聖夜のハロウィン
12月23日17:30頃
埼○県某所カフェにて
クリスマスツリーの様に電飾が飾られた木々が並ぶ町のある一角にある、小さなカフェ。
その店の隅で話す男性と女性。
二人が話しているのは、昨年のクリスマスデモ鎮圧隊の話だった。
「去年のデモ鎮圧隊、かなり多くの人が余っちゃったのよね」
「独身の子が?」
女性の言ったことに、男性がたずねる。
「そ。去年で3回目だからか、相手の方も段々来ることが分かってきたらしくて…去年なんかエアガンもって攻めてきた人なんかもいてさぁ…」
「ちなみに今その人は…?」
「ん?…ああ、今は亜梨子ちゃんと一緒に仲良く暮らしてるわ」
「ふーん………」
男性の方が考え込むかのように無言になる。
そんな男性を見て、相手の女性はそっと置かれていたアップルティーを口元に運ぶ。
「…なあ、ところでさ」
男性が口を開く
「どうしたの?」
「ハロウィンの時、どれぐらいの子がくっついたか分かるか?」
ハロウィン。
10月31日に行われるイベントの一つである。
今ではクリスマスよりも栄えており、各個人それぞれの仮装を借りてインスタグラムやツイッターに載せたりすることで、とてつもない経済効果のあるイベントとなっている。
実際、クリスマスほどではないといえども、その経済効果は目に見えて大きくなっている。
しかし、所詮はパーティーであり、カップルがいちゃつく空気はない。
そのためか、実際にくっつく例は数えるほどしかない。
「えっと…確か2、3人だったわ。なんでそんなことを?」
「いや、少し気になってね…」
そう言って今度は男性の方がコーヒーに口をつける。
「どうすればいいのかなぁ…」
「そうね…」
ともに考え込んでしまう二人。
しばらく黙り込んでいたのち、ふと男性がつぶやいた。
「クリスマスとハロウィンが逆だったらなぁ……」
「…!それよ!」
女性が大声を張り上げていった。
視点変更 一正side
「あーつかれた…」
「おつかれー」
「おつぁーす」
「お疲れ様でーす…」
やはりいつもの仕事だからだろう。
別段大変な仕事をこなしているわけではないが、やはりパソコンの前でずっと同じ体制はきつい。
「というか、今日お昼休みないのにみんな同じ時間に休むんだな」
「なんだかんだいつも通りなんですよね」
「それなー、ほんとそれ」
「…………(モグモグ)」
俺こと明田一正(めいだ いっせい)は、会社の同僚たちと話しながらコンビニ
弁当(唐揚げ海苔弁当。320円+税)を口に運ぶ。
ちなみに言葉だけでわかりづらいかもしれないが、先程のセリフ群の一番初めが俺、二番目は俺と気が合う呑み友達の利沢悠人(りざわ ゆうと)、3人目が会社内でチャラ男と呼ばれている倉石誠也(くらいし せいや)、そして最後が無口でオタク気味なのに彼女持ちの理島与太郎(りじま よたろう)である。
朝のうちに買っておいた弁当は昼休み時間(俺の会社は12:00からが昼休み)が始まった時点で給湯室の据え置き電子レンジで暖めておいてあるため、少なくとも冷たいということはない。
ただ、漬け物まで暖められているのが残念だが…
「にしてもまさか、今日この部署に4人も来るなんて思わなかったわ」
と俺が驚く表情をしながら話す。
「いや〜、俺も4人ぐらい来ると思ってましたよ」
そう言うのは誠也。
食べているのはコンビニのサンドイッチだが、それで足りるのだろうか。
「他の部署にも各2、3人来てたよ」
「まじっすか?でもやっぱ内の部署の人多くないっすか?」
「確かに」
悠人の情報に驚く誠也、いつも思うがオーバーリアクションじゃないか?
ちなみに悠人のお昼はコンビニの冷やし中華弁当、『冷たいものは寒い日に食うのがうまい』は悠人談。
「…………(ゴハンモグモグ)」
そして黙々と弁当を食べる与太郎。
与太郎はこの4人の中で唯一の彼女持ちだったりする。
そのためかお弁当も手作りだったりする、中身の彩りが鮮やかだからきっと作ったのは彼女さんだろう、いい彼女さんである。
「というか、今日与太郎が来るとは俺思ってなかったわ」
「…そうですか?」
「いや、だって今日みたいな休日、しかもイベント日にまさか彼女持ちのお前が会社来るなんて思いもよらなくてさ」
そう、今日は12月24日。クリスマスイブである。
しかも今年は月曜日、前の日の天皇誕生日の振替休日のため、多くの会社が休み、もしくは休日出勤である。
うちの会社は別段ブラックなわけではなく、ほどよい仕事量を単純にこなすだけの職場(といっても大変だが)で、休日出勤日が非常に多いことはない。
それでも出勤してくるのは、やはり独り身で予定がホワイトクリスマスだからだろう。
「まさか…彼女さんともめてるんすか!?」
俺の言葉に反応し、プライベートなことを与太郎に聞く誠也だが、
「それはないです。もしそうだったらお弁当作ってくれないでしょうし」
そ…即答ですか…
「いや、俺はむしろ誠也みたいなチャラ男が来ないんじゃないかって思ってたけど…クリスマスパーティーとかしないの?」
今度は悠人がそう誠也に聞く。
「いや〜最近は女子は女子会でやるみたいですし、男だけのパーティーってむさ苦しいだけじゃないっすか。俺、会社ではこんな感じっすけど、外だと普通のサラリーマンっすからね?」
「それもそうか」
「以外だな、誠也はウェイ系の人間かと思ってた」
「酷い!」
誠也が泣くようなそぶりを見せる。
「でも、うちの会社は退社時間凄い厳しいからな、たしか『うちの会社は残業させないハラスメント、定時ハラスメントをはやらせる』とかっていう社長の意向だっけ?」
「…定ハラ発言聞いたときは草生えた」
なぜか与太郎が笑った、きっと思い出し笑いだろう。
「そうっすね、退社した後どうしよっかな〜」
「おっ、そうだな。そういりゃ何も考えてなかった」
「うーん…これといってやることもないしなー…」
悠人と誠也、そして俺の3人が考えていると、
「…!それなら…」
与太郎がそう言ってスマホのある画面を見せてきた。
「革命的非リア同盟?」
「クリスマス玉砕デモ?」
初めて見る言葉に、俺と悠人が首をかしげる。
「あ、しってるそれ!毎年やってるやつっすよね!」
誠也はどうやら知っていたらしく、少し大きな声で叫んだ。
「…そう、クリスマスがカップルといちゃつく日になっていることに対して抗議デモを起こすってやつらしい、ちなみに参加自由」
「へぇ〜、って今日の六時からじゃん!場所も近いし」
「面白そうじゃん!いってみようぜ!」
「そうっすね!これは退社後が楽しみっす!」
そう言ったとき、ちょうど携帯のアラームが鳴った。お昼休み終わりの合図だ。
各々は退社後を楽しみにしながら、仕事を始めた。
気のせいか午前中よりもはかどっている気がする。
