらしい」でした。顔立ちもいわゆる童顔であり、反応がどれも初心な感じで、放っておけない雰囲気でした。真いわゆる母性をくすぐるタイプでした。けれども、とても誠実で、優しく、芯の強さも感じました。
何もかも「あの人」に似ていました・・・・・・・
・・・はっきりいって一目惚れだったのです・・・
プレイ中も気持ちが高ぶってついつい性欲を抑えることを忘れ、興奮が収まらず、何度も搾り取ってしまいました・・・若干やりすぎた気もしなくはないですが、ケイは「気持ちよかった」と言ってくれました。
それに、「好き」とまでいってくれました・・・/////
普段、他のお客様からもいただく機会が多々ありますが、こんなに心が満たされるのはのは「あの」時以来でした・・・そう、「あの人」から告白されたとき以来・・・。
そう、私も彼を、ケイを「好き」になってしまったのです。
でも、同時にとても怖くなりました・・・・
また、「あの」時と同じ思いをするのではないかと・・・捨てられるのではないかと・・・・
それでも私は「賭け」をすることにしたのです。
私はお見送りの際、「券」を彼に渡しました・・・。
そう、私の「特別指名券」を・・・。
突然のことで彼もびっくりしていたけど、半ば強引に渡してしまいました。
彼と会う為には、店に来てもらうしかない。でも、連絡先もわからない、住んでいる場所もわからない、また店に来てくれるかさえわからない状況だった・・・。それだけは絶対に避けなければならない。
でも、「券」は渡したのだから、いずれ彼はまた店に来てくれるかもしれない・・・。
そして、もし彼が来てくれたら、彼に告白しよう・・・ケイに過去を、すべてを話そう・・・
ひょっとしたら、あの一緒にいた先輩や他の人に「券」をわたしてしまうかも・・・確かにその可能性も無くはない。
けど、何故か不思議と不安はなかった・・・絶対にまた来てくれる・・・。
そんな予感があったのです。
何故、あんなことをしたのか、私自身もわかりません・・・。
でも、私自身がが過去から逃げたくない、受け止めてほしいという思いが強くあったのだと思うのです。
そして、ケイなら私を受け止めてくれる・・・。そんな気がしたのです。
そしてその日はやってきたのです。ケイが店に来てくれたのです。
・・・・・そして私はケイに自分の過去の話をしたのです・・・・・
・・・ケイは何も言わずただただ聞いてくれました。
そして、話が終わった後、私に対して「悪くない」、そして「守りたい、支えたい」そう言ってくれました・・・・。
よかった・・・・
嬉しかった・・・・・
話をしてよかった・・・・
受け止めてくれた・・・私を・・・・
ケイを・・・・・・信じていいんだ・・・・
ケイを・・・「好き」になっていいんだ・・・・
そして私をそっと優しく抱きしめてくれたケイ。
私は誓ったのです。
この人を、ケイを一生「愛」するということを・・・・・・・
運命に導かれたのごとく出会ったある男と女
共に新たな一歩が踏み出せずにいた・・・
しかし、お互いに勇気を出し、一歩踏み出した結果、お互いを、支えあい、愛しあえることを知った。
そして、二人は結ばれることとなった。運命の赤い糸で・・・
そして、ほどけることは無いだろう・・・・・
・・・・・・・・二人が「Love Communication」を続ける限り・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・“愛を伝え合う”限り・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・永遠に・・・・・・・・・・・・・・・・・
〜Fin〜
10/11/28 05:12更新 / KOJIMA
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