人形好きの非日常
住宅街の中に建つとあるアパート。
一人暮らしにはいい、六畳の部屋とクローゼット、風呂、キッチン、トイレがついた部屋。
その202号室の住人、橘龍の部屋は、ちょっとだけ風変わりだった。
窓際にベッド、そして片隅にテーブルと椅子があるのだが、クローゼットの半分を大きなガラスのショーケースが埋めていた。
その中には高さがおおよそ四、五十センチほどの少女の人形が立ち並んでいた。
彼は生粋の人形好きだったのだ。
幼い頃に両親が年子の妹の為に買った人形を見てから、彼はひたすら人形を欲しがった。
そして、大学を卒業し、そこそこのサラリーマンとして社会にデビューするや否や、ショーケースを買って人形を集めたのだ。
「ふぅ…今日もいい買い物をしたな」
そう呟いた彼の腕の中には今日買った新しい人形が収まっていた。
髪は少しくすんだ銀色、フリルがふんだんについたゴスロリ調の服を着せられ、目は澄んだ青の色ガラスで彩られた陶器細工の人形。
それがその日彼が買ってきた人形だった。
彼はショーケースを開けて、その人形を入れてから、風呂に入った。
−−ねぇ、皆、なんで死んだフリなんてしてるのよ!−−
−−してないと怖がられるでしょう?−−
−−家に入り込んでこんな仕打ちってあり!?−−
−−まぁまぁ落ち着いて…あ、ご主人様が上がってくるわ!−−
−−え!?早すぎ!?−−
龍はこのごろ風呂に浸かりながら違和感に苛まれていた。
(最近家に居るとどうも誰かに見られているような気がする…)
風呂を上がって、髪をドライヤーで乾かすうちも龍は何か妙な、暖かく、それでいて何か不気味な視線を感じていた。
寝巻きに身をくるみ、明日のスケジュールを確認して、2つ机に並べた置時計の目覚まし時計をセットする。
そして、軽くストレッチをして、栄養ドリンクを1本飲み干して、そしてショーケースの鍵を龍は取り出す。
「今日は、君にしよう」
鍵を開けて、木細工ながら精巧に作られた、そしてロリータ調の服を着せられた人形を手にとって、それを左腕に抱きながら右手で鍵を閉める。
そして龍はその人形を両腕にしっかりと抱きしめて、ベッドにそっと体を横向きに倒して、目を閉じた。
新入り社員としてみっちりこなされた体はベッドに体を預けるや否や急速に眠りを求めて、龍は三分もしないうちに深い眠りに落ちていた。
−−貴女、新入り?−−
−−そうよ、なんでこんなとこでのんびりしてるのよ!−−
−−そりゃあ、交代でああやって抱きしめて寝てくれるからでしょう。あの人ずっと優しく抱きしめてくれるのよ−−
−−でも…このままじゃ飢え死にしちゃうわ−−
−−あの人は私達を大切にしてくれる、それでいいじゃない。それに、あの人、寝顔が可愛くて、どうもヤる気になれないというか…−−
−−ふぅん…でもあの人は私みたいにどんどん人形増やすんでしょ?そのうち抱いてくれる間隔も空くわよ?−−
−−そんな悲観的な事言わないで頂戴。それに、ショーケースが埋まる頃にはあの人も満足するでしょう−−
−−とてもそうは思えないけど?それより、皆で抱いて寝ればいいとは思わない?−−
−−……それ、本気で考えてるの?−−
−−当たり前よ!抱かれてるのに我慢とか生殺しのようなものよ!−−
−−そういうものなのかしら…−−
−−そういうものよ!!ねぇ、そこで抱かれてる貴女、鍵、取れる?−−
−−う〜ん…ちょっと無理かも−−
−−ふぅん…じゃあ強硬手段で行きましょう−−
パァアアアアアアアアアアアアン!!!!
「何だ!?」
龍は甲高い破砕音によって叩き起こされた。
まだ少し疲れの残る体を起こし、そして、目をこすった。
もう一度目の前を見る。
これは幻なんかじゃない…!!!!