「ところで与太郎、おまえなんで俺たちにあのサイトを見せたんだ?おまえ関係ないだろ?」
「…悪意でですけど?」
「悪意かいっ!」
退社時間である17:30になって、急に他部署の先輩がやってきて怒鳴り声で叫んだ。
『おまえら!さっさと帰宅しろ!終業時刻だ!』
……ガチでハラスメントじゃねーか。
というわけで、俺達4人も、全員同じ時間に会社を出た。
俺と悠人、誠也の3人はそのまま例のデモに参加することになったが、与太郎はそもそも彼女持ちのため、彼女さんへのプレゼントを買いに行ってから帰るらしいので、
「そんじゃまたな与太郎」
「…お疲れ様です…3人もお気をつけて…」
そう言ってすぐに分かれた。
分かれた後、俺達3人は電車で例のデモ運動の集合場所に行くことにした。
3人は最寄り駅のホームでスマホをいじりながら電車を待っていた
すると、誠也があるサイトを見つけた。
「2人とも…これ見てくださいよ」
誠也がスマホの画面を見せてくる。
「なになに…?えっ、クリスマス粉砕デモ鎮圧隊?」
「そうっす。毎年クリスマスデモが起きては、それを鎮圧する別のグループがあるらしくて…」
「うーん…そう考えると危ない感じがするなぁ…」
悠人が少し心配をしていたが、
「そうでもないみたいだよ?けが人は出てないらしいし、去年はクリスマスデモの人達が抗ったおかげ?で今年は鎮圧隊は活発じゃないらしいし」
俺が違うサイトで見た情報を話す。
「おお、そうか。なら安心…か?」
疑問符を浮かべながらも、悠人は安心したようだ。
「とりあえず、集合場所行ってから考えよう。どんなものなのか俺らじゃわからないし」
「そうだな」
「そうっすね〜」
そんな緩いテンションで行く俺達3人。
もしこの時、俺達が与太郎の言葉を、『気をつけて』という言葉を意識していれば、あんなことには巻き込まれなかったのに…
俺達が集合時間の18:30ぎりぎりに集合場所の公園についた頃には、数多くの人達が集まっていた。
「意外と集まるもんなんだな」
「ざっと30人ぐらいか?」
「凄い人の量っすね〜こんなに人がいるなんて」
俺達3人は、そんな驚きの感想を口にしていた。
まもなく、一人の男性(おそらく今回のデモの責任者だろう)が、拡声器を持って話し出した。
『昨今のクリスマス、クリスマスイブは、カップル達が愛をささやき、安易に子を宿そうとする日として認識されています。
しかしそれは、元来のクリスマスに反しています。
元来クリスマスとは、イエス・キリストの降誕祭であり、キリスト教圏では、家族へ愛を贈る日なのです。
確かにカップルを家族であるということはできるでしょう。
しかし!もしそうならば我々のような独り身は一体誰に贈らなければいけないのか!
自らの血のつながる家族とは連絡だけ行い、自らの恋人と愛をなすという行為は!元来のものとはあまりにもかけ離れている!
我々は、このような誤った認識のクリスマスは玉砕しなければならない!
クリスマス反対!』
『反対!』
一気に集まった人達のボルテージが高まっていく。
「意外と冷静に見てるな。単にクリスマスを無くそうみたいなデモじゃなくて」
「昨今の誤った見方か…確かに、クリスマス=カップルっていうイメージが強いな。女がいないクリスマスはクリスマスじゃないみたいな」
「それは言い過ぎっすけど…でもクリスマスの日は女性と一緒じゃなきゃいけないみたいな空気がありますよね」
俺達がそんなコメントを行っていたとき…
『まちなさい!』
拡声器で大きくなった女性の声がどこからともなく聞こえた。
聞こえた方向を向くと、そこには『クリスマスデモ反対』の文字が。
そして多く、といっても10人強ほどの女性?が暖かそうな冬服を着て集まっていた。
その先頭に立つ責任者らしき女性が優しい口調で語る。
『クリスマスにくっつくという機会をなしに、一体いつくっつくというの!?ロマンティックがあるクリスマスにプロポーズする!これほど美しいことはないと思わないの!?』
しかし、その言葉の殆どが所謂感情論だった。
反対意見をデモ側の責任者の男性が熱弁する。
『そもそも、そんなことを実際にやるということ自体が間違っている!現実はドラマのようにそううまくはいかない!それにロマンティックだとしても、それが子を宿すための日になるという風潮はやはりおかしい!男と女の絡み合いなど、恋愛物語が好きな人以外の誰が得をするのか!』
『…………』
そんな意見を言われ、言い返せなくなる女性。
「可哀想だな…」
と、悠人が女性に同情する。
『黙っているのであれば、我々はデモを始めるだけだ!いくぞ!』
『おおぉぉぉーー!!』
威勢よくデモ行進を始める男達。
デモ反対派の女性達から目をそらし、まさに行進を始めようとしたとき、それはやってきた。
『素晴らしい演説だ!デモ隊の責任者様!』
再び女性の声。
しかし、先程の女性とは打って変わって、少しおどけたような話し方をする。
先程の反対デモとは違う方向から、また違う隊列が現れた。
先程の反対デモとは違い、横断幕のような旗は持ち歩いておらず、何の隊列なのかわからない。
そして、女性の服装は、みなフード付きのコートを羽織っている。
その隊列の責任者であろう女性が、拡声器を使って話し出した。
『クリスマスは男性と女性が絶対にくっついていなくてはならない、という風習、確かにおかしい!わざわざ男と女をくっつけるためにロマンティックな雰囲気を出さないといけないなど無駄の極み!』
『そうだ!』
『その通りだ!』
デモ隊の演説でないのに、何人かのデモ隊の人が同調する。
しかし、その話は思わぬ方向へと進む。
『しかし、クリスマスという日の経済効果は素晴らしいもの。その日を無くしてしまえば、経済発展は遂げにくくなってしまうだろう。そこで!』
そして、その次の言葉に、デモ隊の全ての人が、あっけにとられた。
『ならば、クリスマスじゃなくて、ハロウィンをやればいいじゃない!』
『…はぁ!?』
デモ隊の男達から出たその声は、呆れか、驚愕か。
女性の演説は続く。
『ハロウィンは今やクリスマスに並ぶ第二の経済効果の波!
それにクリスマスと違って男と女がくっつかないといけないという風潮もなく!
家族や友達と一緒にいる日として愛をささやかなければならないなんていう考えもなく!
けれどモテる、モテない関係なく皆が参加できる最高のイベント!
だから私たちは!今日からクリスマスをハロウィンとして過ごす!』
そして隊列の女性たちが一斉にコートを脱ぐ。
そして中から現れたのは、ハロウィンの時期によく見る様々な怪物に扮した女性達。
ゾンビや幽霊のようなメジャーなものはもちろん、鳥女やひれをつけた魚人のようなマイナーなものまで。
その女性達は一斉に叫び、飛びかかってきた!
『トリック・オア・トリート〜!!』
『うわぁぁぁぁぁーーーー!!?』
その言葉とともに、一斉にデモ隊の男達が逃げ始めた…
点変更 悠人side
「俺達も逃げるぞ!なんか捕まったらやばそうだし!」
「そうっすね!」
一正と誠也が逃げる準備を始める中、俺はぼんやりとある方向を見ていた。
反デモ派の女性たちの方を、だ。
「ほら!悠人もいくぞ!」
この騒動の中、彼女たちはずっと慌てていた。
いや、正しくはどうすれば良いか分からなくて困っているのだろう。
あの反対演説を否定された後、ずっとことの成り行きをぼんやりと見ていた。
特に反デモ隊の責任者であるだろう女性は、まるで何も感じなかったようにじっと立っていた。
「……………」
「…?悠人、どうした?」
けれど俺にはその目が。
まるで…助けるかを求めるような目で…
「おい悠人!」
「…悪い一正、誠也。おまえ等だけで逃げてくれ」
いつの間にか、俺はそんなことを言い出した。
「はぁ!?なにいってんだよ!」
そりゃそうだ、この状況で逃げないなんて自殺行為に等しい。
もしかしたら、途中で誰かに捕まえられるかもしれない。
それでも、俺が信念を曲げないのは…
きっと…彼女を好きになったから…
「俺は…やることができたから」
その言葉は、どうやら一正を困らせる最後の一言になったらしい。
「クソッ!なんなんだよ勝手に!もういい。悠人は自分でなんとかしてもらうとして、俺たちは逃げるぞ!」
「りょ、了解っす!」
一正と誠也は、俺が向いている方向と全く反対の方向へ走りだしたようだ。
俺はデモ反対派の人達の方へ走り出しす。
「やっほーう!男だー!」
「自分から来るなんて、なんて愚かなのかしら!」
左右前方からそれぞれ浴衣(つららのような模様)姿の女性と黒いイヌのような女性が捕まえに来るが…
「…ッ!」
犬が足を、浴衣の人が頭を押さえようと飛び上がった瞬間を見計らい、俺はその間を飛び抜ける!
「ちょっ!」
「うそだろ!?」
こけそうになるものの、受け身を取ってバランスをとる。
子供の頃柔道をやっておいた甲斐があった。
他にも何人かやってきたものの、それらは適当にいなして例の反デモ派の人達の前まで来ることが出来た。
当然全力ダッシュのため、息切れを起こしている。
「はぁっ…はぁっ…」
「だ、大丈夫…ですか?」
先程演説した女性が手を伸ばしてくる。
「はぁっ…はい…大丈夫です…」
その手をそっと取り、体を起こす。
しっかりと見るその人の顔はとても整っており、肌は雪のように繊細で美しい。
そんな彼女の顔を少しだけ眺めた後、彼女の後ろに立っていた女性達に向き直る。
10人ほどの女性達は自分の方を一斉に見る。
演説なんてはじめてだけど、ここはやるしかない。
俺はそっと口を開く。
「…皆さんも…追っかけた方がいいのでは…?」
「えっ!?」
女性たちが驚きの表情を見せる。
「さっきから…というか現れたときからずっと皆さんが男性とくっつきたくて仕方がない、みたいな雰囲気を感じたんです。だからもしかしたら、皆さん独身で、自分の生涯のパートナーを見つける為にやってるんじゃないかって…そう、思ったんです」
後ろの争い合いを横目に見ながら、俺は演説を続ける。
「今この状況は、たとえロマンティックじゃないとしても、いい出会いの場にはなると思うんです。だから…皆さんも…と」
思ったんです、という言葉を聞いている人は殆どいなかった。
反デモ派の女性たちが一斉に逃げようとする男性の方へ走って行く。
それを五秒ほど眺めた後、俺は地面に座り込んだ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
先程の緊張が一気に緩んだからだろう、再び息切れを起こす。
「最高でした」
ふと、隣にいた反デモ派の責任者の人が話しかけてきた。
その優しい声は、自分の中で何度もリフレインして染み渡る。
「先程の演説。私には絶対出来ません。まさかみんなの気持ちを代弁してくれるなんて」
「…いや」
格好付けなのか、本心なのか。
恐らく後者なんだろうなと思いながら、言葉を口にする。
「あなたが論破されたとき、とても悲しい目をしてたから。だから助けようとしただけですよ」
「…っ!」
「さてと…もうそろそろ僕も逃げないと…」
俺は少し気恥ずかしくなって、そ逃げだそうと立ち上がる。
「俺不器用だから、少しでもロマンティックな場所じゃないと伝わらないだろうし」
「…!///」
どうやら女性の方は気づいたらしい。
小っ恥ずかしいセリフを言った甲斐があったもんだ。
「そんじゃあ逃げますか…っと!」
全力ではなく、けれど他の人には決して捕まらないように、俺は公園の外の方へ逃げていった。
「…全く…本当に不器用なんですから…『旦那様』は」
羽衣を纏った少女の言葉は、俺には聞こえなかった。
視点変更 誠也side
いやいやいやいやおかしいおかしい!
なんで唐突に鬼ごっこ、それも女が男を追っかけて貞操を奪おうとする大会が始まってるんだよ!
「誠也!お前、家はどっち方向だ?」
一正さんが聞いてくる。
「えっと…東○の首都圏郊外の方っす!」
「それなら、次のところで別れるしかないな俺は埼○だから…」
そんな言葉が聞こえるが、後ろからやってくる女の声がとにかくヤバい。
『男ォォォォォ!!』
『大量だぁぁぁぁ!!』
『…カスオカスオカスオカスオ…』
こ、怖ぇぇぇぇ!
最後の人とかもはや壊れてんじゃん!
しかも仮装のクオリティが高いせいで、滅茶苦茶怖い!
女は化けると魑魅魍魎にすらなれんのか!?
そんなことを考えている内に、分かれ道に到着。
こっからは俺と一正さんは別々に逃げることになる。
「んじゃあな誠也!がんばれよ!」
「一正さんも!」
T字路に分かれている道を、一正さんは右、俺は左に逃げていった。
曲がってしばらくした後、何人ほどこちらの方にきているのかを見ようと後ろを向くと、
『C'mon baby OTOKO!』
『さあ、お前のオナニーの回数を数えろ!』
『野郎ブチ犯してやる!』
『逆レ!逆レ!逆レ!逆レ!』
『犯した?犯してないよ!』
『ヤらないか?』
増えてんじゃねぇかよふざけんな!
というか最後のやつは完全にホモだろいい加減にしろ!
2番目に関しては自問自答してるし!
他にもなんかいろいろ混じってるし!
というが逆レってなんだよ!
というか最初のやつ何歌ってんだよ!
とにかくツッコミどころ多すぎてツッコミ切れんわ!
とにかく全力で走る!今の俺にはそれしか出来ない!
運がいいことにここの先は人の多い商店街!
ここで姿をくらませばまけるはずだ!
さあ、いけ!俺!
……………
ふむ、これはどういう状況かな?
まさか商店街が女であふれていて俺一人の周りに仮装した女が囲うように立っているって…
ドッキリだよな?
フ○テレビあたりの企画だよなぁ!
だれか!そう言ってくれぇぇぇ!