自分が買い集めてきた人形達が、叩き割られたようにして開けられたショーケースの中から飛び出していた。
しかも、何体かが自分に向かって歩いてきている…!?
「なっ……なっ…!?」
呂律が驚きの余り全く回らない。
しかも、そのうちの一体――今日買ったばかりの人形――が、
「貴方、人形が好きなのね」
喋った。
陶器細工らしい、透き通った声で。
「そ、そんなっ…!!」
明らかにおかしい。そもそも陶器細工の人形が生きているわけない。
いや、どの人形もそうだ。心臓なんてあるわけがない。
怖い…怖い…怖い怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわいこわいこわいコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ
無意識に腕の中の今日の木細工の人形を抱きしめる。
とても柔らかくて、冷たいのに、どこか生きているような、そんな感じがする。
いや、おかしい。そもそも腕の中に抱いているのも人形じゃないか…!?
そんな、まさか…
「あぅ……痛いです、ご主人様ぁ……もう少し優しくお願いします」
腕の中の人形も喋った。
「っ……!!!!!」
もう、声も出なかった。
すると、腕の中の人形が、柔らかな笑みを浮かべて、
「そんな顔をなさらないで下さい。大丈夫ですよ」
と言いながら両腕を背中に回し、右手で背中をさすりだした。
そして、ショーケースの人形達はそうしている間にベッドの上に全員乗っていて……
今日買った人形が言った。
「今晩は楽しいパーティーの時間よ!」
ピピ…ピピ…ピピ…ピピ…ピピピ…ピピピ…ピピピ…ピピピ…ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ……………………………………
「うるさいなぁ…この目覚まし、止めちゃいましょう」
龍の右腕を枕にして寝ていた人形がおもむろに起き上がると、目覚ましを止めた。
「う゛……」
目を覚ました龍の目の前は天井だった。
いつも、毎日だったら人形を目の前にして横向きに寝ているのに、今日は仰向けに寝ていた。
時計を見ようとして体を起こそうとして、体中の重みに気づいた。
腕から足、胸の上、いや、最早体中に人形達が抱きついていた。
何故か人形達はそれぞれに規則正しい寝息を立てていた。
まるで、生きているかのように。
そして、全員が、幸せそうな顔をして。
そして、全員が、
何故か服を脱いでいた上に、体にイカ臭い白い液体がもれなく着いていて。
「おい、皆、起きてくれ」
そう言うと、人形達は目を覚ました。
目を覚ますや否や、それぞれ眠たそうに目を擦りながら、口々に
「日中は寝せてくださいな、ご主人様」
とぼやくと、そのまままた眠ってしまった。
「最早隠す気すらないのかよ…」
前日まで仕事は龍の半ば義務のようなものだった。
いつ上司に呼び出されてもいいように、携帯を毎日ベッドの横の机で充電していた。
龍は右腕に抱きついていた人形にどいてもらって(その間人形は大分すねた顔をしていた)、携帯を手に取ると、上司宛に電話をかけた。
「すみません。今日、有給もらってもいいですか?」
その後、龍は隣の部屋の住人からガラスの割れる音がしたが大丈夫だったか、とか、お楽しみだったのかなどと問い詰められた。
そして、人形を買うのを止めて金を貯めた後、リビングが十畳ある、一人暮らしには広すぎる賃貸マンションに引っ越した。
それから毎日、龍は家のドアノブを開ける時がちょっとした幸福なひと時となった。
もうクローゼットにガラスのショーケースは置いていない。
その代わり、毎晩ドアを開けると、
「お帰りなさい、ご主人様」
「ただいま」
一体の人形が靴を片付けてくれた後、抱きついてきたのでお姫様だっこをしてやると、恥ずかしそうに顔を胸に押し付けてきた。
「今日は金曜日ですね…♪」
「そうだなぁ……皆に今日はお手柔らかに頼むって伝えといてくれ」
「ふふふ…いやです♪」
「はぁ……」
金曜日の夜は人形達の「パーティー」の日になってしまっていた。