俺の心の叫びも虚しく、俺の逃げてきた方の女も到着。完全に囲まれた。
八方手ふさがり、四面楚歌って、こういうことを言うのかな…
全てを諦め、真っ白になった俺の肩に、一人の女が手をかけてきた。
振り向くと、黒い馬の下半身で2本のつのがはえている女性が問いかけてきた…
「ヤらないか?」
ペニバンつけて、超兄貴的スマイルで。
まさかその後、48人の女性を犯し、犯され、その全員と結婚するとは思わなかった…
腰と尻が痛い…
視点変更 一正side
誠也と別れてしばらくした後、後ろを見たら誰もいなかった。
どうやら誠也の方に流れていったようだ。
誠也…無事でいてくれよ…
さて、ここはどこだろうか。
さっきの道で別れたのも、方角で決めた適当なものであって、知っている道に出るためなどではない。
とにかく分散することで、追いかける人数を減らそうという寸法だったのだが…
まさか、100:0で別れるとは思わなかった。
俺、そんな魅力ないかな…
そんなことを考えていていたせいか、目の前から歩いてきた人に気づかずぶつかってしまった。
「きゃっ!」
「あっ、すみません!大丈夫ですか?」
相手は女性だったようで、ぶつかった勢いで倒してしまった。
慌てて相手に手をさしのべる。
「い、いえ、大丈夫です…って、先輩!?」
相手が自分の顔を見て驚く。
ただ、俺は相手が誰なのか思い出せなかった。
「え…えーっと…」
「愛衣ですよ!同じサークルの優真愛衣(ゆうま あい)!!」
「ええっ!優真!?」
優真愛衣
俺が大学生の頃の後輩で、同じ『心理学研究サークル』だったサークル内の紅一点のような存在。
天然でお茶目な彼女を好きになる男子は数知れず、ねたむ女子もさぞ多かったのだとか。
「お…お邪魔しまーす…」
「どうぞ先輩。ゆっくりしていって下さい」
まさか出会って早々女性の家に上げられるとは思わなかった。
『久しぶりに先輩と話したいです!』って言われて来たはいいけど、女性の家って…なんか…その…ドキドキするな…
「先輩はコーヒー好きでしたよね?お砂糖いれますか?」
「…へ?あ、ああ、うん」
なるべく意識を優真に向けないよう、部屋の中を観察する。
薄いピンク色で統一された部屋は、女の子らしさがありながら、清楚さを表している。
白いインテリアの横には何かの植物と写真立て。
「あれ…この写真…」
そこにうつっているのは、当時の心理学サークルみんなの写真。
「へぇ〜なつかしい」
「懐かしいですよね、ほんと」
急に後ろから声がしてびっくりする。
白いトレイ幅上にはコーヒーと紅茶。
机の上にそれらの入ったマグカップを置く。
「先輩がコーヒーで、っと。どうぞ先輩」
「い…いただきます」
熱々のコーヒーが、外で冷えた体を温める。
いろいろ考えていたので消費した糖分が入っており、頭もリラックスする。
「にしても先輩、さっきどうしてあんなに急いでたんですか?」
優真が唐突に聞いてくる。
「いやぁ、実はさ…」
別に隠す必要などないため、俺は優真にことの顛末をありのまま話した。
優真は時々笑い、時々不機嫌になりながらも、その話を全部聞いてくれた。
「ほぉー!そんなことがあったのですか!」
「そうそう、本当に大変だったんだから…」
そう言い終わって、一息ついてから、今度はこっちから聞き返した。
「ところでさ、優真は彼氏とかいるの?」
俺はこの質問の答えを確信していた。
『YES』と答えるだろう、と。
大学生の頃から可愛いと評判だったのだ。
そんな子に彼氏がいないわけがない。
「いえ、いないですけど」
「やっぱり彼氏いるんだ…ってえぇぇぇぇ!?」
まさかの返答にノリツッコミをしてしまう。
「まあ、正しくはこれから出来るんですけどね」
まあでも、やはり彼女のような子にはクリスマスも彼氏といる日にするのだろう。
「そっか。じゃあ俺は邪魔かな。コーヒーありがとうね」
そもそも、そう長居する理由などない。
話に付き合ってもらった故に長居しているようなものだ。
お礼を言い、ゆっくりと立ち上がろうとしたとき、優真が言い出した。
「何言ってるんですか先輩?先輩がいないとダメじゃないですか」
「…え…?」
何を…と言おうとしたとき、急に意識が混濁し始める。
立とうとしていた体からも力がなくなり、再びいすに座ってしまう。
「…あぁ、やっと薬が効いてきたんですね。アルラウネの蜜と催眠導入剤を混ぜたものですけど、かなり効いてるみたいですね♥」
彼女のいっていることが理解できない。
股間がとても熱い。彼女のことを見るとますます熱くなってくる。
「さあ先輩、私のことはこれから『愛衣』って読んでくださいね?それから、絶対に他の女の子に浮気しちゃ、ダメですからね?」
彼女の言葉が理解できない。
けれど、理解できないその言葉が頭の中に焼き付けられる。
いつの間にか、愛衣の両手両足は、大きい獣の手足に、真っ白い毛が生えていた。
しかしそんな変化も、彼にとっては興奮するものに過ぎない。
「さあ、先輩」
あいがそっとベッドに大きく手足をひろげてすわる。
まるでだれかをだきしめるかのように…
「Trick and Treated ♥?」
そのことばのいみは、もうわからなかった…
後日、愛衣にいろいろ聞いてようやく理解した。
毎年のデモ鎮圧騒動は、異世界から来た魔物娘によるものらしい。
男性の精液を摂取することで活力とする彼女達は、この世界に進出し、男性と付き合うように仕向けているらしい。
ちなみに、愛衣はUMAで有名な雪男、イエティらしい。
愛衣は途中から魔物になって俺への恋愛感情に気づいたらしい。
今回の騒動はこれまでの騒動に一ひねりしただけらしい。
そこら辺の価値観は理解できないらしい(愛衣談)。
まあとにかく、そんなわけで、えーっと…
クリスマスに彼女が出来ました。
愛衣がヤンデレ気味になったのはあの一瞬だけで、すぐにチン負けした。美しいまでの即堕ちだった。
それ以降甘々キャラとして一緒に過ごしている。
つか可愛い。とにかく可愛い。
ちなみに途中で別れた二人もそれぞれ彼女ができたらしい。
悠人は、あのクリスマスデモ反対派の責任者だったフーリーと、誠也はバイコーンとその他47人の魔物娘と付き合いだしたらしい。
それ以外のデモ参加者も、その殆どがかのや女持ちになったらしい。
魔物娘にとっても、俺達にとっても、幸せいっぱいの最高のクリスマス、いやハロウィンだった。
ハッピー・ハロウィーン!