軽く食事を済ませ、風呂に入り、洗濯機を回して、少し前のアパートより大きなベッドに向かうと、
「今夜は寝かせないわ♪」
と、初めて人形達に襲われたあの日に買った人形が言うのを合図に、今夜も狂宴が始まった。
一人暮らしにはいい、六畳の部屋とクローゼット、風呂、キッチン、トイレがついた部屋。
その202号室の住人、橘龍の部屋は、ちょっとだけ風変わりだった。
窓際にベッド、そして片隅にテーブルと椅子があるのだが、クローゼットの半分を大きなガラスのショーケースが埋めていた。
その中には高さがおおよそ四、五十センチほどの少女の人形が立ち並んでいた。
彼は生粋の人形好きだったのだ。
幼い頃に両親が年子の妹の為に買った人形を見てから、彼はひたすら人形を欲しがった。
そして、大学を卒業し、そこそこのサラリーマンとして社会にデビューするや否や、ショーケースを買って人形を集めたのだ。
「ふぅ…今日もいい買い物をしたな」
そう呟いた彼の腕の中には今日買った新しい人形が収まっていた。
髪は少しくすんだ銀色、フリルがふんだんについたゴスロリ調の服を着せられ、目は澄んだ青の色ガラスで彩られた陶器細工の人形。
それがその日彼が買ってきた人形だった。
彼はショーケースを開けて、その人形を入れてから、風呂に入った。
−−ねぇ、皆、なんで死んだフリなんてしてるのよ!−−
−−してないと怖がられるでしょう?−−
−−家に入り込んでこんな仕打ちってあり!?−−
−−まぁまぁ落ち着いて…あ、ご主人様が上がってくるわ!−−
−−え!?早すぎ!?−−
龍はこのごろ風呂に浸かりながら違和感に苛まれていた。
(最近家に居るとどうも誰かに見られているような気がする…)
風呂を上がって、髪をドライヤーで乾かすうちも龍は何か妙な、暖かく、それでいて何か不気味な視線を感じていた。
寝巻きに身をくるみ、明日のスケジュールを確認して、2つ机に並べた置時計の目覚まし時計をセットする。
そして、軽くストレッチをして、栄養ドリンクを1本飲み干して、そしてショーケースの鍵を龍は取り出す。
「今日は、君にしよう」
鍵を開けて、木細工ながら精巧に作られた、そしてロリータ調の服を着せられた人形を手にとって、それを左腕に抱きながら右手で鍵を閉める。
そして龍はその人形を両腕にしっかりと抱きしめて、ベッドにそっと体を横向きに倒して、目を閉じた。
新入り社員としてみっちりこなされた体はベッドに体を預けるや否や急速に眠りを求めて、龍は三分もしないうちに深い眠りに落ちていた。
−−貴女、新入り?−−
−−そうよ、なんでこんなとこでのんびりしてるのよ!−−
−−そりゃあ、交代でああやって抱きしめて寝てくれるからでしょう。あの人ずっと優しく抱きしめてくれるのよ−−
−−でも…このままじゃ飢え死にしちゃうわ−−
−−あの人は私達を大切にしてくれる、それでいいじゃない。それに、あの人、寝顔が可愛くて、どうもヤる気になれないというか…−−
−−ふぅん…でもあの人は私みたいにどんどん人形増やすんでしょ?そのうち抱いてくれる間隔も空くわよ?−−
−−そんな悲観的な事言わないで頂戴。それに、ショーケースが埋まる頃にはあの人も満足するでしょう−−
−−とてもそうは思えないけど?それより、皆で抱いて寝ればいいとは思わない?−−
−−……それ、本気で考えてるの?−−
−−当たり前よ!抱かれてるのに我慢とか生殺しのようなものよ!−−
−−そういうものなのかしら…−−
−−そういうものよ!!ねぇ、そこで抱かれてる貴女、鍵、取れる?−−
−−う〜ん…ちょっと無理かも−−
−−ふぅん…じゃあ強硬手段で行きましょう−−
パァアアアアアアアアアアアアン!!!!
「何だ!?」
龍は甲高い破砕音によって叩き起こされた。
まだ少し疲れの残る体を起こし、そして、目をこすった。
もう一度目の前を見る。
これは幻なんかじゃない…!!!!
自分が買い集めてきた人形達が、叩き割られたようにして開けられたショーケースの中から飛び出していた。
しかも、何体かが自分に向かって歩いてきている…!?