視点変更 3人称side
12月24日21:38頃
埼○県理島家にて
「ただいまー」
与太郎が帰宅した。
「おかえりなさい、ア・ナ・タ♥」
それに返事をする女性。
「どうだった?『クリスマス・ハロウィン大作戦』」
「うまくいったよ。少なくとも内の部署は3人堕としたから」
「おおーう!やるー!」
「どうかな。俺は彩奈の作戦のおかげだと思うけど」
「でも、与太郎のおかげで3人はデモに参加したわけでしょ?なら与太郎のおかげよ」
「…そう言われると、悪い気はしないな…」
そう、与太郎とこのワイト、名前を彩奈(あやな)という、が今日の騒動の黒幕なのだ。
そもそもハロウィンに送れる種族は、大抵ハロウィン以外では難しいことが多い。
アンデッドなどがその例だ。
しかし与太郎の『クリスマスとハロウィンが逆ならいいのに』の一言で閃いた真子が、ハロウィン以外で参加しにくい魔物娘を送り出す今回の作戦を考えついたのだ。
「さてと、お腹がすいたな」
「ふふん、今日はクリスマス・ハロウィンだからね。ごちそういっぱい用意してあるのよ」
「へぇ〜。楽しみ!」
そんな甘い会話をしながら、それぞれ着替えと食事の準備を終わらせる。
「それじゃあ…」
「ええ!」
『Happy Halloween and Christmas ♥!!』
「ところでだけどさ」
「どうしたの?」
「これ、ハロウィンじゃなくてもよくない?」
「それは思った」
埼○県某所カフェにて
クリスマスツリーの様に電飾が飾られた木々が並ぶ町のある一角にある、小さなカフェ。
その店の隅で話す男性と女性。
二人が話しているのは、昨年のクリスマスデモ鎮圧隊の話だった。
「去年のデモ鎮圧隊、かなり多くの人が余っちゃったのよね」
「独身の子が?」
女性の言ったことに、男性がたずねる。
「そ。去年で3回目だからか、相手の方も段々来ることが分かってきたらしくて…去年なんかエアガンもって攻めてきた人なんかもいてさぁ…」
「ちなみに今その人は…?」
「ん?…ああ、今は亜梨子ちゃんと一緒に仲良く暮らしてるわ」
「ふーん………」
男性の方が考え込むかのように無言になる。
そんな男性を見て、相手の女性はそっと置かれていたアップルティーを口元に運ぶ。
「…なあ、ところでさ」
男性が口を開く
「どうしたの?」
「ハロウィンの時、どれぐらいの子がくっついたか分かるか?」
ハロウィン。
10月31日に行われるイベントの一つである。
今ではクリスマスよりも栄えており、各個人それぞれの仮装を借りてインスタグラムやツイッターに載せたりすることで、とてつもない経済効果のあるイベントとなっている。
実際、クリスマスほどではないといえども、その経済効果は目に見えて大きくなっている。
しかし、所詮はパーティーであり、カップルがいちゃつく空気はない。
そのためか、実際にくっつく例は数えるほどしかない。
「えっと…確か2、3人だったわ。なんでそんなことを?」
「いや、少し気になってね…」
そう言って今度は男性の方がコーヒーに口をつける。
「どうすればいいのかなぁ…」
「そうね…」
ともに考え込んでしまう二人。
しばらく黙り込んでいたのち、ふと男性がつぶやいた。
「クリスマスとハロウィンが逆だったらなぁ……」
「…!それよ!」
女性が大声を張り上げていった。
視点変更 一正side
「あーつかれた…」
「おつかれー」
「おつぁーす」
「お疲れ様でーす…」
やはりいつもの仕事だからだろう。
別段大変な仕事をこなしているわけではないが、やはりパソコンの前でずっと同じ体制はきつい。
「というか、今日お昼休みないのにみんな同じ時間に休むんだな」
「なんだかんだいつも通りなんですよね」
「それなー、ほんとそれ」
「…………(モグモグ)」
俺こと明田一正(めいだ いっせい)は、会社の同僚たちと話しながらコンビニ
弁当(唐揚げ海苔弁当。320円+税)を口に運ぶ。
ちなみに言葉だけでわかりづらいかもしれないが、先程のセリフ群の一番初めが俺、二番目は俺と気が合う呑み友達の利沢悠人(りざわ ゆうと)、3人目が会社内でチャラ男と呼ばれている倉石誠也(くらいし せいや)、そして最後が無口でオタク気味なのに彼女持ちの理島与太郎(りじま よたろう)である。
朝のうちに買っておいた弁当は昼休み時間(俺の会社は12:00からが昼休み)が始まった時点で給湯室の据え置き電子レンジで暖めておいてあるため、少なくとも冷たいということはない。
ただ、漬け物まで暖められているのが残念だが…
「にしてもまさか、今日この部署に4人も来るなんて思わなかったわ」
と俺が驚く表情をしながら話す。
「いや〜、俺も4人ぐらい来ると思ってましたよ」
そう言うのは誠也。
食べているのはコンビニのサンドイッチだが、それで足りるのだろうか。
「他の部署にも各2、3人来てたよ」
「まじっすか?でもやっぱ内の部署の人多くないっすか?」
「確かに」
悠人の情報に驚く誠也、いつも思うがオーバーリアクションじゃないか?
ちなみに悠人のお昼はコンビニの冷やし中華弁当、『冷たいものは寒い日に食うのがうまい』は悠人談。
「…………(ゴハンモグモグ)」
そして黙々と弁当を食べる与太郎。
与太郎はこの4人の中で唯一の彼女持ちだったりする。
そのためかお弁当も手作りだったりする、中身の彩りが鮮やかだからきっと作ったのは彼女さんだろう、いい彼女さんである。
「というか、今日与太郎が来るとは俺思ってなかったわ」
「…そうですか?」
「いや、だって今日みたいな休日、しかもイベント日にまさか彼女持ちのお前が会社来るなんて思いもよらなくてさ」
そう、今日は12月24日。クリスマスイブである。
しかも今年は月曜日、前の日の天皇誕生日の振替休日のため、多くの会社が休み、もしくは休日出勤である。
うちの会社は別段ブラックなわけではなく、ほどよい仕事量を単純にこなすだけの職場(といっても大変だが)で、休日出勤日が非常に多いことはない。
それでも出勤してくるのは、やはり独り身で予定がホワイトクリスマスだからだろう。
「まさか…彼女さんともめてるんすか!?」
俺の言葉に反応し、プライベートなことを与太郎に聞く誠也だが、
「それはないです。もしそうだったらお弁当作ってくれないでしょうし」
そ…即答ですか…
「いや、俺はむしろ誠也みたいなチャラ男が来ないんじゃないかって思ってたけど…クリスマスパーティーとかしないの?」
今度は悠人がそう誠也に聞く。
「いや〜最近は女子は女子会でやるみたいですし、男だけのパーティーってむさ苦しいだけじゃないっすか。俺、会社ではこんな感じっすけど、外だと普通のサラリーマンっすからね?」
「それもそうか」
「以外だな、誠也はウェイ系の人間かと思ってた」
「酷い!」
誠也が泣くようなそぶりを見せる。
「でも、うちの会社は退社時間凄い厳しいからな、たしか『うちの会社は残業させないハラスメント、定時ハラスメントをはやらせる』とかっていう社長の意向だっけ?」
「…定ハラ発言聞いたときは草生えた」
なぜか与太郎が笑った、きっと思い出し笑いだろう。
「そうっすね、退社した後どうしよっかな〜」
「おっ、そうだな。そういりゃ何も考えてなかった」
「うーん…これといってやることもないしなー…」
悠人と誠也、そして俺の3人が考えていると、
「…!それなら…」
与太郎がそう言ってスマホのある画面を見せてきた。
「革命的非リア同盟?」
「クリスマス玉砕デモ?」