「なっ……なっ…!?」
呂律が驚きの余り全く回らない。
しかも、そのうちの一体――今日買ったばかりの人形――が、
「貴方、人形が好きなのね」
喋った。
陶器細工らしい、透き通った声で。
「そ、そんなっ…!!」
明らかにおかしい。そもそも陶器細工の人形が生きているわけない。
いや、どの人形もそうだ。心臓なんてあるわけがない。
怖い…怖い…怖い怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわいこわいこわいコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ
無意識に腕の中の今日の木細工の人形を抱きしめる。
とても柔らかくて、冷たいのに、どこか生きているような、そんな感じがする。
いや、おかしい。そもそも腕の中に抱いているのも人形じゃないか…!?
そんな、まさか…
「あぅ……痛いです、ご主人様ぁ……もう少し優しくお願いします」
腕の中の人形も喋った。
「っ……!!!!!」
もう、声も出なかった。
すると、腕の中の人形が、柔らかな笑みを浮かべて、
「そんな顔をなさらないで下さい。大丈夫ですよ」
と言いながら両腕を背中に回し、右手で背中をさすりだした。
そして、ショーケースの人形達はそうしている間にベッドの上に全員乗っていて……
今日買った人形が言った。
「今晩は楽しいパーティーの時間よ!」
ピピ…ピピ…ピピ…ピピ…ピピピ…ピピピ…ピピピ…ピピピ…ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
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龍の右腕を枕にして寝ていた人形がおもむろに起き上がると、目覚ましを止めた。
「う゛……」
目を覚ました龍の目の前は天井だった。
いつも、毎日だったら人形を目の前にして横向きに寝ているのに、今日は仰向けに寝ていた。
時計を見ようとして体を起こそうとして、体中の重みに気づいた。
腕から足、胸の上、いや、最早体中に人形達が抱きついていた。
何故か人形達はそれぞれに規則正しい寝息を立てていた。
まるで、生きているかのように。
そして、全員が、幸せそうな顔をして。
そして、全員が、
何故か服を脱いでいた上に、体にイカ臭い白い液体がもれなく着いていて。
「おい、皆、起きてくれ」
そう言うと、人形達は目を覚ました。
目を覚ますや否や、それぞれ眠たそうに目を擦りながら、口々に
「日中は寝せてくださいな、ご主人様」
とぼやくと、そのまままた眠ってしまった。
「最早隠す気すらないのかよ…」
前日まで仕事は龍の半ば義務のようなものだった。
いつ上司に呼び出されてもいいように、携帯を毎日ベッドの横の机で充電していた。
龍は右腕に抱きついていた人形にどいてもらって(その間人形は大分すねた顔をしていた)、携帯を手に取ると、上司宛に電話をかけた。
「すみません。今日、有給もらってもいいですか?」
その後、龍は隣の部屋の住人からガラスの割れる音がしたが大丈夫だったか、とか、お楽しみだったのかなどと問い詰められた。
そして、人形を買うのを止めて金を貯めた後、リビングが十畳ある、一人暮らしには広すぎる賃貸マンションに引っ越した。
それから毎日、龍は家のドアノブを開ける時がちょっとした幸福なひと時となった。
もうクローゼットにガラスのショーケースは置いていない。
その代わり、毎晩ドアを開けると、
「お帰りなさい、ご主人様」
「ただいま」
一体の人形が靴を片付けてくれた後、抱きついてきたのでお姫様だっこをしてやると、恥ずかしそうに顔を胸に押し付けてきた。
「今日は金曜日ですね…♪」
「そうだなぁ……皆に今日はお手柔らかに頼むって伝えといてくれ」
「ふふふ…いやです♪」
「はぁ……」
金曜日の夜は人形達の「パーティー」の日になってしまっていた。
軽く食事を済ませ、風呂に入り、洗濯機を回して、少し前のアパートより大きなベッドに向かうと、
「今夜は寝かせないわ♪」
と、初めて人形達に襲われたあの日に買った人形が言うのを合図に、今夜も狂宴が始まった。
13/06/01 23:48更新 / 銀