初めて見る言葉に、俺と悠人が首をかしげる。
「あ、しってるそれ!毎年やってるやつっすよね!」
誠也はどうやら知っていたらしく、少し大きな声で叫んだ。
「…そう、クリスマスがカップルといちゃつく日になっていることに対して抗議デモを起こすってやつらしい、ちなみに参加自由」
「へぇ〜、って今日の六時からじゃん!場所も近いし」
「面白そうじゃん!いってみようぜ!」
「そうっすね!これは退社後が楽しみっす!」
そう言ったとき、ちょうど携帯のアラームが鳴った。お昼休み終わりの合図だ。
各々は退社後を楽しみにしながら、仕事を始めた。
気のせいか午前中よりもはかどっている気がする。
「ところで与太郎、おまえなんで俺たちにあのサイトを見せたんだ?おまえ関係ないだろ?」
「…悪意でですけど?」
「悪意かいっ!」
退社時間である17:30になって、急に他部署の先輩がやってきて怒鳴り声で叫んだ。
『おまえら!さっさと帰宅しろ!終業時刻だ!』
……ガチでハラスメントじゃねーか。
というわけで、俺達4人も、全員同じ時間に会社を出た。
俺と悠人、誠也の3人はそのまま例のデモに参加することになったが、与太郎はそもそも彼女持ちのため、彼女さんへのプレゼントを買いに行ってから帰るらしいので、
「そんじゃまたな与太郎」
「…お疲れ様です…3人もお気をつけて…」
そう言ってすぐに分かれた。
分かれた後、俺達3人は電車で例のデモ運動の集合場所に行くことにした。
3人は最寄り駅のホームでスマホをいじりながら電車を待っていた
すると、誠也があるサイトを見つけた。
「2人とも…これ見てくださいよ」
誠也がスマホの画面を見せてくる。
「なになに…?えっ、クリスマス粉砕デモ鎮圧隊?」
「そうっす。毎年クリスマスデモが起きては、それを鎮圧する別のグループがあるらしくて…」
「うーん…そう考えると危ない感じがするなぁ…」
悠人が少し心配をしていたが、
「そうでもないみたいだよ?けが人は出てないらしいし、去年はクリスマスデモの人達が抗ったおかげ?で今年は鎮圧隊は活発じゃないらしいし」
俺が違うサイトで見た情報を話す。
「おお、そうか。なら安心…か?」
疑問符を浮かべながらも、悠人は安心したようだ。
「とりあえず、集合場所行ってから考えよう。どんなものなのか俺らじゃわからないし」
「そうだな」
「そうっすね〜」
そんな緩いテンションで行く俺達3人。
もしこの時、俺達が与太郎の言葉を、『気をつけて』という言葉を意識していれば、あんなことには巻き込まれなかったのに…
俺達が集合時間の18:30ぎりぎりに集合場所の公園についた頃には、数多くの人達が集まっていた。
「意外と集まるもんなんだな」
「ざっと30人ぐらいか?」
「凄い人の量っすね〜こんなに人がいるなんて」
俺達3人は、そんな驚きの感想を口にしていた。
まもなく、一人の男性(おそらく今回のデモの責任者だろう)が、拡声器を持って話し出した。
『昨今のクリスマス、クリスマスイブは、カップル達が愛をささやき、安易に子を宿そうとする日として認識されています。
しかしそれは、元来のクリスマスに反しています。
元来クリスマスとは、イエス・キリストの降誕祭であり、キリスト教圏では、家族へ愛を贈る日なのです。
確かにカップルを家族であるということはできるでしょう。
しかし!もしそうならば我々のような独り身は一体誰に贈らなければいけないのか!
自らの血のつながる家族とは連絡だけ行い、自らの恋人と愛をなすという行為は!元来のものとはあまりにもかけ離れている!
我々は、このような誤った認識のクリスマスは玉砕しなければならない!
クリスマス反対!』
『反対!』
一気に集まった人達のボルテージが高まっていく。
「意外と冷静に見てるな。単にクリスマスを無くそうみたいなデモじゃなくて」
「昨今の誤った見方か…確かに、クリスマス=カップルっていうイメージが強いな。女がいないクリスマスはクリスマスじゃないみたいな」
「それは言い過ぎっすけど…でもクリスマスの日は女性と一緒じゃなきゃいけないみたいな空気がありますよね」
俺達がそんなコメントを行っていたとき…
『まちなさい!』
拡声器で大きくなった女性の声がどこからともなく聞こえた。
聞こえた方向を向くと、そこには『クリスマスデモ反対』の文字が。
そして多く、といっても10人強ほどの女性?が暖かそうな冬服を着て集まっていた。
その先頭に立つ責任者らしき女性が優しい口調で語る。
『クリスマスにくっつくという機会をなしに、一体いつくっつくというの!?ロマンティックがあるクリスマスにプロポーズする!これほど美しいことはないと思わないの!?』
しかし、その言葉の殆どが所謂感情論だった。
反対意見をデモ側の責任者の男性が熱弁する。
『そもそも、そんなことを実際にやるということ自体が間違っている!現実はドラマのようにそううまくはいかない!それにロマンティックだとしても、それが子を宿すための日になるという風潮はやはりおかしい!男と女の絡み合いなど、恋愛物語が好きな人以外の誰が得をするのか!』
『…………』
そんな意見を言われ、言い返せなくなる女性。
「可哀想だな…」
と、悠人が女性に同情する。
『黙っているのであれば、我々はデモを始めるだけだ!いくぞ!』
『おおぉぉぉーー!!』
威勢よくデモ行進を始める男達。
デモ反対派の女性達から目をそらし、まさに行進を始めようとしたとき、それはやってきた。
『素晴らしい演説だ!デモ隊の責任者様!』
再び女性の声。
しかし、先程の女性とは打って変わって、少しおどけたような話し方をする。
先程の反対デモとは違う方向から、また違う隊列が現れた。
先程の反対デモとは違い、横断幕のような旗は持ち歩いておらず、何の隊列なのかわからない。
そして、女性の服装は、みなフード付きのコートを羽織っている。
その隊列の責任者であろう女性が、拡声器を使って話し出した。
『クリスマスは男性と女性が絶対にくっついていなくてはならない、という風習、確かにおかしい!わざわざ男と女をくっつけるためにロマンティックな雰囲気を出さないといけないなど無駄の極み!』
『そうだ!』
『その通りだ!』
デモ隊の演説でないのに、何人かのデモ隊の人が同調する。
しかし、その話は思わぬ方向へと進む。
『しかし、クリスマスという日の経済効果は素晴らしいもの。その日を無くしてしまえば、経済発展は遂げにくくなってしまうだろう。そこで!』
そして、その次の言葉に、デモ隊の全ての人が、あっけにとられた。
『ならば、クリスマスじゃなくて、ハロウィンをやればいいじゃない!』
『…はぁ!?』
デモ隊の男達から出たその声は、呆れか、驚愕か。
女性の演説は続く。
『ハロウィンは今やクリスマスに並ぶ第二の経済効果の波!
それにクリスマスと違って男と女がくっつかないといけないという風潮もなく!
家族や友達と一緒にいる日として愛をささやかなければならないなんていう考えもなく!
けれどモテる、モテない関係なく皆が参加できる最高のイベント!
だから私たちは!今日からクリスマスをハロウィンとして過ごす!』
そして隊列の女性たちが一斉にコートを脱ぐ。
そして中から現れたのは、ハロウィンの時期によく見る様々な怪物に扮した女性達。
ゾンビや幽霊のようなメジャーなものはもちろん、鳥女やひれをつけた魚人のようなマイナーなものまで。
その女性達は一斉に叫び、飛びかかってきた!
『トリック・オア・トリート〜!!』
『うわぁぁぁぁぁーーーー!!?』
その言葉とともに、一斉にデモ隊の男達が逃げ始めた…
点変更 悠人side
「俺達も逃げるぞ!なんか捕まったらやばそうだし!」
「そうっすね!」
一正と誠也が逃げる準備を始める中、俺はぼんやりとある方向を見ていた。
反デモ派の女性たちの方を、だ。
「ほら!悠人もいくぞ!」
この騒動の中、彼女たちはずっと慌てていた。
いや、正しくはどうすれば良いか分からなくて困っているのだろう。
あの反対演説を否定された後、ずっとことの成り行きをぼんやりと見ていた。
特に反デモ隊の責任者であるだろう女性は、まるで何も感じなかったようにじっと立っていた。
「……………」
「…?悠人、どうした?」
けれど俺にはその目が。
まるで…助けるかを求めるような目で…
「おい悠人!」
「…悪い一正、誠也。おまえ等だけで逃げてくれ」
いつの間にか、俺はそんなことを言い出した。
「はぁ!?なにいってんだよ!」
そりゃそうだ、この状況で逃げないなんて自殺行為に等しい。
もしかしたら、途中で誰かに捕まえられるかもしれない。
それでも、俺が信念を曲げないのは…
きっと…彼女を好きになったから…
「俺は…やることができたから」
その言葉は、どうやら一正を困らせる最後の一言になったらしい。
「クソッ!なんなんだよ勝手に!もういい。悠人は自分でなんとかしてもらうとして、俺たちは逃げるぞ!」
「りょ、了解っす!」
一正と誠也は、俺が向いている方向と全く反対の方向へ走りだしたようだ。
俺はデモ反対派の人達の方へ走り出しす。
「やっほーう!男だー!」
「自分から来るなんて、なんて愚かなのかしら!」
左右前方からそれぞれ浴衣(つららのような模様)姿の女性と黒いイヌのような女性が捕まえに来るが…
「…ッ!」
犬が足を、浴衣の人が頭を押さえようと飛び上がった瞬間を見計らい、俺はその間を飛び抜ける!
「ちょっ!」
「うそだろ!?」
こけそうになるものの、受け身を取ってバランスをとる。
子供の頃柔道をやっておいた甲斐があった。
他にも何人かやってきたものの、それらは適当にいなして例の反デモ派の人達の前まで来ることが出来た。
当然全力ダッシュのため、息切れを起こしている。
「はぁっ…はぁっ…」
「だ、大丈夫…ですか?」
先程演説した女性が手を伸ばしてくる。
「はぁっ…はい…大丈夫です…」
その手をそっと取り、体を起こす。
しっかりと見るその人の顔はとても整っており、肌は雪のように繊細で美しい。
そんな彼女の顔を少しだけ眺めた後、彼女の後ろに立っていた女性達に向き直る。
10人ほどの女性達は自分の方を一斉に見る。
演説なんてはじめてだけど、ここはやるしかない。
俺はそっと口を開く。
「…皆さんも…追っかけた方がいいのでは…?」
「えっ!?」
女性たちが驚きの表情を見せる。
「さっきから…というか現れたときからずっと皆さんが男性とくっつきたくて仕方がない、みたいな雰囲気を感じたんです。だからもしかしたら、皆さん独身で、自分の生涯のパートナーを見つける為にやってるんじゃないかって…そう、思ったんです」
後ろの争い合いを横目に見ながら、俺は演説を続ける。
「今この状況は、たとえロマンティックじゃないとしても、いい出会いの場にはなると思うんです。だから…皆さんも…と」
思ったんです、という言葉を聞いている人は殆どいなかった。
反デモ派の女性たちが一斉に逃げようとする男性の方へ走って行く。
それを五秒ほど眺めた後、俺は地面に座り込んだ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
先程の緊張が一気に緩んだからだろう、再び息切れを起こす。
「最高でした」
ふと、隣にいた反デモ派の責任者の人が話しかけてきた。
その優しい声は、自分の中で何度もリフレインして染み渡る。
「先程の演説。私には絶対出来ません。まさかみんなの気持ちを代弁してくれるなんて」
「…いや」
格好付けなのか、本心なのか。
恐らく後者なんだろうなと思いながら、言葉を口にする。
「あなたが論破されたとき、とても悲しい目をしてたから。だから助けようとしただけですよ」
「…っ!」
「さてと…もうそろそろ僕も逃げないと…」
俺は少し気恥ずかしくなって、そ逃げだそうと立ち上がる。
「俺不器用だから、少しでもロマンティックな場所じゃないと伝わらないだろうし」
「…!///」
どうやら女性の方は気づいたらしい。
小っ恥ずかしいセリフを言った甲斐があったもんだ。
「そんじゃあ逃げますか…っと!」
全力ではなく、けれど他の人には決して捕まらないように、俺は公園の外の方へ逃げていった。
「…全く…本当に不器用なんですから…『旦那様』は」
羽衣を纏った少女の言葉は、俺には聞こえなかった。
視点変更 誠也side
いやいやいやいやおかしいおかしい!
なんで唐突に鬼ごっこ、それも女が男を追っかけて貞操を奪おうとする大会が始まってるんだよ!
「誠也!お前、家はどっち方向だ?」
一正さんが聞いてくる。
「えっと…東○の首都圏郊外の方っす!」
「それなら、次のところで別れるしかないな俺は埼○だから…」
そんな言葉が聞こえるが、後ろからやってくる女の声がとにかくヤバい。
『男ォォォォォ!!』
『大量だぁぁぁぁ!!』
『…カスオカスオカスオカスオ…』
こ、怖ぇぇぇぇ!
最後の人とかもはや壊れてんじゃん!
しかも仮装のクオリティが高いせいで、滅茶苦茶怖い!
女は化けると魑魅魍魎にすらなれんのか!?
そんなことを考えている内に、分かれ道に到着。
こっからは俺と一正さんは別々に逃げることになる。
「んじゃあな誠也!がんばれよ!」
「一正さんも!」
T字路に分かれている道を、一正さんは右、俺は左に逃げていった。
曲がってしばらくした後、何人ほどこちらの方にきているのかを見ようと後ろを向くと、
『C'mon baby OTOKO!』
『さあ、お前のオナニーの回数を数えろ!』
『野郎ブチ犯してやる!』
『逆レ!逆レ!逆レ!逆レ!』
『犯した?犯してないよ!』
『ヤらないか?』
増えてんじゃねぇかよふざけんな!
というか最後のやつは完全にホモだろいい加減にしろ!
2番目に関しては自問自答してるし!
他にもなんかいろいろ混じってるし!
というが逆レってなんだよ!
というか最初のやつ何歌ってんだよ!
とにかくツッコミどころ多すぎてツッコミ切れんわ!
とにかく全力で走る!今の俺にはそれしか出来ない!
運がいいことにここの先は人の多い商店街!
ここで姿をくらませばまけるはずだ!
さあ、いけ!俺!
……………
ふむ、これはどういう状況かな?
まさか商店街が女であふれていて俺一人の周りに仮装した女が囲うように立っているって…
ドッキリだよな?
フ○テレビあたりの企画だよなぁ!
だれか!そう言ってくれぇぇぇ!
俺の心の叫びも虚しく、俺の逃げてきた方の女も到着。完全に囲まれた。
八方手ふさがり、四面楚歌って、こういうことを言うのかな…
全てを諦め、真っ白になった俺の肩に、一人の女が手をかけてきた。
振り向くと、黒い馬の下半身で2本のつのがはえている女性が問いかけてきた…
「ヤらないか?」
ペニバンつけて、超兄貴的スマイルで。
まさかその後、48人の女性を犯し、犯され、その全員と結婚するとは思わなかった…
腰と尻が痛い…
視点変更 一正side
誠也と別れてしばらくした後、後ろを見たら誰もいなかった。
どうやら誠也の方に流れていったようだ。
誠也…無事でいてくれよ…
さて、ここはどこだろうか。
さっきの道で別れたのも、方角で決めた適当なものであって、知っている道に出るためなどではない。
とにかく分散することで、追いかける人数を減らそうという寸法だったのだが…
まさか、100:0で別れるとは思わなかった。
俺、そんな魅力ないかな…
そんなことを考えていていたせいか、目の前から歩いてきた人に気づかずぶつかってしまった。
「きゃっ!」
「あっ、すみません!大丈夫ですか?」
相手は女性だったようで、ぶつかった勢いで倒してしまった。
慌てて相手に手をさしのべる。
「い、いえ、大丈夫です…って、先輩!?」
相手が自分の顔を見て驚く。
ただ、俺は相手が誰なのか思い出せなかった。
「え…えーっと…」
「愛衣ですよ!同じサークルの優真愛衣(ゆうま あい)!!」
「ええっ!優真!?」
優真愛衣
俺が大学生の頃の後輩で、同じ『心理学研究サークル』だったサークル内の紅一点のような存在。
天然でお茶目な彼女を好きになる男子は数知れず、ねたむ女子もさぞ多かったのだとか。
「お…お邪魔しまーす…」
「どうぞ先輩。ゆっくりしていって下さい」
まさか出会って早々女性の家に上げられるとは思わなかった。
『久しぶりに先輩と話したいです!』って言われて来たはいいけど、女性の家って…なんか…その…ドキドキするな…
「先輩はコーヒー好きでしたよね?お砂糖いれますか?」
「…へ?あ、ああ、うん」
なるべく意識を優真に向けないよう、部屋の中を観察する。
薄いピンク色で統一された部屋は、女の子らしさがありながら、清楚さを表している。
白いインテリアの横には何かの植物と写真立て。
「あれ…この写真…」
そこにうつっているのは、当時の心理学サークルみんなの写真。
「へぇ〜なつかしい」
「懐かしいですよね、ほんと」
急に後ろから声がしてびっくりする。
白いトレイ幅上にはコーヒーと紅茶。
机の上にそれらの入ったマグカップを置く。
「先輩がコーヒーで、っと。どうぞ先輩」
「い…いただきます」
熱々のコーヒーが、外で冷えた体を温める。
いろいろ考えていたので消費した糖分が入っており、頭もリラックスする。
「にしても先輩、さっきどうしてあんなに急いでたんですか?」
優真が唐突に聞いてくる。
「いやぁ、実はさ…」
別に隠す必要などないため、俺は優真にことの顛末をありのまま話した。
優真は時々笑い、時々不機嫌になりながらも、その話を全部聞いてくれた。
「ほぉー!そんなことがあったのですか!」
「そうそう、本当に大変だったんだから…」
そう言い終わって、一息ついてから、今度はこっちから聞き返した。
「ところでさ、優真は彼氏とかいるの?」
俺はこの質問の答えを確信していた。
『YES』と答えるだろう、と。
大学生の頃から可愛いと評判だったのだ。
そんな子に彼氏がいないわけがない。
「いえ、いないですけど」
「やっぱり彼氏いるんだ…ってえぇぇぇぇ!?」
まさかの返答にノリツッコミをしてしまう。
「まあ、正しくはこれから出来るんですけどね」
まあでも、やはり彼女のような子にはクリスマスも彼氏といる日にするのだろう。
「そっか。じゃあ俺は邪魔かな。コーヒーありがとうね」
そもそも、そう長居する理由などない。
話に付き合ってもらった故に長居しているようなものだ。
お礼を言い、ゆっくりと立ち上がろうとしたとき、優真が言い出した。
「何言ってるんですか先輩?先輩がいないとダメじゃないですか」
「…え…?」
何を…と言おうとしたとき、急に意識が混濁し始める。
立とうとしていた体からも力がなくなり、再びいすに座ってしまう。
「…あぁ、やっと薬が効いてきたんですね。アルラウネの蜜と催眠導入剤を混ぜたものですけど、かなり効いてるみたいですね♥」
彼女のいっていることが理解できない。
股間がとても熱い。彼女のことを見るとますます熱くなってくる。
「さあ先輩、私のことはこれから『愛衣』って読んでくださいね?それから、絶対に他の女の子に浮気しちゃ、ダメですからね?」
彼女の言葉が理解できない。
けれど、理解できないその言葉が頭の中に焼き付けられる。
いつの間にか、愛衣の両手両足は、大きい獣の手足に、真っ白い毛が生えていた。
しかしそんな変化も、彼にとっては興奮するものに過ぎない。
「さあ、先輩」
あいがそっとベッドに大きく手足をひろげてすわる。
まるでだれかをだきしめるかのように…
「Trick and Treated ♥?」
そのことばのいみは、もうわからなかった…
後日、愛衣にいろいろ聞いてようやく理解した。
毎年のデモ鎮圧騒動は、異世界から来た魔物娘によるものらしい。
男性の精液を摂取することで活力とする彼女達は、この世界に進出し、男性と付き合うように仕向けているらしい。
ちなみに、愛衣はUMAで有名な雪男、イエティらしい。
愛衣は途中から魔物になって俺への恋愛感情に気づいたらしい。
今回の騒動はこれまでの騒動に一ひねりしただけらしい。
そこら辺の価値観は理解できないらしい(愛衣談)。
まあとにかく、そんなわけで、えーっと…
クリスマスに彼女が出来ました。
愛衣がヤンデレ気味になったのはあの一瞬だけで、すぐにチン負けした。美しいまでの即堕ちだった。
それ以降甘々キャラとして一緒に過ごしている。
つか可愛い。とにかく可愛い。
ちなみに途中で別れた二人もそれぞれ彼女ができたらしい。
悠人は、あのクリスマスデモ反対派の責任者だったフーリーと、誠也はバイコーンとその他47人の魔物娘と付き合いだしたらしい。
それ以外のデモ参加者も、その殆どがかのや女持ちになったらしい。
魔物娘にとっても、俺達にとっても、幸せいっぱいの最高のクリスマス、いやハロウィンだった。
ハッピー・ハロウィーン!
視点変更 3人称side
12月24日21:38頃
埼○県理島家にて
「ただいまー」
与太郎が帰宅した。
「おかえりなさい、ア・ナ・タ♥」
それに返事をする女性。
「どうだった?『クリスマス・ハロウィン大作戦』」
「うまくいったよ。少なくとも内の部署は3人堕としたから」
「おおーう!やるー!」
「どうかな。俺は彩奈の作戦のおかげだと思うけど」
「でも、与太郎のおかげで3人はデモに参加したわけでしょ?なら与太郎のおかげよ」
「…そう言われると、悪い気はしないな…」
そう、与太郎とこのワイト、名前を彩奈(あやな)という、が今日の騒動の黒幕なのだ。
そもそもハロウィンに送れる種族は、大抵ハロウィン以外では難しいことが多い。
アンデッドなどがその例だ。
しかし与太郎の『クリスマスとハロウィンが逆ならいいのに』の一言で閃いた真子が、ハロウィン以外で参加しにくい魔物娘を送り出す今回の作戦を考えついたのだ。
「さてと、お腹がすいたな」
「ふふん、今日はクリスマス・ハロウィンだからね。ごちそういっぱい用意してあるのよ」
「へぇ〜。楽しみ!」
そんな甘い会話をしながら、それぞれ着替えと食事の準備を終わらせる。
「それじゃあ…」
「ええ!」
『Happy Halloween and Christmas ♥!!』
「ところでだけどさ」
「どうしたの?」
「これ、ハロウィンじゃなくてもよくない?」
「それは思った」
18/12/25 00:01更新 / 食後の麦茶